●●(1). はじめに●●

さて、前回、前々回と、ビットコインの概要などをご説明させていただきましたが、今回は、私の専門である、法律分野のお話をさせていただければと思います。


●●(2). 仮想通貨法とは??●●

ビットコインをはじめとして、現在、数百(あるいはそれ以上)の仮想通貨が登場していますが、仮想通貨に関しては、平成29年4月に、仮想通貨法(改正資金決済法の一部・仮想通貨に関する規定部分を、慣用的にそう呼んでいます。)が施行され、話題となりました。

この仮想通貨法ですが、巷では、「ついに仮想通貨が通貨となった」だとか、「仮想通貨取引全般が規制される」だとかいった声がありましたが、結構ミスリーディングな部分があります(一部では、大手メディアの報道でも、同様にミスリーディングなものがありました。)。

そこで、まず、基本的な部分の確認ですが、仮想通貨法により、ビットコインなどの仮想通貨が「通貨」になった訳ではありません。確かに、法令上、「仮想通貨」(仮想通貨法第2条第5項)といった表現はされていますが、日本における「通貨」は、今でも、貨幣及び日本銀行券(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第2条第3項)のままです。この点に変わりはありません。ただ、事実上、ビットコインなどの仮想通貨が、通貨に類似するようになってきている、と言うことはできます。

次に、仮想通貨法は、あくまで仮想通貨の取引所の規制であり、全ての仮想通貨取引を規制するような法律ではありません。まれに、仮想通貨法により、ビットコイン取引全般が違法になった、と誤解されている方もいたりしますが、そうではありません(というより、むしろ、現在では、仮想通貨で代金を支払えるお店が増えてきています。)。



●●(3). 仮想通貨法の詳細●●

では具体的に、仮想通貨法では、どのような規制がされたかといえば、大きな柱としては、

  ・「仮想通貨交換業」(法2条第7項)が登録制となり(法63条の1)

  ・登録せずに「仮想通貨交換業」を行うと刑罰が課される(法107条等)

という点です。ここでいう、「仮想通貨交換業」には、ビットコイン取引所の運営などが含まれますので、法律施行後の現在では、無登録でビットコインの取引所を作れません(なお、法律施行前から取引所を運営していた会社では、登録を得るまで、一定の猶予期間が設けられています。)。そのため、概して、今回の仮想通貨法は、取引所に対する規制といえます。

さらに詳しく見ると、仮想通貨交換業者には、仮想通貨法上、
 ・情報の安全管理(法63条の8)
 ・利用者の保護(法63条の10)
 ・財産の分別管理(法63条の11)
 ・事業年度ごとの報告書提出(法63条の14)
等々の義務が課されます。

ちなみに、あまり報道はされていない点ですが、今回の仮想通貨法では、日本で登録されていない海外の取引所が、国内の者に対して、仮想通貨売買等の「勧誘」を行うことも禁止されていたりします(法63条の22)。

これらの規定の趣旨は、例えば、
 ・取引所が破綻したり
 ・セキュリティー対策が十分に施されていない
  取引所からハッキングにより仮想通貨が流出
  したり
といったことを防ぎ、取引所の利用者を守る点にあります。

また、仮想通貨は、マネーロンダリングにも使われるため、マネーロンダリングを防止する趣旨も含まれています。



●●(4). 仮想通貨法に対する評価●●

仮想通貨法の評価に関しては、賛否両論ありますが、よく言われるマイナス面としては、ある程度資金力がある会社でなければ、取引所の開設は難しくなった、という点です。仮想通貨法に関連して定められた内閣府令では、仮想通貨の取引所は、最低資本金が1000万円とされ、また、様々な内規やリスク管理体制が求められることにより、物的・人的なインフラ整備にもコストがかかります。そのため、スタートアップ企業がいきなり取引所を開設する、ということは、ほぼ不可能ではないか、と言われています。

ただ、これに対しては、仮想通貨法の規制があることにより、取引所のセキュリティーや財産的基盤が、ある程度はしっかりしたものとなり、利用者としても、安心して利用できるようになる、という見方もできます(ただ、どの業界でもそうですが、100%信用できる、などと言うことはできません。)。また、所轄官庁やルールが明確になった点を、好意的に受け止める見方もあります。


●●(5). 取引所以外への影響について●●

以上のとおり、仮想通貨法は、主に、取引所への規制ですので、それ以外の部分に関しては、規制は及ばないことが原則です。

ただ、仮想通貨を繰り返し売買したり、他の仮想通貨と交換するようなビジネススキームは、取引所とやっていることは同じですので、取引所でなくとも、仮想通貨法の規制が及ぶ可能性があります。規制が及ぶとすると、仮想通貨交換業の登録が必要となり、これには、前記のとおり、多大なコストがかかります。そうすると、ビジネスを始めようにも、仮想通貨法の規制で、ビジネススキームが成り立たない、ということにもなりかねません。

そのため、もし、仮想通貨に関連したビジネススキームを考える際は、早い段階で、専門家や監督官庁である金融庁(実際の対応は財務局)に相談するなどの対応が重要となります。


●●(6). 終わりに●●
いかがでしたでしょうか。次回は、ビットコインの中核技術「ブロックチェーン」について触れてみたいと思います。