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まずは、次の条文を読んでほしいと思います。これは、東京弁護士会内の最大派閥・法友会の若手弁護士の会である法友全期会の債権法改正特別委員会が『改正民法 不動産売買・賃貸借契約とモデル書式』という本の中で発表した土地建物売買契約書(例)の条文です。

 

(契約不適合責任)

第11条 買主は売主に対し、本件物件に下記(1)ないし(4)の瑕疵があるなど、本件物件が本契約の内容に適合しないものであった場合、相当の期間を定めて当該瑕疵の修補等、履行の追完を催告し、その期間内に履行がないときは、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる。この場合、減額する代金額は、当事者間での協議により決定するが、協議がまとまらない場合には、契約内容不適合がなければ本件物件が有したであろう価値に対して、本件物件の実際の価値との間で成立する比率に従って代金額を減額するものとする。

(1) 雨漏り

(2) シロアリの害

(3) 建物構造上主要な部位の腐蝕

(4) 給排水管(敷地内埋設給排水管を含む。)の故障

 なお、買主は売主に対し、本件物件について、前記瑕疵を発見したとき、すみやかにその瑕疵を通知して、修復に急を要する場合を除き売主に立ち会う機会を与えなければならない。

〔以下、省略〕

 

この契約書(例)の条文について違和感を感じないでしょうか?この違和感を感じるには202041日から施行される改正民法における瑕疵担保責任のことを知っておくことが必要です。

 

これまで、不動産(土地・建物)や中古動産(自動車・機械)などの特定物の売買については、その物自体を売却するという契約なのだから、その物自体を引き渡せば売主の責任は果たしたことになるが(いわゆる特定物ドグマ)、ただ、目的物に隠れた瑕疵(=通常有すべき品質・性能を欠くことがある)ときに売主に何も責任追及できないとすると買主に酷なので、瑕疵担保責任という責任を法律が特別に認めたのだ(法定責任説)と解されていたのです。

それに対し、改正民法では、いえいえ特定物であろうが、不特定物であろうが、売買の当事者は、その合意した一定の品質・性能を有する目的物を売買の対象にすることを意図していたのであるから、その意図した目的物が引き渡されなかったのであれば、契約上の責任が発生するのだ(契約責任説)という立場に立っています。つまり、瑕疵担保責任といっても、それは債務不履行責任と同じだというのです。

そこから、

1.これまでは「隠れた」瑕疵しか責任追及できなかったが、改正民法では、隠れていたか否かにかかわらず、目的物が契約に不適合なものであれば、債務の履行が行われたとは言えないので、売主に対して責任を追及できる。

2.これまでは、瑕疵担保責任は法定責任という前提があったため、そこにおける損害賠償は信頼利益(現実に発生した損害)のみが対象になると考えられていたが、改正民法では、通常の債務不履行と異ならないから、逸失利益(得べかりし利益)も対象になる。
などの違いが導かれるのです。

 

そして、ここが重要な点なのですが、「瑕疵」という用語は、国民一般からは理解しにくい用語ですし、従来から判例上「瑕疵」は「契約の内容に適合しないこと」と解釈されていたところ(最判平成22.6.1、最判平成25.3.22)、「瑕疵」という用語では、当事者が目的物上のキズを問題にしていなくとも客観的にキズがあれば売主に責任が発生するなどいう誤解を招くおそれもあるので、積極的に使わないとの決断がなされ、民法典からは一掃されてしまったのです(「一問一答 民法(債権関係)改正」(275頁)参照)。

 

ですから、上記の条文で、「本件物件に下記(1)ないし(4)の瑕疵があるなど」とか、「当該瑕疵の修補等、履行の追完を催告し」とか「前記瑕疵を発見したとき」とか、「瑕疵」という用語を使うのは、民法改正の趣旨をよくわかっていないと言わざるを得ないと思うのです。私としては「欠陥」とか「不適合」とかもっと現代的な言い回しにした方がいいと思います。


ただ、いずれにしても、改正民法は202041日から施行されますので、クライアントの皆様にとっては、契約書式の見直しが急務になりますね。


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来年(2020年)4月1日から施行される改正民法の151条には、「協議を行う旨による時効の完成猶予」の条文が新設されています。
長くなりますが、条文を引用すると次のとおりです。



(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第151条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から1年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第1項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第1項の合意がその内容を記載した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を準用する。
5 前項の規定は、第1項第3号の通議について準用する。

このような時効完成猶予事由を新設した理由については、法務省で民法改正を担当していた筒井・松村著『一問一答 民法(債権関係)改正』49頁によれば、「旧法の下においては、当事者が権利をめぐる争いを解決するための協議を継続していても、時効の完成が迫ると、完成を阻止するためだけに訴訟の提起や調停の申立てなどの措置をとらざるを得ず、当事者間における自発的で柔軟な紛争解決の障害となっていた。そのため、このような協議を行っている期間中は、時効が完成しないように手当をする必要がある。」とのことです。

また、単に協議をしているという事実状態のみでは足りず、当事者間で協議を行う旨の合意をしていることが必要なのは、同書によれば、「どのような状態に至れば協議といえるかは不明瞭であるのに対して、協議を行うことを対象とした合意の存否であればその判断は比較的用意であり、事後的な紛争を招きにくいから」ということのようです。

さらに、書面又は電磁的記録による合意を要件にしたのは、「事後的に時効の完成猶予がされたか否か等をめぐり分省が生ずる事態を避けるため」とのことです。もっとも、書面又は電磁的記録の様式自体には制限はないから、署名や記名押印が必要であるということではなく、「また、一通の書面である必要もない。例えば、電子メールで協議の申し入れがされ、その返信で受諾の意思が表示されていれば、電磁的記録によって協議を行う旨の合意がされたことになる。」とのことです。

で、ここからは私の意見ですが、この「協議を行う旨による時効の完成猶予」は、実務で使われるようになるでしょうか?

実は、私は、あまり使われないのではないか、と思っています。

売掛金の請求などの権利の存在がはっきりしているものは、まずは、請求書や内容証明を送付して、支払いの催告をするでしょうから、催告による時効の完成猶予の効力が発生し(第150条1項)、その後に、支払いのスケジュールのために協議を行おうということになっても、第151条第3項により、この合意による時効完成猶予の効力を有しません。したがって、この制度は、当事者間で権利の存在について争いがあるような場合に利用されるのかな、と思うのですが、そもそも権利の存在について債務者側が争っている場合には、債務者側は協議にはのってこないでしょうし、さらに協議に時効完成猶予効があるなどと知ったら、一層、協議をすること自体を拒否してくると思うのです。強いて言えば、権利の存在自体には争いはないが、その金額について争いがあるような場合には、「権利についての協議」ができそうですが、その場合にも、通常は、まずは債権者側が内容証明等で権利主張をするでしょうから、はじめに催告が行われることになるのではないかと思うのです。

まぁ、使われるか使われないかは、実際に改正民法が施行されて数年たたないと分かりませんが、実務家としての経験からすると、「使われないんじゃないかな~」と思います。

 働き方改革関連法に続き、影響が大きそうな法改正として、民法(債権法分野)の改正を行う「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)の施行日が迫ってきています。

「民法の一部を改正する法律」は、201762日に公布され、施行日は202041日を予定しています。(一部例外もあります。)

 民法の債権法分野は、1896年(明治29年)に制定されて以降、実質的な内容の改正が行われないまま、今日まで来ました。ですが、流石に100年以上の時が経つと、現在の社会や経済の状況に合わない規定も出てきます。そこで、今回、債権法分野について大規模な改正が行われることになりました。

 ちなみに債権法分野と簡単に言っていますが、「債権」とは「特定人(債権者)が他の特定人(債務者)に対して、一定の行為(給付)を請求することを内容とする権利」(デジタル大辞泉)のことを言い、民法の債権法分野には、この債権の発生・変更・消滅等に関わる様々な規定が含まれます。一口に債権法分野と言っても、その範囲は非常に広いのです。

 さて、「民法の一部を改正する法律」による改正項目は多岐に渡りますが、法務省は、主な改正事項として次の24個を挙げています。(http://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

1.消滅時効に関する見直し                                  2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し                                              4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設                 6.意思能力制度の明文化

7.意思表示に関する見直し                                       8.代理に関する見直し

9.債務不履行による損害賠償の帰責事由の明確化   10.契約解除の要件に関する見直し
11.売主の瑕疵担保責任に関する見直し                     12.原始的不能の場合の損害賠償規定の新設

13.債務者の責任財産の保全のための制度                 14.連帯債務に関する見直し

15. 債務引受に関する見直し                                         16.相殺禁止に関する見直し

17.弁済に関する見直し(第三者弁済)                     18.契約に関する基本原則の明記

19.契約の成立に関する見直し                                    20.危険負担に関する見直し

21.消費貸借に関する見直し                                        22.賃貸借に関する見直し

23.請負に関する見直し                                               24.寄託に関する見直し

 
 また、このうち重要な実質改正事項として、次の5つが挙げられています。(http://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf

1.消滅時効に関する見直し

2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し

4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設

 

 今回、一つ一つの改正項目を解説することはできませんが、これを見ただけで、非常に多くの規定が改正されていることが分かりますね。 

 上記改正により、日常生活でもビジネスでも最も重要な債権の発生原因である契約についての規定が変更されたり、発生した債権が不履行になった場合の取扱いに関する規定が変更されたりしています。今後は、これまで使用していた契約書の雛形等の見直しが必要になってくるでしょう。(現在、民法改正に対応した契約書の雛形集などはあまり充実していませんが、これからどんどん出てくると予想されます。)

 特に事業者の場合、今回の改正が関係しない方はほとんどいないでしょうから、少しずつ、改正への対応を進めていきましょう。

日本には、所有者が不明な土地がどれくらいあるか知っていますか?

 

一般財団法人国土計画協会らで組織する所有者不明土地問題研究会の調査では、2016年の推計で約410万ヘクタールだそうです。

 

410万ヘクタールといわれても、ちょっとピンとこないかもしれませんが、九州の面積が367万ヘクタールとのことですので、実は、現時点でも、九州の面積以上の土地の所有者が誰だかわからない状態なんだそうです。

 

で、所有者不明土地が発生する主な原因の一つが相続による代替わりだそうですので、今後、団塊の世代が大量にお亡くなりになる大相続時代を迎え、この傾向はさらに進んで、2040年には、約720ヘクタールになるそうです。北海道の面積が834万ヘクタールなので、北海道の面積に匹敵する面積の土地の所有者がわからなくなるということになります。

 

こうなると困りますよね。なんで所有者不明の土地が発生するのか?というと、それは土地の所有には、固定資産税の支払いや、土地の管理などの義務も発生するからです。つまり、所有者不明の土地が発生すればするほど、税収が少なくなりますし、きちんと管理されず荒廃していく土地が多くなるということになるのです。

 

もちろん、政府もこの状況に手をこまねいているわけではなく、既に昨年(2018年)の通常国会で「所有者不明土地の利用円滑化特別措置法」を成立させています。これは、既にある所有者不明の土地を企業や市町村が公園や駐車場というような公共目的に使えようにするものです。

 

ただ、これでは不十分なので、現在の国会では、所有者不明土地のうち、所有者の氏名や住所が正しく登記されていないものについて、登記官が調査し、登記簿上の所有者を正しく書き換えられるようにし、それでも所有者がわからないときは、土地を利用したい自治体や企業の申立てで裁判所が管理者を選び、その管理者により土地を売却できるようになります。

全国に九州の面積よりも多い所有者不明土地があるということになると、中には多くの人が欲しがるような土地もあるかもしれませんので、このような法律ができると不動産業の活性化につながるかもしれませんね。

 

で、さらに、前述のとおり、不明土地の発生は、相続時に相続人の登記がされないことが原因の一つですので、政府は、現在、相続登記の義務化に向け議論を進めています。また、土地所有に伴う義務(固定資産税支払い・土地管理義務)の存在も不明土地が発生する理由ですので、ならば(これまでは認められていなかった)土地所有権の放棄を認めてあげようという議論も進められています。放棄された土地は、受け皿組織にいったん帰属させ、そこから土地を活用したい人とマッチングするような仕組みを作るとのこと。この相続登記の義務化と土地所有権の放棄については2020年の臨時国会に法案の提案を目指しているとのことです。

 

というわけで、この所有者不明土地の問題には今後も注目ですね。これからもWatchしていきたいと思います。

 宅建業者であるクライアントから、「自殺が重要事実に含まれることは知っているが、では、隣の家で自殺があったことも、重要事実(宅建業法4711号ニ)として説明しなければならないのか?」との趣旨の質問を受けることがあります。

 確かに、裁判例では、いわゆる「心理的瑕疵」の有無について、「目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥があるのか否か」、という基準に判断されており(東京地裁平成7531日判決など)、典型的には、建物の売買の際に、その建物「内」で過去に自殺があったといったケースで、心理的瑕疵が認められた例が多く存在します(大阪高裁平成26918日判決など)。

 しかし、ご質問のように、その建物自体ではなく、隣の家で自殺があったような場合はどうでしょう。これについては、自殺のあった建物自体ではないため、自殺のあった不動産から離れて、どこまで「心理的瑕疵」が認められるか否かが問題となります。

 この点について、裁判例をリサーチしたところ、1件だけ、土地上にかつて存在した建物内で、過去に殺人事件があったケースで、その隣地にも心理的瑕疵ありと認定されたケースがありました(大阪高裁平成181219日判決)。

 しかし、このケースは、

 ・自殺ではなく、殺人事件のケースであったこと

 ・報道によって殺人事件として近隣住民にも広く知れわたっていること

 ・殺人事件を理由に、別の購入希望者との土地売買の話が破談になった経緯がある
  こと(つまり、一般的にも、事件を知ったら、取引を中止する程に買いたくない
  土地、と認識されている)

 ・売買取引としても、事件があった土地と隣接地を合わせた、いわばセット(一
  括)での売買取引であったこと(つまり隣地ではあるが売買の対象にはなってい
  る)

 ・土地自体も比較的狭いものであったこと

という特殊な事例であり、ご質問のケースとは事案の性質が異なるものようです。
 これ以外に、自殺等と不動産の心理的瑕疵については、例えば、末尾のような裁判例がありますが、基本的に、自殺のあった物件以外で心理的瑕疵が認められるとしても、あくまで、自殺等のあった建物の敷地程度が限界であり、自殺によって隣地まで心理的瑕疵が認められたものはないようです。

 さらに、事案は若干異なりますが(売買契約ではなく、競売での取得の事案)、競売にて取得した土地建物の隣地で、その所有者が自殺していたことが判明した事案で、買主が売買の取り消しを求めた事案において、裁判所は、「交換価値の著しい減少があったものとまで解することができない」として、売買の取り消しを否定しました(仙台高裁平成835日決定。仮に、競売ではなく、通常の契約による売買の事案であれば、心理的瑕疵の問題として議論されていた論点かと思います。)。


以上を踏まえると、隣接地で自殺があったからといって、心理的瑕疵があるとは認められない(告知は不要)と考えられます。

【自殺等と不動産の心理的瑕疵に関する裁判例】

〇肯定例

①土地上にかつて存在した建物内での火災死傷事故(東京地裁平成2238日)

 土地の心理的瑕疵と認定

  ※自殺ではなく、事故のケース

②土地上の物置での自殺(東京地裁平成7531日判決)

 土地建物の心理的瑕疵と認定

③建物からの飛び降り自殺(東京地裁平成20428日判決)

 建物・土地売買に際して、告知しなかったことに関し、不動産業者の告知義務違
  反肯定
 ※この裁判例では、「瑕疵」という用語は用いられていませんが、実質的に、心理
  的瑕疵を肯定したものと考えられます。


〇否定例

①建築中のマンションのエレベーターシャフト内での作業員の死亡事故(東京地裁平
 成23525日判決)
 →マンションの心理的瑕疵否定

②土地上にかつて存在した建物内での焼身自殺(東京地裁平成1975日判決)
 →土地の心理的瑕疵否定
 ※8年前の事件で、建物も解体され、事件としても風化している点を指摘

③土地上にかつて存在した建物内での首吊り自殺(大阪地裁平成11218日判決)
 →土地の心理的瑕疵否定

 

一昨日(2018年10月16日)、積水ハウス西五反田詐欺被害事件の地面師グループが一斉逮捕されましたが、この事件は非常に興味深いです。

1.まずは、本人確認の難しさ。

報道によれば、地面師たちは、まず今回対象になった西五反田の土地の所有者(女性)のパスポートを偽造し(もちろん写真は今回逮捕された成りすまし役の女性のものにする。)、そのパスポートをもとに、区役所でその土地所有者の印鑑登録をして、印鑑登録証明書の発行を受けたようです。また、積水ハウスのプレスリリースを読むと「〔なりすまし役の女性の〕パスポートや公正証書等による本人確認を過度に信頼し切って〔中略〕契約を進めてしまいました。」とあるので、地面師たちは、土地の権利証が手に入らなかったためだと思いますが、本人確認情報の制度(不動産登記法23条4項)により登記手続きを行うことを計画して、成りすまし役の女性が土地の所有者であることを公証人が認証する公正証書も作成したようです。その公正証書作成の際に利用されたのもおそらく偽造パスポートでしょう。したがって、本件では、偽造パスポートが成りすましの出発点なのです。で、そのパスポートは、ネットで写真が見れますが、司法書士や公証人が見ても偽造されたものと気が付かないくらいなのですから、かなり精巧に作られていたのでしょう。世間では、なぜパスポートや公正証書以外の本人確認をしなかったのだ?などと非難めいたことが言われていますが、不動産登記法では、パスポートや運転免許証などの写真付きの身分証明書の提示を受けた場合、それで本人確認をして良いということになっておりますので(不動産登記規則72条2項1号)、何か相当疑わしい事実でも出てこない限り、わざわざ物件の近所の人たちに聞き取り調査をする必要まではないことになるかと思います。実際、私もよく破産管財人として不動産の売却をしていますが、司法書士の先生から運転免許証の提示は求められますが、それ以上に、私の近所の人たちに私が本当に飛田博という人物なのか聞き取り調査をしたなどということは聞いたことがありません。まして、昨日の報道では、地面師グループは、西五反田の土地上にあった建物(旅館)の鍵を勝手に付け替えて、積水ハウスの担当者に建物の内覧をさせていたり、地面師グループ側にも本当の弁護士がついており、その弁護士も成りすましの事実を知らずに積水ハウスに対応していたりしたようなので(ちなみに、その弁護士は今回逮捕されていません。)、いくら不動産取引のプロといっても、積水ハウス側が成りすましを見破るのはかなり難しかったのではないかと思います。

追記)本日の報道では、司法書士の本人の確認の際になりすまし役の女性が、本人の生年月日や干支を間違えて答えたそうなので、司法書士の本人確認に問題があったかもしれません。

2.次に、報道によると、売買契約を締結し、手付の14億円を支払ってから、残代金49億円を支払うまでに、積水ハウスは、本当の所有者を名乗る人物から「仮登記がされて驚いている。無効なので抹消せよ。」などと警告する内容証明を4通も受け取っていたらしいのですが、なぜそのような内容証明を受け取っていながら地面師に騙されていることに気が付かなかったのでしょうか?

この点については、積水ハウスのプレスリリースでは、「これらリスク情報を取引妨害の類と判断し、十分な情報共有も行われませんでした。」ということなのですが、「取引妨害の類」と判断されるような内容・形式の文章であったのか少々興味がありますね。ネットで調べても、どのような内容証明だったのかは公表されていなかったので、何とも言えないところですが、もし普通に読めば「この取引は大丈夫か?」という内容だったのであれば、積水ハウスのガバナンスには重大な問題があったということになるかと思います。

3.さらに本件で、最終的に法務局で所有権移転登記が却下された経緯についても気になります。

報道によれば、印鑑証明書が偽造であることがわかって、申請が却下されたようなのですが、印鑑踏力証明書自体はきちんと区役所で発行されたものでしょうから、本件では、真の所有者または周りの人たちがあらかじめ法務局に事情を話して所有権移転登記を阻止しようとしていない限り、法務局が印鑑証明書の偽造を見破るのは難しかったのでは?と思います。そのように考えないと、なぜ契約締結時点に仮登記を入れられたのに(したがって、このときは法務局は印鑑登録証明書の偽造に気が付かなかった。)、本登記の際に、印鑑登録証明書の偽造に気が付いたのでしょう。

4.とまあ、この件については色々な論点・疑問点があるのですが、最後に、不動産取引特有の事情についても指摘したいと思います。

不動産取引では、対象となる土地の価格が大きいため、①買主にとっては代金を支払ったにもかかわらず所有権移転登記を移転してもらえない事態を防ぐため、また、②売主にとっては物件の登記を移転したのに代金の支払いを受けられない事態を防ぐため、ほとんどの場合、代金の支払いと登記の移転は同時履行とされます。しかし、実際には、登記手続には1週間くらいかかるため、同時履行とされるのは、代金の支払いと(登記手続の完了ではなく)登記移転に必要な書類の受け渡しなのです。

不動産取引の最終決済のイメージはこんな感じです。不動産に担保権がついていると、その担保権者にも来てもらわなければならないので複雑になりますが、最も単純な担保権がついていないパターンで説明すると、
① まず、買主は売買代金の融資を銀行から受けることが多いので、多くの場合、その銀行の会議室に、売主、買主、担当司法書士が集合する。
② 次に、売主が司法書士に登記必要書類(委任状、住民票、登記識別情報、原因証書)を交付する。
③ 司法書士が登記必要書類に不備がないことを確認し、OKを出してから、買主は、売主の口座に売買代金を振り込む。
④ 買主が着金を確認したら、取引は終了し、解散する。
⑤ その後、司法書士が法務局に行き、移転登記や銀行の担保権設定の手続きをする。

実務的には、司法書士のOKが出て買主が振込みの手続して売主の口座にお金が着金するまでに時間を要することがあり、会議室の中で、皆なにもすることがなく気まずい雰囲気になることが多いので、そこをどう乗り切るかが課題だったりするのですが、そのようなつまらないことは置いておいて、いずれにしても、我が国の不動産取引で代金の支払いと同時履行になるのは、登記手続の完了ではなく、その前段階の司法書士への登記書類の引渡しなのです。したがって、不動産取引において司法書士の先生方は非常に重要な役割を果たしているのですが、本件の場合、印鑑証明書と公証人の本人確認書面で移転登記をしようとしているので、登記必要書類には不備はなかったのでしょう。だとすれば、本件のようなケースは、通常の不動産取引のプロセスのなかでは防ぎようがなかったということになるかと思います。

このような事態を防ぐにはどうしたら良いのでしょう?

それは、簡単で、代金が売主に支払われるタイミングを登記の完了まで遅らせれば良いのです。もちろん、売主が移転登記手続の申請をしたのに、買主が何もしなくてよいというのは公平ではありませんので、例えば、買主は、中立公平な第三者に売買代金を預け、移転登記が完了した時点で、その売買代金が売主にリリースされるという仕組みを確立すればよいのです。そうです。外国でいうエスクローの仕組みを不動産取引に広く導入するということです。私は、不動産取引においける司法書士の先生方のこれまでの経験や役割からして、このエスクロー制度は司法書士会などが先鞭をきって導入するのが良いのではないかと思うのですが、いかがですかね?最近司法書士の先生の仕事が減っていると聞いていますので、業界の起爆剤になるのでは?

もっとも、最終的に移転登記も完了して、売買代金も売主にリリースされたが、後で地面師による売買であることが判明したような場合には、無権利者からの売買であり、登記には無効な売買を有効にするまでの効力はありませんので、買主は保護されないということになります。

不動産取引は難しいですね。

2018/7/25付日経新聞に、次の記事が掲載されていました。

「日本マクドナルド バーガー肉で不当表示 消費者庁が措置命令
消費者庁は24日、日本マクドナルドに対し、2017年に限定販売した『東京ローストビーフバーガー』などに『成型肉』を使用したのに『ブロック肉』を使っているかのように不当に表示したのは景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、再発防止を求める措置命令を出した。

 最近のニュースなので、記憶に残っている方も多いかもしれませんね。
 要するに、マクドナルドが景品表示法に違反したという内容なのですが、景品表示法の表示規制は意外に(?)厳しく、何気なくつけた商品名や宣伝文句が規制に引っかかってしまうことがあるのです。

 そもそも、景品表示法は、消費者がより良い商品を選べる環境を守ることを目的として作られた法律で、商品の取引に関する不当表示を規制しています。
 不当表示の規制は、商品の容器・包装上の表示だけではなく、パンフレット、説明書面、ポスター、看板、インターネットをはじめとして、商品に関するあらゆる表示に及びますので、これらの記載の中で、商品の品質や取引条件について、実際のものよりも著しく優良であると示したり、事実に反して競合他社の商品より優良であると示したりすると、景品表示法違反になる可能性が高いです。

 この説明だけでは具体的なイメージが湧きづらいと思いますので、不当表示の具体例として消費者庁が挙げている例を見てみましょう。

 客観的な根拠に基づかないで、商品名に「特選()」、「極上」といった高級感を示す表示をする場合

② 飲食店で提供する料理として「自家製パン」と表示しているが、実際には、市販品のパンを提供している場合

③ (通常何らかの化学物質が使用される)寝具類等の商品において「無添加」との表示をする場合

 ④ 牛の成形肉を焼いた料理のことを「ステーキ」「やわらかステーキ」などと表示する場合

⑤ 包丁の広告において、客観的な根拠に基づかないで、研がなくても長期間切れ味が変わらない旨を表示する場合

⑥ 飲食店で提供する飲料として「フレッシュジュース」と表示しているが、実際には、既製品のジュースや紙パックのジュースをコップに注いで提供している場合

 これらが不当表示の例として挙げられていますが、どれもついついやってしまいそうではないでしょうか?
 事業者としては、広告で消費者を惹きつけようと、深く考えずに、耳障りの良い言葉(「極上」「自家製」「無添加」「ステーキ」「フレッシュ」等)を使ってしまいがちなのですが、根拠なくこういった言葉を使うと、不当表示として、措置命令(消費者庁のウェブサイトでの社名公表を伴います)や課徴金納付命令の対象になってしまうのです。

 景品表示法は、事実に基づかない表示には厳しいです。商品名を考えたり、広告を作ったりする際には、事実に基づかない表現が混ざっていないかよく見て、景品表示法に引っかからないように注意しましょう!

 個人の方の相談を受けているときに多い質問に、「金銭の支払いを求める裁判を起こそうと思っているのですが、裁判で勝ったら、裁判所が相手のお金を探して、取り立ててくれるのですか?」というものがあります。

 このような質問が出てくるのは、裁判所が相手に対して金銭の支払いを命じる判決を出すことから、当然それを実現してくれるのだろうという期待が生まれるためだと思いますが、実際のところ、残念ながら裁判所が相手の財産を探してくれることはありません。

 金銭の支払いを命じる判決が出た場合、原告は、強制執行という手続きを取り、相手の預金や給料を差押えて相手の代わりに弁済を受けたり、相手の財産を換価してその代金の一部を受け取ったりすることでお金を回収することができるようになるのですが、この強制執行の対象になる財産は、原告自身が裁判所に申告しなければなりません。
 つまり、預金を差押えたい場合には、どの銀行・支店に相手の銀行口座があるのかを、給料を差押えたい場合には、相手がどの会社に勤めているのかを、車を差押えたい場合には、相手の車がどのような車種・ナンバーでどこにあるのかといったことを、裁判所に申告する必要があります。

 裁判所はこの申告に従って差押命令を出すことになり、申告された財産が本当に存在しているのか、申告された以外の財産が存在しているのではないか、といったことの調査はしません。(申告どおりに財産が見つかった場合には、申立人はその財産からお金を回収できますし、申告された内容の財産が存在しない場合には差押えは空振りに終わり、費用だけがかかることになります。)

 ですので、訴訟を起こす前に、仮に勝訴判決が出た場合に備えて、強制執行できそうな財産があるか洗い出しておくことが重要になります。

 このとき、真っ先に見つかりやすいのが、不動産や車といった大きな(?)財産なのですが、これらを強制執行の対象とする場合には相当な費用がかかるので注意が必要です。不動産の場合は40~100万円程度、車の場合は10万円程度のお金を、強制執行の申立の段階で裁判所に預け入れるように求められることが多いです。このお金は強制執行の費用等に充てられ、費用に充てられた分は後に相手から取り立てることができるのですが、相手からの取立がうまくいかなければ申立人の負担になってしまいます。

 ですので、このような費用がかかる財産だけでなく、預金や給料といった債権がないかも確認しておいたほうが良いでしょう。(一部金融機関については、勝訴判決を得た後に、弁護士会照会によって預金の有無を確認できる場合があります。)

 訴訟を起こす人にはそれぞれ目的があり、相手に反省を促したい、訴訟を起こすことで和解に繋がる可能性がある、といった事情があることもありますので、相手の財産が見つからないからといって訴訟提起を諦めなければならないわけではありません。ですが、強制執行可能な財産がありそうかどうかということは金銭の支払いを求める訴訟を起こすべきかどうか判断する上で重要な要素になります。
 訴訟を検討する場合には、ぜひ参考にしていただければと思います。

 弊事務所では、破産した会社の財産管理・分配等を行う破産管財案件を扱っていますが、未払賃金の立替払制度の利用を申請する機会が多くあります。今回はこの未払賃金の立替払制度についてご紹介します。

 そもそも、未払賃金の立替払制度は、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、未払賃金の一部を政府が事業主に代わって立替払する制度で、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づいて独立行政法人労働者健康安全機構が実施しています。
 そのため、企業が倒産してしまい従業員に給与が支払われていないという状況が起きた場合には、この制度の利用を検討することになるのですが、利用には一定の条件があり、次のような労働者や労働債権についてしか立替払が実施されません。

対象労働者の範囲(全て満たす必要があります)

①労災保険の適用事業所で1年以上事業活動を行っていた事業主に雇用されており、倒産に伴って賃金が支払われないまま退職した労働者
②裁判所への破産手続開始等の申立日等の6ヶ月前の日から2年以内に当該企業を退職した労働者
③未払になっている賃金等の額について破産管財人等の証明等を受けた労働者

→事業主の事業活動期間が1年に満たない場合や、労働者が破産等申立日の6ヶ月前よりも前に退職している場合、未払になっている賃金等の金額について破産管財人や清算人等から証明を受けられない場合などは、立替払を受けることができません。

対象労働債権の範囲

①賃金台帳や就業規則、給与明細等によって客観的に認定できる範囲の定期賃金・退職金
②上記のうち、退職日の6ヶ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来しているもの

→賃金額について会社が何も資料を残しておらず、労働者側にも資料がないという場合には立替払が難しいことがあります。また、未払期間が退職日よりもあまりに前の場合は、その期間分は立替払の対象に含まれないことになります。

 細かく言えばもっといろいろな条件があるのですが、立替払条件は概ね上記のようになっており、独立行政法人労働者健康安全機構が破産管財人等から提出された資料を精査して上記の条件を満たしていると判断した場合には、認定額の8割について立替払を実施します。
 ただし、立替払金額には年齢に応じて上限があり、30歳未満の労働者は88万円、30歳以上45歳未満の労働者は176万円、45歳以上の労働者は296万円とされています。
 そのため、賃金を支払われない状態で長期間働いていた労働者や賃金額が高い労働者については、この上限に引っかかってしまい、実際の債権額よりも相当低額の立替払しか受けられない場合があるので注意が必要です。

 また、立替払までにかかる期間ですが、立替払の実施までには、①破産管財人等が賃金に関する資料を集めて未払賃金額を算出、証明書を作成→②労働者が立替払の申請書を作成して提出→③労働者健康安全機構が審査、という過程を辿るため、破産開始決定が出てから立替払の実施までに2~4ヶ月程度がかかってしまうことが多いです。

 以上のように、立替払の対象労働者や対象労働債権の範囲に制約があるほか、立替払額の上限もありますが、本来倒産してしまった企業からは回収できない可能性が高い部分についても立替払いしてもらえるため、この制度は労働者にとって強い味方です。ぜひ覚えておいていただければと思います。

 もうすっかり暖かくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 訴訟や相続関係の手続きなど、法的手続きを取ろうとすると、色々な公的書類を揃える必要があります。これらの書類は、一部弁護士の方で取ることができるのですが、どのような書類であれば弁護士に取ってもらうことができるのでしょうか。
 この点は、質問される機会も多いので、この機会に代表的なものをまとめておきたいと思います。

① 住民票
 住民票は、住民基本台帳法に基づき交付請求できる書類で、現住所の市町村役場に請求します。
 住民票には、現住所や本籍地が記載されており、正確な現住所が知りたい場合や本籍地を知りたい場合に取り寄せることがあります。弁護士の業務との関係では、戸籍を取りたいのに本籍地が分からないといった場合に、まず住民票を取り寄せて本籍地を明らかにすることが多いです。

 住民票は、一定の要件を満たす場合には、弁護士や司法書士が取得することができます。具体的には、①弁護士がある事件を受任していて、②その事件の依頼者が、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある等、住民票の交付を受けるについて正当な理由がある場合に、弁護士の方で住民票を取得することができます(住民基本台帳法第12条の32項)。

 ですので、例えば、弁護士が遺産分割調停の申立てを受任して、被相続人の戸籍を集める必要がある場合に、被相続人の住民票を取得して本籍地を調べるといったことは、上の①②を満たすので、許されます。
 上の例以外でも、ご依頼いただいた事件で住民票を取得する必要が出てきたという場合には、①②の要件を満たすことが多いので、多くの場合、弁護士の方で住民票の取得が可能と思われます。

② 戸籍謄本・抄本
 戸籍謄本・抄本は、戸籍法に基づき交付請求できる書類で、戸籍に記載されている人の本籍地の市町村役場に請求します。
 戸籍謄本には、同一戸籍内の全員について、氏名等の他に、戸籍事項(戸籍の編纂日等)や身分事項(出生・婚姻等に関する情報)が載っているため、特定の人の家族関係を明らかにしたい場合に使用されることが多いです。

 戸籍謄本・抄本についても、住民票の場合とほとんど同様で、①弁護士がある事件を受任していて、②その事件を処理するにあたって必要がある場合には、弁護士の方で戸籍謄本・抄本を取得することができます(戸籍法第10条の234項)。

 ですので、戸籍謄本・抄本も、事件を依頼していただいた中で取得する必要が出てきた場合には、ほとんどの場合、弁護士の方で取得することができることになります。

③ 固定資産評価証明書
 固定資産評価証明書は、地方税法に基づき交付請求できる書類で、不動産の所在する市町村役場に請求します。
 固定資産評価証明書には、不動産にかけられる税金の計算根拠となる不動産の評価額が記載されているため、その不動産の評価額を知りたい場合に使用されることが多いです。

 固定資産評価証明書に関しては、取得できる場合が法律と政令によって定まっているのですが、地方税法施行令第52154項において、「民事訴訟費用等に関する法律別表第一の一の項から七の項まで、一〇の項、一一の二の項ロ、一三の項及び一四の項の上欄に掲げる申立てをしようとする者」は、固定資産評価証明書を取得できるとされています。これは、ざっくりまとめてしまえば、当該不動産に関する民事訴訟を提起する場合を示しています。
 全くの第三者である弁護士が固定資産評価証明書を取得できる場合で当てはまりそうなのは上記のみですので、固定資産評価証明書に関しては、当該不動産に関する民事訴訟を提起する場合に限って、弁護士も取得することができるということになります。

④ 課税証明書
 課税証明書は、地方税法に基づき交付請求できる書類で、発行年の11日時点の住所地の市町村役場に請求します。
 課税証明書には、対象者に住民税がいくら課税されたのかが記載されているのと同時に、(自治体によって違いがあるのですが、多くの場合、)課税対象となる収入や所得の金額が記載されているため、課税対象者の収入・所得金額を知りたい場合に使用されます。

 課税証明書に関しては、法律で「地方団体の長は、…(課税)証明書の交付を請求する者があるときは、その者に関するものに限り、これを交付しなければならない。」(地方税法第20条の10)と定められており、弁護士等の完全なる第三者がこれを取得することはできないことになっています。
 したがって、課税証明書に関しては、依頼された事件の処理に必要な場合でも、弁護士の方で取ることはできないので、課税された本人か、本人と同一世帯の親族であれば申請を受け付けている自治体も多いため同一世帯の親族に取得してもらう必要があります。

以上、弁護士の公的書類の取得について、代表的なところをまとめてみました。
弁護士その他の士業にご依頼いただく場合には、ぜひご参照いただければと思います。

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