現在、国会で審議中の住宅宿泊事業法案は、
(1) 住宅宿泊事業を都道府県知事への届け出制にする
(2) 年間提供日数の上限を180日とする
(3) 地域の実情を反映して、条例により年間提供日数等をさらに少なくできる
(5) 宿泊者の衛生の確保の措置等を義務付け
(6) 家主居住型(ホームスティ型)ではなく、家主不在型(ホスト不在型)の場合には、住宅管理業者と管理委託契約を締結しなければならない
(7) 住宅宿泊管理業業を営むには国土交通大臣の登録が必要
(8) 住宅宿泊仲介事業を営もうとするには、観光庁長官の登録が必要
という骨子です。

この中で、どうも私は「年間提供日数の上限を180日にする」という規制が理解できません。

2016年9月15日15時配信の毎日新聞のニュースによると、

「厚生労働省と環境庁でつくる専門家会議は6月、行政の許認可を得なくても住宅地で民泊を導入できるように新法を制定することを提言した。ただし、営業日数については、空き家の有効活用を求める不動産業界が上限設定に反対、営業への影響を懸念するホテル・旅館業界は年30日以下を主張し、まとまらなかった。
 政府は新法で、宿泊営業の規制を大幅に緩和し、自治体にインターネットで届け出をすれば、住宅地を含むどこでも営業できるようにする。営業日数は「社会通念上、半年を超えると一般民家とみなせなくなる」として、180日を上限として設定する。今後、与党内の議論を経て、閣議決定を目指す。」

とありますので、もともとはホテル・旅館業界の利益を守るために、このような営業日数規制が検討されたことがわかりますが、一般論として、ホテル・旅館業界は社会的弱者でもなく、その既得権益を保護することが営業の自由(憲法22条1項)の規制目的として正当化されるというのはおかしいでしょう。

そのため、政府は、ホテル・旅館業界の保護、などとはいわずに、上記の記事では、「社会通念上、半年を超えると一般民家とみなせなくなる。」などと言っているのですが(注)、いえいえいえ、法案を見ればわかるとおり、住宅宿泊事業とは、(「民家」ではなくて)「住宅」に人を宿泊させる事業であって、1年365日民泊をしても、(もはや「民」家ではなくなるとはいえるかもしれませんが)「住宅」が「住宅」でなくなるということはないでしょう。

いやいやいや、そういう物理的なことを言っているのではなくて、年間180日を超えて営業している場合は、もはやホテルや旅館と同じなのだから、旅館業法上の許可を取得しないさいという趣旨なんだとと考えたとしましょう。年間180日を超えて営業するような場合には、ホテルや旅館と同等の宿泊者保護、公衆衛生確保及び治安維持(テロ対策)目的からの規制をかけなければならなないのだと考えるのです。

しかし、もし宿泊者保護、公衆衛生及び治安維持上の必要があるのであれば、営業日数に関係なく規制をかけるべきであり、なぜ年間180日以上営業すれば急に規制が必要になるか説明がつきません。(そもそも民泊新法案では、宿泊事業者に、宿泊者保護、衛生確保及び宿泊者名簿の備え付け義務を課しているので、それに加えてなぜ営業日数を規制しなければならないのかについても説明が必要ですね。)。

さらに、特区で許可を取得して民泊をする場合には、営業日数規制がかからないことにも説明に窮します。特区であっても、その他の地域であっても、宿泊者保護、公衆衛生確保、治安維持(テロ対策)の必要性は同じはずです。

というわけで、私は、年間180日という営業日数規制には、かなり問題があると考えています。規制緩和を目的とした法案なのに、既得権益を保護するような規制が入っちゃった。

もっともホテル・旅館業界としては、(自分たちと比べると)民泊業者はあまり規制がかかっていないから、営業日数規制をしてもらわないと不公平だ(公正な競争環境が確保されていない。)というような反論はあり得るかもしれません。しかし、それは、ホテル・旅館業界に対する規制が厳しすぎないか?(または無駄なものがないか?)という観点からホテル・旅館業界に対する規制緩和として検討されるべきものでしょう。

(注)「民泊サービス」の制度設計のあり方について(「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書)(平成28年6月20日)の中にも、民泊について、
・住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものとする。(4頁)
・上記の「一定の要件」としては、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要である。(6頁)
・そのような「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、「住宅」そして扱い得るようなものとすることを考慮すると、制度の活用が図られるよう実効性の確保にも考慮しつつ、年間提供日数上限による制度を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適当な日数を設定する。(6頁)
と同じような説明がなされています。
しかし、なぜ営業日数について180日を上限とすると、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として合理性があるといえるのかはよくわかりませんね。