ちょっと前の記事になりますが、金融・商事判例No.147620151015日号)の「金融商事の目」の古賀政治弁護士(霞総合法律事務所)の『強制執行対象財産の探知と債務者財産情報』というコラムは、「わが意を得たり」と思わせる内容でした。

古賀先生は、せっかく判決を取得しても債務者の財産を把握する方法がない現状を説明のうえで、

「執行対象財産を債権者が知り得ないために強制執行手続によって弁済を受けることが困難となるようでは、訴訟手続を設けて権利の存否を確認したはずの司法制度の実効性が疑われかねない。」

と危機感を表明します。そして、このようなニーズを受けて、平成15年に財産開示手続(民事執行法196条以下)が設けられたものの、

「手続違反に対する制裁が30万円の過料にとどまったこと(同法206条)等の事情によって活発な利用がなされているとはいい難い。」

と説明し、

「このような実情を踏まえ、現在の財産開示手続をより実効的なものとするための改善や新たな制度創設の機運が生まれてきている。〔中略〕債務者財産情報を債権者が取得するための新しい制度として財産照会制度の創設に注目すべきものと考える。この制度は、債務者の銀行等に対する預金債権などの財産情報について、裁判所が、第三者(銀行等)に照会する制度である。」

と紹介しているのです。

このコラムの中でも言及されているとおり、財産照会制度の具体的な内容については色々な議論があると思います。
しかし、現在の強制執行制度がかなり役立たないものであることは明らかであり、その原因が債務者の財産を把握する方法がないことに起因していることも明らかであると思うのです。既に現在の制度不備は一般に広まりつつあり、現に敗訴判決を言い渡されても、「へっちゃら」という方々も増えています(債務は支払わないが、richな社会生活を送っている。)。今は社会・経済が比較的安定しているからいいものの、このような法の実効性がない分野には、反社会的勢力に付け込むすきを与えるので、いったん経済のバランスが崩れると、かつてのように債権回収の分野に反社会的勢力が跋扈するという事態にもなりかねないと思います。
債務者の財産を把握するためのきちんとした制度ができることを切に願っています。