最近のビットコインですが、現在(この記事を書いている2020/7/15現在)、1BTC=99万円ほどで推移しています。ここのところ、100万円前後で上がったり下がったり、という流れになっています。

さて、前回、中央銀行が発行するデジタルマネー(CBDC)の話題について触れました。

その際、日銀も、CBDCについて研究している、といった話をしましたが、昨日の日経新聞電子版を見たところ、日本政府が、公式に、CBDCの検討を「骨太の方針」に盛り込む方向である、と報道されています(有料記事ですが、記事冒頭部分は右のURLで見ることができます。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61499170U0A710C2MM8000/)。

 

最近、CBDCは、各国でも、注目を集めており、いわば、ブームのようになっています。

各国中央銀行は、Libraなど「民」がやろうとするデジタルマネーに対しては、基本、批判的でしたが、「官」によるCBDCがブームになったこともあってか、デジタルマネーに関する方針を転換する、といった話も出てきています。

 

すなわち、共同通信の報道によれば、G20は、これまでの方針を転換して、デジタル通貨容認の方向に舵切りをするとのことです(https://this.kiji.is/654657337360712801?c=113147194022725109)。ここでいうデジタル通貨が、あくまで、「官」によるCBDC中心の話なのか、Libraなどの「民」によるものも念頭に置かれているのか、必ずしもニュアンスは不明ですが、報道を見る限り、後者のニュアンスを感じます。

 

以上のように、刻一刻と、状況が変わっていっているように思います。この点、本当にざっくりですが、(主観を交えて)これまでの歴史を振り返ってみると、

 

Facebookが著名企業とともにタッグを組んで「Libra」を提案しました。

 

②この「Libra」は、各国中央銀行が袋叩きに批判したため、実質、頓挫の状況になりました(マネロン等のリスクもありますが、実質、法定通貨に取って代わる可能性があるとなると、中央銀行も黙っていられない、という面もあるように思います。)。

 

③ただ、他方、中国は、Libraも意識して、デジタル人民元の(早期)リリースを匂わせ、実証実験なども行っています。

 

④このような状況を見て、中国にやられるならば、ということで、デジタルドルの議論も活発化しました。

 

⑤さらに、日本を含めた各国で、自国通貨のデジタル化(CBDC)の検討もブームとなっています。

 

⑥そして、ついに、G20も、容認路線に方針転換をしよう、という状況、と報道されています。

さて、この⑥が、今後、どう効いてくるのか、見ものです。

Libraにとって追い風となり、Libraが返り咲くのか、あるいはそうでないのか(あくまで、中央銀行主導のCBDCに力を入れてゆくのか。)。

 

また、日本政府としても、CBDC(デジタル日本円)を、どう「検討」してゆくのかも興味深いです。

 

(1) 具体的には、まず、硬貨や紙幣に代わるものであれば、極めて高い安全性を備えたシステムである必要があります。この辺りを、具体的にどう実装してゆくのか、様々な考え方があろうかと思います。ビットコインなどの仮想通貨とは、大きく異なった技術的仕組みを採用することになるかもしれません。

 

(2) 他方、(安全性の点は、政府も、言われなくとも最大限配慮をすることとは思いますが)その結果、全く使い勝手が悪いものになっては、意味がないように思います。安全性を備えつつ、利便性が高いものを作る、という点、難しい問題と思います。

 

(3) さらに、法律家的な視点ですと、デジタル円に対して、強制執行ができるか、という点にも興味があります。すなわち、現状、自己保有するビットコインに対する有効な強制執行策がありません(全財産をビットコインに変えて、ビットコイン管理用の秘密鍵をどこかに隠すないし暗記してしまった場合、いくら、裁判所が、差し押さえだ、といっても、実質、差し押さえようがありません。)。

 では、デジタル日本円については、どうするのか、という疑問があります。この点、

 ・ビットコインなどと違って、中央銀行ないしそれに近い機関が、任意に、いつでも個々人のデジタル円を移動させられる、という設計にすれば(そういった仕組みが哲学的にいいか、悪いか、は別として)、裁判所による差し押さえなどは支障ないかもしれません。ただ、その場合、「このデジタル円は、○○さんが保有するものだ」という切り分けができることが前提と思います(要するに、デジタル円と個人を結びつける情報を、どこかに記録しておくことが必要と思います。ただ、そうすると、事前の本人確認や口座開設などの手間などが生じ、結局、銀行預金と何が違うの?という話になってしまうかもしれません。)。

 

 ・他方、そもそも、デジタル円についても、裁判所による差し押さえはできないのだ、と割り切って、別の方法を考える(取引の際に、エスクローをかませる、担保をとるなど、事前の予防策に重点を置く)、ということも考えられます。

 

総論として、CBDCをやるとしても、各論として、具体的にどう設計するのか、これから議論が深化してゆくのではないかと思います。

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1. はじめに

前回メルマガ記事を書いた4月の段階で、ビットコイン価格は、1BTC=76万円前後でしたが、その後、価格は上昇し、5月から6月にかけて、上下しつつも、概ね、1BTC=100万円超となりました。

 

その後、100万円を割ることもありましたが、この記事を書いている時点(2020/06/17)では、1BTC=102万円で推移しています。

 

2. リブラ等の最近の動き

 

さて、今回は、これまでにメルマガに書いたリブラ、の延長線上の話として、「デジタルドル」について触れたいと思います。

 

前提としまして、最近の動きなどを、ざっくりとまとめてみます。

 

これまでも記事にしたとおり、Facebookが主導して提唱した仮想通貨「リブラ」は、残念ながら、(特に、法定通貨を脅かすものとして、中央銀行の不興を買ったためか)各方面から袋叩きにあいました。

 

そこで、Facebook(リブラ)側としては、方針の修正をアナウンスしており(https://libra.org/en-US/white-paper/#cover-letter)、具体的には、(セキュリティを強化することはもとより)法定通貨と11で対応するステーブルコインを発行する計画を公表しました(https://libra.org/en-US/white-paper/#cover-letter)。

 

要するに、1ドル払って、1ドルリブラ、みたいな仮想通貨(ないしステーブルコイン)を貰える、という計画のようです。

 

但し、従前の仕組み(複数の通貨のバスケットにリンクするリブラ)も、諦めてはいないようで、既存の仕組みに「加えて」("in addition to")、上記のような仕組みを追加する旨、説明がされています。

 

リブラに関して、以上の状況をどう評価するか、人によって判断が分かれるところですし、将来的にどうなるかは分かりませんが、正直なところ、現段階で、批判を受けて、ほぼ頓挫している印象を受けます。

 

他方、リブラを尻目に、中国のデジタル人民元の計画は、着々と進んでいるようで、深センなどの一部の都市で、テスト運用を実施するとの報道がされています。報道の中で、興味を引いたのは、デジタル人民元は、インターネット環境がなくとも、スマホ同士で通信して、送金することができる仕組みを備えるそうです。まだ、テスト段階の話であり、今後もその機能が維持されるのかは分かりませんが、素朴な疑問として、果たして、それってセキュリティ的にどうなんだ?マネロン対策とかもできるの?などと思ってしまいます。

 

3. デジタルドル

 

さて、人民元をデジタル化しようという話があるのであれば、やはり、米ドルをデジタル化しよう、という話もあります。ちなみに、最近では、そういった、中央銀行が発行するデジタル通貨をCBDCCentral Bank Digital Currency)と呼んでおり、報道などでも、よく使われる単語となりつつあります。

 

この点、米政府としてはCBDC発行に慎重な姿勢のようではありますが、最近、ちょこちょこと気になる動きがありました。


まず、民間の話ではありますが、米国商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長(J・クリストファー・ジャンカルロ氏)が、「デジタルドル財団」という財団を設立し、アクセンチュア社とともに、ドルのデジタル化の設計・推進を推し進めています(デジタルドルプロジェクト。https://www.digitaldollarproject.org/)。

 

最近では、ホワイトペーパー(目論見書)などを出してニュースになりました(https://www.digitaldollarproject.org/exploring-a-us-cbdc)。

 

ここまでは、単純に、民間団体によるドルのデジタル化に関する提言、といったレベルの話です。しかし、最近では、米議会の下院において、金融サービス委員会の公聴会が開催され、デジタルドルに関して議論もされています。前記デジタルドルプロジェクトのジャンカルロ氏も参考人として参加しています。

 

デジタルドルプロジェクトの動きは、要するに、技術的仕組み等々は、民間レベルで提言するから、政府はそれを採用して、ドルのデジタル化を進めてくれ、ということと思います。

 

これに対し、中央銀行側はどう反応したかといえば、そっけない反応です。すなわち、報道によれば、連邦準備制度理事会(米国の中央銀行に相当)のパウエル議長は、617日の下院委員会で、官民協力によるデジタルドルの設計について、否定的見解を示したとされています。

 

ただ、他方で、FRBは、これまで、デジタルドルの可能性を研究しきているとのことで、前記17日の委員会においても、パウエル議長は、CBDC(デジタルドル)は、真剣に研究していく案件の1つ、とも発言しています。

 

正直なところ、FRBとして、どこまで研究を進めているのか、どこまで発行に向けた具体的計画が進んでいるのか(あるいは進んでいないのか)、等々、ベールに包まれた部分が多いです。ただ、報道によれば、パウエル議長は、「待たせすぎるのも問題になる」という意味深な発言もしているようで、ひょっとすると、裏で、発行計画が着々と進んでいるのかもしれません。

 

このように、リブラに端を発して、中国のデジタル人民元、EUデジタルユーロ、そして、アメリカのデジタルドル、と、どんどんと波紋が広がっているようです。

 

ちなみに、日銀も、欧州中央銀行(ECBその他の銀行とともに、CBDCについて研究をするなどしています(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200121a.htm/)。

 

あと10年もしたら、今を振り返って、「リブラの発表が、法定通貨の歴史的な転換点であった」などと言われるようになるのかもしれません。

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厚生労働省によれば、今年の521日時点で、新型コロナウイルスの影響によって新卒採用の内定を取り消された方が少なくとも98人いるとのことです。
(朝日新聞デジタル:https://www.asahi.com/articles/ASN5Q4GZBN5QULFA004.html

 

採用内定が会社から出ると、法的には、「始期付解約権留保付労働契約」が会社と採用内定者との間で成立したと考えられますので、条件付きとはいえ労働契約が締結された以上、いったん出した採用内定を、会社が自由に撤回できるということにはなりません。

 

実務上は、採用内定の取消事由となるのは、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」とされています(最判昭54.7.20労判323-19)。

 

つまりは、採用内定者の態度が気に食わないなどの理由だけでは、採用内定を取り消すことはできません。
※採用内定を出す前の段階では、採用内定を出すかどうかについて会社に広範な裁量があるので、この程度の理由でも不採用にするということはよく聞く話です。

 

採用内定の取消事由となり得る主なケースは、以下のようなものがあり、採用内定時に署名する誓約書や承諾書に、これらが採用内定の取消事由になると具体的に記載されていることが多いです。企業側の観点からすれば、取消しの有効性に関わってきますので、できるだけ解約権の行使事由を明記しておくことは重要です。

 

・採用内定者の提出書類に虚偽記載(学歴詐称等)がある場合

・大学を卒業することができない場合

・身体又は精神の故障によって予定入社日からの就労の見込みがない場合

・会社の経営難等のやむを得ない事由がある場合

 

今回の新型コロナウイルスの影響による採用内定の取消しは、「会社の経営難等のやむを得ない事由がある場合」を理由にしているものと考えられますが、経営難を理由として採用内定の取消しを行うには、「いわゆる整理解雇の有効性の判断に関する…4要素を総合考慮のうえ、解約留保権の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができるかどうかを判断すべきである」という裁判例があります(東京地決平9.10.31。※中途採用の裁判例)。

 

整理解雇の有効性の判断基準は厳格な基準ですが、採用内定の取消しは、採用内定者の他社就労の機会を奪っており、採用内定者の今後の生活・キャリアにも関わってきますので、慎重な判断が求められるべきという基準は適当であると思います。

 

したがって、今回の新型コロナウイルスの影響による経営難も、単に経営の見通しが不安等の漠然とした理由ではなく、具体的な数字に基づいて、きちんとした根拠を示せないと、採用内定の取消しは認められないと考えられます。

 

なお、内定取消・入職時期の繰下げにあった方のために、厚生労働省が4月から特別相談窓口を設置していますので、下記URLをご参照ください。
※厚生労働省「新卒者内定取消等特別相談窓口」(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000193580_00003.html

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弊事務所の馬場悠輔弁護士が、Webメディア「スモビバ!」にて
「【新型コロナ】契約キャンセルや支払遅延、休業要請でも発生する店舗賃料...個人事業主を法律は守ってくれる?弁護士が解説!」(https://www.sumoviva.jp/trend-tips/20200525_1834.html)と
「従業員への賃金支払いや出社命令、取引先との契約トラブル対処など法人の新型コロナにまつわる悩みを弁護士が解説!」(https://www.sumoviva.jp/trend-tips/20200525_1835.html)と題する記事を2つ執筆し、公開されました。

是非、「スモビバ!」で記事をご覧くださいませ!
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2020年5月11日の日経新聞(電子版)に衝撃的な記事が出ました。

それは、「株主総会『来場禁止』も容認 経産省が指針」という見出しの記事です。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO58944830R10C20A5EE8000?s=4

内容を抜粋すると

「新型コロナウイルスの感染拡大で企業決算のとりまとめが遅れていることを受け株主総会に株主の来場を禁止することができるとの指針を経済産業省がまとめた。招集通知などに記載し、議決権を事前に行使するよう促すことを提案する。」

「2020年3月期決算の企業の株主総会が6月末に集中して開催されるのを前に、経産省がQ&Aを公表した。企業が「株主の来場なく開催することがやむを得ないと判断した場合」は、招集通知や自社のウェブサイトなどに記載し、株主に理解を求めるように促した。」

というものです。

しかし、経産省のQ&Aを読んでみると、「来場禁止」とすることを容認しているとまで言えるのか少々疑問に思います。問題のQ&Aは次のとおりです。

https://www.meti.go.jp/covid-19/kabunushi_sokai_qa.html

A)の第三段落に注目してください。

Q2.会場に入場できる株主の人数を制限することや会場に株主が出席していない状態で株主総会を開催することは可能ですか?

(A)    可能です。

Q1のように株主に来場を控えるよう呼びかけることに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、やむを得ないと判断される場合には、合理的な範囲内において、自社会議室を活用するなど、例年より会場の規模を縮小することや、会場に入場できる株主の人数を制限することも、可能と考えます。

 現下の状況においては、その結果として、設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能と考えます。この場合、書面や電磁的方法による事前の議決権行使を認めることなどにより、決議の成立に必要な要件を満たすことができます。

 なお、株主の健康を守り、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために株主の来場なく開催することがやむを得ないと判断した場合には、その旨を招集通知や自社サイト等において記載し、株主に対して理解を求めることが考えられます。

第1段落は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、株主総会の会場の規模を縮小したり、入場できる株主の人数を制限したりすることは可能であると回答し、第2段落は、Q1で可能とした「株主に来場を控えるよう呼びかけること」や、第1段落で回答した会場の規模縮小や入場制限をした結果として、会場に株主が出席していなくても総会開催は可能であると回答したもので、特に異論はないかと思います。

問題は、第3段落なのですが、「株主の来場なく開催することがやむを得ないと判断した場合」であることを総会前に発送される招集通知や自社サイト等に記載することを求めていますので、「結果として」会場に株主が来場しなかった場合ではなく、まさに事前に株主の来場を禁止することを想定していると思われます。しかし、第1段落、第2段落の結論部分が「可能と考えます。」なのに対し、第3段落では「株主に対して理解を求めることが考えられます。」なのです。そして、理解してくれなかった株主が来場した場合に、「株主の来場は禁止されていますので、お帰りください。」と言えるか否かについては言及がないのです。そうすると、株主の理解が得られなかった場合には、「来場を認めなければならない」と読む余地もあるように思います。したがって、弁護士としては、このQ&Aの記載や前述の日経新聞の記事だけからでは、「株主の来場を禁止して総会を開催しても大丈夫です。」などとはいえないのではないかと思います(注1)。

結局、現時点での選択肢としては、

①6月末の開催予定を7月、8月、9月に延期するか

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html

②来場自粛要請(議決権行使書やウェブ投票で議決権を行使してもうらう)、会場規模縮小、入場制限などで感染予防に配慮しつつ、6月末に開催するか、

https://www.meti.go.jp/covid-19/kabunushi_sokai_qa.html

⑥感染予防に配慮しつつ、監査スケジュールの遅れも考慮して、6月末の総会では役員の改選等のみを行い、3ヶ月以内に継続会を開催して決算の報告を行うか、

http://www.moj.go.jp/content/001319501.pdf

というところではないでしょうか。

なお、新型コロナの件がなくても、インターネットを使って株主総会に出席して議決権を行使できるようにする仕組みはとても重要で、まさに経済産業省の「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/shin_sokai_process/index.html

で専門家の議論が進められている最中でした。今回の新型コロナには間に合わなかったわけですが、今後も、感染症等々の問題は発生しますので、ぜひ早期にまとめていってほしいと思います。

(注1)株主の来場禁止を違法とする見解として、山口利昭弁護士のブログの記事「株主の出席を禁止してでも6月総会実施?―定時総会は(やはり)完全延期すべき。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2020/05/post-bf91ba.html)参照。

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最近のビットコインですが、2月中旬頃、1BTC=110万円を超えていたところ、3月初旬に、1BTC=50万円を切るまで急落し、その後、上昇して、現在(2020/04/17)、1BTC=76万円前後で推移しています。

 

3月初旬の急落については、タイミング的に、新型コロナウイルスの混乱に伴う株式市場の下落と同じタイミングであり、混乱に伴って、株式同様に値を下げたのではないかと思われます。

 

過去には、株式とビットコインの相場は、それほど関係性はありませんでしたが、最近では、株式に近い動きをすることもあるようです。他方、今後は、金などと同様、資産の逃避先として需要が高まるのではないか、という見方もあるようです。

 

 

 

さて、世間では、コロナウイルスによる混乱で、ニュースも、コロナ一色となっています。41日からは、120年ぶりの大改正と言われた民法が施行されましたが、その割に、全然、報道がされていない印象です(おそらく、コロナの件がなければ、改正民法の話題で持ちきりだった・・・とまではいいませんが、もっと大きく報道されていたかもしれません。)。

 

 

仮想通貨関連の話題としては、51日から、改正資金決済法が施行される予定となり、これによって、法令上の用語としては、「仮想通貨」ではなく「暗号資産」と呼ばれるようになるなど、様々な点の改正がなされます・・・が、民法改正以上に報道されていませんね。こちらについては、後々、回を改めて、ご紹介できればと思います。

 

 

また、前回まで、連続して取り上げていた、FacebookLibra、中国やEUのデジタル通貨の、三つ巴の戦いについて、その後、Libra側では、国内外からの批判を受けて、厳格な規制に準拠するようにするなど、対応を迫られているようです。他方、それを尻目に、中国側では、4月に入って、デジタル人民元に対応するスマートフォンアプリの開発中画面が、インターネット上で公開され、着々と発行の準備が整いつつあることをアピールしているように思います。

 

 

さらに、もう1つ、ビットコインに関して言えば、間近に迫った大きなイベントがあります。それは、約4年に一度発生する半減期です。

 

半減期とは何か、ですが、端的に言えば、ビットコインの新規供給量が、半分に減るタイミングを意味します。この点、ビットコインは、中央管理者がいないため、一定のルールに従って、ソフトウェアが、自動的にビットコインを新規発行することになっています。現状、取引台帳が約10分毎に更新されるごとに、12.5BTC(今の相場で約950万円)が新規発行されていますが、これが、もう間もなく、半減期を迎えて6.25BTCに減少します。

 

難しい言い方をすれば、ビットコインのマイナーに自動的に付与される報酬(マニング報酬)の額が、半額になる、ということとなります。

 

 

この半減期ですが、現状では、512日頃になると予想されています。「頃」というのは、日付で決まっているのではなく、いわば、取引台帳の枚数がどの程度になったら発動する、という条件になっているため、正確な日付が流動的だからです。13日になるかもしれませんし、11日になるかもしれません。ただ、既に、半減期まで1ヶ月を切っていることとなります。

 

 

この半減期については、ビットコインの供給量が減ることから、ビットコイン価格が上昇する要因となりえます・・・というのが、通常の説明ですが、(これは、ビットコインに限った話ではありませんが)現在のコロナウイルスによる混乱の最中では、どうなるか、分からないように思います。

 

 

世界的に大変な状況ではありますが、今後も、仮想通貨関連の話題に注目してゆきたいと思います。

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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍首相は411日に緊急事態宣言の対象となっている7都府県の全事業者に対して、オフィス出勤者を最低7割削減するよう要請し、併せて全国の繁華街で接客を伴う飲食店への出入り自粛も呼びかけました。(日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57959650R10C20A4EA3000/?n_cid=DSREA001

 

事業者として、オフィス出勤者の7割削減の要請に応えるためには、テレワークを導入するか、しばらく休業して出勤者自体を減らすかの選択を迫られることになります。
テレワークとは、時間や場所の制約を受けずに柔軟に働くことができる就業形態のことで、①在宅勤務、②モバイルワーク(カフェや飛行機のラウンジ、取引先の会社等の使用)や③サテライトオフィスでの勤務(レンタルオフィス、シェアオフィス等)と区分されています。

 

新型コロナウイルス感染予防のためのテレワークとしては、必然的に上に挙げたテレワークの区分のうち在宅勤務(①)になるでしょう。
もちろん、そもそもテレワークを導入することができない業種や、設備・セキュリティの面で難しい事業者もあると思いますので、新型コロナウイルス感染予防のために、時差出勤や時短勤務を導入することが考えられます。

 

まず、在宅勤務に関してですが、そもそも採用時に在宅勤務制度があることを労働条件通知書や就業規則の規程等で明示しているのであれば、使用者の業務命令として通常の勤務から在宅勤務へ変更が可能ですが、在宅勤務制度がない場合には、在宅勤務について労使間の合意が必要です。
また、在宅勤務においては労働時間の管理が問題となりますが、まず原則として使用者には労働者の労働時間を管理する義務がありますので、始業時・終業時に上長にEメールを送るなどを指示することで管理する方法があります。また昼食時間等により一定時間離席するような場合にも上長等に連絡することで、使用者は労働時間を管理することが考えられます。

 

※このほかに労働時間の管理方法としては、厚生労働省が方法やツールを紹介していますのでご参照ください。

「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category7/02.pdf 

「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf 

 

在宅勤務のようなテレワークにおいては、よく事業場外みなし労働時間制(所定労働時間、労働したものとみなす制度)が適用されるのかが問題となりますが、そもそも同制度が就業規則等に明記されていないと適用されず、また労働者が随時使用者の具体的な指示に基づいているような場合には適用できないので、注意が必要です(その他に、使用する情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態においていないことの要件が必要です)。

 

実は、今回の新型コロナウイルス感染症対策として、テレワークを新規で導入する中小企業の事業主に対して、所定の要件を充たした場合には、国から助成金が支給される制度があります。(厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

 

また、時差出勤については、これも元々始業時間・終業時間が労働契約で決まっており、これを変更する必要があるので、始業時間・就業時間の繰り下げや繰り上げを定める就業規則がなければ一方的に行うことはできません。
今回のような緊急のケースでは、悠長に就業規則の変更手続を行う時間がないと思いますので、労働者との合意により、始業時間・終業時間の変更をすることになるでしょう。
ただし、多くの企業が時差出勤を導入すると、繰り上げた時間・繰り下げた時間に通勤者が増え、かえって新型コロナウイルスの感染予防にはならないので、状況に応じて始業時間・終業時間を変更していく必要があるでしょう。

 

今回の政府によるオフィス出勤者の最低7割削減という要請は、元々準備をしていない企業にとっては非常に難しいものであり、多くの事業者に動揺が生じることは想像に難くありませんが、労使間で十分に協議しながら進めていく必要があると思います。
新型コロナウイルスの感染者数は日々増加していますが、今後は、これにより働き方に対する国民全体の意識・価値観の変化が生じることになると予想されます。

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新型コロナウイルスの感染が全国的に広がっていることを受けて、日本政府は、47日に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令しました。
今回の緊急事態宣言の対象区域は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫及び福岡の7都府県で、対象期間は今のところゴールデンウイーク明けの56日までの1ヶ月間としています。

 

緊急事態宣言が出されると、対象区域の都道府県知事は、不要不急の外出自粛を要請したり、多数の者が利用する施設の管理者に対して、施設の使用制限の措置を講ずるよう要請(休業要請等)したりすることができ(特措法第45条)、今回も上記の都道府県知事から外出自粛要請(※休業要請については、4月10日現在、延期されるという話が出ています。)が出されています。
この外出自粛要請・休業要請に従って休業することにした会社は、従業員に休業してもらうことになりますが、これが「使用者の責に帰すべき事由」による休業といえる場合には、会社(使用者)は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を従業員に支払わなければなりません(労働基準法第26条)。

 

それでは、今回の緊急事態宣言(及び外出自粛要請・休業要請)を理由とした会社休業が、果たして「使用者の責に帰すべき事由」といえるのか?については、かなり解釈が分かれるものと思います。

 

上記のとおり、今回の緊急事態宣言及びそれに基づく外出自粛要請・休業要請は、あくまでも「要請」に過ぎないので強制力はなく、仮にこの要請に従わなかったとしても罰則があるわけではありません。この要請に従わない場合には、「指示」に格上げすることができますが、この「指示」に従わなかったとしても、やはり罰則があるわけではありません(特措法第453項)。

 

ということは、今回の緊急事態宣言(及び外出自粛要請・休業要請)を理由とした会社休業は、罰則のないような要請に、あくまでも会社が自主的な判断で従ったのであるから、「使用者の責に帰すべき事由」に該当するとして、会社は、休業期間中の休業手当を従業員に支払う必要がある・・・ということになるかというと、必ずしもそうはならないでしょう。

 

休業要請が出ているのに営業を続けた場合に、もし感染者を出してしまったときは、社会的に非難されることは避けられませんし、施設の消毒や検査等により完全休業せざるを得なくなるおそれもあります。また、外出自粛要請が出ている中で、来客の見込みがなく休業せざるを得ないケースもありますので、これらを全て「使用者の責に帰すべき事由」に当たると考えることは、法解釈としては難しいと思います。

 

この点、厚生労働大臣は47日の記者会見で、緊急事態宣言が発令され、特定施設の使用が制限された場合、使用者側の休業手当支払い義務について「一律に、直ちになくなるものではない」と述べましたが、これはあまりに不明確かつ無責任な発言でしょう。(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200407-00000066-kyodonews-bus_all

 

また、使用者が休業手当を支払った場合には、「雇用調整助成金」の制度の利用が考えられますが、支給金額には上限が設けられており、また、助成金はいつ支給されるのかが今のところ不明であるため、キャッシュに余裕のない使用者は、この助成金を当てにして休業手当を支払っていいものか迷うことになります。

 

結局、緊急事態宣言が出されても自粛「要請」に過ぎず、厚生労働大臣も上記のような曖昧な態度であると、ケースバイケースという話になり、使用者は休業手当を支払っていいものか、労働者は休業手当をもらえるのかについて、その結論は不明確となり、不安が続くことになります。

 

政府には、これこれの業種は営業を続けて欲しい、それ以外の業種で休業した場合は従業員に休業手当を支払うべきであり、休業手当を支払った会社には助成金を支給する、キャッシュフローに不安がある会社のために支給時期を明確にする・早める等のアナウンスをして、不安を解消して欲しいものです。そうはいっても、財源はないし、人手も足りないので、企業へ補償することなど今の時点で明確にすることはできないのだ、と言うのかもしれません。
だとしたら、そういった理由があることをきちんと数字を示して国民に説明するべきであり、それが民主主義の基本であり、そのあたりを省略してしまっては国民の納得を得ることは難しいでしょう。

 

今まで様々なことを政府は曖昧にしていますが、ある意味日本人の“人の良さ”に助けられている部分が多いと思いますので、是非ともリーダーシップを発揮して、できる限り国民の不安を取り除くような舵取りをして欲しいところです。

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新型コロナウイルスを理由として、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定しましたが、従業員の時差出勤を促したり、在宅勤務に切り替えたりと労働環境にも大きな影響を及ぼしています。旅客事業を営む会社では需要の落ち込みから、従業員に休業してもらう措置を講じているところもあります。

 

会社による従業員の賃金補償(休業手当)については、労働基準法第26条に定められており、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
この休業手当を支払う必要があるかは、新型コロナウイルスを理由とした休業が「使用者の責に帰すべき事由」といえるのか?という点を検討する必要があります。

 

政令によって、新型コロナウイルス感染症が「指定感染症」として定められたため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」といいます。)によって、新型コロナウイルスの感染者だけでなく、「当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者」や「感染症の無症状病原体保有者」に対して、都道府県知事が就業制限や入院の勧告等を行うことが可能となりました(第7条、第18条)。
ただし、この就業制限は、厚生労働省令で定める業務(飲食物の製造・販売、接客業等)に限られていますので、その他の業務に就いている方には、感染症法に基づく就業制限の対象とはなりません。

 

感染症法に基づく就業制限の対象とならない場合について、この点について、厚生労働省のWebページでは不明確なのですが、新型コロナウイルスは、労働安全衛生法施行規則第6111号の「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病」に該当するとして、新型コロナウイルスに罹患した場合は、同法第68条に基づいて、事業者はその従業員の就業を禁止させる法的義務を負うと考えます。
(厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQA」「6安全衛生 問1」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q6-1 
「感染症法により就業制限を行う場合は、感染症法によることとして、労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置の対象とはしません。」とありますが、反対解釈として、感染症法により就業制限が行えない場合には、労働安全衛生法第68条の適用対象になると読めるのではないでしょうか。)

 

そのため、従業員が新型コロナウイルスに罹患した場合には、法律に基づいて従業員の就業が制限・禁止されるので、これによる休業は「使用者の責に帰すべき事由」とはいえない(=休業手当を支払う必要はない)と考えられます。
仮に、労働安全衛生法第68条が適用されないと解釈したとしても、使用者は他の従業員に対する伝染予防の義務(安全配慮義務)があるでしょうから、罹患した従業員を業務命令により休業させることは、いずれにしても「使用者の責に帰すべき事由」とはいえない(=休業手当を支払う必要はない)と考えられるでしょう。

 

問題になるのは、従業員が新型コロナウイルスに罹患した「疑い」がある場合の取扱いです。
この場合は、労働安全衛生法第68条の適用はなく(同条は罹患した場合の規定です。)、また感染症法に基づく就業制限がされないときは、どのようにして「使用者の責に帰すべき事由」かを判断するのかが問題になります。

 

この点について、厚生労働省のQA(問2843)によれば、a.風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならないときを含む)、又はb. 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合には、「帰国者・接触者相談センター」での相談を促しており、この症状が1つのメルクマールになると考えられます。
これらの症状がある従業員に休業してもらう場合には、他の従業員に対する感染予防の観点から、「使用者の責に帰すべき事由」とはいえない(=休業手当を支払う必要はない)と考えられます。

 

もっとも、今の時期は、使用者も敏感になり、上記a.又はb.の症状がなく軽い発熱程度の従業員にも休業してもらうことが多いと思いますが、このような場合の休業は、使用者による自主的判断であるとして、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」にあたる(=休業手当を支払う必要がある)と考えられ、厚生労働省QA44)でも同じ解釈がされています。
使用者による自主的判断といっても、もし従業員が新型コロナウイルスに罹患していた場合には、会社(場合によっては会社が入っているビル全体)を長期間閉鎖せざるを得ず、後で罹患が判明したときの経済的リスクや社会的非難を受けるリスクを考えると、使用者は従業員に休業してもらうのもやむを得ないように思います。しかし、休業手当は従業員の生活補償の意味合いが強いので、このような場合でも、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」にあたると考えられます。
(この意味で、民法上の「使用者の責めに帰すべき事由」(民法536条)については、過失責任主義に基づく帰責事由があると解される可能性は低いと考えられ、全額補償する必要はないと考えられます。)

 

以上をまとめますと、次のとおりとなると思います。もっとも以下は原則論で、就業規則に別段の定めがあれば、それに従うことになります(ただしその内容の合理性については解釈の余地は有り得るでしょう。)。

 

①新型コロナウイルスに罹患した従業員自ら会社を休んだケース

②新型コロナウイルスに罹患した従業員に会社を休むよう命令したケース

・法律上の就業制限がある場合→休業手当を支払う必要なし

・法律上の就業制限がない場合→休業手当を支払う必要なし

 

③新型コロナウイルスに罹患している疑いがあるとして従業員が自ら会社を休んだケース

・感染症法に基づく就業制限がある場合→休業手当を支払う必要なし

・感染症法に基づく就業制限がない場合→(通常の病欠と同じ扱いとして)休業手当を支払う必要なし

※ただし、会社が、上記a.又はb.に至らない症状(業務ができる状態)でも休むように指示を出していた場合には、休業手当を支払う必要あり。

 

④新型コロナウイルスに罹患している疑いがあるので従業員に会社を休むよう命令したケース

・感染症法に基づく就業制限がある場合→休業手当を支払う必要なし

・従業員に上記a.又はb.の症状がある場合→休業手当を支払う必要なし

・従業員に上記a.又はb.の症状がない場合→休業手当を支払う必要あり

※会社が指示を出す、方針を打ち出す程度でも、現状従業員は従わざるを得ないので、ここでいう「命令」に含まれると考えられます。

 

いわゆる新型コロナ特措法が成立し対策本部が設置され、オーバーシュートやロックダウン等の普段耳慣れない言葉も使われ始め、不安な日々が続きますが、早く収束していくことを祈ります。

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「同一労働同一賃金」という言葉が出てきて久しくなってきていますが、この「同一労働同一賃金」の対象となる労働者は、パートタイム労働者や有期雇用労働者だけでなく、派遣労働者も含まれます。
今年の41日に、この派遣労働者の「同一労働同一賃金」を実現するための改正派遣法が施行されます。

 

従来から、派遣労働者と派遣先の正社員(※ここでは「無期雇用のフルタイム労働者」と定義します。)との待遇の不公平感が話題になっていましたが、今回の改正によって、派遣元企業は、①派遣先の労働者との待遇を均等・均衡にする改善方法(均等・均衡方式)(改正派遣法第30条の3)、②派遣元と派遣労働者との間の労使協定に基づく待遇の改善方法(労使協定方式)(改正派遣法第30条の4)のどちらかを選択できるようになりました。

 

改正派遣法は、実際に働いている派遣先の正社員と比較すると出てくる不公平を是正するために改正されたものなので、派遣労働者が派遣先の正社員と同じ働き方をするのであれば、均等・均衡方式(①)が原則という立て付けになっています。
しかし、それだと大企業に派遣される場合は正社員との均衡待遇で給与が高くなる一方で、中小企業に行った場合は給与が下がってしまうので、給与が不安定になる等の理由で特例として労使協定方式(②)を認めています。
ただし、給与を派遣先に合わせる手間や、「なるべく自社の賃金データは開示したくない」という派遣先の事情から(労使協定方式だと情報提供義務が緩和されます。改正派遣法施行規則第24条の4参照)、多くは労使協定方式になると言われています。

 

さて、労使協定方式にする場合には、「その地域の同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金」と比較して、同等以上の賃金になるようにしなければならないとされています(改正派遣法施行規則第25条の9)。
そのため、労使協定方式にする場合でも一定水準以上の賃金確保が必要となり、派遣元企業は従来の派遣料金を維持することはできず、派遣料金の値上げは必至です。
なお、大手人材派遣会社は今年の4月以降、派遣料金を12割値上げするとのことです。
(日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54305270Q0A110C2MM8000/

 

こうなると、派遣料金の値上げに対応できない派遣先企業は、派遣労働者の受入れを減らすことになるため、結果的に派遣元企業による派遣労働者の雇用維持が難しくなるのは目に見えています。
ただでさえ無期雇用転換の回避のために、派遣労働者の雇止めが増えてくるといわれているのに、ますます派遣労働者の立場は不安定になると考えられます。
ただし優秀な派遣労働者の場合には、今回の改正派遣法をきっかけに派遣先企業から直接雇用のオファーがあるかもしれません。

 

こう考えると、派遣労働者の格差是正のためという理由で施行される今回の改正派遣法ですが、実力のある派遣労働者は派遣元企業に残ることができ(又は派遣先企業から直接雇用のオファーがあり)、他方でそうではない派遣労働者は居場所がなくなるおそれがあるので、結果的に実力主義が促進され、派遣労働者全体の保護には繋がらないでしょう。

 

日本の派遣制度は、派遣先の正社員よりも待遇面で立場が下になるような制度になってしまいましたが、もしかしたら当局としては、派遣法を改正することによって、派遣先企業の正社員以上に実力のある労働者又は専門的能力を持った労働者を派遣するという、アメリカのような派遣制度にシフトしていきたいのかもしれません。

 

以上のような改正派遣法に加え、近年では派遣会社は従来の届出制から許可制に変わり、許可の要件としても一定の基準資産額が求められる等、派遣事業への維持だけでなく参入もどんどん厳しくなってきています。
こうなると当然、派遣元も派遣先も共に、派遣制度を回避する方法はないか?という頭になりますので、「偽装請負」が促進されてしまうおそれがあります。
この偽装請負をチェックするために、労働局は今以上に目を光らせ、面談や立入調査を増やしていくことになるでしょう。派遣と(偽装)請負の境界は曖昧ですので、調査も簡単ではなく、それに対応することになる派遣企業も大変です。

 

今回の派遣法の改正によって、派遣先企業としては派遣料の値上げにより派遣制度の利用が難しくなり、派遣元企業としては派遣制度を維持できる体力のある派遣会社とそうでない派遣会社の2極化が進むと予想されます。改正派遣法の施行で、派遣制度は大きな転換期を迎えることを余儀なくされるでしょう。

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