当ブログの10月1日の記事で、エース交易の件を紹介させていただきましたが、ここに来て、また動きが出てきました。
既に、本日の日経朝刊でも報道されていますが、昨日(平成24年10月22日付)で、エース交易から、同社の個人株主(報道によれば、同社の創業者であり、かつ顧問であり、12%強のシェアを有する大株主)から、同社の(日本人)社長ら3名の取締役の解任及び後任取締役の選任を会議の目的事項とする臨時株主総会の招集の請求があった旨のIR発表がありました。
法律事務所のブログなので、簡単に説明させていただくと、会社法297条1項は、6か月前から引き続き3%の株式を有する株主に、株主総会の目的事項及び理由を示して、取締役に対し、株主総会の招集を請求することを認めています。言葉遣いが正確ではないので、、次の条文をご参照ください。
会社法297条総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
4 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
今回の大株主は、この会社法の規定に基づいて、株主総会の招集を求めてきたわけです。
ところで、その理由としては、以下の二つが挙げられています。
第一が、上記3名の取締役らが、平成24年9月6日開催の取締役会において、明らかに特別理解関係人に該当しない者を特別利害関係人に該当するとしたうえで、会社法第369条第1項に違反して決議を行い、その決議結果をIRにより開示し、株主、取引先等を混乱させ、会社の信用を失墜させた。
第二が、上記3名の取締役らは、同年9月10日、会社のHP上に、9月11日開催予定の取締役会の招集通知及び添付書類、並びに相手方と秘密保持契約を締結している(平成24年9月6日開催の取締役会に付議された議案資料である)ワラント売買契約書(案)等を掲載したが、この行為は、相手方から損害賠償請求を受けるリスクを負う行為であるばかりか、会社の対外的信用を失墜させる行為であった。
ただし、報道によれば、今回のエース交易の件は、もともと投資ファンドTとの資本・業務提携交渉をめぐり、これに積極的であった創業者(今回の臨時株主総会の招集請求者です。)側と、これに消極的であった現経営陣との路線対立が背景にあったとのことです。したがって、株主としては、単に、①取締役会決議の手続違反、及び②守秘義務を負っている契約書(案)の会社HPへの開示、という形式的事実だけではなく、そもそも、エース交易と投資ファンドTとの資本・業務提携が株主にとって利益になるものであったのか否か(株主価値を上げるものであったのか否か)が知りたいところでしょうし、この点が、今回の議案(上記3名の取締役の解任及び新取締役の選任)のを判断するにあたり、重要なポイントになるのでしょう。
今後の注目点としては、この請求に従い臨時株主総会が招集されることになったときに、①投資ファンドTとの資本・業務提携の可否をめぐり、取締役解任(及び選任)に関するプロキシ―ファイト(委任状争奪戦)が行われるのか、それとも、②既に創業者側は、50%超の株主をおさえており、そのような議論を行わないでも、勝負ありの状況なのか、さらに言えば、③仮に上記②だったとしても、臨時株主総会までに、現経営者側に何らかの反撃手段はないか、というところだと思います。
ますます目が離せなくなってきたとは言えそうです。