2015年2月17日の日本経済新聞の朝刊41頁に『マタハラ、企業に厳しく』という見出しで、厚生労働省がマタハラに関する通達を改訂したことが報道されていました。



働く女性が妊娠・出産を理由に不当な扱いを受けるマタニティーハラスメント(マタハラ)を防ぐため、厚生労働省は、企業への指導を厳しくするよう全国の労働局に指示した。妊娠や出産と、企業が解雇や降格などを行った時期が近ければ原則マタハラに当たると判断。雇用主に報告を求めるなどして被害の拡大を食い止める。


この通達は、厚生労働省の
HPに掲載されています。

簡単に説明させていただくと、

男女雇用機会均等法第9条第3項は、次のように定めて、マタハラを禁止しています。



第9条

3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


また、同様に、育児・介護休業法も、次のように定めてマタハラを禁止しています。



第10条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。


これらの条文について、今回の解釈通達は、昨年10月のマタハラ最高裁判決を受けて、次のように文言を加えて、マタハラの解釈を明確化しました。長くなりますので、
男女雇用機会均等法についてのみ記載させていたきますが、育児・介護休業法の解釈通達の改訂もほぼ同内容です。



指針第4の3(1)柱書きの「法第9条第3項の「理由として」とは、妊娠・出産等と、解雇その他の不利益な取扱いの間に因果関係があることをいう。」につき、妊娠・出産等の事由を契機として不利益扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと解されるものであること。ただし、

イ①円滑な事業運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障があるために当該利益取扱を行わざるえない場合において、

 ②その業務上の必要性の内容や程度が、法第9条第3項の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに当該不利益扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在すると認められるとき

又は

ロ①契機とした事由又は当該取扱いにより行ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、

 ②当該事由及び当該取扱いにより受ける有利な影響の内容や程度が当該取扱いにより受ける不利な影響の内容や程度を上回り、当該取扱いについて事業主から労働者に対して適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば当該取扱いについて同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき

についてはこの限りではないこと。

 なお、「契機として」については、基本的に当該事由が発生している期間と時間的に近接して当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること。例えば、育児時間を請求・取得した労働者に対する不利益取扱いの判断に際し、定期的に人事考課・昇給等が行われている場合においては、請求後から育児時間の取得満了後の直近の人事考課・昇給等の機会までの間に、指針第4の3(2)リの不利益な評価が行われた場合は、「契機として」行われたものと判断すること。


(私のコメント)

「(妊娠・出産等を)理由として」を「(妊娠・出産等の事由を)『契機』として」といわば読み替えて解釈することや、この「契機として」と言えるかどうかを、妊娠・出産等と不利益取扱いの時間的な近接性で判断することは、むしろ当然であるように思われますので、解釈通達の適切な改訂(追加)だと思います。

ただ、分かりにくいのは、例外的にマタハラにあたらない、イとロです。おそらくこの文書を読んで例外的なケースを頭の中にイメージできる人はいないのではないでしょうか。しかし、この部分は、昨年10月のマタハラ判決で述べられた例外を解釈通達に落とし込んだだけですので、厚生労働省ではなく、最高裁に責任がありますね(例外の文言が分かりにくいことは、この記事参照。)。

いずれにしても、今回の解釈通達の改訂により、マタハラがなくなってくれると良いですね。