カテゴリ: 労働法務

7月26日(金)の日経新聞の朝刊に出ていましたが、政府は、アベノミクスの成長戦略の一環として、8月末にも、東京、大阪、愛知の三大都市圏を国家戦略特区に指定し、様々な規制緩和を実施し、雇用分野では、次の3点を検討しているそうです。

①企業が従業員に再就職支援金を支払えば解雇できる「事前型の金銭解決制度」を導入する。

②有期契約労働者について、同じ職場で5年を超えて働くと、本人の希望により無期雇用に転換しなければならない制度を緩める。

③一定の条件を満たした労働者には、法定労働時間(1日8時間、週40時間)の規制を適用しない「ホワイトカラー・エクゼンプション」を導入する。  


いや~、しかし、これは、法律業界にとってもビックニュースであると思います。

特に①については、これまで法曹界では、解雇が容易に認められない(というより、ほとんど認められない)ことを出発点として物事が考えられてきたので、もし実現されれば、実務的にかなりのインパクトがあるのではないでしょうか。  


既に多くの論者により主張されているところですが、日本の厳しい解雇規制は、高度経済成長のときのように企業に十分な体力があるときは妥当性を維持できたものの、現在では、個々の企業の体力を圧迫していることのほか、高い成長産業に労働力が移ることを妨げ、また、若年層の雇用を妨げているとの問題点が指摘されています。(実証はできませんが)労働者に、自分が勤めている企業に依存するような意識、さらに甚だしい場合には解雇されると人生が終わってしまうかのような意識(単なる意識ではなく現実かもしれませんが・・・)を生み出しているように思います。そのような状況の中で、今回の労働規制緩和が実現すれば、ある程度雇用の流動性が生まれ、(もちろん負の面も出てくるでしょうが)全体としては良い方向に向かうのではないでしょうか(あくまでも飛田の個人的意見です。)。。  


労働分野の法改正(特に規制緩和方向での法改正)は、なかかなか実現しないところですので、今後の議論には、大いに注目していきたいと思います。

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roudouhou
(労働法といえば、菅野和夫教授のこの本。我々もいつも参照させていただいております。)


1.はじめに

パート、アルバイト、契約社員、高齢者が多い会社(今多くなくても将来多くなりそうな会社)にとっては、この4月1日(平成25年4月1日)から、とても影響の大きい労働法制の変更が2点あります。
 

1つは、パート・アルバイト・契約社員のような有期労働契約による労働者について、5年経過後には、労働者側の希望によって無期労働契約への転換できる制度の導入(無期労働契約への転換制度)です。

もう1つは、(実質的)65歳定年制の本格導入です。

2.無期労働契約への転換制度

これは、有期労働契約が繰り返し更新され、通算5年を超えたときは(ただし、施行日である平成25年4月1日以後の日を契約期間の初日とする有期労働契約から適用-同日以降に更新されるものも含むので注意。)、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールのことで、労働契約法第18条1項に規定されます。

厚生労働省のパンフレットによれば、「有期労働契約で働く人の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を繰り返し更新している実態にあり、その下で生じる雇止めの不安の解消が課題となって」いたことから、「こうした問題に対処し、働く人が安心して働き続けることができる社会を実現するため」に、このような制度が導入されることになったようです。

私の認識としては、会社側が有期労働契約を選択しているのは、景気の波や会社の業績の変動に応じて、雇用調整をしたいという強いニーズがあるにもかかわらず、正社員(無期労働契約で働く人たち)を解雇することが法律によって厳しく制限されているため、有期労働契約で雇用調整をしている(つまり短期の有期労働契約を締結し、景気や業績が悪くなったら、解雇ではなく、契約期間が終了したからという理由で辞めていただく。)との理解でしたので、雇用調整をしたいという会社側のニーズの方に何らの手当てもせずに、このような制度を作ることは、かえって5年を超える契約更新をしない(つまり無期労働契約に返還されるような有期労働契約をしないようにする)という選択を会社側に促すようなもので、有期労働契約者の地位は今以上に悪くなる可能性があるのではないかと心配します。

しかし、いずれにしても既に成立してしまった法律であり、約2週間後の4月1日からこの制度が導入されるので、会社側(特に、パート、アルバイト、契約社員などの有期労働契約者が多く、かつ、繰り返し更新されている会社)では、真剣に対応を考えなければなりません

対応としては、次の2つの方向性が考えられます。

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