sakura
(昨日の夕方に、広尾一丁目で撮った写真です。今年の冬は寒かった印象がありますが、
桜の開花は早いですね。東京は今週末が満開のようです)



3月19日の記事の最後に、同記事で取り上げたセクハラ事件の弁護士費用が、訴え提起から判決まで約2年もかかった事件なのに、10万円が相当とされたことについて衝撃を受けたことを書きました。

で、昨日祝日だったので、一日、何が問題なのかつらつら考えていましたが、今の民事訴訟手続であの種の事件を解決しようとすると、あのような結果になってしまうのではないかと思った次第です。つまり、10万円が問題なのではなく、解決までに2年もかかってしまったことが問題ではないかということです。

簡単にどのような案件だったかを振り返ってみると、セクハラの内容としては、

    男性上司(3名の上司のうちの1人)が女性従業員から、勤務後に居酒屋で仕事の相談にのり、その帰りに自宅マンション前までついていき、一人暮らしの自宅マンションに入れるよう求めたが、女性従業員から拒絶された。

   その直後、男性上司が女性従業員に、「しつこくてすみません。あなたとしてみたくなったので。」というメールを送信した。

    翌朝、女性従業員が、男性上司にお礼のメールを送付すると、男性上司は、「余裕ッス。今度機会があったらしてみましょう。」という内容のメールを返信した。

    1か月後、男性上司が女性従業員に、「そーいえば、この前の「しましょ」メールが見つかり大変な目に… X〔女性従業員〕が可愛い&セクシーなのがいかん!!」というメールを送信した。

というもので、「セクハラ」であることは間違いないものの、(私の経験からすると、直接のお触りがあったり、ほぼ毎日、もっとひどい内容のセクハラ発言やメールがあったりする場合もありますので、言葉が適当かどうかわかりませんが)それほど症状の重いセクハラ案件ではないように思います(セクハラはいけないことであり、セクハラしても良いと言っている訳ではないので、誤解なきようお願いします。)。

しかし、その後、3月19日にも書いたように、代表者の行動が、かえって女性従業員を責めるようなものであり、それによって女性従業員の退職という事態にまで進んでしまったため、裁判になってしまったのでしょう。

この案件の原告側の主位的請求金額は、慰謝料200万円、弁護士費用30万円というものであり、弁護士を代理人につけて請求する金額としては、それほど大きな金額ではありません。原告側としては、金額よりも被告側に非を認めさせて謝罪してほしい、というところに主眼があったことが窺われます。
それに対し、
被告側が争ってきたため、このような展開にならざるを得なかったと思われますが、おそらく、被告側としても、裁判所から「このような行為でも従業員のセクハラとして会社は損害賠償義務を負います。」的な心証開示があれば、何が何でも判決を求めるということはならなかったように思います(つまり和解で解決したように思います。)。少なくとも、2年間もこの件で争うことになるとは想像していなかったでしょう。

何に問題があったのか?ですが、
私は、手続だったのではないかと思います。

今の民事訴訟手続では。

    始めに、主張整理が行われますが、感覚的には、原告主張(第1回期日)、被告反論(第2回期日)、原告再反論(第3回期日)、被告再々反論(第4回期日)などと進み、期日間には約1か月から1.5か月間があきますので、これで46か月かかることになります。原告と被告の議論がかみ合わないと、これで1年ぐらいやっているときもあります。

    それから、原告・被告から、証人に出したい者の陳述書が提出され(1か月)、なかなか法廷のスケジュールがとれないため、23か月後に証人尋問が行われ、さらに、速記ができたあとに最終準備書面を書いて(2か月)、裁判官が判決を書く時間を考慮して、23か月後に判決となりますから、判決までには軽く1年が経過してしまいます。


しかし、本件が、そのような当事者の手続保障が厳重に規定された(いわば)重い手続になじむ事件であったのかは疑問です。

労働審判事件のように、第1回期日までに、当事者の主張を尽くさせ、期日には当事者及び重要証人も呼び、裁判官に当事者及び重要証人への質問を認め、ある程度裁判官に心証をとってもらい、早い段階で和解勧告をしてもらえるような手続があれば、そのような手続を選択したいところだと思います。

立法論になってしまいますが、一般の民事訴訟事件にも、そのような軽い手続を作ることはできないでしょうか。第1回期日までに色々と準備しなければならないので、弁護士側の負担はかえって重くなるかもしれませんが、それでも、2年間の時間がかかるよりも、ましだと思うのですが、いかがでしょう。