大野屋
(弊事務所から見ると、三原橋の交差点のちょうど向かいにある足袋、手ぬぐいを売っ

ている大野屋さんです。HPによると明治元年から創業しているとのこと。店のたたず

まいから、伝統的な銀座が感じられますね。


土地区画整理組合の事業資金が不足する場合、組合は組合員から賦課金を徴収して、事業資金にあてることができますが(土地区画整理法40条1項)、組合員に賦課金を課すには、組合員で構成される総会の決議を経なければなりません(土地区画整理法31条7号。なお、総代会制をとっている組合では、総代会決議を以て総会決議に代用できます。土地区画整理法36 条1項・3項参照)。
つまり、総会の決議がない限り、組合は組合員に賦課金を課すことができないのです。そこで、組合の執行部が賦課金を課すことによって、資金不足の問題を解決しようとする場合、まず総会で賦課金決議が通るように組合員を説得する必要があります。
ただ、実は、組合員とはいっても大部分は事業に積極的に関わっている人ではありませんし、中には、事業に反対している人もいますので、組合員を説得するのは大変です。
そこで、私の経験から、賦課金の負担について組合員を説得する論理・方法というものを考えてみたいと思います。

前提として、どのような組合を考えているかですが、ほとんど工事は終了し、保留地(予定地)の販売は完売の目処が立ってきたが、銀行に借入金の返済ができないため、換地処分の目処が立たず、事業が頓挫しているというような、実務で多いパターンを想定しています。

 

土地区画整理組合は、基本的には、施行地区内の地権者が少しずつ土地を出し合って(減歩して)保留地を作り、それを一般に販売して資金を調達します。しかし、保留地予定地が売れるようになるのは、ある程度事業が進んでからですので、それまでの資金は銀行から借り入れがなされます。そうすると、保留地を販売する段階になって地価が下落していると、事前に計画していたとおりの収入が得られず、銀行に借入金が返済できなくなるわけです。現在、経済的に苦しい土地区画整理組合の大部分がバブル崩壊後の地価の下落により、事業資金が足りなくなったこのパターンです。


そこで、組合員をどのように説得するかですが、以下の3点がポイントとなります。

 

1に、賦課金決議に同意することで、組合員に利益がある又は現状の不利益が解消されるということを説明することです。

上記のような組合の場合、組合員の不利益は、換地処分が行われない限り、土地の登記(従前地のまま)と現状(区画整理後の土地)が整合しないということです(注)。自分の財産である土地が、いわば不完成品のままなのです(その結果、売りにくい土地のまま、ということが言えるでしょう。)。したがって、賦課金決議が通り、借入金の問題が解決して、晴れて換地処分ができれば、現状に基づく登記ができるということになれば、賦課金決議に賛成するインセンティブが生じてくるのです。

ただし、逆に、登記簿と現状が一致していなくても構わないと考える組合員に対してはこのような説得は功を奏しません。

 

2に、今回の賦課金決議が通れば、事業が終結する見込みであることを示すことです。

組合員の懸念は、今回賦課金を支払っても、また事業が頓挫して、賦課金を課せられることはないかという二次ロスのおそれです。そこで、この組合員の懸念を払拭するためにも、今回が(合理的に考えれば)最後であることを示すことが重要です。

もちろん、将来のことは誰も保証はできませんので、「絶対」はあり得ません。したがって、再建計画を示して、その合理性を説明し、「この計画どおりに進めば、再度賦課金を課すことはありません。私はこの計画が失敗する可能性は低いと思いますが、保証はできませんので、その判断は皆さんに委ねます。」という説明になるでしょう。

また、このような説明をするためには、例えば、金融機関と債権放棄の合意ができるのであれば、事前に(又はほぼ同時期に)合意をとりつけて、総会で金融機関との間でも、このような取り決めになっている(又はなる)という説明ができるようにしておくことが必要でしょう。

さらに、市町村等の行政の関与が大きく、組合員の行政に対する不満が高い組合の場合には、行政から補助金(助成金)を出してもらい、組合員の不満を軽くするような調整も必要です(容易ではありませんが)。

 

3に、とはいえ、論理だけではなく、組合員の心情に働きかける“説得”も必要です。

土地区画整理事業が行われているのは、郊外又は(語弊があるかもしれませんが)田舎が多く、比較的、自治会等の地縁が強い地域ですので、理事に組合員の自宅を回ってもらい、賦課金決議への賛成をお願いするなどの活動をしてもらうことになります。

論理的な説得よりも、このような組合員の心情に働きかける説得活動の方が、(「あの人からお願いされたら断れない」という感じで)効果があることが多いことを忘れないようにしなければなりません。
 

 

(注)正確に言うと、換地処分の要件は、借入金の返済ではなく、工事の完了ですので(土地区画整理法1032項)、ここの説明不足かもしれません。ただ、多くの地方公共団体では、借入金問題に決着がつかない限り、換地計画を認可せず、換地処分を認めない運用がなされており、その運用にはそれなりに理由があるとの評価がなされています。すなわち、「換地計画は事業計画に合致する必要があるが、事業計画は事業の終了までの適正な計画でなければならず、事業計画と現実とにずれがある場合は、現実に基づいて事業計画を常に修正しなければならない。借入金の返済が保留地処分で不可能であれば、その対応を検討し、検討結果を事業計画に反映せざるを得ない。その処理を定めない限り、事業計画は不完全であって、不完全な事業計画に基づき換地計画の是非を判断しえない。したがって、換地計画を認可するにあたっては、まず適正な事業計画の策定を求めるということには理由があるからである。」(小澤英明=飛田博『土地区画整理組合の再建』区画整理20084月号52頁脚注8参照)