最近、最高裁で興味深い判例(最高裁平成29131日判決がありました。

 もっぱら相続税の節税目的で養子縁組を利用する、「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」と判断したものです。「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」なんて、とても法律家チックな言い方ですが、要するに、「もっぱら相続税の節税目的で養子縁組しても原則として縁組は有効ですよ。」という意味だと思っていただいて結構です。

 

 相続に関心がある方であればご承知のとおり、相続税の基礎控除額は、現在、


               3,000
万円+600万円×法定相続人数

 

で計算されます。
 したがって、おじいさん・おばあさんと孫を養子縁組させて、
おじいさん・おばあさんの法律上の子供(=定相続人)を増やしておけば、おじいさん・おばあさんが亡くなったときも、相続税の基礎控除額が大きくなり、それだけ節税効果が得られます。

 もちろん、税務当局側も対策を立てていて、相続税法上、養子縁組で相続人にできる人数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人しか認められません。しかし、いずれにしても養子縁組により600万円から1200万円は相続税の基礎控除額を増やすことができるのです。そのため、ある税理士法人によれば、相続財産額が5億円以上を超えるケースの相談において、節税対策に養子縁組が使われていたのは約4割にものぼるようです。

 相続の分野では、節税対策としての養子縁組が定着していると考えてよいでしょう。

 

 しかし、養子縁組制度が、このような使われ方をしているのはちょっと変ではないでしょうか?そこでちょっと調べてみたのですが、そもそも我が国の養子縁組制度は私のイメージとはかけ離れていました。

 一橋大学経済研究所の森口教授によると、日本では年間で約8万件もの養子縁組がされています。日本の2倍以上の人口を有するアメリカの養子縁組の件数が11万件ということですので、いかに日本の養子縁組の数が多いかわかるかと思います。

 しかし、その内容は全然違います。日本では、67%が婿養子など大人を養子にとる「成年養子」だというのです。その他は、25%が配偶者の子供を養子にする「連れ子養子」、7%が孫や甥、姪を養子にする「血縁養子」。血族でも姻族でもない子供を養子にする「他児養子」はわずか1%に過ぎないといいます。

 これに対して、アメリカでは養子の対象はほぼすべて未成年だといいます。そのうち40%が「連れ子養子」、10%が「血縁養子」ですが、残りの50%は「他児養子」だといいます。

 なぜこのような結果になっているかですが、日本の養子縁組制度は、基本的には家名や家業の承継(お家の存続)を目的にするための制度になっているとの理解がされています。えっ、「お家」って、まだそんなに強く残っていたの?という感じですが、まだまだ根強いようですね。

 これに対して、アメリカの場合は、基本的には、さまざまな理由で実親の保護に恵まれない子供たちに新しい家庭を与える制度として機能しているということのようです。

 

 まぁ、それぞれの国の歴史や文化を反映して今の制度になっているのでしょうから、どちらが優れている・劣っているというような問題ではありません。ただ、日本では結婚の高齢化などもあり子供がいない夫婦が増えていますし、他方で、不幸にも養護施設に長期間滞在せざるをえない子供たちも多いと聞いていますので、なんとか養子縁組を「要保護児童に家庭を与える制度」として活発に利用できないものでなんですかね?

2017119日日本経済新聞電子版から

 

「みずほ銀行は民事裁判の支払い義務を果たさない債務者の預金口座情報について、債権者からの請求に応じて開示を始めた。確定判決や和解調書など債務の存在を確認できる文書を示し、弁護士を通じて照会することが条件。既に三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行は開示しており、3メガ銀の対応がそろった。」

 

「ただ応じていない金融機関もあり、法務省は裁判所が開示請求できるよう法改正する方針だ。」

 

わざわざ裁判までして、債務者に金銭の支払いを命じる判決を得たのに、現状、債務者が預金口座をどこかの銀行に移してしまうことにより容易に強制執行を回避できる結果となってしまっていることは以前このブログでも触れたとおりです(実際、裁判で多額の支払いを命じられておきながら、かなり経済的に恵まれた暮らしをしているように見られる方が散見されます。)。
これは、債権者が債務者の口座情報を調査する手段がないことに起因しています。

債権者側の対抗手段としては、弁護士を雇って、弁護士法32条の2が定めている弁護士会照会制度を使い、各弁護士会を通じて、債務者の口座があるか銀行に照会することが考えられますが、これまで多くの銀行では、顧客情報の保護を理由にこの照会に対する回答を拒絶していました。


しかし、この記事にあるように、現在、確定判決や和解調書があることを条件としていますが、三菱東京
UFJ銀行、三井住友銀行及びみずほ銀行の3メガ銀行が、弁護士会照会に対応していただけるようになっています。

 

私は日本社会のあり方として、裁判をして確定判決まで得たのに、債務者の口座情報を調べる手段がなく、判決が絵に描いた餅になるなどということはおかしいのではないかと思っています。裁判所に金銭の支払いを命じられても支払わない債務者の口座情報をそこまで保護する必要はないのではないかと。そういう観点からすると、この3メガ銀行の判断は素晴らしいと思います。行内でいろいろな意見があったのだろうと想像しますが、あるべき日本社会を見据えたまさに英断だと思います。弁護士会がメガ3銀行と協定を締結することによりこのような対応が実現したとのことですので、弁護士会の努力にも感謝したいと思います。

 

記事の最後のところで、「法務省は裁判所が開示請求できるよう法改正する方針」とのことなので、今後民事執行法の一部改正を睨みながら、いろいろな動きが出てくると思います。その点も注目ですね。

 

なお、弊事務所ではさっそくこの弁護士会照会制度を使わせていただきました!

群馬県太田市と栃木県足利市、この隣り合った半径10キロ圏内の地域で、1979年から1996年までの17年間に、犯行の手口が似通った次の5件の幼女誘拐殺害事件(北関東連続幼女誘拐殺人事件)が起きる。

1.1979年 栃木県足利市  MFちゃん  5

2.1984年 栃木県足利市  YHちゃん   5

3.1987年 群馬県尾島町  TOちゃん  8

4.1990年 栃木県足利市  MMちゃん   4歳

5.1996年 群馬県太田市  YMちゃん    4

このうち、4.のMMちゃんについては、幼稚園の送迎用バス運転手の菅家利和さん(当時45歳)が逮捕され、現場に残された精液のDNA型鑑定が決定的な証拠となり無期懲役となった。菅家さんは、1から3の事件についても自白をしていたから、起訴はされていないものの、世間的には1から4はすべて菅家さんがやったものというふうに思われていた(5については、遺体も発見されていないので別事件と思われていた。)。

 

ところが、菅家さんが17年間も刑務所で服役した後の2009年になって、菅家さんの再審請求に基づきもう一度、現代の進んだ技術のもとでDNA型の鑑定をしてみたら、現場に残された精液と菅家さんのDNA型が違っていたことが判明し、菅家さんは再審無罪となった。以上は、有名な足利冤罪事件であり、当時大々的に報道されたので、ご存知の方も多いだろう。

 

この本は、この足利冤罪事件の裏に何があったかを日本テレビの調査報道の記者の清水潔さんが書いたものだ。正確にいうと、何があったかを書いたというよりも、清水さんは、独自の取材により初めから菅家さんは冤罪だと気が付いて、日本テレビで冤罪キャンペーンを打つなどして、ほぼ当事者的に活動する。そして、菅家さんの再審無罪を勝ち取るだけではなく、なんと真犯人(「ルパン」似の男。以下「ルパン」という。)の存在まで突き止めて、その情報を検察・警察に流し、逮捕させようと尽力する。その中で、警察や検察の自己保身や、マスコミの捜査当局との癒着など様々な問題点が明るみになるのだ。

 

ノンフェクション物ではあるが、ミステリー小説のような面もあり(実際、ノンフェクションなのに、ミステリー賞も受賞している。)、読者にぐいぐい読ませる。下手な小説よりもよほど迫力もある。私はこの本の存在を知っていたのに、なぜこれまで読まなかったのか?と本当に後悔した。読んで絶対損のない本です。

ぜひぜひ一読をお勧めします。

 

(以下、ネタバレです。)

この本には、我々法曹に対する重大な問題提起を含んでいます。それは、清水記者が真犯人を突き止めて、犯人が現場に残したDNA型とルパンのDNA型が一致しているという証拠もあるのに、検察・検察が動かず、いまだにルパン似の男が裁かれもしないで毎日パチンコでもしながらのうのうと暮らしていることです。

それで良いのか?ということになります。良いわけありません。

 

ただ、問題は、はたして「犯人が現場に残したDNA型とルパンのDNA型が一致している」といえるのか?というところなのです。

 

清水さんの主張は次のとおりです。

菅家さんの足利冤罪事件の再審では、弁護側のDNA型判定(本田鑑定)と検察側のDNA

型鑑定(鈴木鑑定)が行われていて、本田鑑定によれば、被害者のMMちゃんのシャツ(犯人の精液が付着している。)からは、そもそも事件当初に科警研(科学警察研究所)が行ったDNA型鑑定で犯人のDNA型とされた18-30とは別のDNA型18-24が検出されており、その18-24とルパンのDNA型が合致する。だからルパンは真犯人なのだ、というのである。

これに対して検察側の見解は、信頼できるのは検察の依頼により行われた鈴木鑑定であり、鈴木鑑定では、18-24などというDNA型は出されておらず、したがって、真犯人のDNA型は科警研鑑定の18-30であり、ルパンの18-24とはDNA型において異なる(つまりルパンは真犯人ではない)、というのだ。

これに対しては、さらに清水記者の反論があり、科警研の当初鑑定では、被害者(MMちゃん)のDNA型鑑定が行われていない。そこで、MMちゃんのへその緒からMMちゃんのDNA型鑑定をするとともに、MMちゃんと日ごろから接触していた母親のDNA型判定をしてみると、MMちゃんは18-31及び母親は30-31だった。つまり、科警研の当初の18-30というのは、このMMちゃんと母親のDNA型を掘り当ててしまった結果なのではないか?というのだ。

では、どっちの主張が正しいのか?

これは簡単なことで、まだMMちゃんのシャツ(真犯人の精液がついている。)が残っているので、最新の技術を使って、もう一度DNA型鑑定を行い、18-24が検出されるか確かめればよいのだ。本田鑑定と鈴木鑑定は、同じシャツといっても別々の箇所を資料としているので、本田鑑定で検出された18-24型が鈴木鑑定で検出されないことはあり得る。したがって、もう一度行ってみればよいだけのことなのだ。

しかし、そのシャツは現在検察が押収したままなのに、再鑑定は行われず、かつ、MMちゃんの母親に返却もされない。MMちゃんの母親が返却を要請しても、「MMちゃんの父親(妻とは離婚している。)が『検察がもっていてくれと。』と言っている。」との理由から、検察は返そうとしないのだという。そして、北関東幼女連続誘拐殺害事件の真犯人(ルパン)も逮捕しようとはしない。

このような事態について、清水記者は、もし、科警研が真実ちゃんや母親のDNA型を犯人のものと間違ったのであれば、科警研の信用は地に墜ち(きわめて初歩的なミス)、既に刑が執行されている福岡の飯塚事件などの他の事件にも波及する可能性があるから、検察、警察、科警研にとっては絶対に認められない一線であり、北関東幼女連続誘拐殺害事件の真犯人を逮捕するよりも、検察、警察、科警研の信用を守る方が重要だと判断しているのだと推測している。

 

で、実際のところはどうなのでしょう?

 

私は、自分も含め、あらゆる人はボジション・トークを免れないと思っています。弁護士という職業柄、ポジショントークであることすら気が付かず、心の底から嘘を真実と思って主張されている方にもときどき出会います。過去の警察や検察の不祥事のときに、警察や検察が組織防衛に走ったことも知っています。だから、清水記者の推測にも一理あるとは思うのです。

 

ただ、本当にそうなのかな?本当にそうだとすると、法曹の一人としてあまりにも悲しすぎます。いやいや、過去の検察官による証拠偽造事件のときも、検察内部から隠ぺいを告発する声はあったので、そこまで腐ってはいないのではないかな(個人的に信頼できる検察官を知っていますしね。)。というわけで、検察・警察の関係者(現役は無理だろうから、OB等々)から、この清水記者の本に対する反論を出してもらいたい、というように思います。そうでないとこの本の内容が真実になってしまうような・・・

ここ数ヶ月前から、弊事務所の隣のビルの解体工事を行っているようで、時々耳を塞ぎたくなるほどの激しい騒音がします。

もうしばらくは、この騒音と付き合わなければならないことを考えると、思わずため息が出ます。

 

騒音は、いわゆる典型7公害に数えられるものですが(他は大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、進藤、地盤沈下及び悪臭。環境基本法23項参照。)、今回のようなビルの解体工事の場合等、ビルの周辺住民・勤務者くらいしか被害者がいないものでもあっても(航空機の騒音は何千何万人もの人々が被害者となります。)、公害として法的救済が求められることに争いはないでしょう。

 

さて、騒音に対して日々悩まされている弊事務所は、どのような救済を求められるのかが問題になってきます。

騒音に対する救済は、大きく分けて行政的な救済(公法上の規制)と私法上の救済の2つがあります。

まず行政的な救済(公法上の規制)について検討すると、建築工事の騒音は、騒音規制法によって規制されておりますが、建築工事のうち、くい打機やブルドーザーの使用等、著しい騒音を発生する「特定建設作業」のみ規制しています。もっとも、条例で規制できる作業を追加することが可能で、東京都はコンクリートカッターを使用する作業や一定の方法による解体・破壊作業も規制しています。

建築工事の際に、騒音基準(85デシベル以下等)に適合しない等した場合には、解体業者に対して、知事ないし市町村長から是正勧告をすることができ、それに従わない場合には騒音防止方法の改善・作業時間の変更についての命令を行うことができます(騒音規制法15条)。

ただし、残念ながら、改善勧告が行われることは少なく、改善命令に至っては実務上ほとんどないため、仮に騒音基準に適合していない場合であっても、この救済は難しいでしょう。

 

私法上の救済については、精神的肉体的苦痛を根拠に、人格権等の侵害があるとして、不法行為(民法709条)に基づく慰謝料請求を検討するのでしょうか。しかし、受忍限度論というものがあり、これは騒音行為の態様や程度、被害内容、地域性等から考えて、この程度の騒音は我慢しましょうという裁判上の議論があります。

この受忍限度論を考えると、本件の騒音は毎日あるものではなく(これを書いている今日はなぜか静かです。)、日々ビルの建築・解体が行われている地域性等からすれば、今回の騒音は受忍限度の範囲内(我々が我慢しなければならない限度内)という判断になりそうです。

 

やはり、本件の騒音とはしばらく我慢して付き合っていかなければならないようです。

 

ところで、音の大きさが何デシベルであるかどうかは、かつては騒音計がなければ分からなかったのですが、最近はスマートフォンのアプリで音の大きさを測れるアプリがあるようです。精度は分からないですが、騒音基準以内かどうかの参考にはなるのではないでしょうか。

最近は、裁判の証拠にLINEが出てきたりするので、何でもかんでもスマートフォンアプリで裁判の証拠を提出する時代が来るかもしれませんね。

 

政府が、「働き方改革」を進めようとしており、現在、厚生労働省が意見募集を行っています。
127日までに、電子メールか郵送で受け付けるとのことですので、関心のある方は次のURLからぜひ。)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000148414.html

 

日経リサーチの調査によれば、上場企業301社の7割超が「長時間労働の是正」を働き方改革の最優先課題としているとのこと。長時間労働等による痛ましい事件が昨年起きましたし、長時間労働の是正は、直ちにおこなわなければならない問題です。

 

ただ、解くべき(本質的な)課題は「長時間労働の是正」ではなく、組織全体としての「生産性の向上」にあるという指摘があります。

日本の生産性の低さは皆さまご存知のとおりです。昨年1219日にリリースされたレポート(次のURLご参照)でも、その低さを露呈しています。

http://activity.jpc-net.jp/detail/01.data/activity001495/attached.pdf

就業者1人当たりでみた労働生産性は、OECD加盟35か国中22位であり、主要先進7か国の中では最下位をひた走っています(悲)。

 

ここで、ぜひ皆様におすすめしたい書籍、それは『生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(ダイヤモンド社)です。マッキンゼーで人材育成、採用マネージャーを務めた伊賀泰代さんの著書。書店にいっても、ランキング上位で紹介されていますので、今、売れている本です。



 

伊賀さんは、この本の中で、長時間労働の問題について、以下のように喝破しています。

「現在、長時間労働は企業にとっても社会にとっても大きな問題だと認識されています。たしかにそれは、『よいことではない』という意味では問題です。しかし、解くべき課題(イシュー)が長時間労働なのかといえば、そうではありません。解くべき課題は長時間労働ではなく、働いている人の生産性が低いまま放置されていることです。もしくは、売上げを伸ばす方法として、社員をより長く働かせること以外の手段を思いつかない(生産性の意識を欠いた)前時代的な経営者の意識や、それ以外の方法では付加価値を生み出せない古いビジネスモデルこそが、解くべき課題なのです。」

 

本でも紹介されている例ですが、生産性のマインドをチェックしてみましょう。

人材採用の場面を考えてください。採用目標は10人です。ところが、説明会の告知をしたところ、10人の応募しかありませんでした。

経営者や人事部門としてはどのように考えるのが、生産性の観点からは正しいのでしょうか?

50人に集めてようやく1人くらい採用できる優秀な学生が含まれている。だから、とにもかくにも、説明会の応募者数を増やそう」という量を追う発想は、生産性の観点からはもっともNG

生産性の観点からは、「どうすれば、50人に1人ではなく、2人、3人…と採用できる人材を増やせるか」という質を追う発想が正しいということになります。(具体的な施策も本では紹介されています。)

 

量ではなく、質を追う――言うは易し、行うは難しですが、質を問い続けない限り、競争力を維持できません。

そもそも生産性は、「得られた成果(アウトプット)」を「投入した資源(インプット)」で割った概念です。「競争に勝つためには、より長く働く必要がある」「人手が足りないから人を増やせばよい」という労働投入型の発想は、NG

伊賀さんは、「高い成果を高い生産性で生み出してこそ高い競争力が維持できる」という労働の質を問い続ける考えが必要であり、量ではなく質を重視し、成果の絶対量の大きさではなく、生産性の伸びを評価する組織になることが、今後の組織づくりにおける重要なポイントであると指摘しています(よくある成果主義の人材評価システムがうまく機能しないのは、成果を「質」ではなく「量」で測ろうとしているからであるとのこと。生産性を基準とする人材評価手法についても、紹介されています。)

 

また、伊賀さんは、個人レベルにおいても、「生産性が上がる」ことこそが「成長」にほかならないと言い切ります。具体的には、以下の①から④までのサイクルが繰り返されること、と。

① 今まで何時間かかってもできなかったことが、できるようになった

② 今まで何時間もかかっていたことが、1時間でできるようになった

③ 今まで1時間かかって達成していた成果よりはるかに高い成果を、同じ1時間で達成できるようになった

④ ②や③で手に入った時間が、別の「今までは何時間かけてもできなかったこと」のために使われ、①に戻る

 

 

2017年、私は、チャレンジの1年にします。限られたリソースでさまざまなことを達成していきたい、だからこそ、「生産性」をテーマにしたい、しなければならないと考えています。

記事の最後に、「働き方改革」というテーマに戻って、伊賀さんのメッセージを引用致します。

 

「『働き方改革』の最大の目的は『生産性を上げること』です。人口は三割以上も減ってしまいますが、これだけ多くの革新的な技術が実用化されようとしている今、人口減少のインパクトを上回る生産性の向上を目指し、高いレベルで職業生活と個人生活を両立できる人を増やすこと――これこそが、今後の日本が目指すべき方向なのではないでしょうか。」


いつも弊所のブログをご愛読頂き、誠にありがとうございます。
 

さて、今年も残すところあとわずかとなりました。

弊所では、下記の日程で年末年始休業とさせて頂きます。

平成28年12月29日(木)~平成29年1月4日(水)

新年は1月5日(木)より業務を開始致します。
休業期間中は、ご迷惑をお掛け致しますが、何卒ご理解の程よろしくお願い致します。

皆様どうぞよいお年をお迎えください。


今月1日(平成28年12月1日)、最高裁判所の判決が出されました。

有期労働契約を締結していた短期大学の元教員が、学校法人からの雇止めを争い、労働契約上の地位の確認(雇用継続)と賃金の支払いを求めていた、以下のような事案です。

・1年間の有期労働契約を最初に締結。

・1年後に雇止め、同雇止めを争い、教員が訴訟提起

・採用から2年後に(予備的に)雇止めの通知

・採用から3年後に(さらに予備的に)雇止めの通知

・職員規程には、契約職員の雇用期間の更新上限を3年とする定め、及び、法人側が任用を必要と認めた場合には無期労働契約への異動を可能とする定め等がある

 

この事件、第一審判決(福岡地裁小倉支部平成26年2月27日)は、1回目の雇止めも2回目の雇止めも客観的に合理的な理由を欠くものとして、教員側の主張を認め、第二審判決(福岡高裁平成26年12月12日判決)では、これに加えて、第一審判決後の3回目の雇止めについても認めず、「採用当初の3年の契約期間に対する上告人の認識や契約職員の更新の実態等に照らせば、上記3年は試用期間であり、特段の事情のない限り、無期労働契約に移行するとの期待に客観的な合理性があるものというべきであ」り、教員側から「無期労働契約への移行を希望するとの申込みをしたものと認めるのが相当であ」り、法人側においてこれを「拒むに足りる相当な事情が認められない」として、無期労働契約への移行を認めました。

これに対し、最高裁判所は、3年後の雇止めは有効と認め、無期労働契約への移行は否定し、原判決のうち3年を超える部分は破棄し、当該部分の第一審判決を取り消したうえで、教員側の労働契約上の地位確認と3年経過以降の賃金の支払いの請求を棄却しました。

理由部分を一部引用すると、次のとおりです。


本件労働契約は、期間1年の有期労働契約として締結されたものであるところ、その内容となる本件規程には、契約期間の更新限度が3年であり、その満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは、これを希望する契約職員の勤務成績を考慮して上告人[法人]が必要であると認めた場合である旨が明確に定められていたのであり、被上告人[教員]もこのことを十分に認識した上で本件労働契約を締結したものとみることができる。上記のような本件労働契約の定めに加え、被上告人[教員]が大学の教員として上告人[法人]に雇用された者であり、大学の教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていることや、上告人[法人]の運営する三つの大学において、3年の更新限度期間の満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった契約職員も複数に上っていたことに照らせば、本件労働契約が期間の定めのないものとなるか否かは、被上告人[教員]の勤務成績を考慮して行う上告人[法人]の判断に委ねられているものというべきであり、本件労働契約が3年の更新限度期間の満了時に当然に無期労働契約となることを内容とするものであったと解することはできない。


非常にシンプルな理由となっており、わかりやすいです。

当たり前のことですが、労働契約の内容(規程の整備)、そして運用の実態がポイントとなることがよくわかります。

最高裁判所の判決全文は、以下のURLからご覧いただけます。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86307

「主文」があり、次に、その「理由」が記載されています。理由欄は、「よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。」と一度締めくくられつつ、「なお、裁判官櫻井龍子の補足意見がある。」として補足意見が付されています。

最高裁判決に表示される意見には、「意見」「補足意見」「反対意見」の3種類があります(なお、これらの意見が表示される根拠は裁判所法11条)。

・意見とは、主文に賛成であるが理由が異なる場合の個別意見。

・補足意見とは、主文及び理由に賛成であるが、なお補足した個別意見。

・反対意見とは、主文に反対である場合の個別意見。

 

櫻井裁判官の補足意見は、その冒頭で述べられているとおり、「近年、有期労働契約の雇止めや無期労働契約への転換をめぐって、有期契約労働者の増加、有期労働契約濫用の規制を目的とした労働契約法の改正という情勢の変化を背景に種々議論が生じているところであるので、若干の補足意見を付記しておきたい。」として、展開されています。櫻井裁判官は、労働省でのキャリアを有する行政官出身の裁判官です。定額残業代の最高裁判決やマタハラの最高裁判決でも、補足意見を書いていらっしゃいます。

 

今回の櫻井裁判官の補足意見の内容の当否は措くとして、そもそも補足意見を書くことの意義はなんだろう?と思いました。すごく難しいところがあります。補足意見が出されると、それは法廷意見ではないとしても、やはり実務では注目しますし、影響を及ぼすこともあります。

確かに、法廷意見が形成された合議の内容を示唆し、法廷意見をより深く解釈するために有益な場合はあると思います。ですので、積極的な(プラス)評価もできます。が、しかし、事案から離れて本当に個人的な意見を書かれてしまうと、裁判所の役割からしてどうなのかな?という違和感も拭えませんし、実務に混乱を招く可能性もあるのでは?と思ったりもします。

法廷意見は、合議のうえで無駄を徹底的にそぎ落とした、いわば「ライザップ」された文章だと思いますので、「あー、言い足りない」「これも言っておきたい」という思いが個人的に生じることは想像できるのですが、他方で「書きすぎにはならないか」、という意識もお持ちいただくことも重要では、と思ったりします(私が言うのも大変烏滸がましいのですが、、、)。

皆様、どう思われますか。

気付けば、もう、12月に入り、来年も近づいてきましたね。年末年始の予定は、既にお決まりでしょうか。

来年は閏年ならぬ「閏秒」の年だそうで、1月1日の8時59分59秒の次に、8時59分60秒が挿入されるそうです。

「年始早々、1秒得できて超ラッキー☆」みたいに思いますが、ちょっと注意が必要です。数年前の閏秒の際には、某SNSなどの一部のサーバーが、閏秒に対応できず、サイトにアクセスできなくなったことがありました。どうしてもインターネットを使わなければできない用事がある方は、念のため、年内に済ませておいたほうが良いかもしれません。



 さて、最近のビットコインの動向ですが、11月25日、世界4大会計事務所の一つであるアーンスト・アンド・ヤングのスイス支社は、来年から、ビットコインでの報酬支払を受け付けると発表しました(http://www.ey.com/ch/en/newsroom/news-releases/news-release-ey-switzerland-accepts-bitcoins-for-payment-of-its-services)。アーンスト・アンド・ヤングは、日本では新日本有限責任監査法人がメンバーファームとなっていますね。

こういった国際的な会計事務所などでビットコイン決済の採用が進むと、国内にも、ビットコイン決済が徐々に浸透してゆくのかもしれません。



また、投資の対象としても注目されているビットコインですが、最近、価格の上昇が目を引きます。

今年の8月には、香港の取引所(Bitfinex)へのハッキングにより、数十億円相当のビットコインが盗まれ、ビットコインの相場は、日本円で1BTC=5万円代にまで下がっていました。しかし、現在(平成28年12月8日時点)の取引価格をみると、なんと、日本円で1BTC=9万円を超える価格にまで上昇しています。

そもそも、今年のはじめには4万円台だったので、1年で約倍になっています。



このような値上がりの背景には、米国大統領選、中国人民元への不審、インドでの高額紙幣廃止によるルピーへの不審などが影響していると囁かれていますが、それにしても大きな価格上昇です(もちろん、下がるときは、大きく下がりますが・・・。)。

ビットコインの値動きについては、多くの取引所が、価格の推移(チャート)を公表し、リアルタイムの価格がインターネットですぐ分かるようになっています。これらのチャートを見ていると、なんだか、外貨の値動きを見ているような感覚になります。現状では、個人の方にとって、「ビットコインって、結局何なの?」という問いに対し、「インターネット銀行で、外貨を買うようなもの」という答えが一番しっくり来るのかもしれません。外貨預金をされている方もいらっしゃるかとおもいますが、ドルやポンドの他に「ビットコイン」が選択肢に入ってくるのではないでしょうか。



その一方で、注意を要するのが、やはりハッキングによる被害です。ビットコインを含め、仮想通貨は、投資の対象として非常に注目されている反面、大口投資家に対するハッキングにより仮想通貨が盗まれるという被害も発生しています。直近でも、中国の投資家がハッキングを受け、約3700万円相当の仮想通貨を盗まれたなどと報道されています。


ただ、デジタルか、アナログか、の違いはありますが、お金の盗難自体は、現金でも日々発生している現象です。結局、人が集まり、お金が集まるところには、悪い奴らも集まってくる、という当たり前のことが起きているだけのように思います。


形は違えど、現金であれ、ビットコインであれ、セキュリティー対策を万全にする、ということが重要ですね。

最近「逃げるは恥だが役に立つ」(主演:新垣結衣、星野源)というテレビドラマに出てくる恋ダンスという踊りが流行っていると聞きました。恋ダンスは、主演の星野源さんが歌う主題歌「恋」に合わせて、ドラマの出演者が踊っているもので、そのダンスを一般の方だけでなく出演者以外の芸能人やスポーツ選手なども踊り、各々その動画をネットにアップロードしているようです。

 

さて、恋ダンスを踊り、その動画をネットにアップロードしたりする等して無断で公表することは許されるのか、ということについて考えたいと思います。

 

まず、恋ダンスのBGMの「恋」という曲は、著作物として著作権法上の保護を受けます(1011号、同2号)。

次に、恋ダンスの振り付け部分は、「舞踏」(1013号)に該当して著作物といえるかどうかが問題になります。ダンスの振り付けは全て著作権法上の「舞踏」に当たるかというとそうでもなく、特徴の無い簡単な振り付けであれば著作物性が否定されます。例えば、映画「Shall we ダンス?」(主演:役所広司、草刈民代)に出てくる社交ダンスの振り付けの著作物性が問題になった裁判では、ダンスの振り付けに著作物性が認められるためには「顕著な特徴を有するといった独創性」が必要であるとされています(判決では、映画の社交ダンスの振り付け部分について著作物性は否定されました)。

 

恋ダンスを見ると、ロボットみたいな動きや細かい指の動きなど、なかなか他に見たことがない振り付けですので、おそらく独創性があり、「舞踏」(1013号)に該当するとして著作権法上の保護を受けるものと思われます。

 

そうすると、恋ダンスを踊って、公衆に見せることを目的として無断でその動画をネットにアップロードすることは、原則として著作権法上の公衆送信権(23条)の侵害に当たります(なお、例えば恋ダンスを家の中で特定の数人に見せるために

踊るのであれば、公衆送信権や上演権(22条)の侵害には当たりません)。

そのため、恋ダンスを踊って、公衆に見せることを目的として無断でその動画をネットにアップロードすることは、権利者の許可を受ける必要があります。

 

著作権の帰属先は契約内容によることになりますが、特に契約で規定していない場合は、原則として著作物を作成した著作者に帰属します(ただし、職務著作の場合には会社や法人に帰属します。)。

この点について、恋ダンスの楽曲使用部分については、星野源さん所属のレコード会社が、「すでに多くの皆様が“恋ダンス”を楽しんでいらっしゃる現状を考慮のうえ、CD配信で購入いただいた音源を使用し、ドラマエンディングと同様の90秒程度の“恋ダンス”動画をドラマ放送期間中にYouTubeに公開することに対し、弊社から動画削除の手続きをすることはございません。但し、この音源を使った動画を営利目的に利用する等、その利用方法が不適切であると判断したものに関しては、予告なく削除手続きを行う可能性もございますので予めご了承ください。」(http://www.jvcmusic.co.jp/

-/Information/A023121.html?article=news132#news132と発表しており、また、ダンス部分について、振り付けを行ったMIKIKO氏(Perfumeの振り付けも行っている方。)も同じ考えであるそうです。

 

この条件を守って動画をYouTubeで公表するのであれば少なくとも動画削除の手続きはされないことになりますが、あくまでも「動画削除の手続き」をしないと述べただけなので、許可をしたのかどうか明確にして欲しかったところです。法律家としては、結局著作権法上はどうなったの?という疑問が拭えません。

 

ちなみに、著作者には著作者人格権として同一性保持権(20条)という、勝手に著作物を改変されない権利を持っています。そのため、恋ダンスとは違った振り付けのダンスを踊って、これを恋ダンスです、とは言えないということになりますので、恋ダンスを踊るのならば、キチンと踊りましょう。

最近ちょっと残念な最高裁判決(H28.10.18)があったので紹介します。

 

前提として、弁護士には、弁護士法23条の2という条文により、弁護士会を通じて、公の団体や会社等の私的な団体に対して事実の照会をすることができます。条文の記載は次のとおりです。

 

(報告の請求)

第二十三条の二  弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

 

これは、国民の権利を守るためには、弁護士にこのような照会権限を認めた方がいいだろうという判断からなのですが、ただ、個々の弁護士に照会権限を認めるのは適当でない場合があるので(悪い弁護士もいますからね。)、弁護士会に適切な照会か否かを判断させて、弁護士会を通じて照会権限を行使させようとしているのです。

 

ところが、近年の個人情報保護の高まりなのでしょうか、最近、この弁護士会照会を拒絶する団体が増えています。そのため、個々の弁護士が、拒絶した団体に対し、照会に回答する義務があるにもかかわらず回答を拒否するのは不当だとして損害賠償を求める案件が頻発したのですが、裁判所は、弁護士法第23条の2に基づく報告義務は弁護士会に対するものであり、個々の弁護士に対するものではないから、個々の弁護士に対する不法行為は成立しない(拒絶しても、照会をした弁護士に対して損害賠償を支払わなくて良い)という判例を連発したのです。

 

そこで、今度は、個々の弁護士ではなく、弁護士会自体が立ち上がりました。弁護士会が、照会を拒絶した団体に対して、損害賠償を求めるようになったのです。

事案は次の通り。

 

1.AさんがBさんに対して、株式の購入代金名目でお金を騙し取られたと主張して、損害賠償を求める訴訟を提起したところ、おそらくAさんの主張に理由があったのでしょう、BさんがAさんに損害賠償金を支払うことを内容とする訴訟上の和解が成立しました。

 

2.しかし、Bさんが和解に従って損害賠償を支払わず、かつ、住む場所も移転して(しかも住民票は移転していない)、どこにいるかわからず、ただ郵便物は転送されている形跡があったため(ここまでは、判決には記載されていない私の推測です。)、Aさんの弁護士は、強制執行準備のため、所属する弁護士会を通じて、日本郵便株式会社に対し、転居届が提出されているか及び転居届記載の新住所について弁護士法23条の2に基づく照会をしました。

 

3.しかし、(最高裁判決からは理由が不明ですが)日本郵便は、報告を拒絶。

 

4.そのため、弁護士会が日本郵政を相手に、不法行為を理由に損害賠償を求めました。

 

というのが事案の概要です。

原審の名古屋高裁は、1万円という信じられないような少額ですが、日本郵政の不法行為を認め、弁護士会への損害賠償の支払を命じました。

 

ところが、最高裁は、次のように述べて、損害賠償の成立を否定しました。

 

「23条照会の制度は、弁護士が受任している事件を処理するために必要な事実の調査等をすることを容易にするために設けられたものである。そして、23条照会を受けた公務所又は行使の団体は、正当な理由がない限り、照会された事項について報告をすべきものと解されるのであり、23条照会をすることが上記の公務所又は行使の団体の利益に重大な影響を及ぼし得ることなどに鑑み、弁護士法23条の2は、上記制度の適正な運用を図るために、照会権限を弁護士会に付与し、個々の弁護士の申出が上記制度の趣旨に照らして適切であるか否かの判断を当該弁護士会に委ねているものである。そうすると、弁護士会が23条照会の権限を付与されているのは飽くまで制度の適正な運用を図るために過ぎないのであって、23条照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するとは解されない。したがって、23条照会に対する報告を拒絶する行為が、23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはないというべきである。」

 

(以下、私の感想です。)

 

1.えっ!信じられない。とても変な理屈だ。個々の弁護士が損害賠償請求をしたら、弁護士会照会に基づく報告は照会を申し立てた個々の弁護士に対する義務ではないから、という理由で損害賠償を否定しておきながら、弁護士会が損害賠償請求をすると、今度は、弁護士会には法律上保護されるべき利益はないから、という理由で損害賠償請求を否定する。これでは、弁護士会照会制度が侵害されても、誰も利益を侵害されないということなのか???

 

2.この判決は、弁護士会の主位請求である損害賠償請求については弁護士会に法的に保護されるべき利益はないとして否定しておきながら、予備的請求である報告義務確認請求については、「さらに審理をつくさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。」などと仰っている。えっ、えっ、じゃあ、差戻審の名古屋高裁で、日本郵政に報告義務があると確認されたらどうなるの?義務違反が認定されても誰も損害賠償を請求できない?義務加害者の違反が認定されても、損害賠償も請求できないなんて、そんな法律上義務、意味ないじゃん!

 

3.法律学は科学ではないので、原審のように弁護士会には法律上の利益はあると考えることもできるし、最高裁のように法律上の利益はないとも考えることができます。要するに重要なのは価値判断です。ところで、この判決は、いったい誰のどのような利益を保護しているのだろう?詐欺の被害者であるAさんが権利の実現に苦しんでいるのに、Bさんは単に居住場所を変えることで(転送届によって郵便物もちゃんと受領しながら)のうのうと暮らしている。まさかAさんの権利実現よりもBさんのプライバシーを優先しているのではないですよね?おそらく、そうではなくて、日本郵政がいちいち照会に応じなければならない不利益を優先したのかもしれないけど、それってAさんの権利実現よりも優先すべきなのかな?それで良い社会になるのかな?この判決を出した裁判官が一回でもAさんの立場になってみれば、きっとわかると思うな。

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