マグロ

(本文とは全く関係がありませんが、先日築地市場に行ってきました。
銀座にあるウイズダム法律事務所からは歩いて10分ほどで意外に
近いのです。今度は早朝にマグロの競りを見に行きたいと思います。)

よくあるケースだと思いますが、今回の記事では、例えば、夫婦が合意の上で、または妻が夫に内緒で、子供の将来の学費や生活費の蓄えとするために、子供名義で預金をしている場合、この夫婦が離婚するときは、この子供名義の預金も財産分与の対象にしなければならないの?という問題を検討してみたいと思います。

ちょっと復習すると、財産分与(民法768条)の対象になるのは、結婚期間中に夫婦が協力して形成した財産です。したがって、結婚前から有していた財産(いわゆる嫁入り道具etc.)や相続で得た財産(相続財産)などのいわゆる特有財産は対象になりませんが、それ以外の財産は、「夫婦が協力して形成した財産」と評価される限り、財産分与の対象になります。
そして、上記の子名義の預金ですが、毎年、贈与税の申告をして客観的も子供に贈与されたものと言えるような場合でない限り、通帳もカードも夫婦(内緒にしている場合は妻)が持っていて、預金をコントロールしているのですから、子供のものとは言えないでしょう。また、もともとその預金は、結婚期間中の夫(又は妻)の収入が蓄えられたものですので、内容的にも、「夫婦が協力して形成した財産」と評価せざるを得ないでしょう。
したがって、財産分与の対象財産であるということになります。

この点は、家事事件の経験が豊富な裁判官によって書かれた秋武憲一・岡健太郎編『リーガル・プログレッシブ・シリーズ 離婚調停・離婚訴訟』(青林書院・2009年)77頁に

子ども名義の預貯金については、子供自身が小遣いやアルバイト代などを貯めたような場合は子ども自身の固有財産といえるから、財産分与の対象外となる。しかし、親が子どもの将来の進学資金を子供名義で貯金していた場合などは、実際に、管理している親名義の財産と同視して計算することになろう。
とありますので、この解釈は動かないと思います。

そうすると、妻が夫に内緒で子名義で預金しているような場合(そしてその額が結構多い場合)には、何としても子名義の預金の存在をバレようにしなければならないということになりそうですが(不謹慎な発言です)、現実には、その夫婦にも仲が良かった時代があって、そのときに、夫に対して、「子供のために子名義で預金しているの。」などと話している場合が殆どですので、なかなかそううまくはいかないようです。どうしても子名義の預金を財産分与の対象にしたくないような場合には、夫側にとっては、別れた妻が自分のために使ってしまうのではないかというところが気がかりなので、例えば、子供名義の預金については、子供のためだけにしか使わないと合意するような和解をして解決していくほかないようですね。