カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 鈴木 萌

 皆様はサプリメントを飲んだ経験がありますか?
 私は最近毎日飲んでいて、飲むと目に見えて体調が良くなるので、とても便利だと感じています。

 ですが、このサプリメントって薬なのでしょうか?それとも食品なのでしょうか?
 健康を維持するために飲んでいるので薬と言われると違和感がありますが、かといって一般的にいうところの食べ物という感じもしないですよね。
 今回は、薬と食品の概念が法的にどのように分けられているのか、見ていきたいと思います。

  そもそも、薬は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に、食品は「食品衛生法」によって規律されているのですが、薬と食品それぞれの法律上の定義を見てみますと、まず、食品については次のとおりになっています。

食品衛生法
第4条
 この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。

 ざっくり言うと、全ての飲食物から薬を除いたものが食品という形になっていますね。

 続いて、薬(医薬品と医薬部外品)の定義は次のとおりになっています。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
第2条
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(中略)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

2 この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。

一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(中略)であつて機械器具等でないもの

イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止

ロ あせも、ただれ等の防止

ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛

二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(中略)であつて機械器具等でないもの

三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(中略)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

 長々とした定義規定が置かれていますが、薬の場合は、基本的に、使用される目的(医薬品としての目的を有しているかどうか)で定義づけられていると読めます。

 しかし、この定義だけでは、具体的にどのようなものが薬に当たり、どのようなものが薬に当たらないのか判然としませんね。

 そのため、厚生労働省は、この点を明確にするための通達(昭和4661日薬発第476号)を出しており、その中で、薬と食品の限界について、次のように記載しています。

「医薬品とみなす範囲は次のとおりとする。

一)効能効果、形状および用法用量の如何にかかわらず、判断基準の1.に該当する成分本質(原材料)が配合または含有されている場合は、原則として医薬品の範囲とする。

二)判断基準の1.に該当しない成分本質(原材料)が配合または含有されている場合であって、以下のからに示すいずれかに該当するものにあっては、原則として医薬品とみなすものとする。

医薬品的な効能効果を標榜するもの

アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの

用法用量が医薬品的であるもの」

 この定義から、まず、形状等にかかわりなく、厚労省が定めた原材料が含まれている物は、薬として取り扱われることが分かります(上記一)。これは薬のイメージそのままですので、分かりやすいですね。
 ですが、これだけでなく、上記乃至のいずれかに当たるものは、原材料にかかわりなく薬として扱われることが分かります(上記二)。
 例えば、容器・包装等に「糖尿病の人に」と記載されていたり、摂取量として「お休み前に12~3粒」といった指示があったりすると、(成分がどうあれ)法律上は薬として扱われ、薬事法の規制を受けることになります。(栄養機能食品については、摂取量の表示に例外がありますが、その点は省略します。)

 結局のところ、薬と食品は、その成分と上記乃至の基準によって限界づけられているということになりますので、サプリメントについては、一律に薬か食品か結論付けられるものではなく、その成分と販売形態によって、薬になるか食品になるか流動的と言えます。

 上記からすれば、サプリメント等の商品が法律上薬に当たるかどうかは、販売者の側でコントロールできる側面があることが分かります。宣伝文句や説明を漫然と記載してしまうと、上記からの基準に照らして薬と判断されてしまい、薬事法違反として取り扱われてしまうリスクがありますので、経口摂取する商品を扱う皆様にはぜひとも注意をしていただきたいと思います。

先週、東名高速道路で、男が一家の乗った車の進行を妨害して追い越し車線に停車させたところ、後方からきたトラックが一家の乗った車に追突し、両親が死亡したという事故が話題になりました。
警察はこの男を過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)の容疑で逮捕したようですが、世間では、この行為は殺人なのでは?という声も強いようです。
しかし、刑法の解釈上、今回の事件に殺人罪を適用するのは難しいと思います。
では、なぜ今回の事件に殺人罪を適用することが難しいのでしょうか?以下、私見になりますが、少し考えてみたいと思います。

この問題を考えるにあたっては、まず殺人罪がどのような犯罪か考えてみます。
殺人罪とは、平たく言えば わざと人を殺す罪 のことを言います。
これだけを聞くと、わざと危険な追い越し車線に停車させる行為も、わざと人を殺した=殺人罪だと感じてしまいますよね。
しかし、殺人罪はそのような大雑把な要件で成立するわけではなく、殺人罪の成立には、①人が死ぬ現実的な危険性のある行為を②人が死んでもかまわないと考えつつやり、③その結果人が死亡したという事実が必要とされています。

これらの事実の中で今回特に問題になるのが、追い越し車線に停車させる行為が、①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たるか否かと、犯人が停車行為を②人が死んでもかまわないと考えつつやったか否かです。

まず、追い越し車線に停車させる行為が①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たるか否かですが、一般の人がその行為を見た場合に人が死ぬ可能性があると感じる場合には、その行為は①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たると解釈されています。
今回の事件の場合、具体的な現場の状況が不明ですので、はっきりしたことは言えませんが、例えば、現場の交通量が多い、停車させた場所の見通しが悪い、スピードを出している車が多いといった事情があるのであれば、追い越し車線に停車させることによって死傷事故が発生することが予測できます。特に、追い越し車線は、走行車線の車を追い抜くための車線であって、スピードを出している車が多いでしょうから、そこに停車させる行為は、大きな事故に繋がる可能性が高い行為と言え、一般の人から見て人の死亡の危険を感じる行為に当たる可能性が高いといえるのではないかと思います。
したがって、今回の事件の場合も、具体的な状況によりますが、①の要件を満たす可能性はそれなりに高いものと思います。

もっとも、①の要件を満たしたとしても、犯人がそれを②人が死んでもかまわないと考えつつやったと言えるかどうかは問題です。
①の要件を満たす以上は、一般人から見て人が死ぬ可能性の高い行為をしているのだから、犯人も当然人が死んでもかまわないと思ってやっただろう、と思われるかもしれません。しかし、本件の場合、犯人自身も追い越し車線に自分の車を駐めているようであり、かつ、被害者の車を駐めさせた目的は被害者を車からおろして因縁を付けることだったように見受けられます。つまり、犯人は、追い越し車線に被害者の車を駐めさせた後、被害者が死なないことを前提に行動していますし、そもそも、追い越し車線に車を止めれば死傷事故が起きるかもしれないと考えていれば自分の車を追い越し車線に止めるという行為に出ることも考えづらいのではないかと思います。
したがって、本件の場合、犯人には、人が死んでもかまわないとまでは考えていなかったと受け取れる行動が見られるということで、②の要件を満たしていると言うのはなかなか難しいと考えられ、②の要件を満たさない以上は、殺人罪も成立しないという結論になる可能性が高いものと考えられます。

今回の事件については、殺人罪の他にも、危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条)を適用して重く処罰できないかという議論もあったようですが、成立要件との関係で、適用はなかなか難しそうです。
結果として、今回の事件の犯人には過失運転致死傷罪しか適用できないと思われ、社会的な非難の程度よりも刑事責任が軽いという印象がぬぐえません。

このような事態になったそもそもの原因は、法律を作るに当たってこのような事件類型が(おそらく)想定されていなかったところにあると思われます。
今回の事件を機に新しい犯罪類型の創設が検討されるかもしれませんので、今後の動きを注視していきたいと思います。

今回は、保釈についての記事になります。
 「保釈」という言葉は、皆さんもどこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 刑事事件では日常茶飯事と言えるレベルで登場する「保釈」ですが、これは、簡単に言ってしまば、一定額のお金を裁判所に預けて、それと引き換えに、裁判が終わるまでの間、身体拘束を解いてもらうという制度です。裁判所が、被告人を外に出すにあたって一番懸念するのは、裁判から逃亡されてしまうことなのですが、保釈されるには、ある程度多額の保釈金を裁判所に納める必要があり、保釈中に逃亡したり、裁判に出頭しなかったりすると、保釈金が没収されてしまうことがあります(刑訴法962項)。そのため、被告人は逃亡を図ることがしにくくなり、裁判所としては、高い確率で被告人の出頭を確保することができます。そうであれば、わざわざ被告人の身体を拘束しておく理由はなくなり、保釈金と引き換えに外に出した方が、裁判所としても効率的ですし、人権保障の観点からも望ましいということになります。

 保釈は概ね上記のような制度なのですが、どんな人についても保釈が認められるわけではありません。保釈が認められるには、次のような条件が必要とされています。(①は必須で、加えて②又は③に当たることが必要です。)
①対象者が起訴されていること(「被疑者」ではなく「被告人」の地位になっていること)
②刑訴法891項各号のどれにも当たらないこと(権利保釈)

③刑訴法891項各号のどれかに当たってしまう場合でも、逃亡の恐れが高くない、罪証隠滅の恐れが高くない、といった保釈を認めるのが適当な事情があること(裁量保釈、90条)

 ①について、そもそも、保釈の請求の前提条件は、その人が起訴されて「被告人」になっていることです。起訴の前段階では、「被疑者」として、3日間程度の逮捕期間と最大20日間の勾留期間を過ごすことになりますが、この間に保釈の請求をすることはできません。(この間に外に出るための方法としては、勾留に対する準抗告というものがありますが、保釈よりもかなり認められづらいです。)したがって、保釈の請求をしたい場合には、起訴された後に裁判所に保釈請求書を提出しなければなりません。

 ②について、保釈は、法律が定める一定の事情に当たらない場合には、必ず許可しなければならないことになっています(刑訴法891項)。その一定の事情としては、

 ⅰ被告人の犯した罪が、一定以上の重大なものであるとき(1号)

 ⅱ重い前科等があるとき(2号)

 ⅲ常習性をもって一定以上の重さの罪を犯しているとき(3号)

 ⅳ罪証隠滅のおそれがあるとき(4号、5号)

 ⅴ氏名・住所が不明のとき(6号)

があります。したがって、初犯で、重大犯罪とまでは言えない類型の罪を犯した被告人の場合には、罪証隠滅のおそれが低いと認めてもらえれば、保釈が認められる可能性が高いということになります。

 ③について、②の保釈から漏れてしまった被告人(例えば、重大な罪を犯した被告人や、重い前科のある被告人など)にも③のルートで保釈の道が開かれていますが、こちらの類型の保釈については、細かい要件が決まっていません。裁判官が、個別事情を見て、この被告人は外に出しても逃げたりしないし、証拠のねつ造・隠滅等もしなさそうだ、となれば、保釈してもらえる可能性があるということになります。

 上記の要件を満たす人については、保釈請求があれば、裁判所が保釈を許可し、保釈金の額を指定します。被告人がこの金額のお金を裁判所に預けた段階で、被告人の身体拘束は解かれ、外に出られるようになります。
 なお、保釈金の額は、事件の類型や被告人の状況によって異なり、重大な事件ほど、お金を持っている被告人ほど高くなるのが一般的です。
 また、保釈の請求は弁護人がするのが一般的ですが、弁護人だけでなく、被告人や被告人の直系親族・兄弟姉妹等もすることができます。もし何らかの事情で弁護人が付いていない場合でも、被告人や親族が簡単な保釈請求書を書くことで保釈の請求は可能です。

 世間では、一度警察に捕まった人はずっと捕まりっぱなし(無罪にならない限り出てこられない)というイメージが強いように感じますが、保釈の制度を利用することによって、相当な数の被告人が裁判中に釈放されています。
 被告人が保釈されるかどうかは、被告人の生活の観点からも、弁護活動のしやすさの観点からも非常に重要な問題になってきます。ぜひ、自分自身の身を守る手段として、保釈という制度があるということがもっと広まってほしいと思います。

 日々の業務の中で、本人訴訟にチャレンジしている方から相談を受けることがあるのですが、本人訴訟の意外な躓きポイントが「訴状の送達」です。

 

 そもそも、訴訟は、原告から提出された訴状を、裁判所が被告に送達して初めて始まります。

しかし、訴状の送達先の住所は、原告の方で調べて裁判所に申請しなければなりません(裁判所は調べてくれません)。そのため、原告側からの典型的な相談として、「被告の住民票上の住所に訴状を送ってもらったが、被告がそこに住んでいないようで訴状が届かなかった。どうしたらよいのか。」というような相談が出てきます。

このような場合、原告は訴状を送達するためにどうすれば良いのでしょうか?

 

送達は通常、裁判所書記官が、被告の住所や居所などに特別送達郵便を送るという方法で実施します(民訴法1031項)。しかし、この特別送達郵便は書留郵便等と同様、送達場所にいる被告本人や関係者に受け取ってもらわないと、配達されたことになりません。被告等が受け取らずに放置している場合や被告がそもそも住所等にいない場合には、送達できなかったものとして裁判所に戻ってきてしまいます(一部例外もありますが、今回は省略します)。

 

こうなった場合ですが、民事訴訟法には、原則的な送達場所である住所や居所等に送達できない場合には就業場所に送達できる旨の規定があります(1032項)。したがって、まず、原告の方で被告の就業場所を調査し、就業場所が判明すれば、そちらに送達し直すことになります。就業場所には従業員が多数いる場合が多いでしょうから、住所等に送達する場合よりも訴状を受け取ってもらえる可能性は高まります。

 

しかし、調査しても被告の就業場所が判明しない場合や就業場所にも送達ができなかった場合というのもあり得ます。この場合、原告に残された手段は2つあります。1つは付郵便送達(107条)、もう1つは公示送達(110条)という方法です。

 

付郵便送達は、訴状を書留郵便扱いにして被告の住所等に発送する方法です。この送達方法の特徴は、送達の効果が書留郵便の発送時に生じるところにあります(1073項)。したがって、被告が実際に受け取るか否かに関わりなく、郵便を発送した段階で送達があったものとして扱われることになるため、原告にとっては非常にありがたい送達方法です。

しかし、付郵便送達には一定の制限があり、付郵便送達が有効な送達として扱われるには、書留郵便の宛先である住所等に現実に被告が居住していることが必要とされています(東京高判平成4210日判タ787262頁)。したがって、原告が付郵便送達を使おうとする場合、送達しようとしている場所を調査するなどして、その場所に被告が住んでいるということを証明しなければなりません。これが意外と大変で、実際に送達場所に行って、被告が住んでいるかどうか写真を撮るなどして裁判所に報告するといった作業が必要になってきます。

 

このような調査を経ても被告の住所等が不明で、付郵便送達も使えないという場合、最終的には公示送達を行うことになります。公示送達は、裁判所書記官が、送達書類を保管し、いつでも被告に送達するということを裁判所の掲示板に掲示する形で行われ(111条)、この掲示の開始から2週間が経つと、訴状が被告に送達されたものと扱われます。

したがって、最終手段として公示送達を使うことで、被告の居場所が全くわからなくても訴訟を始めることが可能です。

 

もっとも、公示送達の場合、仮に被告が答弁書を出さずに訴訟を欠席した場合でも、原告の方で証拠を提出して自分の主張を証明しなければなりません(1593項但書)。公示送達以外の送達方法の場合は、被告が裁判に欠席すれば、原告が証拠を出すまでもなく原告の主張が全て認められますので、この点で公示送達は原告に不利です。

また、公示送達で訴訟を始めたとしても、居場所すら分からない被告について資産を把握するのは困難なため、強制執行が難しいのが通常です。特に金銭請求などの場合は、そもそも訴訟を起こす意味があるのかについて慎重に検討する必要があります。

 

 以上のとおり、通常の送達よりも時間や労力はかかりますが、法律上は、被告の居場所が分からなくても、訴訟が起こせる仕組みが整えられています。

 もしも、どこにいるか分からない人や訴訟から逃げ回る人に対して訴訟を起こしたいという場合には、このような送達の方法を検討してみてください。

 


 企業ポイントというのは、各社が発行しているポイントで主たる商品を購入した場合におまけとして発行されるもののことですが、企業ポイントを貯めているという方は多いのではないでしょうか。

 かくいう私も近所のコンビニでTポイントを貯めていますし、私の友人には航空会社のマイルを貯めている人もいます。こういったポイントを商品と交換したときはとても得した気分になりますよね。

 

 ところで、企業ポイントを持った状態で人が亡くなった場合、そのポイントを相続することはできるのでしょうか?家族で企業ポイントを集めている人にとっては意外と重要な点だと思いますので、今日はこの問題を見ていきたいと思います。

 

 この問題を考えるにあたっては、まず相続の対象について定めている法律の規定を見る必要があります。この点について、民法896条は次のように規定しています。

 「第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

 

 この条文は、相続の一般的効力として、被相続人の死亡により被相続人に属していた一切の権利義務が、財産の種類や性質、由来等を問わず包括的に相続人に承継される旨を定めるものです。この条文からすれば、企業ポイントについても、これが被相続人の権利であれば相続の対象となるといえます。したがって今回問題となるのは、企業ポイントに権利性があるかどうかです。

 

 この点、普通に考えれば、ポイント保有者はそのポイントを商品やサービスと交換することを意図していますし、ポイント発行企業の側もそのような前提でポイントを発行しています。したがって、企業ポイントはポイント発行企業に対して商品やサービスの贈与を条件付きで要求できる権利であって権利性があるように思えます。

しかし、このように考えるとかなり不都合な問題が生じます。例えば、ポイント発行企業が破産した場合、ポイントが保有者の権利だとするとポイント保有者全員が破産手続きに参加できるはずですし、ポイントが相続の対象になるということは被相続人が持っているポイントの全てが遺産分割の対象になるはずです。でも、発行企業も保有者もそんなことを意図しているでしょうか?

 

 ここからは私見になりますが、企業ポイントがあくまでもおまけ(=保有者がポイントの対価を支払っているわけではない)であることやポイントプログラムの内容を発行企業の側で随時変更できることを考えれば、少なくとも発行企業の側は、ポイント保有者に何らかの権利を保証したとは考えていないのが通常だと思いますし、実質的に考えても企業にそこまでの義務を負わせる根拠は弱いと思います。ポイントを商品やサービスに交換できるのは、ポイント発行企業のサービスの一環にすぎない、すなわち保有者側には⚫⚫ポイントあれば企業から⚫⚫をもらえるだろう、という期待や予測があるだけであって、必ず商品等に交換できる権利があるわけではないと考えるのがより実態に即しているのではないでしょうか。

 

 したがって、(ポイント保有者としては非常に残念ではありますが)保有者と発行企業の間で別途権利性を認める合意でもない限りは、ポイントに権利性はないもの考えて、相続の対象にならないと考えるのが良いのではないかと思います。

 

 現在、企業ポイントの相続については統一的な見解がなく、ポイント発行企業がそれぞれの考え方に従って対応しているようです。しかし、このような運用ですと、相続が発生した際に保有者側でそれぞれのポイントの相続の可否を調べなければならず、保有者側の負担が大きいですし、権利性を巡ってトラブルになりかねません。企業ポイントの法的性質につき、統一的な見解の提示が待たれるところです。

 

 

【参考文献】

松川正毅・窪田充見編「新基本法コンメンタール 相続」39

経済産業省「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会報告書」http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1285493_po_20090120005-3.pdf?contentNo=1

ここ数日,てるみくらぶの破産に関連して多くの報道がされていますが,ネットニュースなどを見ていると,会社が破産すると何が起きるのかについては,あまり認知されていないように感じました。

今回は,会社が破産するとはどういうことか,基本的は事項を振り返りたいと思います。

 

 まず,そもそも会社はどのような場合に破産することができるのでしょうか。

法人が破産できるのは(例外もありますが基本的には)「支払不能」の場合,又は「債務超過」の場合です(破産法161項,151項)。「支払不能」については破産法211項に,「債務超過」については破産法161項にそれぞれ定義規定があるので,詳細はそちらをご覧いただきたいのですが,大雑把に言うと,会社が破産できるのは,会社が持っている財産では会社が負っている債務を弁済しきれない場合ということになります。

 このような事情があると認められる場合,裁判所は,会社からの破産手続開始の申立てに対して,破産手続き開始の決定を出します。

 

 破産手続きが開始されると,弁護士の中から破産管財人が選任され,会社財産をすべてかき集めて債権者に分配する作業を行うことになります。この時,会社財産の管理処分権は破産管財人に専属することになります(破産法761項)ので,会社が普通に営業していた時とは異なり,役員や従業員の判断で会社財産を支出することはできなくなります。つまり,てるみくらぶの例でいえば,顧客が会社に対して旅行代金の返金を求めても,会社には財産を管理処分する権限がないため,会社から顧客に対して返金をすることはできないということになります。

 

 会社から返金してもらえないのであれば,破産管財人に返金してもらえばよいのではないかと思われるかもしれませんが,破産管財人も好き勝手に返金をすることはできません。破産手続きが開始しているということは,通常は,会社財産をすべて集めたところで,会社の債権者全員に分配するには足りないという状況にあります。このような状況で破産管財人が好き勝手に返金を始めると,返金を受けられる債権者と受けられない債権者が出て,不公平になります。これを防ぐため,集めた会社財産を誰にどのような順番で渡すかは,法律で決められており,破産管財人はこれに従って会社財産を分配することになります。

 

 会社財産の分配方法についても少し触れておくと,原則として,債権者は平等ですので,集めた会社財産は債権額に応じて按分して債権者に渡されます。たとえば,会社に対して300万円の債権を持つ債権者A100万円の債権を持つ債権者B2人がいるとして,集めることができた会社財産が100万円であれば,ABには,それぞれ75万円と25万円が渡されることになります。

 しかし,例外的に,優先して会社財産の分配を受けることができる債権が存在します。たとえば,公租公課や破産の手続きを進めるのに必要な費用等(財団債権 破産法1481項)、会社の従業員が持つ労働債権の一部等(優先的破産債権 破産法981項)の債権は、優先的に分配を受けることができます。

 集められた会社財産は、まず優先的に分配を受けることが出来る債権の弁済に充てられ、その債権の弁済後に残った財産が、一般の債権を持つ債権者への弁済に充てられることになります。したがって、一般の債権を持つ債権者が、破産管財人に対し、優先的に分配を受けることができる債権よりも先に自身に財産を分配するように要求したり、自身の債権を優先的な債権と同等に扱うように要求したりしても、破産管財人がこれに応じることはありません。

 

 このような形で会社財産の分配が終わると破産手続きは終わることになります。

 個人の破産の場合,破産手続きが終われば(免責という手続が別途必要ですが),基本的には借金が真っ新な状態になって再スタートということになります。

 しかし,会社の場合はそうではありません。会社は破産手続きの開始決定と同時に解散し(株式会社について会社法4715号,持分会社について会社法6416号),清算の手続きをとることになります(株式会社について会社法4751号,持分会社について会社法6441号)。そして,最終的には消滅します。会社の場合は,個人の場合と異なり,破産手続きの開始決定を受けた時点で,もう2度と事業活動ができないことになりますので,会社にとって破産というのは相当重い選択になります。会社債権者にとっても,破産手続きが,会社に弁済を求める最後の機会ということになりますので,破産手続きの公正性については高い関心が寄せられることが多いでしょう。

 

 会社の破産は,当該会社やその関係者にとって非常に重大な出来事です。会社破産関連の報道等がありましたら,この記事を思い出していただき,ぜひ注目して見て頂ければと思います。

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