1. ネット上で名誉を毀損された場合、はじめに思いつくのは、ウェブサイトの管理者に対して、直接、名誉毀損に該当するページの削除請求をすることです。ところが、一部の悪意のあるウェブサイトは、これに応じません。


2. そこで、次に、仮処分や訴訟といった裁判所の手続を利用して削除請求ができるかを考えることになります。しかし、例えば、ウェブサイト(WHOIS情報を含む)上に管理者の所在が記載されていなかったり、記載されていたとしても、アルゼンチンだとか、アメリカ・ネバダ州だとかのペーパーカンパニーだったりすると、問題が生じます。
 まず、管理者の住所が分からない場合、そもそも、送達先が分からないため、仮処分や訴訟はできません。また、外国のペーパーカンパニーの場合、仮処分や訴訟を提起することは、一定の要件のもと可能ですが、いざ勝ったとしても、その外国が日本の判決等で強制執行をすることを認めていない限り、日本国外にあるため、仮処分決定や判決を強制する手立てがありません。結局、裁判所の判断が出たので任意に削除するよう、「お願い」をするほかないのです。言い換えれば、「お願い」を聞いてくれないウェブサイトでは、削除ができません。


3. では、問題となる記事の削除ではなく、検索エンジンに表示させないようにすることはできないのでしょうか。これは、近時注目されている、検索結果の削除という手段です。
 現在、私達がウェブページを閲覧する際は、多くの場合、Googleなどの検索エンジンで目的のページを検索します。そのため、検索エンジンに検索結果として表示されなければ、(URLを事前に知っている場合を除き)事実上、ページにアクセスすることが困難になります。これにより、ページの削除に近い効果が得られることとなります。この検索結果の削除に関しては、東京地裁が平成26年10月9日の決定で、初めてこれを認めたことから話題となりました。
 このような、検索結果の削除は、ネット上の名誉毀損に対する有効な解決策となり得ますが、注意すべきは、最高裁では、未だ、認められた例が1つもないということです。今年1月31日に出された最高裁の判断においても、結論的に、削除は否定されています。
 また、下級審の傾向として、検索結果のタイトルやスニペット(ページの抜粋部分)自体で名誉毀損が成立しなければならないとされていることにも注意が必要です。検索に引っかかるサイト自体には、ひどい名誉毀損表現が記載されていたとしても、検索結果として表示されるタイトルや抜粋部分に名誉毀損表現が含まれていなければ、現状で、検索結果の削除は難しいといえます。
 さらに、下級審の裁判例によっては、表現自体から、非真実であることなどが明らかでなければ削除を認めない、という厳しい判断を示すものもあります。この判断に従うと、虚偽の記載により名誉を毀損された場合、虚偽であることの証明が容易であるにもかかわらず、名誉毀損の表現自体から虚偽であることが分からなければ、削除は認められないことになります。
 このように、検索結果の削除についても、認められるケースは限定的です。


4. そうすると、例えば、ネット上の名誉毀損のうち、
  ・外国のペーパーカンパニーが管理者であり
  ・管理者が一切削除に応じず
  ・検索結果自体に表示されるタイトルやスニ
   ペットに名誉毀損表現が含まれない
といった場合、法的な対応をとることは非常に困難です。


法的対応以外では、いわゆるSEO対策や逆SEO対策といったものもあります。これらは、技術的に、名誉毀損のページの検索順位を下げるという試みですが、名誉毀損の情報が消えるわけではありません。


何より、違法な状態が生じているにも関わらず、法的に対応する手立てがないということは、非常に問題です。


日本が法治国家である以上、このような、言わば法律の抜け穴は、直ちに塞ぐべきです。法治国家が人権侵害の誹謗中傷サイトを放置するようなことはあってはいけません。立法ないし司法(場合によっては、さらに、記事削除に関する国際的な協力体制の確立)による早急な対応を切に望みます。