税理士法は、税務申告の代理、税務書類の作成、税務相談等の税理士業務の提供を税理士及び税理士法人のみができる業務とし(税理士法第2条、第48条の2、第52条)、税理士や税理士法人でない者が税理士業務を提供した場合には、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられることになります。

しかし、世の中には税理資格を持っていないにも関わらず、税理士業務(たとえば、怪しげな節税アドバイス)を行って、お金を稼いでいる『偽』税理士がけっこう存在しています。記憶されている方もいらっしゃるかと思いますが、2013年3月には、経営コンサルティング会社及びその社長が、税理士資格がないのに、十数人の顧客から依頼を受け、確定申告書を作成したとして逮捕されていますし、今年の3月にも、元税理士が別の税理士の名義を借りたり、取引先企業の自己申告を装ったりして税理士業務を行い、逮捕されたことが報道されています。このケースでは名義を貸した税理士も、税理士法違反の幇助容疑で逮捕されました。 

ただ、「無資格なのに税理士業務をしているのか?」というのは割と難しい問題です。というのは、税務申告の代理人は税理士資格を有する者だけができますので、無資格者も、申告の場面では、通常、有資格者を関与させています。したがって、偽税理士行為が疑われると、自分たちは、クライアントと税理士をつないだだけで、税理士業務自体は有資格者によって行われているという言い訳ができることになります。その結果、当局側も、無資格者が税理士業務を行ったことを証明するしっかりとした証拠、さらに、関与した税理士が単なる名義貸しであることを証明するしっかりとした証拠を持っていないと、摘発は難しいのです。

これに対して、当局側は、税理士の名義貸しに対しても罰則を課すことができるよう税理士法を改正して対抗しようとしていますが、確かに、条文上は、税理士法違反幇助から、税理士法違反(名義貸し)となり、『偽』税理士を助長した税理士を摘発しやすくなるものの、この場合も、偽税理士と名義を貸している税理士との内部関係がわかる証拠(たとえば、通常よりも著しく安く税理士業務を請け負う旨の委任契約書?)が必要となってきますので、実際の摘発には、それなりに苦労するのではないしょうか。

ところで、少々前置きが長くなりましたが、知り合いから私が得ている情報やインターネットからの情報によると、外資系企業をクライアントとする『偽』税理士がかなり暗躍しているようです。日本に進出しようとしている外国企業に対し、日本での会社(支店)設立、登記、会計・税務、労働などの専門サービスを一括して請け負い、その中で、税務についてもアドバイスします。もちろん、税務申告については税理士しかできませんので、税理士の名前を借りて外見上違法といえないような工夫をしていますが、自身でも確実に税務サービスを提供しているものが多いようです(もちろん、すべてがそうだと言っているわけではありません。)。  

で、問題は、日本の税理士会も、税務当局も、クライアントが外資系であり、コミュニケーションが英語でなされているためか、現在までのところ、(私の感覚としては、)日本人による『偽』税理士事案のように調査や摘発に熱心ではないように思われることです。 

しかし、かなりアグレッシブなアドバイスをしているところもあると聞きますし、また、このような『偽』税理士の暗躍を許していたのでは、適切に税理士の資格をもって税理士業務を提供している税理士先生及び税理士法人が馬鹿をみることになります(なぜなら、『偽』税理士は、有資格者を雇っていないため、安くサービスを提供できるからです。)。
 これから日本はどんどん国際化していきますので、日本の税理士先生、税理士会、税務当局、捜査当局は、早くこの問題に真剣に取り組んだ方がよいのではないかと思っています。