昨日(2019年9月4日)の日本経済新聞朝刊3頁に「民事裁判 審理期間1/3に」という注目すべき記事が出ていました。
(以下「抜粋」)
「最高裁や法務省が参加する研究会が民事裁判〔中略〕の審理を半年以内に終える新制度を検討していることがわかった。」
「最高裁の統計によると、証人尋問が行われるなどして18年に終わった一般的な民事裁判では第1回口頭弁論から結審まで平均16ヶ月を要した。数年かかる場合もある。」
「新制度では終結時期を決め、争点を絞り調べる証拠などを減らす。」
「迅速な訴訟に向けた裁判のIT(情報技術)化が2023年度以降の完了を目標に進んでおり、それに合わせて新制度の導入を目指す。」
「新制度は短期間で集中的に審理するため、訴訟当事者には訴状や準備書面をウェブ上で裁判所に提出するよう義務付ける。書面の提出は3通までとし、文字数やページ数も統一することを想定している。」(同朝刊社会面)
(飛田の感想)
全面的に賛成。実務をしていると本当に裁判には時間がかかりすぎていると実感する。中には、あまりに裁判が長期化しているので、当事者双方とも嫌気をさし、しょうがないので、しぶしぶ和解している例も散見される。これでは、裁判が事件を解決したのではなく、時(とき)が事件を解決したという感じだ。
もっとも、これについては、裁判所の責任というよりは、弁護士の責任が大きいだろう。迅速に案件を処理できるような組織的な事務所体制になっていないとか、また、褒められた例ではないが、負け筋の案件などでは、わざと事件の進行をゆっくりしようとする誘惑がある。弁護士は依頼人の利益のために働いているので、必ずしも、このこと自体を責めることはできないが、ただ、現状の制度や運用が、昔ながらの弁護士事務所の体制や、進行を遅らせることができてしまう原因となっていることが問題だ。したがって、制度の方を変える必要がある。
ただし、1点問題がある。同記事によると、「原案では原告が提訴時に新制度の利用を申し立てて被告も同意した場合、原則6ヶ月以内に審理を終える。」とある。しかし、現状一番問題となっているのは、被告の方が負け筋で、「次の期日は2ヶ月先でないと入りません。」などと進行を遅らせられるような案件だ。もちろん、当初から証拠が薄い案件または途中で負け筋であることが判明した案件などでは、原告側が進行を遅らせようとする場合もある。したがって、6ヶ月以内に審理を終結するというこの新しい制度が当事者の申立てや、それに対する同意を要件にしてはうまく機能しないと思うのだ。
私としては、6ヶ月というと今の運用よりも大分縮まるが、それでも当事者としては「長い」と感じると思うので、特別の事情がない限り、全ての民事事件において、原則6ヶ月以内に審理を終結するような制度設計すべきであると考える。