1 ビットコインのハードフォーク問題

ビットコインですが、今一番ホットな話題がハードフォーク問題です。これは、ごくごく簡単に言えば、ビットコインが、2種類に分裂する「かもしれない」という問題です。以前から、問題として指摘されていましたが、ここに来て、ハードフォークの現実的な可能性が高まっています。

例えば、世界のビットコイン取引所各社がハードフォークをした場合の取り扱いについて声明を発表しするなどし(https://corp.zaif.jp/info/4055/)、また、ビットコイン相場も、ハードフォークを懸念して、1BTC=14万円台だったビットコインの価格は、今月中頃から、暴落し、10万円台まで下がりました(なお、その後若干上昇し、現在12万円台[平成29年4月4日現在]で取引されています。)。

2 ハードフォークとは何か

では、今回問題となっているハードフォークとは、一体何なのでしょうか。ハードフォークという言葉の意味自体は、「互換性がないバージョンアップ」、程度の意味ですが、それだけでは何のことかさっぱりかと思います。

以前、イーサリアムのハードフォークについてご説明しましたが、イーサリアムのケースと今回のビットコインのケースは、また、ニュアンスが異なります。

こで、(誤解をおそれず、生じる結果に着目すれば)今回問題となるビットコインのハードフォークとは、

・従来のビットコイン(BitcoinCore)の取引台帳を使って、別の仮想通貨(BitcoinUnlimited)を作ろうとする動き

と説明することができます。

例えば、現在、ビットコインの取引台帳(ブロックチェーン)上に、Aさんが10BTC(ビットコイン)持っている旨が記録されているとします。この台帳を使って、別の仮想通貨であるBitcoinUnlimited(単位は「BTU」と呼ばれます。)ができるとします。そうすると、Aさんは、自動的に、

・新しくできた仮想通貨の10BTUを持つ

ことになります(BTUは、従来のBTCの取引台帳を引き継ぐため)。このような状況が、今、将に起きようとしています(但し、現時点での予想ですので、実際、どのような動きとなるか、未知数の部分がございます。)。

3 なぜハードフォークが問題となっているのか

では、なぜ、ビットコインのハードフォークが問題となっているのでしょうか。これは、ビットコインの技術的な問題に由来します。

ビットコインは、ブロックが数珠つなぎになった「ブロックチェーン」と呼ばれる取引台帳を使っています。このブロックチェーンには、日々、新たなビットコインの取引が記録され、ブロックが追加され続けています。しかし、現状、ビットコインのシステムでは、1つのブロックのデータサイズが決まっている(1MB)ため、近年増加したビットコインの取引量に対応できなくなりつつあります。

そこで、1つのブロックに、今まで以上の取引を記録するため、様々な解決案が検討されました。


従来からビットコインのプログラムを開発している開発チームは、この問題に対処するため、「Segwit」(Segregated Witness)と呼ばれる仕様を提案しました。これは、これまで、ブロックに含まれていた一部のデータを、ブロック外に分離(Segregated)することにより、ブロック自体には、より多くの取引データを詰め込める、という仕様です。小難しい仕様ですが、ブロック=1MBのルールを崩さないため、それまでのソフトウェアと互換性があり、導入が容易です。

他方、単純に考えれば、ブロックのサイズを大きく(可変に)する、という対応も考えられます。この仕様は、BitcoinUnlimitedと呼ばれ、従来、ビットコインのシステムを開発しているチーム「ではない」チームが提唱・開発しています。しかし、1ブロック=1MBというルールを変えてしまうため、それまでのソフトウェアと互換性がありません。互換性がないということは、従来のビットコインのシステムをアップデートしなければ、この仕様は使えないことになります。より掘り下げて考えれば、従来のビットコインのネットワーク参加者が全員でアップデートすれば、BitcoinUnlimitedが、従来のビットコインとイコール(正当な後継)になります。
しかし、一部でも、反対者がBitcoinUnlimitedを採用しなければ、互換性がないため、ビットコインは、従来のビットコイン(BTC)と、BitcoinUnlimitedの仕様によるビットコイン(BTU)に分かれてしまうこととなります(ハードフォーク)。
このSegwitとBitcoinUnlimitedは、これまで対立し、どちらが採用されるのか、注目されてきました。普通に考えれば、これまでビットコインのシステムを開発してきたチームによるSegwitが採用されそうですが、BitcoinUnlimitedの採用が

日に日に増大しています。
(採掘されたブロックの比較・BTCとBTU。https://coin.dance/blocks/historical)


ビットコインは、管理者がいないため、どちらを採用するかは、ネットワーク参加者が決めることとなります。これまでビットコインのシステムを開発してきたチームでさえ、ソフトウェアの採用を強制できないのです(OSなどでは、OS開発

会社が、問答無用でバージョンアップを求めてきますが、ビットコインでは、中央管理者がいないため、そのようなことはできないのです。)。

4 今後の展開

そもそも、今後、ビットコインが分裂するか否か自体、まだ確定はしていません。

ただ、このままの流れで行けば、BitcoinUnlimitedの採用が進み、Bitcoinがハードフォークする可能性も十分考えられる状況に至っています。

利用者として気になるのが、ハードフォーク後、どのような状況になるかです。理論的には、以下の3通りが考えられるかと思います。

 ①BTCが使われなくなり、BTUに一本化する

 ②BTUが使われなくなり、BTCに一本化する

 ③BTC、BTU何れも使われ、取引される(通貨が分裂する。)

①②であれば、話は単純です。しかし、イーサリアムとイーサリアム・クラッシックの例を見る限り、③になる可能性が高いように思います。

具体的には、取引所がBTC・BTUともに取り扱うのであれば、それぞれに価格がついて、それぞれ取引がなされるように思います。では、取引所は、BTUについてどう見ているかというと、冒頭の共同声明では、BTUの取り扱いを否定はしておらず、

「取引所の一部はBTUも取り扱うことを検討して」いる

https://corp.zaif.jp/info/4055/
といった記載もあります。ただ、共同声明に参加していない取引所のスタンスは不明ですし(日本の最大手の取引所は、共同声明に参加していません。)、カナダの一部の取引所など、BTUを取り扱わないと宣言しているところもあるようです。

5 最後に

今回の問題は、ビットコイン取引量増加に対応するため、いずれ、経験しなければならない問題です。いい形で、ランディングすることを願いつつ、今後も、注目してゆきたいと思います。