1. ネット上で名誉を毀損された場合、はじめに思いつくのは、ウェブサイトの管理者に対して、直接、名誉毀損に該当するページの削除請求をすることです。ところが、一部の悪意のあるウェブサイトは、これに応じません。


2. そこで、次に、仮処分や訴訟といった裁判所の手続を利用して削除請求ができるかを考えることになります。しかし、例えば、ウェブサイト(WHOIS情報を含む)上に管理者の所在が記載されていなかったり、記載されていたとしても、アルゼンチンだとか、アメリカ・ネバダ州だとかのペーパーカンパニーだったりすると、問題が生じます。
 まず、管理者の住所が分からない場合、そもそも、送達先が分からないため、仮処分や訴訟はできません。また、外国のペーパーカンパニーの場合、仮処分や訴訟を提起することは、一定の要件のもと可能ですが、いざ勝ったとしても、その外国が日本の判決等で強制執行をすることを認めていない限り、日本国外にあるため、仮処分決定や判決を強制する手立てがありません。結局、裁判所の判断が出たので任意に削除するよう、「お願い」をするほかないのです。言い換えれば、「お願い」を聞いてくれないウェブサイトでは、削除ができません。


3. では、問題となる記事の削除ではなく、検索エンジンに表示させないようにすることはできないのでしょうか。これは、近時注目されている、検索結果の削除という手段です。
 現在、私達がウェブページを閲覧する際は、多くの場合、Googleなどの検索エンジンで目的のページを検索します。そのため、検索エンジンに検索結果として表示されなければ、(URLを事前に知っている場合を除き)事実上、ページにアクセスすることが困難になります。これにより、ページの削除に近い効果が得られることとなります。この検索結果の削除に関しては、東京地裁が平成26年10月9日の決定で、初めてこれを認めたことから話題となりました。
 このような、検索結果の削除は、ネット上の名誉毀損に対する有効な解決策となり得ますが、注意すべきは、最高裁では、未だ、認められた例が1つもないということです。今年1月31日に出された最高裁の判断においても、結論的に、削除は否定されています。
 また、下級審の傾向として、検索結果のタイトルやスニペット(ページの抜粋部分)自体で名誉毀損が成立しなければならないとされていることにも注意が必要です。検索に引っかかるサイト自体には、ひどい名誉毀損表現が記載されていたとしても、検索結果として表示されるタイトルや抜粋部分に名誉毀損表現が含まれていなければ、現状で、検索結果の削除は難しいといえます。
 さらに、下級審の裁判例によっては、表現自体から、非真実であることなどが明らかでなければ削除を認めない、という厳しい判断を示すものもあります。この判断に従うと、虚偽の記載により名誉を毀損された場合、虚偽であることの証明が容易であるにもかかわらず、名誉毀損の表現自体から虚偽であることが分からなければ、削除は認められないことになります。
 このように、検索結果の削除についても、認められるケースは限定的です。


4. そうすると、例えば、ネット上の名誉毀損のうち、
  ・外国のペーパーカンパニーが管理者であり
  ・管理者が一切削除に応じず
  ・検索結果自体に表示されるタイトルやスニ
   ペットに名誉毀損表現が含まれない
といった場合、法的な対応をとることは非常に困難です。


法的対応以外では、いわゆるSEO対策や逆SEO対策といったものもあります。これらは、技術的に、名誉毀損のページの検索順位を下げるという試みですが、名誉毀損の情報が消えるわけではありません。


何より、違法な状態が生じているにも関わらず、法的に対応する手立てがないということは、非常に問題です。


日本が法治国家である以上、このような、言わば法律の抜け穴は、直ちに塞ぐべきです。法治国家が人権侵害の誹謗中傷サイトを放置するようなことはあってはいけません。立法ないし司法(場合によっては、さらに、記事削除に関する国際的な協力体制の確立)による早急な対応を切に望みます。

●対立の決着

さて、これまで問題とされていたSegwit2xとUASFの対立(ビットコイン分裂騒動)ですが、今回、Segwit2xが多くの支持を得て、結論的に、8月1日には、問題となる分裂は生じない方向で進んでいます。

これを反映してか、一時21万円前後にまで落ち込んでいたビットコインの相場も、騒動前の30万円前後の水準に戻っています。

今回は、ここ1ヶ月の騒動と、今後の流れについて、ご説明させていただければと存じます(この記事を書いているのが、平成29年7月24日です。この記事が古くなった場合には、最新のニュースで状況をご確認下さい。)。



●これまでの騒動

前回までの記事をご覧になっていない方向けに、ざっくりご説明すると、これまで、ビットコインは、システムアップデートの内容・方法で大きく2つに意見が対立していました。


1つは、UASF(BIP148)と呼ばれるもので、もう1つがSegwit2x(別名、NewYorkAgreement、シルバート合意、Segwit+2MBなど)と呼ばれるものです。

このうち、UASFは、これまでのビットコインの開発者が開発したSegwitという機能(ざっくり言えば、ビットコインの取引のキャパを増加させる機能です。)を、そのまま導入するという案です。ただ、導入方法は、8月1日(=グリニッジ標準時)に、反対があったとしても強行的に導入するという、ちょっと過激な方法です。

他方、Segwit2xは

  ・Segwitを導入する
  ・さらに、導入後、ビットコインのブロック
   (取引台帳の1頁分)のサイズを2MB増加さ
   せる)

というものですが、

  ・Segwitはそのまま導入されるのか、改変が
   加えられるのか
  ・さらに変な機能が付加されないか

など、これまで、様々な憶測が飛び交ってきました。ただ、その後、開発段階のプログラムが公開され、

  ・Segwitの機能はそのまま導入される(Asic
   Boostは排除される)

こととなりました。このSegwit2xについては、80%のネットワーク参加者の賛成により、7月21日以降に導入される、という方式です。



このSegwit2xに関しては、6月のニュースで、中国国内のBitcoin関連企業が集まって、Segwit2xを支持することが確認されました。

https://www.btcc.com/news/en/%C2%A0%20%22announcements%22/2017/06/19/segwit2x/


この直後から、ビットコインネットワーク上でSegwit2xを支持するネットワーク参加者が急増し、一気に、全体の8割強を占めるまでになりました。

https://coin.dance/blocks/proposals


また、他方UASFも、徐々に、支持者を増やしてゆきました。



●問題点

さて、Segwit2xもUASFも、Segwitをそのまま導入するのであれば、どっちでも問題ないのではないか、とも思えますが、Segwit2xに対しては、様々な批判が加えられています。


1つには、Segwit2xの特徴である、Segwit導入後、約3ヵ月後に予定されているブロックサイズ変更です。これは、ハードフォークと呼ばれる、それまでのシステムと互換性のないアップデートとなるため、技術的な危険性が指摘されています。


また、公開されたSegwit2xのプログラムに対しては、従前のビットコインシステムの開発者から、Segwitの導入を失速させることを意図した内容になっている、との痛烈な批判が加えられています(ただ、一部、推測を含む批判です。実際、現時点では、批判は現実化していません。)。

https://medium.com/@lukedashjr/the-segwit-2x-beta-review-and-thoughts-ca480694a8c7


さらに、上記批判の中でも記載されていますが、Segwit2xは2MBのハードフォークと言っていたにもかかわらず、公開されたSegwit2xのコードでは、8MBのハードフォークになっているじゃないか、といった主張もなされています。

ただ、こういった主張に対しては、ブロックの大きさの測り方が違うのであり、実質2MBのハードフォークだ、といった説明もされています(つまり、ブロック自体を従来と比較して2倍=2MBにすることに加え、Segwitにより、理論値として、最大で、それまでのブロックを4MBに拡張したのと同じ効果が得られるため、4×2=8MBとなるが、ブロックサイズの拡張自体は2MBなのだ、とのことです。)。

https://medium.com/@jimmysong/understanding-segwit-block-size-fd901b87c9d4


その他、従前の開発者以外の開発者によりプログラムが作成されるため、バグがあるのではないかという点や、その後の保守がどうなるのか、という懸念もあります。




●今後について

前回メルマガを書いた時点では、
  ・Segwit2xか
  ・UASFか
  ・どちらにもならないか
といった状況で、ビットコインが分裂する可能性が叫ばれていました。


しかし、今回、Segwit2xの支持が多数となりました。Segwit2xもUASFも、Segwitの導入を目指す点では共通しており、ネットワーク参加者の大半がSegwitを導入することとなったため、巷で騒がれていた8月1日のビットコインの分裂は回避されたと言われています。

また、心配されていたSegwit2xのバグについても、現状では、特段、バグによって大きな問題が生じたなどの報道はありません。

今後、Segwitの機能自体は、8月後半頃に有効化される見込みです。


ただ、これから、8月にかけて、システムが切り替わったことが原因で、一時的なブロックの分岐が生じる可能性があります。これは、文字通り、一時的なもので、速やかに解消されると考えられていますが(そもそも、一時的な分岐は、ビットコインのシステムに織り込み済みの問題とも言えます。)、念のため、ビットコインを動かした際は、取引が確実に確定するまで、一定期間(6ブロック程、1時間程度)待つことが望ましいと言われています。


また、Segwit2xは、今後、11月頃、ハードフォークを予定しています。この点については、引き続き、注意が必要です。

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 日々の業務の中で、本人訴訟にチャレンジしている方から相談を受けることがあるのですが、本人訴訟の意外な躓きポイントが「訴状の送達」です。

 

 そもそも、訴訟は、原告から提出された訴状を、裁判所が被告に送達して初めて始まります。

しかし、訴状の送達先の住所は、原告の方で調べて裁判所に申請しなければなりません(裁判所は調べてくれません)。そのため、原告側からの典型的な相談として、「被告の住民票上の住所に訴状を送ってもらったが、被告がそこに住んでいないようで訴状が届かなかった。どうしたらよいのか。」というような相談が出てきます。

このような場合、原告は訴状を送達するためにどうすれば良いのでしょうか?

 

送達は通常、裁判所書記官が、被告の住所や居所などに特別送達郵便を送るという方法で実施します(民訴法1031項)。しかし、この特別送達郵便は書留郵便等と同様、送達場所にいる被告本人や関係者に受け取ってもらわないと、配達されたことになりません。被告等が受け取らずに放置している場合や被告がそもそも住所等にいない場合には、送達できなかったものとして裁判所に戻ってきてしまいます(一部例外もありますが、今回は省略します)。

 

こうなった場合ですが、民事訴訟法には、原則的な送達場所である住所や居所等に送達できない場合には就業場所に送達できる旨の規定があります(1032項)。したがって、まず、原告の方で被告の就業場所を調査し、就業場所が判明すれば、そちらに送達し直すことになります。就業場所には従業員が多数いる場合が多いでしょうから、住所等に送達する場合よりも訴状を受け取ってもらえる可能性は高まります。

 

しかし、調査しても被告の就業場所が判明しない場合や就業場所にも送達ができなかった場合というのもあり得ます。この場合、原告に残された手段は2つあります。1つは付郵便送達(107条)、もう1つは公示送達(110条)という方法です。

 

付郵便送達は、訴状を書留郵便扱いにして被告の住所等に発送する方法です。この送達方法の特徴は、送達の効果が書留郵便の発送時に生じるところにあります(1073項)。したがって、被告が実際に受け取るか否かに関わりなく、郵便を発送した段階で送達があったものとして扱われることになるため、原告にとっては非常にありがたい送達方法です。

しかし、付郵便送達には一定の制限があり、付郵便送達が有効な送達として扱われるには、書留郵便の宛先である住所等に現実に被告が居住していることが必要とされています(東京高判平成4210日判タ787262頁)。したがって、原告が付郵便送達を使おうとする場合、送達しようとしている場所を調査するなどして、その場所に被告が住んでいるということを証明しなければなりません。これが意外と大変で、実際に送達場所に行って、被告が住んでいるかどうか写真を撮るなどして裁判所に報告するといった作業が必要になってきます。

 

このような調査を経ても被告の住所等が不明で、付郵便送達も使えないという場合、最終的には公示送達を行うことになります。公示送達は、裁判所書記官が、送達書類を保管し、いつでも被告に送達するということを裁判所の掲示板に掲示する形で行われ(111条)、この掲示の開始から2週間が経つと、訴状が被告に送達されたものと扱われます。

したがって、最終手段として公示送達を使うことで、被告の居場所が全くわからなくても訴訟を始めることが可能です。

 

もっとも、公示送達の場合、仮に被告が答弁書を出さずに訴訟を欠席した場合でも、原告の方で証拠を提出して自分の主張を証明しなければなりません(1593項但書)。公示送達以外の送達方法の場合は、被告が裁判に欠席すれば、原告が証拠を出すまでもなく原告の主張が全て認められますので、この点で公示送達は原告に不利です。

また、公示送達で訴訟を始めたとしても、居場所すら分からない被告について資産を把握するのは困難なため、強制執行が難しいのが通常です。特に金銭請求などの場合は、そもそも訴訟を起こす意味があるのかについて慎重に検討する必要があります。

 

 以上のとおり、通常の送達よりも時間や労力はかかりますが、法律上は、被告の居場所が分からなくても、訴訟が起こせる仕組みが整えられています。

 もしも、どこにいるか分からない人や訴訟から逃げ回る人に対して訴訟を起こしたいという場合には、このような送達の方法を検討してみてください。

 

米国のイーロンマスク氏がCEOを務めるスペースX社は、201512月、世界初となる商用の衛星打ち上げロケットの垂直着陸を達成し、近い将来民間による火星探査移民構想も掲げています(国際宇宙会議2016IAC2016))。

日本では、三菱重工やIHIがロケット開発に関わっていますが、最近ではホリエモンこと堀江貴文氏もロケット開発事業を行い始め、宇宙開発事業は活気づいてきております。

 

このような中、宇宙開発に関する法律として、半年ほど前に「宇宙活動法」が成立し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が関わる形でしかできなかったロケット打ち上げが、国の許可を得られれば民間業者の参入が可能になりました。

宇宙開発事業が活気づき、近い将来世界的に宇宙旅行も増えていくことでしょう。

この宇宙旅行は巨額のお金が動くビッグビジネスですが、日本もこの宇宙旅行ビジネスの波に乗れるかというと、ちょっと難しいかもしれません。

 

というのも、例えば米国では自己責任の文化が強いせいか、事業者が宇宙旅行希望者に対して宇宙旅行のリスク説明をきちんして、そのリスクを宇宙旅行希望者が承諾すれば、リスクの高い段階(まだ宇宙旅行が一般化していない今の段階)でも、宇宙旅行ビジネスを認めています。インフォームドコンセントが充たされれば、宇宙旅行希望者に事故等があったとしても、宇宙旅行希望者やその家族が、企業や米国政府に対して損害賠償を請求することはできないようになっています。

 

一方日本では、自己責任の意識は少なく、国が許可を出したかどうかを重視する傾向があるようで、当事者間のインフォームドコンセントは重視されず、今現在、日本企業が主体となって行う宇宙旅行ビジネスについて国の許可が下りた例はありません。お国柄の違いから考えると、今後宇宙旅行ビジネスを日本で主体的に行うのは、まだまだ時間がかかりそうです。

 

宇宙旅行はいわばロマンある冒険なので、ヒマラヤに登るのや、未開拓の洞窟探検と変わらず、個人が自分の人生観に従ってリスクを承知しながら決断すれば、もっと積極的に認めても良いのではないかと思います。

ロマンのある冒険の一つである宇宙旅行に、日本も積極的になってくれることを願うばかりです。

 

ちなみに、宇宙旅行をするにもロケットの打ち上げが必要になりますが、ロケットの打ち上げは航空法の規制がかかり、国土交通大臣の許可が必要になります。「ロケット、花火…その他の物件を…打ち上げる」(航空法施行規則209条の3)には国土交通大臣の許可が必要と法令に規定されており、日本の航空法令上は、ロケットは花火と同様の扱いがなされています(爆発することが前提の花火と、人や物を運ぶためのロケットとは本質的に違うものだと思いますが…)。

 

69日、厚生労働省の労働政策審議会(部会)は、同一労働同一賃金に関する法整備に関する検討結果を報告した。これを受けて、616日に、労働政策審議会は、厚生労働大臣に建議を行った。今後、法案要綱の作成段階に入ることになる。報道によると、政府は、今年秋の臨時国会に関連法案を提出し、2019年度の制度導入を目指しているそうだ。

 

今回の建議(=報告書)の内容は、厚生労働省のサイトから閲覧・ダウンロードできる。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167781.html

 

内容の項目は、以下の5つから構成されている(合計11頁)

1 基本的考え方

2 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規程の整備

3 労働者に対する待遇に関する説明の義務化

4 行政による裁判外紛争解決手続の整備等

5 その他

 

今回は、「1 基本的な考え方」の感想のみ述べることとする。

 

同項目では、法改正の必要性が語られている。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇格差は社会全体へ負の影響を及ぼしているから是正されなければならない、それ故上記2から4等の法改正を行うべきだ、とされている。これが「同一労働同一賃金」に関する法整備である、と。

でも、待ってほしい。「同一労働同一賃金」は、正規雇用と非正規雇用との間だけではなく、正規雇用の中でも実現されていないと思う。職能給制度を中心とする年功序列型の賃金制度が適用されている会社はまだまだ多いだろう。純粋に労働の内容等をベースとして賃金を決定している会社はどれだけあるだろうか。正規雇用の中でも問題が内包しているにもかかわらず、正規雇用と非正規雇用だけをくくりだして、ここだけの待遇差を解消し、「同一労働同一賃金」の実現、というのは、ものすごく違和感を抱かざるを得ない。

正規雇用と非正規雇用との点だけをパッチ的に対応するのではなく、全社の賃金体系や人事評価制度全体を変えていく大工事をしなければ、真の「同一労働同一賃金」は実現できないと思う。この大工事には、現在の正規雇用労働者の賃金等を下げざるを得ない場面が出てくることが想定され、いわゆる不利益変更のハードルを突破しなければならない。がしかし、今回の政府の「大号令」があることがその突破理由になる保障もない。

総額人件費が決まっている中で、会社はどう対処していけばよいのか、法改正をするのであればそこの解を示すべきだ。

 

また、報告の中では、待遇格差の解消が生産性向上につながるといった趣旨の言及もなされているが、私としては、生産性向上というマジックワードに飛びついていて中身がない印象を受ける。私が不勉強なだけなのだろうけれど、どういうロジックで生産性向上に結び付くのかよくわからない。非正規雇用労働者は能力開発機会が乏しいという評価に基づいているようにもうかがえるが、能力開発機会に相対的に恵まれている正規雇用労働者だって生産性が低いこともあるであろう。雇用形態や待遇によって生産性が変わるということはなく、単なるモチベーション、やる気の向上につながる(かもしれない)だけではないか。生産性という問題を単なるやる気の問題だけに引き直してしまっていないだろうか。

 

さらに、政府が提示した「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」のときも同様であったが、今回の報告においても、賃金決定基準やルールなどの処遇体系全体を労使の話し合いによって明確化していくべきという趣旨のことが書かれている。しかし、そもそも賃金決定基準やルールは会社が決め、そのうえで個別の契約交渉に委ねるべきではないだろうか。会社において賃金決定基準やルールは戦略の一部であり、会社が行うべき意思決定の対象であると思う。あくまでも、その中で、個別の契約交渉で入社時の待遇が決定されればよく、そのあとも会社のルールを基本としていけばよいと思う。納得がいかないという場合も含めて、個人面談でフィードバックをすることになるだろう。

もちろん、従業員側の希望にマッチしないケースは生じる(ただ、これは従業員が人間であることに起因するものであろうから、制度を変えても必ず生じる問題だと思う。必ず従業員側の希望にマッチしなければならないということは無理難題だ。)。入社時の待遇に不満があれば、その会社に入社せず、他の会社を選択する自由があるし、入社後も転職の自由がある。会社側にとっても自社の賃金決定基準をどのように設定して、どのような人材を獲得・維持していくかについては自由がある。そもそも賃金の水準を最重要要素としている人材を獲得するのかどうか(獲得したいのであれば可能な限り賃金を上げるという方向に働く)、やりがいといった非金銭報酬の側面を訴求するのか、等々を考えて、職能給・職務給・役割給といった賃金体系の内容、人事評価の基準(自社は何を重視するのか)を戦略的に決定していくべきであり、かつ、それで足りるのではないだろうか。

このあたりに政府が深く介入することは、日本における企業経営を難しくするような気がしてならない。幸福の総和が小さくならないだろうか。

 

報告書で指摘されている、女性が働きにくい社会、子育てや介護をしながら働いていくことが難しい社会や、貧困の問題などを放置してよいと言うつもりはまったくない。積極的に取り組んでいくべきだ。

けれど、今回の法改正の考え方は腹落ちしていない。各論、法改正の具体的内容についての感想は次の機会とする。

森友学園、加計学園、共謀罪といったニュースに押されて世間的にはあまり大きなニュースにはなりませんでたが、去る平成29年5月26日に改正民法案(債権法関係)が国会で成立いたしました。

 実は、今の民法(債権法関係)は、明治29年(1896年)4月に成立したもので、今回の改正は約120年ぶりの大改正だったのです。1896年というと、まだ日清戦争が終わった1年後で、アメリカではユタ州が45番目の州になり(ちなみに、ハワイがアメリカの自治領になったのは1898年のこと)、アテネでは第1回夏季オリンピックが開催され、日本の東北には明治三大大津波が押し寄せてきて2万人の死者が出ています。日本で鉄道(新橋・横浜間)が初めて走ったのは1872年(明治5年)と比較的早いのですが、電話回線(東京・熱海間)が初めて敷設されたのが1893年、自動車が作られるようになったのは1910年代になってからです。今は平成29年ですが、私なぞはまだ昭和の気持ちで生活していますので、おそらく明治29年当時もまだ江戸時代の気持ちで生活していた人も沢山いたことでしょう。

 というわけで、今の民法はとてつもなく古いので、「錯誤」とか「瑕疵」とか古めかしい言葉が残っているし、その後の時代の変化によって条文の文言どおり解釈するとうまくいかなくなったところを判例で補っているので、条文だけを読んでも結論がよくわからないなどという不都合があります。さらに、民法制定時には想定していなかったようなインターネットなどというものの発達もあったり、もうかなり時代遅れな法律になっていたのです。そこで、一般の人が読んでも意味がとれるようにしたり、これまで判例でつぎはぎ的に補ってきた解釈を条文だけで解釈できるようにしたり、さらに新しい時代に対応する制度を設けたりしたのが、今回の大改正なのです。

 ちょっと一例をあげると、債権を行使しないと債権が消滅してしまう消滅時効期間。これまで原則として10年でしたが、飲食代金や弁護士報酬などは何故か2年であったりとバラバラだったのです。そこで今回の改正で一律5年に統一されました。

 次に、履行遅滞の場合の利率。これまでは5%でしたが、デフレの低金利時代には高すぎますので3%に引き下げられました。また、3年ごとに見直す変動制がとられることになります。

 さらに、連帯保証制度の見直し。「他人の保証人にはなるな!」を家訓としている家があるように、良かれと思って保証人になってしまうと人生を狂わせるような過酷な事態が生じることがよくあります。そこで、これからは、公証人が保証人の意思を確認しないと、保証は認められないことになります。公証人の確認というプロセスで一息入れることで、本当に保証人になっていいものか考える機会を与えるのです。

 加えて、敷金返還のルール。これまで、民法には敷金に関する規定がたったの1条(619条2項)しかなく、しかもとてもざっくりしたものだったのですが、この改正により経年劣化に伴う修繕費については賃借人が負担しなくても良いことなどが明文化されました。

 また、インターネット通販など不特定多数の消費者に提示される「約款」に関する規定も新たに設けられました。消費者の利益を一方的に害すると認められる内容のものは無効とすると定められて消費者保護が図られています。

 この民法改正案は、2009年に法制審議会に諮問されてから、5年以上かけて改正要綱案にまとめられ、2015年3月に国会に法案が提出されました。しかし、安保法案とか、その時々の政局があって、審理が延び延びになっていたものが、ようやく先日可決されたものです。法曹関係者の中には、現在の民法を変える必要がないなどという人もいましたが、やっぱり古かったと思います。改正民法は、公布から3年以内に施行されるとのことですので、まだまだ我々の生活に適用されるようになるのは先ですが、法曹の一人として、この民法の運用を通じて少しでもより良い社会を実現していかなければと思います。

 我々の事務所でも、契約書のひな型の見直しや新しい民法の適用に関する情報を適宜発信していく予定です。こうご期待!

 

 

 

 

 

●はじめに

先の記事では、ハードフォークの話題について触れさせていただきました。しかし、先の記事でも書かせていただいたとおり、その後、BitcoinUnlimitedでは、一部の、特許技術を使うことができる者のみが儲かる構造となっていることなどが判明しました。これにより、BitcoinUnlimitedは支持を失ってゆき、BitcoinUnlimitedによるハードフォークのリスクは低下しました。

が、しかし、この問題、形を変えて、現在でも続いています。いわゆる「スケーラビリティー」問題と呼ばれるもので、現在、ビットコインは、混乱の真っ只中にあります。これを反映して、現在、ビットコインの価格は乱高下しています。


ごくごく簡単に言ってしまえば、BitcoinUnlimitedの時と同様、

  ビットコインが2つに分岐するかもしれない!!??

という問題が発生しています。



以下、順を追ってご説明致します(なお、この記事は、平成29年6月19日時点で記載されたものです。)。



●前提知識:スケーラビリティ問題

まずは、今回の問題の前提となる知識をご説明します。

ビットコインのシステムでは、

  ・約10分間ごとに
  ・世界中で生じた新たなビットコイン取引をまとめて
  ・それを新たなブロック(取引台帳)に記入し、
  ・チェーンのように、従前の台帳につなげてゆく

という仕組みがとられています。いわゆるブロックチェーンと呼ばれる仕組みです。


しかし、この1つのブロックのサイズは固定サイズ(1MB)であるため、近年の取引量増加に対応しきれなくなりつつあります。要するに、10分に1回しか取引台帳に新しいページを追加できないけれども、10分間の取引量が1頁分の分量を超えてしまって、台帳に書ききれなくなってしまうのです。


書ききれなくなるとどういうことが起こるかというと、取引がなかなか確定せず(台帳に書き込まれず)、送金に遅延が生じます。また、ビットコインは、これまで、送金手数料が0ないし非常に低い金額でしたが、この送金手数料が増加するという事態も発生します。


これらの問題は「スケーラビリティ問題」と呼ばれ、これまで、様々な対応策が検討されてきました。以前ご紹介したSegwitや、BitcoinUnlimtiedも、このスケーラビリティー問題への対応策の候補です。BitcoinUnlimitedは、その後、下火になりましたが、それで問題が解決したわけではありません。スケーラビリティー問題は依然として残っているのです。




●BIP148

このスケーラビリティー問題に関して、これまで様々な対応策が提案されてきました。その1つがSegwitですが、以前お伝えしたとおり、ネットワーク参加者の大半の賛成を得るには至らず、導入できずにいます。

このSegwitをなんとか、半ば強行して導入しようと考えられた導入方法の1つの案が、「BIP148」と呼ばれる案で、現在、非常にホットな話題となっています(https://github.com/bitcoin/bips/blob/master/bip-0148.mediawiki)。BIPとは、Bitcoin Improvement Proposalsの略で、ビットコインに関する改善の提案です。そして、「BIP148」とは148番目の改善提案ということになりますが、その具体的内容は、ごく簡単に言えば、以下のとおりです。

  ・このまま、Segwitの導入が見込めない場合
  ・2017年8月1日の夜中の0時0分(UTC=協定世界時≒グリニッジ標準時)以降
  ・Segwitを導入していないブロック(台帳)は拒絶する
  ・という仕組みをビットコインのプログラムに盛り込む


要するに、ネットワーク参加者の過半数も同意が取れていないSegwitを、言わば強行導入しようとするものです。一見するとかなり過激な提案ですが、これはうまくいくのでしょうか。

ただ、Segwit導入に全く勝算が無いわけではありません。これを理解するには、ビットコインに、どのようなプレーヤーがいるのかを理解する必要があります。まず、当然ながら、ビットコインを使う側、ユーザーサイドの人たちがいます。具体的には、個々のビットコイン保有者や、取引所、ウォレットのプログラムを提供している業者などです。

また、当然ながらビットコインを開発している人たちがいます。

さらに、ビットコインの台帳に取引情報を書き込む(マイニングといいます。)人たちもいます(マイナー)。この人達は、報酬として、ビットコインを受領しています(システム上、新規にビットコインが発行され、それを報酬として受け取ります。)。これらは、1人の人が複数該当することもあれば、1つしか該当しない場合もあります。以上をざっくりまとめると、以下のとおりです。


  ①ビットコインのユーザーサイドの人たち

     ・個々のビットコインユーザー(保有者・利用者)

     ・取引所

     ・ウォレットのプログラムを提供している業者

  ②開発者

  ③マイナー(採掘者)



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 企業ポイントというのは、各社が発行しているポイントで主たる商品を購入した場合におまけとして発行されるもののことですが、企業ポイントを貯めているという方は多いのではないでしょうか。

 かくいう私も近所のコンビニでTポイントを貯めていますし、私の友人には航空会社のマイルを貯めている人もいます。こういったポイントを商品と交換したときはとても得した気分になりますよね。

 

 ところで、企業ポイントを持った状態で人が亡くなった場合、そのポイントを相続することはできるのでしょうか?家族で企業ポイントを集めている人にとっては意外と重要な点だと思いますので、今日はこの問題を見ていきたいと思います。

 

 この問題を考えるにあたっては、まず相続の対象について定めている法律の規定を見る必要があります。この点について、民法896条は次のように規定しています。

 「第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

 

 この条文は、相続の一般的効力として、被相続人の死亡により被相続人に属していた一切の権利義務が、財産の種類や性質、由来等を問わず包括的に相続人に承継される旨を定めるものです。この条文からすれば、企業ポイントについても、これが被相続人の権利であれば相続の対象となるといえます。したがって今回問題となるのは、企業ポイントに権利性があるかどうかです。

 

 この点、普通に考えれば、ポイント保有者はそのポイントを商品やサービスと交換することを意図していますし、ポイント発行企業の側もそのような前提でポイントを発行しています。したがって、企業ポイントはポイント発行企業に対して商品やサービスの贈与を条件付きで要求できる権利であって権利性があるように思えます。

しかし、このように考えるとかなり不都合な問題が生じます。例えば、ポイント発行企業が破産した場合、ポイントが保有者の権利だとするとポイント保有者全員が破産手続きに参加できるはずですし、ポイントが相続の対象になるということは被相続人が持っているポイントの全てが遺産分割の対象になるはずです。でも、発行企業も保有者もそんなことを意図しているでしょうか?

 

 ここからは私見になりますが、企業ポイントがあくまでもおまけ(=保有者がポイントの対価を支払っているわけではない)であることやポイントプログラムの内容を発行企業の側で随時変更できることを考えれば、少なくとも発行企業の側は、ポイント保有者に何らかの権利を保証したとは考えていないのが通常だと思いますし、実質的に考えても企業にそこまでの義務を負わせる根拠は弱いと思います。ポイントを商品やサービスに交換できるのは、ポイント発行企業のサービスの一環にすぎない、すなわち保有者側には⚫⚫ポイントあれば企業から⚫⚫をもらえるだろう、という期待や予測があるだけであって、必ず商品等に交換できる権利があるわけではないと考えるのがより実態に即しているのではないでしょうか。

 

 したがって、(ポイント保有者としては非常に残念ではありますが)保有者と発行企業の間で別途権利性を認める合意でもない限りは、ポイントに権利性はないもの考えて、相続の対象にならないと考えるのが良いのではないかと思います。

 

 現在、企業ポイントの相続については統一的な見解がなく、ポイント発行企業がそれぞれの考え方に従って対応しているようです。しかし、このような運用ですと、相続が発生した際に保有者側でそれぞれのポイントの相続の可否を調べなければならず、保有者側の負担が大きいですし、権利性を巡ってトラブルになりかねません。企業ポイントの法的性質につき、統一的な見解の提示が待たれるところです。

 

 

【参考文献】

松川正毅・窪田充見編「新基本法コンメンタール 相続」39

経済産業省「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会報告書」http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1285493_po_20090120005-3.pdf?contentNo=1

ちょっと前の記事になりますが、政府が国際商亊仲裁を専門に扱う「日本国際仲裁センター(仮称)」を年内にも都内のオフィスビル内に作るという報道がなされていました。

2017年5月18日日本経済新聞朝刊から抜粋

「政府は国際ビジネスのトラブルを解決する『国際商亊仲裁』を専門に扱う施設の設置に官民挙げて乗り出す。東芝の半導体メモリー事業売却を巡り米ウエスタンデジタルが国際仲裁を申し立てるなど企業間の紛争は多いが、日本での仲裁実績は少ない。経済財政運営の基本方針『骨太の方針』に施設設置や関連法の整備などを盛り込んで年内の開設をめざし、企業の国際競争力を高める。」

「国際仲裁は裁判と異なり、当事者間の合意に基づいて国際商取引の紛争を解決する制度。非公開で迅速に審理が進むことなどから企業のニーズが高い。米国や英国などの主要機関は年間数百件以上を扱うが、日本での仲裁は年20年程度にとどまる。施設の整備と並行して人材の育成も必要だ。」

「日本には設備の整った専用の仲裁施設がなく、大きな案件ではホテルの会議室などを借りるのが現状。人材が限られることも、欧米などに比べ極端に仲裁実績が少ない背景になっていた。企業側には『専用施設ができれば契約交渉で日本での仲裁を相手に主張しやすくなる』(新日本住金の佐久間総一郎副社長)との声も根強かった。」

国籍が異なる企業間の商亊紛争では、そのどちらか一方の国の裁判所で審理するのは公平が確保されるか不安がありますし、また現実に行われているビジネス(事業)についての専門的な知識が必要となることがありますので、契約書の中の紛争解決手段として、裁判ではなく、仲裁手続きが選択されることが多いのです。
なんとなれば、仲裁手続きでは、あらかじめ仲裁場所を中立的な第三国とすることもできますし、各当事者が自分の信頼する仲裁人を選ぶことも可能だからです。
しかし、日本では、言葉(英語ができない)と施設の問題があって、これまで仲裁地として選択されることはかなり稀(相当日本企業の力が強い場合に限られる。)だったのです。パリ、ニューヨーク、シンガポールなどにかなり負けていたのではないか。
しかし、これからますます国際取引は多くなりますので、このような傾向は是正されなければなりません。
したがって、国際仲裁センターを作るというこの方針には大賛成です。大いにやるべきかと思います。

あとは人材ですね (^^;




これまでも、メルマガやブログ等で情報発信させていただいているビットコインでございますが、この度、弊所のホームページ上に、「ビットコインQ&A」のページを設けました。

URLは以下のとおりです。
http://www.tplo.jp/bitcoin

今後、順次、Q&Aを追加させていただければと思います。
是非御覧ください。

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