学校現場でのいじめや虐待に対応するため、文部科学省は、「スクールロイヤー」と呼ばれる専門の弁護士を全国に約300人配置する方針を固めたということです。

各地の教育事務所などに拠点を置き、市町村の教育委員会からの相談をスクールロイヤーが受けるというもので、来年度からのスタートを目指して準備を進めるとのことです。
(日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50112680T20C19A9CR8000/

 

学校現場では、生徒間のいじめや教師からの体罰、保護者からのクレーム対応等、様々な問題が生じており、法的アドバイスが求められることは少なくないでしょう。

文科省の説明によれば、このスクールロイヤーによって、いじめ問題の対処に関する助言やその予防教育等を主に想定しているようです。

 

ただ難しいと思うのは、いじめが暴力に及んだり、金品を要求したりするなど明らかに犯罪と言えるような場合であれば、弁護士としては「これは刑法上の○○罪に該当し得るので、直ちに止めさせてください」と明確に言えるのですが、犯罪とはいえないようないじめの場合には、弁護士として法的なアドバイスを行うのは困難です。むしろいじめが犯罪とはいえない場合のほうが多いのではないでしょうか。

 

例えば、特定の生徒を他の生徒が無視する行為は、いじめの代表格といえますが、これは犯罪とはいえません。しかし、無視のターゲットにされた生徒は、場合によっては暴力を受けるよりも辛い立場に置かれるかもしれません。

このような行為を止めさせるには、卑怯な行為は止めるべきだ、ということを教える必要があり、これは法律論ではなく道徳論ですので、弁護士が法律専門家としてどうこう言えるものではありません。

 

気をつけなければならないのは、今回は文科省が主体となって「スクールロイヤー」を設置し、主に教育委員会からの相談を受けるという点であり、弁護士は文科省や教育委員会を「お客様」扱いし過ぎるべきではないと思います。

というのも、ケースによっては、弁護士は行政側を批判する立場にもなるべきで、例えば、千葉県野田市の教育委員会では、虐待を受けていた女児が父親からの虐待を訴えた内容が記載された学校アンケートの回答コピーを、父親本人に渡してしまったということがありました。

司法書士は法務省(法務局)、行政書士は総務省が監督官庁になっていますが、弁護士は他の士業とは異なり、場合によっては行政を糾弾する(訴える)立場になりますので、文科省等の行政側から「スクールロイヤー」としての報酬を受け取るとしても、公共的かつ客観的な立場を忘れてはならず、ましてや事件の隠蔽やもみ消しに加担するようなことがあってはなりません。子供(生徒)の生命身体が最も優先されるべきであり、これに反するようなことを行政側が行うのであれば、明確にNOと言わなければなりません。

 

また、現在の構想では、市町村の教育委員会からの相談をスクールロイヤーが受けるというものですが、現場レベルから教育委員会まで上がってくるような問題の多くは、かなり深刻化してしまったものになるのではないでしょうか。

しかし予防法務という観点が重要で、例えば、保護者からのクレーム対応などでは、弁護士から早い段階で法的アドバイスがあると、教師としては心強いと思いますし、後々問題が深刻化しないで済む可能性もあると思います。

 

そのため、深刻な事態にならないように、早くから教師と弁護士とで現場レベルで連携できるように、教師も弁護士に相談しやすい場を作っていけるのであれば、スクールロイヤーがうまく機能するのではないでしょうか。

今回のスクールロイヤー制度が、生徒も、教師も(教育委員会も)泣き寝入りしないような制度になれば良いと思います。今後の動向に注目したいと思います。