弊事務所では、破産者の管財人に就任して、残っている破産者の財産を集め、債権者に配るという、いわゆる破産管財事件の取り扱いがあるのですが、最近は、労働者の給料を支払わないまま破産してしまった会社の破産管財事件を、多く取り扱っています。

 

 会社にしろ個人にしろ、誰かが破産するという場合、支払わなければならないお金(債務)よりも、持っている財産がかなり少ない状態であることがほとんどです。そのため、たとえ破産者に対してお金を支払ってもらう権利を持っていたとしても、全額を支払ってもらうことは非常に難しいのです。

 これは、労働者の給料についても同じで、破産会社に十分な財産がない以上は、給料を支払ってもらう権利があったとしても、実際には少額しか支払いを受けられないのが原則です。ただし、破産直前まで在籍していた労働者の給料については、例外的に、法律で一定の保護がされており、未払額の8割までを税金で補填してもらえる立替払制度が存在します。

 

 労働者がこの立替払制度を利用するためには、会社の破産管財人から、未払の給料がいくらなのかを計算した証明書を発行してもらう必要があります。そのため、弊事務所でも、破産管財事件の中でこの証明書の発行をしているのですが、これが意外にもかなり大変なのです。

 

 そもそも、未払の給料がいくらなのかを計算するには、「①その人がいくらの給料を受け取るべきなのか?」と「②すでに支払われた金額はいくらか?」について、資料を揃える必要があります。

 ですが、破産する会社は、最後の方はてんやわんやの状態になっていることが多く、労働時間の管理や、給与明細・賃金台帳の作成がきちんとされていないことが多いです。また、かろうじて賃金台帳がある場合も、少しでもコストを下げようと、実際に支払っている金額よりも少ない金額を賃金台帳に書いていたり、残業代を給料計算に含めていなかったりします。

こうなってくると、「①その人がいくらの給料を受け取るべきなのか?」が、管財人の手持ち資料からは分からないので、社長や総務・経理の担当者、労働者本人などから、電話や手紙で聞き取りをして、それを報告書にまとめる作業が必要になってきます。

 

 「②すでに支払われた金額はいくらか?」を確定するのは更に大変です。

毎月遅れなく1人1人に振り込みをしていたり、各労働者への支払金額をきちんと帳簿に付けていたりする会社であれば全く問題ありませんが、大抵はそうではありません。そもそも現金払いだったり、総合給与振込の形が取られているため振込合計額しか分からず、支払いの内訳(誰にいくら支払われたのか)が分からなかったり、未払いが長年続いていて、一体いつの分の給料が支払われているのかが分からなかったりします。

 この場合も、結局は、社長や経理の担当者、労働者1人1人等から聞き取りをして、誰に、いつの分を、いつ、いくら支払ったのか、確定して報告書にまとめなければならなくなります。

 

 このような作業をしていると、平気で証明書の発行までに1ヶ月以上かかったりするので、この作業だけでもかなりの負担感なのですが、地味に一番辛いのが、「とにかく早く証明書を発行してくれ」という労働者からのプレッシャーです。

 証明書が発行されなければ労働者は立替払を受けられないので、当然といえば当然なのですが、労働者は、取引先や借入先と比べて、「会社が破産しても給料が支払われるのは当然である(それなのに支払いが遅れている)」という意識が強いことが多く、また、給料が生活の原資にもなっているので、それらが合わさって、証明書の発行に時間がかかることについて、怒りの感情を持ちやすいのです。労働者の人数が数十人になってくると、証明書の発行についての問い合わせが連日入るような状態になるので、これへの対応も、管財人の重要な(そして大変な)仕事になってきます。

 

 今回は、破産管財事件の裏話をお伝えしました。

 多くの方には直接関係のない話かもしれませんが、コーヒーブレイク的にお読みいただければ幸いです。