カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 鈴木 萌

今回は、保釈についての記事になります。
 「保釈」という言葉は、皆さんもどこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 刑事事件では日常茶飯事と言えるレベルで登場する「保釈」ですが、これは、簡単に言ってしまば、一定額のお金を裁判所に預けて、それと引き換えに、裁判が終わるまでの間、身体拘束を解いてもらうという制度です。裁判所が、被告人を外に出すにあたって一番懸念するのは、裁判から逃亡されてしまうことなのですが、保釈されるには、ある程度多額の保釈金を裁判所に納める必要があり、保釈中に逃亡したり、裁判に出頭しなかったりすると、保釈金が没収されてしまうことがあります(刑訴法962項)。そのため、被告人は逃亡を図ることがしにくくなり、裁判所としては、高い確率で被告人の出頭を確保することができます。そうであれば、わざわざ被告人の身体を拘束しておく理由はなくなり、保釈金と引き換えに外に出した方が、裁判所としても効率的ですし、人権保障の観点からも望ましいということになります。

 保釈は概ね上記のような制度なのですが、どんな人についても保釈が認められるわけではありません。保釈が認められるには、次のような条件が必要とされています。(①は必須で、加えて②又は③に当たることが必要です。)
①対象者が起訴されていること(「被疑者」ではなく「被告人」の地位になっていること)
②刑訴法891項各号のどれにも当たらないこと(権利保釈)

③刑訴法891項各号のどれかに当たってしまう場合でも、逃亡の恐れが高くない、罪証隠滅の恐れが高くない、といった保釈を認めるのが適当な事情があること(裁量保釈、90条)

 ①について、そもそも、保釈の請求の前提条件は、その人が起訴されて「被告人」になっていることです。起訴の前段階では、「被疑者」として、3日間程度の逮捕期間と最大20日間の勾留期間を過ごすことになりますが、この間に保釈の請求をすることはできません。(この間に外に出るための方法としては、勾留に対する準抗告というものがありますが、保釈よりもかなり認められづらいです。)したがって、保釈の請求をしたい場合には、起訴された後に裁判所に保釈請求書を提出しなければなりません。

 ②について、保釈は、法律が定める一定の事情に当たらない場合には、必ず許可しなければならないことになっています(刑訴法891項)。その一定の事情としては、

 ⅰ被告人の犯した罪が、一定以上の重大なものであるとき(1号)

 ⅱ重い前科等があるとき(2号)

 ⅲ常習性をもって一定以上の重さの罪を犯しているとき(3号)

 ⅳ罪証隠滅のおそれがあるとき(4号、5号)

 ⅴ氏名・住所が不明のとき(6号)

があります。したがって、初犯で、重大犯罪とまでは言えない類型の罪を犯した被告人の場合には、罪証隠滅のおそれが低いと認めてもらえれば、保釈が認められる可能性が高いということになります。

 ③について、②の保釈から漏れてしまった被告人(例えば、重大な罪を犯した被告人や、重い前科のある被告人など)にも③のルートで保釈の道が開かれていますが、こちらの類型の保釈については、細かい要件が決まっていません。裁判官が、個別事情を見て、この被告人は外に出しても逃げたりしないし、証拠のねつ造・隠滅等もしなさそうだ、となれば、保釈してもらえる可能性があるということになります。

 上記の要件を満たす人については、保釈請求があれば、裁判所が保釈を許可し、保釈金の額を指定します。被告人がこの金額のお金を裁判所に預けた段階で、被告人の身体拘束は解かれ、外に出られるようになります。
 なお、保釈金の額は、事件の類型や被告人の状況によって異なり、重大な事件ほど、お金を持っている被告人ほど高くなるのが一般的です。
 また、保釈の請求は弁護人がするのが一般的ですが、弁護人だけでなく、被告人や被告人の直系親族・兄弟姉妹等もすることができます。もし何らかの事情で弁護人が付いていない場合でも、被告人や親族が簡単な保釈請求書を書くことで保釈の請求は可能です。

 世間では、一度警察に捕まった人はずっと捕まりっぱなし(無罪にならない限り出てこられない)というイメージが強いように感じますが、保釈の制度を利用することによって、相当な数の被告人が裁判中に釈放されています。
 被告人が保釈されるかどうかは、被告人の生活の観点からも、弁護活動のしやすさの観点からも非常に重要な問題になってきます。ぜひ、自分自身の身を守る手段として、保釈という制度があるということがもっと広まってほしいと思います。

 日々の業務の中で、本人訴訟にチャレンジしている方から相談を受けることがあるのですが、本人訴訟の意外な躓きポイントが「訴状の送達」です。

 

 そもそも、訴訟は、原告から提出された訴状を、裁判所が被告に送達して初めて始まります。

しかし、訴状の送達先の住所は、原告の方で調べて裁判所に申請しなければなりません(裁判所は調べてくれません)。そのため、原告側からの典型的な相談として、「被告の住民票上の住所に訴状を送ってもらったが、被告がそこに住んでいないようで訴状が届かなかった。どうしたらよいのか。」というような相談が出てきます。

このような場合、原告は訴状を送達するためにどうすれば良いのでしょうか?

 

送達は通常、裁判所書記官が、被告の住所や居所などに特別送達郵便を送るという方法で実施します(民訴法1031項)。しかし、この特別送達郵便は書留郵便等と同様、送達場所にいる被告本人や関係者に受け取ってもらわないと、配達されたことになりません。被告等が受け取らずに放置している場合や被告がそもそも住所等にいない場合には、送達できなかったものとして裁判所に戻ってきてしまいます(一部例外もありますが、今回は省略します)。

 

こうなった場合ですが、民事訴訟法には、原則的な送達場所である住所や居所等に送達できない場合には就業場所に送達できる旨の規定があります(1032項)。したがって、まず、原告の方で被告の就業場所を調査し、就業場所が判明すれば、そちらに送達し直すことになります。就業場所には従業員が多数いる場合が多いでしょうから、住所等に送達する場合よりも訴状を受け取ってもらえる可能性は高まります。

 

しかし、調査しても被告の就業場所が判明しない場合や就業場所にも送達ができなかった場合というのもあり得ます。この場合、原告に残された手段は2つあります。1つは付郵便送達(107条)、もう1つは公示送達(110条)という方法です。

 

付郵便送達は、訴状を書留郵便扱いにして被告の住所等に発送する方法です。この送達方法の特徴は、送達の効果が書留郵便の発送時に生じるところにあります(1073項)。したがって、被告が実際に受け取るか否かに関わりなく、郵便を発送した段階で送達があったものとして扱われることになるため、原告にとっては非常にありがたい送達方法です。

しかし、付郵便送達には一定の制限があり、付郵便送達が有効な送達として扱われるには、書留郵便の宛先である住所等に現実に被告が居住していることが必要とされています(東京高判平成4210日判タ787262頁)。したがって、原告が付郵便送達を使おうとする場合、送達しようとしている場所を調査するなどして、その場所に被告が住んでいるということを証明しなければなりません。これが意外と大変で、実際に送達場所に行って、被告が住んでいるかどうか写真を撮るなどして裁判所に報告するといった作業が必要になってきます。

 

このような調査を経ても被告の住所等が不明で、付郵便送達も使えないという場合、最終的には公示送達を行うことになります。公示送達は、裁判所書記官が、送達書類を保管し、いつでも被告に送達するということを裁判所の掲示板に掲示する形で行われ(111条)、この掲示の開始から2週間が経つと、訴状が被告に送達されたものと扱われます。

したがって、最終手段として公示送達を使うことで、被告の居場所が全くわからなくても訴訟を始めることが可能です。

 

もっとも、公示送達の場合、仮に被告が答弁書を出さずに訴訟を欠席した場合でも、原告の方で証拠を提出して自分の主張を証明しなければなりません(1593項但書)。公示送達以外の送達方法の場合は、被告が裁判に欠席すれば、原告が証拠を出すまでもなく原告の主張が全て認められますので、この点で公示送達は原告に不利です。

また、公示送達で訴訟を始めたとしても、居場所すら分からない被告について資産を把握するのは困難なため、強制執行が難しいのが通常です。特に金銭請求などの場合は、そもそも訴訟を起こす意味があるのかについて慎重に検討する必要があります。

 

 以上のとおり、通常の送達よりも時間や労力はかかりますが、法律上は、被告の居場所が分からなくても、訴訟が起こせる仕組みが整えられています。

 もしも、どこにいるか分からない人や訴訟から逃げ回る人に対して訴訟を起こしたいという場合には、このような送達の方法を検討してみてください。

 


 企業ポイントというのは、各社が発行しているポイントで主たる商品を購入した場合におまけとして発行されるもののことですが、企業ポイントを貯めているという方は多いのではないでしょうか。

 かくいう私も近所のコンビニでTポイントを貯めていますし、私の友人には航空会社のマイルを貯めている人もいます。こういったポイントを商品と交換したときはとても得した気分になりますよね。

 

 ところで、企業ポイントを持った状態で人が亡くなった場合、そのポイントを相続することはできるのでしょうか?家族で企業ポイントを集めている人にとっては意外と重要な点だと思いますので、今日はこの問題を見ていきたいと思います。

 

 この問題を考えるにあたっては、まず相続の対象について定めている法律の規定を見る必要があります。この点について、民法896条は次のように規定しています。

 「第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

 

 この条文は、相続の一般的効力として、被相続人の死亡により被相続人に属していた一切の権利義務が、財産の種類や性質、由来等を問わず包括的に相続人に承継される旨を定めるものです。この条文からすれば、企業ポイントについても、これが被相続人の権利であれば相続の対象となるといえます。したがって今回問題となるのは、企業ポイントに権利性があるかどうかです。

 

 この点、普通に考えれば、ポイント保有者はそのポイントを商品やサービスと交換することを意図していますし、ポイント発行企業の側もそのような前提でポイントを発行しています。したがって、企業ポイントはポイント発行企業に対して商品やサービスの贈与を条件付きで要求できる権利であって権利性があるように思えます。

しかし、このように考えるとかなり不都合な問題が生じます。例えば、ポイント発行企業が破産した場合、ポイントが保有者の権利だとするとポイント保有者全員が破産手続きに参加できるはずですし、ポイントが相続の対象になるということは被相続人が持っているポイントの全てが遺産分割の対象になるはずです。でも、発行企業も保有者もそんなことを意図しているでしょうか?

 

 ここからは私見になりますが、企業ポイントがあくまでもおまけ(=保有者がポイントの対価を支払っているわけではない)であることやポイントプログラムの内容を発行企業の側で随時変更できることを考えれば、少なくとも発行企業の側は、ポイント保有者に何らかの権利を保証したとは考えていないのが通常だと思いますし、実質的に考えても企業にそこまでの義務を負わせる根拠は弱いと思います。ポイントを商品やサービスに交換できるのは、ポイント発行企業のサービスの一環にすぎない、すなわち保有者側には⚫⚫ポイントあれば企業から⚫⚫をもらえるだろう、という期待や予測があるだけであって、必ず商品等に交換できる権利があるわけではないと考えるのがより実態に即しているのではないでしょうか。

 

 したがって、(ポイント保有者としては非常に残念ではありますが)保有者と発行企業の間で別途権利性を認める合意でもない限りは、ポイントに権利性はないもの考えて、相続の対象にならないと考えるのが良いのではないかと思います。

 

 現在、企業ポイントの相続については統一的な見解がなく、ポイント発行企業がそれぞれの考え方に従って対応しているようです。しかし、このような運用ですと、相続が発生した際に保有者側でそれぞれのポイントの相続の可否を調べなければならず、保有者側の負担が大きいですし、権利性を巡ってトラブルになりかねません。企業ポイントの法的性質につき、統一的な見解の提示が待たれるところです。

 

 

【参考文献】

松川正毅・窪田充見編「新基本法コンメンタール 相続」39

経済産業省「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会報告書」http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1285493_po_20090120005-3.pdf?contentNo=1

ここ数日,てるみくらぶの破産に関連して多くの報道がされていますが,ネットニュースなどを見ていると,会社が破産すると何が起きるのかについては,あまり認知されていないように感じました。

今回は,会社が破産するとはどういうことか,基本的は事項を振り返りたいと思います。

 

 まず,そもそも会社はどのような場合に破産することができるのでしょうか。

法人が破産できるのは(例外もありますが基本的には)「支払不能」の場合,又は「債務超過」の場合です(破産法161項,151項)。「支払不能」については破産法211項に,「債務超過」については破産法161項にそれぞれ定義規定があるので,詳細はそちらをご覧いただきたいのですが,大雑把に言うと,会社が破産できるのは,会社が持っている財産では会社が負っている債務を弁済しきれない場合ということになります。

 このような事情があると認められる場合,裁判所は,会社からの破産手続開始の申立てに対して,破産手続き開始の決定を出します。

 

 破産手続きが開始されると,弁護士の中から破産管財人が選任され,会社財産をすべてかき集めて債権者に分配する作業を行うことになります。この時,会社財産の管理処分権は破産管財人に専属することになります(破産法761項)ので,会社が普通に営業していた時とは異なり,役員や従業員の判断で会社財産を支出することはできなくなります。つまり,てるみくらぶの例でいえば,顧客が会社に対して旅行代金の返金を求めても,会社には財産を管理処分する権限がないため,会社から顧客に対して返金をすることはできないということになります。

 

 会社から返金してもらえないのであれば,破産管財人に返金してもらえばよいのではないかと思われるかもしれませんが,破産管財人も好き勝手に返金をすることはできません。破産手続きが開始しているということは,通常は,会社財産をすべて集めたところで,会社の債権者全員に分配するには足りないという状況にあります。このような状況で破産管財人が好き勝手に返金を始めると,返金を受けられる債権者と受けられない債権者が出て,不公平になります。これを防ぐため,集めた会社財産を誰にどのような順番で渡すかは,法律で決められており,破産管財人はこれに従って会社財産を分配することになります。

 

 会社財産の分配方法についても少し触れておくと,原則として,債権者は平等ですので,集めた会社財産は債権額に応じて按分して債権者に渡されます。たとえば,会社に対して300万円の債権を持つ債権者A100万円の債権を持つ債権者B2人がいるとして,集めることができた会社財産が100万円であれば,ABには,それぞれ75万円と25万円が渡されることになります。

 しかし,例外的に,優先して会社財産の分配を受けることができる債権が存在します。たとえば,公租公課や破産の手続きを進めるのに必要な費用等(財団債権 破産法1481項)、会社の従業員が持つ労働債権の一部等(優先的破産債権 破産法981項)の債権は、優先的に分配を受けることができます。

 集められた会社財産は、まず優先的に分配を受けることが出来る債権の弁済に充てられ、その債権の弁済後に残った財産が、一般の債権を持つ債権者への弁済に充てられることになります。したがって、一般の債権を持つ債権者が、破産管財人に対し、優先的に分配を受けることができる債権よりも先に自身に財産を分配するように要求したり、自身の債権を優先的な債権と同等に扱うように要求したりしても、破産管財人がこれに応じることはありません。

 

 このような形で会社財産の分配が終わると破産手続きは終わることになります。

 個人の破産の場合,破産手続きが終われば(免責という手続が別途必要ですが),基本的には借金が真っ新な状態になって再スタートということになります。

 しかし,会社の場合はそうではありません。会社は破産手続きの開始決定と同時に解散し(株式会社について会社法4715号,持分会社について会社法6416号),清算の手続きをとることになります(株式会社について会社法4751号,持分会社について会社法6441号)。そして,最終的には消滅します。会社の場合は,個人の場合と異なり,破産手続きの開始決定を受けた時点で,もう2度と事業活動ができないことになりますので,会社にとって破産というのは相当重い選択になります。会社債権者にとっても,破産手続きが,会社に弁済を求める最後の機会ということになりますので,破産手続きの公正性については高い関心が寄せられることが多いでしょう。

 

 会社の破産は,当該会社やその関係者にとって非常に重大な出来事です。会社破産関連の報道等がありましたら,この記事を思い出していただき,ぜひ注目して見て頂ければと思います。

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