平成26年6月20日成立した会社法改正により、上場会社〔正確には、公開会社かつ大会社である監査役設置会社のうち、株式について有価証券報告書提出会社〕には、社外取締役を取締役会のメンバーにすることが事実上強制されることになりました。
『事実上』というのは、経済界の反発により、会社法上、社外取締役の選任が義務化されるところまではいかなかったのですが、社外取締役がいない会社については、
① 定時株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならない
② 「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告書に記載しなければならない
③ 社外取締役候補者を含まない取締役選任案を提出する場合には、株主総会参考書類に「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載しなければならない
ということになり、さらに、証券取引所の規則により、上場会社には独立役員(社外取締役より厳しい)を1名以上確保する努力義務がかされることになりました。

いや~社外取締役制度を導入したい側からの「これでもか、これでもか」というような波状攻撃ですね。こんなにたくさんの規制を設けるのであれば、いっそのこと会社法上、上場会社には社外取締役を義務化してしまった方が、シンプルでよかったのではないか、などと思ってしまいます。

で、今後どうなっていくかの予想ですが、ご存じのとおり、我が国は横並び社会ですし、このような制度のもとで、社外取締役を選任しないでいると、いちいち社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければなりませんし、証券取引所からはチクチクいじめられるでしょうから、この改正により、ほとんどの会社が社外取締役を選任することになるでしょう。2013年時点で、社外取締役を設置していたのは、全体の62.2%だったそうですが、1年後には、100%に近い数字になるのではないでしょうか。

逆にいうと、このような制度のもとで社外取締役を設置しないというのは、そうとうポリシーを持った会社ということになるでしょう。

私としては、「弊社には、素晴らしい監査役会があり、優秀な会計監査人も付いていますから、コンプライアンスはきちんと順守されています。それ以上に、弊社の業務のことを知らない社外取締役に来られても有害無益だと考えるので、あえて社外取締役は選任しません。近時の会社不祥事事案をみても、社外取締役が存在する会社が多く、社外取締役が優秀な制度とは思いません。弊社事業の特殊性からも適任者はいません。現在の取締役がベストメンバーです。」とかなんとか大見得を切って、実際に業績も好調で、コンプライアンスもしっかりした会社が現れてくれないかななどと夢想します。

そういう会社が現れて、社外取締役制度を導入した官僚、学者及び実務家をぎゃふんと言わせてくれませんかね。