先週は三連休でしたが、皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか?
 私は、友人と温泉に出かけて、とても良い連休を過ごすことができたのですが、その温泉で「あれ?」と思う出来事があったので、ご紹介します。

 先日私が行った温泉には休憩所のようなものが付いており、お風呂上がりに飲み物や食べ物を注文して休憩できるようになっていました。そこには色々な飲み物が用意されていて、ソフトドリンクはどれも300円くらいだったのですが、私は「フレッシュベリージュース(600円くらい)」が気になり、カウンターで注文しました。
 フレッシュベリージュースは、ソフトドリンクメニューとは別枠の健康メニューの1つに入れられていましたし、値段も普通の飲み物の倍くらいしたので、私はてっきり駅ナカのジューススタンドのような感じで、果物をミキサーにかけた状態のものが出てくるのだと思っていました。
 ところが、カウンターの女性が冷蔵庫から取り出したのは、缶入りのジュース。それをガラスのコップに注ぎ、「はい」と手渡されました。

 私は、このときお店の対応にあっけに取られてしまい、そのままそれを受け取ってしまったのですが、実はこのお店側の行為は法的に問題があります。

 どのような点が問題かというと、まず、その場で果物を絞って作ったものではない既製品を「フレッシュジュース」と称して提供することは、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)違反に当たる可能性が高いです。
 すなわち、景品表示法は、商品の内容について、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を不当表示(優良誤認表示)として禁止しています(景品表示法第5条第1号)。「フレッシュジュース」という表示は、消費者に、その場で果物が搾られて作られたものなどの新鮮感のある果実飲料が提供されるか、少なくとも既製品のジュースが提供されることはないという認識を与えるものと考えられます。したがって、「フレッシュジュース」と称して既製品の缶入りジュースを提供することは、景品表示法違反(優良誤認表示)に該当する可能性が高いということになります。(消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」参照)

 そして、景品表示法に違反すると、内閣総理大臣による措置命令の対象になる(景表法第7条第1項)とともに、課徴金納付命令の対象となります(景表法第8条第1項)。消費者庁は、景品表示法違反の情報提供を呼びかけるフォームを公表しています(http://www.caa.go.jp/representation/disobey_form.html)ので、消費者である私としては、このフォームを使ってお店の行為を消費者庁に報告することで、お店の行為を是正できることになります。

 しかし、これだけでは、そのうちお店は商品名を改めるといった対応を取るかもしれませんが、私とお店の間のフレッシュベリージュースの売買契約をなかったことにはできません。
 私は、お店に対して、「私は、その場で絞って作るジュースが提供されると思ってフレッシュベリージュースを買ったので、契約をなかったことにしてお金を返してほしい」と主張することはできるのでしょうか?

 これは、民法上の錯誤(民法第95条)の問題になりますので、法律行為の要素に錯誤があった場合には、私は、「フレッシュベリージュースを売ってほしい」という意思表示の無効を主張することがき、契約をなかったことにできます。
 ここで問題となるのが、その場で絞って作るジュースが提供されると思っていたのに実際は缶入りジュースだったという勘違いが法律行為の要素の錯誤に当たるか否かです。
 この点については、特段類似判例もないのですが、私としては、要素の錯誤に当たり、意思表示の無効を主張できるだろうと考えます。
 なぜなら、要素の錯誤に当たるか否かは、「各法律行為において表意者が意思表示の内容部分となし、この点につき錯誤がなかったならば意思表示をしなかったであろうと考えられ、かつ、表示しないことが一般取引の通念に照らし妥当」と認められるか否か、により判断されるのですが(大判大正7年10月3日参照)、当該ジュースは、「フレッシュ」ベリージュースを標榜しているだけでなく、他のジュース類とは分けて健康メニューに記載されていたり、他の飲み物の倍くらいの値段を取っていたりしたため、一般的にお客さんがフレッシュベリージュースを注文するにあたっては、普通の既製品のジュースとは異なり、生の果実を使うといった付加価値が付いているものと認識し、それを当然の前提として売買契約を結ぼうとすると考えられるためです。
 ですので、今回の場合、その場で絞って作るジュースが提供されると思っていたのに実際は缶入りジュースだったという勘違いは、法律行為の要素の錯誤に当たり、フレッシュベリージュースの売買契約の無効を主張できるものと考えられます。

 誰しも日常生活の中でモヤっとした思いをすることがありますが、その裏には法律問題が隠れていることも多いです。
 もやもやする出来事があったときは、何か関係する法律がないかと探してみると意外な発見があって面白いので、ぜひお試しいただくことをおすすめいたします。