カテゴリ: その他法律

霞が関にある弁護士会館は日比谷公園の向かいにあり、休憩スペースからは日比谷公園を上から見下ろすことができるので、都会の中にある自然を観ながら休憩している方(多くは弁護士)をよく見かけます。

 

最近休憩スペースから日比谷公園側を観てみると、帝国ホテルの並びに一つだけ突出した巨大なビルが建設中でした。調べてみると新日比谷プロジェクト(仮称)という高層ビル計画だそうです。高さは約191mになるそうで、最近建設された渋谷ヒカリエが約182mなので、それよりも9m程度高い高層ビルになります。

この高層ビルはオフィスビルですが、低層階は商業施設になり、巨大な映画館も入るということなので、映画好きとしては今から楽しみです。

 

この高層ビルは日比谷公園沿いの他の建物と比較すると、一つだけ目立って高いので、そんなに高いビルが建てられるのかなぁと、違和感がありました。

というのも、ご存知の方も多いと思いますが、たとえ自分の土地だとしても、自分で自由に高さや大きさを決めて建物を建てられるわけではなく、建築基準法や都市計画法等の規制がかかり、ビルを建てるにしてもその高さには限界があるためです。

 

建築できる建物の高さについて説明すると、まず建物を建てようとする土地の面積(敷地面積)のうち建物を建築することが可能な面積(建築面積)が地域によって異なります。この敷地面積に対する建築面積の割合を「建ぺい率」といいます(建築基準法53条)。例えば建ぺい率が60%だと、100坪の土地に、最大60坪の面積に建物を建築することができます。

次に、敷地面積に対する、建物の床面積の合計(延床面積)の割合も地域によって決まっており、これを容積率といいます(建築基準法52条)。この容積率によって建築する建物の高さの限界が決まります。ただし、延床面積のうち、例えばエレベーターの面積分は容積率の計算対象にはならない等の取扱いがなされています。

容積率は住居地域なら200%や300%程度になりますが、低層住居専用地域ならもっと低くなり、例えば田園調布の容積率は80%程度しかありません。商業地域は概ね600%~800%になるため、商業地域では高い建物を建てることができます。

 

さて、本件の日比谷の高層ビルの所在地である東京都千代田区有楽町一丁目1番の建ぺい率と容積率を調べてみると、建ぺい率が80%、容積率が900%と定められていました。

また、公示されている建築計画をみると、敷地面積は約10,702㎡で、延床面積のうち容積率の対象面積は約155,180㎡でした。

ここで容積率の対象になる延床面積から容積率を計算してみると、155,180㎡÷10,702㎡×1001450(%)となり、この地区の容積率900%を550%も超えていました!

 

それではこの高層ビルは違法建築なのか、というとそうではなく、実は「都市再生特別措置法」という法律によって、「都市再生特別地区」の都市計画決定を受ければ、容積率等の制限の緩和を受けることができるのです。

その観点から東京都千代田区有楽町一丁目1番を調べてみると、きちんと都市再生特別地区の都市計画決定を受けており、容積率が「900%」から「1450%」に緩和されています(都市再生特別地区状況一覧http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/toshisaisei/04toushi/h270401ketteijoukyou.pdf)。

 

この都市再生特別地区の都市計画決定を受けて、高層ビルや延床面積の大きい建物を建築している例は結構あります。上述の渋谷ヒカリエや、丸の内のJPタワー、銀座の歌舞伎座タワーやGINZA SIX、大阪のあべのハルカス等があります。

 

最近の高層ビルは、スタイリッシュなものが多く、どのように空間を生かし、どのような機能性を有しているのかを見るのは面白いですね。

今回の日比谷の高層ビルは、来年1月に工事が完了するそうなので、出来上がったら見に行ってこようと思います。

 

 日々の業務の中で、本人訴訟にチャレンジしている方から相談を受けることがあるのですが、本人訴訟の意外な躓きポイントが「訴状の送達」です。

 

 そもそも、訴訟は、原告から提出された訴状を、裁判所が被告に送達して初めて始まります。

しかし、訴状の送達先の住所は、原告の方で調べて裁判所に申請しなければなりません(裁判所は調べてくれません)。そのため、原告側からの典型的な相談として、「被告の住民票上の住所に訴状を送ってもらったが、被告がそこに住んでいないようで訴状が届かなかった。どうしたらよいのか。」というような相談が出てきます。

このような場合、原告は訴状を送達するためにどうすれば良いのでしょうか?

 

送達は通常、裁判所書記官が、被告の住所や居所などに特別送達郵便を送るという方法で実施します(民訴法1031項)。しかし、この特別送達郵便は書留郵便等と同様、送達場所にいる被告本人や関係者に受け取ってもらわないと、配達されたことになりません。被告等が受け取らずに放置している場合や被告がそもそも住所等にいない場合には、送達できなかったものとして裁判所に戻ってきてしまいます(一部例外もありますが、今回は省略します)。

 

こうなった場合ですが、民事訴訟法には、原則的な送達場所である住所や居所等に送達できない場合には就業場所に送達できる旨の規定があります(1032項)。したがって、まず、原告の方で被告の就業場所を調査し、就業場所が判明すれば、そちらに送達し直すことになります。就業場所には従業員が多数いる場合が多いでしょうから、住所等に送達する場合よりも訴状を受け取ってもらえる可能性は高まります。

 

しかし、調査しても被告の就業場所が判明しない場合や就業場所にも送達ができなかった場合というのもあり得ます。この場合、原告に残された手段は2つあります。1つは付郵便送達(107条)、もう1つは公示送達(110条)という方法です。

 

付郵便送達は、訴状を書留郵便扱いにして被告の住所等に発送する方法です。この送達方法の特徴は、送達の効果が書留郵便の発送時に生じるところにあります(1073項)。したがって、被告が実際に受け取るか否かに関わりなく、郵便を発送した段階で送達があったものとして扱われることになるため、原告にとっては非常にありがたい送達方法です。

しかし、付郵便送達には一定の制限があり、付郵便送達が有効な送達として扱われるには、書留郵便の宛先である住所等に現実に被告が居住していることが必要とされています(東京高判平成4210日判タ787262頁)。したがって、原告が付郵便送達を使おうとする場合、送達しようとしている場所を調査するなどして、その場所に被告が住んでいるということを証明しなければなりません。これが意外と大変で、実際に送達場所に行って、被告が住んでいるかどうか写真を撮るなどして裁判所に報告するといった作業が必要になってきます。

 

このような調査を経ても被告の住所等が不明で、付郵便送達も使えないという場合、最終的には公示送達を行うことになります。公示送達は、裁判所書記官が、送達書類を保管し、いつでも被告に送達するということを裁判所の掲示板に掲示する形で行われ(111条)、この掲示の開始から2週間が経つと、訴状が被告に送達されたものと扱われます。

したがって、最終手段として公示送達を使うことで、被告の居場所が全くわからなくても訴訟を始めることが可能です。

 

もっとも、公示送達の場合、仮に被告が答弁書を出さずに訴訟を欠席した場合でも、原告の方で証拠を提出して自分の主張を証明しなければなりません(1593項但書)。公示送達以外の送達方法の場合は、被告が裁判に欠席すれば、原告が証拠を出すまでもなく原告の主張が全て認められますので、この点で公示送達は原告に不利です。

また、公示送達で訴訟を始めたとしても、居場所すら分からない被告について資産を把握するのは困難なため、強制執行が難しいのが通常です。特に金銭請求などの場合は、そもそも訴訟を起こす意味があるのかについて慎重に検討する必要があります。

 

 以上のとおり、通常の送達よりも時間や労力はかかりますが、法律上は、被告の居場所が分からなくても、訴訟が起こせる仕組みが整えられています。

 もしも、どこにいるか分からない人や訴訟から逃げ回る人に対して訴訟を起こしたいという場合には、このような送達の方法を検討してみてください。

 

米国のイーロンマスク氏がCEOを務めるスペースX社は、201512月、世界初となる商用の衛星打ち上げロケットの垂直着陸を達成し、近い将来民間による火星探査移民構想も掲げています(国際宇宙会議2016IAC2016))。

日本では、三菱重工やIHIがロケット開発に関わっていますが、最近ではホリエモンこと堀江貴文氏もロケット開発事業を行い始め、宇宙開発事業は活気づいてきております。

 

このような中、宇宙開発に関する法律として、半年ほど前に「宇宙活動法」が成立し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が関わる形でしかできなかったロケット打ち上げが、国の許可を得られれば民間業者の参入が可能になりました。

宇宙開発事業が活気づき、近い将来世界的に宇宙旅行も増えていくことでしょう。

この宇宙旅行は巨額のお金が動くビッグビジネスですが、日本もこの宇宙旅行ビジネスの波に乗れるかというと、ちょっと難しいかもしれません。

 

というのも、例えば米国では自己責任の文化が強いせいか、事業者が宇宙旅行希望者に対して宇宙旅行のリスク説明をきちんして、そのリスクを宇宙旅行希望者が承諾すれば、リスクの高い段階(まだ宇宙旅行が一般化していない今の段階)でも、宇宙旅行ビジネスを認めています。インフォームドコンセントが充たされれば、宇宙旅行希望者に事故等があったとしても、宇宙旅行希望者やその家族が、企業や米国政府に対して損害賠償を請求することはできないようになっています。

 

一方日本では、自己責任の意識は少なく、国が許可を出したかどうかを重視する傾向があるようで、当事者間のインフォームドコンセントは重視されず、今現在、日本企業が主体となって行う宇宙旅行ビジネスについて国の許可が下りた例はありません。お国柄の違いから考えると、今後宇宙旅行ビジネスを日本で主体的に行うのは、まだまだ時間がかかりそうです。

 

宇宙旅行はいわばロマンある冒険なので、ヒマラヤに登るのや、未開拓の洞窟探検と変わらず、個人が自分の人生観に従ってリスクを承知しながら決断すれば、もっと積極的に認めても良いのではないかと思います。

ロマンのある冒険の一つである宇宙旅行に、日本も積極的になってくれることを願うばかりです。

 

ちなみに、宇宙旅行をするにもロケットの打ち上げが必要になりますが、ロケットの打ち上げは航空法の規制がかかり、国土交通大臣の許可が必要になります。「ロケット、花火…その他の物件を…打ち上げる」(航空法施行規則209条の3)には国土交通大臣の許可が必要と法令に規定されており、日本の航空法令上は、ロケットは花火と同様の扱いがなされています(爆発することが前提の花火と、人や物を運ぶためのロケットとは本質的に違うものだと思いますが…)。

 

森友学園、加計学園、共謀罪といったニュースに押されて世間的にはあまり大きなニュースにはなりませんでしたが、去る平成29年5月26日に改正民法案(債権法関係)が国会で成立いたしました。

 実は、今の民法(債権法関係)は、明治29年(1896年)4月に成立したもので、今回の改正は約120年ぶりの大改正だったのです。1896年というと、まだ日清戦争が終わった1年後で、アメリカではユタ州が45番目の州になり(ちなみに、ハワイがアメリカの自治領になったのは1898年のこと)、アテネでは第1回夏季オリンピックが開催され、日本の東北には明治三大大津波が押し寄せてきて2万人の死者が出ています。日本で鉄道(新橋・横浜間)が初めて走ったのは1872年(明治5年)と比較的早いのですが、電話回線(東京・熱海間)が初めて敷設されたのが1893年、自動車が作られるようになったのは1910年代になってからです。今は平成29年ですが、私なぞはまだ昭和の気持ちで生活していますので、おそらく明治29年当時もまだ江戸時代の気持ちで生活していた人も沢山いたことでしょう。

 というわけで、今の民法はとてつもなく古いので、「錯誤」とか「瑕疵」とか古めかしい言葉が残っているし、その後の時代の変化によって条文の文言どおり解釈するとうまくいかなくなったところを判例で補っているので、条文だけを読んでも結論がよくわからないなどという不都合があります。さらに、民法制定時には想定していなかったようなインターネットなどというものの発達もあったり、もうかなり時代遅れな法律になっていたのです。そこで、一般の人が読んでも意味がとれるようにしたり、これまで判例でつぎはぎ的に補ってきた解釈を条文だけで解釈できるようにしたり、さらに新しい時代に対応する制度を設けたりしたのが、今回の大改正なのです。

 ちょっと一例をあげると、債権を行使しないと債権が消滅してしまう消滅時効期間。これまで原則として10年でしたが、飲食代金や弁護士報酬などは何故か2年であったりとバラバラだったのです。そこで今回の改正で一律5年に統一されました。

 次に、履行遅滞の場合の利率。これまでは5%でしたが、デフレの低金利時代には高すぎますので3%に引き下げられました。また、3年ごとに見直す変動制がとられることになります。

 さらに、連帯保証制度の見直し。「他人の保証人にはなるな!」を家訓としている家があるように、良かれと思って保証人になってしまうと人生を狂わせるような過酷な事態が生じることがよくあります。そこで、これからは、公証人が保証人の意思を確認しないと、保証は認められないことになります。公証人の確認というプロセスで一息入れることで、本当に保証人になっていいものか考える機会を与えるのです。

 加えて、敷金返還のルール。これまで、民法には敷金に関する規定がたったの1条(619条2項)しかなく、しかもとてもざっくりしたものだったのですが、この改正により経年劣化に伴う修繕費については賃借人が負担しなくても良いことなどが明文化されました。

 また、インターネット通販など不特定多数の消費者に提示される「約款」に関する規定も新たに設けられました。消費者の利益を一方的に害すると認められる内容のものは無効とすると定められて消費者保護が図られています。

 この民法改正案は、2009年に法制審議会に諮問されてから、5年以上かけて改正要綱案にまとめられ、2015年3月に国会に法案が提出されました。しかし、安保法案とか、その時々の政局があって、審理が延び延びになっていたものが、ようやく先日可決されたものです。法曹関係者の中には、現在の民法を変える必要がないなどという人もいましたが、やっぱり古かったと思います。改正民法は、公布から3年以内に施行されるとのことですので、まだまだ我々の生活に適用されるようになるのは先ですが、法曹の一人として、この民法の運用を通じて少しでもより良い社会を実現していかなければと思います。

 我々の事務所でも、契約書のひな型の見直しや新しい民法の適用に関する情報を適宜発信していく予定です。こうご期待!

 

 

 

 

 

2017年5月26日の日本経済新聞夕刊1頁の「改正民法が成立 契約ルール120年ぶり抜本見直し」という見出しの記事から抜粋です。

「企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)に関する改正民法が26日午前の参議院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。民法制定以来、約120年ぶりに債権部分を抜本的に見直した。インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、消費者保護も重視した。改正は約200項目に及び、公布から3年以内に施行する。」

ようやく成立したか、という感じですが、現民法はいかにも古かったし、条文だけ読んでても意味が分からないところが散見されたので、改正民法の成立は良かったと思います。

改正民法については、一応勉強しましたが、今後実際に使うにあたって、ブラッシュアップをしていこうと思います。事務所の民法関係の書籍も買いそろえなければなりませんね。やらなければならないことが沢山あるので、頑張りましょう!

以下、2017年5月16日13時57分配信のマイナビニュースの「ひろゆき氏、最高年収を告白 賠償請求30億円を放置し続けたワケ」という見出しの記事からの引用です。

「さまざまなワードで検索する中、『年収3億円のひろゆきが結婚していた』というタイトルの記事がヒット。これについて西村氏は、『ここまでいったことはないですよ』と否定し、『近かったことはありますけど』と訂正。『サラリーマンの生涯賃金くらい』と明かし、2ちゃんねるから生まれたラブストーリー『電車男』がメディア化された時期で、ほぼ何もせず大金を手にしたという。」

「そのほか、過去に30億円もの賠償金を請求され、それを無視したことを『2ちゃんねるの投稿に対する削除要請に従わない場合、1日5万円を支払うよう裁判で判決が出ある場合があるんですよ。面倒くさいから放っておくと、1日5万円加算されていって、すげえ金額になるんですよ。累積で30億円くらいいったと思います』と告白し、『払わずに10年経つと時効になってゼロになる』『不動産所有とか、資産があることが証明されれば差し押さえられるんですけど、証明されなければとれないんです』と説明。西村氏は放置し続け、現在では時効を迎えたという。」

(私の感想)
この西村氏の『不動産所有とか、資産があることが証明されれば差し押さえられるんですけど、証明されなければとれないんです』との発言は、日本の民事執行制度の欠陥をよく説明していると思う。正確には、「証明」ではなくて、「特定」なのであるが、大差はない。要は、債権者側で債務者がどのような財産を持っているのか特定できなければ、裁判所に差押えの申し立てができないのであるが、日本の現状では、債務者に自分の財産を説明させる財産開示制度が穴ばかりの実効性の乏しいものになっていて、また、債務者の銀行口座を銀行に照会する制度が整備されておらず(ただし、最近、メガバンクが弁護士会照会に応じるようになってきていることについてはこちらの記事を参照。)、強制執行をしたくてもできない場合が多いのである。結果、西村氏のように財産をもっている(もしくは少なくとも一時は持っていた)人に対し、裁判で判決をとっても強制執行をかけることができず、権利を持っているのにそれが実現できないというえらい不公平な事態が発生してしまっているのである。

現在、法務省の民事執行法部会で、財産開示制度の見直しと、その一環として第三者から債務者情報を取得するための制度づくりの検討が進められている(法務省HPの民事執行法部会へのリンク)。私としては、第2、第3の西村氏が出てこないようにするために、しっかりとした制度と作っていただくことを望む。

現在、国会で審議中の住宅宿泊事業法案は、
(1) 住宅宿泊事業を都道府県知事への届け出制にする
(2) 年間提供日数の上限を180日とする
(3) 地域の実情を反映して、条例により年間提供日数等をさらに少なくできる
(5) 宿泊者の衛生の確保の措置等を義務付け
(6) 家主居住型(ホームスティ型)ではなく、家主不在型(ホスト不在型)の場合には、住宅管理業者と管理委託契約を締結しなければならない
(7) 住宅宿泊管理業業を営むには国土交通大臣の登録が必要
(8) 住宅宿泊仲介事業を営もうとするには、観光庁長官の登録が必要
という骨子です。

この中で、どうも私は「年間提供日数の上限を180日にする」という規制が理解できません。

2016年9月15日15時配信の毎日新聞のニュースによると、

「厚生労働省と環境庁でつくる専門家会議は6月、行政の許認可を得なくても住宅地で民泊を導入できるように新法を制定することを提言した。ただし、営業日数については、空き家の有効活用を求める不動産業界が上限設定に反対、営業への影響を懸念するホテル・旅館業界は年30日以下を主張し、まとまらなかった。
 政府は新法で、宿泊営業の規制を大幅に緩和し、自治体にインターネットで届け出をすれば、住宅地を含むどこでも営業できるようにする。営業日数は「社会通念上、半年を超えると一般民家とみなせなくなる」として、180日を上限として設定する。今後、与党内の議論を経て、閣議決定を目指す。」

とありますので、もともとはホテル・旅館業界の利益を守るために、このような営業日数規制が検討されたことがわかりますが、一般論として、ホテル・旅館業界は社会的弱者でもなく、その既得権益を保護することが営業の自由(憲法22条1項)の規制目的として正当化されるというのはおかしいでしょう。

そのため、政府は、ホテル・旅館業界の保護、などとはいわずに、上記の記事では、「社会通念上、半年を超えると一般民家とみなせなくなる。」などと言っているのですが(注)、いえいえいえ、法案を見ればわかるとおり、住宅宿泊事業とは、(「民家」ではなくて)「住宅」に人を宿泊させる事業であって、1年365日民泊をしても、(もはや「民」家ではなくなるとはいえるかもしれませんが)「住宅」が「住宅」でなくなるということはないでしょう。

いやいやいや、そういう物理的なことを言っているのではなくて、年間180日を超えて営業している場合は、もはやホテルや旅館と同じなのだから、旅館業法上の許可を取得しないさいという趣旨なんだとと考えたとしましょう。年間180日を超えて営業するような場合には、ホテルや旅館と同等の宿泊者保護、公衆衛生確保及び治安維持(テロ対策)目的からの規制をかけなければならなないのだと考えるのです。

しかし、もし宿泊者保護、公衆衛生及び治安維持上の必要があるのであれば、営業日数に関係なく規制をかけるべきであり、なぜ年間180日以上営業すれば急に規制が必要になるか説明がつきません。(そもそも民泊新法案では、宿泊事業者に、宿泊者保護、衛生確保及び宿泊者名簿の備え付け義務を課しているので、それに加えてなぜ営業日数を規制しなければならないのかについても説明が必要ですね。)。

さらに、特区で許可を取得して民泊をする場合には、営業日数規制がかからないことにも説明に窮します。特区であっても、その他の地域であっても、宿泊者保護、公衆衛生確保、治安維持(テロ対策)の必要性は同じはずです。

というわけで、私は、年間180日という営業日数規制には、かなり問題があると考えています。規制緩和を目的とした法案なのに、既得権益を保護するような規制が入っちゃった。

もっともホテル・旅館業界としては、(自分たちと比べると)民泊業者はあまり規制がかかっていないから、営業日数規制をしてもらわないと不公平だ(公正な競争環境が確保されていない。)というような反論はあり得るかもしれません。しかし、それは、ホテル・旅館業界に対する規制が厳しすぎないか?(または無駄なものがないか?)という観点からホテル・旅館業界に対する規制緩和として検討されるべきものでしょう。

(注)「民泊サービス」の制度設計のあり方について(「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書)(平成28年6月20日)の中にも、民泊について、
・住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものとする。(4頁)
・上記の「一定の要件」としては、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要である。(6頁)
・そのような「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、「住宅」そして扱い得るようなものとすることを考慮すると、制度の活用が図られるよう実効性の確保にも考慮しつつ、年間提供日数上限による制度を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適当な日数を設定する。(6頁)
と同じような説明がなされています。
しかし、なぜ営業日数について180日を上限とすると、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として合理性があるといえるのかはよくわかりませんね。


家を購入する場合は、一軒家にするかマンションにするか、という論争がありますが、こと建替えの「自由度」に関しては一軒家に軍配が上がります。

 

家が老朽化して建替えをしようと思ったとき、一軒家であれば法的には所有者の意思で自由に決められます(家族や親族の様々な意見はあるでしょうが)。

マンションでも、区分所有者全員の同意があれば建替えは可能ですが、通常マンションは何十戸、今流行りのタワーマンションであれば100戸を超える戸数を有しており、区分所有者一人一人の思惑があるため、一致した意思形成を行うことは非常に困難です。

 

それではマンションの建替えをするにはどうすればいいのかというと、マンションの集会で「区分所有者及び議決権の各5分の4以上」の多数の賛成を得ることにより建替えの決議をすることができます(区分所有法62条)。マンションの議決権というのは、各区分所有者の専有部分の割合で決まり(同法38条)、専有面積が大きければそれだけ議決権を多く持っていることになります。

しかし、一般に単に集会を開催するための定足数(マンション標準管理規約に則り半数以上としていることが多いです。)を充たすことすら難しいという傾向がある中で、この「区分所有者及び議決権の5分の4以上の多数の賛成」を得ることは相当に難しいことが分かります。

当然ですが人は重大な決断をすることを嫌いますから、建替えという大きな決断をしたがらない人が多数出てしまうことは想像に難くありません。

その上、もし「建替えに一戸数千万円の負担金が必要です。」と言われてしまったら、もはや建替えの「5分の4以上の多数の賛成」を得ることはほとんど不可能になってきます。

 

もし賛成を得たければ「餌」が必要で、例えば負担金はゼロで、建替えて新築に住めますよ、という話が出れば乗ってくる人がいそうです。負担金をゼロにするためには企業の力が必要で、デベロッパーと契約(等価交換契約)をすることで、これが実現するケースもあります。この契約は、従前のマンションの権利と、再建マンションの権利との交換を行うもので、一旦土地の権利はデベロッパーに移り、マンションが再建されたときに、再び各区分所有者に割り当てられるというものです。デベロッパーは、今よりも大きいマンションを建設し、割り当てた後、残りの部屋を売却して利益を得ます。いわば余剰の容積率をお金に換えるというものです。

しかし、当然ながら余った容積率がなければならず、また容積率が余っていたとしても、デベロッパーのほうで売却が難しいと判断されてしまったら実現はできません。

ちなみに、近年マンションの建替え等の円滑化に関する法律が改正され、特定行政庁から耐震性不足の認定がされれば、容積率制限の緩和というボーナスが得られる場合があります。

 

借家人がいる場合の問題や抵当権の問題(建替えをしたら抹消される)等もありますが(これらについては上記円滑化法によって一定の手当てがなされている)、以上のように、まず「5分の4以上の多数の賛成」を得ること自体が非常に困難です。

デベロッパーがつきやすい都心の好立地のマンションを除けば、マンションの建替えをするには相当のハードルがあることが分かります。

 

それでは、立法も行政も、マンションの建替えを円滑化する方向(デベロッパーとの協同を円滑に行う方向)にいけば良いのかといったら、近い将来の空き家問題(住宅の3分の1以上が空き家になるという問題)を考えると、建替えを円滑化して単純にマンションの戸数を増やすことは必ずしも良いとは限りません。

 

この問題は、マンションを売りたい建設業界、住宅ローンで利益を得たい金融業界の思惑もあり、場合によっては政治的な部分も大きいですが、重要な社会問題であるため、今後もこの問題の動向に注目しなければなりません。

現在、法務省の法制審議会民事執行法部会において、「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されている。

民事執行法上、債務者財産に関する情報を取得する制度としては、債務者本人に自分の財産を開示させる「財産開示制度」というものがある。しかし、この制度は、平成15年の法改正で導入されてから毎年1000件前後しか利用されず、しかも実際に債務者から開示されているのは全体の約35%(平成27年)にとどまっているという。つまり、使い勝手が悪い上に、実効性がないのだ。そこで、現在、前述の民事執行法部会では、財産開示制度の実効性を高めるために、その「見直し」が審議されている。
ただし、そもそも論として、債務者自身に自分の財産を開示させる制度には限界があると考えられるため(債務者には財産を開示しようとするインセンティブがない。)、その「見直し」と同時に、先ほどの「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されているというわけなのである。

私は、この方向性には大賛成で、民事執行法部会には、是非とも使い勝手がよく、実効性のある制度を作ってほしいと願っている。ただ、法務省の同部会のページを除いてみたところ、ちょっと気になった点があるので、その点を書いておきたい。

同部会の委員には、大学教授、弁護士、裁判官、法務省の役人、労働組合関係の方、消費者団体の方など、そうそうたるメンバーが顔をそろえ、委員会では自己の専門的な知見を披露しているようである。きっとそれらの知見を参考にして、部会の事務局サイドが具体的案をまとめていくのであろう。

それはそれでいいのではあるが、ただ、具体的な制度を作った場合、どれくらいの利用者が想定されるのかとか、銀行には毎月どれくらいの照会がいくことになるのかとかをきちんと数字でシミュレートしておいた方が良いと思うのだ。この辺のところは、裁判所や公証人役場で1年間でどれだけの債務名義が作られていいるのか?そのうちどれだけ強制執行の申し立てがあるのか?現在、弁護士会照会で3大メガバンクにどれくらい照会がなされているか?というようなところから、大体の推計値が出せるのではないだろうか。

このような数字は、制度利用者の中に確定判決等の債務名義所有者だけでなく、執行証書(公正証書)の所有者も含めるべきかとか、銀行の手数料をどうするかという議論にも大きな影響を与えると思う。この制度にかかわる裁判所の人員をどれだけの規模にしたらいいのかを考える上でも必要であろう。何よりも、財産開示制度のときのように、蓋を開けてみたら、あまり使われず、しかも、あまり役に立たなかったなんて不名誉なことを避けられるだろう。

もし既にやっているのであればすみません。

是非、民事執行法部会には良い制度案を作ってほしいと期待しています。よろしくお願いいたします。

小規模(訴額が140万円以下)の民事訴訟事件については、簡易裁判所が第一審の裁判権をもつことになります。今回は、この簡易裁判所における訴訟手続についてのトピックです。

訴訟を提起された被告としては、対応コストがかかることになります。とりわけ、遠方の管轄裁判所で訴訟を提起された場合、対応コストは確実に増えます。書面の作成や証拠の収集等のコストはもちろん、裁判所に出頭しなければならないというのが増大するコストです。


では、一回も出頭せずに、当方の主張をすることはできないか?簡易裁判所の訴訟手続では、できるのです。

簡易裁判所の訴訟手続に関しての特則が設けられています。

(私が日ごろよく通っております主戦場の)地方裁判所の訴訟手続においては、最初の口頭弁論期日に限り、出頭しなくても、当方の主張を書いた書面を陳述したものとみなしてくれます(民事訴訟法158条。擬制陳述)。訴えられた被告側の訴訟代理人が、とりあえず答弁書を出しておいて、1回目の期日には都合がつかないため、出席しないということはままあることです。

この擬制陳述について、簡易裁判所の訴訟手続の特則として、最初の口頭弁論期日以外の期日(続行期日)でも、適用されることになっています(民事訴訟法277条)。

そのため、簡易裁判所の訴訟手続においては、一回も出頭せずに、答弁書や準備書面を提出して主張をすることはできるということになります。


ここまでは条文そのとおりなので、わかりやすいと思います。

では、少し問いを変えて、一回も出頭せずに、当方の主張を裏付ける証拠を提出することはできないか?を考えてみます。

上で述べたように、簡易裁判所の訴訟手続においては、擬制陳述の制度を、最初の口頭弁論期日以外の続行期日にも認めていることからすれば、できそうですよね。そう思われませんか?

ちなみに、民事訴訟法は、「証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる。」という定めもおいています(民事訴訟法183条)。


ですので、証拠も提出できてよいのでは、、、とも思うのですが、結論としては、(原則)できません。

だったら、擬制陳述とかって、ほぼ意味なしですよね。

というのは、民事訴訟は、裁判所を説得する精緻な主張書面を作成したうえで提出することは重要ですが、裁判所は、他方当事者が争う限り、それだけでは事実として認めてくれず、自分の主張を裏付ける証拠を出せるかが勝負の決め手となるからです。


なぜ証拠の提出は「できません」という結論になるのかというと、文書の証拠を書証と呼ぶのですが、民事訴訟法は「書証の申出は、文書を提出し……なければならない」と規定しており(民事訴訟法219条)、ここでいう「提出」は、文書の所持者が出頭して顕出することが必要と解釈されていることがその理由のようです(旧民事訴訟法に関する判決ですが、最高裁昭和37921日第二小法廷判決・民集1692052頁参照)。


確かに擬制陳述という制度はあっても、同制度は出頭自体を擬制しているのではなく、陳述を擬制しているにすぎないため、事前に裁判所に文書を送付していたとしても、実際に出頭しない限り、書証の申出があったとは認められず、裁判所は取り調べてくれないこととなっています。


さて、困りましたね。そこで、私がトライするのは、電話会議システムを利用した弁論準備手続に付してもらうよう求めること(上申書の提出)です。
弁論準備手続とは、法廷で行われる口頭弁論手続ではなく、裁判所の小部屋で行われる争点及び証拠の整理を行うための手続です(民事訴訟法1681項)。ちなみに、実務では、和解の協議も、この弁論準備手続で行われることが多いです。

裁判所が、電話会議システムを利用した弁論準備手続を付すと、こちらは裁判所に行かずとも電話で対応することができます(民事訴訟法1683項)。

この場合、電話で参加した側の当事者については、「出頭したものとみなす」と規定されているのです(民事訴訟法1684項)。

この規定に基づき、出頭自体が擬制されるのです。

そこで、先ほどの議論に戻って、出頭して顕出したということになり、書証の申出があったということで、裁判所も、証拠を取り調べてくれるのです。


弁論準備手続に付すかどうかはあくまでも裁判所が決めることですので、以上述べた方法が必ずしも「使える」わけではありませんので注意が必要です。

↑このページのトップヘ