カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 馬場 悠輔

今年の41日から、労働契約法第18条に規定されている無期転換ルールが開始されました。
まだ始まったばかりなので、実際に無期転換の申込みがどの程度行われているのか、使用者と労働者との間で何らかの問題が生じている等の報告やデータは集まっていませんが、今後使用者と労働者との間で生じるおそれのある問題を挙げていきます。

①業務形態の偽装

有期雇用契約から無期雇用契約に転換できるいわゆる「無期転換申込権」は、労働者側にイニシアチブがあるので、無期転換申込権の行使を防ぎたいと考えている使用者がいるかもしれません。
無期転換申込権は、有期労働契約が通算5年間を超えた場合に発生しますが、「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約」であることが前提なので、無期転換申込権が発生しないように、間に派遣会社を入れて派遣契約にシフトすることや、請負契約にチェンジすることが考えられます。

すなわち、派遣契約にすれば、使用者は派遣会社になるので、「同一の使用者」との間で有期労働契約を締結していることにはならず、この場合には形式的には無期転換申込権は発生しないようにも思えます。
しかし、そもそも派遣契約では特定目的行為(派遣労働者を特定する行為)は禁止されているところですが(労働者派遣法第26条第6項)、形式的に使用者を変えるだけの行為を行ったとしても、結局通算契約期間の計算上の「同一の使用者」とみなされることになると解されます。
(厚生労働省・平成24810日付基発08102号「労働契約法の施行について」では、このような行為は「法を潜脱するもの」であると指摘しています。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002hc65-att/2r9852000002hc8t.pdf)

また、仮に請負契約にチェンジしたとしても、「労働者性」の有無は、あくまでも実質的に判断されますので、実態としては労働契約であるとして、「同一の使用者」との間で有期労働契約があったとみなされることになるでしょう。

②無期転換申込権の不行使条項

無期転換申込権の行使を防ぐために、有期労働契約に無期転換申込権の不行使を定めることや、無期転換申込権の不行使を契約更新の条件にして更新することが考えられます。

労働者が同意をしているのだから許されるのではないか、というわけにはいかず、雇止めを恐れる労働者の足元を見て得られた同意であり、実質は使用者が無期転換申込権の放棄を強要しているに過ぎないと裁判所にみなされる可能性があります。

このような行為は、結局労働契約法第18条の脱法行為であり、無期転換申込権の不行使条項や、更新の条件である無期転換申込権の不行使条件は、公序良俗に反して無効になると解されます。

③無期労働契約の労働条件の低下

労働者が無期転換申込権を行使すると、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)になるに過ぎず、その他の労働条件は従前と同一となります。

もっとも、期間の定め以外の労働条件を変更することは可能であり、労働契約法第18条も「別段の定め」があれば可能であると明記しております。この「別段の定め」は、就業規則や労働協約、個別の労働契約が該当します。

この部分を利用して、事実上無期転換申込権の行使を防ぐために、例えば無期転換行使後に適用される就業規則が、従前適用されていた就業規則の労働条件から著しく低下するような内容にすることが考えられます。

結局そのような就業規則は、労働契約法第18条で無期転換申込権を定めた趣旨を没却するものとして、就業規則に要求されている合理性を満たさず(労働契約法第7条)、当該就業規則の適用がなされないと考えられます(それ以外の既に規定されている就業規則のほうが適用される)。

無期転換ルールが開始された今、なんとか無期転換申込権の行使を防ぎたいと考えている方がいるかもしれませんが、立法経緯からすると現状では難しいと思います。
無期転換ルールについては、上記の想定される問題や、その他の問題が生じる可能性があり、今後もその動向に注目していきたいと思います。

今月の初めに、中国の宇宙ステーション「天宮1」が制御不能になり、宇宙空間から地球上に墜落するというニュースがありました。
このニュースを見て私なんかは、落下してくる破片にあたらないかと内心ちょっとビクビクしていましたが、後に確認すると、落下した破片によって人の体に危害が及ぶおそれは1兆分の1という非常に少ない確率だそうで、さらに自分自身に危害が及ぶ可能性はもはや天文学的な確率です(宝くじが当たる想像をしたほうが余程現実的です)。

今回のように宇宙空間に打ち上げた物体が地球上に落下した場合に、仮に人の身体や財産(建物、自動車等)に危害ないし損傷を加えてしまった場合の責任問題はどう処理されるのでしょうか。

実は、この責任問題の処理については、「宇宙物体により引き起こされる損害についての国際責任に関する条約」(宇宙損害責任条約)に規定されており、同条約第2条は以下のとおり物体を打ち上げた国の無過失責任を定めています。
A launching State shall be absolutely liable to pay compensation for damage caused by its space object on the surface of the earth or to aircraft flight.
(打上げ国は、自国の宇宙物体が地表において引き起こした損害、又は飛行中の航空機に与えた損害につき無過失責任を負う。)

今回「天宮1」を打ち上げた国は中国ですが、中国も宇宙損害責任条約を批准していますので、「天宮1」が仮に日本のどこかに落下して損害を引き起こしたとすれば、中国が国として無過失責任を負うことになります。

なお、最近は民間のロケット打上げがホットな話題ですが、宇宙損害責任条約における「打上げ国」(launching State)は、「宇宙物体を打上げ、又は行わせる国」(A State which launches or procures the launching of a space object)(第1条(c)(ⅰ))と定義していますので、たとえ民間が打ち上げた物体が落下して損害を引き起こした場合であっても、打上げを行わせた国が無過失責任を負うことになります。

宇宙からの落下物としては、今回の「天宮1」のような人工物は稀で、多くは隕石が考えられます。隕石が地表に落下したとして、この隕石が誰のものになるのかは、落下地点の国内法の規定に従うことになります。
隕石が落下した地点が日本だとすると、隕石は所有者のない動産として、最初に所有の意思をもって拾った人が所有権を取得することになります(民法第239条第1項)。仮に隕石が地面にめり込んだ場合には、土地に付合したとして土地の所有者のものになります(民法第242条)。

隕石はオークションにかけられることが多く、中には何百万円もの高値をつけるものもあり、石ころ程度の大きさでも何十万になるものもあります。
隕石のオークションサイトを覗いてみると、かなり高額で取引されていることが分かります(月や火星からの隕石は高額です)。

結局隕石かどうかは専門家ないし研究機関でないと判別できませんが、高値がつくかもしれませんので、地面に隕石っぽいもの(?)が落ちていたら、とりあえず拾っておいて、所有権を取得しておいたほうが良さそうですね。

 

ご存知のとおり労働基準法では、労働時間の限度を規律する法定労働時間(18時間、週40時間)が規定されており、この法定労働時間を超えて労働者に労働させるためには、時間外労働(及び休日労働)に関する協定(いわゆる三六協定)を使用者と労働者との間で締結しなければなりません(労基法第36条第1項)。

この点、いわゆる法内残業(会社が定めた所定労働時間を超えてはいるが、法定労働時間内で行われた残業)であれば、三六協定の締結は必要ありません。
三六協定を締結し労働者に残業をさせた場合には、使用者は残業代(割増賃金含む。)を支払わなければなりません(上記の法内残業であれば、時間分の賃金だけで割増賃金の支払いは不要です)。
その計算方法は次のとおりです。

・時間外労働の時間×1時間あたりの賃金(月給÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間)×1.25

※さらに、1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合には、その超える部分の時間については、1.5倍の割増賃金になります。ただし、中小企業については猶予措置が定められていますが、平成313月末日までの見込みです(「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」の答申(平成2732日))。
従業員の労働時間管理は、タイムカードやICカード等の客観的な記録を基礎として行わなければならず、自己申告制を行う場合には適切な措置を講じなければなりません(詳細は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省労働基準局監督課平成29120日策定)参照 https://www.startuproudou.mhlw.go.jp/pdf/guidelines.pdf)

時間外労働の計算は客観的な記録を基礎として1分単位で行わなければならず、実務上(労基署対応上)、始業開始の何分か前は労働時間に算入しないことがありますが、これは労基署のいわばお目こぼしであり、やはり原則としては1分単位で計算する必要があります。

ちなみに、深夜労働(午後10時~午前5時)を労働者が行った場合には、深夜労働の割増賃金として、次のとおり加算されます(さらに法定労働時間外であれば、合計の割増率は1.5倍になります。)

・深夜労働の時間数×1時間あたりの賃金×0.25

次に、休日労働を労働者が行った場合は、1.35倍の割増率・・・かといったら必ずしもそうではありません。
労基法が定める週1日の「法定休日」に行われた労働と、それ以外に就業規則や労働契約で定められた週の休日である「法定外休日」に行われた労働とを区別しなければなりません。

すなわち、「法定休日」の労働については、次のとおり使用者には割増賃金を支払うことが義務づけられています(労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。

・法定休日労働の時間数×1時間あたりの賃金×1.35
(さらに深夜労働(割増率0.25)があれば、合計の割増率は1.6倍になります。)

一方で、「法定外休日」に行われた労働に関する賃金ついては、特に法律は規定していませんので、仮にその休日労働が時間外労働であれば1.25倍の割増賃金を支払わなければなりませんが、特に時間外労働にあたらなければその賃金は労働契約・就業規則の定めによって決まることになります。

「法定休日」に行われた労働と「法定外休日」に行われた労働とを区別せず、休日労働に対しては必ず1.35倍の割増賃金を支払う(貰える)と考えている方もいらっしゃるかと思いますが以上のとおり注意が必要です。

残業代の計算は、従業員数が多くなればなるほど大変な計算になり、また2年間の消滅時効にかかるとはいえ(労基法第115条)、6%の遅延損害金も加算されるので放置しておくとかなりの金額になるので気を付けなければなりません。なお、残業代は退職者に対しても支払う必要があり、退職者に対しては、退職後から14.6%の遅延損害金(賃金の支払の確保等に関する法律第6条第1項)が発生することになりますので注意する必要があります。

最近では労働者の意識も変わり、残業代もきっちり貰うという流れになってきており、金額が大きくなりがちな残業代の精算は、使用者にとっては頭の痛い問題ですね。
今では社会的にも「残業を前提としない働き方」が求められていますので、私自身も頑張りたいと思います(ちなみに弊事務所では専門型裁量労働制が導入されており、深夜・休日労働を除き残業代は発生しないので、私にとって「残業を前提としない働き方」は切迫した課題です)。

今年(平成30年)の41日から、「無期転換ルール」が実施されるようになります。

「無期転換ルール」とは、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みによって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。

このルールは労働契約法第18条で規定され、同条は平成2541日に施行されているのですが、経過措置によって、施行の日以後に締結した労働契約に適用されます。
そのため、実施されるのが最も早い方は、今年の41日にこのルールが適用されます。

今まで企業側としては、有期労働者を雇止めすることができたので、これが制限されるとなるとかなりの負担になります。
それでは、この無期転換ルールが、企業側にとってどのようなメリットがあるのかというと、厚生労働省のハンドブック(http://muki.mhlw.go.jp/policy/handbook_2017_3.pdf)によれば、

・長期的な視点に立って社員育成を実施することが可能になる

・会社の実務や事情等に精通する無期労働契約の社員を比較的容易に獲得できる

というメリットがあるとのことです。

しかし、無期転換ルールは、あくまでも労働者に無期転換への申込みを行う権利を認めたものなので、無期転換にするかどうかのイニシアチブは労働者側にあります。
そのため、上記の企業側のメリットはこじつけというか、結局メリットにはなっていないでしょう。

労働者としては、雇用の安定している無期労働契約に自分の意思で転換できるというのは大きなメリットです。しかし注意しなければならないのは、無期転換の申込みを行っても、あくまでも従前の有期労働契約の労働条件のうち、契約期間が無期になるだけですので、自動的に正社員と同様の待遇(給与、賞与、退職金等)になるわけではありません。

会社として注意しなければならないのは、無期転換した労働者に、会社のどの就業規則が適用されるのかをはっきりさせておかなければなりません。
通常は有期労働契約用の就業規則には定年を規定していない場合が多いので、仮に無期転換した労働者の適用される就業規則が、有期労働契約用の就業規則しかなかったとすると、会社は無期転換の労働者を、定年を過ぎても雇い続けなければなりません。

そのため、このような事態にならないように、定年だけでなくその他の労働条件についても、会社の運用に沿った内容を定めた無期転換用の就業規則を作成しておくことが望ましいでしょう。

人生100年時代です。
定年以降に有期労働契約を締結し、これが無期に転換した場合はどうするのか等、超高齢化社会を見据えて、就業規則等を用意しなければなりません。
実際に無期転換権を行使する労働者がどのくらいの人数・割合になるのかはまだ分かりませんが、今後の動向に注目したいと思います。

今年は宇宙関連法が制定され、北海道で民間のロケットが発射されるなど、宇宙に関する多くの良いニュースがありましたが、段々と「宇宙ビジネス」が現実味のあるビジネスモデルとして根付いてきたように思います。 

最近は宇宙旅行がクローズアップされていますが、昔から宇宙をブランド化したビジネスモデルがあり、これは人々の「宇宙」に対する先進的な良いイメージを用いることで、「宇宙ブランド」として商品を販売するものです。

例えば、宇宙ブランドの商品の中でも、宇宙飛行士が宇宙空間で実際に食べる「宇宙食」は昔から根強い人気を誇っているようで、割と簡単に手に入るので宇宙食を食べたことのある方も多いのではないのでしょうか。私は、宇宙食の“ショートケーキ”と“プリン”を食べたことがあり、どちらも水分がないのでサクサクとした食感ですが、食べるとショートケーキやプリンの香りがしました。例えるとウエハースみたいにサクサクなので、フォークやスプーンを使う必要がなく、手づかみで食べられます。何とも不思議な味わいでしたが、宇宙では大変貴重なデザートになりますので、実際に宇宙空間で食べるとまた違う感想を持つことでしょう。

最近では、お台場にある日本化学未来館において、国際宇宙ステーション(ISS)で育てられた乳酸菌(通称「宇宙乳酸菌」)入りのグミを見かけましたので、購入して食べてみましたがヨーグルト風味でとても美味しかったです(なんだか体調も良くなった気がします)。

宇宙食だけでなく、宇宙の最新技術を使った日用品として、宇宙飛行士のために開発した消臭機能に優れた機能的な下着も販売されています。また、宇宙服の研究結果を利用して作られた冷却下着があり、これは炎の中で仕事をする消防士や、炎天下で作業をする作業員等のために、その効果が期待されています(JAXA(宇宙航空研究開発機構)新事業促進部http://aerospacebiz.jaxa.jp/success-story/cosmode001/ )。
「宇宙」の技術を使った宇宙ブランド商品は、何だか頼もしく見えますね。

その他の宇宙ビジネスでは、冠婚葬祭ビジネスがあり、宇宙空間に遺骨を散骨するいわゆる“宇宙葬”ビジネスがあります。宇宙先進国のアメリカでは、早くもこのビジネスを行っており、すでに20年前にロケットで24名の遺骨が打ち上げられています。海洋散骨は昔からメジャーですが、この宇宙葬(宇宙散骨)をされる方は今後増えていくことでしょう。
なお、海洋散骨をする際には、墓地埋葬法や刑法(190条。遺骨遺棄罪)の適用が問題となりますが、今のところ法律上完全に合法であることが明確になっているわけではなく(法務省の見解レベル)、もちろん宇宙散骨も法律上明確に規定されておらず、判例があるわけではないので、今後宇宙散骨が増えていくようであれば議論する必要があるでしょう。

他には、宇宙空間での結婚式も10年近く前から受け付けを開始しており、面白い試みがなされております。無重力状態だとドレスのスカート部分が浮いて躍動感が出る等、宇宙空間だと“映える”特別仕様のウエディングドレスがあるそうです。現在でも宇宙ウエディングの料金は億を超えるので、なかなか一般人には手が出せないですが、招待された親戚や友人は、宇宙空間での結婚式の様子を生中継で見ることができるので、是非招待されてみたいですね。

現在では、様々な宇宙ビジネスが実施されてきており、いかに固定観念を覆すかという能力が問われているような気がします。まだまだ宇宙ビジネスはブルーオーシャン(未開拓市場)であり、先に考えた者が勝つというものだと思いますので、皆さんもここは一つ宇宙ビジネスを考えてみてはいかがでしょうか。

引き続き宇宙ビジネスの動向に注目したいと思います。

1022日(日)に衆議院議員選挙・最高裁裁判官国民審査が行われましたが、皆様は投票に行かれましたでしょうか。台風が上陸したせいか、投票率は53.68%で戦後2番目の低さだったそうです(私は台風の中、雨に濡れながらも投票に行きました。自慢できることではありませんが…)。

さて、今回の選挙では、個人的に法律的な部分に着目しており、それは選挙権の年齢が「18歳以上」に引き下げられてから初めて実施される総選挙であるという点です。
平成276月に公職選挙法が改正されて、今まで20歳以上であった選挙年齢が、18歳以上に引き下げられました。

これを受けて、民法の成年の対象年齢の取扱いも18歳への引き下げが議論されていますが、少なくとも裁判員の対象年齢は今までどおり「20歳以上」に維持されています。もっとも、この裁判員の年齢については、賛否両論あるようです。
個人的には、今回18歳以上に選挙権という民主主義の根幹を構成する権利が付与された以上、法的にも18歳以上は主権者として民主主義の担い手になったと考えます。裁判員として評議に加わるということも国政を決めることと重大性は異ならず、裁判員制度も民主主義の実現の一つだと考えれば、18歳以上であっても裁判員になれるようにするべきだと思います。(ちなみにアメリカの選挙権は18歳以上に付与されて、かつ裁判員よりも重責な陪審員になるのも18歳以上からになっています。)

さて、民法の成年の対象年齢の取扱いが18歳へ引下げられた場合、様々な影響があります。
未成年者は、法定代理人(多くは親)の同意なく契約を締結した場合には、その契約を取り消すことができます(民法第5条第1項、第2項)。この取消権は、事情がどうあれ取り消すことができるので、かなり強力な権利です。18歳が自分の締結した契約について責任を負うことになり、消費者トラブルの多い、サラ金、デジタルコンテンツやエステサービス等の契約を取り消すことができなくなります。この点は早い時期から法教育や消費者教育を行っていくしかないでしょう。

また、養育費の支払いを決める際に、今では成年の20歳を基準として、「20歳に達する日の属する月まで」と決めたりしましたが(大学進学を予定し「22歳」の場合もあります。)、今後18歳を基準にする場合が出てくるでしょう(養育費を支払う側からすれば18歳を基準にしたい)。

なお、民法で成年の対象年齢が下がったとしても、喫煙については「満20歳」にならないと認められません。というのも、未成年者喫煙禁止法は、喫煙できる者を、例えば「民法に規定する成年」と規定されておらず、「満20歳」(満二十年)と規定していますので、民法の成年が引き下がっても、連動して喫煙可能年齢も引き下げられるわけではありません。飲酒も同様の議論で、未成年者飲酒禁止法が定められていますが、飲酒可能年齢は「満20歳」(満二十年)と規定されています。

他には、男性は18歳、女性は16歳になると婚姻できますが、20歳未満だと父母の同意が必要になりますが(民法737条第1項)、成年が18歳に変更されると、18歳の男性が結婚する場合は、少なくとも男性側の父母の同意は不要になります。併せて女性の婚姻可能年齢も18歳に引き上げられるとの議論はありますが、現在の規定のままだと女性は16歳、17歳に結婚する場合には父母の同意が必要になりますが、18歳になれば父母の同意なく婚姻できるようになります。

選挙権が18歳以上に付与されるようになって、若者も国政だけでなく民主主義全体への関心が強くなればいいですね。今後も未成年者をめぐる法律の動きに注目したいと思います。

今月、国際宇宙ステーション(International Space Station。以下「ISS」。)にいるクルーの交替がありました。3名のクルーを乗せたロシアの有人宇宙船は、今月13日にロケットで打ち上げられ、その日のうちにISSにドッキングし、無事3名のクルーはISSに到着しました。最近ではクルーの交代はそこまで大きなニュースになりませんが、このことは昔に比べればロケット技術等が遥かに進歩したことの現れでしょう。

ISS計画は、G8サミット(主要国首脳会議)の全メンバーも参加している巨大なプロジェクトであり、ISSでは、様々な国籍の宇宙飛行士達がそこに居住しながら日々研究しています。16.5時間労働、土日が休みで、祝日はクルーの国籍に応じて各国の祝日を調整して決定していくそうです(JAXA(宇宙航空研究開発機構)ウェブサイトより。http://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/177.html)。

このISSですが多くの国が参加し、様々な国籍のクルーが居住しているため、権利関係の存否について疑義が生じた場合や、(考えたくはないですが)宇宙飛行士の間で紛争が生じた場合などのため、あらかじめ法的な取り決めをしていく必要があります。参加国は国際宇宙ステーション協定(以下「IGA」。)を締結しており、ISSでは、各国がそれぞれ登録した物体や、自国の国籍を有するISSにいる人員ごとに、各国の管轄権が与えられています。この管轄権は、(登録した)宇宙物体上で発生する事実や行為について、登録国の国内法が適用され、その国内法の遵守を強制する権限(法律を執行する権限)をいいます。

日本が登録しているISSにある実験棟のJEM(きぼう)内では、日本の国内法である民法等が適用されます。また、日本人搭乗員同士で喧嘩して損害賠償という話になったら、民法の不法行為(709条)等の規定を根拠に解決していくことになります。

仮に他国の搭乗員と揉めた場合には、IGAでは、当事国の政府間協議等での解決を目指し、この解決が不調に終わったら、紛争当事国間で合意された紛争解決手続(調停、仲裁等)で解決するよう定められています。

IGAは刑事事件に関する規定もあり、このことは以前取り上げたことがあるのですが、ISS内で犯罪行為が行われた場合は、ステーションのどの区画で犯罪があったかどうかは関係なく、被疑者である宇宙飛行士の国の法律で裁かれることが原則となっています(221項)。そのため、例えばA国の宇宙飛行士がB国の宇宙飛行士に傷害を加えた場合には、被疑者はA国の宇宙飛行士となり、このA国の宇宙飛行士はA国の法律で裁かれることになります。

なぜ被疑者の国の法律で裁かれるかというと、宇宙飛行士の活動は自国の国民から大きな関心が寄せられるため、他の参加国によって自国の宇宙飛行士が裁かれることは国際関係上好ましくないという理由から、属人主義(自国民による犯罪に対しては犯罪地を問わず自国の刑法を適用するという考え方)が取られています(小塚荘一郎著「宇宙ビジネスのための宇宙法入門」150頁参照)。

なお、日本人搭乗員が刑事事件の被疑者となった場合には、日本の刑法の定めが適用されますが、ISSは宇宙にあり日本国内ではないので、刑法の国外犯規定しか適用はありません。刑法の国外犯規定とは、日本国外の犯罪行為であっても日本の刑法が適用されるというもので、通貨偽造、殺人、傷害、窃盗、詐欺や強盗等が定められています。ISSで想定される刑事犯罪は基本的にはこの国外犯規定でカバーされていると思いますが、例えばISSで国内犯規定しかない賭博(刑法185条)が行われても、少なくとも日本人搭乗員には刑法の適用がなく不可罰になります。

最近は宇宙旅行が現実味を帯びてきましたが、並行して、法の適用がどのようになるのかを規定していかないと、例えば宇宙旅行中に旅行者間で賭博をしたり、国民が勝手に宇宙にカジノを作っても刑法の適用が無いなど、後から問題が生じることが増えていくことでしょう(“宇宙カジノ”という響きは魅力的に聞こえるかもしれませんが…)。

アメリカでは刑法の国内犯規定をISS内でも適用させるように、30年以上も前に刑法を改正しています。日本はえてしてこのような動きが遅いので、その行為が合法なのか違法なのかを明確にするという意味でも、想像力を働かせてどんどん法律を整備していく必要があると思います。日本は仮にも宇宙先進国の一つに数えられているので、世界にアピールする意味でも、今後の法整備を期待しています。

月や火星等の天体を所有することはできるのでしょうか。

“所有する”とは、法的に言えば、動産又は不動産に対して所有権を有するということですが、月や火星等の天体に対して所有権を有することはできるのでしょうか。

 

宇宙条約2条は「月その他の天体を含む宇宙空間は…(中略)国家による取得の対象とはならない」と規定しています。しかし同条は、あくまでも「国家による取得」を禁止しているに過ぎないので、私人による取得は禁止していない、と反対解釈することによって月の土地を販売する会社があります。

 

「(※私人による取得は禁止していないという)盲点を突いて合法的に月を販売しようと考えた同氏(※アメリカルナエンバシー社CEOのデニス・ホープ氏)は、1980年にサンフランシスコの行政機関に出頭し所有権の申し立てを行ったところ、正式にこの申し立ては受理されました。

これを受けて同氏は、念のため月の権利宣言書を作成、国連、アメリカ合衆国政府、旧ソビエト連邦にこれを提出。

この宣言書に対しての異議申し立て等が無かった為、LunarEmbassy.LLC(ルナ・エンバシー社:ネバダ州)を設立、月の土地を販売し、権利書を発行するという「地球圏外の不動産業」を開始しました。」

(株式会社ルナエンバシージャパン(http://www.lunarembassy.jp/shop/about)より)

 

月の土地を販売するには、月の土地に所有権を有していることが前提になります。そもそも土地に法律上の所有権を及ぼすには、その土地がその国の領土であることが必要になりますが、ひとまずそれは措いておき、今現在、所有権概念が(地球上の)日本の土地と同じように月の土地にも妥当するのかを検討してみます。

 

所有権とは、客体を一般的・全面的に支配する物権のことをいいますが(我妻榮著「新訂 物権法(民法講義Ⅱ)」257頁)、ある土地に所有権を有していると、その土地を売却・賃貸したり、その土地上に建物を建築したりする等、自由に使用収益できることになります。

 

この所有権は土地の上下に及びます(民法207条)。そのため、字句通りにそのまま解釈すると、地下はマントルを突き抜けて地球の核まで、上空は宇宙の果てまで所有権が及ぶ…といったら、常識的に考えてあり得ないことは明らかです。

例えば日本の法令でも、40m以上の地下は、行政から使用認可を得られれば、土地所有者の意思を問うことなく使用することが可能になりますので、この法令には、40m以上の地下は通常物理的に利用できないので所有権が及ばなくてもいいでしょ、という価値判断が反映されています。土地の遥か上空において、ヘリコプターや飛行機が通過する際にその土地の所有者の許可を必要とすることが妥当でないことも当然といえるでしょう。

そのため、所有権は、物理的に管理・利用が可能な範囲(所有権者の利益が観念できる範囲)に限って及ぶと考えるべきです。

 

この考えは、欧州では法律上明文化しており、ドイツ民法は「土地所有権は、これを禁止するについてなんらの利益のない高所又は深所における侵害を禁ずることはできない」とあり、スイス民法は「土地の所有権は、その行使につき利益の存する限度において空中及び地下に及ぶ」と明確に規定しております(我妻榮他著「我妻・有泉コンメンタール民法(第3版)」432頁参照)。

 

上記の会社も含め、私人で物理的に月の土地を管理・利用している人はいませんので、そもそも論として現時点では月の土地を対象とする所有権を観念することができないと考えられます。

そうすると、私人が月の土地を販売するにしても、「月の土地の所有権を移転させる」という内容の不動産販売であれば、(そもそも月の土地が米国や日本に編入されていないということもありますが、所有権概念からしても)その契約は実現可能性の無い契約として、無効ないし取り消し得る契約になってしまうでしょう。

 

この点、上記の会社のウェブサイトを見ると、

 

「私どもは、「月の土地」を楽しんでいただけることを目的としております。日本の不動産と同じように考えていただくと無理のある商品と思われます。」

http://www.lunarembassy.co.jp/faq/2008/08/nasa.htmlより抜粋)

 

としており、あらかじめジョーク商品であることを明示しています。ジョーク商品を楽しむという内容の契約とすれば問題なく成立するでしょう。

なお、ブラジルでは月の土地を販売した業者が逮捕されており、また、火星はイエメン人が所有しているというイエメンの神話があるようで、イエメン人が米国の火星探査の中止を求めてNASAを訴えた例があります(小塚荘一朗他著「宇宙ビジネスのための宇宙法入門」38頁参照)。

 

宇宙空間の利用はすべての国の利益のために行う(宇宙条約第1条)、という理念からすれば、私人が月や火星などの天体の土地を所有できるようになるのは難しいかもしれません。しかし、将来技術が進歩して誰でも月や火星に行けるほど人間の活動領域が広がるようになれば、私人による天体所有もあり得るかもしれません。

もっとも、その頃にはVR(仮想現実)技術も今より進化して、仮想現実空間で物を所有していれば、現実に物を所有しなくても別にいい、という感覚になっているかもしれませんね。

霞が関にある弁護士会館は日比谷公園の向かいにあり、休憩スペースからは日比谷公園を上から見下ろすことができるので、都会の中にある自然を観ながら休憩している方(多くは弁護士)をよく見かけます。

 

最近休憩スペースから日比谷公園側を観てみると、帝国ホテルの並びに一つだけ突出した巨大なビルが建設中でした。調べてみると新日比谷プロジェクト(仮称)という高層ビル計画だそうです。高さは約191mになるそうで、最近建設された渋谷ヒカリエが約182mなので、それよりも9m程度高い高層ビルになります。

この高層ビルはオフィスビルですが、低層階は商業施設になり、巨大な映画館も入るということなので、映画好きとしては今から楽しみです。

 

この高層ビルは日比谷公園沿いの他の建物と比較すると、一つだけ目立って高いので、そんなに高いビルが建てられるのかなぁと、違和感がありました。

というのも、ご存知の方も多いと思いますが、たとえ自分の土地だとしても、自分で自由に高さや大きさを決めて建物を建てられるわけではなく、建築基準法や都市計画法等の規制がかかり、ビルを建てるにしてもその高さには限界があるためです。

 

建築できる建物の高さについて説明すると、まず建物を建てようとする土地の面積(敷地面積)のうち建物を建築することが可能な面積(建築面積)が地域によって異なります。この敷地面積に対する建築面積の割合を「建ぺい率」といいます(建築基準法53条)。例えば建ぺい率が60%だと、100坪の土地に、最大60坪の面積に建物を建築することができます。

次に、敷地面積に対する、建物の床面積の合計(延床面積)の割合も地域によって決まっており、これを容積率といいます(建築基準法52条)。この容積率によって建築する建物の高さの限界が決まります。ただし、延床面積のうち、例えばエレベーターの面積分は容積率の計算対象にはならない等の取扱いがなされています。

容積率は住居地域なら200%や300%程度になりますが、低層住居専用地域ならもっと低くなり、例えば田園調布の容積率は80%程度しかありません。商業地域は概ね600%~800%になるため、商業地域では高い建物を建てることができます。

 

さて、本件の日比谷の高層ビルの所在地である東京都千代田区有楽町一丁目1番の建ぺい率と容積率を調べてみると、建ぺい率が80%、容積率が900%と定められていました。

また、公示されている建築計画をみると、敷地面積は約10,702㎡で、延床面積のうち容積率の対象面積は約155,180㎡でした。

ここで容積率の対象になる延床面積から容積率を計算してみると、155,180㎡÷10,702㎡×1001450(%)となり、この地区の容積率900%を550%も超えていました!

 

それではこの高層ビルは違法建築なのか、というとそうではなく、実は「都市再生特別措置法」という法律によって、「都市再生特別地区」の都市計画決定を受ければ、容積率等の制限の緩和を受けることができるのです。

その観点から東京都千代田区有楽町一丁目1番を調べてみると、きちんと都市再生特別地区の都市計画決定を受けており、容積率が「900%」から「1450%」に緩和されています(都市再生特別地区状況一覧http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/toshisaisei/04toushi/h270401ketteijoukyou.pdf)。

 

この都市再生特別地区の都市計画決定を受けて、高層ビルや延床面積の大きい建物を建築している例は結構あります。上述の渋谷ヒカリエや、丸の内のJPタワー、銀座の歌舞伎座タワーやGINZA SIX、大阪のあべのハルカス等があります。

 

最近の高層ビルは、スタイリッシュなものが多く、どのように空間を生かし、どのような機能性を有しているのかを見るのは面白いですね。

今回の日比谷の高層ビルは、来年1月に工事が完了するそうなので、出来上がったら見に行ってこようと思います。

 

堀江貴文氏が創業者であり、役員も務めているインターステラテクノロジズ社が、観測ロケットの「MOMO」を730日に打ち上げました。

MOMOは全長10m、重さ1トンで、目標高度の100kmには約4分で到達できる能力を持つ観測ロケットだそうです。

打ち上げ当日は、多数の報道陣が集まっていましたが、MOMOは打ち上げ後、高度約20kmに達した時点で緊急停止した末に、沖合に落下してしまいました。

目標の100kmには遠く及ばず、打ち上げは“失敗”だったという声が叫ばれています。

 

しかし、MOMOは、地上から緊急停止コマンドを送るまで正常に作動していたらしく、また今後のロケット開発に多くの情報を提供して貢献するでしょうし、本当の意味での失敗とはいえないと思います。今回の打ち上げは、まだまだ民間企業のロケット打ち上げが一般的ではない中での打ち上げであり、しかも低価格でコンパクトなロケットというコンセプトを持って臨んでいる、いわば挑戦です。そのため、今回の打ち上げは、失敗ではなく今後の宇宙開発にとって大きな一歩になることは間違いないでしょう。

堀江氏やインターステラテクノロジズ社の方々には、まだまだ挑戦し続けて欲しいと思います。

 

ところで、今回のMOMOの目標高度である「100km」ですが、なぜ100kmかというと、高度100kmの空間は宇宙空間とみなされるからです。

もっとも、条約や法律のどこかに、高度100kmが宇宙空間である、と定められているわけではありません。

国際航空連盟(スカイスポーツの国際組織)が宇宙空間と大気圏の境界を高度100kmと独自に定め(この境界をカーマン・ラインといいます。)、その基準に皆が慣習として従っているに過ぎません。ちなみにアメリカのNASAもこの慣習に従っています。

 

慣習ではなく、早く条約で「宇宙空間」を定義してしまっても良いのではないかと思います(近年国連でも検討課題としているようです)。

この定義付けがなかなか進まない理由として、宇宙条約によって、宇宙空間の国家による領有が禁止されていることが挙げられるでしょう(宇宙条約2条)。

宇宙空間を国家が領有することはできず、宇宙空間より下が各国の領空になるため、厳密に宇宙空間が定義されると自分の国の領空が制限されてしまうとでも考えるのでしょうか。しかし、高度100kmまで領有権が確保できたら十分でしょう。

宇宙への進出という遠大な目的のために、まずは宇宙空間の定義を行うという一歩を踏み出して欲しいところです。

 

翻って今回のMOMOのロケット打ち上げは、宇宙開発にとって大きな一歩となりました。MOMOに触発された子どもたちが、将来宇宙飛行士や、宇宙開発の技術者・関係者になるかもしれません。

これからも日本だけでなく世界中の宇宙開発に期待したいです。

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