現代の会社間の契約交渉では、ベースとなる一つの契約書案をワード等の電子ファイルの形にして、メール等に添付して、当事者(又は代理人弁護士間)で投げ合うということが行われます。
契約書案に修正を加えるときは、修正履歴を付けて直接電子ファイルに修正を加え、説明が必要なときも、[A社コメント:〇〇〇]というような感じで、契約書案にそのまま書いてしまいます。この形式だと、相手方がどこを変更したのかが明らかなので、契約交渉を効率的に行うことができます。

昨日ふと思ったのですが、こうしたやり方は、訴訟手続でも使えるのではないでしょうか。

例えば、訴状の請求原因の部分について、電子ファイル化し、以後の準備書面で行われるようなやり取りは、この請求原因の該当箇所に書き加える形で行うのです。既に争点整理の段階では、一つの電子ファイルに双方が書きあうというようなことが行われていますが、これを手続の初めから行うのはどうか?という提案です。

このように思うのは、準備書面の作成で無駄に時間がかかるのは相手の主張部分を引用したり、要約したりする部分なので、その時間が節約できると思うからです。

また、準備書面を数通提出すると、ある主張がどの準備書面のどこにかいてあったのか探すが非常に手間だったりしますが、その問題が一挙に解決します。

さらに、よく、こちらの主張を歪曲して、こちらが主張していないようなことに対して反論する変なテクニックを使う先生がたまにおられますが、そういうことも防げます。

裁判所にとっても、判決で当事者の主張をまとめる際に、非常に役立つと思います。この論点に対する当事者の主張は別紙のとおりとして、当事者が作成した書面を使うこともできると思います。

このような主張をすると、メールやパソコンを使えない弁護士はどうするのか? などと言い出す人がいますが、時代が時代ですので、使い方を覚えて下さいとしか言いようがありません。

また、このような主張整理の方法を取り入れると、負け筋の側は明らかに分がないことがわかってしまうので、負け筋側を持つ先生方はやりたがらないのでは? というような意見が出そうですが、無駄な時間稼ぎをしながら、相手に譲歩を迫るやり方は、この業界全体の「死」を意味するでしょう。

このような変更には、民事訴訟法の改正が必要ですし、裁判所のインフラの整備にも時間がかかるので、一朝一夕には実現しませんが、アイディアとしては良いと思うのですが、いかがでしょうか?

まぁ、一つの電子ファイルの中に双方が主張を書きあうというような提案は、ちょっとドラスティック過ぎるかもしれませんが、準備書面を書面だけでなく、電子ファイルの形にもして、裁判所及び相手方に送付する(これは今でも判決前などに裁判所から要請されて提出する場合がありますので、あまり抵抗はないのではないでしょうか。)だけで、かなり無駄な手間が省けると思うので、そのような運用を常態化していくところから始めるのがよいかもしれませんね。

民事訴訟代理人の実務〈2〉争点整理

本文とは関係ありませんが、友人の大坪和敏弁護士が執筆に参加している本です。
最新の論点整理に関する情報が記載されていて、専門家の皆さんにはおすすめです。