企業法務とは、具体的に何をするのか?特に法律事務所が顧問となり企業法務を行う場合、どのような仕事を行うのか?なんとなく理解できているようでいて、実は具体的にはイメージができない方が多いと思います。そこで、ここでは私が考えている企業法務について説明したいと思います。

 法律事務所が、会社の顧問として企業法務を行う場合、パターンとしては3つぐらいあると思います。

(1) 日々の業務の中で、具体的な紛争や問題が発生したときだけ事後的に弁護士に相談があるパターン

 例えば、

  •     再三督促したのに、売掛先がお金を払わないので、法的手段を講じたい。
  •     自社製品について顧客から常軌を逸するようなクレームがあったので、その対応をお願いしたい。
  •     業務の縮小に伴い従業員を解雇したところ、従業員から解雇無効の確認を求めて訴えが提起されたので、これに対応してほしい。

というようなパターンです。

 従来の顧問弁護士のイメージは、まさにこのパターンであり、企業側から見ると、顧問弁護士とは何かあったときの用心棒的な存在であり、よく「『保険』として顧問をお願いしている。」などと言われたりもします。

 顧問料としては、月10万円~5万円程度の定額の場合が多いでしょう。ただ、企業側からすれば、何か問題が発生しない限り、弁護士とは何もお付き合いがないので、顧問料は「高い」(若しくは無駄)と思われがちであり、不景気になると、顧問契約を解消したいとの申し入れが多くなります。


(2) 日々の業務の中で、問題が発生しそうなときに、事前又は予防的に弁護士に相談するパターン

 例えば、

  •     ある取引先と重要な契約書を締結したいが、このような契約書で良いか?契約書(案)のレビューをお願いしたい。
  •     新しい事業を行いたいが各種の業法上の制限を受けることがないか(つまり適法に新事業を行うことができるか。)?
  •     不良債権の処理(債権放棄等)を行いたいが、後日株主代表訴訟等で問題となることがないよう検討してほしい。場合によっては、取締役会の資料とするために意見書を書いてほしい。
  •     株主総会、取締役会をはじめとして、会社のコンプライアンス体制なども継続的にみてもらいたい。内部通報制度の窓口にもなってほしい。

というようなことを相談するパターンです。

 これから企業が行う事業や行為についての相談であることが多いので、事前法務とか予防法務とか言われています。企業の法務部や関連部署との密接な協同が要請される仕事が多く、現在の企業社会において顧問弁護士として期待されているのは、この分野であると考えられます。

 顧問料としては、顧問先の会社の業務内容によって弁護士側の作業量が異なってくるので、その会社の案件に費やした時間によって顧問料が決まるタイムチャージ制が適していると思います(顧問料としては月額5万円と定額を決めておき、6カ月ごとにタイムチャージでも弁護士報酬を計算し、タイムチャージでの弁護士報酬が定額顧問料を上回るときは、その超過部分を支払ってもらうというような方式も考えられます。)。


(3) 専門分野についての外出し

 さらに、銀行が、ノンリコースローンやアセットファイナンス等の案件物を扱う場合に、ファイナンスの諸契約を弁護士に依頼する場合、事業会社が、M&Aを行う場合に、関連する契約書一式を依頼する場合、破綻の危機に瀕した会社が、事業の存続をかけて民事再生や会社更生の申立てをする場合などのパターンです。

 ただし、このような分野ではかなりの専門性が要求されますし、クライアントの方でも、案件ごとにそれに適した弁護士をお願いしたいとの希望があるので、通常顧問案件としては扱いません。

 

 私の夢は、ある程度、企業側が、これまでは法務部等が行っていた仕事を外出ししても、対応ができるような法律事務所を作ることです。例えば、法律事務所内にgeneral corporate を専門に扱う部門があり、その部門にはA~Cという3つぐらいのチームがあって、1チーム3~5名くらいの弁護士で組織され、1チームで30~50程度の企業をクライアントとします。各チームは、『外部』としての法律事務所の独立性は維持しつつ(つまり『外部』の観点からの意見は言えるようにしておく)、従来の弁護士事務所よりも深くクライアント企業の法務に関わります。求められれば会社の法務部等と連携して、日常発生し、または発生すると予想される問題について対応するとともに、取締役会に参加して、法律上の論点について説明したり意見を述べたり、意見書を書いたりします。何か具体的な問題が発生して、ある程度の専門性が要求されるような場合には、法律事務所内の専門チームと共同して対処します。

 顧問料としては、タイムチャージ制が良いでしょう。大手の法律事務所も、M&A、ファイナンス、事業再生、訴訟といった専門性の高い分野では組織的な対応がなされていますが、general corporateという分野は、実は、まだまだ個々の弁護士がそれぞれに対応するという街弁護士事務所的対応がなされ、必ずしも組織的な対応やノウハウの蓄積がされているわけではないように思います。そこを組織化、効率化、高品質化できないかと考えています。


弁護士 飛田 博
2011年2月25日