昨日(2015年1月12日)の日本経済新聞朝刊15頁に、野村証券の取引システム訴訟の東京地裁判決に関する記事が出ていました。


野村証券の元社員が仕事で行った発明(職務発明)の対価を会社に求めた訴訟で、東京地裁が昨年秋に出した判決が注目を集めている。現行特許法に基づいて、企業が発明の対価を決める手続きが不合理だったとの判断を初めて示したからだ。元社員への対価支払いは認められなかったものの、これまで発明が少なかった製造業以外の企業にも警鐘を鳴らした格好だ。


対価を決める基準がなかったり不合理だったりした場合、対価は会社が受ける利益などを考慮し、裁判所が決めることになった。不合理か否かは①基準を定める際の使用者と従業員との協議の状況②基準の開示の状況③対価の額に対する従業員からの意見の聴取――などを考慮して判断する。野村証券はこれら3つの手順を踏んでいなかった。


今回の判決は、年内にも実施される勅許法改正後にも影響を残しそうだ。特許庁は職務発明を現在の「社員のもの」から「会社のもの」へ変更し、会社に規定に従って金銭を含めた多様な報奨を社員に与える方向だ。この場合も規定が労使協議などを通じて合理的に策定されることなどが前提となる。


さすが日経新聞という感じで、非常に参考になる記事だと思います。確かに、大手メーカーでは、労使協議などを経て職務発明規定が作られているのが通常ですが、金融機関やサービス業などでは、形式的に整えているだけで、実質がともなっていないことが多いと思われます。法務担当者には、改めて自社の職務発明規定がきちんと①労使協議を経て作られているか、②開示さているか、③従業員の意見聴取の機会を設けているか等々を確認されることをお勧めいたします。