昨日の日本経済新聞朝刊1面の「偽ブランドなど知財侵害に最低補償額 政府が新対策」という記事はちょっと衝撃的でした。

「政府は偽ブランドなどで知的財産を侵害された場合に最低額の補償を受けられる新たな制度を設ける。被害額の算定が難しい場合でも侵害行為を立証できれば最低額の賠償金を受け取れる。権利者の泣き寝入りを防ぐ狙いで、商標法と著作権法の改正案の今国会への提出を目指す。
 補償額は商標で1万~3万円。著作権では1件当たり数百円から数万円程度となる見込みだ。」

何が衝撃的かというと、最低補償額の金額です。知的財産権を侵害された場合の損害額の立証はかなり大変なので、このような制度を作ることに異議はない(というか大賛成な)のですが、商標侵害で「1万円~3万円」とか、著作権侵害で「数百円~数万円」というのはあまりに低すぎないでしょうか?

「新制度では被害額を算定できなくても最低額の補償を得られ、被害額が算定できた場合はその分の賠償金を得られる。これとは別に侵害行為の差し止め請求や弁護費用の請求はできるため、権利者は訴訟を起こしやすくなる。」

というのですが、判決で認められる弁護費用は、裁判所が弁護費用として合理的と認める金額であり、実際に弁護士に支払った金額ではなく、そこには大きな金額の差があります。弁護士をつけたとしても、案件の説明や証拠の収集のために、当事者本人も多大のエネルギーと時間を裁判につぎ込むことになるのに「1万円~3万円」「数百円~数万円」というのでは、裁判に勝っても居酒屋で祝杯をあげればそれで終わってしまいます。これでは最低補償額が設定されたとしても、「権利者は訴訟を起こしやすくなる。」ということにはならないと思うのです。およそ「権利侵害」を認定するのであれば、最低100万円は補償されなければならないと思うのですが、いかがでしょうか?