1.土地区画整理組合とは何か?

 土地区画整理事業とか土地区画整理組合とかいうと馴染のない方も多いかもしれません。そこでまず、土地区画整理事業とか土地区画整理組合とは何かというところから説明しましょう。

 土地区画整理事業とは、土地区画整理法に基づき施行される事業のことです。土地区画整理法第1条によると、「公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため、土地の区画形質の経項及び公共施設の新設又は変更を行う事業」と定義されていますが、イメージ的にいうと、一面田んぼで土地の区画もばらばらな地域を市街地化するために、道路、上下水道、公園等の公共施設を整備し、田んぼを宅地化して、さらに土地の区画を整備しなおす(土地登記の区画も整備もする)事業のことなのです。よく郊外や地方にいくと駅前などで「○○土地区画整理事業」などと看板が掲げられているところが見られますが、そのようなところで土地区画整理事業が行われているのです。

 土地区画整理事業のやり方としては、施行地区内に土地を持っている地権者が少しずつ土地を供出して(これを「減(げん)歩(ぶ)」といいます。)、その供出された土地で、道路、公園等の公共施設を整備するとともに、「保留地」を作って事業資金の調達のために第三者に売却するという方法をとります。他方、もともとの地権者に対しては、通常、もともとの土地(「従前地」といいます。)の価値に応じて仮換地の指定がなされて、工事や保留地の売却が終了した後に換地処分が行われ、登記上も区画が整備された土地を取得することになるのです。

 このような土地区画整理事業は、市町村などの地方公共団体が施行主体となることもあれば(同法3条3項)、一定の地区の地権者が、その地区の地権者の3分の2以上の同意を得た上で、都道府県知事の認可を受けて組合を設立し、その組合が施行主体となって行われることもあります(同法3条2項、14条、18条参照)。この場合の組合が「土地区画整理組合」です。ちなみに、土地区画整理組合は、民法上の「組合」とは違い、自らが権利を有し義務を負担することができる「法人」です(同法22条)。  

2.地方公共団体と土地区画整理組合との関わり

 ところで、市町村等の地方公共団体が土地区画整理事業の施行者となる場合を「公共団体施行」、組合が施行者となる場合を「組合施行」などと呼ぶことがありますが(法的にはこの区別ははっきりしているものの)、実態的には、この区別が曖昧な場合が多いのです。

 というのは、地方公共団体側がある一定の地区を市街地化しようとする場合に、自らが地権者側と対立的な立場に立たされることを回避するために、その地区の自治会等に働きかけて、地権者に土地区画整理組合を設立させ、土地区画整理事業を行わせることがあるからです。

 形式的には組合施行ですが、実質的には、公共団体が主導して組合が設立され、事務局の運営も公共団体の職員又はOBによって行われ、地権者(組合員)側の意識としても、自らが事業を行っているという意識が希薄である場合が多くあります。そのため、ひとたび組合が破たんし、組合員に責任の分担が求められるようになると、組合員の公共団体に対する不満が噴出し、公共団体に強く支援(助成)要請がなされることになります。この点は後述します。  

3.土地区画整理組合の窮境の原因
 では、どうして土地区画整理組合が、現在、経済的破綻に陥っているのでしょうか。

 その原因は、多くの場合、バブル経済の崩壊に伴う地価の下落に求められます。すなわち、組合では、農地を宅地化したり、区画を整備したりするための事業資金が必要になりますが、その事業資金は前述した通り、組合員である地権者の土地を減歩し、保留地予定地を作り出して、これを第三者に売却することによって調達されます(土地区画整理法96条1項参照)。

 しかし、保留地予定地が販売できるようになるまでには工事等に時間がかかるので、それまでの繋ぎの事業資金として、金融機関からの借入が利用されているのです。かつての右肩上がりの土地神話が有効であった時代には、このような借入れをしても何ら問題はありませんでしたが、バブル期に設立された組合は、高騰した地価を基礎に事業計画が立てられているにもかかわらず、バブル崩壊によって保留地予定地をかなり安く売らざるを得なかったため、結局、事業資金に不足が生じ、金融機関に対する返済資金ができなくなっています。

 これまでは、利息を支払うことによって、何とか問題の解決を先延ばしにしてきましたが、近時は利息すら支払えない組合も多く、金融機関が組合を相手方として裁判所に貸付金返還訴訟を提起するなどして、この問題は表面化してきています。実数を掴んでいるわけではありませんが、全国的には経済的に破綻し、事業が事実上凍結状態にある組合がかなり存在すると聞いています。  

4.再建の方向性

 土地区画整理組合の再建には、一般事業会社の再建のように、企業の永続性を考慮する必要がないため(つまり、土地区画整理をやり遂げれば、あとは解散となる)、比較的単純です。組合には、保留地予定地という財産があるので、まず何よりも、これを売却して資金化することが必要です。その上で土地区画整理事業を完成するのに足りない事業資金は、再減歩または賦課金により、組合員の自助努力で賄うことが原則になります。

 ただし、ここで念頭に置いている破綻組合の多くは、設立から相当の年数が経過しており、既に施行地区内の土地利用が進んでいて、改めて再減歩を行うことが事実上不可能である場合が多いため、具体的な自助努力の方策としては、賦課金が選択される場合が多いと思われます。そして、それでも足りない事業資金については、地方自治体に助成を求めたり、金融機関に債権放棄を求めたりすることで解決を図ることになります。

 この、

① 保留地予定地の売却

② 組合員からの賦課金の徴収

③ 地方公共団体への助成要請

④ 金融機関への債権放棄要請

 の4点が再建策の柱になるのです。
5.法的手段の選択

 このような土地区画整理組合の破綻案件を処理するのに、どのような法的手段を選択するのが適当でしょうか?実務家として真っ先に思い浮かぶのが破産手続です。

① 破産手続

 学説では、そもそも土地区画整理組合が破産をすることができるか否かを巡って争いがあります。かつては公法人である土地区画整理組合には破産能力がないとする見解が通説でしたが、今日では、破産清算の結果、法人格を消滅させることを是認できない国や地方公共団体の他、その法人限りで資産・負債の精算の必要のないものを除き、広く破産能力を認めるべきであるというのが有力な見解です。

 しかし、これまでの実務では、土地区画整理組合に破産手続が利用されたことは報告されていません。

 私としても、理論の点は措くとして、実務的な観点からすると、破産手続では、土地区画整理組合の破綻を適切に処理することは難しいと考えています。

 なぜなら、第一に、経済的に破綻している組合の大部分は、換地処分に至る前に、金融機関に対し借入金を返済できず、事業が頓挫している組合だからです。したがって、組合の唯一の財産というべき保留地は、まだ保留地『予定地』の段階にあり、未だ組合の所有物ではなく(土地区画整理法 104条11項参照)、破産管財人がこれを換価しようとしても、換価のしようがないのです。つまり、この時点での組合には、自己の資産がないので、破産手続を利用すること自体に無理があるのです。

 第二に、仮に破産管財人が事業を継続して、換地処分を行うことを前提にするとしても、換地処分を行うには、調査設計費などに数千万単位でお金がかかるので、その資金をどこから調達するかという問題が生じます。組合員から賦課金を徴収するには、組合員で組織される総会の決議が必要ですが(同法31条7号)、組合員との間に地縁的な繋がりのない破産管財人が、組合員に賦課金の負担を説得するのはかなり難しいでしょう。

② 民事再生手続

 では、民事再生手続であればどうでしょうか?民事再生手続であれば、組合事業の継続を前提としますし、かつ、(管財人ではなく)組合自身が事業を遂行できますので、破産手続よりは破綻処理に適しているものといえます。実際にこれまでに、二つの土地区画整理組合の破綻処理において民事再生手続が利用されているようです。

 ただし、一部に誤解があるようですが、民事再生手続を利用すれば、組合員が賦課金を負担しなくてもよくなるというわけではありません。民事再生手続においても、金融機関側は、組合員の賦課金による負担を求めるのが通常であって、それがなければ債権者集会で再生計画に賛成してもらうことは難しいのです。

 そもそも、通常の組合にとって、取引銀行は1行~5行程度(しかも、地銀、信金、信組、農協が殆ど。)であって、民事再生手続を利用しなければ処理できない債権者数でもありません。

 したがって、私としては、特に金融機関側から民事再生を利用するようにとのリクエストがある場合や、多数決原理によって再生計画の成立を強制できる見込みが立っているような場合を除いて、民事再生手続を選択することは適当ではないのではないかと考えています。

③ 私的整理・特定調停

 以上から、土地区画整理組合の破綻処理には、手続が柔軟な私的整理や特定調停が適当なのではないかと考えています。ただし、最近の実務の傾向として、行政や金融機関は、手続きの透明性を担保のため裁判所の関与を求めてくる傾向があるため、その意味では、特定調停の利用が最も適当なのかもしれません。組合が金融機関から訴えられている場合には、訴訟の中で和解をすることが考えられます。  

6.再建のポイント

 最後に、私が考える土地区画整理組合再建のポイントについて触れることにします。

① 賦課金について

 まず、なんといっても賦課金についてです。ここでの法律関係を説明すると、金融機関は、組合員に対して、直接、組合に対する貸付金の返済を請求できるわけではありません。まして、個々の組合員に対し、組合に賦課金を納付するよう請求できるわけではありません。組合員は、組合の総会で、賦課金の額及び賦課金徴収方法が決議されない限り、組合員に対して賦課金納付義務を負わないのです(土地区画整理法31条7号)。

 それにもかかわらず、金融機関側が、賦課金決議を求めてくるのはどうしてでしょうか。それは、金融機関にとってみれば、金融機関から借り入れた資金によって施行地区内が整備され、それによって個々の組合員の土地の価値が増加したのですから、その増加によって得た利益のいくらかでも、借入金の返済のために吐き出してもらいたいということでしょう。そうでなければ、金融機関の犠牲のもとで組合員のみが利益を得ていることになり、金融機関側としては到底容認できない結論なのだと考えられます。実際、私が調べた限り、組合員が賦課金を決議せずに、金融機関が債権放棄に応じた案件はないようです。

 ただ、ここで問題となるのが、果たして賦課金の額をいくらにしたらよいかという問題と、組合員に対し賦課金の負担をどのように説得するかです。

 前者については、組合員が得た利益とはいっても具体的な金額で表せるようなものではなく、一義的な答えがあるわけではありません。結局、組合の借入金総額、施行地区内の土地の時価水準、組合員の負担能力、他の同規模の組合との比較などを勘案して、適当な落とし所を求めるしかないのでしょう。

 次に、後者も難問です。法律的には、組合員が賦課金を負担せず、金融機関との間で再建計画の合意が成立しないのであれば、組合はいつまでたっても換地処分ができず、組合員は換地に応じた登記を取得できません。いわば半完成品のような土地を取得したままの状態が続くことになります。

 しかし、単に仮換地を使用するだけでよいと考えている組合員にとっては現状のままでも何らかの不利益があるわけではありません。したがって、そのような組合員にとっては、賦課金を負担するインセンティブを欠くこととなり、賦課金決議に反対することが多いのです。私としては、それはそれで仕方がないので、組合員にありのままの法律関係を誠実に説明し、その判断を仰ぐしかないと考えています。

 実際の案件では、賦課金の総会を開催するまでに、何度も賦課金に関する説明会を開催し、また、組合員から寄せられた典型的な質問にはQ&Aを作成して、これを配布するなどして、賦課金に関する理解を深めていただくことになります。さらに、総会直前には、理事や総代に各組合員を個別に訪問していただき、総会への出席や賦課金への賛成を説得していただくことになります。組合員といっても、大きな組合では1,000人を超えることもあり、その多くはサイレント・マジョリティなので、このようないわば選挙活動のようなことをしなければ、実際には、総会で賦課金決議を得ることは難しいと感じています。

② 保証人の取り扱いについて

 保証人の取り扱いは、土地区画整理組合の再建にとって難問中の難問の一つです。組合の借入れについて、一般に理事が連帯保証人となっていることが多く、金融機関との間で和解等を行うには、この理事の保証の問題をどのように取り扱うかが問題です。

 一般の会社の再建案件であれば、代表取締役等が保証人になっている場合、保証人である以上、自己破産していただくか、自分には財産がないことを証明してもらうか(あれば金融機関への配当にあてていただく)ということになるでしょう。

 しかし、土地区画整理組合の場合、理事は、公共事業に協力するつもりで保証人になっていることが多く、本当に保証意思があったといえるか疑問があるケースが多々見受けられます。それに加えて、理事には、金融機関との和解が成立した後も、組合員からの賦課金の徴収等で働いてもらわなければならず、その理事に自己破産をするのと同じ程度の個人負担を求めることは期待できません。多くの組合において理事の高齢化が進んでおり、新たな理事の担い手もいないことも問題を複雑にしているのです。

 そこで、組合の連帯保証人(理事)については、あえて責任を追及しない取り扱いや、一律一定額までの負担で保証を解除するような柔軟な取り扱いができないか、という点が今後の課題となると考えています。

③ 地方公共団体の助成

 前述のとおり、多くの組合では、市や町といった地方公共団体が設立や運営に深く関与しており、組合員からも、地方公共団体側の責任を問う声が強いのが普通です。

 私としても、法的責任の有無は別にして、行政側が組合の設立及び運営に積極的に関与しているような組合については、行政の助成がなされることが適当であると考えています。なぜなら、土地区画整理事業には、公共施設を整備し、健全な市街地を造成することにより、公共の福祉の増進に資するという公共目的が含まれているのであって(同法1条参照)、単に施行地区内の地権者の利益だけのために行われているわけではないからです。また、地方公共団体側が事態をこのまま放置し、地域の荒廃を招くとすれば、全体にとってより大きな不利益になるでしょうし、設立や運営を主導していた行政が、何らの負担もしないことになれば、行政への信用が失われ、無形のダメージが発生すると考えられるからです。

 ただ、近時、市民オンブズマンなどの活動により、地方公共団体が組合救済のために助成金を支出すると、地方公共団体の長に対して住民訴訟が提起される傾向があります。私としては、日韓高速船事件の最高裁平成17年11月10日判決の示す基準からして、議会決議等の一定の手続きを踏めば、そのような住民訴訟を提起されても、地方公共団体側が敗訴する可能性はほとんどないと考えていますが、住民訴訟が頻発していること自体により、現実には、行政に対して相当の委縮効果がもたらされているのでしょう。

 組合側の弁護士としては、地方公共団体側が、組合を助成しやすいように、裁判所を関与させ、あえて裁判所から和解勧告を出してもらったり、調停手続きでは、いわゆる17条決定を出してもらったりするなどの手段を講じることが有効であるように思われます。 
弁護士 飛田 博
2010年12月8日