現在、法務省の法制審議会民事執行法部会において、「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されている。

民事執行法上、債務者財産に関する情報を取得する制度としては、債務者本人に自分の財産を開示させる「財産開示制度」というものがある。しかし、この制度は、平成15年の法改正で導入されてから毎年1000件前後しか利用されず、しかも実際に債務者から開示されているのは全体の約35%(平成27年)にとどまっているという。つまり、使い勝手が悪い上に、実効性がないのだ。そこで、現在、前述の民事執行法部会では、財産開示制度の実効性を高めるために、その「見直し」が審議されている。
ただし、そもそも論として、債務者自身に自分の財産を開示させる制度には限界があると考えられるため(債務者には財産を開示しようとするインセンティブがない。)、その「見直し」と同時に、先ほどの「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されているというわけなのである。

私は、この方向性には大賛成で、民事執行法部会には、是非とも使い勝手がよく、実効性のある制度を作ってほしいと願っている。ただ、法務省の同部会のページを除いてみたところ、ちょっと気になった点があるので、その点を書いておきたい。

同部会の委員には、大学教授、弁護士、裁判官、法務省の役人、労働組合関係の方、消費者団体の方など、そうそうたるメンバーが顔をそろえ、委員会では自己の専門的な知見を披露しているようである。きっとそれらの知見を参考にして、部会の事務局サイドが具体的案をまとめていくのであろう。

それはそれでいいのではあるが、ただ、具体的な制度を作った場合、どれくらいの利用者が想定されるのかとか、銀行には毎月どれくらいの照会がいくことになるのかとかをきちんと数字でシミュレートしておいた方が良いと思うのだ。この辺のところは、裁判所や公証人役場で1年間でどれだけの債務名義が作られていいるのか?そのうちどれだけ強制執行の申し立てがあるのか?現在、弁護士会照会で3大メガバンクにどれくらい照会がなされているか?というようなところから、大体の推計値が出せるのではないだろうか。

このような数字は、制度利用者の中に確定判決等の債務名義所有者だけでなく、執行証書(公正証書)の所有者も含めるべきかとか、銀行の手数料をどうするかという議論にも大きな影響を与えると思う。この制度にかかわる裁判所の人員をどれだけの規模にしたらいいのかを考える上でも必要であろう。何よりも、財産開示制度のときのように、蓋を開けてみたら、あまり使われず、しかも、あまり役に立たなかったなんて不名誉なことを避けられるだろう。

もし既にやっているのであればすみません。

是非、民事執行法部会には良い制度案を作ってほしいと期待しています。よろしくお願いいたします。

1 ビットコインのハードフォーク問題

ビットコインですが、今一番ホットな話題がハードフォーク問題です。これは、ごくごく簡単に言えば、ビットコインが、2種類に分裂する「かもしれない」という問題です。以前から、問題として指摘されていましたが、ここに来て、ハードフォークの現実的な可能性が高まっています。

例えば、世界のビットコイン取引所各社がハードフォークをした場合の取り扱いについて声明を発表しするなどし(https://corp.zaif.jp/info/4055/)、また、ビットコイン相場も、ハードフォークを懸念して、1BTC=14万円台だったビットコインの価格は、今月中頃から、暴落し、10万円台まで下がりました(なお、その後若干上昇し、現在12万円台[平成29年4月4日現在]で取引されています。)。

2 ハードフォークとは何か

では、今回問題となっているハードフォークとは、一体何なのでしょうか。ハードフォークという言葉の意味自体は、「互換性がないバージョンアップ」、程度の意味ですが、それだけでは何のことかさっぱりかと思います。

以前、イーサリアムのハードフォークについてご説明しましたが、イーサリアムのケースと今回のビットコインのケースは、また、ニュアンスが異なります。

こで、(誤解をおそれず、生じる結果に着目すれば)今回問題となるビットコインのハードフォークとは、

・従来のビットコイン(BitcoinCore)の取引台帳を使って、別の仮想通貨(BitcoinUnlimited)を作ろうとする動き

と説明することができます。

例えば、現在、ビットコインの取引台帳(ブロックチェーン)上に、Aさんが10BTC(ビットコイン)持っている旨が記録されているとします。この台帳を使って、別の仮想通貨であるBitcoinUnlimited(単位は「BTU」と呼ばれます。)ができるとします。そうすると、Aさんは、自動的に、

・新しくできた仮想通貨の10BTUを持つ

ことになります(BTUは、従来のBTCの取引台帳を引き継ぐため)。このような状況が、今、将に起きようとしています(但し、現時点での予想ですので、実際、どのような動きとなるか、未知数の部分がございます。)。

3 なぜハードフォークが問題となっているのか

では、なぜ、ビットコインのハードフォークが問題となっているのでしょうか。これは、ビットコインの技術的な問題に由来します。

ビットコインは、ブロックが数珠つなぎになった「ブロックチェーン」と呼ばれる取引台帳を使っています。このブロックチェーンには、日々、新たなビットコインの取引が記録され、ブロックが追加され続けています。しかし、現状、ビットコインのシステムでは、1つのブロックのデータサイズが決まっている(1MB)ため、近年増加したビットコインの取引量に対応できなくなりつつあります。

そこで、1つのブロックに、今まで以上の取引を記録するため、様々な解決案が検討されました。


続きを読む

ちょっと前の記事になりますが、MONEY Zineというサイトに2017年1月28日18時に掲載された「企業倒産、7年連続で減少傾向 一方、民事再生法を申請した企業は70%が消滅」という記事から引用します。


(以下、引用)
東京商工リサーチは、過去に民事再生法を申請した法人を追跡調査し、その結果を1月13日に発表した。対象は2000年4月1日から2016年3月31日に、負債1,000万円以上を抱えて民事再生法を申請した法人のうち、進捗が確認できた7,341社。
 
 民事再生法を申請した法人のうち、2016年8月末時点で事業継続を確認できた生存企業は2,136社で、全体の29.1%にとどまった。企業が消滅した理由を見ると破産が36.6%で最も多く、解散の11.9%、合併の3.6%が続いた。不明は47.1%だった。

 民事再生法では、裁判所から選任された監督委員が計画の遂行を3年間監督し、3年を経過すると監督を外れ、債務を完済していない企業も「終結」となる。企業の消滅時期をみると「終結前」に消滅した企業は42・5%で、「終結後」に消滅した企業は57.4%だった。計画の3年を経過して再生に取り組む企業は多いものの、倒産のマイナスイメージを物色できない企業も多く、経営改善は難しいケースが多いと同社は指摘している。

(私の感想)

 東京都中小企業再生支援協議会でサブマネージャーを1年2か月ほどしていた私のつたない経験からいうと、企業が再生するには、負債が適正規模に縮小されること及び事業が利益を生む体質になっていることの他に、金融機関との関係がうまくいっていることが必要です。これは、企業が順調に経営をしている場合であっても、企業のお金の入りと出には凸凹が出てくるので、そのへこんだ時に運転資金を融資してくれる金融機関がないと資金繰りが続かなくなってしまうからです。

 民事再生でスポンサーがついてくれて、そのスポンサーが手続き後の資金繰りを面倒見てくれるということであれば、この辺の心配はないのかもしれませんが、いわゆる自主再生で旧経営陣がそのまま会社を経営していくとなると、金融機関との関係が改善できない(つまり、新規に資金繰りの面倒を見てくれるところが見つからない。)ということになりがちなので、生き残りが難しくなっているのではないかと推測します。事業再生は、金融のこともわかっていないと成功させることは難しいですね。

小規模(訴額が140万円以下)の民事訴訟事件については、簡易裁判所が第一審の裁判権をもつことになります。今回は、この簡易裁判所における訴訟手続についてのトピックです。

訴訟を提起された被告としては、対応コストがかかることになります。とりわけ、遠方の管轄裁判所で訴訟を提起された場合、対応コストは確実に増えます。書面の作成や証拠の収集等のコストはもちろん、裁判所に出頭しなければならないというのが増大するコストです。


では、一回も出頭せずに、当方の主張をすることはできないか?簡易裁判所の訴訟手続では、できるのです。

簡易裁判所の訴訟手続に関しての特則が設けられています。

(私が日ごろよく通っております主戦場の)地方裁判所の訴訟手続においては、最初の口頭弁論期日に限り、出頭しなくても、当方の主張を書いた書面を陳述したものとみなしてくれます(民事訴訟法158条。擬制陳述)。訴えられた被告側の訴訟代理人が、とりあえず答弁書を出しておいて、1回目の期日には都合がつかないため、出席しないということはままあることです。

この擬制陳述について、簡易裁判所の訴訟手続の特則として、最初の口頭弁論期日以外の期日(続行期日)でも、適用されることになっています(民事訴訟法277条)。

そのため、簡易裁判所の訴訟手続においては、一回も出頭せずに、答弁書や準備書面を提出して主張をすることはできるということになります。


ここまでは条文そのとおりなので、わかりやすいと思います。

では、少し問いを変えて、一回も出頭せずに、当方の主張を裏付ける証拠を提出することはできないか?を考えてみます。

上で述べたように、簡易裁判所の訴訟手続においては、擬制陳述の制度を、最初の口頭弁論期日以外の続行期日にも認めていることからすれば、できそうですよね。そう思われませんか?

ちなみに、民事訴訟法は、「証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる。」という定めもおいています(民事訴訟法183条)。


ですので、証拠も提出できてよいのでは、、、とも思うのですが、結論としては、(原則)できません。

だったら、擬制陳述とかって、ほぼ意味なしですよね。

というのは、民事訴訟は、裁判所を説得する精緻な主張書面を作成したうえで提出することは重要ですが、裁判所は、他方当事者が争う限り、それだけでは事実として認めてくれず、自分の主張を裏付ける証拠を出せるかが勝負の決め手となるからです。


なぜ証拠の提出は「できません」という結論になるのかというと、文書の証拠を書証と呼ぶのですが、民事訴訟法は「書証の申出は、文書を提出し……なければならない」と規定しており(民事訴訟法219条)、ここでいう「提出」は、文書の所持者が出頭して顕出することが必要と解釈されていることがその理由のようです(旧民事訴訟法に関する判決ですが、最高裁昭和37921日第二小法廷判決・民集1692052頁参照)。


確かに擬制陳述という制度はあっても、同制度は出頭自体を擬制しているのではなく、陳述を擬制しているにすぎないため、事前に裁判所に文書を送付していたとしても、実際に出頭しない限り、書証の申出があったとは認められず、裁判所は取り調べてくれないこととなっています。


さて、困りましたね。そこで、私がトライするのは、電話会議システムを利用した弁論準備手続に付してもらうよう求めること(上申書の提出)です。
弁論準備手続とは、法廷で行われる口頭弁論手続ではなく、裁判所の小部屋で行われる争点及び証拠の整理を行うための手続です(民事訴訟法1681項)。ちなみに、実務では、和解の協議も、この弁論準備手続で行われることが多いです。

裁判所が、電話会議システムを利用した弁論準備手続を付すと、こちらは裁判所に行かずとも電話で対応することができます(民事訴訟法1683項)。

この場合、電話で参加した側の当事者については、「出頭したものとみなす」と規定されているのです(民事訴訟法1684項)。

この規定に基づき、出頭自体が擬制されるのです。

そこで、先ほどの議論に戻って、出頭して顕出したということになり、書証の申出があったということで、裁判所も、証拠を取り調べてくれるのです。


弁論準備手続に付すかどうかはあくまでも裁判所が決めることですので、以上述べた方法が必ずしも「使える」わけではありませんので注意が必要です。

ちょっと時間がたってしまいましたが、今年(平成29年)の1月31日に、注目すべき最高裁決定が出ました。

事案は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の容疑で逮捕され、処罰された方の氏名と居住する県の名称をキーワードとしてネットで検索すると、この方が逮捕されたことが記載されているウェブサイトが表示されるため、人格権侵害を理由に、検索業者に対して、この検索結果の削除を求める仮処分の申し立てをしたという案件です。

最高裁は、検索業者が検索結果を提供する行為には、検索業者の表現行為という側面を有し、他方、公衆がインターネット上に情報を発信したり、インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしていると前置きしたうえで、次のように判示しました。

「以上のような検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると、検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、当該事実の性質及び内容、当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、その者の社会的地位や影響力、上記記事等の目的や意義、上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、上記記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」

「当該公表されない法的利益が優越する」というだけではダメで(「きわどいけど、どちらかというと公表されない利益が優越する」というのではダメ)、そのことが「明らかな場合」と言えなければならないようです。つまり、公表されない利益がかなり優越しますといえる必要があるということでしょうか。

具体的な判断としても、

「児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は、他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが、児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており、社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されていることに照らし、今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また、本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると、本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる
以上の諸事情に照らすと、抗告人が妻子と共に生活し、〔中略〕罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても、本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」

として、児童買春をした者の公表されない法的利益が優越することが明らかとは言えないと判断しています。
プライバシー保護と表現の自由の交錯する非常に難しい問題ですが、児童買春をして処罰されると、刑は終了しても一生その記録がネット上からは消えず、非常に厳しい人生を送らなければならないということは言えそうです。児童買春なんてしてはいけません。

遺言書を書いておく必要があるのはどのような場合かというと、法定相続の結論が、意図している結論とかなり違ってくる場合であると思います。

そのような場合として、子供のいない夫婦の相続が挙げられます。

子供がいない夫婦の場合、配偶者は常に法定相続人になりますが(民法890)、その他は、親がいれば親が(民法889Ⅰ①)、親がいない場合でも兄弟がいれば兄弟が法定相続人として登場することになります(民法889Ⅰ②)。
相続分は、配偶者と親の場合には、配偶者が3分の2、親が3分の1です(民法900②)。

配偶者と兄弟姉妹の場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1ということになります(民法900③)。

ところで、子供がいない夫婦で配偶者が亡くなった場合、夫婦の意思としては、(もちろん例外はあるとは思いますが、通常は)配偶者に全財産が相続されると思っているのではないでしょうか?

しかし、遺言がなく法定相続が行われたとすると、上記のとおり、亡くなった夫または妻の親や兄弟姉妹が出てくるのです。親や兄弟姉妹が物わかりの良い人で「私たちは相続財産なんていらないわ。」などと言って相続放棄をしてくれれば良いのですが、中には、自分たちにも法定相続分があるから、遺産をもらって何が悪いの!ということで権利主張をしてくる場合もあるでしょう。

したがって、子供のいない夫婦にとっては、お互いに自分の財産をすべて相手に相続させる旨の遺言書を書いておく必要性は非常に高いといえるでしょう。

もちろん、遺言書を作っても遺留分という権利は侵害できませんが、親の遺留分は相続持ち分の2分の1ですので(民法1028②)、遺産紛争が起きても解決が楽になりますし、兄弟姉妹には遺留分は認められていませんので(民法1028)、既に親が亡くなっていて、配偶者の他には法定相続人が兄弟姉妹しかいない場合には、遺言書を書くことにより、自分の財産をすべて配偶者に引き継ぐことができますね。

なお、遺言書を作るときは、のちのち変な争いにならないように、公証人役場で公正証書遺言を作るのがおすすめです。

法律事務所に勤務する弁護士には縁のないものですが、いわゆる企業内弁護士として働いている同期の弁護士の中に、勤め先の会社の社宅に住んでいるという話を聞きました。
都内にありながら、使用料として23万円支払えばその他の費用はかからないと聞き、非常に羨ましく思いました。
住宅手当は自由な転居が可能となるメリットはありますが、給与の一部になるとして課税の問題があり、その点社宅の場合はその意味での課税の問題はないようです。

さてこの社宅ですが、会社が倒産した時や、会社を解雇又は退職したときは、今まで社宅に住んでいた従業員はどうなるのでしょうか。有無を言わさず社宅から立ち退きをしなければならないのでしょうか。賃貸住宅に住んでいる場合には、借地借家法という借主にとって非常に強い味方がついているわけですが、社宅の場合にもこの借地借家法が適用されるのかが問題になってきます。

借地借家法の適用があれば、新しい家主に対して、自分の賃借権を主張できますし(法311項)、家主(会社)から解約されても「正当の事由」(法28条)がなければ立ち退く必要もありません。

社宅の利用に借地借家法の適用があるかどうかは、社宅の使用料が決め手になってきます。

社宅の使用料を全く支払っていなければ、それは無償で貸し渡したということですので、使用貸借(民法593条)になります。使用貸借であれば、借地借家法の適用はないので、最初の取り決め(契約)のとおりに社宅を明け渡さなければなりません。

社宅の使用料を支払っているのであれば、話は変わってきます。一般の家賃とは比較にならないほどの安い使用料(維持費にも満たないもの)であれば、その使用料は家賃としては扱われず、賃貸借関係にないとして借地借家法の適用はありません(最高裁判決昭和30513日・判タ5021頁参照)

逆に、通常の相場に比べて、それほど安いとはいえない使用料であれば、賃貸借関係があるとして借地借家法の適用があるとされる場合があります。

そのため、会社としては、従業員から社宅の明渡しを求める際のリスク(借地借家法を盾に、明渡しを拒まれるリスク)を考えた上で、使用料の設定をする必要があります。

同期の話では、社宅は確かに安いが、居住者が皆会社の関係者であることや、家主が会社であることから騒音等のトラブルがあっても文句を言いにくいという不満があるらしく、家賃が多少高くついても住宅手当を貰って好きな場所に住みたい、いうことでした。
社宅も住宅手当も、私にとっては羨ましい話ですが、そういえば修習時代に知り合った裁判官も、騒音トラブルで官舎から出て自分の好きな所に家を借りていましたね。

最近すこしずつ暖かくなってきましたが、寒くなる日もあるので、体温調整にはお気を付けください。

●はじめに
ビットコインですが、今月9日には、中国国内のビットコイン取引所に対し、中国人民銀行(中国の中央銀行)が調査に入ったとのことです。中国人民銀行いわく、マネーロンダリング対策が不十分であるとのことですが、この調査を受けて、業者側は、ビットコインの引き出しを最大1ヶ月停止としました。当然、市場は敏感に反応し、ビットコインの価格が露骨に下がりました(BTC円のチャートをみると、崖のようです。ただし、その後、また、じわじわと価格が上昇しています。)。

他方、日本では、ビットコイン取引所に対し、三井住友銀行グループ、みずほフィナンシャルグループなどが出資をするなどの動きがありました(既にUFJグループも出資しており、メガバンクグループ3者が出資したことになります。)。また、国内では、今年以降、ブロックチェーン技術の実証実験などが本格化すると見込まれています。ビットコインに端を発する技術が、どこまで発展してゆくのか注目です。

●仮想通貨法に関する内閣府令等の公開
さて、前回の記事でも若干言及しましたが、仮想通貨に関する資金決済法等の法改正(改正により追加された仮想通貨に関する条文は、俗に、仮想通貨法と呼ばれています。)に関し、その細目を定める内閣府令やガイドライン等の案が、昨年末に公開されました。施行は、今年4月を見込んでいるとのことです。

http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20161228-4.html

そこで、遅ればせながら、それらの内容について簡単に触れさせていただければ
と思います。

●仮想通貨法のおさらい
まず、前提として、昨年成立した仮想通貨「法」(未施行)の概要について、ざっくりおさらいさせていただきます。

今回の仮想通貨「法」の注目部分は、やはり、なんといっても
・「仮想通貨交換業」(法2条第7項)が登録制となり(法631
・登録せずに「仮想通貨交換業」を行うと刑罰が課される(法107条等)
ことです。「仮想通貨交換業者」には、ビットコインの取引所などが含まれますので、法律施行後は、自由にビットコインの取引所を作れなくなります。概して、今回の仮想通貨法は、取引所に対する規制となっています。

加えて、仮想通貨交換業者には、仮想通貨法上、
情報の安全管理(法63条の8
・利用者の保護(法63条の10
・財産の分別管理(法63条の11
・事業年度ごとの報告書提出(法63条の14
等々の義務が課されます。

これらの規定の趣旨は、例えば、
・取引所が破綻したり
セキュリティー対策が十分に施されていない取引所からハッキングにより
仮想通貨が流出したりといったことを防ぎ、取引所の利用者を守る点にあります。

また、仮想通貨は、マネーロンダリングにも使われるため、マネーロンダリングを防止する趣旨も含まれています。

このように、仮想通貨法は、取引所の規制を主眼としています。ただ、取引所に対する規制が厳しすぎると、大企業しか規制に対応した取引所を運営できず、小さな業者は廃業を余儀なくされるかもしれません。そうすると、仮想通貨の利用者にも影響が出てきます(この他、仮想通貨交換業の定義に関して、取引所以外にも、広範に規制が及んでしまうのではないか、といった点は、危惧されています。)。

ちなみに、あまり報道はされていない点ですが、今回の仮想通貨法では、日本で登録されていない海外の取引所が、国内の者に対して、仮想通貨売買等の「勧誘」を行うことも禁止されていたりします(法63条の22)。

なお、巷では、今回の法改正により、ビットコインなどの仮想通貨が「通貨」として認められたかのような報道もありましたが、ミスリーディングのように思います。
もちろん、資金決済法上、「仮想通貨」が定義され、今後、取引所での取引に消費税も課されなくなるようですが、ビットコインが日本円のように、どこでも支払いに使えるようになったわけではありません(もちろん、今後、そうなっていくこ

とを期待します。)。

●今回の内閣府令
そこで、本題ですが、今回、公開された内閣府令(仮想通貨交換業者に関する内閣府令)等々の案(未施行)では、今ご説明した仮想通貨法の細目などが定められました。

例えば、仮想通貨交換業の登録申請の際、18項目にものぼる添付書類を付けなければならないこととされています(内閣府令第6条)。その中には、以下のような書類も含まれています。
・取締役や責任者の履歴書(内閣府令第6条⑤⑬)
・取り扱う仮想通貨の概要の説明書(内閣府令6条⑪)
・仮想通貨の取引に用いる契約書(内閣府令第6条⑮)

15号で取引契約書の添付が必要なことから、とりあえず登録だけしておいて、契約書等々は後から準備しよう、ということはできなさそうです。

また、例えば、仮想通貨法上、仮想通貨交換業者の登録拒否事由の1つとして、以下の条件が定められていました。

仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる内閣府令で定める基準に該当する財産的基礎を有しない法人」(法63条の51項第3号)

要するに、お金のない会社は、取引所を営んではいけませんよ、という規定です。

ただ、「内閣府令で定める基準」のハードルが高すぎると、取引所として営業をすることが非常に困難になってしまいます。そのため、基準がどう定められるのか、注目されていました。

これに対し、今回、内閣府令(案)では、以下のように定められました(内閣府令第9条)。
・資本金の額が一千万円以上であること
・純資産額・・・が負の値でないこと

それ程ハードルは高くはない?という意見も多いように思いますが、PC1台で起業して明日から取引所を開設する、ということは念頭に置かれていないように思います。

ちなみに、登録申請後、登録までに通常かかる期間(標準処理期間)は、補正などの期間を除き、は2ヶ月と定められました(内閣府令第36条第1)。

●ガイドラインについて
また、仮想通貨法に関する監督指針をまとめたガイドラインも公開されています。

そのなかでは、例えば、財産的基盤に関し、次のような記載があります。

・ガイドラインⅡ-1-2
「経営陣は、仮想通貨交換業者に関する内閣府令(・・・)第9条に規定する財産的基礎を遵守するだけでなく、業容や特性に応じた財産的基礎を確保するよう努めているか。」

要するに、資本金1000万円・純資産が-でない、という最低ラインをクリアしただけでなく、もっと、しっかりと、財産的基盤を確保しなさい、ということかと思います。

また、ガイドラインには、例えば、以下のような記載もあり、ある程度の人的資源・組織体制があることが、前提とされています。

・ガイドラインⅡ-1-2
「経営陣は、業務推進や利益拡大といった業績面のみならず、法令等遵守や適正な業務運営を確保するため、内部管理部門及び内部監査部門の機能強化など、内部管理態勢の確立・整備に関する事項を経営上の最重要課題の一つとして位置付け、その実践のための具体的な方針の策定及び周知徹底について、誠実かつ率先して取り組んでいるか。(注)本事務ガイドラインでいう「内部管理部門」とは、法令及び社内規則等を遵守した業務運営を確保するための内部事務管理部署、法務部署等をいう。また、「内部監査部門」とは、営業部門から独立した検査部署、監査部署等をいい、内部管理の一環として被監査部門等が実施する検査等を含まない」

・ガイドラインⅡ-2-1-1-2
「コンプライアンスに関する研修・教育体制が確立・充実され、役職員のコンプライアンス意識の醸成・向上に努めているか。また、研修の評価及びフォローアップが適宜行われ、内容の見直しを行うなど、実効性の確保に努めているか。」

・ガイドラインⅡ-2-1-2-2
「管理職レベルのテロ資金供与及びマネ-・ロ-ンダリング対策のコンプライアンス担当者など、犯収法第 11 条第3号の規定による統括管理者として、適切な者を選任・配置すること」

さらに、取引所といえば、ハッキング等の被害にも常にさらされている訳ですが、この点についても、ガイドラインは、然るべき人員を配置するように言及しています。

・ガイドラインⅡ-2-3-1-2(1)
「取締役会は、システムリスクの重要性を十分に認識した上で、システムを統括管理する役員を定めているか。なお、システム統括役員は、システムに関する十分な知識・経験を有し業務を適切に遂行できる者であることが望ましい。

・同④
代表取締役及び取締役(指名委員会等設置会社にあっては取締役及び執行役)は、システム障害等発生の危機時において、果たすべき責任やとるべき対応について具体的に定めているか。また、自らが指揮を執る訓練を行い、その実効性を確保しているか。」

・ガイドラインⅡ-2-3-1-2(7)
「システム部門から独立した内部監査部門が、システム関係に精通した要員による定期的なシステム監査を行っているか。(注)外部監査人によるシステム監査を導入する方が監査の実効性があると考えられる場合には、内部監査に代え外部監査を利用して差し支えない。」

ガイドラインは、あくまでガイドラインですので、法律ではありませんが、あまり厳格に運用しすぎると、結局、著名な業者以外はシャットアウト、ということにもなりかねませんので、そのあたりは配慮が必要なように思います。

ちなみに、細かなことですが、弁護士的には、以下のようなガイドラインの記載にも目が止まりました。ここでいう「弁護士法に基づく照会」とは、いわゆる弁護士会照会(23条照会)のことですね。今後、事件に関し、取引所に対して、顧客の氏名・住所等の照会ができるようになるかもしれません。

・ガイドラインⅡ-2-1-2-2(5)
仮想通貨交換業に係る取引の不正利用に関する裁判所からの調査嘱託や弁護士法に基づく照会等に対して、個々の具体的事案毎に、仮想通貨交換業者に課せられた守秘義務も勘案しながら、これらの制度の趣旨に沿って、適切な判断を行う態勢が整備されているか。」

●最後に
取引所を利用する側面では、利用者として、取引所への規制が厳しいほど、安全に取引ができますので、その面では喜ばしいことです。

他方、規制される側の企業にとっては、必ずしも軽い規制ではないかと思います。特に、「仮想通貨交換業」の範囲については、定義上、取引所以外の業態であっても該当する可能性があるため、そのあたりも踏まえて、今後、慎重な運用が望まれます。

 最近、最高裁で興味深い判例(最高裁平成29131日判決がありました。

 もっぱら相続税の節税目的で養子縁組を利用する場合であっても、「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」と判断したものです。「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」なんて、とても法律家チックな言い方ですが、要するに、「もっぱら相続税の節税目的で養子縁組しても原則として縁組は有効ですよ。」という意味だと思っていただいて結構です。

 

 相続に関心がある方であればご承知のとおり、相続税の基礎控除額は、現在、


               3,000
万円+600万円×法定相続人数

 

で計算されます。
 したがって、おじいさん・おばあさんと孫を養子縁組させて、
おじいさん・おばあさんの法律上の子供(=定相続人)を増やしておけば、おじいさん・おばあさんが亡くなったときも、相続税の基礎控除額が大きくなり、それだけ節税効果が得られます。

 もちろん、税務当局側も対策を立てていて、相続税法上、養子縁組で相続人にできる人数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人しか認められません。しかし、いずれにしても養子縁組により600万円から1200万円は相続税の基礎控除額を増やすことができるのです。そのため、ある税理士法人によれば、相続財産額が5億円以上を超えるケースの相談において、節税対策に養子縁組が使われていたのは約4割にものぼるようです。

 相続の分野では、節税対策としての養子縁組が定着していると考えてよいでしょう。

 

 しかし、養子縁組制度が、このような使われ方をしているのはちょっと変ではないでしょうか?そこでちょっと調べてみたのですが、そもそも我が国の養子縁組制度は私のイメージとはかけ離れていました。

 一橋大学経済研究所の森口教授によると、日本では年間で約8万件もの養子縁組がされています。日本の2倍以上の人口を有するアメリカの養子縁組の件数が11万件ということですので、いかに日本の養子縁組の数が多いかわかるかと思います。

 しかし、その内容は全然違います。日本では、67%が婿養子など大人を養子にとる「成年養子」だというのです。その他は、25%が配偶者の子供を養子にする「連れ子養子」、7%が孫や甥、姪を養子にする「血縁養子」。血族でも姻族でもない子供を養子にする「他児養子」はわずか1%に過ぎないといいます。

 これに対して、アメリカでは養子の対象はほぼすべて未成年だといいます。そのうち40%が「連れ子養子」、10%が「血縁養子」ですが、残りの50%は「他児養子」だといいます。

 なぜこのような結果になっているかですが、日本の養子縁組制度は、基本的には家名や家業の承継(お家の存続)を目的にするための制度になっているとの理解がされています。えっ、「お家」って、まだそんなに強く残っていたの?という感じですが、まだまだ根強いようですね。

 これに対して、アメリカの場合は、基本的には、さまざまな理由で実親の保護に恵まれない子供たちに新しい家庭を与える制度として機能しているということのようです。

 

 まぁ、それぞれの国の歴史や文化を反映して今の制度になっているのでしょうから、どちらが優れている・劣っているというような問題ではありません。ただ、日本では結婚の高齢化などもあり子供がいない夫婦が増えていますし、他方で、不幸にも養護施設に長期間滞在せざるをえない子供たちも多いと聞いていますので、なんとか養子縁組を「要保護児童に家庭を与える制度」として活発に利用できないものでなんですかね?

2017119日日本経済新聞電子版から

 

「みずほ銀行は民事裁判の支払い義務を果たさない債務者の預金口座情報について、債権者からの請求に応じて開示を始めた。確定判決や和解調書など債務の存在を確認できる文書を示し、弁護士を通じて照会することが条件。既に三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行は開示しており、3メガ銀の対応がそろった。」

 

「ただ応じていない金融機関もあり、法務省は裁判所が開示請求できるよう法改正する方針だ。」

 

わざわざ裁判までして、債務者に金銭の支払いを命じる判決を得たのに、現状、債務者が預金口座をどこかの銀行に移してしまうことにより容易に強制執行を回避できる結果となってしまっていることは以前このブログでも触れたとおりです(実際、裁判で多額の支払いを命じられておきながら、かなり経済的に恵まれた暮らしをしているように見られる方が散見されます。)。
これは、債権者が債務者の口座情報を調査する手段がないことに起因しています。

債権者側の対抗手段としては、弁護士を雇って、弁護士法23条の2が定めている弁護士会照会制度を使い、各弁護士会を通じて、債務者の口座があるか銀行に照会することが考えられますが、これまで多くの銀行では、顧客情報の保護を理由にこの照会に対する回答を拒絶していました。


しかし、この記事にあるように、現在、確定判決や和解調書があることを条件としていますが、三菱東京
UFJ銀行、三井住友銀行及びみずほ銀行の3メガ銀行が、弁護士会照会に対応していただけるようになっています。

 

私は日本社会のあり方として、裁判をして確定判決まで得たのに、債務者の口座情報を調べる手段がなく、判決が絵に描いた餅になるなどということはおかしいのではないかと思っています。裁判所に金銭の支払いを命じられても支払わない債務者の口座情報をそこまで保護する必要はないのではないかと。そういう観点からすると、この3メガ銀行の判断は素晴らしいと思います。行内でいろいろな意見があったのだろうと想像しますが、あるべき日本社会を見据えたまさに英断だと思います。弁護士会がメガ3銀行と協定を締結することによりこのような対応が実現したとのことですので、弁護士会の努力にも感謝したいと思います。

 

記事の最後のところで、「法務省は裁判所が開示請求できるよう法改正する方針」とのことなので、今後民事執行法の一部改正を睨みながら、いろいろな動きが出てくると思います。その点も注目ですね。

 

なお、弊事務所ではさっそくこの弁護士会照会制度を使わせていただきました!

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