「飛田&パートナーズ法律事務所ブログ」への変更に伴い、URLが変更となっております。皆様お手数ですが、新しいURLでのブックマークをどうぞよろしくお願い申し上げます。新しいURLは、 http://blog.tplo.jp/ です(しばらくは自動転送設定となっております)。

少々前の記事ですが、201685日の朝日新聞DIGITALに「口座特定、裁判所主導へ 養育費や賠償金不払い対策」との見出しで、次のような記事が載っていました。

裁判などで確定した賠償金や子どもの養育費が不払いにならないように、支払い義務がある人の預貯金口座の情報を金融機関に明らかにさせる仕組みを法務省が導入する。裁判所による強制執行をしやすくする狙いがある。今秋にも、法相の諮問機関「法制審議会」に民事執行法の改正を諮る見通しで、2018年ごろの国会提出をめざす。

私は、かねてから、我が国の債権差押え制度、特に預貯金の差押えには、どこの支店に口座があるかまで調べなければならず(口座番号までは不要)、結局そこまで調べるのはかなりの時間と費用をかけなければならないので、悪い債権者は容易に差押えを免れることができて、裁判の実効性が確保できず、大問題であると訴えていました。記事では、養育費の問題が強調されていますが、民事裁判の判決全体の実効性を無にする大問題です。

ここにきて、ようやく法改正に動き出したということで、日本の民事制度にとっては朗報だと思います。

で、肝心の内容ですが、記事によると

法務省の見直し案では、債権者は、債務者が住む地域の地銀など口座がある可能性がある金融機関ごとに確認を裁判所に申し立てられる。裁判所は各金融機関に照会。口座がある場合はその金融機関の本店に対し、差し押さえる口座のある支店名や口座の種類、残高などを明らかにするよう命じる制度を新たに設ける。債権者にとっては、債務者が口座を持つ金融機関名が特定できなくても、見当がつけば足りることになる。

とのことです。

私としては、実効性があって、かつ、使い易い制度となることを切に切に願っています。

なお、記事によれば、現在の財産開示制度も見直しが図られるとのこと。

また、民事執行法には債務者を裁判所に呼び出し、自分の財産の情報を明らかにさせる手続きが定められているが、債務者が来ずに開示に応じないなど、実効性が課題となっていた。この手続きを経ずに差押えを申し立てるケースも多いことから、見直しでは、応じないときの制裁を強化し、現在の「30万円以下の過料」から、刑罰を科すことも検討する。

http://www.asahi.com/articles/ASJ845DC4J84UTIL02R.html

こちらも、本当に役立つ制度になることを願っています。 

続きを読む

弊事務所のインターンシップ(第3弾)が今週から始まりました!
今夏の弊事務所のインターンシップも、今週で最後となります。

T大学のMさん、とても一生懸命に取り組んでいます。 
初日は、訴訟記録の整理を丁寧におこなっていただきました。
明日以降は、講演会の出席や裁判傍聴等も予定しています。

IMG_3383 

8月5日の記事で書かせていただいたとおり、飛田&パートナーズでは、現在、インターンシップの学生さんを受け入れております。

今週は、K大学のKさんが1週間のインターシップです。将来、弁護士になることを目指しているKさんに、法律事務所ならではの色々な業務を体験していただいています。

インターシップは来週も続きます。

 
IMG_3362

京都大学の山中伸弥教授が、再生医療に使うために備蓄している人工多能性幹細胞(iPS細胞)について、その安全性の確認に人工知能(AIを取り入れるという構想を明らかにしています(琉球新報 http://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-324115.html)。

近年ではiPS細胞から網膜の細胞を作製して目に移植することで、網膜の病気の進行を抑えることに成功しており、iPS細胞によって再生医療の進化が加速しています。それに伴い安全性の評価方法も工夫が必要になってくるようです。

山中教授は「膨大なゲノムデータの解析を、見落としなく、客観的に安全性を評価するのにAIを使いたい。」と述べています。

安全性の評価方法には様々あると思いますが、安全性チェックのために精巧を極めた機械を導入しても、それを使用する人間が誤入力や確認違い等のヒューマンエラーをしてしまうことは避けられないことです。そのため、原子力発電所等のような特に安全性が要求される施設の機械には、あらかじめ人間の特性(能力と限界等)を踏まえ、ヒューマンエラーが生じることを織り込んでおり、余裕のある設計になっているようです(明らかな誤入力には反応しない、事態が生じる前に予測して警報を鳴らす等)。

さて、iPS細胞の安全性等の医療現場にAIを導入するほか、人の生命・身体に関わるAIの運用(自動車の状況判断機能、自動運転等)によって生じる法的問題としては、事故が生じた際に誰が責任を負うのか、というものがあります。

機械とAIとの大きな違いは、AIの場合は自分で学習して変化していくという点にあると思われます。AI自体(デフォルト)に問題があって事故が生じれば、機械の場合と同様に製作したメーカーに責任を追及することや、AIを操作する人間がミスをすれば、操作した人間に対して責任を追及することが考えられます。

それでは、AIが自律的に行動した結果、事故が生じてしまった場合には、誰にどのように責任を追及すればいいのでしょうか。

AIは学習していくことが前提ですから、例えばiPS細胞についてのAIは、医療現場の統計やノウハウもどんどん吸収して変容していくことになるので、もはやAIの製造者の手を離れているといえます(飼い犬が事件を起こしても、その犬を販売したペットショップの責任を追及できないことと似ていると思います。)。

ちなみに製造物責任法は、製造業者等の無過失責任を定めた法律ですが、同法の定義する製造物は「製造又は加工された動産」なので、プログラムであるAIは製造物には該当せず、同法は適用できないといえます。

AIについての法律が整備されないうちは、一般法である民法の規定によって処理せざるを得ません。例えば民法には動物の占有者責任(民法718条)という規定があります。「動物」の範囲は社会通念によって決まるため、生物学的な分類とは異なります。そこで、AIの自律性に着目して「動物」と見る(類推適用)こともあり得るかと思われます。しかし、自律的に動く細菌やウィルスが「動物」に含まれないにもかかわらず(我妻榮他著「我妻・有泉コンメンタール民法(第3版)」1308頁)、AIのほうは含まれるというのも何だか不思議な気もします。

同条が適用されないとすると、AIが自律的に行動した結果事故が起こった場合に、現行法では請求する相手をどうするかは困難であり、非常に難しい問題です。AIの法整備が整わないと、AIを導入することに企業や研究者が二の足を踏んでしまうので、技術立国を目指すのならば、問題が生じる前に法整備を行うことが望まれます。

ちなみに、アメリカ(運輸省)はAIによる自動車の自動運転について、AIを「運転手」として見る見解を出しています。

AIの自律性が強まり、あたかも人間のように振る舞い始めれば、AIに法的にも人格が認められ人権のような権利が与えられる日が来るかもしれません。なお、AIが人間のように自律的に行動し始めるのが楽しみな反面、AIに権利が与えられてしまい人間の肩身が狭くなることを危惧しています(人権は人間の既得権益です)。

前回の記事でご紹介したイーサリアムですが、非常にホットな話題となっています。

前回の記事、見てないよ!という方にご説明しますと、イーサリアムは、ビットコインと同様の仕組みを採用した仮想通貨・・・のみならずプログラミング環境もセットになったものです。イーサリアムという環境上で、利用者は、独自のプログラムを作って動作させることができます。例えば、プログラムで仮想通貨を管理して、中央管理者のいない信託、のようなことが実現できるのです。


このイーサリアム、それ自体には問題はなかったですが、6月には、イーサリアムの環境上で稼働するプログラムにバグを有するものがあり、これにより、40億円相当以上の仮想通貨が流出する事件が発生しました。


これに対して、イーサリアムのコミュニティーがどう反応するか、注目されていたのですが、720日、流出した仮想通貨を「取り戻す」対応がなされました。いわゆる、ハード・フォークと呼ばれる対応です。

改ざんができないはずの仮想通貨を、取り戻すことなんてできるのか?とも思いますが、今回は、特殊事情があり、できてしまったのです。それは、イーサリアムのコミュニティーの大半が、「取り戻す」ことに賛成したからです。つまり、イーサリアムに参加する人たち(特に、イーサリアムの取引所を含む。)が、一致団結し、

  ・これまでの通常の取引データはそのままにする

  ・しかし、流出した仮想通貨は、流出先から戻す

という新しいルールのネットワークを作って、そこに、一斉に引っ越しをしてしまったのです。流出を否定する新しい仮想通貨を作って、皆がそれに乗り換えた、とも言えます。このようなダイナミックな対応が、ハード・フォークです。

これにより、仮想通貨の流出問題は一件落着、のようにも見えましたが、そう簡単にはいきませんでした。今回の対応は、いわば、「超」例外的措置で、当然、そんな例外みとめていいのか?という反論もありました。例外は、どのようなことがあっても認めるべきではない、というポリシーを持った人たちは、当然、ハード・フォークに反対しました。

反対派の人たちの中には、新しいネットワークに引っ越しをせず、元のネットワークに残った人たちがいます。その人達は、自らを、イーサリアム・クラッシックと名づけて、仮想通貨の取引を今でも継続しています。当初は、ごく僅かなハードフォーク反対派に限られると思われていたところ、なんと、仮想通貨の取引所が、次々とイーサリアム・クラッシックの取り扱いを始め、「僅か」とは言えない状況になってきています。

そのため、現在、面白いことに、イーサリアムは、仮想通貨として2種類存在し、

 ・(ハードフォーク後の)イーサリアム

 ・イーサリアム・クラッシック

が別々に取引されています。ただ、もちろん、ハードフォーク後のイーサリアム利用者のほうが圧倒的に多数です。

そこまでして反対するのか!?と、思う方もいるかもしれませんが、突き詰めてゆけば、賛成派・反対派、どちらが正しいという訳ではないように思います。両者の対立は、どことなく、(法学部の憲法の授業などで学ぶ)民主主義と自由主義の関係に似ている気がします。つまり、

  ・コミュニティーの大半が賛成して一部の者を守る

   と決めたことだから良いじゃないか、という民主

   主義的意見

  ・皆が良いと言っても、やってはいけないことが

   ある(守らなければならない「取引への不介入」

   という価値がある)と考える自由主義的意見

の対立です。

各国の憲法では、こういった民主主義の側面と自由主義の側面の双方を国家制度に組み込んでいますが、仮想通貨という「国」にも、自由主義と民主主義をどのように組み込んでゆくか、今後も議論する必要があるのかもしれません。

ちなみに・・・、ビットコインのコミュニティーが、例えば特定の利用者のビットコインの盗難事件が生じた際に、ハードフォークして救済するかというと、断言はできませんが、あまり考えられない気がします。実際、Mt.Goxの事件の当初、「ビットコインが流出した」と騒ぎになった際(これは後に否定されています。)にも、ハード・フォークして救済しよう、という大きな動きはなかったようです(ある意味ではドライ、見方を変えれば仮想通貨の理念に忠実ですね。)。

今回ハードフォークができたのは、イーサリアムの文化や機能の特殊性、登場してまだそれ程期間が経過していないという時期的な要素もあったように思います。

8月1日から、飛田&パートナーズではインターンシップの学生さんを受け入れております。

今週は、A大学のKさんが1週間の執務体験をしてくださいました。
法学部に所属し、ゼミ活動や模擬裁判等にも精力的に取り組み、熱心に法律を勉強されているKさん。
法律事務所ならではの様々な業務を体験していただきました。

衣川さん‗写真

こんにちは。弁護士の萩原です。
以下は、今月発行のメルマガからの転載です。
賃金体系について労働契約法20条の観点から見直してみていただくきっかけとなれば幸いです。


平成28727日の日経朝刊によれば、正社員と契約社員の手当格差(労働契約法20条)に関する大阪高裁判決が、同月26日に言い渡された。

物流会社の有期契約の運転手が賃金格差の是正を求めた事案であり、一審(大津地裁彦根支部)は、「通勤手当」の不支給につき違法と判断していたが、控訴審である大阪高裁は、正社員に支給されている7種類の手当のうち、「通勤手当」のみならず「無事故手当」など4種類の手当の不支給について違法と判断したとのこと。その他の賃金の格差については、契約社員と正社員との間で、転勤や出向がないという事情を考慮したうえで、是正の必要性はない(適法)と判断したようだ。

先月、弊事務所ブログに「定年後の再雇用と労働契約法20条に関する判決」(東京地裁平成28513日判決)をテーマにした記事をアップしたばかり。

http://blog.tplo.jp/archives/47690816.html

労働契約法20条は、平成25年施行であるため、徐々に浸透し、現在も各地でさまざまな訴訟が係属しているだろう。和解で解決する事案ももちろんあるだろうが、訴訟上は当事者である当該労働者のみの賃金格差の話であるものの、その結果によっては事実上全社レベルでの賃金体系の変更が問題となってくる(今回の物流会社についても大阪高裁の判断に従う場合には、訴訟当事者である運転手以外にも同様の有期契約の運転手の賃金を見直す必要がある)。そのため、和解にならずに判決も出るケースが今後も続くのではないか。

こうした判決(裁判例)の集積が実務へ影響を及ぼすことは間違いない。とくに、今回は、高裁レベルで、しかも、「大阪」高裁の裁判例ということでその影響度は大きいと思われる。

判決文を入手できていないので推測になるが、今回の大阪高裁は、通勤手当以外の各手当の性質や位置づけを詳らかに検討したうえで、不合理性を判断したものと思われる。たとえば、無事故手当の性質は、運転業務において安全を奨励し、かつ安全を維持した社員に対する報奨であることからすると、契約社員も正社員同様の運転業務を担っており当然ながら無事故(安全)であることも求められていることに照らし、契約社員についてのみ不支給とすることは不合理と言わざるを得ない、といった具合に。

なお、行政解釈(厚生労働省)では、「とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるものであること。」とされており(基発08102号)、手当については、「通勤手当」が例示されたうえで、その相違は特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるという見解が示されている。

通勤手当は言わずもがなであるが、その他の手当についても、正社員のみ支給対象としているものがある場合には、その合理性(不合理ではないか)を検討した方がよい。

正社員にのみに支給している○○手当は、どのような性質のものであり、なぜ正社員にのみ支給しているのかという趣旨に立ち返って検討するべきである。 

 チェスの世界では、約20年前の19975月に、IBMのスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」が、当時の世界チャンピオンのロシアのカスパロフに勝利しました。囲碁の世界でも、今年(2016年)3月、グーグルの「アルファー碁」が、世界最強棋士と言われている韓国のイ・セドル9段に勝利したことが大々的に報道されていましたね。

 では、将棋の世界はどうかというと、10年くらい前からプロ棋士とソフト(人口知能AI)との対局が本格的に行われるようになり、2012年からは『電王戦』というプロ棋士とソフトとのタイトル戦が設けられ、2012年から2016までで延べ13局が戦われていて、プロ棋士側の5121引き分けという状況です。つまり、プロ棋士側の分がかなり悪く、既にコンピューターの専門家が集まる情報処理学会という団体からは、201510月の段階で、「トッププロとの対戦は実現していないが、事実上、〔トッププロ棋士に勝つコンピューター将棋の実現を目指す〕プロジェクトは、目的を達成したと判断し、プロジェクトを終了する」などという声明が発表されています。

 上記の情報処理学会の声明のなかで「トッププロとの対戦は実現していないが」という部分には、多少プロ棋士側に対して気を使ったところがあるように思います。というのは、電王戦でコンピューターと対局した棋士の中には、将棋界の最高峰のA級というグループに属している棋士(三浦・屋敷)も含まれており、その棋士にもソフトが勝っているからです。

 しかし、棋士側にも言い分があるようです。それは、「まだソフトは羽生善治と対戦していないではないか?」ということなのです。裏を返せば、多くの棋士が、「将棋界最高峰であり、7冠を達成したこともある(現3冠)あの羽生善治に勝ったのであればソフトの強さを認めよう」と考えているということなのです。

 ところが、この問題にも来春には決着がつきそうです。というのは、来春行われる電王戦のプロ棋士側の対局者を決める叡王戦というタイトル戦に、今年、羽生善治がエントリーしたからです。つまり、羽生が順調に勝ち進んで、「叡王」になり、つまり電王戦の対局者になったら、来春、棋士とソフトとの最終決戦が行われ、そこで、棋士が強いのか、ソフトが強いのかの問題に決着がつくというわけです。

 前置きが長くなってしまいましたが、この本は、以上のような将棋界の現状において、観戦記者の大川慎太郎氏が、羽生善治、渡辺明を含む11の棋士に、

① 棋士とソフトのどちらが強いと思うか?

② 将棋の研究にソフトを使っているか?

③ 人間だけしか指せない手があるのか?

④ ソフトの方が強くなった場合、棋士に存在理由があるのか?

⑤ 将棋界は今度どうなっていくのか?

⑥ このような状況で何をすべきか?

等々かなりセンシティブな質問をしたインタビュー集なのです。

ネタばれになってしまうかもしれませんが、大雑把にまとめると、

① 「現時点ではトッププロとソフトが対局した場合、まだ決着はついていない。トップ棋士が勝つ可能性もある。やってみなければわからない。」という人(羽生、渡辺、勝又、森内、佐藤、行方)もいるが、「既にソフトの方がかなり強い」(西尾、千田)という人もいる。ただ、いずれにしても、みなが将来的にはソフトの方がはるかに強くなることを認めている。

② 将棋の研究にソフトを積極的に取り入れている人(千田)と、終盤で詰みがあるかどうかとを検索するという感じでかなり限定的にしか取り入れていない人(羽生、渡辺)と、ソフトを使うこと自体に嫌悪感を示す人(山崎、佐藤康光、行方)がいる。

③ 人間だけしか指せない手は「ない」という人(羽生、千田)と、「ある」という人(佐藤、行方)がいる。

④ ソフトの方が棋士より強くなった場合、棋士に存在意義があるかどうかは、結局のとろろ、人間同士の対局が見たいという世間のニーズがあるかどうかにより決まり、ニーズがなければ棋士に存在理由はないと考えるのが趨勢のようである(羽生、西尾、森内)。

⑤ 現在、将棋界は、棋士になれる人数を制限して、その代わり棋士になれば一定の収入が保証されるような護送船団方式をとっているが、将来的には、この制度を維持するのは難しいだろうと考えるのが趨勢のようである(糸谷、行方)。

⑥ 今やるべきこととしては、自分にできる将棋を指していくしかない(羽生、渡辺、森内)。

 

最近、ネットで対局中継を見ることが多々あるのですが、秒読みに追われながら詰むや詰まざるやの熱戦を見ているときなど本当に面白くて、私は野球のナイター中継を見るより好きです。車が人間よりもはるかに早く走れるようになっても人間の陸上競技には人気があるし、チェスの世界では、コンピューターの方が人間よりもはるかに強くなっているのに、いまでもプロの選手が存在し、さかんに対局が行われています。それと同じように、将棋の世界でも、ソフトの方が人間よりもはるかに強くなっても、人間同士の対局の魅力が失われることはないと思っています。

興味深かったのは、江戸時代末期の黒船の出現に匹敵する(もっとすごいかな?)外部環境の変化(ソフトの出現)に直面して、①それを受け入れて積極的に利用しようとする人、②たんたん受け流して、自分のできることに集中しようとする人、③外部環境の変化を拒否して、いままでのやり方を維持しようとする人と様々であることです。

我々弁護士業界も、遅ればせながら市場化の波にさらされ、これから国際化、さらにはAI化の波にもさらされるでしょう。可能であれば、①のように変化を受け入れ、積極的にそれを利用する立場になりたいですね。

技術革新によって、近い将来に無くなってしまう仕事があるそうです。

その理由には近年のAI(人工知能)の発達、ロボット技術の革新や、デジタルデバイスの進化によるペーパーレス化等が挙げられています。これらの技術が進化すると、今まであった仕事が無くなる、あるいはロボットに取って代わられたりするそうです。

目覚まし時計が無かった時代には人間目覚ましというもの(人)や、昔の映画を観るとよく出てくる電話交換手なども、技術革新によって無くなった仕事といえます。


法曹(裁判官、検察官、弁護士)がAIの発達やデータベースの充実によって、仕事がなくなる又はAIに取って代わられるかというと、そうはならないと思います(少し希望的観測はありますが)。


その理由としては、確かに裁判所は判例を重視し、判例に沿った判決を下すことが多いです。しかし、そもそも事案は様々なので、必ず判例の事案とは違う部分があり、判例がそのまま使えるとは限りません。そのため、弁護士は判例が無ければ文献等を調べて、それでも無ければ独自に論理を組み立てなければなりません。裁判

官や検察官も同じことです。AIやデータベースが充実し進化したとしても、その作業をどこまでできるのか疑問です。

ところで、判例は絶対かというとそうではなくて、何年か又は何十年に一度は判例が変更されます。判例はその時の国民感情や国民意識によって支えられていますが、時代の移り変わりによって、国民の意識は変化していきます。

このような時代の変化による国民意識の変化を考慮して、判例変更を行うという英断をAIが下せるのかも疑問です。下せたとしても、その決断を果たして国民が認めるのかどうかも分かりません。

 

法律には絶対的に正しいという物差しは無いため、裁判所という権威も必要になってきます。AIには権威が認められるのだろうか、また、裁判所には権威の他に人間味もありまして、裁判官が説諭(判決を言い渡す時に、被告人に対して言い聞かせるもの)において、さだまさし氏の「償い」を紹介したことは有名ですが、そのようなこともAIにできるのだろうかというものがあります。

権威の他にこのような人間味があるからこそ、裁判所の判断は支持されているのかとも思います。

 

さらに、大きな問題として、人は人に裁かれるからこそ身を委ねるのであり、AIによって裁かれることに違和感を覚えるのではないでしょうか(たとえ内容が妥当であったとしても)。たとえAIが万能でも、人の上にAIが立つことに対して、人は我慢ならないかもしれません。

 

AIが万能で、人間味もあって、人の上に立つことになっても皆が気にならないようになりましたら、我々は安心してAIに身を委ねることにしましょう。

1. 近況について

引き続き、ブロックチェーンの話題に触れてゆきたいと思います。自らビットコインと「法律問題」と題しておきながら、法律エッセンスが(少)ないように感じていますが、気にせず今回も技術的なことについて書こうと思います。
 

その前に、近況でございますが、弊所も会員になっているブロックチェーン推進協会(BCCC)で、6月29日、会員数が60社を超えたとしてプレスリリースされました。プレスリリースは、以下のURLに記載されております。当初の予定を上回る勢いで会員数が増加しているとのことでございます。

http://bccc.global/ja/articles/297.html

また、昨日(630日)は、BCCCの第一回総会が開かれましたので、弊所からは私が参加してまいりました。様々な業界・規模の会員が参加されており、ブロックチェーンの関心の幅の広さが伺えます。


その他、最近のニュースとしては、ビットコイン採掘時の供給量が半減する「半減期」が間もなく迫っております(なお、この記事を書いているのが2016年7月1日です。)。そのためか、ビットコインの相場がかなり変動していますね。半減期をまたいで、どのように価格が推移してゆくかも興味深いです。


2.
 イーサリアム

さて、前回のメルマガ以降、私の方では、アゴラ研究所で開催されている、ブロックチェーンのセミナーに参加しております(全3回で、最終回は7月です。最終回には、池田信夫氏も登壇される予定です。)。ブロックチェーンの発展や、近時の応用事例などに触れられて、非常に勉強になります。


中でも、Ethereum(イーサリアム)の話は、特に印象に残りました。これは、ブロックチェーン技術を応用したソフトウェアで、その機能の一つとして、なんと、ブロックチェーン上でソフトウェアを動かすことができるのです!!


なんじゃそりゃ??という方も多いかと思います。簡単に言うと、

  ①専用の言語でプログラムを組む

  ②それをブロックチェーン上に載せる

  ③ブロックチェーン上でそのプログラムを動作させる

ということができるのです。

これの何が凄いかというと、(皆が参加する)ブロックチェーンネットワークは、基本的に、何があっても止まらないので、「止まらないプログラム」が実現できるのです。


具体的に言えば、サーバーなど、1つのPCで動かしているプログラムは、停電や、災害、人為的ミスなどで、稀に、止まることも考えられます。しかし、ブロックチェーン上のプログラムは、ネットワークに参加しているコンピューターがそれぞれコピーをもち、どれか一台が壊れても、ネットワークは維持されます。ブロックチェーンは、「電源の切れないPC」などとも例えられ、イーサリアムでは、その「電源の切れないPC」上で、ソフトウェアを動かせるのです。これは、個人的にかなり凄いことだと思います。


また、ブロックチェーンは、改ざんが困難です。そのため、ブロックチェーン上でソフトウェアを動かせるのであれば、そのソフトウェアの改ざんも困難だと思います。


さらに、イーサリアムは、ビットコインと同様、仮想通貨の機能も有しています。本日(7月1日)時点では1(ETH)=1370円前後で取引されています。
 

これは何を意味するかというと、先ほどのプログラムの面と、仮想通貨の面を合わせると、プログラムで容易に仮想通貨を操作することが可能になるのです。例えば、ある条件が成立した時に、仮想通貨を、誰々に移動する、といったことが可能になり、もっと言えば、管理者不要で、資金管理・移動を、自動化することができるのです。


もっとも、あまり良くないニュースも届いています。イーサリアム上で動くプログラムの脆弱性をついて、多くの仮想通貨が、意図せず流出してしまったというのです。これは、イーサリアム自体の脆弱性ではないと思いますが、課題として残された点だと思います。


今後の改善・発展に期待したいです。

3.
 番外編:エミュレーター上で、Solidityのプログラムを動かしてみる

ちなみに、イーサリアム上では、プログラムが動く、ということで、早速、プログラムの作り方を調べてみました。イーサリアム上で動くプログラム言語は、いくつかあるようですが、有名なものでは、「Solidity」という言語がございます。


文法を調べてみましたが、かなりC++ライクです(配列がポインタのような扱いになっていて、「C」っぽいな、と思いました。細かな文法も、かなり、CやC++っぽいです。)。


また、インターネット上に、ブラウザ上で動作する「Solidity」言語のエミュレーターがあったので、早速HelloWorldのコードを入力し、色々いじってみました。
試しにif文なんかを打ちこんでみましたが、普通に使えますね。


if (nData == 3){return "Hello T&P World!!";}

送金処理と組み合わせれば、特定の条件が満たされた場合に、お金を送金する、という処理も、ちょっとプログラムを勉強すれば、誰でも簡単に実現できるのではないでしょうか。

↑このページのトップヘ