カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 鈴木 萌

2018/10/31付の日経新聞に次の記事が掲載されました。

 

「『やせる青汁』根拠なし シエルに課徴金1億円
消費者庁は31日、青汁を飲めば『やせる』と根拠なく宣伝、販売したとして、景品表示法違反(優良誤認)で東京都渋谷区の通信販売会社『シエル』に約1億円の課徴金納付と再発防止を命じた。食品に対する課徴金としては過去最高額。…」

 

 消費者庁「平成 29 年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組」34ページ~41ページ(http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180615_0002.pdf)を見れば分かるのですが、これまで消費者庁が課してきた課徴金の金額は、200万円程度~多くても5000万円程度のことが多く、特に健康食品の場合は、小規模業者が多いためか、課徴金額が数百万円にとどまることも多かったのです。
 その中で、1件で1億円という課徴金額は相当大きく、㈱シエルの事例は、このレベルの課徴金もありうるのだということを世に知らしめる例になったものと思います。

 

 そもそも、景表法5条違反(優良誤認表示・有利誤認表示)の課徴金の額は、課徴金対象期間(課徴金の対象となる行為をした期間)における課徴金にかかる商品の売上額の3%と定められています(景表法第8条第1項)。つまり、違反行為をしている期間が長ければ長いほど、違反行為をして売り上げた額が多ければ多いほど、課徴金の額も上がることになっています。
 ㈱シエルの課徴金対象期間は「平成2841日から平成30730日まで」の約24ヶ月間で、相当長期間ですので、これが課徴金の金額にも響いたものと思われます。

 課徴金納付命令の制度自体、平成284月にできた新しいものなのですが、最近は、前例ができてきたためか、だんだんと積極的に運用されてきているように感じます。
 このくらいであれば…、他もやっているから…、などという理由で宣伝広告物に間違った記載をしていると、ある日突然、行政から景表法違反の指摘が来ることもあります。
 日頃から、景表法違反を起こさないように注意を払いつつ、万が一行政機関から何らかの連絡が来た場合には、直ちに記載を改めるといった対応を取ることが大切です。

2018/7/25付日経新聞に、次の記事が掲載されていました。

「日本マクドナルド バーガー肉で不当表示 消費者庁が措置命令
消費者庁は24日、日本マクドナルドに対し、2017年に限定販売した『東京ローストビーフバーガー』などに『成型肉』を使用したのに『ブロック肉』を使っているかのように不当に表示したのは景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、再発防止を求める措置命令を出した。

 最近のニュースなので、記憶に残っている方も多いかもしれませんね。
 要するに、マクドナルドが景品表示法に違反したという内容なのですが、景品表示法の表示規制は意外に(?)厳しく、何気なくつけた商品名や宣伝文句が規制に引っかかってしまうことがあるのです。

 そもそも、景品表示法は、消費者がより良い商品を選べる環境を守ることを目的として作られた法律で、商品の取引に関する不当表示を規制しています。
 不当表示の規制は、商品の容器・包装上の表示だけではなく、パンフレット、説明書面、ポスター、看板、インターネットをはじめとして、商品に関するあらゆる表示に及びますので、これらの記載の中で、商品の品質や取引条件について、実際のものよりも著しく優良であると示したり、事実に反して競合他社の商品より優良であると示したりすると、景品表示法違反になる可能性が高いです。

 この説明だけでは具体的なイメージが湧きづらいと思いますので、不当表示の具体例として消費者庁が挙げている例を見てみましょう。

 客観的な根拠に基づかないで、商品名に「特選()」、「極上」といった高級感を示す表示をする場合

② 飲食店で提供する料理として「自家製パン」と表示しているが、実際には、市販品のパンを提供している場合

③ (通常何らかの化学物質が使用される)寝具類等の商品において「無添加」との表示をする場合

 ④ 牛の成形肉を焼いた料理のことを「ステーキ」「やわらかステーキ」などと表示する場合

⑤ 包丁の広告において、客観的な根拠に基づかないで、研がなくても長期間切れ味が変わらない旨を表示する場合

⑥ 飲食店で提供する飲料として「フレッシュジュース」と表示しているが、実際には、既製品のジュースや紙パックのジュースをコップに注いで提供している場合

 これらが不当表示の例として挙げられていますが、どれもついついやってしまいそうではないでしょうか?
 事業者としては、広告で消費者を惹きつけようと、深く考えずに、耳障りの良い言葉(「極上」「自家製」「無添加」「ステーキ」「フレッシュ」等)を使ってしまいがちなのですが、根拠なくこういった言葉を使うと、不当表示として、措置命令(消費者庁のウェブサイトでの社名公表を伴います)や課徴金納付命令の対象になってしまうのです。

 景品表示法は、事実に基づかない表示には厳しいです。商品名を考えたり、広告を作ったりする際には、事実に基づかない表現が混ざっていないかよく見て、景品表示法に引っかからないように注意しましょう!

 個人の方の相談を受けているときに多い質問に、「金銭の支払いを求める裁判を起こそうと思っているのですが、裁判で勝ったら、裁判所が相手のお金を探して、取り立ててくれるのですか?」というものがあります。

 このような質問が出てくるのは、裁判所が相手に対して金銭の支払いを命じる判決を出すことから、当然それを実現してくれるのだろうという期待が生まれるためだと思いますが、実際のところ、残念ながら裁判所が相手の財産を探してくれることはありません。

 金銭の支払いを命じる判決が出た場合、原告は、強制執行という手続きを取り、相手の預金や給料を差押えて相手の代わりに弁済を受けたり、相手の財産を換価してその代金の一部を受け取ったりすることでお金を回収することができるようになるのですが、この強制執行の対象になる財産は、原告自身が裁判所に申告しなければなりません。
 つまり、預金を差押えたい場合には、どの銀行・支店に相手の銀行口座があるのかを、給料を差押えたい場合には、相手がどの会社に勤めているのかを、車を差押えたい場合には、相手の車がどのような車種・ナンバーでどこにあるのかといったことを、裁判所に申告する必要があります。

 裁判所はこの申告に従って差押命令を出すことになり、申告された財産が本当に存在しているのか、申告された以外の財産が存在しているのではないか、といったことの調査はしません。(申告どおりに財産が見つかった場合には、申立人はその財産からお金を回収できますし、申告された内容の財産が存在しない場合には差押えは空振りに終わり、費用だけがかかることになります。)

 ですので、訴訟を起こす前に、仮に勝訴判決が出た場合に備えて、強制執行できそうな財産があるか洗い出しておくことが重要になります。

 このとき、真っ先に見つかりやすいのが、不動産や車といった大きな(?)財産なのですが、これらを強制執行の対象とする場合には相当な費用がかかるので注意が必要です。不動産の場合は40~100万円程度、車の場合は10万円程度のお金を、強制執行の申立の段階で裁判所に預け入れるように求められることが多いです。このお金は強制執行の費用等に充てられ、費用に充てられた分は後に相手から取り立てることができるのですが、相手からの取立がうまくいかなければ申立人の負担になってしまいます。

 ですので、このような費用がかかる財産だけでなく、預金や給料といった債権がないかも確認しておいたほうが良いでしょう。(一部金融機関については、勝訴判決を得た後に、弁護士会照会によって預金の有無を確認できる場合があります。)

 訴訟を起こす人にはそれぞれ目的があり、相手に反省を促したい、訴訟を起こすことで和解に繋がる可能性がある、といった事情があることもありますので、相手の財産が見つからないからといって訴訟提起を諦めなければならないわけではありません。ですが、強制執行可能な財産がありそうかどうかということは金銭の支払いを求める訴訟を起こすべきかどうか判断する上で重要な要素になります。
 訴訟を検討する場合には、ぜひ参考にしていただければと思います。

 弊事務所では、破産した会社の財産管理・分配等を行う破産管財案件を扱っていますが、未払賃金の立替払制度の利用を申請する機会が多くあります。今回はこの未払賃金の立替払制度についてご紹介します。

 そもそも、未払賃金の立替払制度は、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、未払賃金の一部を政府が事業主に代わって立替払する制度で、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づいて独立行政法人労働者健康安全機構が実施しています。
 そのため、企業が倒産してしまい従業員に給与が支払われていないという状況が起きた場合には、この制度の利用を検討することになるのですが、利用には一定の条件があり、次のような労働者や労働債権についてしか立替払が実施されません。

対象労働者の範囲(全て満たす必要があります)

①労災保険の適用事業所で1年以上事業活動を行っていた事業主に雇用されており、倒産に伴って賃金が支払われないまま退職した労働者
②裁判所への破産手続開始等の申立日等の6ヶ月前の日から2年以内に当該企業を退職した労働者
③未払になっている賃金等の額について破産管財人等の証明等を受けた労働者

→事業主の事業活動期間が1年に満たない場合や、労働者が破産等申立日の6ヶ月前よりも前に退職している場合、未払になっている賃金等の金額について破産管財人や清算人等から証明を受けられない場合などは、立替払を受けることができません。

対象労働債権の範囲

①賃金台帳や就業規則、給与明細等によって客観的に認定できる範囲の定期賃金・退職金
②上記のうち、退職日の6ヶ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来しているもの

→賃金額について会社が何も資料を残しておらず、労働者側にも資料がないという場合には立替払が難しいことがあります。また、未払期間が退職日よりもあまりに前の場合は、その期間分は立替払の対象に含まれないことになります。

 細かく言えばもっといろいろな条件があるのですが、立替払条件は概ね上記のようになっており、独立行政法人労働者健康安全機構が破産管財人等から提出された資料を精査して上記の条件を満たしていると判断した場合には、認定額の8割について立替払を実施します。
 ただし、立替払金額には年齢に応じて上限があり、30歳未満の労働者は88万円、30歳以上45歳未満の労働者は176万円、45歳以上の労働者は296万円とされています。
 そのため、賃金を支払われない状態で長期間働いていた労働者や賃金額が高い労働者については、この上限に引っかかってしまい、実際の債権額よりも相当低額の立替払しか受けられない場合があるので注意が必要です。

 また、立替払までにかかる期間ですが、立替払の実施までには、①破産管財人等が賃金に関する資料を集めて未払賃金額を算出、証明書を作成→②労働者が立替払の申請書を作成して提出→③労働者健康安全機構が審査、という過程を辿るため、破産開始決定が出てから立替払の実施までに2~4ヶ月程度がかかってしまうことが多いです。

 以上のように、立替払の対象労働者や対象労働債権の範囲に制約があるほか、立替払額の上限もありますが、本来倒産してしまった企業からは回収できない可能性が高い部分についても立替払いしてもらえるため、この制度は労働者にとって強い味方です。ぜひ覚えておいていただければと思います。

 最近、家事関係の相談を受ける機会が多いのですが、中でも養育費は金額がそれなりに大きいこともあり、相談数が多いように思います。
 今回は、比較的トラブルになりやすい、一方の親の再婚が養育費に与える影響についてご紹介します。

 まず、養育費とは子の監護に要する費用のことを言い(民法766条1項)、子に対する扶養義務(民法877条)に基づいて親が支出するものです。両親が離婚する場合には、養育費は、父母がその資力に応じて分担するものとされています。
 未成年の子がいる夫婦が離婚する場合、必ず親権者を決めて離婚することになりますが、通常は親権者が子の監護をすることになりますので、非親権者(=非監護親)が親権者(=監護親)に対して養育費を支払うのが一般的です。

 養育費の具体的な金額や支払期間は、親同士の話し合い、家庭裁判所を利用した調停や審判といった手続きで決めることになりますが、家庭裁判所の審判で決める場合には、東京家庭裁判所が公表している養育費算定表(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf)を基に金額を算出し、子が成人するまでの期間を支払期間とすることが多いかと思います。
(子の監護のために通常よりも多額の出費が予想される場合や、大学への進学が予定されている場合などは、支払金額や期間の決定にあたって考慮される場合もあります。)

 養育費の金額や支払期間は上記のように決まりますが、養育費の支払いは長期に渡ることが多く、支払期間中に一方の親が再婚するという事態が少なからず起こります。

 まず、義務者(=非監護親)が再婚した場合、再婚したからといって子に対する扶養義務がなくなるわけではないため、養育費支払義務がなくなることはありません。
もっとも、義務者は再婚相手に対しても夫婦間の扶助義務を負うことになり、再婚相手が専業主婦である、稼働能力が低い、などの事情から義務者が扶助しなければならない場合には、義務者の扶養人数が増えることになります。また、再婚後に再婚相手との間にも子が出来たという場合には、さらに扶養人数が増えますが、扶養人数が増えたとしても、義務者が扶養のために割ける総額はあまり変わらないことが多いので、扶養人数が増えれば一人一人の受け取り金額は少なくなるのが通常です。
したがって、義務者が再婚した場合、扶養人数が増え、結果として前配偶者との間の子が受け取れる養育費の額が減少するという事態が発生する可能性があります。

 一方、権利者(=監護親)が再婚した場合ですが、権利者が再婚した場合も、それだけでは義務者の扶養義務に変わりがないため、養育費支払義務がなくなることはありません。
 ただし、権利者の再婚相手が子と養子縁組した場合には事情が変わります。養子縁組をすると、再婚相手と子の間に法的な親子関係が形成されるため、再婚相手に子の扶養義務が発生します。再婚相手と子が養子縁組をしても義務者と子の間の親子関係が終了するわけではないため、義務者にも扶養義務は残るのですが、再婚相手の扶養義務が一次的なもの、義務者の扶養義務は二次的なものとなります(東京高決平成28年12月6日WLJ文献番号2016WLJPCA12066007)。
 したがって、子が再婚相手から十分な扶養を受けられている限りは、義務者が養育費を支払う必要はなくなり、義務者は原則として養育費の支払いを免れることになります。

 離婚は非常に身近な問題になってきていますが、養育費の扱いは意外と知られていないようです。皆様のご参考になりましたら幸いです。

 もうすっかり暖かくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 訴訟や相続関係の手続きなど、法的手続きを取ろうとすると、色々な公的書類を揃える必要があります。これらの書類は、一部弁護士の方で取ることができるのですが、どのような書類であれば弁護士に取ってもらうことができるのでしょうか。
 この点は、質問される機会も多いので、この機会に代表的なものをまとめておきたいと思います。

① 住民票
 住民票は、住民基本台帳法に基づき交付請求できる書類で、現住所の市町村役場に請求します。
 住民票には、現住所や本籍地が記載されており、正確な現住所が知りたい場合や本籍地を知りたい場合に取り寄せることがあります。弁護士の業務との関係では、戸籍を取りたいのに本籍地が分からないといった場合に、まず住民票を取り寄せて本籍地を明らかにすることが多いです。

 住民票は、一定の要件を満たす場合には、弁護士や司法書士が取得することができます。具体的には、①弁護士がある事件を受任していて、②その事件の依頼者が、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある等、住民票の交付を受けるについて正当な理由がある場合に、弁護士の方で住民票を取得することができます(住民基本台帳法第12条の32項)。

 ですので、例えば、弁護士が遺産分割調停の申立てを受任して、被相続人の戸籍を集める必要がある場合に、被相続人の住民票を取得して本籍地を調べるといったことは、上の①②を満たすので、許されます。
 上の例以外でも、ご依頼いただいた事件で住民票を取得する必要が出てきたという場合には、①②の要件を満たすことが多いので、多くの場合、弁護士の方で住民票の取得が可能と思われます。

② 戸籍謄本・抄本
 戸籍謄本・抄本は、戸籍法に基づき交付請求できる書類で、戸籍に記載されている人の本籍地の市町村役場に請求します。
 戸籍謄本には、同一戸籍内の全員について、氏名等の他に、戸籍事項(戸籍の編纂日等)や身分事項(出生・婚姻等に関する情報)が載っているため、特定の人の家族関係を明らかにしたい場合に使用されることが多いです。

 戸籍謄本・抄本についても、住民票の場合とほとんど同様で、①弁護士がある事件を受任していて、②その事件を処理するにあたって必要がある場合には、弁護士の方で戸籍謄本・抄本を取得することができます(戸籍法第10条の234項)。

 ですので、戸籍謄本・抄本も、事件を依頼していただいた中で取得する必要が出てきた場合には、ほとんどの場合、弁護士の方で取得することができることになります。

③ 固定資産評価証明書
 固定資産評価証明書は、地方税法に基づき交付請求できる書類で、不動産の所在する市町村役場に請求します。
 固定資産評価証明書には、不動産にかけられる税金の計算根拠となる不動産の評価額が記載されているため、その不動産の評価額を知りたい場合に使用されることが多いです。

 固定資産評価証明書に関しては、取得できる場合が法律と政令によって定まっているのですが、地方税法施行令第52154項において、「民事訴訟費用等に関する法律別表第一の一の項から七の項まで、一〇の項、一一の二の項ロ、一三の項及び一四の項の上欄に掲げる申立てをしようとする者」は、固定資産評価証明書を取得できるとされています。これは、ざっくりまとめてしまえば、当該不動産に関する民事訴訟を提起する場合を示しています。
 全くの第三者である弁護士が固定資産評価証明書を取得できる場合で当てはまりそうなのは上記のみですので、固定資産評価証明書に関しては、当該不動産に関する民事訴訟を提起する場合に限って、弁護士も取得することができるということになります。

④ 課税証明書
 課税証明書は、地方税法に基づき交付請求できる書類で、発行年の11日時点の住所地の市町村役場に請求します。
 課税証明書には、対象者に住民税がいくら課税されたのかが記載されているのと同時に、(自治体によって違いがあるのですが、多くの場合、)課税対象となる収入や所得の金額が記載されているため、課税対象者の収入・所得金額を知りたい場合に使用されます。

 課税証明書に関しては、法律で「地方団体の長は、…(課税)証明書の交付を請求する者があるときは、その者に関するものに限り、これを交付しなければならない。」(地方税法第20条の10)と定められており、弁護士等の完全なる第三者がこれを取得することはできないことになっています。
 したがって、課税証明書に関しては、依頼された事件の処理に必要な場合でも、弁護士の方で取ることはできないので、課税された本人か、本人と同一世帯の親族であれば申請を受け付けている自治体も多いため同一世帯の親族に取得してもらう必要があります。

以上、弁護士の公的書類の取得について、代表的なところをまとめてみました。
弁護士その他の士業にご依頼いただく場合には、ぜひご参照いただければと思います。

 先週は三連休でしたが、皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか?
 私は、友人と温泉に出かけて、とても良い連休を過ごすことができたのですが、その温泉で「あれ?」と思う出来事があったので、ご紹介します。

 先日私が行った温泉には休憩所のようなものが付いており、お風呂上がりに飲み物や食べ物を注文して休憩できるようになっていました。そこには色々な飲み物が用意されていて、ソフトドリンクはどれも300円くらいだったのですが、私は「フレッシュベリージュース(600円くらい)」が気になり、カウンターで注文しました。
 フレッシュベリージュースは、ソフトドリンクメニューとは別枠の健康メニューの1つに入れられていましたし、値段も普通の飲み物の倍くらいしたので、私はてっきり駅ナカのジューススタンドのような感じで、果物をミキサーにかけた状態のものが出てくるのだと思っていました。
 ところが、カウンターの女性が冷蔵庫から取り出したのは、缶入りのジュース。それをガラスのコップに注ぎ、「はい」と手渡されました。

 私は、このときお店の対応にあっけに取られてしまい、そのままそれを受け取ってしまったのですが、実はこのお店側の行為は法的に問題があります。

 どのような点が問題かというと、まず、その場で果物を絞って作ったものではない既製品を「フレッシュジュース」と称して提供することは、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)違反に当たる可能性が高いです。
 すなわち、景品表示法は、商品の内容について、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を不当表示(優良誤認表示)として禁止しています(景品表示法第5条第1号)。「フレッシュジュース」という表示は、消費者に、その場で果物が搾られて作られたものなどの新鮮感のある果実飲料が提供されるか、少なくとも既製品のジュースが提供されることはないという認識を与えるものと考えられます。したがって、「フレッシュジュース」と称して既製品の缶入りジュースを提供することは、景品表示法違反(優良誤認表示)に該当する可能性が高いということになります。(消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」参照)

 そして、景品表示法に違反すると、内閣総理大臣による措置命令の対象になる(景表法第7条第1項)とともに、課徴金納付命令の対象となります(景表法第8条第1項)。消費者庁は、景品表示法違反の情報提供を呼びかけるフォームを公表しています(http://www.caa.go.jp/representation/disobey_form.html)ので、消費者である私としては、このフォームを使ってお店の行為を消費者庁に報告することで、お店の行為を是正できることになります。

 しかし、これだけでは、そのうちお店は商品名を改めるといった対応を取るかもしれませんが、私とお店の間のフレッシュベリージュースの売買契約をなかったことにはできません。
 私は、お店に対して、「私は、その場で絞って作るジュースが提供されると思ってフレッシュベリージュースを買ったので、契約をなかったことにしてお金を返してほしい」と主張することはできるのでしょうか?

 これは、民法上の錯誤(民法第95条)の問題になりますので、法律行為の要素に錯誤があった場合には、私は、「フレッシュベリージュースを売ってほしい」という意思表示の無効を主張することがき、契約をなかったことにできます。
 ここで問題となるのが、その場で絞って作るジュースが提供されると思っていたのに実際は缶入りジュースだったという勘違いが法律行為の要素の錯誤に当たるか否かです。
 この点については、特段類似判例もないのですが、私としては、要素の錯誤に当たり、意思表示の無効を主張できるだろうと考えます。
 なぜなら、要素の錯誤に当たるか否かは、「各法律行為において表意者が意思表示の内容部分となし、この点につき錯誤がなかったならば意思表示をしなかったであろうと考えられ、かつ、表示しないことが一般取引の通念に照らし妥当」と認められるか否か、により判断されるのですが(大判大正7年10月3日参照)、当該ジュースは、「フレッシュ」ベリージュースを標榜しているだけでなく、他のジュース類とは分けて健康メニューに記載されていたり、他の飲み物の倍くらいの値段を取っていたりしたため、一般的にお客さんがフレッシュベリージュースを注文するにあたっては、普通の既製品のジュースとは異なり、生の果実を使うといった付加価値が付いているものと認識し、それを当然の前提として売買契約を結ぼうとすると考えられるためです。
 ですので、今回の場合、その場で絞って作るジュースが提供されると思っていたのに実際は缶入りジュースだったという勘違いは、法律行為の要素の錯誤に当たり、フレッシュベリージュースの売買契約の無効を主張できるものと考えられます。

 誰しも日常生活の中でモヤっとした思いをすることがありますが、その裏には法律問題が隠れていることも多いです。
 もやもやする出来事があったときは、何か関係する法律がないかと探してみると意外な発見があって面白いので、ぜひお試しいただくことをおすすめいたします。

 皆様はサプリメントを飲んだ経験がありますか?
 私は最近毎日飲んでいて、飲むと目に見えて体調が良くなるので、とても便利だと感じています。

 ですが、このサプリメントって薬なのでしょうか?それとも食品なのでしょうか?
 健康を維持するために飲んでいるので薬と言われると違和感がありますが、かといって一般的にいうところの食べ物という感じもしないですよね。
 今回は、薬と食品の概念が法的にどのように分けられているのか、見ていきたいと思います。

  そもそも、薬は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に、食品は「食品衛生法」によって規律されているのですが、薬と食品それぞれの法律上の定義を見てみますと、まず、食品については次のとおりになっています。

食品衛生法
第4条
 この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。

 ざっくり言うと、全ての飲食物から薬を除いたものが食品という形になっていますね。

 続いて、薬(医薬品と医薬部外品)の定義は次のとおりになっています。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
第2条
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(中略)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

2 この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。

一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(中略)であつて機械器具等でないもの

イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止

ロ あせも、ただれ等の防止

ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛

二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(中略)であつて機械器具等でないもの

三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(中略)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

 長々とした定義規定が置かれていますが、薬の場合は、基本的に、使用される目的(医薬品としての目的を有しているかどうか)で定義づけられていると読めます。

 しかし、この定義だけでは、具体的にどのようなものが薬に当たり、どのようなものが薬に当たらないのか判然としませんね。

 そのため、厚生労働省は、この点を明確にするための通達(昭和4661日薬発第476号)を出しており、その中で、薬と食品の限界について、次のように記載しています。

「医薬品とみなす範囲は次のとおりとする。

一)効能効果、形状および用法用量の如何にかかわらず、判断基準の1.に該当する成分本質(原材料)が配合または含有されている場合は、原則として医薬品の範囲とする。

二)判断基準の1.に該当しない成分本質(原材料)が配合または含有されている場合であって、以下のからに示すいずれかに該当するものにあっては、原則として医薬品とみなすものとする。

医薬品的な効能効果を標榜するもの

アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの

用法用量が医薬品的であるもの」

 この定義から、まず、形状等にかかわりなく、厚労省が定めた原材料が含まれている物は、薬として取り扱われることが分かります(上記一)。これは薬のイメージそのままですので、分かりやすいですね。
 ですが、これだけでなく、上記乃至のいずれかに当たるものは、原材料にかかわりなく薬として扱われることが分かります(上記二)。
 例えば、容器・包装等に「糖尿病の人に」と記載されていたり、摂取量として「お休み前に12~3粒」といった指示があったりすると、(成分がどうあれ)法律上は薬として扱われ、薬事法の規制を受けることになります。(栄養機能食品については、摂取量の表示に例外がありますが、その点は省略します。)

 結局のところ、薬と食品は、その成分と上記乃至の基準によって限界づけられているということになりますので、サプリメントについては、一律に薬か食品か結論付けられるものではなく、その成分と販売形態によって、薬になるか食品になるか流動的と言えます。

 上記からすれば、サプリメント等の商品が法律上薬に当たるかどうかは、販売者の側でコントロールできる側面があることが分かります。宣伝文句や説明を漫然と記載してしまうと、上記からの基準に照らして薬と判断されてしまい、薬事法違反として取り扱われてしまうリスクがありますので、経口摂取する商品を扱う皆様にはぜひとも注意をしていただきたいと思います。

先週、東名高速道路で、男が一家の乗った車の進行を妨害して追い越し車線に停車させたところ、後方からきたトラックが一家の乗った車に追突し、両親が死亡したという事故が話題になりました。
警察はこの男を過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)の容疑で逮捕したようですが、世間では、この行為は殺人なのでは?という声も強いようです。
しかし、刑法の解釈上、今回の事件に殺人罪を適用するのは難しいと思います。
では、なぜ今回の事件に殺人罪を適用することが難しいのでしょうか?以下、私見になりますが、少し考えてみたいと思います。

この問題を考えるにあたっては、まず殺人罪がどのような犯罪か考えてみます。
殺人罪とは、平たく言えば わざと人を殺す罪 のことを言います。
これだけを聞くと、わざと危険な追い越し車線に停車させる行為も、わざと人を殺した=殺人罪だと感じてしまいますよね。
しかし、殺人罪はそのような大雑把な要件で成立するわけではなく、殺人罪の成立には、①人が死ぬ現実的な危険性のある行為を②人が死んでもかまわないと考えつつやり、③その結果人が死亡したという事実が必要とされています。

これらの事実の中で今回特に問題になるのが、追い越し車線に停車させる行為が、①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たるか否かと、犯人が停車行為を②人が死んでもかまわないと考えつつやったか否かです。

まず、追い越し車線に停車させる行為が①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たるか否かですが、一般の人がその行為を見た場合に人が死ぬ可能性があると感じる場合には、その行為は①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たると解釈されています。
今回の事件の場合、具体的な現場の状況が不明ですので、はっきりしたことは言えませんが、例えば、現場の交通量が多い、停車させた場所の見通しが悪い、スピードを出している車が多いといった事情があるのであれば、追い越し車線に停車させることによって死傷事故が発生することが予測できます。特に、追い越し車線は、走行車線の車を追い抜くための車線であって、スピードを出している車が多いでしょうから、そこに停車させる行為は、大きな事故に繋がる可能性が高い行為と言え、一般の人から見て人の死亡の危険を感じる行為に当たる可能性が高いといえるのではないかと思います。
したがって、今回の事件の場合も、具体的な状況によりますが、①の要件を満たす可能性はそれなりに高いものと思います。

もっとも、①の要件を満たしたとしても、犯人がそれを②人が死んでもかまわないと考えつつやったと言えるかどうかは問題です。
①の要件を満たす以上は、一般人から見て人が死ぬ可能性の高い行為をしているのだから、犯人も当然人が死んでもかまわないと思ってやっただろう、と思われるかもしれません。しかし、本件の場合、犯人自身も追い越し車線に自分の車を駐めているようであり、かつ、被害者の車を駐めさせた目的は被害者を車からおろして因縁を付けることだったように見受けられます。つまり、犯人は、追い越し車線に被害者の車を駐めさせた後、被害者が死なないことを前提に行動していますし、そもそも、追い越し車線に車を止めれば死傷事故が起きるかもしれないと考えていれば自分の車を追い越し車線に止めるという行為に出ることも考えづらいのではないかと思います。
したがって、本件の場合、犯人には、人が死んでもかまわないとまでは考えていなかったと受け取れる行動が見られるということで、②の要件を満たしていると言うのはなかなか難しいと考えられ、②の要件を満たさない以上は、殺人罪も成立しないという結論になる可能性が高いものと考えられます。

今回の事件については、殺人罪の他にも、危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条)を適用して重く処罰できないかという議論もあったようですが、成立要件との関係で、適用はなかなか難しそうです。
結果として、今回の事件の犯人には過失運転致死傷罪しか適用できないと思われ、社会的な非難の程度よりも刑事責任が軽いという印象がぬぐえません。

このような事態になったそもそもの原因は、法律を作るに当たってこのような事件類型が(おそらく)想定されていなかったところにあると思われます。
今回の事件を機に新しい犯罪類型の創設が検討されるかもしれませんので、今後の動きを注視していきたいと思います。

今回は、保釈についての記事になります。
 「保釈」という言葉は、皆さんもどこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 刑事事件では日常茶飯事と言えるレベルで登場する「保釈」ですが、これは、簡単に言ってしまば、一定額のお金を裁判所に預けて、それと引き換えに、裁判が終わるまでの間、身体拘束を解いてもらうという制度です。裁判所が、被告人を外に出すにあたって一番懸念するのは、裁判から逃亡されてしまうことなのですが、保釈されるには、ある程度多額の保釈金を裁判所に納める必要があり、保釈中に逃亡したり、裁判に出頭しなかったりすると、保釈金が没収されてしまうことがあります(刑訴法962項)。そのため、被告人は逃亡を図ることがしにくくなり、裁判所としては、高い確率で被告人の出頭を確保することができます。そうであれば、わざわざ被告人の身体を拘束しておく理由はなくなり、保釈金と引き換えに外に出した方が、裁判所としても効率的ですし、人権保障の観点からも望ましいということになります。

 保釈は概ね上記のような制度なのですが、どんな人についても保釈が認められるわけではありません。保釈が認められるには、次のような条件が必要とされています。(①は必須で、加えて②又は③に当たることが必要です。)
①対象者が起訴されていること(「被疑者」ではなく「被告人」の地位になっていること)
②刑訴法891項各号のどれにも当たらないこと(権利保釈)

③刑訴法891項各号のどれかに当たってしまう場合でも、逃亡の恐れが高くない、罪証隠滅の恐れが高くない、といった保釈を認めるのが適当な事情があること(裁量保釈、90条)

 ①について、そもそも、保釈の請求の前提条件は、その人が起訴されて「被告人」になっていることです。起訴の前段階では、「被疑者」として、3日間程度の逮捕期間と最大20日間の勾留期間を過ごすことになりますが、この間に保釈の請求をすることはできません。(この間に外に出るための方法としては、勾留に対する準抗告というものがありますが、保釈よりもかなり認められづらいです。)したがって、保釈の請求をしたい場合には、起訴された後に裁判所に保釈請求書を提出しなければなりません。

 ②について、保釈は、法律が定める一定の事情に当たらない場合には、必ず許可しなければならないことになっています(刑訴法891項)。その一定の事情としては、

 ⅰ被告人の犯した罪が、一定以上の重大なものであるとき(1号)

 ⅱ重い前科等があるとき(2号)

 ⅲ常習性をもって一定以上の重さの罪を犯しているとき(3号)

 ⅳ罪証隠滅のおそれがあるとき(4号、5号)

 ⅴ氏名・住所が不明のとき(6号)

があります。したがって、初犯で、重大犯罪とまでは言えない類型の罪を犯した被告人の場合には、罪証隠滅のおそれが低いと認めてもらえれば、保釈が認められる可能性が高いということになります。

 ③について、②の保釈から漏れてしまった被告人(例えば、重大な罪を犯した被告人や、重い前科のある被告人など)にも③のルートで保釈の道が開かれていますが、こちらの類型の保釈については、細かい要件が決まっていません。裁判官が、個別事情を見て、この被告人は外に出しても逃げたりしないし、証拠のねつ造・隠滅等もしなさそうだ、となれば、保釈してもらえる可能性があるということになります。

 上記の要件を満たす人については、保釈請求があれば、裁判所が保釈を許可し、保釈金の額を指定します。被告人がこの金額のお金を裁判所に預けた段階で、被告人の身体拘束は解かれ、外に出られるようになります。
 なお、保釈金の額は、事件の類型や被告人の状況によって異なり、重大な事件ほど、お金を持っている被告人ほど高くなるのが一般的です。
 また、保釈の請求は弁護人がするのが一般的ですが、弁護人だけでなく、被告人や被告人の直系親族・兄弟姉妹等もすることができます。もし何らかの事情で弁護人が付いていない場合でも、被告人や親族が簡単な保釈請求書を書くことで保釈の請求は可能です。

 世間では、一度警察に捕まった人はずっと捕まりっぱなし(無罪にならない限り出てこられない)というイメージが強いように感じますが、保釈の制度を利用することによって、相当な数の被告人が裁判中に釈放されています。
 被告人が保釈されるかどうかは、被告人の生活の観点からも、弁護活動のしやすさの観点からも非常に重要な問題になってきます。ぜひ、自分自身の身を守る手段として、保釈という制度があるということがもっと広まってほしいと思います。

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