今回は、先日たまたま有料の判例検索サイトを見ていたら面白い判例(東京地方裁判所令和2年4月7日判決)を見つけましたので紹介させていただきます。
事案は、ある土地区画整理組合の施行地区内の地権者(組合員)が、従前地の立木を除却されたことと、従前地も仮換地も使用できなかったことを理由に、土地区画整理組合に損失補償金の一部の支払いを求める裁判を提起したというものです。
これに対して、裁判所は、この組合員の訴えを不適法として却下しました。
その理由は、
「損失の補償については、施行者と損失を受けた者とが協議しなければならず(法78条3項、101条4項、73条2項)、上記協議が成立しない場合には、施行者又は損失を受けた者は、収用委員会に土地収用法94条2項の規定による裁決を申請することができるとされており(法78条3項、101条4項、73条3項)、さらに、収用委員会がした損失補償の裁決に不服がある者は、裁決書の正本の送達を受けた日から60日以内に訴えを提起しなければならないとされ(土地収用法94条9項)、上記訴えについては、施行者がこれを提起した場合には損失を受けた者を、損失を受けた者がこれを提起した場合には施行者をそれぞれ被告とすることとされている(同法133条3項)。
このように、法には、憲法29条3項の趣旨に基づく特別の規定が設けられている以上、法78条1項及び101条1項の損失補償の請求は、専ら上記規定所定の手続によってすべきであって、施行者と損失を受けた者との協議及び収用委員会の裁決を経ることなく直ちに施工者に対して補償を求める訴えは不適法というべきである(最高裁昭和60年(行ツ)第193号同62年9月22日第三小法廷判決・集民151号685頁参照)。」
というものです。
実は判決の他の部分を読むと、この組合員は東京都収用委員会に、法78条3項、101条4項、73条3項所定の裁決の申請もしていて、その結論が出る前に、裁判所にも損失補償金の一部支払いを求める裁判を提起したようです。
なぜそのようなことになったのか?もしかしたら東京都収用委員会の手続がなかなか進まないので、もしくは自分の思うようにうまく進まないので、裁判を起こしたのかな?などと推測しますが、いずれにしても、施行者との任意交渉と収用委員会の裁決を経た後でなければ裁判所は利用できないというところは覚えていても損はないでしょう。
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