カテゴリ: 労働法務


今日(2014年11月13日)の日経新聞朝刊2頁に、「与党、派遣法改正を断念」という見出して、与党が、今国会における派遣法の改正を見送ることにしたことが報道されています。

政府・与党は12日、安倍晋三首相が来週にも衆議院解散に踏み切ることを想定し、今国会の法案の扱いを詰め始めた。民主党などが反対する労働者派遣法改正案の成立は見送る。


ということです。
もともと派遣法の改正案については、民主党・共産党が非正規雇用者が増えるとして反対していて、11月30日の会期末までに成立するか不安視されていましたが、ここにきて、衆議院が解散される見込みとなったので(まだ安倍首相が解散を表明したわけではないのですが・・・)、廃案となることがほぼ確定したということなのでしょう。

私としては、(個人的な事情で恐縮ですが)今月末に派遣法改正についてセミナーをすることになっていたので、どうするの?という感じであります。

私は、中小のIT企業のクライアントが多いので、今国会で審議される予定の労働者派遣法の改正案についてとても注目しています。
というのは、これまでは、IT技術者の派遣は、特定労働者派遣事業として、届出制のもとで行うことができましたが、改正後は、一般労働者派遣事業として、許可を取得しなければならなくなり、しかもその許可の条件が中小のIT企業にとっては簡単にクリアーできるものではなく、(良いか悪いかは別にして)業界に与える影響かかなり大きいと考えられるためです(詳しくは過去記事をご参照ください。)。

で、この労働者派遣法の改正案は、今年の3月の通常国会で審議されましたが、なんと厚生労働省の担当者が、罰則規定について「1年以下の懲役」と書くべきところを、「1年以上の懲役」と間違って記載してしまったため、野党から「国会軽視」という反発があり、修正ではだめで、新らたに提出しなおすべし、として廃案になってしまいました。(過去記事をご参照ください。)

内閣(厚生労働者)としては、捲土重来を期すということで、今国会で派遣法の改正を成立を目指しているのですが、ここにきて、小渕大臣と松島大臣が辞任したことが障害となっているようです。以下、昨日の日経新聞朝刊4頁の記事から抜粋です。

野党各党は21日、小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相の閣僚辞任を受け、国会で攻勢を強めた。閣僚交代を理由に衆院本会議での法案審議に反対し、そのあおりで労働者派遣法改正案の審議入
りは28日に先送りになった。

 野党が共闘姿勢を強めた背景には、それぞれの思惑がある。民主党は派遣法改正案を廃案に追い込みたい考え。同法案は派遣社員の受け入れ期間を事実上撤廃する内容で、民主党の最大の支持団体である連合が「非正規雇用者を増やす恐れがある」と反対している。
 与党が3日を想定していた同法案の審議入りは「玉突き」で28日となり、首相が国際会議への出席で日本を離れる11月中旬前に参院で審議入りする日程は微妙となった。民主国対幹部は「与党が強行採決しない限り今国会での成立はできなくなった」と笑顔をみせた。

ん~ん。私は、労働者派遣法の改正案に賛成というわけではないのですが、あまり本質的でないことを理由に法案を廃案にするのはいかがなものかと・・・


ちょっと前(2014年10月3日)の日本経済新聞朝刊1面の記事ですが、厚生労働省が、企業に対して社員の有給休暇の消化を義務付けることを2015年1月招集の通常国会に提出する労働基準法改正案に盛り込む検討に入ったようです。このような法改正の背景として、この記事は次のように説明しています。

働かなくても賃金を受け取れる有給休暇は、6年半以上働けば年20日分もらえるようになる。現在は原則として社員が企業に申し出る必要がある。企業には社員に有給をとらせる義務はなく、日本の有給取得率は47%にとどまる。
〔中略〕
厚生省調査では働く人の66%が職場への配慮から有給取得をためらっている。企業が事実上の有給消化義務を負う欧州諸国では有給取得率が100%近い。20年に70%とする政府目標達成には法改正が必要と判断した。


法律で義務化しないと、有給の取得を会社に言い出せないのが日本人の悲しい性なのかもしれませんね(涙)。
(ただ、「企業が事実上の有給消化義務を負う欧州諸国」とあるので、実はヨーロッパでも状況は同じだったのかな?)

昨日(2014年8月18日)の日経新聞朝刊1面の記事に、伊藤忠商事、三井物産、富士フィルム、ダイキン工業、日本精工、タカラトミーらの大手企業が、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入を検討を始めた旨の記事が出ていました。

ホワイトカラー・エクゼンプションは、事務職などのホワイトカラーの労働者を対象に、1日8時間、週40時間の労働時間を外す制度で、労働時間を基準に労働者を評価するのではなく、成果に応じて評価しようとすることを目的としています。

現在の制度は、かつて工場労働者が主流だったころに制度設計されたもので、現在のホワイトカラーの労働者のうち、専門職等の成果を出すことが求められる人々の制度としては適当なものではなくなっています。
そのため、何年も前から、このホワイトカラー・エクゼンプションの導入が検討されてきましたが、このブログでも何度か取り上げているとおり、これまで政府が導入しようとするたびごとに、「残業代ゼロ法案」などと批判され、結局導入が見送られてきました。
そのため、現在、政府は、年収1000万円以上の高度な専門職のみを対象として、この制度を導入することで、法案化を検討しています。
(ちなみに、私の基本的立場は、ホワイトカラー・エクゼンプション導入に「賛成」です。弁護士をしていると、時間をかけても良い成果がでない人と、時間をかけないでも良い成果を出す人がいて、その場合、今の制度だと前者の方が評価させるというおかしな結果が出てしまいます。)。

記事によると、政府は、2015年の通常国会で労働基準法の改正案を提出し、16年春の施行を目指しているとのことですが、具体的に会社で導入するには、労働組合との協議などに時間がかかるため、これら企業は、国の制度設計の完成を待たずに検討を始めているとのことです。

今度こそ、本当に導入されそうですね。

更新が遅れてしまい大変恐縮ですが、このブログでも取り上げさせていただいた(政府から国会に提案され、今国会で審議されていた)労働者派遣法の改正案が、6月20日に廃案となることが決定いたしました。

その理由は、罰則規定について「1年以下の懲役」と書くべきところを、「1年以上の懲役」と間違って記載してしまったため、野党から「国会軽視」という反発があり、修正ではだめで、新らたに提出しなおすべき、ということです。(同時に、有期雇用の上限を5年から10年に延ばす有期雇用労働者特別措置法も継続審議となりました。)

政府は、今回廃案になった労働者派遣法の改正案を次期国会に再度提出する方針とのことですが、2015年4月としていた施行日を先延ばしする可能性があるとのことです。

労働者派遣法の改正案の内容については色々議論があるところなのですが、ただ明確な誤記を理由に廃案にしてしまうのもいかがなものか、という感想を持ちました。

少し前の記事ですが、6月11日の新聞各紙に、今月末にまとめられる政府の成長戦略に、年収1000万円以上、専門職に限定、という制限をつけたうえで、労働時間規制の適用を外し、働いた時間ではなく成果に応じた給与を支給するホワイトカラー・エクゼンプションとう制度の導入を盛り込むことが決められたことが報道されていました。

我々のような職業(弁護士業)は、いくら時間をかけても良い成果(たとえば、訴状や準備書面等の書面)ができるとは限らないし、逆に時間をかけなくても良い成果が出ることがあり、時間で給与額を決めるという考えにはなじみにくいので、このホワイトカラー・エクゼンプションの考え方というのはとてもよくわかるのですが、なぜかこの制度は、わが国では非常に評判が悪く、導入しようとすると、「残業ゼロ法案」などとマスコミなどから批判を受けて、結局導入が見送られることになります。
最近では、経済特区にホワイトカラー・エクゼンプションを導入しようとして、結局、導入されませんでした。

はたして、今回は導入されますでしょうか?
具体的な制度設計は、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会に委ねられるということですので、まだまだハードルがあり、導入されるとしても、いろいろな制約がくっつくのかもしれませんね。

実は、この度、縁あって、NPO法人日本情報技術取引所(JIET:ジェット)の顧問弁護士に就任いたしました。 JIETは、会員のIT会社(システムの開発会社)が、ソフトウェア開発の案件と人材の流通を図り、技術者と仕事のマッチングをするため、ビジネスマッチングサイト運営、交流会、商談会などの開催等の活動をしているNPO法人です。会員は、なんと全国に約700社もいるのですよ。

というわけで、これまでも弊事務所は、IT会社からの相談が多かったわけですが、今後ますます増えることが予想されますので、これまで以上にIT会社の法務に精通する所存です。
で、今回は、現在、IT業界で問題となっている『労働者派遣法の改正』について簡単に説明させていただきます。

ちょっと意外に思うかもしれませんが、IT会社(システムの開発会社)では、かなり多くの会社が派遣元会社になって、他の企業にIT技術者を派遣しています。これは、自社で開発等をしたシステムの管理のために、一般の事業会社にIT技術者を派遣している場合もありますし、(IT業界は、恒常的な人手不足の状態にありますので)大手IT企業が大きな案件を受注した場合などに、中小のIT会社から、大手のIT会社にIT技術者が派遣されるということもあります。

で、これまでの労働者派遣法では、ソフト開発等も含まれる専門26業務とそれ以外に分け、専門26業務については、特定労働者派遣事業として届出をするだけで、しかも「原則1年・例外3年」という(一般労働者派遣事業に適用される)期間の制限なく、IT技術者の派遣を行うことができたのです。しかし、現在、まさに国会で審議されている改正案では、特定労働者派遣事業は廃止され、すべて派遣元に厚生労働大臣の許可が必要な一般派遣事業となり、一律に3年間という期間制限がかけられることになりました。

細かいところをいうと、①現行法の「原則1年・例外3年」という期間制限は、対象となる業務についての制限であるのに対し、改正案の3年という期間制限は、派遣される労働者についての制限であったり(したがって、派遣先企業にとっては、特定の業務について、人さえ変えれば、ずっと派遣業務にすることができるようになります。)、②改正案では、派遣労働者の保護のために、3年経過時に、派遣労働者の希望があれば、派遣先企業に直接その派遣労働者を雇うように申し入れたり、派遣元が派遣者派遣社員を無期限で雇用したり、次の派遣先を紹介したりと、雇用の安定を図るための措置を講じなければなりません(詳しい内容については厚生労働省のサイトをご覧ください。)。

ただ、IT会社にとって重要な点は、これまで届出さえすれば認められたIT技術者の派遣が、厚生労働大臣の許可が必要になったことです。そして、許可の条件として、現在の一般労働者派遣事業のように「純資産が2000万円以上あること」とか「事業資金として現金・預金が1500万円以上あること」が引き継がれる予定とのことです。そのため、そのような金銭面の許可条件を満たすことができない中小のIT会社にとっては、もはやIT技術者の派遣はできなくなるのでは?と言われているのです。

 このような労働者派遣法の改正については、いろいろと議論があるところですが、これまでのところ、業界内では、いずれ派遣事業は継続が難しくなるとして、派遣業務はやめて、自社での開発に特化しようとしている会社、一般派遣事業の許可を取るために財務基盤を強化しようとしている会社など色々と動きがあります。
ただ、改正時に、特定労働者派遣事業から一般労働者派遣事業に移行する要件を暫定的に緩める経過措置が盛り込まれるのではないか?等々の噂もありますので、業界の一般的な傾向としては、まだまだ様子見というところでしょうか。

いずれにしても、この労働者派遣法の改正については注視していく必要があります。順調に進めば、本国会で法案として成立し、平成27年4月1日から施行される予定です。

昨日(1月5日)の日経新聞の朝刊によると、厚生労働省が、「同一労働・同一賃金」の実現に向け、具体的に動き出したとのことです。記事を引用させていただくと、

「厚生労働省は雇用期間に限りのあるパート労働者も、正社員と同じ仕事をしている場合は、賃金などの待遇面を正社員と同等にするよう法改正する。これまでは無期雇用のパート労働者のみが正社員と同待遇だったが、対象者を広げる。企業がパート労働者へのボーナスを増やしたり、福利厚生を充実させたりするのを促すのが狙い。」 

「現行のパートタイム労働法では、(1)正社員と仕事内容や責任が同じ(2)人事異動がある(3)契約期間が無期-の3条件を満たすパート従業員について、賃金などの待遇面で正社員と差別してはならないと定めてある。今回の改正では(3)の条件をなくす。」


とのことです。

私のコメントとしては、今回検討されている改正は、「例えば人事異動がないパート労働者などは対象にならない。」ということですので「同一労働・同一賃金」の原則からすれば多少不徹底なところがありますが、基本的には、よい方向の改正だと思います。
しかし、企業側としては、上記の不徹底な部分を利用し、パート労働者雇用時に人事異動の対象にならないことを明示することに等により、この改正を免れようとすることが容易に推測できます。これを解消するには、企業側の要請にも配慮して、抜本的に、(有期労働契約者の存在理由である)正社員の厳し過ぎる解雇規制の問題に手を付けなければないように思いますが、それは、今後の課題なのでしょうね。

日経新聞によると、1月にも厚生労働大臣の諮問機関の労働政策審議会で改正案がまとめられ、次期国会に提出されるそうです。

取り急ぎ。

ベンツ

本文とは全く関係ありませんが、ベンツ300DL/ガルウィングです(河口湖の自動車博物館で撮影)。
1954年~56年まで生産されていたそうですが、「歴史に残る高級スポーツカーで、ドイツ流の職人気質とレースの経験から生みだした傑作」とのことです。




7月29日のこのブログの記事で、政府が、東京、大阪、愛知の三大都市圏などを特区に指定し、①(現行法では非常にハードルの高い)解雇規制の緩和、②同じ職場に5年以上務める有期契約者の(本人の希望による)無期雇用への転換、③(法定労働時間の規制を適用しない)ホワイトカラー・エグゼプションの導入、など、労働法制の改革を検討していることを書きましたが、それ以降も、労働法制の改革のニュースが続いています。  

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7月26日(金)の日経新聞の朝刊に出ていましたが、政府は、アベノミクスの成長戦略の一環として、8月末にも、東京、大阪、愛知の三大都市圏を国家戦略特区に指定し、様々な規制緩和を実施し、雇用分野では、次の3点を検討しているそうです。

①企業が従業員に再就職支援金を支払えば解雇できる「事前型の金銭解決制度」を導入する。

②有期契約労働者について、同じ職場で5年を超えて働くと、本人の希望により無期雇用に転換しなければならない制度を緩める。

③一定の条件を満たした労働者には、法定労働時間(1日8時間、週40時間)の規制を適用しない「ホワイトカラー・エクゼンプション」を導入する。  


いや~、しかし、これは、法律業界にとってもビックニュースであると思います。

特に①については、これまで法曹界では、解雇が容易に認められない(というより、ほとんど認められない)ことを出発点として物事が考えられてきたので、もし実現されれば、実務的にかなりのインパクトがあるのではないでしょうか。  


既に多くの論者により主張されているところですが、日本の厳しい解雇規制は、高度経済成長のときのように企業に十分な体力があるときは妥当性を維持できたものの、現在では、個々の企業の体力を圧迫していることのほか、高い成長産業に労働力が移ることを妨げ、また、若年層の雇用を妨げているとの問題点が指摘されています。(実証はできませんが)労働者に、自分が勤めている企業に依存するような意識、さらに甚だしい場合には解雇されると人生が終わってしまうかのような意識(単なる意識ではなく現実かもしれませんが・・・)を生み出しているように思います。そのような状況の中で、今回の労働規制緩和が実現すれば、ある程度雇用の流動性が生まれ、(もちろん負の面も出てくるでしょうが)全体としては良い方向に向かうのではないでしょうか(あくまでも飛田の個人的意見です。)。。  


労働分野の法改正(特に規制緩和方向での法改正)は、なかかなか実現しないところですので、今後の議論には、大いに注目していきたいと思います。

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