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来年(2020年)4月1日から施行される改正民法の151条には、「協議を行う旨による時効の完成猶予」の条文が新設されています。
長くなりますが、条文を引用すると次のとおりです。



(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第151条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から1年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第1項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第1項の合意がその内容を記載した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を準用する。
5 前項の規定は、第1項第3号の通議について準用する。

このような時効完成猶予事由を新設した理由については、法務省で民法改正を担当していた筒井・松村著『一問一答 民法(債権関係)改正』49頁によれば、「旧法の下においては、当事者が権利をめぐる争いを解決するための協議を継続していても、時効の完成が迫ると、完成を阻止するためだけに訴訟の提起や調停の申立てなどの措置をとらざるを得ず、当事者間における自発的で柔軟な紛争解決の障害となっていた。そのため、このような協議を行っている期間中は、時効が完成しないように手当をする必要がある。」とのことです。

また、単に協議をしているという事実状態のみでは足りず、当事者間で協議を行う旨の合意をしていることが必要なのは、同書によれば、「どのような状態に至れば協議といえるかは不明瞭であるのに対して、協議を行うことを対象とした合意の存否であればその判断は比較的用意であり、事後的な紛争を招きにくいから」ということのようです。

さらに、書面又は電磁的記録による合意を要件にしたのは、「事後的に時効の完成猶予がされたか否か等をめぐり分省が生ずる事態を避けるため」とのことです。もっとも、書面又は電磁的記録の様式自体には制限はないから、署名や記名押印が必要であるということではなく、「また、一通の書面である必要もない。例えば、電子メールで協議の申し入れがされ、その返信で受諾の意思が表示されていれば、電磁的記録によって協議を行う旨の合意がされたことになる。」とのことです。

で、ここからは私の意見ですが、この「協議を行う旨による時効の完成猶予」は、実務で使われるようになるでしょうか?

実は、私は、あまり使われないのではないか、と思っています。

売掛金の請求などの権利の存在がはっきりしているものは、まずは、請求書や内容証明を送付して、支払いの催告をするでしょうから、催告による時効の完成猶予の効力が発生し(第150条1項)、その後に、支払いのスケジュールのために協議を行おうということになっても、第151条第3項により、この合意による時効完成猶予の効力を有しません。したがって、この制度は、当事者間で権利の存在について争いがあるような場合に利用されるのかな、と思うのですが、そもそも権利の存在について債務者側が争っている場合には、債務者側は協議にはのってこないでしょうし、さらに協議に時効完成猶予効があるなどと知ったら、一層、協議をすること自体を拒否してくると思うのです。強いて言えば、権利の存在自体には争いはないが、その金額について争いがあるような場合には、「権利についての協議」ができそうですが、その場合にも、通常は、まずは債権者側が内容証明等で権利主張をするでしょうから、はじめに催告が行われることになるのではないかと思うのです。

まぁ、使われるか使われないかは、実際に改正民法が施行されて数年たたないと分かりませんが、実務家としての経験からすると、「使われないんじゃないかな~」と思います。

主に債権法部分が改正された新民法が令和2年(2020年)41日に施行されます。

 

現行の民法では、債権一般についての消滅時効の期間は10年ですが(第167条第1項)、債権の種類等によっては消滅時効の期間が3年や2年、あるいは1年と異なっており(第170条~174条)、非常に複雑なものとなっています。

 

今回の民法改正によって、これらの消滅時効の規定が整理され(第170条~174条が削除、5年の消滅時効を定めた商法第522条も削除)、新民法では、債権については原則として、

①債権者が権利を行使することができることを知った時から5

又は

②権利を行使することができる時から10

で時効消滅すると定められました(新民法第166条第1項)。

 

現在のところ、残業代支払請求権や有給休暇の請求権等の労働債権は、民法の特別法である労働基準法によって、2年間の消滅時効にかかることになっていますが(第115条)、今回の民法改正に合わせて、今後労働基準法が改正され、この労働債権の消滅時効も5年間になる可能性があります。

この点に関しては、厚生労働省において「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」において検討されていますが、まだ結論が出ていないところです。

 

元々、給料の支払いに関する債権は、現行民法において、債権一般の消滅時効10年を修正して、短期消滅時効として1年と定められており(第174条第1号)、それでは短過ぎるということで、さらにこれを労働基準法によって2年間に延長したという経緯ですので(第115条)、2段階の修正がなされています。

このような経緯に加えて、今回の民法の消滅時効を整理した趣旨は、適用の誤りや規定の見落としの危険、また短期消滅時効の債権に類似する債権との間の不合理性等が指摘されていたため、消滅時効期間を統一して短期消滅時効を廃止したということです(筒井健夫編「民法(債権関係)改正」(商事法務)53頁)。

 

これらのことからすれば、労働債権に関しても区別せずに一律に(少なくとも)5年の消滅時効とするのが論理的な帰結であると思います。

労働債権の消滅時効が5年間となると、実務上大きく影響が出るのが、残業代支払請求権と、有給休暇の請求権です。

今までは残業代支払請求権が2年分だったのが、(単純に計算すると)2.5倍の金額となり、有給休暇の請求権も5年分になりますので、いきなり労働債権の消滅時効が5年となると、金額や対応面だけでなく、人事労務管理のシステムの改変も必要となり、企業側へは大きなインパクトとなります。

 

とはいえ今の世の中の流れは、確実に労働者保護に傾いてきていますので、民法の改正と合わせた令和2年(2020年)には間に合わないとしても、今後一定の経過措置を設けたうえで、労働債権の消滅時効も5年となるのではないかと予想しております。

この経過措置の間に、企業側としては、未払いの労働債権や有給休暇の精算等を行っていくことになろうかと思います。

 

良くも悪くも、我が国は外圧が無い限りドラスティックな改革が苦手ですので、なるべくソフトランディングな形として、経過措置を長めにとった上で、まずは大企業と中小企業とを分け、努力義務を混ぜ込みながら、徐々に改正を行っていくのだと思います。前記のとおり新民法は主観的な消滅時効(①)と客観的な消滅時効(②)の2つがありますので、この点については企業側に配慮して、分かりやすく、労働債権については「権利を行使することができる時から5年」となる可能性が高いのかなと予想しております。

 働き方改革関連法に続き、影響が大きそうな法改正として、民法(債権法分野)の改正を行う「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)の施行日が迫ってきています。

「民法の一部を改正する法律」は、201762日に公布され、施行日は202041日を予定しています。(一部例外もあります。)

 民法の債権法分野は、1896年(明治29年)に制定されて以降、実質的な内容の改正が行われないまま、今日まで来ました。ですが、流石に100年以上の時が経つと、現在の社会や経済の状況に合わない規定も出てきます。そこで、今回、債権法分野について大規模な改正が行われることになりました。

 ちなみに債権法分野と簡単に言っていますが、「債権」とは「特定人(債権者)が他の特定人(債務者)に対して、一定の行為(給付)を請求することを内容とする権利」(デジタル大辞泉)のことを言い、民法の債権法分野には、この債権の発生・変更・消滅等に関わる様々な規定が含まれます。一口に債権法分野と言っても、その範囲は非常に広いのです。

 さて、「民法の一部を改正する法律」による改正項目は多岐に渡りますが、法務省は、主な改正事項として次の24個を挙げています。(http://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

1.消滅時効に関する見直し                                  2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し                                              4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設                 6.意思能力制度の明文化

7.意思表示に関する見直し                                       8.代理に関する見直し

9.債務不履行による損害賠償の帰責事由の明確化   10.契約解除の要件に関する見直し
11.売主の瑕疵担保責任に関する見直し                     12.原始的不能の場合の損害賠償規定の新設

13.債務者の責任財産の保全のための制度                 14.連帯債務に関する見直し

15. 債務引受に関する見直し                                         16.相殺禁止に関する見直し

17.弁済に関する見直し(第三者弁済)                     18.契約に関する基本原則の明記

19.契約の成立に関する見直し                                    20.危険負担に関する見直し

21.消費貸借に関する見直し                                        22.賃貸借に関する見直し

23.請負に関する見直し                                               24.寄託に関する見直し

 
 また、このうち重要な実質改正事項として、次の5つが挙げられています。(http://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf

1.消滅時効に関する見直し

2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し

4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設

 

 今回、一つ一つの改正項目を解説することはできませんが、これを見ただけで、非常に多くの規定が改正されていることが分かりますね。 

 上記改正により、日常生活でもビジネスでも最も重要な債権の発生原因である契約についての規定が変更されたり、発生した債権が不履行になった場合の取扱いに関する規定が変更されたりしています。今後は、これまで使用していた契約書の雛形等の見直しが必要になってくるでしょう。(現在、民法改正に対応した契約書の雛形集などはあまり充実していませんが、これからどんどん出てくると予想されます。)

 特に事業者の場合、今回の改正が関係しない方はほとんどいないでしょうから、少しずつ、改正への対応を進めていきましょう。

ビットコインですが、前回メルマガ送付後、42日頃から急騰し、一時は1BTC=60万円にまでなりましたが、現在は多少下落し、この記事を書いている時点(2019/4/16)では、1BTC=56万円前後で推移しています。これは、昨年11月以来の高値です。

 

一昨年のバブルと比較してしまうと小さい値動きかもしれませんが、ここ数か月間、1BTC40万円台や、30万円台で、比較的値動きが少なかったことを踏まえると、相対的に大きな動きと評価できるかもしれません。

 

今回の急騰の原因としては、ビットコインの証拠金取引で、高額の強制ロスカット(強制決済)が連続して発生したことが主な原因ではないか、などと言われています。

 

ちなみに、完全に余談ですが、ビットコインがこのような急騰をする前日には、奇しくも、私の「ビットコイン スタートBooK」が発売されています(http://www.zaikyo.or.jp/publishing/books/008492.shtml)。価格には全く影響しなかったとは思いますが。

 

さて、今年は、それ程ビットコインの上昇は見込めないのではないかといった声もよく聞いていましたので、今回の上昇は私自身ちょっと驚きです。

 

他方で、来年2020年は、ビットコインに関してちょっとしたイベントが待ち受けており、これに伴ってビットコイン価格が上昇するのではないかと言われています(本当に上がるかどうかは分かりませんが。)。

そのイベント(の1つ)が、半減期です。

半減期?物理の授業でやった放射性物質の半減期か?と思われる方もいるかもしれませんが(いないかもしれませんが)、違います。

 

ここでいう半減期とは、ビットコインの新規発行量が半減することを意味します。

 

ビットコインは、その仕組上、1つのブロック(取引台帳の1ページ)が承認される(マイニングされる)ごとに、言い換えれば約10分に1回、一定量の新規ビットコインが発行されることになっています。

 

現在、1回のマイニングで新規発行されるビットコインは、12.5BTC(上記1BTC=56万円のレートでは、約700万円になります)です。

 

この、いわば通貨供給量が、2020年に半減することになります。これがビットコインの半減期と呼ばれるものです。

 

供給量が減るため、市場原理に基づいて、ビットコインの価格が上昇する、というのが一般的に言われているところではありますが、実際には「そういった上昇が見込めるのではないか」という期待で買い注文が集まり、価格が上昇する、ことも考えられます(このように、ビットコイン価格は、取引する者の心理的な部分も影響しますので、なかなか、確実に上がる、下がる、というのは難しいところです。)。

 

ちなみに、半減期は、今回特有のものではなく、約4年に1回生ずる現象です。なんだか、オリンピックみたいですね。過去にも、直近では2016年あり、また、2020年の後も予定されています。

 

半減期やマイニングについては、前出の拙作「ビットコイン スタートBooK」にて詳しくご説明させていただきましたので、ご興味のある方はぜひ書店などでお手に取ってご覧ください!

今年のゴールデンウイークは10連休になるということですが、私は今のところ、どこへ行くにしても混雑が予想されますので、予定を立てるのに二の足を踏んでいるところです。
仕事等の関係上、今回10連休にならない方もいらっしゃると思いますが、以下では、10連休になる場合(土日祝日が休日となる場合)についてお話させて頂きます。

 

現在の4月と5月は、①429日(昭和の日)、②53日(憲法記念日)、③54日(みどりの日)、④55日(こどもの日)が祝日とされており、土日を含めてこれらの連休を一般的にゴールデンウイークと呼んでいます。この他に51日のメーデーも休日として扱っている会社や団体もあるそうです。

 

今年はゴールデンウイークが10連休となりますが、これは皇太子殿下が新天皇に即位される日(51日)が、今年に限り祝日となるという内容の特例法が国会で成立したことが理由となります。

 

これはどういうことかというと、「国民の祝日に関する法律」第3条第3項には、「その前日及び翌日が「国民の祝日」である日・・・は、休日とする。」という定めがあるためです。

この定めにしたがって、

ⅰ 429日(昭和の日)と今回の51日(即位の日)に挟まれた430

ⅱ 51日(即位の日)と53日(憲法記念日)に挟まれた52

が、まるでオセロのように平日から休日に変わるため、土日を含めると10連休になるということです。

 

なお、今回成立した特例法によって、今年は新天皇即位を公に示す「即位礼正殿の儀」が行われる1022日(火)も祝日となりますが、上記のとおり、祝日に挟まれた平日のみが休日に変わるだけですので、祝日である1022日(火)と普通の日曜日(1020日)に挟まれた1021日(月)は今回休日にはならず平日のままです。

 

ちなみに、この「ゴールデンウイーク」という名称は、5月の連休期間中に大作を出すようになった映画界(大映株式会社 ※現在は角川映画株式会社)が、宣伝も兼ねて作り出したものだそうです。
NHKなんかでは、ゴールデンウイークに休めない人からの抗議(なにがゴールデンだ等)や、「外来語・カタカナ語はできるだけ避けたい」という制作現場の声、また1週間よりも長くなることが多いためウイーク(週間)という名称は的確な表現ではなくなったという理由から、「ゴールデンウイーク」は使わず、「(春の)大型連休」という表現を使っているそうです。(NHK文化放送研究所http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/181.html

 

今回増える祝日はあくまでも今年だけの臨時の祝日ですが、この臨時の祝日がなくとも日本は諸外国と比較して祝日が多いといわれています(今年の臨時祝日を除き年間合計16日)。
とはいえ、実際休みが多いかどうかは、諸外国の有給休暇の付与日数と消化率も検証する必要があるでしょう。

 

例えばフランスの祝日は10日程度と少ないですが、(日本のように転職すると算定がリセットされるのではなく、フランス中のどこの企業で働いても)労働者が10日以上継続勤務した場合、1ヶ月につき2.5労働日の年次有給休暇が発生しますので、1年間で合計30日の有給休暇が付与されます。
さらにフランス人はこの有給休暇を100%取得するということですので、有給休暇の年間付与日数が最大20日であり、かつ取得率が50%程度の日本人よりも実際の休みは多いと言えるでしょう。スペインやブラジルも30日の有給休暇付与日数で取得率は100%とのことです。(参考:エクスペディア・ジャパン「有給休暇国際比較調査2018https://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2018/

 

有給休暇は、自分だけが休みになるので、会社の他の従業員や取引先等は業務を行っているだけに、なかなか休みにくく、仮に休めたとしても、ついつい仕事のメール等のチェックを行ってしまう方が多いと聞きます。
「和を以て貴しと為す」性格のせいか、責任感の大きさのせいか、はたまた有給休暇を取りづらくさせる圧力があるせいか、いずれにせよ日本には有給休暇が取得しづらい雰囲気があります。もはや国民性と言っても良さそうですので、労働者に休んでもらいたいならば、有給休暇の取得を促すというよりも、国民の多くが休むことになる祝日を増やしたほうが、安心して休むことができるでしょう。ただし、祝日(休日)が増えることにより給与が下がることになる日給・時給で働いている方や祝日が休日にならない方への配慮も検討する必要があります。

 

休日にどこに行こうか、何をしようかを考えられるのも、休日に業務に従事している方がいるからこそのものですので、感謝の念を持ちながらも、リフレッシュできる休日を過ごしたいものですね。

日本には、所有者が不明な土地がどれくらいあるか知っていますか?

 

一般財団法人国土計画協会らで組織する所有者不明土地問題研究会の調査では、2016年の推計で約410万ヘクタールだそうです。

 

410万ヘクタールといわれても、ちょっとピンとこないかもしれませんが、九州の面積が367万ヘクタールとのことですので、実は、現時点でも、九州の面積以上の土地の所有者が誰だかわからない状態なんだそうです。

 

で、所有者不明土地が発生する主な原因の一つが相続による代替わりだそうですので、今後、団塊の世代が大量にお亡くなりになる大相続時代を迎え、この傾向はさらに進んで、2040年には、約720ヘクタールになるそうです。北海道の面積が834万ヘクタールなので、北海道の面積に匹敵する面積の土地の所有者がわからなくなるということになります。

 

こうなると困りますよね。なんで所有者不明の土地が発生するのか?というと、それは土地の所有には、固定資産税の支払いや、土地の管理などの義務も発生するからです。つまり、所有者不明の土地が発生すればするほど、税収が少なくなりますし、きちんと管理されず荒廃していく土地が多くなるということになるのです。

 

もちろん、政府もこの状況に手をこまねいているわけではなく、既に昨年(2018年)の通常国会で「所有者不明土地の利用円滑化特別措置法」を成立させています。これは、既にある所有者不明の土地を企業や市町村が公園や駐車場というような公共目的に使えようにするものです。

 

ただ、これでは不十分なので、現在の国会では、所有者不明土地のうち、所有者の氏名や住所が正しく登記されていないものについて、登記官が調査し、登記簿上の所有者を正しく書き換えられるようにし、それでも所有者がわからないときは、土地を利用したい自治体や企業の申立てで裁判所が管理者を選び、その管理者により土地を売却できるようになります。

全国に九州の面積よりも多い所有者不明土地があるということになると、中には多くの人が欲しがるような土地もあるかもしれませんので、このような法律ができると不動産業の活性化につながるかもしれませんね。

 

で、さらに、前述のとおり、不明土地の発生は、相続時に相続人の登記がされないことが原因の一つですので、政府は、現在、相続登記の義務化に向け議論を進めています。また、土地所有に伴う義務(固定資産税支払い・土地管理義務)の存在も不明土地が発生する理由ですので、ならば(これまでは認められていなかった)土地所有権の放棄を認めてあげようという議論も進められています。放棄された土地は、受け皿組織にいったん帰属させ、そこから土地を活用したい人とマッチングするような仕組みを作るとのこと。この相続登記の義務化と土地所有権の放棄については2020年の臨時国会に法案の提案を目指しているとのことです。

 

というわけで、この所有者不明土地の問題には今後も注目ですね。これからもWatchしていきたいと思います。

 今回は、法律の話から離れて、司法試験とその合格者の現状について、お話ししたいと思います。

 

 法曹になるための仕組みは、今から15年前の2004年に大きく変わりました。
 いわゆる法科大学院(ロースクール)ができたのがこの年で、それまで、司法試験は基本的には誰でも受けられる試験だったのですが、法科大学院卒業者が出る2006年以降は、原則として、法科大学院を卒業しなければ、司法試験を受験することができないことになりました。
(※厳密には、2006年から2011年まで、誰でも受験できる旧司法試験と、法科大学院卒業者しか受験できない新司法試験とが併存していたのですが、この点は置いておきます。現在は、新司法試験のみになっていて、原則として法科大学院卒業者しか司法試験を受験できなくなっています。)

 

 旧司法試験は、誰でも受験できることもあって、受験者数が多く、合格率が低い試験でした。法務省のまとめを見ると、2次試験(法的知識の試験)の受験者数が毎年約20,00045,000人なのに対し、合格者数は毎年約5001,000人で、合格率は3%前後でした(http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/press_071108-1_19syutu-gou.html)。
 一方、新司法試験は、受験資格に制限があるため、受験者数が少なく、合格率は高い試験です。受験者数は毎年約8,000人なのに対し、合格者数は毎年約2,000人で、合格率は23%前後になっています。
 旧司法試験は、受けるまでは簡単で受かるのが難しい試験、新司法試験は、受けるまでが難しく受かるのは(比較的)簡単な試験、という感じでしょうか。司法試験と聞くと、まだまだ旧司法試験のイメージが強いので、新司法試験の合格率を聞くと驚かれる方も多いかもしれませんね。

 

 ところで、この(新)司法試験、ここ数年でガクッと受験者も合格者も減っています。

2014年: 受験者8,015人、合格者1,810

2015年: 受験者8,016人、合格者1,850

2016年: 受験者6,899人、合格者1,583

2017年: 受験者5,967人、合格者1,543

2018年: 受験者5,238人、合格者1,525

2019年: 出願者4,930人【参考】

 

 2015年までは、受験者数8,000人を概ね維持していたのですが、2016年から急激に減り始めました。
 そして、次回、20195月に予定されている司法試験は、出願の時点で5,000人を切っているので、受験者は4,000人強と予想されます。今までの合格率を維持するのであれば、合格者は1,000人前後といったところでしょうか。悲しいことですが、近年の法曹不人気を如実に表していると思います。

 

 一時期、急に弁護士の数が増えたことによって、弁護士の就職難が起きていると取り沙汰されましたが、それも今は昔。図らずも司法試験合格者が減って(減らさざるを得なくて)、新人弁護士の数が減っているため、今はむしろ売り手市場と言っても良いような状況になりつつあります。

 

 最後に、司法試験合格者が、その後どのような道に進むか触れておきます。
 現在、一番フレッシュな法曹(候補)は、201812月に司法修習を終えた71期司法修習生になりますが、71期司法修習生の進路は次のとおりです。(参考:https://www.jurinavi.com/market/shuushuusei/shinro/index.php?id=211

 

司法修習修了者  1517

判事任官者      82

検事任官者      69

弁護士登録者    1267

(うち、東京三会登録716人、五大事務所登録194人、組織内弁護士登録52人)

未登録者        99

 

 特徴的なのは、弁護士登録者の半分以上が東京に登録すること、少なくない人数がファーストキャリアに組織内弁護士を選ぶこと、五大事務所が採用数を大きく伸ばしていることかと思います。

 

 72期以降は、更に司法修習修了者が減っていくはずなので、特に東京以外の事務所や東京でも小規模の事務所の新人採用競争は、どんどん厳しくなるだろうと予想されます。
 一方、企業等の組織に入るという道は、弁護士の進路として確立されてきている印象ですので、資格保有者の採用を考えている企業にとってはチャンスかもしれません。

 
 今回は、興味のある人にはある、司法試験の現状をお伝えしました。
 何らか皆様のお役に立てれば幸いです。

最近では、リクルートグループやソフトバンクグループ等、従業員の副業を解禁する企業が増えてきました。なかには副業を推進するような先進的な企業もあります。
とはいえ、これらの企業はあくまでも例外であって、まだまだ就業規則において、他の業務に従事することを禁止する兼業禁止規定や、他で就業することを禁止する二重就職禁止規定(以下、併せて「兼業禁止規定」といいます。)を設けている会社が多くあります。
使用者としては自社の職務に専念して欲しいと考える理由から兼業禁止規定を設けている場合が多いですが、一方で、本来、就業時間以外のプライベートな時間をどのように使うのかは従業員の自由であり、兼業禁止規定のような就業時間外においても使用者の拘束を及ばす規定はいかがなものかとも考えられます。

 

古くから兼業禁止規定は、「他の継続的雇用関係に入り、余分の労務に服することとなるとその疲労度は加速度的に加わり、従業員たる地位において要請される誠実な労務に服することができなくなる」ことを理由に有効と考えられてきました(大阪地判昭321113日・労民集86807頁)。
もっとも、近年ではこの理由だけではなく、「兼業」を行うことによって、①会社に対する業務提供に支障をきたすと考えられる場合や、②会社の対外的信用や体面を傷つける可能性がある場合においては、就業規則によって使用者の許可制とすることが肯定されています(京都地判平24713日・労判105821頁等)。

 

しかしながら、労務提供が不完全であれば、人事考課でマイナス評価をすればいいし、労務を誠実に提供する義務の違反や、勤務成績不良や勤務態度不良を理由として懲戒処分を検討すればいいと思います。また、会社の対外的信用や体面を傷つける可能性などは、そのようなことがあって初めて企業の信用毀損を理由とした懲戒処分を検討すればよく、前もって兼業禁止規定を設けておく合理性に乏しいと考えます。

 

また、時間外労働の際の割増賃金支払い義務に関して、実務上、不合理な解釈・運用がなされていることも、兼業禁止規定が今もなお続いている理由にもなっているでしょう。
すなわち、使用者は、原則として、1日の労働時間が8時間を超えるか、1週間の労働時間が40時間を超えた場合には、その時間外の労働時間に応じて割増賃金(0.25倍等)を従業員に支払わなければなりません(労働基準法第37条等)。

実務上、この時間外の労働時間については、異なる使用者に雇用される場合においては各使用者下での労働時間を合算するとされており、「後で労働者と労働契約を締結した使用者」が割増賃金の支払義務を負うとされています(労働基準局長通達「昭和23514日基発769号」、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000193040.pdf)。

 

これはどういうことかというと、元々A社で働いていた方が、B社で兼業することになった場合、A社で月~金の5日間合計40時間労働し、土日にB社で18時間ずつ労働したとします。この場合には、B社で労働した土日の16時間は、全て時間外労働として扱われてしまい、B社はこの労働者に割増賃金を支払わなければならないことになります。

A社で働いているのを隠してB社に入社し、「実はA社で働いていたので割増賃金を支払って欲しいです」と言われて、さらに利息(年6%。商法第514条)まで請求されては困りますし、割増賃金支払義務違反(労働基準法第119条第1号)があると労基署に駆け込まれてはかないません。
時間外労働について、このような運用がされてしまっているのでは、兼業を禁止したいと会社が考えてしまうのも無理はありません。

 

そもそも兼業禁止規定は、それこそ労働者が一つの会社に骨を埋めることができる終身雇用制度・年功序列制度が維持されており、いわば会社=家とも考えられていた時代ならともかくとして、これらの制度が崩壊したと言われている昨今において、この兼業禁止規定を維持することの合理的な説明は難しいと思います。
定年まで安定して勤め上げることが難しいのであれば、従業員としても他でスキルを身に付けたいと考えたり、もしものために他でも収入を確保したいと考えてしまうのは必然的な流れかと思います。

 

時間外労働の不合理な運用が改められることもそうですが、今後は、雇用の流動性を覚悟し、むしろ他社や他業種で身につけたスキルやノウハウを、(秘密保持義務の範囲内で)会社で発揮してもらうことで、シナジーを期待するほうが時代に合っているのかもしれません。今後も動向に注目したいと思います。

最近ワイドショーなどで話題になっていた夫の不倫相手に対する妻の慰謝料請求が否定された最高裁平成31年2月19日判決(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/422/088422_hanrei.pdf)を振り返ってみましょう。

既に善良なる紳士淑女の皆様は十分ご存知のとおり、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰藉すべき義務があるというべきである。」(最判昭和54年3月30日)というのが確定した判例です。

つまり、相手の男性又は女性が結婚していることを知りながら(又は注意すればわかったのにその注意を怠って)SEXをすると、そのお付き合いが真剣なものかどうかにかかわらず、その相手の妻又は旦那さんから慰謝料の請求をされることがあるということです。

しかし、上記最高裁平成31年2月19日が元妻の慰謝料請求を否定したのは、この元妻が、夫の不倫相手の女性に対し、「自分の夫と不貞行為(SEX)をしたことにより自分が精神的に傷ついた損害(慰謝料)」の賠償を請求したのではなく、不倫相手の女性が自分の夫とSEXした結果、結婚が破綻し、離婚に至ったので、「その離婚したことにより自分が精神的に傷ついた損害(慰謝料)」を求めたからです。

どうして不貞行為を理由とする慰謝料ではなく、離婚を理由とする慰謝料を求めたかというと、どうやらこの案件では不貞行為がバレた後、旦那は不倫をやめて3年間は奥さんと一緒に住んでいたが、結局、浮気の影響があって、離婚に至ったからということのようです。民法には消滅時効という制度があって、上記の例では、不貞行為がバレてから3年が過ぎると、不貞行為を理由とする慰謝料請求はもはや請求できませんので、時効の起算点をずらすために離婚を理由とする慰謝料請求にしたようなのです。

最高裁は次のように判示しています。
「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。」

この最高裁判決をどのように評価すべきでしょうか?

まぁ、浮気がバレても全部が全部離婚に至るわけではないので、「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価する特段の事情」がないと、第三者の不貞行為と離婚による精神的損害発生との間に(相当)因果関係が認められないと言っているようにも読めます。不貞行為を理由とする慰謝料請求と、離婚を理由とする慰謝料請求を分ける立場からは当然の結論という人もいることでしょう。

ただ、私はなんとなくしっくりこないものを感じます。
この判例に従えば、たとえば、旦那又は妻にセフレがいて、そのセフレがいたことが原因で離婚にいたっても、セフレは婚姻関係に対する不当な干渉などしないでしょうから、セフレに対する慰謝料請求はできません。
他方、旦那又は妻に真剣に付き合っている人がいて、旦那又は妻がその人と同棲するようになった場合には、婚姻関係に対する不当な干渉があるとして、慰謝料請求ができるように思います。
しかし、現代の価値観からすると、まじめにお付き合いをしている方が損害賠償請求の対象になるという結論はしっくりこないのではないでしょうか。

翻って考えてみると、相手の男性又は女性が結婚していることを知りながらSEXをすると、その相手の妻又は旦那から慰謝料の請求をされるという出発点が、今の世の中の現実の価値観とあっていないように思います。ネットなどでは、よく不倫をしたことがあるか?などというアンケートの結果が発表されていますが、それによると男性の30%、女性の20%くらいが「ある」と回答するようです。現代社会では、政治家や芸能人の不倫は格好のワイドショーネタとして強い社会的バッシングの対象になりますが、では世の中が不倫に厳しくなっていかというと、大衆は昼ドラの不倫に熱狂しますし、アンケート結果などからも不倫がかなり行われているということができます。何が言いたいかというと、こんなにも不倫がありふれたものとなると、妻とか夫であることの地位というのはそんな強固なものではなくなっているので、不倫があったからといって、(倫理・道徳違反を問うのは良いとしても)法的に損害賠償をする権利まで認める必要性はないのではないか(それをまじめにやっていると現実の社会とのギャップが大きすぎて法が機能しなくなるのではないか)ということです。

だいたいそういう結婚相手を選んだのは自分なんですから、自分が悪いのです。

というわけで、私は、このまま世の中が進展していくと、妻又は夫が、配偶者の不倫相手に慰謝料を請求できるという判例理論自体が変更されると思っています。今回の最高裁判決は、その流れを踏まえて、配偶者の不倫相手に対する慰謝料請求を制限するものと位置付けています。

ビットコイン スタートBook
江嵜 宗利
大蔵財務協会
2019-04-10


この度、わたくし、真に僭越ながら、4月に、ビットコインの本を出版させていただくことになりました。その名も「ビットコイン スタートBook」です。

『ビットコイン スタートBook

 ~仕組みから始め方・所得の計算まで~』

定 価 1800 円(税込)
出版社 大蔵財務協会

http://www.zaikyo.or.jp/publishing/books/008492.shtml 

https://www.amazon.co.jp/…/4…/ref=asc_df_47547263592602915/… 

この「ビットコイン スタートBook」の特徴としては、

・タイトルのとおり、初心者の方を対象としたビットコインの解説書です。
・文体は口語調、論点形式(Q&A形式)で、図も使っていますので、読みやすいかと思います。少なくとも、お堅い専門書ではありません。

・全体を、入門編(ビットコインの使い方など)、技術編(ブロックチェーンの仕組みなど)、法律・税務編(仮想通貨法や所得の計算方法など)に分けて、比較的広い範囲について、ご説明させていただきました。

ざっと、ビットコインの概要を、技術も法律も税金も含めて概観したい、という方には、お役に立てるかもしれません。また、通常、弁護士の書く本というと、法律的な話題が中心になることが多いかと思いますが、この本では、技術的な内容もしっかり書かせていただきました。

書店に並ぶのは4月2日頃、Amazonなどでは4月10日からの販売のようです。ご興味をお持ちいただけましたら、是非、書店などでお手にとってご覧ください!

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