シネパトス

(本文とは全く関係ありませんが、弊事務所の近く、三原橋地下街にある銀座シネパトスです。
とっても昭和の匂いのする懐かしい感じの映画館でしたが、残念ながら、この3月末で閉館予定
だそうです。今は寅さんシリーズの上映をしているようですので、興味のある方は、上映中でも
日比谷線が通るとガタゴトと音が聞こえる昭和の映画館を体験してみてはいかがでしょう。)


1.  「面接交渉(めんせつこうしょう)」などと言うと、何の交渉をするのか?と思うかもしれませんが、これは法律用語で、典型的には、離婚の際に子供を引き取らなかった親が、その子供に会ったり、話をしたり、手紙のやり取りをしたりして交流することを意味します(ただ、離婚はしていなくとも、別居中のときなどに面接交渉が問題となるときもあります。)。

この面接交渉がどのような性質の権利なのかについては、色々な説がありましたが、現在の実務では、子供との面接交渉を求める親の権利ではなく、子の福祉のため、子の監護のために適正な措置を求める権利である(したがって、子供の福祉に反すると考えれば、面接交渉は認められない)というふうに考えられています。

2.  
子供がいる夫婦が離婚する場合、夫又は妻のどちらが親権者になるのかという問題(大部分のケースでは、夫又は妻のどちらが子供を引き取るかという問題と同義)ととともに、親権者にならなかった親の方の面接交渉について決めることになります(民法7661項)。離婚調停や離婚裁判となる多くのケースでは、調停や裁判の中で、この面接交渉についても決められていくことになりますが、離婚はしたが、面接交渉が決まっていない場合などは、面接交渉のみを決めるために家庭裁判所に家事審判の申立てをすることも認められています(民法766条、家事審判法91項乙類4号)。
調停等で決められる面接交渉の典型的な条項としては、

相手方は、申立人に対し、申立人が当事者間の長男●●と月1回の面接をすることを認める。その具体的な日時、場所、方法については、子の福祉を慎重に考慮して、当事者間で協議して定める。

というような感じになります。

3.  ところで、離婚関係の相談を受けていて思うのが、面接交渉が円滑に行われていないケースがよくあるということです。
まず協議離婚では、面接交渉について決めていないケースがよくあるし、逆に、子供とは会わないことが(口頭で)合意されているケースもまま見られます。
次に、調停離婚、裁判離婚及び(裁判中に和解となった場合の)和解離婚では、面接交渉については決められているのに、例えば、子供が学校の行事で忙しくてスケジュールが合わない、子供が風邪をひいていて外に出せない、子供が会いたくないと言っている、などの様々な理由で、面接交渉が事実上実施されていないケースが散見されます。

調停離婚、裁判離婚及び和解離婚で面接交渉をすることが決められているのに、それが守られていない場合は、裁判所に、(履行しない夫又は妻に対する)履行勧告の申出を行うことができます(家事事件手続法2891項、7項)。履行勧告の申出があると、裁判所は、相手方に義務を履行するよう説得したり,勧告したりしてくれます。
しかし、履行勧告は、あくまで「勧告」であるため、相手方が応じない場合はそれを強制することはできません。
そこで、一定の強制力を有する方法として、民事執行法上の間接強制の申立てを行うことも考えられます(民事執行法172条)。間接強制とは、義務を履行しない者に対し、一定の期間内に履行しなければ間接強制金(罰金のようなものです)を課すことを警告(決定)することで心理的圧迫を加え,自発的な履行を促すものです。
しかし、この方法によっても、面接交渉の実現には同居している方の親の協力が不可欠なので、 法律により強制的に面接交渉を実施することには限界があることも事実なのです。

このような面接交渉がうまく行われないケースに出会うと、私がよく思い出すのが、私が知っているフランス人男性の例です。彼は、前妻との間に2人の子供がいて、もう2人とも成人になっていますが、2度目の結婚でもう1人子供(娘さん)を授かり、さらに2度目の結婚も離婚となり、現在は1人で生活しています。私は、数年前にフランスに行ったときに、彼の家に泊めてもらいましたが、よく2度目の奥さんから子供の面倒をみるように電話がかかってきて、娘さんもよく彼の家に来ていましたし、1度目の結婚の子供たちも彼の家に来て、2度目の結婚の娘さんと一緒に遊ぶこともありました。彼が仕事を定年退職するときは、1度目ときの結婚の子供たちと旅行にも行ったようです。「ママとの結婚はうまくいかなかったけど、君たちのことは好きだし、責任を持つよ」というような感じで、あまりジメジメしたところがないことに驚きました。

また、私の知り合いのアメリカ人男性の例ですが、日本人の女性と結婚して2人の子供をもうけ、離婚後に日本人女性と再婚して新たに3人の子供をもうけていますが、はじめは、1人目の奥さんがなかなか子供と会わせてくれなかったそうですが、今は会わせてくれるようになり、年賀状には、子供たち全員が写ったものが送られてきました。ここも、面接交渉はうまくいっているようです。
(たった2つの例から、何か一般化した結論を導こうとは思いませんが、でも、ちょっと日本人と感覚が違うなと思いました。)

面接交渉が円滑に行われないことには、様々な理由があり、やむを得ない場合もあると思いますが、もし親の(離婚した相手に対する)感情の問題でうまくいっていないとしたら、結婚がうまくいかなかったこととは切り離して、面接交渉についてはもう少し肩の力を抜いて気楽にできないかな、というふうに思います。
子供を連れていけないようなところに行く用事があって、誰か子供の面倒をみてほしいときに、元の旦那さんや元の奥さんが協力してくれたらとても楽なのではないでしょうか。

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ウイズダム法律事務所では、20132月末日まで、弊事務所にて、「離婚」についての無料法律相談(お一人様40分)を実施しています。要予約、先着順となりますので、ご要望の方は、担当:弁護士飛田・佐藤までご連絡くださいますようお願い致します。
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