弁護士飛田博が日々の時事ニュースの中から気になった法律・裁判の話題を取り上げ、解説・コメント・感想を述べます。

(日経新聞2022年2月22日朝刊社会面)
福岡「違憲状態」6件目 衆院選1票の格差
広島は「合憲」 高裁判決

-(抜粋)-
「1票の格差」が最大2.08倍だった昨年10月の衆院選は憲法が求める投票価値の平等に反するとして、弁護士グループが選挙の無効を求めた訴訟の判決が21日に2件あり、広島高裁は合憲、福岡高裁は違憲状態との判断を示した。いずれも無効請求は棄却した」

「福岡高裁は、格差が2倍以上の選挙区が全国に29あったことなどから「憲法の要求に反する状態だ」と指摘。その上で、最大格差が2倍を超える見込みだと判明したのが投票日の約4か月前で「国会が選挙までに是正することは事実上不可能だった」と述べた。

(飛田コメント)
この種の訴訟の原告をしてくださっている弁護士グループの先生方は、社会正義のために手弁当で活動してくださっていて、本当に頭が下がる思いです。感謝申し上げます。

「1票の格差」の問題は、例えば、A選挙区は選挙人(選挙権を有する人のこと。)の数が10万人で1人の議員を選出、B選挙区では選挙人の数が20万人で1人の議員を選出することになっている場合、B選挙区の選挙人の投票の価値はA選挙区の選挙人の1/2しかないという問題です。

仮に、過疎が進む地方にA選挙区のような選挙区が多く、人口の流入が進む都市部にB選挙区のような選挙区が多いとすれば、地方の方が(人口に比して)多くの議員を国会に送り込むことができて、国会が地方の利益を重視しがちになり、国民全体の意思が適正に国会に反映されているといえるのか疑問が出てきます。

ところで、議員の配分をできる限り人口比で決めて、可能な限り1票の格差が生じないようにすべきということについて、反対の人はあまりいないのではないでしょうか。Aという地方の人々の意見はBという地方の人々の意見より国政に反映されるべきだなどといえば、それこそ炎上するように思います。

では何故、この問題が解決しないのか、という点ですが、よく言われるように、定数を減らされる選挙区の議員や政党が反対するから、ということはもちろんあるのでしょう。しかし、それだけではなく、人口流出入の把握に時間がかかったり、定数是正の審議に時間がかかったりする点も大きいのではないでしょうか。

で、私が思うのは、テクノロジーを使ってこの問題を解決できないか?ということです。
例えば、(日弁連からは怒られるでしょうが)マイナンバーを使って選挙人数の変化を迅速に把握できるようにするとともに、あらかじめ、1票の格差が出来るだけ発生しないように選挙区設定や議員配分ができるプログラムを作っておき、選挙前の一定の日の選挙人の状況を前提に、選挙区・議員配分を微調整して選挙を行うということはできないでしょうか。
そうすれば、一票の格差が発生しているかの把握に時間がかかるとか、是正のための国会審議に時間がかかるなどの問題を一挙に解決できるように思うのです。

ただ、いつも2倍にならないようにとかギリギリの線で是正しているから問題が発生しているわけですので、一度、限りなく平等になるよう抜本的に変えてみれば、テクノロジーとかプログラムとかいわなくても、何十年かはこの問題は発生しなくなるのでしょうね。

いずれにしても、「(議員配分の)人口比例の原則」や「1人1票の原則」が正しい以上、テクノロジーにより、選挙人の動態把握と議員配分の技術的な問題がクリアーされれば、いずれこの問題はなくなっていくと予想するのですが、いかがでしょうか?


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