2022年12月1日 日経新聞朝刊47頁

「同性婚制度なし『違憲状態』」「東京地裁『人格的生存の脅威』」「法整備、立法に議論促す」「結論は『合憲』、賠償認めず」との見出しの記事から

「判決は、『婚姻の自由』を定めた憲法24条1項が『両性』などの文言を用いていることから『同性間は含まれないと解するのが相当』と判断。婚姻が異性間に限られる背景には『男女が子を産み育て、家族として共同生活を送りながら次世代につないでいくという人間の営み』があると指摘。現行規程には『合理的な根拠がある』として憲法14条にも違反しないとした。」

「一方で、憲法24条2項が婚姻に限らず家族生活に関する『個人の尊厳』などにも保障している点に着目。パートナーシップ制度など同性婚に類似した制度が自治体で導入されるなか、国が同性愛者がパートナーと家族になるための法制度を整えていないのは『人格的生存に対する重大な脅威であり、憲法に反する状態にある』と指摘した」



(飛田コメント)
 記事を読む限り、ちょっと乱暴に言うと、同性婚は『子を産み育て、〔中略〕次世代につないでいく人間の営み』がないから、国が同性婚制度を設けなくても違憲とは言えないが、同性愛の人々にも「家族生活に関する『個人の尊厳』」は保障しなければならないから、パートナー制度等の法制度を設けないことは違憲状態であると言っているように読めます。つまり、結婚(婚姻)までは認める必要はないが、パートナー制度については認めてあげるべきだと。
 しかし、結婚(婚姻)制度とパートナー制度の1番の違いは、結婚(婚姻)制度における配偶者(夫又は妻)には相手の財産について相続権があるのに、パートナー制度のパートナーには、相手の財産について相続権がないことでしょう。そして、同性愛の人たちは、この相手に対する相続権を認めて欲しい(というか、異性間の夫婦と区別しないでほしい)と訴えているものと理解しています。しかして、同性間の夫婦と異性間の夫婦で(更に言えば、子供を作れるか否かによって)、この点で差別する合理的な理由があるか?と問われると「ない」と答えざるを得ないと思うのですが、いかがでしょう?
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2022年11月30日 日経新聞朝刊7頁

「経営者保証ない融資促す」「中小企業庁、金融機関に」「返済能力など数値基準」「起業阻む慣行見直し」

「中小企業庁は30日の有識者会議で詳細を公表し、来年4月から導入する。現在のガイドラインには経営者保証をつけない融資を受けるための要件として①法人・個人の分離②財務基盤の強化③経営の透明性確保-の3つがある。新たにそれぞれに具体的なチェック項目を策定する。」

「例えば、財務基盤の強化では、「(有利子負債がキャッシュフローの何倍であるか示す)EBITDA有利子負債倍率が15倍以内」「減価償却前の経常損益が2期連続赤字ではない」といった目安を設ける。」



(飛田コメント)
 経営者保証ガイドラインが適用開始になったのは、平成26年(2014年)2月1日のことです。現在までに約8年以上経過したわけですが、あまり中小企業金融の世界は変わったような印象を受けません。相変わらず中小企業の社長は、中小企業の借り入れの連帯保証人となることが多いと思います。私の見るところ、それは中小企業側に事業性に問題があるものが多く、実態としては、社長個人の連帯保証がないと、とても恐くて融資できない場合が多いからと思っています(したがって、やむを得ない面があります。)。
 しかし、中には、きちんとした事業性を有しているのに、これまでの慣行だからということで経営者保証が続いている例も散見されます。この様な例では、一定の具体的基準を定めることにより、経営者保証をやめることが期待できるので、とても良いことのように思います。
 で、問題はその基準ですが「EBITDA有利子負債倍率が15倍以内」とか「減価償却前経常損益が2期連続赤字でない」というのは、とても低い基準(越えるのにそれ程難しくない基準)のように思われ、「えっ、これでいいの?」という感じです。これならかなりの数の中小企業がクリアできるのではないでしょうか?
 いずれにしても、「経営者保証のない融資」の世界実現のためには、良い試みだと思います。
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2022年11月27日 日経新聞朝刊27頁

「逮捕記事に番地掲載適法が確定」「最高裁、静岡新聞が勝訴」との見出しの記事から

「一審静岡地裁判決はプライバシー侵害を認定し、同社に計66万円の支払いを命じた。」

「東京高裁判決は、重大犯罪の容疑者の特定は報道の必要性が高く、プライバシー保護に優越して表現の自由が保障されると指摘した。」


(飛田コメント)

 記事によると、逮捕されたのはブラジル国籍の夫婦で、容疑は覚醒剤取締法違反、夫婦は嫌疑不十分で不起訴となったとのことですので、地域の新聞で自宅住所が番地レベルまで報道されることは、その後の生活にかなりのダメージを与えたのではないかと思います。
 私の感覚としては、重大犯罪だとしても、逮捕された者の自宅住所まで報道する必要はないように思うのですが、まして覚醒剤取締法違反であれば、少なくとも、近隣の人たちに危害が加えるような犯罪類型とは違うので、新聞で住所まで報道する必要があるのかな、という気がします。
 この辺はバランス感覚の問題だと思うのですが、どうでしょうね?
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2022年11月27日(日)日経新聞朝刊27頁

「同性婚の憲法判断注目」「東京地裁で30日に3件目判決」「認めぬ法規定 札幌「違憲」、大阪「合憲」」との見出しの記事から。

「同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定は憲法に違反するとして、同性カップルらが5地裁で起こした訴訟で、東京地裁が30日、3件目となる判決を言い渡す。先行の2件は法の下の平等を定めた憲法14条を巡る判断が分かれ、昨年3月の札幌地裁は「違憲」、今年6月の大阪地裁は「合憲」とした。」

(飛田コメント)
同性婚裁判の論点がわかる良い記事だなと思いました。
「同性婚は認められるべきか?」と問われると、色々なアプローチの仕方があると思いますが、裁判上の議論では、日本の法制上、同性婚が認められていないことが、憲法に違反していなか?という形で議論されることになります。科学的な議論ではないし、ときどき言葉遊びなのではないかと思うこともあって嫌になることがありますが、一応、我々人類が叡智を絞って練り上げたルールにのっとって議論が進められますので、議論に筋道ができるというか、整理されたものとなります。
で、この記事によれば、同性婚裁判で争われているのは、
① 同性婚を認めないことが、婚姻の自由を定める憲法24条に違反しないか?
② 同性婚を認めないことが、法の下の平等を定める憲法14条に違反しないか?
③ (①及び②のどちらかで違憲とされる場合)国会が同性婚ができる立法措置をとらないことが違法にならないか?
の3点ということです。
で、先行する札幌地裁判決と大阪地裁判決では、①については、憲法24条は、「両性の合意」と定めていて、異性間の結婚を前提したもので同性婚については何も定めていないので、憲法24条に違反するものとはいえない、②については、札幌地裁判決が、法の下の平等に違反する、大阪地裁が、民法の遺言制度などで不利益は軽減されているから法の下の平等には違反しない、と判断したようです。
ただ、②について違憲と判断した札幌地裁も、③については、国会で同性婚が議論されるようになったのは2015年からなので、まだ立法措置を怠っているとまではいえない、との結論です。
私は、ゲイの人も、レズビアンの人も同じ人間である以上、結婚する手段が認められていないのは、憲法14条の法の下の平等に違反するというのが自然な解釈だと思うのですがいかがでしょう?
30日の東京地裁の判断が注目ですね。

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2022年11月27日(日)日経新聞朝刊27頁

「 五輪談合、メールで調整か」「テスト大会入札 「1社のみ応札」多く」 「相互拘束の有無が焦点に」との見出しの記事から。

「受注調整につながるやりとりは、元組織委理事への贈賄罪で元社長らが起訴されたADKHD側への捜査で明らかになった。同社はすでに公取委に課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づき、違反を自主申告した。特捜部の聴取に対しても一覧表に沿って「受注調整があった」と談合を認めているという。」

「落札したイベント会社の関係者は「各社の実績が正当に評価されて、落札につながった」と強調する。「スポーツ大会の運営は特殊で、経験と実績がなければ受注できない。結果的に1社応札になった入札が多かっただけ」として、事業者間の競争が存在しなかったと指摘する。」

「組織委関係者も「受注実績の調査は委託を円滑に進めるための情報収集の一環。『談合』と判断されるのはおかしい」と話す。「一覧表のような候補社リストがあったとしても、そのリストに従う決まりもなかった」と主張する。」


(飛田コメント)
記事によると、①組織委員会大会運営局側が、入札を実施する前に、過去の実績を評価して、競技ごとに応札候補者を記載した一覧表を作成していて、それがメールで入札参加者にも共有されていたこと、②26件の入札のうち、電通、イベント制作会社セレスポ及びADKホールディングスの子会社で全体の半数が応札されていること、③26件の入札のうち少なくとも半数近くは1社応札であったことから、3社を中心とした調整がなされた疑いがあるということなのですが、逆にいうと、残りの半数は、この3社が応札したものではないのでしょうし、談合の合意が認定できるようなメールの遣り取りは見つかっていないのでしょうから(あったら、そのことがリークされて記事になっているのではないかと思いますので。)、上記の①~③だけでは、それほど強い「疑い」でもないのかな、と思います。そうすると、ADKHDが課徴金減免制度に基づき、違反を自主申告していて、特捜部にも談合があったことを認めていることが非常に大きいのではないかと思います。しかし、今回の発端は、五輪汚職によってADKHD社長らが逮捕された際の捜査にあるようですので、後々、ADKHD側の自白が任意のものだったといえるのか(言わされているのではないか?)という点が問題となってくるように思いますし、談合を認めているといっても、どこまで認めているのかがよくわかりませんので、まだ決定的でではないように思います。今回、電通に家宅捜索が行われたとのことですので、そこから何が見つかるのかも大きなポイントとなるでしょうね。



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2022年11月23日 日経新聞朝刊3頁

「就活『替え玉』容疑の男逮捕」「ウェブ試験の弱点露呈」「企業、不正対策悩む」

「企業が採用活動で使うウェブ型の適性検査を巡り、就職活動中の学生になりすまして第三者が受検する『替え玉』が繰り返されていた疑いが浮上した。警視庁が22日に逮捕を発表した男は数百人から代行の依頼を受けた可能性がある。」

「刑法の私電磁的記録不正・作出・同供用罪は他人の事務処理を誤らせる目的でデータを不正に作るなどの行為を禁じる。警視庁は学生のふりをして解答を入力し、データを採用企業に使わせた行為が該当すると判断した。」


(飛田コメント)

 私的には、ウェブ試験の替え玉受検が私電磁的記録不正作出・同供用罪(刑法161条の2)に該当するとされた点に興味を引かれました。
 一般的な感覚としては詐欺罪(刑法246条)ですが、この場合、騙す行為によって、騙された人(企業)側から何か財産を得たり、経済的利益を受けたわけではないので、詐欺罪とすることが難しいのでしょう。ネットでの替え玉受験が私電磁的記録不正作出・同供用罪とすると、リアルの世界で替え玉受検は、私文書偽造罪(刑法159条)、同行使罪(刑法161条)になるんですかね?しかし、電磁的記録も文書も作られない面接だけの替え玉はどうなるのでしょう。この場合は、偽計による業務妨害罪(刑法233条)かな?もっとも、面接だけの場合には、替え玉を使うとすぐバレそうですので、あまり想定する必要がないのかもしれませんね。法律オタクの心がくすぐられます。
 
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2022年11月22日 日経新聞朝刊47頁

「『妻殺害』審理差し戻し」「講談社元次長の有罪破棄」「最高裁」

「東京都文京区の自宅で2016んねん、妻を殺害したとして殺人罪に問われた講談社の青年コミック誌「モーニング」の元編集次長、○○被告(47)の上告審判決で、最高裁第1小法廷は21日、一審に続き懲役11年とした二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。」


(飛田コメント)
 この事件は、夫が殺害したのか、妻が自殺したのかが争われていたようなのですが、高裁判決は、妻の額には深い傷があったが、血を拭った痕跡がないから自殺ではないと判断したのに対し、最高裁は、いやいや検視時や救急搬送時の不鮮明な写真から顔の血痕の有無を判断するのは困難でしょ?と判断したようです。
 刑事裁判では、「疑わしきは被告人の利益に」と言われるのですが、具体的な場面でこの原則を適用するかどうかは人によってかなりの違いがあるのでしょう(一審と二審は「疑わしい」を超えいると考えて有罪として、最高裁は「疑わしい」に留まり、事件を差し戻した。)。とても難しい問題です。
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2022年11月21日 日経新聞朝刊15頁

「見抜かれるMBO」「受け皿会社で推測 先回り買いも」「監視委、異例の注意喚起」

「ネット上で特別目的会社(SPC)の新設情報を探ってMBO(経営陣が参加する買収)を公表前に察知し、対象外社の株式を先回りして買う投資家が出てきている。」

「監視委幹部も『当初はインサイダー取引に該当する可能性があるとみて調べたが、金融商品取引法(金商法)が定める公開買い付け者等関係者などとの接点が見つからなかった』と話す。」


(飛田コメント)

 記事によれば、この手法を利用して1億円を超える利益を得た例もあるとのことです。どこにでも頭の良い人はいますね。この手法は、証券取引等監視委員会が注意喚起に踏み切ったことにより、今後、SPCの名称を対象企業と類推されないようにする、SPCの所在地を対象企業と同一にしないなどの工夫をすることにより、使えなくなると思いますが、今後も、公開買い付け等関係者に完全に接触しないで、MBOの実施を察知できれば、インサイダーとならずに、株で大額の利益を得られるということになります。
 そんな方法ないかしら?
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2022年11月18日 日経新聞夕刊3頁

「ツイッター社員に『踏み絵』」「激務か退職か マスク氏迫る」

〔マスク〕氏は「分かれ道」と題するメールのなかでツイッターが成功するためには「極めてハードコア(強硬)であることが必要だ」と強調し、「これは長時間、猛烈に働くことを意味する」と述べた。
マスク氏の要請に同意し、残ることを希望する従業員はメールに埋め込まれたリンクから「はい」を選択するように求めている。


(飛田コメント)

 記事によれば、はいを選択しなかった従業員は3ヵ月分の退職金が支払われて退職扱いとなるとのことです。 
 日本でこのようなメールを出すとパワハラに該当すると思われますが、訴訟大国のアメリカで何故これができるのかが不思議です。
 アメリカでも違法なのにマスク氏だから出来るのか?ちっとよくわかりません。
 しかし、マスク氏は凄まじいですね。
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2022年11月19日 日経新聞朝刊4頁

「『大将』社長射殺 男を起訴」「事件の構図見えぬまま」「工藤会系幹部」という見出しの記事から

捜査当局は田中被告の逮捕後、同社1日役員や企業グループ経営者らから任意で事情を聴いたが、事件の解明につながる証言は得られなかったとみられる。


(飛田コメント)
 記事によると、検察側が持っている証拠は、
①殺された大東社長の自宅付近の公園の防犯カメラ映像に田中被告と似た男が写って
 いたこと
②現場近くで見つかったたばこの吸い殻から検出されたDNA型が田中被告と一致して
 いたこと
の2つしかないようです。
 殺害の背景事情や動機も全くわかっていないので、さすがにこれでは厳しいように思うのですが、いかがでしょうか。
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