adtDSC_6205厚生労働省によると、73日時点において、新型コロナウイルスの影響で、勤め先から解雇や雇い止めにあった人が見込みも含めて全国で3万人(うち非正規労働者は約1万人)を超えたとのことです。
(厚生労働省:「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(73日現在集計分)」https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000646779.pdf

 

新型コロナウイルスは多くの業界に影響していますが、今回は、新型コロナウイルスを理由として、正社員(期間の定めのない労働契約を締結している労働者)の解雇はできるのか?という点を検討したいと思います。

 

そもそも解雇とは、労働者との間に締結された労働契約を会社が一方的に解除することをいいますが、解雇と言っても、普通解雇(社員の勤務態度、仕事の能力などを理由に行われる解雇)、懲戒解雇(重大な違反行為をした場合の解雇)、整理解雇(会社の経営難を理由とした解雇)などがあります。
新型コロナウイルスを理由とした解雇は、会社の経営難を理由とした解雇ということになると思いますので、整理解雇に位置づけられるでしょう。

 

労働契約法では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(第16条)と定められていますが、特に普通解雇と整理解雇などを区別しているわけではなく、また「合理的な理由」や「社会通念上相当」かどうかは解釈に委ねられています。
実務上、整理解雇の合理性・相当性については、以下の4つの要素によって判断されるとされています。ただし近年では、「退職条件」(割増退職金の支払い、就職先のあっせん等)の有無・程度も考慮要素にしている裁判例もあります。

 

①人員削減の必要性

②解雇回避努力

③人選の合理性

④手続の相当性

 

この中の解雇回避努力(②)について、解雇をすると従業員の生活の糧を奪うことになるので、いわば最終手段的なものであり、会社としては解雇を避けようと努力したけど結局駄目でした、という事実が重要になります。
一般的には、整理解雇をする前に、経費削減、時間外労働の中止、新規採用の中止、賞与の支給停止、休業、非正規労働者の労働契約の解消、希望退職者の募集などを行い、それでも会社の経営状況から考えて整理解雇をせざるを得ないといえる場合には、この解雇回避努力(②)を充たしていると評価されます。

 

また、今回、新型コロナウイルスに対する各種救済制度があるので、解雇回避努力(②)を充たしているといえるためには、これらの利用を検討する必要もあるでしょう。
ただし会社の経営状況によっては、上記の経費削減等の策をとっている暇がない場合もあるので(人員削減の必要性(①)の程度が高度な場合)、まずはこの救済制度が利用できないかを検討することもあり得ると思います。

 

この救済制度ですが、例えば、厚生労働省の雇用調整助成金、経済産業省の持続化給付金(中小企業向けの給付金)、各金融機関による事業者の元金弁済期の猶予(リスケジュール)等の支援、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付、各自治体による支援制度(融資のあっせん、利息負担の軽減等)などがあります。

 

上記の雇用調整助成金は、労働者を休業させた場合に支払う休業手当の一部を助成する制度ですが、いち早く大手航空会社のANA(全日本空輸)は客室乗務員の休業を行い、この雇用調整助成金の申請をしたことがニュースになりました。
雇用調整助成金は、今回の新型コロナウイルス騒動の前からあった制度であり(今回、助成率や上限額が引き上げられました。)、2008年のリーマン・ショックの時にも多くの会社が利用して、雇用維持につながったという事実がありますので、今回も大いに活躍することが予想されます。

 

その他に、上記要素(①、③及び④)の有無・程度も重要になってきますので、「新型コロナウイルスを理由とした(整理)解雇はできるのか?」という問いは、簡単に答えが出るものではなく、諸事情を総合的に検討する必要があります。

 

新型コロナウイルスによって各業界が大きな打撃を受けており、今後整理解雇が増えていくおそれがありますが(最初の段階は退職勧奨や希望退職者の募集が増えるおそれ)、労使双方が休業や各種制度の利用について協議・検討できれば、解雇にまで至らないケースもあると思いますので、労使が一緒になって今回のコロナ禍を切り抜けるための方策を模索できればと思います。