カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 鈴木 萌

IMG_2788202065日の国会において、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」が可決・成立し、同月12日に公布されました(https://www.ppc.go.jp/news/press/2020/200612/)。
改正法の施行日は、一部を除き公布から2年以内ですが、施行日を決める政令が未だできていないため、具体的には決まっていません。

改正法の条文や新旧対照表が個人情報保護委員会のウェブページに上がっているので、改正の具体的な内容については、これらを確認する必要がありますが、個人情報保護委員会発表の概要資料(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/200612_gaiyou.pdf)によると、

Ø  保有個人データの利用停止・消去等の請求権の範囲が拡大される。

Ø  個人データの授受に関する第三者提供記録について、本人が開示請求できるようになる。

Ø  漏えい等が発生し、個人の権利利益を害するおそれがある場合に、個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が義務化される。

Ø  「仮名加工情報」の概念が創設され、開示・利用停止請求への対応等の義務が一部緩和される。

等の改正点があるようですので、個人情報取扱事業者は改正対応が必要になりそうです。

改正法の施行は2年近く先で、まだ関連の政令や委員会規則もできていないので、すぐに何らかの対応する必要はないと思いますが、関係する皆様は適宜動向を確認しましょう!



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破産事件を扱っている中で、最近立て続けに、「破産者所有の不動産について、破産管財人が破産財団から放棄したのだが、次の年の固定資産税を誰から取り立てればよいのか?」という質問を受けたので、これについてまとめてみたいと思います。

 

破産者が不動産を所有した状態で破産すると、破産者の財産を管理する破産管財人が、この不動産の売却を試みます。これにより売却ができれば、固定資産税は、通常の不動産売買と同様の形(その年に発生するものを当事者間で精算し、翌年以降に発生するものは新所有者である買主が納税)で処理されます。

 

しかし、破産管財人が売却を試みたものの、買受希望者が見つからなかったり、希望者は見つかったけれども担保権者の同意が得られなかったりして、売却ができないことがあります。
そうなった場合、破産管財人は、この不動産を売却することを諦め、破産財団から放棄する手続(破産法第78条第2項第12号参照)を取ります。破産財団から放棄されると、その資産は破産管財人の管理対象から外れます。

 

破産財団から放棄された不動産は、破産者が個人である場合は、破産者の自由財産として、破産者に管理処分権が復帰することになります(最判平成12428日判時 1710100頁参照)。
したがって、個人の破産者の不動産を破産管財人が放棄した場合は、翌年以降に発生する固定資産税は、所有者である破産者から取り立てれば良いことになります。

 

一方、破産者が法人である場合も、破産管財人が不動産を放棄すると、破産者に管理処分権が復帰することになります(前掲最判平成12428日)。とは言っても、破産者は法人なので、固定資産税の請求は、法人が持つ管理処分権を行使する権限を持った人物に対してする必要があります。

 

破産管財人は対象不動産を放棄していて、その不動産については何の権限も持っていないので、破産管財人を請求の相手とすることはできません。
それなら、破産した法人の代表者に請求すれば良いではないかと思いますが、破産者の役員は、破産者と委任関係にあり、この委任関係は、委任者である破産者が破産手続開始の決定を受けた時点で終了しています(民法第653条第2号)。つまり、破産者の役員は全員いなくなっているため、代表者に請求することもできません。
また、破産した法人は解散したものと扱われ(会社法第471条第5号)、解散した時には取締役が自動的に清算人に選任されるはず(会社法第478条第1項第1号参照)だから、この清算人に請求すればよいのでは?という考え方もありますが、破産した法人の場合は、通常の会社の解散の場合と異なって、取締役が自動的に清算人に選任されるわけではないとされています(最判平成16101日裁判集民215199頁参照)。会社法第478条第1項第2号や第3号に基づく清算人(定款や株主総会決議に基づく清算人)がいれば、そちらに従って清算人が現れる可能性はありますが、あまり多くはないでしょう。

 

つまり、法人である破産者の破産管財人が不動産を放棄した場合は、破産した法人の法人格は残っており、放棄された不動産の管理処分権もそこに帰属しているものの、(殆どの場合)法人の持つ管理処分権を行使できる人物がいない状態ということになります。

 

このままですと、固定資産税の請求をする具体的な相手がいないことになるので、市町村側の対応としては、次の2つが考えられます。

 

1つは、会社法第478条第2項(会社以外の法人の場合は適宜の法令)に基づき、清算人の選任を裁判所に申し立てる方法です。清算人が選任されれば、清算人を相手に固定資産税を請求することができます。
ただ、破産者である法人は、(破産しているくらいですので)固定資産税の支払原資がない可能性が高いですし、清算人の選任を申し立てるには、かなりの金額の予納金を裁判所に納めなければなりません。
それを考えると、固定資産税の取り立てのために清算人の選任を申し立てるのは、あまり現実的ではないと思います。

2つ目は、不動産の所有者が変わるのを待つという方法です。
管財人が放棄するような不動産であれば、かなり高い確率で、担保権が付いていたり差押が入っていたりするため、放棄後に競売や公売にかかる可能性があります。これが進めば、不動産の所有者が変わる可能性が高いので、所有者が変わった年より後については、新所有者に固定資産税を請求することができます。
また、場合によっては、固定資産税を徴収しようとする市町村自身が、(放棄後に発生した)固定資産税の滞納を理由として、その不動産を差し押さえて公売にかけることも考えられます。
なお、不動産の所有者が変わるのを待つ方法を取る場合、所有者が変わらない期間の固定資産税は、請求困難なので、現実的には時効にかかるのを待つことになると思います。

法人の破産で管財人が不動産を放棄した場合は、法律関係が複雑になりますので、固定資産税の請求の相手方をよく確認することが必要です。

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 世間は新型コロナウイルスの話題で持ちきりですが、ビジネスの世界で皆が気になるのは、やはり、今回の件で資金が回らなくなり倒産する企業がどのくらい出るか、でしょう。

 

 日経新聞の202041日付の記事(https://www.nikkei.com/article/DGXKZO57494840R00C20A4EA2000/)によると、企業の手元資金について「一般的には月商の3カ月前後を確保する企業が多い」とのことだったので、単純計算で、3か月ほど完全に収入がないと、多くの企業で資金が回らなくなると予想されます。中小企業の場合や業種等によっては3か月分も確保していないという企業もかなりあるはずなので、その場合は、もっと短期で限界が来ると思います。

 

 今のところ、緊急事態宣言の期間は48日~56日の約1か月とされていますが、実際にはこれより前から収入がダウンしていた企業が多いと思いますし、緊急事態宣言が56日に終わるかどうか、終わったとしてすぐに収入が戻るかどうかも怪しいので、放っておくと資金が回らなくなってしまうという企業は、かなりの数に上りそうです。

 

 これに対して経営者としては、まず、国や自治体等の資金繰り支援策を利用して対応することになるでしょう。
 ただ、今出されている国の支援策(https://www.meti.go.jp/covid-19/)は、貸付や税金等の支払猶予が多く、資金繰り的にはプラスですが、いわば負債を先送りにしている状態なので、「それを考えるとこれ以上借金をしてまで延命することに意味を感じない」または「延命を図ってはみたものの返済や支払をする見通しが立たない」といった企業が相当数出てくると思います。

 

 こうなったときは、いよいよ倒産を考えることになり、本格的に法律家の出番です。

 

 ある企業が倒産手続を使うという場合、例えば、債務がある程度減れば利益を挙げられる見込みがある、一部に黒字事業がある、といった事情があるのであれば、再建型の手続(私的整理、事業再生、会社更生等)を取れないか、又は事業譲渡等でスポンサーに事業を引き継いでもらうことで事業の一部だけでも残せないか、といった検討をすることになります。

 

 もっとも、そもそも事業の収益力が乏しい、債権カットについて債権者の理解が得られない、スポンサーが見つからないといった場合は、上記を諦めざるを得ないこともあります。
 そうなると、清算型の手続(多くは破産)を検討することになります。

 

 ただし、ここで注意が必要なのですが、破産をするにもまとまったお金が必要になります。
「破産はお金が無くなった人が利用する制度」というイメージがあるため、多くの人が誤解していると思いますが、資金がないと破産すらできなくなってしまうので、資金が完全に底をついてから破産しようとするのでは遅いのです。

 

 破産だけでなく、再建型の手続を取るにしても、手元に一定の資金があれば、時間的猶予が生まれたり選択肢が増えたりしますので、再建するにせよ清算するにせよ、少しでも多く手元資金がある状態で倒産の検討を始めた方が、結果的にベターな選択肢を取りやすくなります。
 経営者にとって酷な話だとは思いますが、倒産が頭をよぎったときは、早めに相談することが大切です。

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 弊事務所では、破産者の管財人に就任して、残っている破産者の財産を集め、債権者に配るという、いわゆる破産管財事件の取り扱いがあるのですが、最近は、労働者の給料を支払わないまま破産してしまった会社の破産管財事件を、多く取り扱っています。

 

 会社にしろ個人にしろ、誰かが破産するという場合、支払わなければならないお金(債務)よりも、持っている財産がかなり少ない状態であることがほとんどです。そのため、たとえ破産者に対してお金を支払ってもらう権利を持っていたとしても、全額を支払ってもらうことは非常に難しいのです。

 これは、労働者の給料についても同じで、破産会社に十分な財産がない以上は、給料を支払ってもらう権利があったとしても、実際には少額しか支払いを受けられないのが原則です。ただし、破産直前まで在籍していた労働者の給料については、例外的に、法律で一定の保護がされており、未払額の8割までを税金で補填してもらえる立替払制度が存在します。

 

 労働者がこの立替払制度を利用するためには、会社の破産管財人から、未払の給料がいくらなのかを計算した証明書を発行してもらう必要があります。そのため、弊事務所でも、破産管財事件の中でこの証明書の発行をしているのですが、これが意外にもかなり大変なのです。

 

 そもそも、未払の給料がいくらなのかを計算するには、「①その人がいくらの給料を受け取るべきなのか?」と「②すでに支払われた金額はいくらか?」について、資料を揃える必要があります。

 ですが、破産する会社は、最後の方はてんやわんやの状態になっていることが多く、労働時間の管理や、給与明細・賃金台帳の作成がきちんとされていないことが多いです。また、かろうじて賃金台帳がある場合も、少しでもコストを下げようと、実際に支払っている金額よりも少ない金額を賃金台帳に書いていたり、残業代を給料計算に含めていなかったりします。

こうなってくると、「①その人がいくらの給料を受け取るべきなのか?」が、管財人の手持ち資料からは分からないので、社長や総務・経理の担当者、労働者本人などから、電話や手紙で聞き取りをして、それを報告書にまとめる作業が必要になってきます。

 

 「②すでに支払われた金額はいくらか?」を確定するのは更に大変です。

毎月遅れなく1人1人に振り込みをしていたり、各労働者への支払金額をきちんと帳簿に付けていたりする会社であれば全く問題ありませんが、大抵はそうではありません。そもそも現金払いだったり、総合給与振込の形が取られているため振込合計額しか分からず、支払いの内訳(誰にいくら支払われたのか)が分からなかったり、未払いが長年続いていて、一体いつの分の給料が支払われているのかが分からなかったりします。

 この場合も、結局は、社長や経理の担当者、労働者1人1人等から聞き取りをして、誰に、いつの分を、いつ、いくら支払ったのか、確定して報告書にまとめなければならなくなります。

 

 このような作業をしていると、平気で証明書の発行までに1ヶ月以上かかったりするので、この作業だけでもかなりの負担感なのですが、地味に一番辛いのが、「とにかく早く証明書を発行してくれ」という労働者からのプレッシャーです。

 証明書が発行されなければ労働者は立替払を受けられないので、当然といえば当然なのですが、労働者は、取引先や借入先と比べて、「会社が破産しても給料が支払われるのは当然である(それなのに支払いが遅れている)」という意識が強いことが多く、また、給料が生活の原資にもなっているので、それらが合わさって、証明書の発行に時間がかかることについて、怒りの感情を持ちやすいのです。労働者の人数が数十人になってくると、証明書の発行についての問い合わせが連日入るような状態になるので、これへの対応も、管財人の重要な(そして大変な)仕事になってきます。

 

 今回は、破産管財事件の裏話をお伝えしました。

 多くの方には直接関係のない話かもしれませんが、コーヒーブレイク的にお読みいただければ幸いです。

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 日本で登録している弁護士は、全国に52ある弁護士会のいずれかに必ず所属しており、一定の事由がある場合(「職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったとき」)には、所属弁護士会から懲戒を受けるとされています(弁護士法第56条)。

 

懲戒の種類は、①戒告(弁護士に反省を求め、戒める処分)、②2年以内の業務停止(一定期間弁護士業務を行うことを禁止する処分)、③退会命令(弁護士たる身分を失うが、弁護士となる資格は失わない処分)、④除名(弁護士たる身分を失い、3年間弁護士となる資格も失う処分)の4つあり(弁護士法第57条第1項)、弁護士会が懲戒相当と判断した場合には、対象弁護士に対して、①~④のいずれかの処分がされることになります。

 

この懲戒請求は、誰でも行うことができ(弁護士法第58条第1項)、懲戒請求があると、まずは、弁護士会の「綱紀委員会」というところで事案の調査がされることになります。

綱紀委員会の調査の中で、対象弁護士は、調査のための説明や資料提出を求められたり、出頭を求められたりすることがあります。

 

調査の結果、綱紀委員会が、「懲戒委員会」の審査を求めるのを相当としたときは、次は、弁護士会の懲戒委員会が、懲戒を相当とするかしないかを判断します。

懲戒相当とされた場合には、上の①~④のいずれかの処分がされることになり、懲戒不相当とされた場合には、懲戒されずに終了することになります。

(厳密には、弁護士会で懲戒相当or不相当と判断された後、判断が不当だと思う場合には、審査請求や異議申出といった方法で日本弁護士連合会に再判断を求めることができます。)

 

 この懲戒請求制度に関し、昨年頃から、誰でも懲戒請求ができることを利用して、大量の不当懲戒請求を行った事案が取り沙汰されています。(同事件を取り上げたNHKの番組のページ:https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4200/index.html

 事案としては、在日外国人の排斥を主張するブログに影響を受けたブログ読者らが、在日コリアンの弁護士や、朝鮮学校への補助金を求める弁護士会声明に賛同したとされる弁護士、その弁護士に多数の懲戒請求書が届いたことを問題視するツイートをした弁護士等に対して、当該ブログに掲載されていた雛形を利用するなどして、大量の懲戒請求をしたというものです。(弁護士1人につき数百~数千通の懲戒請求書が届いたようです。)

 これらはおよそ懲戒事由に当たらないので、現実に懲戒がされることはありませんでしたが、懲戒請求を受けた弁護士らは、不当な懲戒請求への対応を余儀なくされ、損害を被ったとして、懲戒請求者らに対し、損害賠償を求める訴訟を起こしました。(報道によると、懲戒請求者の中には、匿名で懲戒請求ができると考えていた人もいたようですが、実際には、懲戒請求者の氏名と住所は対象弁護士に通知されます。)

 

 弁護士に対する懲戒請求については、本件以前に、最高裁判例(最判平成19424日民集6131102頁)が、「同項(注:弁護士法第58条第1項)に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。」との判断を示しており、一定の場合には不法行為となることが認められています。

 

 今回、懲戒請求の対象となった弁護士等が起こした裁判でも、基本的に弁護士側が勝訴しています。妥当な決着だと思いますが、このような反撃は、訴訟に慣れた弁護士が被害者であり、かつ、数百万円かかると言われている訴訟費用についてカンパが集まったからこそできたことなのだろうと思われ、そうでなければ、反撃を諦めざるを得なかった可能性も高いと思います。

 

 今回の事件は、誰でも利用できる制度だからといって、どのような使い方をしても良いわけではないということを改めて教えてくれるとともに、思いの外簡単に、多くの人が洗脳され、自分の生活に無関係の人間にでさえ集団で害意を向けることがある、という恐ろしい事実をも、改めて世に知らしめたのではないでしょうか。

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 近年ますますグローバル化が進み、家族の中に外国籍の人がいる方や、家族が外国に資産を持っている方も増えているのではないでしょうか。

 このような場合、家族が全員日本国籍で、資産も全て日本国内にあるという方とは違う、難しい問題が起きる可能性があります。

 

 まず、法の適用に関する通則法第36条には次の定めがあります。

「相続は、被相続人の本国法による。」

 

 「本国法」とは、原則として、国籍国の法のことを言いますので、被相続人が外国籍の場合は、その国の法に従って遺産が相続されることになります。

 例えば、韓国籍の夫、日本国籍の妻、日本国籍の子という組み合わせの家族がいて、夫が死亡したという場合、残された妻や子が全員日本国籍であっても、夫の相続については韓国法が適用されることになります。この場合、遺産相続について揉めたりすると、日本人である妻や子が、遺産相続について韓国法がどのような定めをしているのかを確認しなければならなくなりますし、この問題を日本の裁判所と韓国の裁判所のどちらに持ち込むのかといった問題も出てくるため、家族全員が日本国籍者の場合に比べて問題が複雑になります。

 

 また、被相続人が日本国籍の場合は、日本法に従って相続がされることになりますが、その場合でも、被相続人が海外に資産を持っていると、現地の裁判所等で一定の相続手続を取らなければならない場合があります。

 例えば、アメリカのプロベイト手続が代表的ですが、アメリカに不動産や預金を持った状態で亡くなった場合、その人がたとえ日本国籍だったとしても、登記名義や口座名義を変更するには、アメリカの裁判所でプロベイトと呼ばれる手続をしなければならないことがあります。

 

 このように、家族の中に外国籍の人がいたり、家族が外国に資産を持っていたりする場合には、日本国内で完結している場合に比べて、相続の際にややこしい問題が出る可能性が高くなります。

 

 相続の問題は、一般的に、できるだけ問題が起きないように生前に対策しておくことが重要になりますが、特に上記のような方は、事前に家族で話し合ってプランニングしておくことが重要になってきます。また、いざという時にその国の専門家等を探せるよう、その国に詳しい人と繋がっておくことなども重要かもしれません。

 こういったプランニングには時間がかかる場合も多いですので、お心あたりの方は、お早めの計画・対応をおすすめいたします。

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 皆様、先日のNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」(https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20190602)をご覧になりましたか?ネットでもかなり話題になり、再放送もされたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
 この番組は、安楽死を希望する日本人女性が、スイスで安楽死するまでの過程に密着したもので、彼女が亡くなる瞬間も含めて放映されています。私もこの番組を見ましたが、実際に人が安楽死するまでの過程を映像で見るとかなり衝撃的で、改めて多くを考えさせられました。

 

 ところで、安楽死には、「積極的安楽死(直接的安楽死)」、「間接的安楽死」、「消極的安楽死(尊厳死)」の三種類があるとされています。
 積極的安楽死(直接的安楽死)とは、患者を苦痛から解放するために、患者の意思により生命を断つこと、間接的安楽死とは、患者の苦痛の除去・緩和が間接的に死期を若干早めること、消極的安楽死(尊厳死)とは、無益で苦痛をもたらすにすぎない延命措置を中止すること、のことを言います(山口厚「刑法総論 第3版」177ページ)。
 上の定義で言うと、NHKスペシャルの事例は、積極的安楽死(直接的安楽死)に当たりますね。

 

 法律の世界では、安楽死は、死に関する自己決定をどこまで尊重すべきかという文脈で登場することが多く、具体的には、安楽死を実行したり助けたりした医療従事者・家族等を処罰することができるかという形で問題になることが多いです。

 

 日本には、現在、安楽死に関する明確な法制はなく、関連するいくつかの判例があるにとどまっています。
 代表的なところでは、最判平成2112 7日(刑集 63111899頁)、横浜地判平成 7 328日(判タ 877148頁)、名古屋高判昭和371222日(高刑159674頁)などがありますが、例えば、横浜地判平成 7 328日(判タ 877148頁)は、安楽死が許容される要件として、①患者に耐え難い激しい肉体的苦痛が存在すること、②患者について死が避けられず、かつ死期が迫っていること、③患者の意思表示があること(間接的安楽死の場合は推定的意思で足りるが、直接的安楽死の場合は明示の意思表示に限る。)を挙げています。

 

 もっとも、上記いずれの事例についても、患者本人の意思に基づくとは認められないなどの理由で、結果的に被告人(医師)には罪が成立するとされていますので、一般論として、安楽死許容の要件は挙がっているものの、具体的にどのような状況であれば、安楽死を実行・手助けしても刑事責任が問われないのかは、はっきりとは分からないままになっています。
 この点は、今後、明確な法制やガイドラインを作るなどして、医療関係者等が混乱しないようにしていく必要があるように思います。

 

 なお、最近、時たま作成の依頼をいただくことがあるのですが、現在、公証役場で作成できる公正証書の類型に、「尊厳死宣言公正証書」というものがあります。(http://www.koshonin.gr.jp/business/b06/q0603
 これは、公正証書の嘱託人が、将来病気にかかり、回復見込みのない末期状態に至ったときは、尊厳死を望む、すなわち死期を延ばすためだけの延命措置を差し控え、中止する旨等の宣言をし、公証人がその宣言を公正証書の形にするものです。
 この公正証書があることで、患者本人が尊厳死を望んでいることが明確となるため、医療現場としても尊厳死を容認しやすくなると言われています。将来的に、尊厳死を望まれる方は、この公正証書を作成することも検討されると良いのではないかと思います。

 

 今回、番組を通じて社会で話題になったこともあり、安楽死に関しては、今後、日本でもますます議論が進んでいくと予想されます。まだご覧になっていない方には、ぜひNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」のご視聴をおすすめします。

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 働き方改革関連法に続き、影響が大きそうな法改正として、民法(債権法分野)の改正を行う「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)の施行日が迫ってきています。

「民法の一部を改正する法律」は、201762日に公布され、施行日は202041日を予定しています。(一部例外もあります。)

 民法の債権法分野は、1896年(明治29年)に制定されて以降、実質的な内容の改正が行われないまま、今日まで来ました。ですが、流石に100年以上の時が経つと、現在の社会や経済の状況に合わない規定も出てきます。そこで、今回、債権法分野について大規模な改正が行われることになりました。

 ちなみに債権法分野と簡単に言っていますが、「債権」とは「特定人(債権者)が他の特定人(債務者)に対して、一定の行為(給付)を請求することを内容とする権利」(デジタル大辞泉)のことを言い、民法の債権法分野には、この債権の発生・変更・消滅等に関わる様々な規定が含まれます。一口に債権法分野と言っても、その範囲は非常に広いのです。

 さて、「民法の一部を改正する法律」による改正項目は多岐に渡りますが、法務省は、主な改正事項として次の24個を挙げています。(http://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

1.消滅時効に関する見直し                                  2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し                                              4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設                 6.意思能力制度の明文化

7.意思表示に関する見直し                                       8.代理に関する見直し

9.債務不履行による損害賠償の帰責事由の明確化   10.契約解除の要件に関する見直し
11.売主の瑕疵担保責任に関する見直し                     12.原始的不能の場合の損害賠償規定の新設

13.債務者の責任財産の保全のための制度                 14.連帯債務に関する見直し

15. 債務引受に関する見直し                                         16.相殺禁止に関する見直し

17.弁済に関する見直し(第三者弁済)                     18.契約に関する基本原則の明記

19.契約の成立に関する見直し                                    20.危険負担に関する見直し

21.消費貸借に関する見直し                                        22.賃貸借に関する見直し

23.請負に関する見直し                                               24.寄託に関する見直し

 
 また、このうち重要な実質改正事項として、次の5つが挙げられています。(http://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf

1.消滅時効に関する見直し

2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し

4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設

 

 今回、一つ一つの改正項目を解説することはできませんが、これを見ただけで、非常に多くの規定が改正されていることが分かりますね。 

 上記改正により、日常生活でもビジネスでも最も重要な債権の発生原因である契約についての規定が変更されたり、発生した債権が不履行になった場合の取扱いに関する規定が変更されたりしています。今後は、これまで使用していた契約書の雛形等の見直しが必要になってくるでしょう。(現在、民法改正に対応した契約書の雛形集などはあまり充実していませんが、これからどんどん出てくると予想されます。)

 特に事業者の場合、今回の改正が関係しない方はほとんどいないでしょうから、少しずつ、改正への対応を進めていきましょう。

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 今回は、法律の話から離れて、司法試験とその合格者の現状について、お話ししたいと思います。

 

 法曹になるための仕組みは、今から15年前の2004年に大きく変わりました。
 いわゆる法科大学院(ロースクール)ができたのがこの年で、それまで、司法試験は基本的には誰でも受けられる試験だったのですが、法科大学院卒業者が出る2006年以降は、原則として、法科大学院を卒業しなければ、司法試験を受験することができないことになりました。
(※厳密には、2006年から2011年まで、誰でも受験できる旧司法試験と、法科大学院卒業者しか受験できない新司法試験とが併存していたのですが、この点は置いておきます。現在は、新司法試験のみになっていて、原則として法科大学院卒業者しか司法試験を受験できなくなっています。)

 

 旧司法試験は、誰でも受験できることもあって、受験者数が多く、合格率が低い試験でした。法務省のまとめを見ると、2次試験(法的知識の試験)の受験者数が毎年約20,00045,000人なのに対し、合格者数は毎年約5001,000人で、合格率は3%前後でした(http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/press_071108-1_19syutu-gou.html)。
 一方、新司法試験は、受験資格に制限があるため、受験者数が少なく、合格率は高い試験です。受験者数は毎年約8,000人なのに対し、合格者数は毎年約2,000人で、合格率は23%前後になっています。
 旧司法試験は、受けるまでは簡単で受かるのが難しい試験、新司法試験は、受けるまでが難しく受かるのは(比較的)簡単な試験、という感じでしょうか。司法試験と聞くと、まだまだ旧司法試験のイメージが強いので、新司法試験の合格率を聞くと驚かれる方も多いかもしれませんね。

 

 ところで、この(新)司法試験、ここ数年でガクッと受験者も合格者も減っています。

2014年: 受験者8,015人、合格者1,810

2015年: 受験者8,016人、合格者1,850

2016年: 受験者6,899人、合格者1,583

2017年: 受験者5,967人、合格者1,543

2018年: 受験者5,238人、合格者1,525

2019年: 出願者4,930人【参考】

 

 2015年までは、受験者数8,000人を概ね維持していたのですが、2016年から急激に減り始めました。
 そして、次回、20195月に予定されている司法試験は、出願の時点で5,000人を切っているので、受験者は4,000人強と予想されます。今までの合格率を維持するのであれば、合格者は1,000人前後といったところでしょうか。悲しいことですが、近年の法曹不人気を如実に表していると思います。

 

 一時期、急に弁護士の数が増えたことによって、弁護士の就職難が起きていると取り沙汰されましたが、それも今は昔。図らずも司法試験合格者が減って(減らさざるを得なくて)、新人弁護士の数が減っているため、今はむしろ売り手市場と言っても良いような状況になりつつあります。

 

 最後に、司法試験合格者が、その後どのような道に進むか触れておきます。
 現在、一番フレッシュな法曹(候補)は、201812月に司法修習を終えた71期司法修習生になりますが、71期司法修習生の進路は次のとおりです。(参考:https://www.jurinavi.com/market/shuushuusei/shinro/index.php?id=211

 

司法修習修了者  1517

判事任官者      82

検事任官者      69

弁護士登録者    1267

(うち、東京三会登録716人、五大事務所登録194人、組織内弁護士登録52人)

未登録者        99

 

 特徴的なのは、弁護士登録者の半分以上が東京に登録すること、少なくない人数がファーストキャリアに組織内弁護士を選ぶこと、五大事務所が採用数を大きく伸ばしていることかと思います。

 

 72期以降は、更に司法修習修了者が減っていくはずなので、特に東京以外の事務所や東京でも小規模の事務所の新人採用競争は、どんどん厳しくなるだろうと予想されます。
 一方、企業等の組織に入るという道は、弁護士の進路として確立されてきている印象ですので、資格保有者の採用を考えている企業にとってはチャンスかもしれません。

 
 今回は、興味のある人にはある、司法試験の現状をお伝えしました。
 何らか皆様のお役に立てれば幸いです。

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 前回のメルマガで働き方改革関連法について触れましたが、この法律によって派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)も一部改正され、2020年4月1日から、派遣労働者についても同一労働同一賃金が実現されることになりました。これが実務に与える影響はかなり大きいと思われるため、簡単にご紹介します。

 

 派遣労働者については、雇用契約を結ぶ相手である「派遣元企業」と実際の労務提供先である「派遣先企業」が存在しますが、まず、今回の改正により、派遣元企業に対し、派遣労働者について、①派遣先労働者との均衡・均等待遇、又は②一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇、のどちらかを実現することが義務付けられました(改正後派遣法第30条の3、第30条の4)。
 ①派遣先労働者との均衡・均等待遇とは、大まかに言えば、派遣労働者について、派遣先の労働者と仕事の内容や配置の変更の範囲等が同じなのであれば待遇も同じに扱わなければならないし、仕事の内容や配置の変更の範囲等が違うのであれば待遇も違っていて良いが、その待遇の相違は仕事の内容や配置の変更の範囲等の相違とバランスの取れたものでなければならない、という意味合いです。

 

 原則として、派遣元企業には、この①派遣先労働者との均衡・均等待遇の実現が求められます。ただ、①を実現しようとすると、派遣元企業は労働者の派遣先が変わる度にその労働者の待遇を変更しなければならないため、煩雑ですし、派遣元企業内での段階的キャリアアップも図りづらくなります。
 そのため、②一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇を実現する方法も用意されており、派遣元企業が②の方法を取った場合には、①派遣先労働者との均衡・均等待遇の実現は要請されません。派遣労働者の数が多かったり、頻繁に労働者の派遣先が変わったりする派遣元企業は、②の方法を取る方が簡便と思われます。
 ただ、労使協定の内容についても一定の制限があります(賃金の水準が厚労省の定めるもの以上であること等)し、労働者への周知や行政への届出といった手続が必要になるため、②の方法を取ると決めた場合は、早めに労使協定の締結に向けて動く必要がありそうです。

 

 主要な変更点は上記のとおりなのですが、派遣元企業が①の方法を取る場合、派遣先労働者の待遇に関する情報を知らなければ均衡・均等待遇の実現のしようがありませんし、②の方法を取る場合も、教育訓練や福利厚生施設といった一定の事項については派遣先労働者との均衡・均等待遇が求められるため、いずれにしても、派遣元企業は、派遣先労働者の待遇に関する情報を知る必要があります。
 そのため、今回の改正で、派遣先企業には、派遣契約の締結前に派遣元企業に派遣先労働者の待遇に関する情報を提供することが義務付けられ、派遣元企業は、この情報の提供がなかった場合、派遣契約を締結することが禁じられることになりました(改正後派遣法第26条第7項~第9項)。
 派遣元だけでなく、派遣先の方でも改正への対応が必要になりますので、注意が必要です。

 

 上記をまとめると、改正後に労働者の派遣を行う場合には、一般的には次のプロセスを辿ることになると考えられます。

 

派遣元企業が①派遣先労働者との均衡・均等待遇を実現する場合

 派遣先企業が派遣元企業に、派遣先労働者の待遇に関する情報を提供

 

 派遣元企業が労働者の待遇を検討し、決定

 

 派遣元企業・派遣先企業で派遣料金を交渉し、派遣契約を締結

 

 派遣元企業が労働者を派遣

 

派遣元企業が②一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇を実現する場合

 派遣元企業が労使協定を締結

 

 派遣先企業が派遣元企業に、派遣先労働者の待遇に関する情報(一部)を提供

 

 派遣元企業・派遣先企業で派遣料金を交渉し、派遣契約を締結

 

 派遣元企業が労働者を派遣

  

 今回の改正では、上記の仕組みで派遣労働者の同一労働同一賃金が実現されることになりましたが、これが実行された場合、派遣元企業にマージンを支払うこととの関係で、派遣先企業にとっては、派遣労働者を受け入れる方が自社で労働者を直接雇用するよりもコストがかかる可能性が高くなります。
 経済的合理性を考えると、今回の改正によって、今後、派遣労働者の受入れは縮小する方向で進んでいくかもしれませんね。

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