現在、国会で審議中の住宅宿泊事業法案は、
(1) 住宅宿泊事業を都道府県知事への届け出制にする
(2) 年間提供日数の上限を180日とする
(3) 地域の実情を反映して、条例により年間提供日数等をさらに少なくできる
(5) 宿泊者の衛生の確保の措置等を義務付け
(6) 家主居住型(ホームスティ型)ではなく、家主不在型(ホスト不在型)の場合には、住宅管理業者と管理委託契約を締結しなければならない
(7) 住宅宿泊管理業業を営むには国土交通大臣の登録が必要
(8) 住宅宿泊仲介事業を営もうとするには、観光庁長官の登録が必要
という骨子です。

この中で、どうも私は「年間提供日数の上限を180日にする」という規制が理解できません。

2016年9月15日15時配信の毎日新聞のニュースによると、

「厚生労働省と環境庁でつくる専門家会議は6月、行政の許認可を得なくても住宅地で民泊を導入できるように新法を制定することを提言した。ただし、営業日数については、空き家の有効活用を求める不動産業界が上限設定に反対、営業への影響を懸念するホテル・旅館業界は年30日以下を主張し、まとまらなかった。
 政府は新法で、宿泊営業の規制を大幅に緩和し、自治体にインターネットで届け出をすれば、住宅地を含むどこでも営業できるようにする。営業日数は「社会通念上、半年を超えると一般民家とみなせなくなる」として、180日を上限として設定する。今後、与党内の議論を経て、閣議決定を目指す。」

とありますので、もともとはホテル・旅館業界の利益を守るために、このような営業日数規制が検討されたことがわかりますが、一般論として、ホテル・旅館業界は社会的弱者でもなく、その既得権益を保護することが営業の自由(憲法22条1項)の規制目的として正当化されるというのはおかしいでしょう。

そのため、政府は、ホテル・旅館業界の保護、などとはいわずに、上記の記事では、「社会通念上、半年を超えると一般民家とみなせなくなる。」などと言っているのですが(注)、いえいえいえ、法案を見ればわかるとおり、住宅宿泊事業とは、(「民家」ではなくて)「住宅」に人を宿泊させる事業であって、1年365日民泊をしても、(もはや「民」家ではなくなるとはいえるかもしれませんが)「住宅」が「住宅」でなくなるということはないでしょう。

いやいやいや、そういう物理的なことを言っているのではなくて、年間180日を超えて営業している場合は、もはやホテルや旅館と同じなのだから、旅館業法上の許可を取得しないさいという趣旨なんだとと考えたとしましょう。年間180日を超えて営業するような場合には、ホテルや旅館と同等の宿泊者保護、公衆衛生確保及び治安維持(テロ対策)目的からの規制をかけなければならなないのだと考えるのです。

しかし、もし宿泊者保護、公衆衛生及び治安維持上の必要があるのであれば、営業日数に関係なく規制をかけるべきであり、なぜ年間180日以上営業すれば急に規制が必要になるか説明がつきません。(そもそも民泊新法案では、宿泊事業者に、宿泊者保護、衛生確保及び宿泊者名簿の備え付け義務を課しているので、それに加えてなぜ営業日数を規制しなければならないのかについても説明が必要ですね。)。

さらに、特区で許可を取得して民泊をする場合には、営業日数規制がかからないことにも説明に窮します。特区であっても、その他の地域であっても、宿泊者保護、公衆衛生確保、治安維持(テロ対策)の必要性は同じはずです。

というわけで、私は、年間180日という営業日数規制には、かなり問題があると考えています。規制緩和を目的とした法案なのに、既得権益を保護するような規制が入っちゃった。

もっともホテル・旅館業界としては、(自分たちと比べると)民泊業者はあまり規制がかかっていないから、営業日数規制をしてもらわないと不公平だ(公正な競争環境が確保されていない。)というような反論はあり得るかもしれません。しかし、それは、ホテル・旅館業界に対する規制が厳しすぎないか?(または無駄なものがないか?)という観点からホテル・旅館業界に対する規制緩和として検討されるべきものでしょう。

(注)「民泊サービス」の制度設計のあり方について(「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書)(平成28年6月20日)の中にも、民泊について、
・住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものとする。(4頁)
・上記の「一定の要件」としては、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要である。(6頁)
・そのような「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、「住宅」そして扱い得るようなものとすることを考慮すると、制度の活用が図られるよう実効性の確保にも考慮しつつ、年間提供日数上限による制度を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適当な日数を設定する。(6頁)
と同じような説明がなされています。
しかし、なぜ営業日数について180日を上限とすると、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として合理性があるといえるのかはよくわかりませんね。


企業不動産法
小澤 英明
商事法務
2016-12-22



私の西村あさひ法律事務所時代に、大変お世話になった小澤英明先生が、今年(2017年)の1月に、商亊法務から『企業不動産法』という本を出しました。小澤先生といえば、知る人ぞ知る不動産分野の大家です。本の帯によると、「著者36年間の弁護士経験を詰め込んだ」ということですので、まさに待望の本です。

冒頭の「はじめに」によると、「本書は、企業が不動産を取得し、その使用収益を行うにあたって、また、売却するにあたって、さらには、土地を開発し建物を建築するにあたって、特に論点となりうる不動産法を解説することを目的としたものである。」とのこと。不動産に関する本というと、どうしても個人向けのものになりがちなのですが、それを企業の観点からまとめたもので、私のようなGeneral corporateをしている者にとっては嬉しい限りですね。

小澤先生の文章の特徴は、普通の法曹が書くような文章とは違って、とても論旨が明快で分かりやすいことだと思います。だいぶ前の本になってしまいましたが、西村あさひ法律事務所編の『M&A法大全』の中に、小澤先生が、M&A取引に関する不動産の論点についてまとめている章があるのですが、それが衝撃的にわかりやすくて、私にとっては本当に「目から鱗」でした。以来、私のバイブル的な本になっていますが、今回の「企業不動産法」も、そのような感動が味わえるではないかと読むのが楽しみです。きっとこのブログのネタ探しにも大いに役立つのではないかと思っています。

不動産に関する法務に興味のある方には是非ぜひ購入・一読をお勧めいたします。

前回紹介させていただいた東京地方裁判所平成29年1月26日判決(金融・商亊判例1514号43頁以下)では、取締役を解任する際の「正当な理由」(会社法339条2項)について規範定立がされています。

「会社法339条は、1項において株主総会決議による役員解任の自由を保障しつつ、当該役員の任期に対する期待を保護するため、2項において、当該解任に正当な理由がある場合を除き、当該解任がなければ当該役員が残存任期中及び任期終了時に得ていたであろう利益の喪失による損害について、会社に特別の賠償責任(法定責任)を負わせることにより、会社・株主の利益と当該役員の利益の調和を図ったものと解される。
 同項の「正当な理由」の内容も、以上のような会社・株主の利益と当該役員の利益の調和の観点から決せられるべきものであり、具体的には、会社において、当該役員に役員としての職務執行を委ねることができないと判断することもやむを得ない客観的な事情がああることをいうものと解するのが相当である。

この規範は、東京地裁平成8年8月1日判決(商亊1435号37頁)の「会社において取締役として職務の執行を委ねることができないと判断することもやむを得ない、客観的、合理的な事情が存在する場合」という規範とほとんど同じですので、会社法339条2項の「正当な理由」が問題となる案件では普通に使われているのでしょうね。

ただ、「会社において、当該役員に役員としての職務執行を委ねることができないと判断することもやむを得ない客観的な事情」といわれても、結局、(主観的な事情が含まれないことはわかりますが)「やむを得ない事情」が何なのか?については解釈の幅がありますので、「正当な理由」の基準として明確になったとは言えません。
故平井宜雄教授流にいうと「反論可能性がないダメな規範」ということになるでしょう。

(この規範自体は、「正当な理由」に関する法定責任説を採用することを表明したあとに言及されていますので、特に基準として明確化を図ったわけではなくて、債務不履行説や不法行為説と区別する意味で、法定責任説に従えばこういう定義になるよ、ということを言っているのかもしれませんね。)

で、東京地方裁判所商亊研究会編の類型別会社訴訟Ⅰを参照すると、「正当な理由」が認められる場合として、次の類型化がされています。

(1) 法令・定款違反行為(取締役が特定の業者と癒着し、不当に自己または第三者の利益を図った等々)

(2) 心身の故障(持病の悪化により職務遂行が困難等々)

(3) 職務への著しい不適任(会社の監査役が税理士として行った会社の税務処理において、明らかな過誤を犯して会社に損失を与えた等々)

(4) 経営上の判断の失敗
これについては、取締役の経営判断ミスにより会社に損害が発生したが、経営判断の原則からすれば当該取締役に損害賠償を請求できるとまでは言えないような場合に問題となります。

この場合に会社が当該取締役に損害賠償義務を負わなければ解任できないなんてことになると多数株主による会社支配に対する過度な制約になるとして「正当な理由」にあたるという見解(肯定説)と、
逆に、経営判断として問題がなかったのに解任取締役の損害賠償を失わせるのでは経営判断に対する過度な制約だという理由から「正当な理由」にはあたらないという見解(否定説・江頭先生)
があり、判例としては、広島地裁平成6年11月29日判決が、肯定説を採用していることが紹介されていますが、類型別会社訴訟Ⅰでは、どちらの見解をとるかの態度表明はされていません。
私の感覚としては、経営判断ミスにより会社に損失が発生しているような場合、経営者としての適任性に問題がある場合が多いので、肯定説が適当であるように思います。

なお、単なる「主観的な信頼関係の喪失」(この人はあまり好きになれない、とか嫌いだ!というような問題)による解任が「正当な理由」に該当しないことは争いがないようです。

で、冒頭に戻って、東京地方裁判所平成29年1月26日判決ですが、この判決では、会社側から代表取締役解任の「正当な理由」として、

① 業務手続に関するルールの不遵守
② 親会社グループの方針の不遵守
③ 研修義務不履行者への措置・処分の未策定
④ 離職者の多さ
⑤ 規程整備への非協力
⑥ 業績目標の未達
⑦ アドバイザリー業務体制の検討における非協調姿勢
など沢山の不適任事由が主張されましたが、事実関係が否定されていたり、認められるとしても解任を正当化するほど不当だったとは言えないとの認定を受けています。

そして、私が重要だと思うのは次の部分。

「もっとも、前記(2)ア(オ)の原告の行為や前記(6)アの原告の対応が、Zグループに属する被告Y2の代表取締役(社長)の行為として問題のあるものであり、これらを総合すると、原告の代表取締役としての適性に疑念を生じさせる面があることは否定できないところである。しかしながら、他方、証拠〔中略〕及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告Y2の前代表取締役会長である丁田から、業績が低迷して営業力も低い被告Y2の収益を改善し規模を拡大することを目的として、被告Y2に招聘されたものであり(そのことは被告Y1〔注:株主の親会社〕も前提としていた。)、原告自身、そのことを十分認識して同被告の代表取締役(社長)に就任したものであること、実際、被告Y2の損益は、平成24年6月期から黒字に転じ、原告の在任中は一応黒字を維持しており、同被告の従業員数も、平成24年6月期から平成27年6月期までの間の期末の人員を比較すると、毎年約100人ないし150人ずつ増加していることが認められる。これらの事実を総合すれば、原告が代表取締役として著しく不適任であると断ずることはできず、本人解任について会社法339条2項の「正当な理由」があるとまでいうこともできない。」

この部分を読むと、要するに、会社の成績が良い(少なくとも悪くはない)ときに(代表)取締役を解任した場合、かなり重大なミスや明確な不適任行為がない限り、「正当な理由」は認められにくい、ということが言えるかもしれませんね。

金融・商亊判例1514号(2017年4月15日号)43頁以下に掲載されている東京地裁平成29年1月26日判決を読んでいて、あれっ?と思ったので、紹介させていただきます。

簡単に事案を説明すると、ある会社Yが株主総会で(代表)取締役Xを解任したところ、そのAさんからY社に対し会社法第339条2項に基づき、損害賠償請求がなされたというものです。

参考:
339条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
 2  前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

この種の紛争では、解任に「正当な理由」があるか否かが争われることが多く、この訴訟でも主に「正当な理由」の有無が争われたわけですが、私が注目したのは、「損害」に関するY社の次の主張。

「会社と取締役との間で現に締結された委任契約において、会社の解除権及び解除に伴う処理が具体的に規定されているのであれば、かかる規定に従う限り、会社法339条2項において保護すべき取締役の損失(委任契約に基づく期待権の喪失)は生じず、賠償すべき「損失」を観念することもできないというべきである。本件においては、原告が被告の取締役に就任した際、本件委任契約が締結されており、同契約においては、被告は、約定の解約事由がなくても、いつでも本件委任契約を解約することができる旨定められ(10条2項)、かつ、その解除が被告の都合によるものであれば、原告は退職一時金を請求することができる旨も定められており(7条1項1号)、原告の利益の保護も十分に図られている。よって、本件解任については、会社法339条2項により賠償すべき「損害」は観念しえない。」

これに対して、この判例は、次のように述べて、上記のY社の主張を排斥しています。

「被告らは、前記第2の3(2)(被告らの主張)アのとおり、会社と取締役との間の委任契約において、会社の解散権及び解除に伴う処理が具体的に規定されているのであれば、かかる規定に従う限り、会社法339条2項において保護すべき取締役の損失(委任契約に基づく期待権の喪失)は生じず、賠償すべき「損害」を観念することもできない旨主張する。しかしながら、会社と取締役間の委任契約(取締役任用契約)において、会社の無条件の解除権や解除された場合の処理が具体的に規定されたとしても、そのことをもって、当該取締役の任用に対する期待権(前記1(1)参照)が生じないなどと解することはできず、同項の「損害」を観念することができないともいえないから、被告らの上記主張は採用することもできない。」

ちょっと、えっ!と思いませんか?
任用契約中で、取締役が会社の都合で解任された場合の処理(たとえば、会社は損害賠償として〇〇円支払う)というような決め事をしていても、当該(解任)取締役は、その決められた金額の他に、会社法339条2項に基づき会社に損害賠償請求をすることができるだなんて・・・。
判旨を読むと、「(解任された場合の処理が定められた任用契約があるからといって)当該取締役の任用に対する期待権が生じないなどと解することはできず」と言っているので、残任用期間中に貰える報酬合計額よりも高い退職金等が定められていれば339条2項の適用はなくなるのかなという気がしますが、しかし、どうして私的な利益について事前に当事者で決めておくことができないのかよくわかりません。

ちなみに、小説「ハゲタカⅡ」の主人公の鷲津政彦氏が、ホライズン・パートナーズから首切りにあったときに、1億ドル(1ドル100円で計算すると100億円)の大金が支払われる任用契約が締結されていたわけですが、この判例に従えば、鷲津氏がさらに稼げるようだと、100億円を超えて、ホライズン・パートナーに損害賠償請求をすることができるという結論になりそうですね。

ただ、金融・商亊判例のこの判例の解説部分には、

「なお、損害における判示であるが、本判決は、取締役任用契約において、会社の無条件の解除権や解除された場合の処理が具体的に規定されていることをもって、当該取締役の任期に対する期待権が生じないなどと秋することはできないとするが、これが、会社と役員等の特約により会社法339条2項を排除することを禁止する趣旨を判示したとまで読めるかどうかは議論の余地があろう。」
との記載もあります。

私の意見を言わせていただくと、会社と任用契約を締結するような役員は、(カルロス・ゴーン等々の)経営のプロフェッショナルであり、会社と対等な力関係の場合が多いでしょう。したがって、「会社と役員等の特約により会社法339条2項を排除することを禁止する」必要など全くありません。我が国では「契約自由」が原則なのですから、裁判所は、会社と役員等との間の契約を尊重すべきであり、任用契約中で会社法339条2項の適用が排除されているのであれば、当然、それは認められるべきでしょう。

厚生労働省における「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」が、平成29315日、法整備に向けた論点整理の報告書を公表しました。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000155434.pdf

 

この同一労働同一賃金の法整備に関して、「立証責任」を労働者が負うのか、使用者が負うのかという点が、一論点として注目されていましたが、上記報告書においては、「主な意見」として、以下のとおり整理されています(報告書4頁・(2))。

 

====

いわゆる「立証責任」については、待遇差の合理性・不合理性は、法的には「規範的要件」と呼ばれるものであり、いずれにせよ労使双方が主張立証し、裁判官が判断するものである。一方で、現在議論されているのは、「法律用語」としての「立証責任」ではなく、①不合理性を立証する現行法を維持するのか、②合理性を立証する EU 式に変更するのかの違いとして捉えられる「一般用語」としての「立証責任」が論点とされた上で、②(EU式)への変更は問題が大きいのではないかという意見があった。

また、「立証責任」より説明義務の強化こそ、労使間の情報の偏在を解消することで裁判における不合理な待遇差の是正を容易にするという意見があった。

説明義務の強化の必要性については概ね意見の一致が見られた。説明義務の具体的内容を明確化する必要性についても一致した指摘があった。そのほか、説明義務の履行に関する実務上の問題に関し、待遇差を説明する際の比較対象労働者を雇用管理区分単位とすることについて複数の意見があり、また、説明時期を雇入れ時とすること等についての意見があった。

====

 

上記報告書でいうところの「『一般用語』としての『立証責任』」って何?(一般用語で、立証責任なんて使われていないのでは・・・)と思ったのですが、ここの表現の仕方はともかくとして、法規定の内容(仕方)の問題のことが議論されたという点は納得です。

具体的には、①不合理性を立証する現行法を維持するか、②合理性を立証するEU式へ変更するか、ということになりますが、私は、①が妥当であり、不合理であることの立証責任を労働者が負うべきであると考えます。


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2017年4月11日17時59分配信の産経ニュースより

「衆院法務委、12日の民法改正案採決で合意
衆院法務委員会は11日の理事懇談会で、12日に債権に関するルールを大幅に見直す民法改正案の採決を行うことを正式に決めた。」

今回の民法改正案が初めて国会に提出されたのが2015年3月ですので、はや2年が経過してしまいました。
この改正案自体の審議に時間がかかったというよりも、その時々で、政局的な話題が色々とあり、時間がかかってしまったということでしょうか。業界的には一時の熱が冷めている感もありますが、わたくし的には、民法の改正に大賛成ですので、今度こそ法改正を実現してほしいと思います。


家を購入する場合は、一軒家にするかマンションにするか、という論争がありますが、こと建替えの「自由度」に関しては一軒家に軍配が上がります。

 

家が老朽化して建替えをしようと思ったとき、一軒家であれば法的には所有者の意思で自由に決められます(家族や親族の様々な意見はあるでしょうが)。

マンションでも、区分所有者全員の同意があれば建替えは可能ですが、通常マンションは何十戸、今流行りのタワーマンションであれば100戸を超える戸数を有しており、区分所有者一人一人の思惑があるため、一致した意思形成を行うことは非常に困難です。

 

それではマンションの建替えをするにはどうすればいいのかというと、マンションの集会で「区分所有者及び議決権の各5分の4以上」の多数の賛成を得ることにより建替えの決議をすることができます(区分所有法62条)。マンションの議決権というのは、各区分所有者の専有部分の割合で決まり(同法38条)、専有面積が大きければそれだけ議決権を多く持っていることになります。

しかし、一般に単に集会を開催するための定足数(マンション標準管理規約に則り半数以上としていることが多いです。)を充たすことすら難しいという傾向がある中で、この「区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数の賛成」を得ることは相当に難しいことが分かります。

当然ですが人は重大な決断をすることを嫌いますから、建替えという大きな決断をしたがらない人が多数出てしまうことは想像に難くありません。

その上、もし「建替えに一戸数千万円の負担金が必要です。」と言われてしまったら、もはや建替えの「5分の4以上の多数の賛成」を得ることはほとんど不可能になってきます。

 

もし賛成を得たければ「餌」が必要で、例えば負担金はゼロで、建替えて新築に住めますよ、という話が出れば乗ってくる人がいそうです。負担金をゼロにするためには企業の力が必要で、デベロッパーと契約(等価交換契約)をすることで、これが実現するケースもあります。この契約は、従前のマンションの権利と、再建マンションの権利との交換を行うもので、一旦土地の権利はデベロッパーに移り、マンションが再建されたときに、再び各区分所有者に割り当てられるというものです。デベロッパーは、今よりも大きいマンションを建設し、割り当てた後、残りの部屋を売却して利益を得ます。いわば余剰の容積率をお金に換えるというものです。

しかし、当然ながら余った容積率がなければならず、また容積率が余っていたとしても、デベロッパーのほうで売却が難しいと判断されてしまったら実現はできません。

ちなみに、近年マンションの建替え等の円滑化に関する法律が改正され、特定行政庁から耐震性不足の認定がされれば、容積率制限の緩和というボーナスが得られる場合があります。

 

借家人がいる場合の問題や抵当権の問題(建替えをしたら抹消される)等もありますが(これらについては上記円滑化法によって一定の手当てがなされている)、以上のように、まず「5分の4以上の多数の賛成」を得ること自体が非常に困難です。

デベロッパーがつきやすい都心の好立地のマンションを除けば、マンションの建替えをするには相当のハードルがあることが分かります。

 

それでは、立法も行政も、マンションの建替えを円滑化する方向(デベロッパーとの協同を円滑に行う方向)にいけば良いのかといったら、近い将来の空き家問題(住宅の3分の1以上が空き家になるという問題)を考えると、建替えを円滑化して単純にマンションの戸数を増やすことは必ずしも良いとは限りません。

 

この問題は、マンションを売りたい建設業界、住宅ローンで利益を得たい金融業界の思惑もあり、場合によっては政治的な部分も大きいですが、重要な社会問題であるため、今後もこの問題の動向に注目しなければなりません。

ここ数日,てるみくらぶの破産に関連して多くの報道がされていますが,ネットニュースなどを見ていると,会社が破産すると何が起きるのかについては,あまり認知されていないように感じました。

今回は,会社が破産するとはどういうことか,基本的は事項を振り返りたいと思います。

 

 まず,そもそも会社はどのような場合に破産することができるのでしょうか。

法人が破産できるのは(例外もありますが基本的には)「支払不能」の場合,又は「債務超過」の場合です(破産法161項,151項)。「支払不能」については破産法211項に,「債務超過」については破産法161項にそれぞれ定義規定があるので,詳細はそちらをご覧いただきたいのですが,大雑把に言うと,会社が破産できるのは,会社が持っている財産では会社が負っている債務を弁済しきれない場合ということになります。

 このような事情があると認められる場合,裁判所は,会社からの破産手続開始の申立てに対して,破産手続き開始の決定を出します。

 

 破産手続きが開始されると,弁護士の中から破産管財人が選任され,会社財産をすべてかき集めて債権者に分配する作業を行うことになります。この時,会社財産の管理処分権は破産管財人に専属することになります(破産法761項)ので,会社が普通に営業していた時とは異なり,役員や従業員の判断で会社財産を支出することはできなくなります。つまり,てるみくらぶの例でいえば,顧客が会社に対して旅行代金の返金を求めても,会社には財産を管理処分する権限がないため,会社から顧客に対して返金をすることはできないということになります。

 

 会社から返金してもらえないのであれば,破産管財人に返金してもらえばよいのではないかと思われるかもしれませんが,破産管財人も好き勝手に返金をすることはできません。破産手続きが開始しているということは,通常は,会社財産をすべて集めたところで,会社の債権者全員に分配するには足りないという状況にあります。このような状況で破産管財人が好き勝手に返金を始めると,返金を受けられる債権者と受けられない債権者が出て,不公平になります。これを防ぐため,集めた会社財産を誰にどのような順番で渡すかは,法律で決められており,破産管財人はこれに従って会社財産を分配することになります。

 

 会社財産の分配方法についても少し触れておくと,原則として,債権者は平等ですので,集めた会社財産は債権額に応じて按分して債権者に渡されます。たとえば,会社に対して300万円の債権を持つ債権者A100万円の債権を持つ債権者B2人がいるとして,集めることができた会社財産が100万円であれば,ABには,それぞれ75万円と25万円が渡されることになります。

 しかし,例外的に,優先して会社財産の分配を受けることができる債権が存在します。たとえば,公租公課や破産の手続きを進めるのに必要な費用等(財団債権 破産法1481項)、会社の従業員が持つ労働債権の一部等(優先的破産債権 破産法981項)の債権は、優先的に分配を受けることができます。

 集められた会社財産は、まず優先的に分配を受けることが出来る債権の弁済に充てられ、その債権の弁済後に残った財産が、一般の債権を持つ債権者への弁済に充てられることになります。したがって、一般の債権を持つ債権者が、破産管財人に対し、優先的に分配を受けることができる債権よりも先に自身に財産を分配するように要求したり、自身の債権を優先的な債権と同等に扱うように要求したりしても、破産管財人がこれに応じることはありません。

 

 このような形で会社財産の分配が終わると破産手続きは終わることになります。

 個人の破産の場合,破産手続きが終われば(免責という手続が別途必要ですが),基本的には借金が真っ新な状態になって再スタートということになります。

 しかし,会社の場合はそうではありません。会社は破産手続きの開始決定と同時に解散し(株式会社について会社法4715号,持分会社について会社法6416号),清算の手続きをとることになります(株式会社について会社法4751号,持分会社について会社法6441号)。そして,最終的には消滅します。会社の場合は,個人の場合と異なり,破産手続きの開始決定を受けた時点で,もう2度と事業活動ができないことになりますので,会社にとって破産というのは相当重い選択になります。会社債権者にとっても,破産手続きが,会社に弁済を求める最後の機会ということになりますので,破産手続きの公正性については高い関心が寄せられることが多いでしょう。

 

 会社の破産は,当該会社やその関係者にとって非常に重大な出来事です。会社破産関連の報道等がありましたら,この記事を思い出していただき,ぜひ注目して見て頂ければと思います。

現在、法務省の法制審議会民事執行法部会において、「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されている。

民事執行法上、債務者財産に関する情報を取得する制度としては、債務者本人に自分の財産を開示させる「財産開示制度」というものがある。しかし、この制度は、平成15年の法改正で導入されてから毎年1000件前後しか利用されず、しかも実際に債務者から開示されているのは全体の約35%(平成27年)にとどまっているという。つまり、使い勝手が悪い上に、実効性がないのだ。そこで、現在、前述の民事執行法部会では、財産開示制度の実効性を高めるために、その「見直し」が審議されている。
ただし、そもそも論として、債務者自身に自分の財産を開示させる制度には限界があると考えられるため(債務者には財産を開示しようとするインセンティブがない。)、その「見直し」と同時に、先ほどの「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されているというわけなのである。

私は、この方向性には大賛成で、民事執行法部会には、是非とも使い勝手がよく、実効性のある制度を作ってほしいと願っている。ただ、法務省の同部会のページを除いてみたところ、ちょっと気になった点があるので、その点を書いておきたい。

同部会の委員には、大学教授、弁護士、裁判官、法務省の役人、労働組合関係の方、消費者団体の方など、そうそうたるメンバーが顔をそろえ、委員会では自己の専門的な知見を披露しているようである。きっとそれらの知見を参考にして、部会の事務局サイドが具体的案をまとめていくのであろう。

それはそれでいいのではあるが、ただ、具体的な制度を作った場合、どれくらいの利用者が想定されるのかとか、銀行には毎月どれくらいの照会がいくことになるのかとかをきちんと数字でシミュレートしておいた方が良いと思うのだ。この辺のところは、裁判所や公証人役場で1年間でどれだけの債務名義が作られていいるのか?そのうちどれだけ強制執行の申し立てがあるのか?現在、弁護士会照会で3大メガバンクにどれくらい照会がなされているか?というようなところから、大体の推計値が出せるのではないだろうか。

このような数字は、制度利用者の中に確定判決等の債務名義所有者だけでなく、執行証書(公正証書)の所有者も含めるべきかとか、銀行の手数料をどうするかという議論にも大きな影響を与えると思う。この制度にかかわる裁判所の人員をどれだけの規模にしたらいいのかを考える上でも必要であろう。何よりも、財産開示制度のときのように、蓋を開けてみたら、あまり使われず、しかも、あまり役に立たなかったなんて不名誉なことを避けられるだろう。

もし既にやっているのであればすみません。

是非、民事執行法部会には良い制度案を作ってほしいと期待しています。よろしくお願いいたします。

1 ビットコインのハードフォーク問題

ビットコインですが、今一番ホットな話題がハードフォーク問題です。これは、ごくごく簡単に言えば、ビットコインが、2種類に分裂する「かもしれない」という問題です。以前から、問題として指摘されていましたが、ここに来て、ハードフォークの現実的な可能性が高まっています。

例えば、世界のビットコイン取引所各社がハードフォークをした場合の取り扱いについて声明を発表しするなどし(https://corp.zaif.jp/info/4055/)、また、ビットコイン相場も、ハードフォークを懸念して、1BTC=14万円台だったビットコインの価格は、今月中頃から、暴落し、10万円台まで下がりました(なお、その後若干上昇し、現在12万円台[平成29年4月4日現在]で取引されています。)。

2 ハードフォークとは何か

では、今回問題となっているハードフォークとは、一体何なのでしょうか。ハードフォークという言葉の意味自体は、「互換性がないバージョンアップ」、程度の意味ですが、それだけでは何のことかさっぱりかと思います。

以前、イーサリアムのハードフォークについてご説明しましたが、イーサリアムのケースと今回のビットコインのケースは、また、ニュアンスが異なります。

こで、(誤解をおそれず、生じる結果に着目すれば)今回問題となるビットコインのハードフォークとは、

・従来のビットコイン(BitcoinCore)の取引台帳を使って、別の仮想通貨(BitcoinUnlimited)を作ろうとする動き

と説明することができます。

例えば、現在、ビットコインの取引台帳(ブロックチェーン)上に、Aさんが10BTC(ビットコイン)持っている旨が記録されているとします。この台帳を使って、別の仮想通貨であるBitcoinUnlimited(単位は「BTU」と呼ばれます。)ができるとします。そうすると、Aさんは、自動的に、

・新しくできた仮想通貨の10BTUを持つ

ことになります(BTUは、従来のBTCの取引台帳を引き継ぐため)。このような状況が、今、将に起きようとしています(但し、現時点での予想ですので、実際、どのような動きとなるか、未知数の部分がございます。)。

3 なぜハードフォークが問題となっているのか

では、なぜ、ビットコインのハードフォークが問題となっているのでしょうか。これは、ビットコインの技術的な問題に由来します。

ビットコインは、ブロックが数珠つなぎになった「ブロックチェーン」と呼ばれる取引台帳を使っています。このブロックチェーンには、日々、新たなビットコインの取引が記録され、ブロックが追加され続けています。しかし、現状、ビットコインのシステムでは、1つのブロックのデータサイズが決まっている(1MB)ため、近年増加したビットコインの取引量に対応できなくなりつつあります。

そこで、1つのブロックに、今まで以上の取引を記録するため、様々な解決案が検討されました。


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