働き方改革関連法に続き、影響が大きそうな法改正として、民法(債権法分野)の改正を行う「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)の施行日が迫ってきています。

「民法の一部を改正する法律」は、201762日に公布され、施行日は202041日を予定しています。(一部例外もあります。)

 民法の債権法分野は、1896年(明治29年)に制定されて以降、実質的な内容の改正が行われないまま、今日まで来ました。ですが、流石に100年以上の時が経つと、現在の社会や経済の状況に合わない規定も出てきます。そこで、今回、債権法分野について大規模な改正が行われることになりました。

 ちなみに債権法分野と簡単に言っていますが、「債権」とは「特定人(債権者)が他の特定人(債務者)に対して、一定の行為(給付)を請求することを内容とする権利」(デジタル大辞泉)のことを言い、民法の債権法分野には、この債権の発生・変更・消滅等に関わる様々な規定が含まれます。一口に債権法分野と言っても、その範囲は非常に広いのです。

 さて、「民法の一部を改正する法律」による改正項目は多岐に渡りますが、法務省は、主な改正事項として次の24個を挙げています。(http://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

1.消滅時効に関する見直し                                  2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し                                              4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設                 6.意思能力制度の明文化

7.意思表示に関する見直し                                       8.代理に関する見直し

9.債務不履行による損害賠償の帰責事由の明確化   10.契約解除の要件に関する見直し
11.売主の瑕疵担保責任に関する見直し                     12.原始的不能の場合の損害賠償規定の新設

13.債務者の責任財産の保全のための制度                 14.連帯債務に関する見直し

15. 債務引受に関する見直し                                         16.相殺禁止に関する見直し

17.弁済に関する見直し(第三者弁済)                     18.契約に関する基本原則の明記

19.契約の成立に関する見直し                                    20.危険負担に関する見直し

21.消費貸借に関する見直し                                        22.賃貸借に関する見直し

23.請負に関する見直し                                               24.寄託に関する見直し

 
 また、このうち重要な実質改正事項として、次の5つが挙げられています。(http://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf

1.消滅時効に関する見直し

2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し

4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設

 

 今回、一つ一つの改正項目を解説することはできませんが、これを見ただけで、非常に多くの規定が改正されていることが分かりますね。 

 上記改正により、日常生活でもビジネスでも最も重要な債権の発生原因である契約についての規定が変更されたり、発生した債権が不履行になった場合の取扱いに関する規定が変更されたりしています。今後は、これまで使用していた契約書の雛形等の見直しが必要になってくるでしょう。(現在、民法改正に対応した契約書の雛形集などはあまり充実していませんが、これからどんどん出てくると予想されます。)

 特に事業者の場合、今回の改正が関係しない方はほとんどいないでしょうから、少しずつ、改正への対応を進めていきましょう。

ビットコインですが、前回メルマガ送付後、42日頃から急騰し、一時は1BTC=60万円にまでなりましたが、現在は多少下落し、この記事を書いている時点(2019/4/16)では、1BTC=56万円前後で推移しています。これは、昨年11月以来の高値です。

 

一昨年のバブルと比較してしまうと小さい値動きかもしれませんが、ここ数か月間、1BTC40万円台や、30万円台で、比較的値動きが少なかったことを踏まえると、相対的に大きな動きと評価できるかもしれません。

 

今回の急騰の原因としては、ビットコインの証拠金取引で、高額の強制ロスカット(強制決済)が連続して発生したことが主な原因ではないか、などと言われています。

 

ちなみに、完全に余談ですが、ビットコインがこのような急騰をする前日には、奇しくも、私の「ビットコイン スタートBooK」が発売されています(http://www.zaikyo.or.jp/publishing/books/008492.shtml)。価格には全く影響しなかったとは思いますが。

 

さて、今年は、それ程ビットコインの上昇は見込めないのではないかといった声もよく聞いていましたので、今回の上昇は私自身ちょっと驚きです。

 

他方で、来年2020年は、ビットコインに関してちょっとしたイベントが待ち受けており、これに伴ってビットコイン価格が上昇するのではないかと言われています(本当に上がるかどうかは分かりませんが。)。

そのイベント(の1つ)が、半減期です。

半減期?物理の授業でやった放射性物質の半減期か?と思われる方もいるかもしれませんが(いないかもしれませんが)、違います。

 

ここでいう半減期とは、ビットコインの新規発行量が半減することを意味します。

 

ビットコインは、その仕組上、1つのブロック(取引台帳の1ページ)が承認される(マイニングされる)ごとに、言い換えれば約10分に1回、一定量の新規ビットコインが発行されることになっています。

 

現在、1回のマイニングで新規発行されるビットコインは、12.5BTC(上記1BTC=56万円のレートでは、約700万円になります)です。

 

この、いわば通貨供給量が、2020年に半減することになります。これがビットコインの半減期と呼ばれるものです。

 

供給量が減るため、市場原理に基づいて、ビットコインの価格が上昇する、というのが一般的に言われているところではありますが、実際には「そういった上昇が見込めるのではないか」という期待で買い注文が集まり、価格が上昇する、ことも考えられます(このように、ビットコイン価格は、取引する者の心理的な部分も影響しますので、なかなか、確実に上がる、下がる、というのは難しいところです。)。

 

ちなみに、半減期は、今回特有のものではなく、約4年に1回生ずる現象です。なんだか、オリンピックみたいですね。過去にも、直近では2016年あり、また、2020年の後も予定されています。

 

半減期やマイニングについては、前出の拙作「ビットコイン スタートBooK」にて詳しくご説明させていただきましたので、ご興味のある方はぜひ書店などでお手に取ってご覧ください!

今年のゴールデンウイークは10連休になるということですが、私は今のところ、どこへ行くにしても混雑が予想されますので、予定を立てるのに二の足を踏んでいるところです。
仕事等の関係上、今回10連休にならない方もいらっしゃると思いますが、以下では、10連休になる場合(土日祝日が休日となる場合)についてお話させて頂きます。

 

現在の4月と5月は、①429日(昭和の日)、②53日(憲法記念日)、③54日(みどりの日)、④55日(こどもの日)が祝日とされており、土日を含めてこれらの連休を一般的にゴールデンウイークと呼んでいます。この他に51日のメーデーも休日として扱っている会社や団体もあるそうです。

 

今年はゴールデンウイークが10連休となりますが、これは皇太子殿下が新天皇に即位される日(51日)が、今年に限り祝日となるという内容の特例法が国会で成立したことが理由となります。

 

これはどういうことかというと、「国民の祝日に関する法律」第3条第3項には、「その前日及び翌日が「国民の祝日」である日・・・は、休日とする。」という定めがあるためです。

この定めにしたがって、

ⅰ 429日(昭和の日)と今回の51日(即位の日)に挟まれた430

ⅱ 51日(即位の日)と53日(憲法記念日)に挟まれた52

が、まるでオセロのように平日から休日に変わるため、土日を含めると10連休になるということです。

 

なお、今回成立した特例法によって、今年は新天皇即位を公に示す「即位礼正殿の儀」が行われる1022日(火)も祝日となりますが、上記のとおり、祝日に挟まれた平日のみが休日に変わるだけですので、祝日である1022日(火)と普通の日曜日(1020日)に挟まれた1021日(月)は今回休日にはならず平日のままです。

 

ちなみに、この「ゴールデンウイーク」という名称は、5月の連休期間中に大作を出すようになった映画界(大映株式会社 ※現在は角川映画株式会社)が、宣伝も兼ねて作り出したものだそうです。
NHKなんかでは、ゴールデンウイークに休めない人からの抗議(なにがゴールデンだ等)や、「外来語・カタカナ語はできるだけ避けたい」という制作現場の声、また1週間よりも長くなることが多いためウイーク(週間)という名称は的確な表現ではなくなったという理由から、「ゴールデンウイーク」は使わず、「(春の)大型連休」という表現を使っているそうです。(NHK文化放送研究所http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/181.html

 

今回増える祝日はあくまでも今年だけの臨時の祝日ですが、この臨時の祝日がなくとも日本は諸外国と比較して祝日が多いといわれています(今年の臨時祝日を除き年間合計16日)。
とはいえ、実際休みが多いかどうかは、諸外国の有給休暇の付与日数と消化率も検証する必要があるでしょう。

 

例えばフランスの祝日は10日程度と少ないですが、(日本のように転職すると算定がリセットされるのではなく、フランス中のどこの企業で働いても)労働者が10日以上継続勤務した場合、1ヶ月につき2.5労働日の年次有給休暇が発生しますので、1年間で合計30日の有給休暇が付与されます。
さらにフランス人はこの有給休暇を100%取得するということですので、有給休暇の年間付与日数が最大20日であり、かつ取得率が50%程度の日本人よりも実際の休みは多いと言えるでしょう。スペインやブラジルも30日の有給休暇付与日数で取得率は100%とのことです。(参考:エクスペディア・ジャパン「有給休暇国際比較調査2018https://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2018/

 

有給休暇は、自分だけが休みになるので、会社の他の従業員や取引先等は業務を行っているだけに、なかなか休みにくく、仮に休めたとしても、ついつい仕事のメール等のチェックを行ってしまう方が多いと聞きます。
「和を以て貴しと為す」性格のせいか、責任感の大きさのせいか、はたまた有給休暇を取りづらくさせる圧力があるせいか、いずれにせよ日本には有給休暇が取得しづらい雰囲気があります。もはや国民性と言っても良さそうですので、労働者に休んでもらいたいならば、有給休暇の取得を促すというよりも、国民の多くが休むことになる祝日を増やしたほうが、安心して休むことができるでしょう。ただし、祝日(休日)が増えることにより給与が下がることになる日給・時給で働いている方や祝日が休日にならない方への配慮も検討する必要があります。

 

休日にどこに行こうか、何をしようかを考えられるのも、休日に業務に従事している方がいるからこそのものですので、感謝の念を持ちながらも、リフレッシュできる休日を過ごしたいものですね。

日本には、所有者が不明な土地がどれくらいあるか知っていますか?

 

一般財団法人国土計画協会らで組織する所有者不明土地問題研究会の調査では、2016年の推計で約410万ヘクタールだそうです。

 

410万ヘクタールといわれても、ちょっとピンとこないかもしれませんが、九州の面積が367万ヘクタールとのことですので、実は、現時点でも、九州の面積以上の土地の所有者が誰だかわからない状態なんだそうです。

 

で、所有者不明土地が発生する主な原因の一つが相続による代替わりだそうですので、今後、団塊の世代が大量にお亡くなりになる大相続時代を迎え、この傾向はさらに進んで、2040年には、約720ヘクタールになるそうです。北海道の面積が834万ヘクタールなので、北海道の面積に匹敵する面積の土地の所有者がわからなくなるということになります。

 

こうなると困りますよね。なんで所有者不明の土地が発生するのか?というと、それは土地の所有には、固定資産税の支払いや、土地の管理などの義務も発生するからです。つまり、所有者不明の土地が発生すればするほど、税収が少なくなりますし、きちんと管理されず荒廃していく土地が多くなるということになるのです。

 

もちろん、政府もこの状況に手をこまねいているわけではなく、既に昨年(2018年)の通常国会で「所有者不明土地の利用円滑化特別措置法」を成立させています。これは、既にある所有者不明の土地を企業や市町村が公園や駐車場というような公共目的に使えようにするものです。

 

ただ、これでは不十分なので、現在の国会では、所有者不明土地のうち、所有者の氏名や住所が正しく登記されていないものについて、登記官が調査し、登記簿上の所有者を正しく書き換えられるようにし、それでも所有者がわからないときは、土地を利用したい自治体や企業の申立てで裁判所が管理者を選び、その管理者により土地を売却できるようになります。

全国に九州の面積よりも多い所有者不明土地があるということになると、中には多くの人が欲しがるような土地もあるかもしれませんので、このような法律ができると不動産業の活性化につながるかもしれませんね。

 

で、さらに、前述のとおり、不明土地の発生は、相続時に相続人の登記がされないことが原因の一つですので、政府は、現在、相続登記の義務化に向け議論を進めています。また、土地所有に伴う義務(固定資産税支払い・土地管理義務)の存在も不明土地が発生する理由ですので、ならば(これまでは認められていなかった)土地所有権の放棄を認めてあげようという議論も進められています。放棄された土地は、受け皿組織にいったん帰属させ、そこから土地を活用したい人とマッチングするような仕組みを作るとのこと。この相続登記の義務化と土地所有権の放棄については2020年の臨時国会に法案の提案を目指しているとのことです。

 

というわけで、この所有者不明土地の問題には今後も注目ですね。これからもWatchしていきたいと思います。

 今回は、法律の話から離れて、司法試験とその合格者の現状について、お話ししたいと思います。

 

 法曹になるための仕組みは、今から15年前の2004年に大きく変わりました。
 いわゆる法科大学院(ロースクール)ができたのがこの年で、それまで、司法試験は基本的には誰でも受けられる試験だったのですが、法科大学院卒業者が出る2006年以降は、原則として、法科大学院を卒業しなければ、司法試験を受験することができないことになりました。
(※厳密には、2006年から2011年まで、誰でも受験できる旧司法試験と、法科大学院卒業者しか受験できない新司法試験とが併存していたのですが、この点は置いておきます。現在は、新司法試験のみになっていて、原則として法科大学院卒業者しか司法試験を受験できなくなっています。)

 

 旧司法試験は、誰でも受験できることもあって、受験者数が多く、合格率が低い試験でした。法務省のまとめを見ると、2次試験(法的知識の試験)の受験者数が毎年約20,00045,000人なのに対し、合格者数は毎年約5001,000人で、合格率は3%前後でした(http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/press_071108-1_19syutu-gou.html)。
 一方、新司法試験は、受験資格に制限があるため、受験者数が少なく、合格率は高い試験です。受験者数は毎年約8,000人なのに対し、合格者数は毎年約2,000人で、合格率は23%前後になっています。
 旧司法試験は、受けるまでは簡単で受かるのが難しい試験、新司法試験は、受けるまでが難しく受かるのは(比較的)簡単な試験、という感じでしょうか。司法試験と聞くと、まだまだ旧司法試験のイメージが強いので、新司法試験の合格率を聞くと驚かれる方も多いかもしれませんね。

 

 ところで、この(新)司法試験、ここ数年でガクッと受験者も合格者も減っています。

2014年: 受験者8,015人、合格者1,810

2015年: 受験者8,016人、合格者1,850

2016年: 受験者6,899人、合格者1,583

2017年: 受験者5,967人、合格者1,543

2018年: 受験者5,238人、合格者1,525

2019年: 出願者4,930人【参考】

 

 2015年までは、受験者数8,000人を概ね維持していたのですが、2016年から急激に減り始めました。
 そして、次回、20195月に予定されている司法試験は、出願の時点で5,000人を切っているので、受験者は4,000人強と予想されます。今までの合格率を維持するのであれば、合格者は1,000人前後といったところでしょうか。悲しいことですが、近年の法曹不人気を如実に表していると思います。

 

 一時期、急に弁護士の数が増えたことによって、弁護士の就職難が起きていると取り沙汰されましたが、それも今は昔。図らずも司法試験合格者が減って(減らさざるを得なくて)、新人弁護士の数が減っているため、今はむしろ売り手市場と言っても良いような状況になりつつあります。

 

 最後に、司法試験合格者が、その後どのような道に進むか触れておきます。
 現在、一番フレッシュな法曹(候補)は、201812月に司法修習を終えた71期司法修習生になりますが、71期司法修習生の進路は次のとおりです。(参考:https://www.jurinavi.com/market/shuushuusei/shinro/index.php?id=211

 

司法修習修了者  1517

判事任官者      82

検事任官者      69

弁護士登録者    1267

(うち、東京三会登録716人、五大事務所登録194人、組織内弁護士登録52人)

未登録者        99

 

 特徴的なのは、弁護士登録者の半分以上が東京に登録すること、少なくない人数がファーストキャリアに組織内弁護士を選ぶこと、五大事務所が採用数を大きく伸ばしていることかと思います。

 

 72期以降は、更に司法修習修了者が減っていくはずなので、特に東京以外の事務所や東京でも小規模の事務所の新人採用競争は、どんどん厳しくなるだろうと予想されます。
 一方、企業等の組織に入るという道は、弁護士の進路として確立されてきている印象ですので、資格保有者の採用を考えている企業にとってはチャンスかもしれません。

 
 今回は、興味のある人にはある、司法試験の現状をお伝えしました。
 何らか皆様のお役に立てれば幸いです。

最近では、リクルートグループやソフトバンクグループ等、従業員の副業を解禁する企業が増えてきました。なかには副業を推進するような先進的な企業もあります。
とはいえ、これらの企業はあくまでも例外であって、まだまだ就業規則において、他の業務に従事することを禁止する兼業禁止規定や、他で就業することを禁止する二重就職禁止規定(以下、併せて「兼業禁止規定」といいます。)を設けている会社が多くあります。
使用者としては自社の職務に専念して欲しいと考える理由から兼業禁止規定を設けている場合が多いですが、一方で、本来、就業時間以外のプライベートな時間をどのように使うのかは従業員の自由であり、兼業禁止規定のような就業時間外においても使用者の拘束を及ばす規定はいかがなものかとも考えられます。

 

古くから兼業禁止規定は、「他の継続的雇用関係に入り、余分の労務に服することとなるとその疲労度は加速度的に加わり、従業員たる地位において要請される誠実な労務に服することができなくなる」ことを理由に有効と考えられてきました(大阪地判昭321113日・労民集86807頁)。
もっとも、近年ではこの理由だけではなく、「兼業」を行うことによって、①会社に対する業務提供に支障をきたすと考えられる場合や、②会社の対外的信用や体面を傷つける可能性がある場合においては、就業規則によって使用者の許可制とすることが肯定されています(京都地判平24713日・労判105821頁等)。

 

しかしながら、労務提供が不完全であれば、人事考課でマイナス評価をすればいいし、労務を誠実に提供する義務の違反や、勤務成績不良や勤務態度不良を理由として懲戒処分を検討すればいいと思います。また、会社の対外的信用や体面を傷つける可能性などは、そのようなことがあって初めて企業の信用毀損を理由とした懲戒処分を検討すればよく、前もって兼業禁止規定を設けておく合理性に乏しいと考えます。

 

また、時間外労働の際の割増賃金支払い義務に関して、実務上、不合理な解釈・運用がなされていることも、兼業禁止規定が今もなお続いている理由にもなっているでしょう。
すなわち、使用者は、原則として、1日の労働時間が8時間を超えるか、1週間の労働時間が40時間を超えた場合には、その時間外の労働時間に応じて割増賃金(0.25倍等)を従業員に支払わなければなりません(労働基準法第37条等)。

実務上、この時間外の労働時間については、異なる使用者に雇用される場合においては各使用者下での労働時間を合算するとされており、「後で労働者と労働契約を締結した使用者」が割増賃金の支払義務を負うとされています(労働基準局長通達「昭和23514日基発769号」、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000193040.pdf)。

 

これはどういうことかというと、元々A社で働いていた方が、B社で兼業することになった場合、A社で月~金の5日間合計40時間労働し、土日にB社で18時間ずつ労働したとします。この場合には、B社で労働した土日の16時間は、全て時間外労働として扱われてしまい、B社はこの労働者に割増賃金を支払わなければならないことになります。

A社で働いているのを隠してB社に入社し、「実はA社で働いていたので割増賃金を支払って欲しいです」と言われて、さらに利息(年6%。商法第514条)まで請求されては困りますし、割増賃金支払義務違反(労働基準法第119条第1号)があると労基署に駆け込まれてはかないません。
時間外労働について、このような運用がされてしまっているのでは、兼業を禁止したいと会社が考えてしまうのも無理はありません。

 

そもそも兼業禁止規定は、それこそ労働者が一つの会社に骨を埋めることができる終身雇用制度・年功序列制度が維持されており、いわば会社=家とも考えられていた時代ならともかくとして、これらの制度が崩壊したと言われている昨今において、この兼業禁止規定を維持することの合理的な説明は難しいと思います。
定年まで安定して勤め上げることが難しいのであれば、従業員としても他でスキルを身に付けたいと考えたり、もしものために他でも収入を確保したいと考えてしまうのは必然的な流れかと思います。

 

時間外労働の不合理な運用が改められることもそうですが、今後は、雇用の流動性を覚悟し、むしろ他社や他業種で身につけたスキルやノウハウを、(秘密保持義務の範囲内で)会社で発揮してもらうことで、シナジーを期待するほうが時代に合っているのかもしれません。今後も動向に注目したいと思います。

最近ワイドショーなどで話題になっていた夫の不倫相手に対する妻の慰謝料請求が否定された最高裁平成31年2月19日判決(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/422/088422_hanrei.pdf)を振り返ってみましょう。

既に善良なる紳士淑女の皆様は十分ご存知のとおり、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰藉すべき義務があるというべきである。」(最判昭和54年3月30日)というのが確定した判例です。

つまり、相手の男性又は女性が結婚していることを知りながら(又は注意すればわかったのにその注意を怠って)SEXをすると、そのお付き合いが真剣なものかどうかにかかわらず、その相手の妻又は旦那さんから慰謝料の請求をされることがあるということです。

しかし、上記最高裁平成31年2月19日が元妻の慰謝料請求を否定したのは、この元妻が、夫の不倫相手の女性に対し、「自分の夫と不貞行為(SEX)をしたことにより自分が精神的に傷ついた損害(慰謝料)」の賠償を請求したのではなく、不倫相手の女性が自分の夫とSEXした結果、結婚が破綻し、離婚に至ったので、「その離婚したことにより自分が精神的に傷ついた損害(慰謝料)」を求めたからです。

どうして不貞行為を理由とする慰謝料ではなく、離婚を理由とする慰謝料を求めたかというと、どうやらこの案件では不貞行為がバレた後、旦那は不倫をやめて3年間は奥さんと一緒に住んでいたが、結局、浮気の影響があって、離婚に至ったからということのようです。民法には消滅時効という制度があって、上記の例では、不貞行為がバレてから3年が過ぎると、不貞行為を理由とする慰謝料請求はもはや請求できませんので、時効の起算点をずらすために離婚を理由とする慰謝料請求にしたようなのです。

最高裁は次のように判示しています。
「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。」

この最高裁判決をどのように評価すべきでしょうか?

まぁ、浮気がバレても全部が全部離婚に至るわけではないので、「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価する特段の事情」がないと、第三者の不貞行為と離婚による精神的損害発生との間に(相当)因果関係が認められないと言っているようにも読めます。不貞行為を理由とする慰謝料請求と、離婚を理由とする慰謝料請求を分ける立場からは当然の結論という人もいることでしょう。

ただ、私はなんとなくしっくりこないものを感じます。
この判例に従えば、たとえば、旦那又は妻にセフレがいて、そのセフレがいたことが原因で離婚にいたっても、セフレは婚姻関係に対する不当な干渉などしないでしょうから、セフレに対する慰謝料請求はできません。
他方、旦那又は妻に真剣に付き合っている人がいて、旦那又は妻がその人と同棲するようになった場合には、婚姻関係に対する不当な干渉があるとして、慰謝料請求ができるように思います。
しかし、現代の価値観からすると、まじめにお付き合いをしている方が損害賠償請求の対象になるという結論はしっくりこないのではないでしょうか。

翻って考えてみると、相手の男性又は女性が結婚していることを知りながらSEXをすると、その相手の妻又は旦那から慰謝料の請求をされるという出発点が、今の世の中の現実の価値観とあっていないように思います。ネットなどでは、よく不倫をしたことがあるか?などというアンケートの結果が発表されていますが、それによると男性の30%、女性の20%くらいが「ある」と回答するようです。現代社会では、政治家や芸能人の不倫は格好のワイドショーネタとして強い社会的バッシングの対象になりますが、では世の中が不倫に厳しくなっていかというと、大衆は昼ドラの不倫に熱狂しますし、アンケート結果などからも不倫がかなり行われているということができます。何が言いたいかというと、こんなにも不倫がありふれたものとなると、妻とか夫であることの地位というのはそんな強固なものではなくなっているので、不倫があったからといって、(倫理・道徳違反を問うのは良いとしても)法的に損害賠償をする権利まで認める必要性はないのではないか(それをまじめにやっていると現実の社会とのギャップが大きすぎて法が機能しなくなるのではないか)ということです。

だいたいそういう結婚相手を選んだのは自分なんですから、自分が悪いのです。

というわけで、私は、このまま世の中が進展していくと、妻又は夫が、配偶者の不倫相手に慰謝料を請求できるという判例理論自体が変更されると思っています。今回の最高裁判決は、その流れを踏まえて、配偶者の不倫相手に対する慰謝料請求を制限するものと位置付けています。

ビットコイン スタートBook
江嵜 宗利
大蔵財務協会
2019-04-10


この度、わたくし、真に僭越ながら、4月に、ビットコインの本を出版させていただくことになりました。その名も「ビットコイン スタートBook」です。

『ビットコイン スタートBook

 ~仕組みから始め方・所得の計算まで~』

定 価 1800 円(税込)
出版社 大蔵財務協会

http://www.zaikyo.or.jp/publishing/books/008492.shtml 

https://www.amazon.co.jp/…/4…/ref=asc_df_47547263592602915/… 

この「ビットコイン スタートBook」の特徴としては、

・タイトルのとおり、初心者の方を対象としたビットコインの解説書です。
・文体は口語調、論点形式(Q&A形式)で、図も使っていますので、読みやすいかと思います。少なくとも、お堅い専門書ではありません。

・全体を、入門編(ビットコインの使い方など)、技術編(ブロックチェーンの仕組みなど)、法律・税務編(仮想通貨法や所得の計算方法など)に分けて、比較的広い範囲について、ご説明させていただきました。

ざっと、ビットコインの概要を、技術も法律も税金も含めて概観したい、という方には、お役に立てるかもしれません。また、通常、弁護士の書く本というと、法律的な話題が中心になることが多いかと思いますが、この本では、技術的な内容もしっかり書かせていただきました。

書店に並ぶのは4月2日頃、Amazonなどでは4月10日からの販売のようです。ご興味をお持ちいただけましたら、是非、書店などでお手にとってご覧ください!

さて、最近のビットコインは・・・という前に、今回は、ちょっとだけ宣伝をさせてください。

この度、わたくし、真に僭越ながら、4月に、ビットコインの本を出版させていただくことになりました。その名も「ビットコイン スタートBook」です。

『ビットコイン スタートBook
 ~仕組みから始め方・所得の計算まで~』

定 価 1800 円(税込)
出版社 大蔵財務協会

http://www.zaikyo.or.jp/publishing/books/008492.shtml 

https://www.amazon.co.jp/dp/4754726359/ref=asc_df_47547263592602915/?tag=jpgo-22&creative=9303&creativeASIN=4754726359&linkCode=df0&hvadid=311579908460&hvpos=1o1&hvnetw=g&hvrand=10861455312950816341&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=&hvdev=c&hvdvcmdl=&hvlocint=&hvlocphy=1028851&hvtargid=pla-656293197829&th=1&psc=1 


この「ビットコイン スタートBook」の特徴としては、

・タイトルのとおり、初心者の方を対象としたビットコインの解説書です。

・文体は口語調、論点形式(Q&A形式)で、図も使っていますので、読みやすいかと
 思います。少なくとも、お堅い専門書ではありません。

・全体を、入門編(ビットコインの使い方など)、技術編(ブロックチェーンの仕組
 みなど)、法律・税務編(仮想通貨法や所得の計算方法など)に分けて、比較的広
 い範囲について、ご説明させていただきました。

ざっと、ビットコインの概要を、技術も法律も税金も含めて概観したい、という方には、お役に立てるかもしれません。また、通常、弁護士の書く本というと、法律的な話題が中心になることが多いかと思いますが、この本では、技術的な内容もしっかり書かせていただきました。

 

書店に並ぶのは42日頃、Amazonなどでは410日からの販売のようです。ご興味をお持ちいただけましたら、是非、書店などでお手にとってご覧ください!

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最近のビットコイン相場ですが、前回メルマガ送付後、223日頃に、1BTC=45万円を突破しましたが、その後、下落して、現在(2019/3/22現在)、1BTC=44万円で推移しています。

 

さて、報道によれば、資金決済法及び金融商品取引法が改正され、仮想通貨に関する規制が修正ないし新規創設されることとなりました(https://www.fsa.go.jp/common/diet/198/index.html)。

 

現段階では、まだ国会に提出されたばかりで、成立はしていませんが、報道では、来年の施行を目指す、とされています。

 

上記私の本でも詳しく触れられれば良かったのですが、原稿締切までに改正案が出なかったので、残念ながら、載っていません(ただ、法改正がされるという方向性は把握していたため、特に影響がありそうな部分は、注意書きをいれております。)。

 

また、今回の改正案(法律案)の内容については、金融庁が説明資料(https://www.fsa.go.jp/common/diet/198/02/setsumei.pdf)を公表していて、それによると、例えば、資金決済法関連では、以下のような改正がされるようです(法律案だけ見ていても、「詳細は内閣府令で定める」旨の記載も多く、その内閣府令が公表されていないようですので、細かな部分はまだ分からないところもあります。)。

 ・法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更

 ・取引所は、原則的に顧客から預かった暗号資産(仮想通貨)をコールドウォレッ
  ト(※1)で保管、ホットウォレット(※1)で保管する場合は弁済原資を別途保
  持しなければならない

1 コールドウォレットはインターネットに接続されていないウォレットです(ペーパーウォレットやハードウェアウォレット)。インターネットに接続されていないため、基本的に、ハッキングによる流出のおそれがありません。もっとも、送金する際は、インターネットに接続する必要がありますので、多少手間がかかります。そのため、長期保管に向いており、すぐに送金するような場合(流動性が高い場合)には向いていません。

 ホットウォレットは、逆に、インターネットに接続されているウォレットです。送金はすぐにできますが、コールドウォレットと比較して、ハッキングによる流出のおそれがあります。

 ・取引所の広告・勧誘規制(※2

 ※2 例えば、法律案上、取引所は、「支払手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為」(資金決済法・改正案・第63条の93)が禁止されます。例えば、ビットコインは、代金決済の手段としてだけではなく、投機・投資の手段としても利用されていますが、投機・投資の点を強調しすぎるとNG、ということかと思います。ただ、投機・投資もビットコインの立派な使い道、という気がするのですが・・・。 

 ・「他人のために暗号資産の管理をする」(資金決済法・改正案・第2条第7項第4
  号)業者にも、取引所の規制を適用

 また、金商法に関しては、例えば、以下のような改正がされるようです。

 ・暗号資産(仮想通貨)の証拠金取引(いわゆる仮想通貨FX)にも、金融商品取引
  法上の規制(販売・勧誘規制等)を整備

 ・ICOにも金融商品取引法が適用されることを明確化、投資家への情報開示や、販
  売・勧誘規制を整備

 ・暗号資産(仮想通貨)の取引に関し、風説の流布・価格操作等の不公正な行為を
  禁止

 

 ちなみに、今回の改正で、一番、目につく点(そして、また、一番よく報道されている点)としては、資金決済法上の「仮想通貨」という用語を、「暗号資産」に変える、という点です。
 国際会議の場などでcrypto-assets(暗号資産)の名称が使われだしたことや、「通貨」という語を含むと、本物の通貨と混同する人がいるから、というのが理由だそうです。

ただ、私個人的には、

「何で!? せっかく、資金決済法に『仮想通貨』という言葉を使って、メディアの報道でも『仮想通貨』という語が多く使われて、各種文献でも『仮想通貨』という語が用いられて、ようやく、一般的にも『仮想通貨』という名前が定着しだしたのに!? ここに来て、法改正で単語の名称を変更するの!?」

と思ってしまいます。

 

 私自身、外国の技術文献などを見ていても、crypto-currency(直訳すると「暗号通貨」)という表記はよく見ますが、crypto-assets(暗号資産)という表記は、あまり見たことがありません。

 また、「通貨」の語が入っていると、何となく、決済手段などに利用できるもの、デジタルマネーのようなもの、的なイメージがわきますが、「暗号資産」という語で、そのようなイメージがわくか、というと疑問です(余計、何を指しているのか訳が分からなくなって、混乱が生じてしまいそうな気もします・・・。国際会議での英語のやり取りは、「crypto-assets」、和訳では「仮想通貨」を使えばよかったのではないでしょうか・・・。)。

 

折角日本で、「仮想通貨」の名称が定着してきた中で、残念な改正ですが、法改正までして、今後は「暗号資産」と呼ぶのだ、というのであれば、致し方ないかもしれません。

 

ただ、果たして、この「暗号資産」という名称、一般の方には定着するのでしょうか。

 前回のメルマガで働き方改革関連法について触れましたが、この法律によって派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)も一部改正され、2020年4月1日から、派遣労働者についても同一労働同一賃金が実現されることになりました。これが実務に与える影響はかなり大きいと思われるため、簡単にご紹介します。

 

 派遣労働者については、雇用契約を結ぶ相手である「派遣元企業」と実際の労務提供先である「派遣先企業」が存在しますが、まず、今回の改正により、派遣元企業に対し、派遣労働者について、①派遣先労働者との均衡・均等待遇、又は②一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇、のどちらかを実現することが義務付けられました(改正後派遣法第30条の3、第30条の4)。
 ①派遣先労働者との均衡・均等待遇とは、大まかに言えば、派遣労働者について、派遣先の労働者と仕事の内容や配置の変更の範囲等が同じなのであれば待遇も同じに扱わなければならないし、仕事の内容や配置の変更の範囲等が違うのであれば待遇も違っていて良いが、その待遇の相違は仕事の内容や配置の変更の範囲等の相違とバランスの取れたものでなければならない、という意味合いです。

 

 原則として、派遣元企業には、この①派遣先労働者との均衡・均等待遇の実現が求められます。ただ、①を実現しようとすると、派遣元企業は労働者の派遣先が変わる度にその労働者の待遇を変更しなければならないため、煩雑ですし、派遣元企業内での段階的キャリアアップも図りづらくなります。
 そのため、②一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇を実現する方法も用意されており、派遣元企業が②の方法を取った場合には、①派遣先労働者との均衡・均等待遇の実現は要請されません。派遣労働者の数が多かったり、頻繁に労働者の派遣先が変わったりする派遣元企業は、②の方法を取る方が簡便と思われます。
 ただ、労使協定の内容についても一定の制限があります(賃金の水準が厚労省の定めるもの以上であること等)し、労働者への周知や行政への届出といった手続が必要になるため、②の方法を取ると決めた場合は、早めに労使協定の締結に向けて動く必要がありそうです。

 

 主要な変更点は上記のとおりなのですが、派遣元企業が①の方法を取る場合、派遣先労働者の待遇に関する情報を知らなければ均衡・均等待遇の実現のしようがありませんし、②の方法を取る場合も、教育訓練や福利厚生施設といった一定の事項については派遣先労働者との均衡・均等待遇が求められるため、いずれにしても、派遣元企業は、派遣先労働者の待遇に関する情報を知る必要があります。
 そのため、今回の改正で、派遣先企業には、派遣契約の締結前に派遣元企業に派遣先労働者の待遇に関する情報を提供することが義務付けられ、派遣元企業は、この情報の提供がなかった場合、派遣契約を締結することが禁じられることになりました(改正後派遣法第26条第7項~第9項)。
 派遣元だけでなく、派遣先の方でも改正への対応が必要になりますので、注意が必要です。

 

 上記をまとめると、改正後に労働者の派遣を行う場合には、一般的には次のプロセスを辿ることになると考えられます。

 

派遣元企業が①派遣先労働者との均衡・均等待遇を実現する場合

 派遣先企業が派遣元企業に、派遣先労働者の待遇に関する情報を提供

 

 派遣元企業が労働者の待遇を検討し、決定

 

 派遣元企業・派遣先企業で派遣料金を交渉し、派遣契約を締結

 

 派遣元企業が労働者を派遣

 

派遣元企業が②一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇を実現する場合

 派遣元企業が労使協定を締結

 

 派遣先企業が派遣元企業に、派遣先労働者の待遇に関する情報(一部)を提供

 

 派遣元企業・派遣先企業で派遣料金を交渉し、派遣契約を締結

 

 派遣元企業が労働者を派遣

  

 今回の改正では、上記の仕組みで派遣労働者の同一労働同一賃金が実現されることになりましたが、これが実行された場合、派遣元企業にマージンを支払うこととの関係で、派遣先企業にとっては、派遣労働者を受け入れる方が自社で労働者を直接雇用するよりもコストがかかる可能性が高くなります。
 経済的合理性を考えると、今回の改正によって、今後、派遣労働者の受入れは縮小する方向で進んでいくかもしれませんね。

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