先月、メールマガジンをお送りした際には、1BTC=100万円で推移している状況でしたが、その後、一時は、1BTC=140万円を超え、その後も、1BTC=120130万円あたりで上下していましたが、現在(2019/7/22)は、下落して、1BTC=114万円ほどで推移しています。

 

さて、前回もピックアップしたFacebookが提唱する新しい仮想通貨「Libra」ですが、各国の規制当局からは、多くの懸念が示されているようです。

 

米国議会では、Libraに関する公聴会が実施され、信用できない、等々、厳しい批判の声もありました。これに対し、Facebook側は、規制上の懸念に完全に対処し、適切な承認を得るまで、FacebookLibraを提供しないと証言しています(「 And I want to be clear: Facebook will not offer the Libra digital currency until we have fully addressed regulatory concerns and received appropriate approvals. - 米国上院で証言をしたDavid Marcus氏の証言原稿。https://www.banking.senate.gov/imo/media/doc/Marcus%20Testimony%207-16-19.pdf。 Facebookは、過去に個人情報の流出事件を起こしており、議員に対し、その印象が拭えていない面もあるようです。

 

また、G77か国財務大臣・中央銀行総裁会議)では、Libraを名指しして、次のような議長総括が示されています(財務省ウェブサイト・「議長総括:7か国財務大臣・中央銀行総裁会議(仮訳)(2019717日~18日 於:フランス・シャンティイ)」。https://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g7/cy2019/g7_20190718.htm)。

 

「ステーブルコイン及びその他の様々な金融商品  

 大臣・総裁は、金融セクターにおける技術革新は大きな便益をもたらしうるが、それらはまたリスクも伴うものであることを認識した。大臣・総裁は、リブラのようにグローバルで潜在的にシステミックな足跡を伴う取組を含め、ステーブルコイン及びその他の現在開発されている様々な金融商品は、深刻な規制上ないしシステミックな懸念とともに、幅広い政策上の課題を引き起こすことに合意した。これらの懸念や課題はいずれも、こうした取組が実施される前に対処される必要がある。  

 規制上の懸念に関し、大臣・総裁は、今後実現する可能性のあるステーブルコインのイニシアティブ及びその運用者が、金融システムの安定や消費者保護を脅かすことのないよう、いかなる場合においても、特にマネーロンダリング及びテロ資金供与対策をはじめとする最高水準の金融規制を満たす必要があることに合意した。規制上生じうるギャップについても、対処される必要がある。  

 システミックな懸念に関し、大臣・総裁は、リブラのような取組が通貨主権や国際通貨システムの機能にも影響しうることに合意した。 大臣・総裁はしかし、こうした取組が、国境を超える決済システムが顕著に改善され、消費者にとってより安価になる必要があることを示していることでも合意した。 」

 

要するに、金融システムの安定、消費者保護、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策などの観点から、事前規制の必要性があると考えているようです。総論的なところは、あまり害がないことを言っているようにみえます。

 

ただ、少しうがった見方をすると、少し、過剰な規制をしようとしているのではないか、といった疑いも生じます。具体的には、Libraの現在の参加メンバーには、大手の銀行は含まれておらず(https://libra.org/en-US/association/?noredirect=en-US#founding_members)、Libraとしても、銀行口座を持っていない方々をターゲットとしている(つまり、銀行を介さずに直接仮想通貨の流通ができるようにする)ことから、Libraが普及すれば、銀行は徐々に蚊帳の外に置かれることになる可能性があります。言い換えれば、Libraは、明確に、銀行の敵になりうる存在と考えられます(ビットコインも、使われ方によっては、銀行の敵となりえますが、現状では、決済手段というよりも、投資・投機の手段が主な使われ方となっており、銀行も、Libraほど、危機感をもってはいなかったのではないでしょうか。)。また、Libraは、参画メンバーが豪華であり(VISAMastercardPayPaleBayUbervodafone等々)、影響力も大きいと予想されます。そうすると、あくまで個人的な見解ですが、銀行側としては、あまり、面白い話ではない(規制したい)のではないかと考えられます。

 

特に、G7作業グループの「ステーブルコインに関するG7作業グループ議長によるアップデート」では、次のような言及がされています(財務省ウェブサイト・「ステーブルコインに関するG7作業グループ議長によるアップデート (仮訳)」。https://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g7/cy2019/g7_20190719.htm)。なお、以下にいう「ステーブルコイン」の定義には、「複数の資産で構成されるバスケットに「コイン」を結び付けることで、価格変動を抑制することを企図している」ものが含まれているため、Libraが含まれます。

 

「第一に、ステーブルコインの取り組みは、最も高い水準の規制を満たし、当局の慎重な監督やオーバーサイトに服することで、社会的信認を得ることが求められる。」

 

「第二に、ステーブルコインの取り組みは、全ての関連法域において、確かな法的基盤を示し、全ての関係者および利用者に対して十分な保護と保証を確保することが求められる。少なくとも、ステーブルコインの発行者には、コイン保有者に対して履行を約束している事項の性質や、当該資産を保有することに伴うリスクを、明確に説明することが求められる。 」

 

「最も高い水準の規制」ということを言われてしまうと、かなり、構えてしまいます。特に、コイン「保有者」に対してリスク等々を説明せよ、というのは、(発行者から直接購入をする人など、一部の人に対しては可能かもしれませんが)少々無理な部分もあるのではないでしょうか。

 

この点、Libraを含めた仮想通貨は転々流通します。個人から個人への移転も可能です。そういった個人から個人への移転の際に、全てのLibra受領者に「説明」をすることは、難しい印象を受けます。日本円でも、日本銀行が、日本円を受け取った人全てに対し、「日本円とはなんぞや」という説明はしていませんし、説明することもできません。貴金属でも、株式(特に、未公開株)でも同様です。

 

なお、細かな話になりますが、Libraに限って言えば、(詳細な技術的仕様は分かりませんが)例えば、Facebook率いるLibra陣営が、Libra専用のウォレット(仮想通貨の送受信に使う、いわば、財布に相当するソフトウェア)でなければLibraを送受信できない、という仕組みを採用し、ウォレット起動時などに、「説明」文書と同意ボタンを設置することで、ある程度の「説明」対応は可能かもしれません。しかし、Libra陣営以外の第三者がウォレット開発・提供する可能性は否定できず、そういった場合に、Libra陣営のコントロール外にあるLibra保有者に対して、「説明」をすることは困難と思われます。また、例えば、相続によってLibraを取得した場合、Facebookとしては、そういった相続による包括承継は知りようがありませんので、相続人=新たな保有者に対して「説明」をすることは困難です。そもそも、規制を作るとした場合、Libraのみを対象とすることはできず、広く、ステーブルコインに対する規制を作ることになるのではないかと予想されますが、既に公開・使用されているステーブルコインは、いまさら仕様を大きく変えることも難しく、そういったコインは、後からできた「説明」などの規制に対応できない可能性も考えられます。

 

以上のように、Libraに関しては、世界的に規制の動きがあり、また、(個人的には)過剰な規制を受けそうなリスクがあるように思われます。もちろん、消費者保護やマネーロンダリング防止が重要であり、必要な範囲で一定の規制を加える必要性があることは否定しませんが、だからといって、サービスそのものを否定してしまうような過剰な規制をするのは行き過ぎです。

 

今回の機会に、(過剰ではない)適切な規制枠組みを作りがされることを期待します。

 

ちなみに、G7の作業部会は、IMF世銀年次総会(2019年は、1018日~20日予定)までに最終報告を出すことが期待されている、とのことでしたので、その頃までには、一定の規制の方向性が明らかになるのかもしれません。