カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 馬場 悠輔

今月、国際宇宙ステーション(International Space Station。以下「ISS」。)にいるクルーの交替がありました。3名のクルーを乗せたロシアの有人宇宙船は、今月13日にロケットで打ち上げられ、その日のうちにISSにドッキングし、無事3名のクルーはISSに到着しました。最近ではクルーの交代はそこまで大きなニュースになりませんが、このことは昔に比べればロケット技術等が遥かに進歩したことの現れでしょう。

ISS計画は、G8サミット(主要国首脳会議)の全メンバーも参加している巨大なプロジェクトであり、ISSでは、様々な国籍の宇宙飛行士達がそこに居住しながら日々研究しています。16.5時間労働、土日が休みで、祝日はクルーの国籍に応じて各国の祝日を調整して決定していくそうです(JAXA(宇宙航空研究開発機構)ウェブサイトより。http://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/177.html)。

このISSですが多くの国が参加し、様々な国籍のクルーが居住しているため、権利関係の存否について疑義が生じた場合や、(考えたくはないですが)宇宙飛行士の間で紛争が生じた場合などのため、あらかじめ法的な取り決めをしていく必要があります。参加国は国際宇宙ステーション協定(以下「IGA」。)を締結しており、ISSでは、各国がそれぞれ登録した物体や、自国の国籍を有するISSにいる人員ごとに、各国の管轄権が与えられています。この管轄権は、(登録した)宇宙物体上で発生する事実や行為について、登録国の国内法が適用され、その国内法の遵守を強制する権限(法律を執行する権限)をいいます。

日本が登録しているISSにある実験棟のJEM(きぼう)内では、日本の国内法である民法等が適用されます。また、日本人搭乗員同士で喧嘩して損害賠償という話になったら、民法の不法行為(709条)等の規定を根拠に解決していくことになります。

仮に他国の搭乗員と揉めた場合には、IGAでは、当事国の政府間協議等での解決を目指し、この解決が不調に終わったら、紛争当事国間で合意された紛争解決手続(調停、仲裁等)で解決するよう定められています。

IGAは刑事事件に関する規定もあり、このことは以前取り上げたことがあるのですが、ISS内で犯罪行為が行われた場合は、ステーションのどの区画で犯罪があったかどうかは関係なく、被疑者である宇宙飛行士の国の法律で裁かれることが原則となっています(221項)。そのため、例えばA国の宇宙飛行士がB国の宇宙飛行士に傷害を加えた場合には、被疑者はA国の宇宙飛行士となり、このA国の宇宙飛行士はA国の法律で裁かれることになります。

なぜ被疑者の国の法律で裁かれるかというと、宇宙飛行士の活動は自国の国民から大きな関心が寄せられるため、他の参加国によって自国の宇宙飛行士が裁かれることは国際関係上好ましくないという理由から、属人主義(自国民による犯罪に対しては犯罪地を問わず自国の刑法を適用するという考え方)が取られています(小塚荘一郎著「宇宙ビジネスのための宇宙法入門」150頁参照)。

なお、日本人搭乗員が刑事事件の被疑者となった場合には、日本の刑法の定めが適用されますが、ISSは宇宙にあり日本国内ではないので、刑法の国外犯規定しか適用はありません。刑法の国外犯規定とは、日本国外の犯罪行為であっても日本の刑法が適用されるというもので、通貨偽造、殺人、傷害、窃盗、詐欺や強盗等が定められています。ISSで想定される刑事犯罪は基本的にはこの国外犯規定でカバーされていると思いますが、例えばISSで国内犯規定しかない賭博(刑法185条)が行われても、少なくとも日本人搭乗員には刑法の適用がなく不可罰になります。

最近は宇宙旅行が現実味を帯びてきましたが、並行して、法の適用がどのようになるのかを規定していかないと、例えば宇宙旅行中に旅行者間で賭博をしたり、国民が勝手に宇宙にカジノを作っても刑法の適用が無いなど、後から問題が生じることが増えていくことでしょう(“宇宙カジノ”という響きは魅力的に聞こえるかもしれませんが…)。

アメリカでは刑法の国内犯規定をISS内でも適用させるように、30年以上も前に刑法を改正しています。日本はえてしてこのような動きが遅いので、その行為が合法なのか違法なのかを明確にするという意味でも、想像力を働かせてどんどん法律を整備していく必要があると思います。日本は仮にも宇宙先進国の一つに数えられているので、世界にアピールする意味でも、今後の法整備を期待しています。

月や火星等の天体を所有することはできるのでしょうか。

“所有する”とは、法的に言えば、動産又は不動産に対して所有権を有するということですが、月や火星等の天体に対して所有権を有することはできるのでしょうか。

 

宇宙条約2条は「月その他の天体を含む宇宙空間は…(中略)国家による取得の対象とはならない」と規定しています。しかし同条は、あくまでも「国家による取得」を禁止しているに過ぎないので、私人による取得は禁止していない、と反対解釈することによって月の土地を販売する会社があります。

 

「(※私人による取得は禁止していないという)盲点を突いて合法的に月を販売しようと考えた同氏(※アメリカルナエンバシー社CEOのデニス・ホープ氏)は、1980年にサンフランシスコの行政機関に出頭し所有権の申し立てを行ったところ、正式にこの申し立ては受理されました。

これを受けて同氏は、念のため月の権利宣言書を作成、国連、アメリカ合衆国政府、旧ソビエト連邦にこれを提出。

この宣言書に対しての異議申し立て等が無かった為、LunarEmbassy.LLC(ルナ・エンバシー社:ネバダ州)を設立、月の土地を販売し、権利書を発行するという「地球圏外の不動産業」を開始しました。」

(株式会社ルナエンバシージャパン(http://www.lunarembassy.jp/shop/about)より)

 

月の土地を販売するには、月の土地に所有権を有していることが前提になります。そもそも土地に法律上の所有権を及ぼすには、その土地がその国の領土であることが必要になりますが、ひとまずそれは措いておき、今現在、所有権概念が(地球上の)日本の土地と同じように月の土地にも妥当するのかを検討してみます。

 

所有権とは、客体を一般的・全面的に支配する物権のことをいいますが(我妻榮著「新訂 物権法(民法講義Ⅱ)」257頁)、ある土地に所有権を有していると、その土地を売却・賃貸したり、その土地上に建物を建築したりする等、自由に使用収益できることになります。

 

この所有権は土地の上下に及びます(民法207条)。そのため、字句通りにそのまま解釈すると、地下はマントルを突き抜けて地球の核まで、上空は宇宙の果てまで所有権が及ぶ…といったら、常識的に考えてあり得ないことは明らかです。

例えば日本の法令でも、40m以上の地下は、行政から使用認可を得られれば、土地所有者の意思を問うことなく使用することが可能になりますので、この法令には、40m以上の地下は通常物理的に利用できないので所有権が及ばなくてもいいでしょ、という価値判断が反映されています。土地の遥か上空において、ヘリコプターや飛行機が通過する際にその土地の所有者の許可を必要とすることが妥当でないことも当然といえるでしょう。

そのため、所有権は、物理的に管理・利用が可能な範囲(所有権者の利益が観念できる範囲)に限って及ぶと考えるべきです。

 

この考えは、欧州では法律上明文化しており、ドイツ民法は「土地所有権は、これを禁止するについてなんらの利益のない高所又は深所における侵害を禁ずることはできない」とあり、スイス民法は「土地の所有権は、その行使につき利益の存する限度において空中及び地下に及ぶ」と明確に規定しております(我妻榮他著「我妻・有泉コンメンタール民法(第3版)」432頁参照)。

 

上記の会社も含め、私人で物理的に月の土地を管理・利用している人はいませんので、そもそも論として現時点では月の土地を対象とする所有権を観念することができないと考えられます。

そうすると、私人が月の土地を販売するにしても、「月の土地の所有権を移転させる」という内容の不動産販売であれば、(そもそも月の土地が米国や日本に編入されていないということもありますが、所有権概念からしても)その契約は実現可能性の無い契約として、無効ないし取り消し得る契約になってしまうでしょう。

 

この点、上記の会社のウェブサイトを見ると、

 

「私どもは、「月の土地」を楽しんでいただけることを目的としております。日本の不動産と同じように考えていただくと無理のある商品と思われます。」

http://www.lunarembassy.co.jp/faq/2008/08/nasa.htmlより抜粋)

 

としており、あらかじめジョーク商品であることを明示しています。ジョーク商品を楽しむという内容の契約とすれば問題なく成立するでしょう。

なお、ブラジルでは月の土地を販売した業者が逮捕されており、また、火星はイエメン人が所有しているというイエメンの神話があるようで、イエメン人が米国の火星探査の中止を求めてNASAを訴えた例があります(小塚荘一朗他著「宇宙ビジネスのための宇宙法入門」38頁参照)。

 

宇宙空間の利用はすべての国の利益のために行う(宇宙条約第1条)、という理念からすれば、私人が月や火星などの天体の土地を所有できるようになるのは難しいかもしれません。しかし、将来技術が進歩して誰でも月や火星に行けるほど人間の活動領域が広がるようになれば、私人による天体所有もあり得るかもしれません。

もっとも、その頃にはVR(仮想現実)技術も今より進化して、仮想現実空間で物を所有していれば、現実に物を所有しなくても別にいい、という感覚になっているかもしれませんね。

霞が関にある弁護士会館は日比谷公園の向かいにあり、休憩スペースからは日比谷公園を上から見下ろすことができるので、都会の中にある自然を観ながら休憩している方(多くは弁護士)をよく見かけます。

 

最近休憩スペースから日比谷公園側を観てみると、帝国ホテルの並びに一つだけ突出した巨大なビルが建設中でした。調べてみると新日比谷プロジェクト(仮称)という高層ビル計画だそうです。高さは約191mになるそうで、最近建設された渋谷ヒカリエが約182mなので、それよりも9m程度高い高層ビルになります。

この高層ビルはオフィスビルですが、低層階は商業施設になり、巨大な映画館も入るということなので、映画好きとしては今から楽しみです。

 

この高層ビルは日比谷公園沿いの他の建物と比較すると、一つだけ目立って高いので、そんなに高いビルが建てられるのかなぁと、違和感がありました。

というのも、ご存知の方も多いと思いますが、たとえ自分の土地だとしても、自分で自由に高さや大きさを決めて建物を建てられるわけではなく、建築基準法や都市計画法等の規制がかかり、ビルを建てるにしてもその高さには限界があるためです。

 

建築できる建物の高さについて説明すると、まず建物を建てようとする土地の面積(敷地面積)のうち建物を建築することが可能な面積(建築面積)が地域によって異なります。この敷地面積に対する建築面積の割合を「建ぺい率」といいます(建築基準法53条)。例えば建ぺい率が60%だと、100坪の土地に、最大60坪の面積に建物を建築することができます。

次に、敷地面積に対する、建物の床面積の合計(延床面積)の割合も地域によって決まっており、これを容積率といいます(建築基準法52条)。この容積率によって建築する建物の高さの限界が決まります。ただし、延床面積のうち、例えばエレベーターの面積分は容積率の計算対象にはならない等の取扱いがなされています。

容積率は住居地域なら200%や300%程度になりますが、低層住居専用地域ならもっと低くなり、例えば田園調布の容積率は80%程度しかありません。商業地域は概ね600%~800%になるため、商業地域では高い建物を建てることができます。

 

さて、本件の日比谷の高層ビルの所在地である東京都千代田区有楽町一丁目1番の建ぺい率と容積率を調べてみると、建ぺい率が80%、容積率が900%と定められていました。

また、公示されている建築計画をみると、敷地面積は約10,702㎡で、延床面積のうち容積率の対象面積は約155,180㎡でした。

ここで容積率の対象になる延床面積から容積率を計算してみると、155,180㎡÷10,702㎡×1001450(%)となり、この地区の容積率900%を550%も超えていました!

 

それではこの高層ビルは違法建築なのか、というとそうではなく、実は「都市再生特別措置法」という法律によって、「都市再生特別地区」の都市計画決定を受ければ、容積率等の制限の緩和を受けることができるのです。

その観点から東京都千代田区有楽町一丁目1番を調べてみると、きちんと都市再生特別地区の都市計画決定を受けており、容積率が「900%」から「1450%」に緩和されています(都市再生特別地区状況一覧http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/toshisaisei/04toushi/h270401ketteijoukyou.pdf)。

 

この都市再生特別地区の都市計画決定を受けて、高層ビルや延床面積の大きい建物を建築している例は結構あります。上述の渋谷ヒカリエや、丸の内のJPタワー、銀座の歌舞伎座タワーやGINZA SIX、大阪のあべのハルカス等があります。

 

最近の高層ビルは、スタイリッシュなものが多く、どのように空間を生かし、どのような機能性を有しているのかを見るのは面白いですね。

今回の日比谷の高層ビルは、来年1月に工事が完了するそうなので、出来上がったら見に行ってこようと思います。

 

堀江貴文氏が創業者であり、役員も務めているインターステラテクノロジズ社が、観測ロケットの「MOMO」を730日に打ち上げました。

MOMOは全長10m、重さ1トンで、目標高度の100kmには約4分で到達できる能力を持つ観測ロケットだそうです。

打ち上げ当日は、多数の報道陣が集まっていましたが、MOMOは打ち上げ後、高度約20kmに達した時点で緊急停止した末に、沖合に落下してしまいました。

目標の100kmには遠く及ばず、打ち上げは“失敗”だったという声が叫ばれています。

 

しかし、MOMOは、地上から緊急停止コマンドを送るまで正常に作動していたらしく、また今後のロケット開発に多くの情報を提供して貢献するでしょうし、本当の意味での失敗とはいえないと思います。今回の打ち上げは、まだまだ民間企業のロケット打ち上げが一般的ではない中での打ち上げであり、しかも低価格でコンパクトなロケットというコンセプトを持って臨んでいる、いわば挑戦です。そのため、今回の打ち上げは、失敗ではなく今後の宇宙開発にとって大きな一歩になることは間違いないでしょう。

堀江氏やインターステラテクノロジズ社の方々には、まだまだ挑戦し続けて欲しいと思います。

 

ところで、今回のMOMOの目標高度である「100km」ですが、なぜ100kmかというと、高度100kmの空間は宇宙空間とみなされるからです。

もっとも、条約や法律のどこかに、高度100kmが宇宙空間である、と定められているわけではありません。

国際航空連盟(スカイスポーツの国際組織)が宇宙空間と大気圏の境界を高度100kmと独自に定め(この境界をカーマン・ラインといいます。)、その基準に皆が慣習として従っているに過ぎません。ちなみにアメリカのNASAもこの慣習に従っています。

 

慣習ではなく、早く条約で「宇宙空間」を定義してしまっても良いのではないかと思います(近年国連でも検討課題としているようです)。

この定義付けがなかなか進まない理由として、宇宙条約によって、宇宙空間の国家による領有が禁止されていることが挙げられるでしょう(宇宙条約2条)。

宇宙空間を国家が領有することはできず、宇宙空間より下が各国の領空になるため、厳密に宇宙空間が定義されると自分の国の領空が制限されてしまうとでも考えるのでしょうか。しかし、高度100kmまで領有権が確保できたら十分でしょう。

宇宙への進出という遠大な目的のために、まずは宇宙空間の定義を行うという一歩を踏み出して欲しいところです。

 

翻って今回のMOMOのロケット打ち上げは、宇宙開発にとって大きな一歩となりました。MOMOに触発された子どもたちが、将来宇宙飛行士や、宇宙開発の技術者・関係者になるかもしれません。

これからも日本だけでなく世界中の宇宙開発に期待したいです。

米国のイーロンマスク氏がCEOを務めるスペースX社は、201512月、世界初となる商用の衛星打ち上げロケットの垂直着陸を達成し、近い将来民間による火星探査移民構想も掲げています(国際宇宙会議2016IAC2016))。

日本では、三菱重工やIHIがロケット開発に関わっていますが、最近ではホリエモンこと堀江貴文氏もロケット開発事業を行い始め、宇宙開発事業は活気づいてきております。

 

このような中、宇宙開発に関する法律として、半年ほど前に「宇宙活動法」が成立し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が関わる形でしかできなかったロケット打ち上げが、国の許可を得られれば民間業者の参入が可能になりました。

宇宙開発事業が活気づき、近い将来世界的に宇宙旅行も増えていくことでしょう。

この宇宙旅行は巨額のお金が動くビッグビジネスですが、日本もこの宇宙旅行ビジネスの波に乗れるかというと、ちょっと難しいかもしれません。

 

というのも、例えば米国では自己責任の文化が強いせいか、事業者が宇宙旅行希望者に対して宇宙旅行のリスク説明をきちんして、そのリスクを宇宙旅行希望者が承諾すれば、リスクの高い段階(まだ宇宙旅行が一般化していない今の段階)でも、宇宙旅行ビジネスを認めています。インフォームドコンセントが充たされれば、宇宙旅行希望者に事故等があったとしても、宇宙旅行希望者やその家族が、企業や米国政府に対して損害賠償を請求することはできないようになっています。

 

一方日本では、自己責任の意識は少なく、国が許可を出したかどうかを重視する傾向があるようで、当事者間のインフォームドコンセントは重視されず、今現在、日本企業が主体となって行う宇宙旅行ビジネスについて国の許可が下りた例はありません。お国柄の違いから考えると、今後宇宙旅行ビジネスを日本で主体的に行うのは、まだまだ時間がかかりそうです。

 

宇宙旅行はいわばロマンある冒険なので、ヒマラヤに登るのや、未開拓の洞窟探検と変わらず、個人が自分の人生観に従ってリスクを承知しながら決断すれば、もっと積極的に認めても良いのではないかと思います。

ロマンのある冒険の一つである宇宙旅行に、日本も積極的になってくれることを願うばかりです。

 

ちなみに、宇宙旅行をするにもロケットの打ち上げが必要になりますが、ロケットの打ち上げは航空法の規制がかかり、国土交通大臣の許可が必要になります。「ロケット、花火…その他の物件を…打ち上げる」(航空法施行規則209条の3)には国土交通大臣の許可が必要と法令に規定されており、日本の航空法令上は、ロケットは花火と同様の扱いがなされています(爆発することが前提の花火と、人や物を運ぶためのロケットとは本質的に違うものだと思いますが…)。

 


最近のテクノロジーの発展はめざましく、人工知能を使った資産運用や、スマートフォンを使った決済手続等も実現し、確実に世の中に広がってきています。

最近では、みずほ銀行がAIを企画部門や営業部門に導入し始めたというニュースがありましたが、金融業界に限らず、他の業種においても様々なテクノロジーが導入されてきています。

 

例えば、不動産業界では、不動産を売りたい個人と買いたい個人とを、インターネット上でマッチングするサービスを提供し始めています。ただし、不動産は高額な取引なので、実際に購入希望者は現地に行って内見をする必要があり、売主としては、面倒な内見を業者に頼みたいニーズがあるようです。

 

仮に内見を業者に頼むとすると、業者が購入希望者の内見に立ち会う行為は基本的に宅建業法22号の「媒介」行為にあたると解されるため、宅建士の資格を有した業者であることが要求され、買主に対して重要事項説明等が必要になります。

(※宅建業法22号の「媒介」とは、当事者の一方の依頼を受け、当事者間にあって宅地建物の売買、交換、貸借の契約を成立させるためにあっせん尽力するすべての事実行為を指称するものと解され、単に当事者間に契約を成立させることにとどまらず、契約成立に向けての賃借人等の募集、勧誘行為等は当然にこれに含まれるものと解するのが相当である。(東京高裁平成19214日判決参照))

 

現行制度では重要事項の説明は対面で行われることが前提となっていますが、現在国土交通省では、重要事項説明のIT化(スカイプなどを利用して重要事項説明を行う等)が検討されているようです(国土交通省「ITを活用した重要事項説明等に関する取組み」http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000092.html)。

 

内見の話に戻ると、近い将来、VR技術であたかも本当に内見に行ったかのように、家にいながら臨場感を持って不動産の内部を見ることができるようになるかもしれません。私はVRを体験したことがありますが、VRと分かっているのに(仮想の)高層ビルから地面を見下ろすと足がすくみました(それくらいリアルでした)。

 

内見のVR化が実現すれば、インターネット上で不動産売買契約や賃貸借契約を完結することができ、たとえ業者に勧誘などの何らかの「媒介」行為を頼んだとしても、重要事項説明をスカイプで受ければ、家にいながら契約が完結できるようになるかもしれません。遠方から不動産の購入や引越しを検討する場合には非常に便利なことでしょう。

 

単なる日用品の買物だけでなく、家の賃貸借や売買までも色々とIT化で便利になるのが楽しみです(運動不足がますます加速しそうです)。

家を購入する場合は、一軒家にするかマンションにするか、という論争がありますが、こと建替えの「自由度」に関しては一軒家に軍配が上がります。

 

家が老朽化して建替えをしようと思ったとき、一軒家であれば法的には所有者の意思で自由に決められます(家族や親族の様々な意見はあるでしょうが)。

マンションでも、区分所有者全員の同意があれば建替えは可能ですが、通常マンションは何十戸、今流行りのタワーマンションであれば100戸を超える戸数を有しており、区分所有者一人一人の思惑があるため、一致した意思形成を行うことは非常に困難です。

 

それではマンションの建替えをするにはどうすればいいのかというと、マンションの集会で「区分所有者及び議決権の各5分の4以上」の多数の賛成を得ることにより建替えの決議をすることができます(区分所有法62条)。マンションの議決権というのは、各区分所有者の専有部分の割合で決まり(同法38条)、専有面積が大きければそれだけ議決権を多く持っていることになります。

しかし、一般に単に集会を開催するための定足数(マンション標準管理規約に則り半数以上としていることが多いです。)を充たすことすら難しいという傾向がある中で、この「区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数の賛成」を得ることは相当に難しいことが分かります。

当然ですが人は重大な決断をすることを嫌いますから、建替えという大きな決断をしたがらない人が多数出てしまうことは想像に難くありません。

その上、もし「建替えに一戸数千万円の負担金が必要です。」と言われてしまったら、もはや建替えの「5分の4以上の多数の賛成」を得ることはほとんど不可能になってきます。

 

もし賛成を得たければ「餌」が必要で、例えば負担金はゼロで、建替えて新築に住めますよ、という話が出れば乗ってくる人がいそうです。負担金をゼロにするためには企業の力が必要で、デベロッパーと契約(等価交換契約)をすることで、これが実現するケースもあります。この契約は、従前のマンションの権利と、再建マンションの権利との交換を行うもので、一旦土地の権利はデベロッパーに移り、マンションが再建されたときに、再び各区分所有者に割り当てられるというものです。デベロッパーは、今よりも大きいマンションを建設し、割り当てた後、残りの部屋を売却して利益を得ます。いわば余剰の容積率をお金に換えるというものです。

しかし、当然ながら余った容積率がなければならず、また容積率が余っていたとしても、デベロッパーのほうで売却が難しいと判断されてしまったら実現はできません。

ちなみに、近年マンションの建替え等の円滑化に関する法律が改正され、特定行政庁から耐震性不足の認定がされれば、容積率制限の緩和というボーナスが得られる場合があります。

 

借家人がいる場合の問題や抵当権の問題(建替えをしたら抹消される)等もありますが(これらについては上記円滑化法によって一定の手当てがなされている)、以上のように、まず「5分の4以上の多数の賛成」を得ること自体が非常に困難です。

デベロッパーがつきやすい都心の好立地のマンションを除けば、マンションの建替えをするには相当のハードルがあることが分かります。

 

それでは、立法も行政も、マンションの建替えを円滑化する方向(デベロッパーとの協同を円滑に行う方向)にいけば良いのかといったら、近い将来の空き家問題(住宅の3分の1以上が空き家になるという問題)を考えると、建替えを円滑化して単純にマンションの戸数を増やすことは必ずしも良いとは限りません。

 

この問題は、マンションを売りたい建設業界、住宅ローンで利益を得たい金融業界の思惑もあり、場合によっては政治的な部分も大きいですが、重要な社会問題であるため、今後もこの問題の動向に注目しなければなりません。

法律事務所に勤務する弁護士には縁のないものですが、いわゆる企業内弁護士として働いている同期の弁護士の中に、勤め先の会社の社宅に住んでいるという話を聞きました。
都内にありながら、使用料として23万円支払えばその他の費用はかからないと聞き、非常に羨ましく思いました。
住宅手当は自由な転居が可能となるメリットはありますが、給与の一部になるとして課税の問題があり、その点社宅の場合はその意味での課税の問題はないようです。

さてこの社宅ですが、会社が倒産した時や、会社を解雇又は退職したときは、今まで社宅に住んでいた従業員はどうなるのでしょうか。有無を言わさず社宅から立ち退きをしなければならないのでしょうか。賃貸住宅に住んでいる場合には、借地借家法という借主にとって非常に強い味方がついているわけですが、社宅の場合にもこの借地借家法が適用されるのかが問題になってきます。

借地借家法の適用があれば、新しい家主に対して、自分の賃借権を主張できますし(法311項)、家主(会社)から解約されても「正当の事由」(法28条)がなければ立ち退く必要もありません。

社宅の利用に借地借家法の適用があるかどうかは、社宅の使用料が決め手になってきます。

社宅の使用料を全く支払っていなければ、それは無償で貸し渡したということですので、使用貸借(民法593条)になります。使用貸借であれば、借地借家法の適用はないので、最初の取り決め(契約)のとおりに社宅を明け渡さなければなりません。

社宅の使用料を支払っているのであれば、話は変わってきます。一般の家賃とは比較にならないほどの安い使用料(維持費にも満たないもの)であれば、その使用料は家賃としては扱われず、賃貸借関係にないとして借地借家法の適用はありません(最高裁判決昭和30513日・判タ5021頁参照)

逆に、通常の相場に比べて、それほど安いとはいえない使用料であれば、賃貸借関係があるとして借地借家法の適用があるとされる場合があります。

そのため、会社としては、従業員から社宅の明渡しを求める際のリスク(借地借家法を盾に、明渡しを拒まれるリスク)を考えた上で、使用料の設定をする必要があります。

同期の話では、社宅は確かに安いが、居住者が皆会社の関係者であることや、家主が会社であることから騒音等のトラブルがあっても文句を言いにくいという不満があるらしく、家賃が多少高くついても住宅手当を貰って好きな場所に住みたい、いうことでした。
社宅も住宅手当も、私にとっては羨ましい話ですが、そういえば修習時代に知り合った裁判官も、騒音トラブルで官舎から出て自分の好きな所に家を借りていましたね。

最近すこしずつ暖かくなってきましたが、寒くなる日もあるので、体温調整にはお気を付けください。

ここ数ヶ月前から、弊事務所の隣のビルの解体工事を行っているようで、時々耳を塞ぎたくなるほどの激しい騒音がします。

もうしばらくは、この騒音と付き合わなければならないことを考えると、思わずため息が出ます。

 

騒音は、いわゆる典型7公害に数えられるものですが(他は大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、進藤、地盤沈下及び悪臭。環境基本法23項参照。)、今回のようなビルの解体工事の場合等、ビルの周辺住民・勤務者くらいしか被害者がいないものでもあっても(航空機の騒音は何千何万人もの人々が被害者となります。)、公害として法的救済が求められることに争いはないでしょう。

 

さて、騒音に対して日々悩まされている弊事務所は、どのような救済を求められるのかが問題になってきます。

騒音に対する救済は、大きく分けて行政的な救済(公法上の規制)と私法上の救済の2つがあります。

まず行政的な救済(公法上の規制)について検討すると、建築工事の騒音は、騒音規制法によって規制されておりますが、建築工事のうち、くい打機やブルドーザーの使用等、著しい騒音を発生する「特定建設作業」のみ規制しています。もっとも、条例で規制できる作業を追加することが可能で、東京都はコンクリートカッターを使用する作業や一定の方法による解体・破壊作業も規制しています。

建築工事の際に、騒音基準(85デシベル以下等)に適合しない等した場合には、解体業者に対して、知事ないし市町村長から是正勧告をすることができ、それに従わない場合には騒音防止方法の改善・作業時間の変更についての命令を行うことができます(騒音規制法15条)。

ただし、残念ながら、改善勧告が行われることは少なく、改善命令に至っては実務上ほとんどないため、仮に騒音基準に適合していない場合であっても、この救済は難しいでしょう。

 

私法上の救済については、精神的肉体的苦痛を根拠に、人格権等の侵害があるとして、不法行為(民法709条)に基づく慰謝料請求を検討するのでしょうか。しかし、受忍限度論というものがあり、これは騒音行為の態様や程度、被害内容、地域性等から考えて、この程度の騒音は我慢しましょうという裁判上の議論があります。

この受忍限度論を考えると、本件の騒音は毎日あるものではなく(これを書いている今日はなぜか静かです。)、日々ビルの建築・解体が行われている地域性等からすれば、今回の騒音は受忍限度の範囲内(我々が我慢しなければならない限度内)という判断になりそうです。

 

やはり、本件の騒音とはしばらく我慢して付き合っていかなければならないようです。

 

ところで、音の大きさが何デシベルであるかどうかは、かつては騒音計がなければ分からなかったのですが、最近はスマートフォンのアプリで音の大きさを測れるアプリがあるようです。精度は分からないですが、騒音基準以内かどうかの参考にはなるのではないでしょうか。

最近は、裁判の証拠にLINEが出てきたりするので、何でもかんでもスマートフォンアプリで裁判の証拠を提出する時代が来るかもしれませんね。

 

最近「逃げるは恥だが役に立つ」(主演:新垣結衣、星野源)というテレビドラマに出てくる恋ダンスという踊りが流行っていると聞きました。恋ダンスは、主演の星野源さんが歌う主題歌「恋」に合わせて、ドラマの出演者が踊っているもので、そのダンスを一般の方だけでなく出演者以外の芸能人やスポーツ選手なども踊り、各々その動画をネットにアップロードしているようです。

 

さて、恋ダンスを踊り、その動画をネットにアップロードしたりする等して無断で公表することは許されるのか、ということについて考えたいと思います。

 

まず、恋ダンスのBGMの「恋」という曲は、著作物として著作権法上の保護を受けます(1011号、同2号)。

次に、恋ダンスの振り付け部分は、「舞踏」(1013号)に該当して著作物といえるかどうかが問題になります。ダンスの振り付けは全て著作権法上の「舞踏」に当たるかというとそうでもなく、特徴の無い簡単な振り付けであれば著作物性が否定されます。例えば、映画「Shall we ダンス?」(主演:役所広司、草刈民代)に出てくる社交ダンスの振り付けの著作物性が問題になった裁判では、ダンスの振り付けに著作物性が認められるためには「顕著な特徴を有するといった独創性」が必要であるとされています(判決では、映画の社交ダンスの振り付け部分について著作物性は否定されました)。

 

恋ダンスを見ると、ロボットみたいな動きや細かい指の動きなど、なかなか他に見たことがない振り付けですので、おそらく独創性があり、「舞踏」(1013号)に該当するとして著作権法上の保護を受けるものと思われます。

 

そうすると、恋ダンスを踊って、公衆に見せることを目的として無断でその動画をネットにアップロードすることは、原則として著作権法上の公衆送信権(23条)の侵害に当たります(なお、例えば恋ダンスを家の中で特定の数人に見せるために

踊るのであれば、公衆送信権や上演権(22条)の侵害には当たりません)。

そのため、恋ダンスを踊って、公衆に見せることを目的として無断でその動画をネットにアップロードすることは、権利者の許可を受ける必要があります。

 

著作権の帰属先は契約内容によることになりますが、特に契約で規定していない場合は、原則として著作物を作成した著作者に帰属します(ただし、職務著作の場合には会社や法人に帰属します。)。

この点について、恋ダンスの楽曲使用部分については、星野源さん所属のレコード会社が、「すでに多くの皆様が“恋ダンス”を楽しんでいらっしゃる現状を考慮のうえ、CD配信で購入いただいた音源を使用し、ドラマエンディングと同様の90秒程度の“恋ダンス”動画をドラマ放送期間中にYouTubeに公開することに対し、弊社から動画削除の手続きをすることはございません。但し、この音源を使った動画を営利目的に利用する等、その利用方法が不適切であると判断したものに関しては、予告なく削除手続きを行う可能性もございますので予めご了承ください。」(http://www.jvcmusic.co.jp/

-/Information/A023121.html?article=news132#news132と発表しており、また、ダンス部分について、振り付けを行ったMIKIKO氏(Perfumeの振り付けも行っている方。)も同じ考えであるそうです。

 

この条件を守って動画をYouTubeで公表するのであれば少なくとも動画削除の手続きはされないことになりますが、あくまでも「動画削除の手続き」をしないと述べただけなので、許可をしたのかどうか明確にして欲しかったところです。法律家としては、結局著作権法上はどうなったの?という疑問が拭えません。

 

ちなみに、著作者には著作者人格権として同一性保持権(20条)という、勝手に著作物を改変されない権利を持っています。そのため、恋ダンスとは違った振り付けのダンスを踊って、これを恋ダンスです、とは言えないということになりますので、恋ダンスを踊るのならば、キチンと踊りましょう。

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