カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 鈴木 萌


 企業ポイントというのは、各社が発行しているポイントで主たる商品を購入した場合におまけとして発行されるもののことですが、企業ポイントを貯めているという方は多いのではないでしょうか。

 かくいう私も近所のコンビニでTポイントを貯めていますし、私の友人には航空会社のマイルを貯めている人もいます。こういったポイントを商品と交換したときはとても得した気分になりますよね。

 

 ところで、企業ポイントを持った状態で人が亡くなった場合、そのポイントを相続することはできるのでしょうか?家族で企業ポイントを集めている人にとっては意外と重要な点だと思いますので、今日はこの問題を見ていきたいと思います。

 

 この問題を考えるにあたっては、まず相続の対象について定めている法律の規定を見る必要があります。この点について、民法896条は次のように規定しています。

 「第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

 

 この条文は、相続の一般的効力として、被相続人の死亡により被相続人に属していた一切の権利義務が、財産の種類や性質、由来等を問わず包括的に相続人に承継される旨を定めるものです。この条文からすれば、企業ポイントについても、これが被相続人の権利であれば相続の対象となるといえます。したがって今回問題となるのは、企業ポイントに権利性があるかどうかです。

 

 この点、普通に考えれば、ポイント保有者はそのポイントを商品やサービスと交換することを意図していますし、ポイント発行企業の側もそのような前提でポイントを発行しています。したがって、企業ポイントはポイント発行企業に対して商品やサービスの贈与を条件付きで要求できる権利であって権利性があるように思えます。

しかし、このように考えるとかなり不都合な問題が生じます。例えば、ポイント発行企業が破産した場合、ポイントが保有者の権利だとするとポイント保有者全員が破産手続きに参加できるはずですし、ポイントが相続の対象になるということは被相続人が持っているポイントの全てが遺産分割の対象になるはずです。でも、発行企業も保有者もそんなことを意図しているでしょうか?

 

 ここからは私見になりますが、企業ポイントがあくまでもおまけ(=保有者がポイントの対価を支払っているわけではない)であることやポイントプログラムの内容を発行企業の側で随時変更できることを考えれば、少なくとも発行企業の側は、ポイント保有者に何らかの権利を保証したとは考えていないのが通常だと思いますし、実質的に考えても企業にそこまでの義務を負わせる根拠は弱いと思います。ポイントを商品やサービスに交換できるのは、ポイント発行企業のサービスの一環にすぎない、すなわち保有者側には⚫⚫ポイントあれば企業から⚫⚫をもらえるだろう、という期待や予測があるだけであって、必ず商品等に交換できる権利があるわけではないと考えるのがより実態に即しているのではないでしょうか。

 

 したがって、(ポイント保有者としては非常に残念ではありますが)保有者と発行企業の間で別途権利性を認める合意でもない限りは、ポイントに権利性はないもの考えて、相続の対象にならないと考えるのが良いのではないかと思います。

 

 現在、企業ポイントの相続については統一的な見解がなく、ポイント発行企業がそれぞれの考え方に従って対応しているようです。しかし、このような運用ですと、相続が発生した際に保有者側でそれぞれのポイントの相続の可否を調べなければならず、保有者側の負担が大きいですし、権利性を巡ってトラブルになりかねません。企業ポイントの法的性質につき、統一的な見解の提示が待たれるところです。

 

 

【参考文献】

松川正毅・窪田充見編「新基本法コンメンタール 相続」39

経済産業省「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会報告書」http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1285493_po_20090120005-3.pdf?contentNo=1

ここ数日,てるみくらぶの破産に関連して多くの報道がされていますが,ネットニュースなどを見ていると,会社が破産すると何が起きるのかについては,あまり認知されていないように感じました。

今回は,会社が破産するとはどういうことか,基本的は事項を振り返りたいと思います。

 

 まず,そもそも会社はどのような場合に破産することができるのでしょうか。

法人が破産できるのは(例外もありますが基本的には)「支払不能」の場合,又は「債務超過」の場合です(破産法161項,151項)。「支払不能」については破産法211項に,「債務超過」については破産法161項にそれぞれ定義規定があるので,詳細はそちらをご覧いただきたいのですが,大雑把に言うと,会社が破産できるのは,会社が持っている財産では会社が負っている債務を弁済しきれない場合ということになります。

 このような事情があると認められる場合,裁判所は,会社からの破産手続開始の申立てに対して,破産手続き開始の決定を出します。

 

 破産手続きが開始されると,弁護士の中から破産管財人が選任され,会社財産をすべてかき集めて債権者に分配する作業を行うことになります。この時,会社財産の管理処分権は破産管財人に専属することになります(破産法761項)ので,会社が普通に営業していた時とは異なり,役員や従業員の判断で会社財産を支出することはできなくなります。つまり,てるみくらぶの例でいえば,顧客が会社に対して旅行代金の返金を求めても,会社には財産を管理処分する権限がないため,会社から顧客に対して返金をすることはできないということになります。

 

 会社から返金してもらえないのであれば,破産管財人に返金してもらえばよいのではないかと思われるかもしれませんが,破産管財人も好き勝手に返金をすることはできません。破産手続きが開始しているということは,通常は,会社財産をすべて集めたところで,会社の債権者全員に分配するには足りないという状況にあります。このような状況で破産管財人が好き勝手に返金を始めると,返金を受けられる債権者と受けられない債権者が出て,不公平になります。これを防ぐため,集めた会社財産を誰にどのような順番で渡すかは,法律で決められており,破産管財人はこれに従って会社財産を分配することになります。

 

 会社財産の分配方法についても少し触れておくと,原則として,債権者は平等ですので,集めた会社財産は債権額に応じて按分して債権者に渡されます。たとえば,会社に対して300万円の債権を持つ債権者A100万円の債権を持つ債権者B2人がいるとして,集めることができた会社財産が100万円であれば,ABには,それぞれ75万円と25万円が渡されることになります。

 しかし,例外的に,優先して会社財産の分配を受けることができる債権が存在します。たとえば,公租公課や破産の手続きを進めるのに必要な費用等(財団債権 破産法1481項)、会社の従業員が持つ労働債権の一部等(優先的破産債権 破産法981項)の債権は、優先的に分配を受けることができます。

 集められた会社財産は、まず優先的に分配を受けることが出来る債権の弁済に充てられ、その債権の弁済後に残った財産が、一般の債権を持つ債権者への弁済に充てられることになります。したがって、一般の債権を持つ債権者が、破産管財人に対し、優先的に分配を受けることができる債権よりも先に自身に財産を分配するように要求したり、自身の債権を優先的な債権と同等に扱うように要求したりしても、破産管財人がこれに応じることはありません。

 

 このような形で会社財産の分配が終わると破産手続きは終わることになります。

 個人の破産の場合,破産手続きが終われば(免責という手続が別途必要ですが),基本的には借金が真っ新な状態になって再スタートということになります。

 しかし,会社の場合はそうではありません。会社は破産手続きの開始決定と同時に解散し(株式会社について会社法4715号,持分会社について会社法6416号),清算の手続きをとることになります(株式会社について会社法4751号,持分会社について会社法6441号)。そして,最終的には消滅します。会社の場合は,個人の場合と異なり,破産手続きの開始決定を受けた時点で,もう2度と事業活動ができないことになりますので,会社にとって破産というのは相当重い選択になります。会社債権者にとっても,破産手続きが,会社に弁済を求める最後の機会ということになりますので,破産手続きの公正性については高い関心が寄せられることが多いでしょう。

 

 会社の破産は,当該会社やその関係者にとって非常に重大な出来事です。会社破産関連の報道等がありましたら,この記事を思い出していただき,ぜひ注目して見て頂ければと思います。

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