●はじめに
ビットコインですが、今月9日には、中国国内のビットコイン取引所に対し、中国人民銀行(中国の中央銀行)が調査に入ったとのことです。中国人民銀行いわく、マネーロンダリング対策が不十分であるとのことですが、この調査を受けて、業者側は、ビットコインの引き出しを最大1ヶ月停止としました。当然、市場は敏感に反応し、ビットコインの価格が露骨に下がりました(BTC円のチャートをみると、崖のようです。ただし、その後、また、じわじわと価格が上昇しています。)。

他方、日本では、ビットコイン取引所に対し、三井住友銀行グループ、みずほフィナンシャルグループなどが出資をするなどの動きがありました(既にUFJグループも出資しており、メガバンクグループ3者が出資したことになります。)。また、国内では、今年以降、ブロックチェーン技術の実証実験などが本格化すると見込まれています。ビットコインに端を発する技術が、どこまで発展してゆくのか注目です。

●仮想通貨法に関する内閣府令等の公開
さて、前回の記事でも若干言及しましたが、仮想通貨に関する資金決済法等の法改正(改正により追加された仮想通貨に関する条文は、俗に、仮想通貨法と呼ばれています。)に関し、その細目を定める内閣府令やガイドライン等の案が、昨年末に公開されました。施行は、今年4月を見込んでいるとのことです。

http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20161228-4.html

そこで、遅ればせながら、それらの内容について簡単に触れさせていただければ
と思います。

●仮想通貨法のおさらい
まず、前提として、昨年成立した仮想通貨「法」(未施行)の概要について、ざっくりおさらいさせていただきます。

今回の仮想通貨「法」の注目部分は、やはり、なんといっても
・「仮想通貨交換業」(法2条第7項)が登録制となり(法631
・登録せずに「仮想通貨交換業」を行うと刑罰が課される(法107条等)
ことです。「仮想通貨交換業者」には、ビットコインの取引所などが含まれますので、法律施行後は、自由にビットコインの取引所を作れなくなります。概して、今回の仮想通貨法は、取引所に対する規制となっています。

加えて、仮想通貨交換業者には、仮想通貨法上、
情報の安全管理(法63条の8
・利用者の保護(法63条の10
・財産の分別管理(法63条の11
・事業年度ごとの報告書提出(法63条の14
等々の義務が課されます。

これらの規定の趣旨は、例えば、
・取引所が破綻したり
セキュリティー対策が十分に施されていない取引所からハッキングにより
仮想通貨が流出したりといったことを防ぎ、取引所の利用者を守る点にあります。

また、仮想通貨は、マネーロンダリングにも使われるため、マネーロンダリングを防止する趣旨も含まれています。

このように、仮想通貨法は、取引所の規制を主眼としています。ただ、取引所に対する規制が厳しすぎると、大企業しか規制に対応した取引所を運営できず、小さな業者は廃業を余儀なくされるかもしれません。そうすると、仮想通貨の利用者にも影響が出てきます(この他、仮想通貨交換業の定義に関して、取引所以外にも、広範に規制が及んでしまうのではないか、といった点は、危惧されています。)。

ちなみに、あまり報道はされていない点ですが、今回の仮想通貨法では、日本で登録されていない海外の取引所が、国内の者に対して、仮想通貨売買等の「勧誘」を行うことも禁止されていたりします(法63条の22)。

なお、巷では、今回の法改正により、ビットコインなどの仮想通貨が「通貨」として認められたかのような報道もありましたが、ミスリーディングのように思います。
もちろん、資金決済法上、「仮想通貨」が定義され、今後、取引所での取引に消費税も課されなくなるようですが、ビットコインが日本円のように、どこでも支払いに使えるようになったわけではありません(もちろん、今後、そうなっていくこ

とを期待します。)。

●今回の内閣府令
そこで、本題ですが、今回、公開された内閣府令(仮想通貨交換業者に関する内閣府令)等々の案(未施行)では、今ご説明した仮想通貨法の細目などが定められました。

例えば、仮想通貨交換業の登録申請の際、18項目にものぼる添付書類を付けなければならないこととされています(内閣府令第6条)。その中には、以下のような書類も含まれています。
・取締役や責任者の履歴書(内閣府令第6条⑤⑬)
・取り扱う仮想通貨の概要の説明書(内閣府令6条⑪)
・仮想通貨の取引に用いる契約書(内閣府令第6条⑮)

15号で取引契約書の添付が必要なことから、とりあえず登録だけしておいて、契約書等々は後から準備しよう、ということはできなさそうです。

また、例えば、仮想通貨法上、仮想通貨交換業者の登録拒否事由の1つとして、以下の条件が定められていました。

仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる内閣府令で定める基準に該当する財産的基礎を有しない法人」(法63条の51項第3号)

要するに、お金のない会社は、取引所を営んではいけませんよ、という規定です。

ただ、「内閣府令で定める基準」のハードルが高すぎると、取引所として営業をすることが非常に困難になってしまいます。そのため、基準がどう定められるのか、注目されていました。

これに対し、今回、内閣府令(案)では、以下のように定められました(内閣府令第9条)。
・資本金の額が一千万円以上であること
・純資産額・・・が負の値でないこと

それ程ハードルは高くはない?という意見も多いように思いますが、PC1台で起業して明日から取引所を開設する、ということは念頭に置かれていないように思います。

ちなみに、登録申請後、登録までに通常かかる期間(標準処理期間)は、補正などの期間を除き、は2ヶ月と定められました(内閣府令第36条第1)。

●ガイドラインについて
また、仮想通貨法に関する監督指針をまとめたガイドラインも公開されています。

そのなかでは、例えば、財産的基盤に関し、次のような記載があります。

・ガイドラインⅡ-1-2
「経営陣は、仮想通貨交換業者に関する内閣府令(・・・)第9条に規定する財産的基礎を遵守するだけでなく、業容や特性に応じた財産的基礎を確保するよう努めているか。」

要するに、資本金1000万円・純資産が-でない、という最低ラインをクリアしただけでなく、もっと、しっかりと、財産的基盤を確保しなさい、ということかと思います。

また、ガイドラインには、例えば、以下のような記載もあり、ある程度の人的資源・組織体制があることが、前提とされています。

・ガイドラインⅡ-1-2
「経営陣は、業務推進や利益拡大といった業績面のみならず、法令等遵守や適正な業務運営を確保するため、内部管理部門及び内部監査部門の機能強化など、内部管理態勢の確立・整備に関する事項を経営上の最重要課題の一つとして位置付け、その実践のための具体的な方針の策定及び周知徹底について、誠実かつ率先して取り組んでいるか。(注)本事務ガイドラインでいう「内部管理部門」とは、法令及び社内規則等を遵守した業務運営を確保するための内部事務管理部署、法務部署等をいう。また、「内部監査部門」とは、営業部門から独立した検査部署、監査部署等をいい、内部管理の一環として被監査部門等が実施する検査等を含まない」

・ガイドラインⅡ-2-1-1-2
「コンプライアンスに関する研修・教育体制が確立・充実され、役職員のコンプライアンス意識の醸成・向上に努めているか。また、研修の評価及びフォローアップが適宜行われ、内容の見直しを行うなど、実効性の確保に努めているか。」

・ガイドラインⅡ-2-1-2-2
「管理職レベルのテロ資金供与及びマネ-・ロ-ンダリング対策のコンプライアンス担当者など、犯収法第 11 条第3号の規定による統括管理者として、適切な者を選任・配置すること」

さらに、取引所といえば、ハッキング等の被害にも常にさらされている訳ですが、この点についても、ガイドラインは、然るべき人員を配置するように言及しています。

・ガイドラインⅡ-2-3-1-2(1)
「取締役会は、システムリスクの重要性を十分に認識した上で、システムを統括管理する役員を定めているか。なお、システム統括役員は、システムに関する十分な知識・経験を有し業務を適切に遂行できる者であることが望ましい。

・同④
代表取締役及び取締役(指名委員会等設置会社にあっては取締役及び執行役)は、システム障害等発生の危機時において、果たすべき責任やとるべき対応について具体的に定めているか。また、自らが指揮を執る訓練を行い、その実効性を確保しているか。」

・ガイドラインⅡ-2-3-1-2(7)
「システム部門から独立した内部監査部門が、システム関係に精通した要員による定期的なシステム監査を行っているか。(注)外部監査人によるシステム監査を導入する方が監査の実効性があると考えられる場合には、内部監査に代え外部監査を利用して差し支えない。」

ガイドラインは、あくまでガイドラインですので、法律ではありませんが、あまり厳格に運用しすぎると、結局、著名な業者以外はシャットアウト、ということにもなりかねませんので、そのあたりは配慮が必要なように思います。

ちなみに、細かなことですが、弁護士的には、以下のようなガイドラインの記載にも目が止まりました。ここでいう「弁護士法に基づく照会」とは、いわゆる弁護士会照会(23条照会)のことですね。今後、事件に関し、取引所に対して、顧客の氏名・住所等の照会ができるようになるかもしれません。

・ガイドラインⅡ-2-1-2-2(5)
仮想通貨交換業に係る取引の不正利用に関する裁判所からの調査嘱託や弁護士法に基づく照会等に対して、個々の具体的事案毎に、仮想通貨交換業者に課せられた守秘義務も勘案しながら、これらの制度の趣旨に沿って、適切な判断を行う態勢が整備されているか。」

●最後に
取引所を利用する側面では、利用者として、取引所への規制が厳しいほど、安全に取引ができますので、その面では喜ばしいことです。

他方、規制される側の企業にとっては、必ずしも軽い規制ではないかと思います。特に、「仮想通貨交換業」の範囲については、定義上、取引所以外の業態であっても該当する可能性があるため、そのあたりも踏まえて、今後、慎重な運用が望まれます。