カテゴリ: その他法律

 皆様はサプリメントを飲んだ経験がありますか?
 私は最近毎日飲んでいて、飲むと目に見えて体調が良くなるので、とても便利だと感じています。

 ですが、このサプリメントって薬なのでしょうか?それとも食品なのでしょうか?
 健康を維持するために飲んでいるので薬と言われると違和感がありますが、かといって一般的にいうところの食べ物という感じもしないですよね。
 今回は、薬と食品の概念が法的にどのように分けられているのか、見ていきたいと思います。

  そもそも、薬は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に、食品は「食品衛生法」によって規律されているのですが、薬と食品それぞれの法律上の定義を見てみますと、まず、食品については次のとおりになっています。

食品衛生法
第4条
 この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。

 ざっくり言うと、全ての飲食物から薬を除いたものが食品という形になっていますね。

 続いて、薬(医薬品と医薬部外品)の定義は次のとおりになっています。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
第2条
この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(中略)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

2 この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。

一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(中略)であつて機械器具等でないもの

イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止

ロ あせも、ただれ等の防止

ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛

二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(中略)であつて機械器具等でないもの

三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(中略)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

 長々とした定義規定が置かれていますが、薬の場合は、基本的に、使用される目的(医薬品としての目的を有しているかどうか)で定義づけられていると読めます。

 しかし、この定義だけでは、具体的にどのようなものが薬に当たり、どのようなものが薬に当たらないのか判然としませんね。

 そのため、厚生労働省は、この点を明確にするための通達(昭和4661日薬発第476号)を出しており、その中で、薬と食品の限界について、次のように記載しています。

「医薬品とみなす範囲は次のとおりとする。

一)効能効果、形状および用法用量の如何にかかわらず、判断基準の1.に該当する成分本質(原材料)が配合または含有されている場合は、原則として医薬品の範囲とする。

二)判断基準の1.に該当しない成分本質(原材料)が配合または含有されている場合であって、以下のからに示すいずれかに該当するものにあっては、原則として医薬品とみなすものとする。

医薬品的な効能効果を標榜するもの

アンプル形状など専ら医薬品的形状であるもの

用法用量が医薬品的であるもの」

 この定義から、まず、形状等にかかわりなく、厚労省が定めた原材料が含まれている物は、薬として取り扱われることが分かります(上記一)。これは薬のイメージそのままですので、分かりやすいですね。
 ですが、これだけでなく、上記乃至のいずれかに当たるものは、原材料にかかわりなく薬として扱われることが分かります(上記二)。
 例えば、容器・包装等に「糖尿病の人に」と記載されていたり、摂取量として「お休み前に12~3粒」といった指示があったりすると、(成分がどうあれ)法律上は薬として扱われ、薬事法の規制を受けることになります。(栄養機能食品については、摂取量の表示に例外がありますが、その点は省略します。)

 結局のところ、薬と食品は、その成分と上記乃至の基準によって限界づけられているということになりますので、サプリメントについては、一律に薬か食品か結論付けられるものではなく、その成分と販売形態によって、薬になるか食品になるか流動的と言えます。

 上記からすれば、サプリメント等の商品が法律上薬に当たるかどうかは、販売者の側でコントロールできる側面があることが分かります。宣伝文句や説明を漫然と記載してしまうと、上記からの基準に照らして薬と判断されてしまい、薬事法違反として取り扱われてしまうリスクがありますので、経口摂取する商品を扱う皆様にはぜひとも注意をしていただきたいと思います。

先週、東名高速道路で、男が一家の乗った車の進行を妨害して追い越し車線に停車させたところ、後方からきたトラックが一家の乗った車に追突し、両親が死亡したという事故が話題になりました。
警察はこの男を過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)の容疑で逮捕したようですが、世間では、この行為は殺人なのでは?という声も強いようです。
しかし、刑法の解釈上、今回の事件に殺人罪を適用するのは難しいと思います。
では、なぜ今回の事件に殺人罪を適用することが難しいのでしょうか?以下、私見になりますが、少し考えてみたいと思います。

この問題を考えるにあたっては、まず殺人罪がどのような犯罪か考えてみます。
殺人罪とは、平たく言えば わざと人を殺す罪 のことを言います。
これだけを聞くと、わざと危険な追い越し車線に停車させる行為も、わざと人を殺した=殺人罪だと感じてしまいますよね。
しかし、殺人罪はそのような大雑把な要件で成立するわけではなく、殺人罪の成立には、①人が死ぬ現実的な危険性のある行為を②人が死んでもかまわないと考えつつやり、③その結果人が死亡したという事実が必要とされています。

これらの事実の中で今回特に問題になるのが、追い越し車線に停車させる行為が、①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たるか否かと、犯人が停車行為を②人が死んでもかまわないと考えつつやったか否かです。

まず、追い越し車線に停車させる行為が①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たるか否かですが、一般の人がその行為を見た場合に人が死ぬ可能性があると感じる場合には、その行為は①人が死ぬ現実的な危険性のある行為に当たると解釈されています。
今回の事件の場合、具体的な現場の状況が不明ですので、はっきりしたことは言えませんが、例えば、現場の交通量が多い、停車させた場所の見通しが悪い、スピードを出している車が多いといった事情があるのであれば、追い越し車線に停車させることによって死傷事故が発生することが予測できます。特に、追い越し車線は、走行車線の車を追い抜くための車線であって、スピードを出している車が多いでしょうから、そこに停車させる行為は、大きな事故に繋がる可能性が高い行為と言え、一般の人から見て人の死亡の危険を感じる行為に当たる可能性が高いといえるのではないかと思います。
したがって、今回の事件の場合も、具体的な状況によりますが、①の要件を満たす可能性はそれなりに高いものと思います。

もっとも、①の要件を満たしたとしても、犯人がそれを②人が死んでもかまわないと考えつつやったと言えるかどうかは問題です。
①の要件を満たす以上は、一般人から見て人が死ぬ可能性の高い行為をしているのだから、犯人も当然人が死んでもかまわないと思ってやっただろう、と思われるかもしれません。しかし、本件の場合、犯人自身も追い越し車線に自分の車を駐めているようであり、かつ、被害者の車を駐めさせた目的は被害者を車からおろして因縁を付けることだったように見受けられます。つまり、犯人は、追い越し車線に被害者の車を駐めさせた後、被害者が死なないことを前提に行動していますし、そもそも、追い越し車線に車を止めれば死傷事故が起きるかもしれないと考えていれば自分の車を追い越し車線に止めるという行為に出ることも考えづらいのではないかと思います。
したがって、本件の場合、犯人には、人が死んでもかまわないとまでは考えていなかったと受け取れる行動が見られるということで、②の要件を満たしていると言うのはなかなか難しいと考えられ、②の要件を満たさない以上は、殺人罪も成立しないという結論になる可能性が高いものと考えられます。

今回の事件については、殺人罪の他にも、危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条)を適用して重く処罰できないかという議論もあったようですが、成立要件との関係で、適用はなかなか難しそうです。
結果として、今回の事件の犯人には過失運転致死傷罪しか適用できないと思われ、社会的な非難の程度よりも刑事責任が軽いという印象がぬぐえません。

このような事態になったそもそもの原因は、法律を作るに当たってこのような事件類型が(おそらく)想定されていなかったところにあると思われます。
今回の事件を機に新しい犯罪類型の創設が検討されるかもしれませんので、今後の動きを注視していきたいと思います。

1022日(日)に衆議院議員選挙・最高裁裁判官国民審査が行われましたが、皆様は投票に行かれましたでしょうか。台風が上陸したせいか、投票率は53.68%で戦後2番目の低さだったそうです(私は台風の中、雨に濡れながらも投票に行きました。自慢できることではありませんが…)。

さて、今回の選挙では、個人的に法律的な部分に着目しており、それは選挙権の年齢が「18歳以上」に引き下げられてから初めて実施される総選挙であるという点です。
平成276月に公職選挙法が改正されて、今まで20歳以上であった選挙年齢が、18歳以上に引き下げられました。

これを受けて、民法の成年の対象年齢の取扱いも18歳への引き下げが議論されていますが、少なくとも裁判員の対象年齢は今までどおり「20歳以上」に維持されています。もっとも、この裁判員の年齢については、賛否両論あるようです。
個人的には、今回18歳以上に選挙権という民主主義の根幹を構成する権利が付与された以上、法的にも18歳以上は主権者として民主主義の担い手になったと考えます。裁判員として評議に加わるということも国政を決めることと重大性は異ならず、裁判員制度も民主主義の実現の一つだと考えれば、18歳以上であっても裁判員になれるようにするべきだと思います。(ちなみにアメリカの選挙権は18歳以上に付与されて、かつ裁判員よりも重責な陪審員になるのも18歳以上からになっています。)

さて、民法の成年の対象年齢の取扱いが18歳へ引下げられた場合、様々な影響があります。
未成年者は、法定代理人(多くは親)の同意なく契約を締結した場合には、その契約を取り消すことができます(民法第5条第1項、第2項)。この取消権は、事情がどうあれ取り消すことができるので、かなり強力な権利です。18歳が自分の締結した契約について責任を負うことになり、消費者トラブルの多い、サラ金、デジタルコンテンツやエステサービス等の契約を取り消すことができなくなります。この点は早い時期から法教育や消費者教育を行っていくしかないでしょう。

また、養育費の支払いを決める際に、今では成年の20歳を基準として、「20歳に達する日の属する月まで」と決めたりしましたが(大学進学を予定し「22歳」の場合もあります。)、今後18歳を基準にする場合が出てくるでしょう(養育費を支払う側からすれば18歳を基準にしたい)。

なお、民法で成年の対象年齢が下がったとしても、喫煙については「満20歳」にならないと認められません。というのも、未成年者喫煙禁止法は、喫煙できる者を、例えば「民法に規定する成年」と規定されておらず、「満20歳」(満二十年)と規定していますので、民法の成年が引き下がっても、連動して喫煙可能年齢も引き下げられるわけではありません。飲酒も同様の議論で、未成年者飲酒禁止法が定められていますが、飲酒可能年齢は「満20歳」(満二十年)と規定されています。

他には、男性は18歳、女性は16歳になると婚姻できますが、20歳未満だと父母の同意が必要になりますが(民法737条第1項)、成年が18歳に変更されると、18歳の男性が結婚する場合は、少なくとも男性側の父母の同意は不要になります。併せて女性の婚姻可能年齢も18歳に引き上げられるとの議論はありますが、現在の規定のままだと女性は16歳、17歳に結婚する場合には父母の同意が必要になりますが、18歳になれば父母の同意なく婚姻できるようになります。

選挙権が18歳以上に付与されるようになって、若者も国政だけでなく民主主義全体への関心が強くなればいいですね。今後も未成年者をめぐる法律の動きに注目したいと思います。

今回は、保釈についての記事になります。
 「保釈」という言葉は、皆さんもどこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 刑事事件では日常茶飯事と言えるレベルで登場する「保釈」ですが、これは、簡単に言ってしまば、一定額のお金を裁判所に預けて、それと引き換えに、裁判が終わるまでの間、身体拘束を解いてもらうという制度です。裁判所が、被告人を外に出すにあたって一番懸念するのは、裁判から逃亡されてしまうことなのですが、保釈されるには、ある程度多額の保釈金を裁判所に納める必要があり、保釈中に逃亡したり、裁判に出頭しなかったりすると、保釈金が没収されてしまうことがあります(刑訴法962項)。そのため、被告人は逃亡を図ることがしにくくなり、裁判所としては、高い確率で被告人の出頭を確保することができます。そうであれば、わざわざ被告人の身体を拘束しておく理由はなくなり、保釈金と引き換えに外に出した方が、裁判所としても効率的ですし、人権保障の観点からも望ましいということになります。

 保釈は概ね上記のような制度なのですが、どんな人についても保釈が認められるわけではありません。保釈が認められるには、次のような条件が必要とされています。(①は必須で、加えて②又は③に当たることが必要です。)
①対象者が起訴されていること(「被疑者」ではなく「被告人」の地位になっていること)
②刑訴法891項各号のどれにも当たらないこと(権利保釈)

③刑訴法891項各号のどれかに当たってしまう場合でも、逃亡の恐れが高くない、罪証隠滅の恐れが高くない、といった保釈を認めるのが適当な事情があること(裁量保釈、90条)

 ①について、そもそも、保釈の請求の前提条件は、その人が起訴されて「被告人」になっていることです。起訴の前段階では、「被疑者」として、3日間程度の逮捕期間と最大20日間の勾留期間を過ごすことになりますが、この間に保釈の請求をすることはできません。(この間に外に出るための方法としては、勾留に対する準抗告というものがありますが、保釈よりもかなり認められづらいです。)したがって、保釈の請求をしたい場合には、起訴された後に裁判所に保釈請求書を提出しなければなりません。

 ②について、保釈は、法律が定める一定の事情に当たらない場合には、必ず許可しなければならないことになっています(刑訴法891項)。その一定の事情としては、

 ⅰ被告人の犯した罪が、一定以上の重大なものであるとき(1号)

 ⅱ重い前科等があるとき(2号)

 ⅲ常習性をもって一定以上の重さの罪を犯しているとき(3号)

 ⅳ罪証隠滅のおそれがあるとき(4号、5号)

 ⅴ氏名・住所が不明のとき(6号)

があります。したがって、初犯で、重大犯罪とまでは言えない類型の罪を犯した被告人の場合には、罪証隠滅のおそれが低いと認めてもらえれば、保釈が認められる可能性が高いということになります。

 ③について、②の保釈から漏れてしまった被告人(例えば、重大な罪を犯した被告人や、重い前科のある被告人など)にも③のルートで保釈の道が開かれていますが、こちらの類型の保釈については、細かい要件が決まっていません。裁判官が、個別事情を見て、この被告人は外に出しても逃げたりしないし、証拠のねつ造・隠滅等もしなさそうだ、となれば、保釈してもらえる可能性があるということになります。

 上記の要件を満たす人については、保釈請求があれば、裁判所が保釈を許可し、保釈金の額を指定します。被告人がこの金額のお金を裁判所に預けた段階で、被告人の身体拘束は解かれ、外に出られるようになります。
 なお、保釈金の額は、事件の類型や被告人の状況によって異なり、重大な事件ほど、お金を持っている被告人ほど高くなるのが一般的です。
 また、保釈の請求は弁護人がするのが一般的ですが、弁護人だけでなく、被告人や被告人の直系親族・兄弟姉妹等もすることができます。もし何らかの事情で弁護人が付いていない場合でも、被告人や親族が簡単な保釈請求書を書くことで保釈の請求は可能です。

 世間では、一度警察に捕まった人はずっと捕まりっぱなし(無罪にならない限り出てこられない)というイメージが強いように感じますが、保釈の制度を利用することによって、相当な数の被告人が裁判中に釈放されています。
 被告人が保釈されるかどうかは、被告人の生活の観点からも、弁護活動のしやすさの観点からも非常に重要な問題になってきます。ぜひ、自分自身の身を守る手段として、保釈という制度があるということがもっと広まってほしいと思います。

霞が関にある弁護士会館は日比谷公園の向かいにあり、休憩スペースからは日比谷公園を上から見下ろすことができるので、都会の中にある自然を観ながら休憩している方(多くは弁護士)をよく見かけます。

 

最近休憩スペースから日比谷公園側を観てみると、帝国ホテルの並びに一つだけ突出した巨大なビルが建設中でした。調べてみると新日比谷プロジェクト(仮称)という高層ビル計画だそうです。高さは約191mになるそうで、最近建設された渋谷ヒカリエが約182mなので、それよりも9m程度高い高層ビルになります。

この高層ビルはオフィスビルですが、低層階は商業施設になり、巨大な映画館も入るということなので、映画好きとしては今から楽しみです。

 

この高層ビルは日比谷公園沿いの他の建物と比較すると、一つだけ目立って高いので、そんなに高いビルが建てられるのかなぁと、違和感がありました。

というのも、ご存知の方も多いと思いますが、たとえ自分の土地だとしても、自分で自由に高さや大きさを決めて建物を建てられるわけではなく、建築基準法や都市計画法等の規制がかかり、ビルを建てるにしてもその高さには限界があるためです。

 

建築できる建物の高さについて説明すると、まず建物を建てようとする土地の面積(敷地面積)のうち建物を建築することが可能な面積(建築面積)が地域によって異なります。この敷地面積に対する建築面積の割合を「建ぺい率」といいます(建築基準法53条)。例えば建ぺい率が60%だと、100坪の土地に、最大60坪の面積に建物を建築することができます。

次に、敷地面積に対する、建物の床面積の合計(延床面積)の割合も地域によって決まっており、これを容積率といいます(建築基準法52条)。この容積率によって建築する建物の高さの限界が決まります。ただし、延床面積のうち、例えばエレベーターの面積分は容積率の計算対象にはならない等の取扱いがなされています。

容積率は住居地域なら200%や300%程度になりますが、低層住居専用地域ならもっと低くなり、例えば田園調布の容積率は80%程度しかありません。商業地域は概ね600%~800%になるため、商業地域では高い建物を建てることができます。

 

さて、本件の日比谷の高層ビルの所在地である東京都千代田区有楽町一丁目1番の建ぺい率と容積率を調べてみると、建ぺい率が80%、容積率が900%と定められていました。

また、公示されている建築計画をみると、敷地面積は約10,702㎡で、延床面積のうち容積率の対象面積は約155,180㎡でした。

ここで容積率の対象になる延床面積から容積率を計算してみると、155,180㎡÷10,702㎡×1001450(%)となり、この地区の容積率900%を550%も超えていました!

 

それではこの高層ビルは違法建築なのか、というとそうではなく、実は「都市再生特別措置法」という法律によって、「都市再生特別地区」の都市計画決定を受ければ、容積率等の制限の緩和を受けることができるのです。

その観点から東京都千代田区有楽町一丁目1番を調べてみると、きちんと都市再生特別地区の都市計画決定を受けており、容積率が「900%」から「1450%」に緩和されています(都市再生特別地区状況一覧http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/toshisaisei/04toushi/h270401ketteijoukyou.pdf)。

 

この都市再生特別地区の都市計画決定を受けて、高層ビルや延床面積の大きい建物を建築している例は結構あります。上述の渋谷ヒカリエや、丸の内のJPタワー、銀座の歌舞伎座タワーやGINZA SIX、大阪のあべのハルカス等があります。

 

最近の高層ビルは、スタイリッシュなものが多く、どのように空間を生かし、どのような機能性を有しているのかを見るのは面白いですね。

今回の日比谷の高層ビルは、来年1月に工事が完了するそうなので、出来上がったら見に行ってこようと思います。

 

 日々の業務の中で、本人訴訟にチャレンジしている方から相談を受けることがあるのですが、本人訴訟の意外な躓きポイントが「訴状の送達」です。

 

 そもそも、訴訟は、原告から提出された訴状を、裁判所が被告に送達して初めて始まります。

しかし、訴状の送達先の住所は、原告の方で調べて裁判所に申請しなければなりません(裁判所は調べてくれません)。そのため、原告側からの典型的な相談として、「被告の住民票上の住所に訴状を送ってもらったが、被告がそこに住んでいないようで訴状が届かなかった。どうしたらよいのか。」というような相談が出てきます。

このような場合、原告は訴状を送達するためにどうすれば良いのでしょうか?

 

送達は通常、裁判所書記官が、被告の住所や居所などに特別送達郵便を送るという方法で実施します(民訴法1031項)。しかし、この特別送達郵便は書留郵便等と同様、送達場所にいる被告本人や関係者に受け取ってもらわないと、配達されたことになりません。被告等が受け取らずに放置している場合や被告がそもそも住所等にいない場合には、送達できなかったものとして裁判所に戻ってきてしまいます(一部例外もありますが、今回は省略します)。

 

こうなった場合ですが、民事訴訟法には、原則的な送達場所である住所や居所等に送達できない場合には就業場所に送達できる旨の規定があります(1032項)。したがって、まず、原告の方で被告の就業場所を調査し、就業場所が判明すれば、そちらに送達し直すことになります。就業場所には従業員が多数いる場合が多いでしょうから、住所等に送達する場合よりも訴状を受け取ってもらえる可能性は高まります。

 

しかし、調査しても被告の就業場所が判明しない場合や就業場所にも送達ができなかった場合というのもあり得ます。この場合、原告に残された手段は2つあります。1つは付郵便送達(107条)、もう1つは公示送達(110条)という方法です。

 

付郵便送達は、訴状を書留郵便扱いにして被告の住所等に発送する方法です。この送達方法の特徴は、送達の効果が書留郵便の発送時に生じるところにあります(1073項)。したがって、被告が実際に受け取るか否かに関わりなく、郵便を発送した段階で送達があったものとして扱われることになるため、原告にとっては非常にありがたい送達方法です。

しかし、付郵便送達には一定の制限があり、付郵便送達が有効な送達として扱われるには、書留郵便の宛先である住所等に現実に被告が居住していることが必要とされています(東京高判平成4210日判タ787262頁)。したがって、原告が付郵便送達を使おうとする場合、送達しようとしている場所を調査するなどして、その場所に被告が住んでいるということを証明しなければなりません。これが意外と大変で、実際に送達場所に行って、被告が住んでいるかどうか写真を撮るなどして裁判所に報告するといった作業が必要になってきます。

 

このような調査を経ても被告の住所等が不明で、付郵便送達も使えないという場合、最終的には公示送達を行うことになります。公示送達は、裁判所書記官が、送達書類を保管し、いつでも被告に送達するということを裁判所の掲示板に掲示する形で行われ(111条)、この掲示の開始から2週間が経つと、訴状が被告に送達されたものと扱われます。

したがって、最終手段として公示送達を使うことで、被告の居場所が全くわからなくても訴訟を始めることが可能です。

 

もっとも、公示送達の場合、仮に被告が答弁書を出さずに訴訟を欠席した場合でも、原告の方で証拠を提出して自分の主張を証明しなければなりません(1593項但書)。公示送達以外の送達方法の場合は、被告が裁判に欠席すれば、原告が証拠を出すまでもなく原告の主張が全て認められますので、この点で公示送達は原告に不利です。

また、公示送達で訴訟を始めたとしても、居場所すら分からない被告について資産を把握するのは困難なため、強制執行が難しいのが通常です。特に金銭請求などの場合は、そもそも訴訟を起こす意味があるのかについて慎重に検討する必要があります。

 

 以上のとおり、通常の送達よりも時間や労力はかかりますが、法律上は、被告の居場所が分からなくても、訴訟が起こせる仕組みが整えられています。

 もしも、どこにいるか分からない人や訴訟から逃げ回る人に対して訴訟を起こしたいという場合には、このような送達の方法を検討してみてください。

 

米国のイーロンマスク氏がCEOを務めるスペースX社は、201512月、世界初となる商用の衛星打ち上げロケットの垂直着陸を達成し、近い将来民間による火星探査移民構想も掲げています(国際宇宙会議2016IAC2016))。

日本では、三菱重工やIHIがロケット開発に関わっていますが、最近ではホリエモンこと堀江貴文氏もロケット開発事業を行い始め、宇宙開発事業は活気づいてきております。

 

このような中、宇宙開発に関する法律として、半年ほど前に「宇宙活動法」が成立し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が関わる形でしかできなかったロケット打ち上げが、国の許可を得られれば民間業者の参入が可能になりました。

宇宙開発事業が活気づき、近い将来世界的に宇宙旅行も増えていくことでしょう。

この宇宙旅行は巨額のお金が動くビッグビジネスですが、日本もこの宇宙旅行ビジネスの波に乗れるかというと、ちょっと難しいかもしれません。

 

というのも、例えば米国では自己責任の文化が強いせいか、事業者が宇宙旅行希望者に対して宇宙旅行のリスク説明をきちんして、そのリスクを宇宙旅行希望者が承諾すれば、リスクの高い段階(まだ宇宙旅行が一般化していない今の段階)でも、宇宙旅行ビジネスを認めています。インフォームドコンセントが充たされれば、宇宙旅行希望者に事故等があったとしても、宇宙旅行希望者やその家族が、企業や米国政府に対して損害賠償を請求することはできないようになっています。

 

一方日本では、自己責任の意識は少なく、国が許可を出したかどうかを重視する傾向があるようで、当事者間のインフォームドコンセントは重視されず、今現在、日本企業が主体となって行う宇宙旅行ビジネスについて国の許可が下りた例はありません。お国柄の違いから考えると、今後宇宙旅行ビジネスを日本で主体的に行うのは、まだまだ時間がかかりそうです。

 

宇宙旅行はいわばロマンある冒険なので、ヒマラヤに登るのや、未開拓の洞窟探検と変わらず、個人が自分の人生観に従ってリスクを承知しながら決断すれば、もっと積極的に認めても良いのではないかと思います。

ロマンのある冒険の一つである宇宙旅行に、日本も積極的になってくれることを願うばかりです。

 

ちなみに、宇宙旅行をするにもロケットの打ち上げが必要になりますが、ロケットの打ち上げは航空法の規制がかかり、国土交通大臣の許可が必要になります。「ロケット、花火…その他の物件を…打ち上げる」(航空法施行規則209条の3)には国土交通大臣の許可が必要と法令に規定されており、日本の航空法令上は、ロケットは花火と同様の扱いがなされています(爆発することが前提の花火と、人や物を運ぶためのロケットとは本質的に違うものだと思いますが…)。

 

森友学園、加計学園、共謀罪といったニュースに押されて世間的にはあまり大きなニュースにはなりませんでしたが、去る平成29年5月26日に改正民法案(債権法関係)が国会で成立いたしました。

 実は、今の民法(債権法関係)は、明治29年(1896年)4月に成立したもので、今回の改正は約120年ぶりの大改正だったのです。1896年というと、まだ日清戦争が終わった1年後で、アメリカではユタ州が45番目の州になり(ちなみに、ハワイがアメリカの自治領になったのは1898年のこと)、アテネでは第1回夏季オリンピックが開催され、日本の東北には明治三大大津波が押し寄せてきて2万人の死者が出ています。日本で鉄道(新橋・横浜間)が初めて走ったのは1872年(明治5年)と比較的早いのですが、電話回線(東京・熱海間)が初めて敷設されたのが1893年、自動車が作られるようになったのは1910年代になってからです。今は平成29年ですが、私なぞはまだ昭和の気持ちで生活していますので、おそらく明治29年当時もまだ江戸時代の気持ちで生活していた人も沢山いたことでしょう。

 というわけで、今の民法はとてつもなく古いので、「錯誤」とか「瑕疵」とか古めかしい言葉が残っているし、その後の時代の変化によって条文の文言どおり解釈するとうまくいかなくなったところを判例で補っているので、条文だけを読んでも結論がよくわからないなどという不都合があります。さらに、民法制定時には想定していなかったようなインターネットなどというものの発達もあったり、もうかなり時代遅れな法律になっていたのです。そこで、一般の人が読んでも意味がとれるようにしたり、これまで判例でつぎはぎ的に補ってきた解釈を条文だけで解釈できるようにしたり、さらに新しい時代に対応する制度を設けたりしたのが、今回の大改正なのです。

 ちょっと一例をあげると、債権を行使しないと債権が消滅してしまう消滅時効期間。これまで原則として10年でしたが、飲食代金や弁護士報酬などは何故か2年であったりとバラバラだったのです。そこで今回の改正で一律5年に統一されました。

 次に、履行遅滞の場合の利率。これまでは5%でしたが、デフレの低金利時代には高すぎますので3%に引き下げられました。また、3年ごとに見直す変動制がとられることになります。

 さらに、連帯保証制度の見直し。「他人の保証人にはなるな!」を家訓としている家があるように、良かれと思って保証人になってしまうと人生を狂わせるような過酷な事態が生じることがよくあります。そこで、これからは、公証人が保証人の意思を確認しないと、保証は認められないことになります。公証人の確認というプロセスで一息入れることで、本当に保証人になっていいものか考える機会を与えるのです。

 加えて、敷金返還のルール。これまで、民法には敷金に関する規定がたったの1条(619条2項)しかなく、しかもとてもざっくりしたものだったのですが、この改正により経年劣化に伴う修繕費については賃借人が負担しなくても良いことなどが明文化されました。

 また、インターネット通販など不特定多数の消費者に提示される「約款」に関する規定も新たに設けられました。消費者の利益を一方的に害すると認められる内容のものは無効とすると定められて消費者保護が図られています。

 この民法改正案は、2009年に法制審議会に諮問されてから、5年以上かけて改正要綱案にまとめられ、2015年3月に国会に法案が提出されました。しかし、安保法案とか、その時々の政局があって、審理が延び延びになっていたものが、ようやく先日可決されたものです。法曹関係者の中には、現在の民法を変える必要がないなどという人もいましたが、やっぱり古かったと思います。改正民法は、公布から3年以内に施行されるとのことですので、まだまだ我々の生活に適用されるようになるのは先ですが、法曹の一人として、この民法の運用を通じて少しでもより良い社会を実現していかなければと思います。

 我々の事務所でも、契約書のひな型の見直しや新しい民法の適用に関する情報を適宜発信していく予定です。こうご期待!

 

 

 

 

 

2017年5月26日の日本経済新聞夕刊1頁の「改正民法が成立 契約ルール120年ぶり抜本見直し」という見出しの記事から抜粋です。

「企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)に関する改正民法が26日午前の参議院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。民法制定以来、約120年ぶりに債権部分を抜本的に見直した。インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、消費者保護も重視した。改正は約200項目に及び、公布から3年以内に施行する。」

ようやく成立したか、という感じですが、現民法はいかにも古かったし、条文だけ読んでても意味が分からないところが散見されたので、改正民法の成立は良かったと思います。

改正民法については、一応勉強しましたが、今後実際に使うにあたって、ブラッシュアップをしていこうと思います。事務所の民法関係の書籍も買いそろえなければなりませんね。やらなければならないことが沢山あるので、頑張りましょう!

以下、2017年5月16日13時57分配信のマイナビニュースの「ひろゆき氏、最高年収を告白 賠償請求30億円を放置し続けたワケ」という見出しの記事からの引用です。

「さまざまなワードで検索する中、『年収3億円のひろゆきが結婚していた』というタイトルの記事がヒット。これについて西村氏は、『ここまでいったことはないですよ』と否定し、『近かったことはありますけど』と訂正。『サラリーマンの生涯賃金くらい』と明かし、2ちゃんねるから生まれたラブストーリー『電車男』がメディア化された時期で、ほぼ何もせず大金を手にしたという。」

「そのほか、過去に30億円もの賠償金を請求され、それを無視したことを『2ちゃんねるの投稿に対する削除要請に従わない場合、1日5万円を支払うよう裁判で判決が出ある場合があるんですよ。面倒くさいから放っておくと、1日5万円加算されていって、すげえ金額になるんですよ。累積で30億円くらいいったと思います』と告白し、『払わずに10年経つと時効になってゼロになる』『不動産所有とか、資産があることが証明されれば差し押さえられるんですけど、証明されなければとれないんです』と説明。西村氏は放置し続け、現在では時効を迎えたという。」

(私の感想)
この西村氏の『不動産所有とか、資産があることが証明されれば差し押さえられるんですけど、証明されなければとれないんです』との発言は、日本の民事執行制度の欠陥をよく説明していると思う。正確には、「証明」ではなくて、「特定」なのであるが、大差はない。要は、債権者側で債務者がどのような財産を持っているのか特定できなければ、裁判所に差押えの申し立てができないのであるが、日本の現状では、債務者に自分の財産を説明させる財産開示制度が穴ばかりの実効性の乏しいものになっていて、また、債務者の銀行口座を銀行に照会する制度が整備されておらず(ただし、最近、メガバンクが弁護士会照会に応じるようになってきていることについてはこちらの記事を参照。)、強制執行をしたくてもできない場合が多いのである。結果、西村氏のように財産をもっている(もしくは少なくとも一時は持っていた)人に対し、裁判で判決をとっても強制執行をかけることができず、権利を持っているのにそれが実現できないというえらい不公平な事態が発生してしまっているのである。

現在、法務省の民事執行法部会で、財産開示制度の見直しと、その一環として第三者から債務者情報を取得するための制度づくりの検討が進められている(法務省HPの民事執行法部会へのリンク)。私としては、第2、第3の西村氏が出てこないようにするために、しっかりとした制度と作っていただくことを望む。

↑このページのトップヘ