今月7日、株式会社レオパレス21は、同社が建築した複数のアパートについて、建築基準法違反の疑いがあると発表しました。遮音性の基準を満たさない部材や、仕様とは異なる防火構造の部材を使用していたとのことで、今回の建築基準法違反のアパートの中には、共同住宅の界壁(※各住戸の間を区切る壁のことです。)に求められる遮音性を充たさないものや、建物の防火性を充たさないものも確認されたとのことです。
(日経新聞 https://r.nikkei.com/article/DGXMZO41020290X00C19A2000000

 

建物は人の生活の拠点であるのみならず、人の生命・身体を守るためのものですので、建築基準法違反になることを知りながらあえて建物を建てたということであれば、これは決して許されない行為でしょう。
今回の建築基準法違反は、アパートを建築する際に注文主(レオパレス)の指示のもとに行われたのか、または請負人(施工業者)によるものなのか等は調査中とのことで、続報を待ちたいと思います。

 

ここでは、仮に請負人側が違法な施工をした結果、瑕疵のある建物が建築されてしまった場合の法的処理を検討したいと思います(注文主が請負人に違法な指示をしていたということであれば、関係者への補償をどうするかという点が問題になります)。
瑕疵のある建物が建築されてしまったとすると、注文主としては建物の建替え、もしくは建替費用相当額の損害賠償の請求、または契約を解除して他の業者による再建築を要求したいところです。はたしてこのような要求をすることができるのでしょうか?

 

1 民法の請負契約解除に関する規定の修正

 

一般に請負契約は、請負の目的物に「契約の目的を達成できないような瑕疵」がある場合には契約解除ができるとされていますが(民法第635条本文)、建物の請負契約の場合については、例外的に契約の解除は制限されています(同条但書)。
これは建物のような代金が高額になる請負契約の場合にも解除を認めてしまうと、請負人に莫大な損害を被らせてしまうおそれがあるという価値判断があるためです。

 

しかしこのような民法の規定はありますが、実務上は、建築請負契約を締結するにあたり、「契約の目的を達成できないような瑕疵」(以下「重大な瑕疵」といいます。)がある場合には、注文主は解除又は損害賠償請求ができる旨規定して、民法を修正することが多いです。このような規定は、中央建設業審議会や建設業界の業界団体が作成しているモデル契約書(建設工事標準請負契約約款)にも定められています。
ただし、契約の解除等ができる重大な瑕疵をどのように考えるかは難しい問題です。

 

2 建築請負契約「全体」の解除は難しい

 

建築請負契約の解除に関する判例(最判昭56217日・判タ43891頁)では、「工事内容が可分であり、当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、特段の事情のないかぎり、既施工部分について解除することはできず、未施工部分についての一部解除ができるにすぎない」としたものがあります。
この判例からすると、完成した建物に瑕疵がある場合でも、可分であり、有価値であると認められる部分があれば、建物全体の解除はできず、可分かつ有価値の部分の解除はできないものと考えられます。

 

また、建替費用相当額の損害賠償が争われた事案で、「建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるために建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる」と判断した判例があります(最判平14924日・判時180177頁)。
ただし、この事案で問題となった建物は、①その全体にわたって極めて多数の欠陥箇所があること、②主要な構造部分について本件建物の安全性及び耐久性に重大な影響を及ぼす欠陥があること、③根本的な欠陥を除去するためには、土台を取り除いて基礎を解体し、全体をやり直す必要があること等の建て替えざるを得ないような事情があったため、建替費用相当額の損害賠償が認められています。

 

なお、建物の瑕疵の重要性について、実務上、建物の基礎部分、躯体部分などの瑕疵は建物の安全性や耐用性と直接かかわることとなるので重要なものといえますが、材質・寸法の相違、内装関係の瑕疵、美観にかかわる瑕疵等は重要なものではないと考えられています(田中峯子編「建築関係紛争の法律相談(改訂版)」299頁)。

 

3 まとめ

 

これらの判例等の傾向をまとめますと、請負人側が違法な施工をした結果、瑕疵のある建物が建築されてしまった場合において、建物全体の解除(または建替費用相当額の損害賠償)が認められるには、安全性及び耐久性に重大な影響を及ぼすような重大な瑕疵であって、かつ、可分かつ有価値の部分がないことが必要であると考えられます(ただし、可分かつ有価値の部分がある場合でも、その部分を除いた損害賠償請求は可能)。

 

今回のレオパレスの事件に戻りますと、

①請負人(施工業者)の施工に問題があったのであれば、注文主(レオパレス)としては請負人に対して、防火性を充たさない瑕疵等の重大な瑕疵のある物件については、(可分な部分がないのであれば)建替え又は建替費用相当額の損害賠償を請求し、遮音性を充たさない瑕疵等の軽度の瑕疵のある物件については、その瑕疵の修補ないし部分的な損害賠償請求を行うことになるでしょう。
②反対に、注文主(レオパレス)が請負人に違法な指示をしていたのであれば、当然解除等はできず、それよりも関係者(今回のオーナーや入居者)への補償をどうするかという点が問題になります。一説によると、今回の建築基準法違反は、基本的な部分に関する違反であり、請負人が施工段階で気付かなかったということは考えにくいのではないかということです。もし請負人としても建築基準法違反を黙認しながら施工していたということであれば、共同不法行為等の責任があるとして、請負人としても注文主と一緒に関係者への補償を考える必要があるでしょう。

 

今回の事件はまだ調査中ということで、今後さらに建築基準法違反のアパートが見つかるかもしれませんが、多くの入居者が退去を求められる異常な事態が生じており(しかも引越繁忙期の3月までに)、建築基準法違反の責任はもちろん、今後関係者に対する補償をどのように行っていくのかについても会社の責任が問われることになるでしょう。