カテゴリ:その他法律 >   民事訴訟法

毎日新聞が本日(2014年11月4日)午前5時45分に配信し、YAHOOニュースに掲載されている『<弁護士会照会>大手銀が加害者の口座情報開示』というニュースは、素晴らしいですね。

事件や紛争の被害回復や賠償のための差し押さえであっても、守秘義務を盾に顧客の口座情報の開示を拒んできた大手金融機関が、弁護士会照会による開示の求めに応じ始めた。合理性があれば顧客に対する金融機関側の賠償責任はないとする司法判断などが後押ししているとみられる。大手が方針転換したことで、他の金乳機関にも広がる可能性がある。


三井住友銀行が、大阪弁護士会と協定を結び、債務名義(ただし、公正証書を除く。)のある債権者から弁護士照会がなされた場合には、口座情報の開示に応じるようになったことは、このブログでもとりあげさせていただきましたが、この記事によれば、

こうした協定はむすんでいないものの、ゆうちょ銀行は2012年、三菱東京UFJ銀行も13年から、確定判決や和解成立を条件に照会に回答する方針に転じているという。


とのことです。ただ、

みずほ銀行など多くの金融機関は依然として「守秘義務があり、顧客の同意がなければ回答しない」との立場を維持する。


ということですので、まだまだ課題が多いというところでしょうか。

現状の民亊事件の最大の問題点は、債権者が裁判所で判決等を取得しても、債務者側の口座情報がわからず、結局泣き寝入りになることが多いことだと思います。
現行法上は、弁護士法23条の2に公私の団体等に対する照会制度があり、その照会には回答義務があると解されていますが、金融機関は債務者の個人情報保護を理由に回答を拒否します。照会請求をした側が金融機関に損害賠償を求めても、多くの裁判所は、この照会制度の義務は弁護士会に負っている義務であり、照会した者に対する義務ではないから、などとちょっと首をかしげざる負えないことを言って、損害賠償請求を認めません(過去記事参照)。
その結果、債権者側はますます権利を実現する手段がなくなり、他方、裁判で金銭の支払いを命じられても、それを無視して平然と暮らしているような人が散見されるようになりました。
私は、実務に携わっている弁護士として、このような我が国の司法にはとても危機感をもっています。このままでは、誰も裁判制度なんて使わなくなってしまうのではないかと。
そのような中で、このニュースはとっても嬉しいです。
惜しむらくは、まだまだ弁護士照会に応じてくれる金融機関が少ないこと。
三井住友銀行に関する記事の中でも言いましたが、この分野では弁護士会が積極的に動いて、金融機関との間で統一的なルールを作るなどして、弁護士法23条の2の照会制度が拡充するようにしてほしい。
このエントリーをはてなブックマークに追加

淡路島の蔭山文夫弁護士のブログで知りましたが、(大阪弁護士会所属の弁護士のみに認められるようですが)三井住友銀行が、債務名義を有する債権者から、弁護士法23条の2に基づき本店に照会を受けた場合、債務者が預金口座を有する支店名、回答日現在の残高を回答していただけるとのことです。正式には次のとおり。
従前、預金債権差押え準備のため、各金融機関本店に対し、債務者が預金口座を有する支店等について回答を求める23条照会(「全店照会」といいます。)が行われてきましたが、多くの金融機関は、顧客の秘密保護、預金者の承諾が得られないこと等を理由に回答を拒否していました。
当会は、不当な回答拒否であるとして金融機関に書面により申入れすると共に、株式会社三井住友銀行との間で、全店照会に対する回答を得られるべく協議していたところ、今般、民事執行法第22条に定める 債務名義(ただし第5号公正証書を除く。)を取得した債権に基づいて、所定の様式に従い、債権差押命令申立てのため全店照会を行った場合には、債務者が預金を有する支店名、回答日現在の残高等について迅速な回答を得られることとなりました(ただし、賦課金とは別に債務者1名につき同行に対する手数料3,000円(消費税別)が必要です。)。本年7月1日より上記取扱いが開始されますので、ご案内いたします。
いやいやこれは、画期的なことです。
従来、判決を得ても、債務者の口座情報を把握することができず、判決が絵に描いた餅となることが多々ありました。民事執行法には財産開示制度というものがありますが、実際には機能しているとは言い難い状況ですし、弁護士法23条の2の照会にも、金融機関側にはこれに応じる義務があるのに罰則規定がなく、照会をした当事者が拒否した金融機関に(民事的に)損害賠償請求をしても、「弁護士会に対する義務であって照会をした当事者に対する義務ではない」などと裁判所はわけのわからない論理を展開して、個々の弁護士としては、金融機関に対して、回答を強制することができなかったのです。そのため、我が国の裁判制度は、権利が保障されているとは言い難く、〇チャンネルの創業者のように、裁判所を無視して多くの敗訴判決を受けながら、平気な顔をして生活できてしまう者も現れるようになりました。
このような状況は、金融機関にとっても究極的にはよくない状況でしょう。自分たちも債権者となって強制執行することがあるのに、その実効性がひくく、結局、債権をサービサー等に廉価で売却しなければならなくなります。
さらに、権利が法的に実現できないということになると、人々は、その他の手段(ヤクザ等々)で実現しようとするわけで、社会的にも嘆かわしい状態です。
そのような状況で得をするのは、支払えるのに財産を隠して支払わない債務者と、不当な手段を利用して権利の実現を図ろうとする人たちだけです。

私は、大阪弁護士会と三井住友銀行の英断を称賛します。(私が属する)東京弁護士会をはじめ、他の弁護士会にも金融機関との協議をしてほしいですし、他の金融機関にも応じていただきたいと思います。
現在、債務者の口座情報を調べるには、興信所に10万円以上を支払って、グレーな情報を得るしかないわけですが、それに比べれば1件手数料1万円支払ってもいいのではないでしょうか。

弁護士会には、変な政治活動はやらなくてよいので、こういう活動を是非お願いしたい。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加

最近公表された判決の中で、東京高裁平成24年10月24日判決(金判No.1404-27)には、おもわず「えっー!?」と思ってしまいました。


事案としては、Xさんが、この訴訟とは別の訴訟で、裁判所に調査嘱託の申立てを行い、裁判所からY携帯会社に対し、ある携帯番号の名義人と住所等の照会をしてもらったところ、Y社から、個人情報保護や通信の秘密を理由に回答を拒否されたため、そのことが違法だとして、Y社に損害賠償を求めたものです(注1)。

(注1) なお、この訴訟は、当初、Y社に調査嘱託に応じることの確認だけを求める訴訟でしたが、おそらく別の訴訟の方が終了してしまったからだと思われますが、損害賠償請求が追加されました。Y社に調査嘱託に応じる義務があることの確認部分は中間判決として判断されており、1審・2審ともに(不適法)却下されています。

この、Xさん、いわゆる架空ファンド事件の被害者で、その別の訴訟で、加害者であるZほか9名を訴えましたが、Zの住所が不明で、唯一、名刺に書かれた携帯番号が手掛かりだったので、訴状等の送達のために、裁判所にこのような照会をしてもらったようです。専門的に言うと、民事訴訟法186条は、「裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。」と規定していますので、この規定を利用して調査嘱託をしてもらったというわけです(実務上まま行われています)。

ところが、Y社から回答を得られなかったため、結局、別訴では、公示送達という裁判所に訴状等を掲示する方法によって、訴状の送達があったものと扱い、訴訟が進められたようです。今回の判決には、その別の訴訟がどうなったのかが書かれていませんが、おそらく欠席判決のような感じで、Xの勝訴となったが、Zの居場所がわからないため、強制執行をしようにもやりようがなく、この別の訴訟における判決は、いわゆる「絵に描いた餅」になって、結局、Xさんは泣き寝入りを強いられたことが推測されます。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加

私としては、非常に「がっかり」な判例なのですが、弁護士会照会に対し照会先が正当な理由もないのに報告義務を不履行にした場合であっても、その照会の申し出をした弁護士に対して損害賠償義務を負わないと判断した判例を紹介します。事案は、次のようなケースです。

(1) Aは、X弁護士を代理人として、ゴルフ場「Cカントリークラブ」の経営をしているB社に対して金銭の支払いを求める訴えを提起して、仮執行宣言付の認容判決を得ました。

(2) (おそらく、X弁護士は、ゴルフ場における代金の支払いにはカードが使われることが多いので、Yカード会社に対してであれば、B社は売掛金債権を有していると考えたのでしょう。)X弁護士は、所属する弁護士会に対して、Aの受任弁護士として、弁護士法23条の2に基づき、Y社に次の①および②について照会するよう申し出を行い、同弁護士会は、Y社に対し実際に照会しました。
① Cと加盟店契約をしているのは、Y社であるか、あるいはそのグループ会社か。グループ会社であれば、その会社の商号と所在地を回答願う。

② Cと加盟店契約を、Yあるいはそのグループ会社としている、相手方当事者である法人の商号と所在地。またわかるのであれば同加盟店契約の締結年月日を回答願う。


(3) しかし、Y社は、セキュリティーセンター加盟店管理グループの名で、同弁護士会の会長に対し、「顧客との守秘義務により、お答えできません。」との理由で報告を拒否しました。

(4) そのため、X弁護士は、Y社には弁護士照会に対する報告義務不履行があり、これによって損害を被ったとして、損賠賠償を求める訴えを提起しました。

(参考)
弁護士法23条の2(報告の請求)  弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があった場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でない認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基づき、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。


続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加

p986-10

最近の新聞で、面白い記事が出ていました。あるハンバーガー店で、常連客が、従業員から「ストーカー」と呼ばれて、名誉を傷つけられたとして、慰謝料500万円を請求したところ、第1審の地裁ではこの請求は認められなかったが、第2審の高裁では、ハンバーガー店側の責任を認めつつ、賠償額については10万円と判断したというものです。記事によれば、この常連客は、従業員の女性らと複数回一緒に食事に出かけたことがあること、店長が謝罪していたこと、店員らがストーカーと呼んでいたことはまだ外部には広まっていなかったことが認定されているようですので、そもそも、不法行為責任が認められるのか、かなり微妙な案件だったようです。
 

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加

画像 001
(今日は朝から雨でしたが、夕方外に出てみると、雨上がりの銀座の空に
大きな虹が出ていました。)


1.クライアント(債権者)が勝訴判決を得て、さあ債務者の銀行口座に差し押さえをしようということになったときに、債権者側で必要となる情報はなんでしょうか? 

それは、どの銀行のなんという支店に債務者の預金口座があるかという情報だとされています。

口座番号の情報までは必要ありません。

しかし、どの支店に口座があるらしいということころまでわからないと、裁判所に銀行口座の差押えの申立て(専門用語でいうと「債権差押命令の申立て」といいます。)はできないのです。

そして、実務上は、差押えができたかどうかは支店単位で判断されます。

たとえば、みずほ銀行の銀座支店を取扱店として預金口座の差押えの申立てをした場合、同じみずほ銀行の渋谷支店に預金があっても、銀座支店に預金がなければ、差押は「空振り」に終わることになります(つまり「何も差し押さえられない」ということです。)。 


2.ただ、実は、実務上、債務者がどの銀行の何支店に口座を有しているのかということを調べるのは大変です。

何故か?

それは、そもそもそれまでに取引がなくて銀行口座を知りようがない債務者もいますし(不法行為のケース等々)、取引があっても、悪い債務者の場合、差押えの危険があるときには、他の金融機関の支店の口座にお金を移してしまうからです。 


そこで、甚だしい例では、裁判所から合計で数億円の支払いを命じられながら、自分名義の資産を無くして、かつ、収入が振り込まれる銀行をわからないようにして、民事執行(差押え)を免れ、実質的には高額の収入を維持しながら、のうのうと生活している例なども発生しています。 


3.で、債権者側も色々と工夫し、たとえば、銀行口座の差押えを申立てる際に、支店を特定せずに、複数の店舗に預金があるときは、支店番号の若いものから順番に差し押さえていくという「全店一括順位付け方式」という申立て方法や、預金額が最大の店舗の口座のみ差し押さえるという「預金額最大店舗指定方式」という申立て方法を開発しました。

しかし、いずれも、第三債務者(金融機関)において、速やかに確実に差し押さえられた債権を識別できない、という理由で、最高裁は、このような申立てを認めていません(全店一括順位付け方式について、最決H23.9.20金商137916。預金額最大店舗指定方式について最決H25.1.17金商14128頁)。 


4.しかし、私としては、この問題は、本当に大きな問題だと思うのです。もし多くの国民が制度の欠陥というべき側面を悪用するようになると、民事司法制度自体が機能しなくなる可能性もあると思っています。

逆に、預金口座の差押えがもっと効果的に認められれば、民事訴訟はもっと実効性の高いものとなり(なぜなら、不動産をもっていない人は沢山いますが、銀行口座を持っていない人はあまりいません。)、少なくとも、財産があるのに、民事判決を無視できるなどという悲しき事態は発生しないでしょう。 


5.では、どうすればよいのか?

私としては、現在の金融機関のシステムが、裁判所がいうように、本当に全店舗における預金者の名寄せができないものなのか(支店単位でしか管理できないものなかのか、そんなシステムしかゆうしていないの?)と疑問に思っているのですが、確かに、一口に金融機関といっても、メガバンク、地銀、信金、農協等々色々とあるので、裁判所の『解釈』で、一律に「預金額最大店舗指定方式」などを導入することには難しいかもしれません。しかし、だからと言ってこの問題を放っておいていいのではなく、立法による対応をしていけばいいのではないかと思っています。


(1) 法律で預金口座の差押えについては、「全店一括順位付け方式」または「預
金額最大店舗指定方式」が可能であることを規定する。


(2) システムが追いつかない金融機関については、国がシステム改善を助成する。


(3) 預金口座の差押えについての金融機関側の事務負担増大を考慮して、差押の申立て1件1,000円というように手数料制を導入する。


(4) 金融機関の間で不平等が発生するのを防ぐため、日本で営業する金融機関については、外国の金融機関も含めて、全て上記(1)から(3)を強制し、対応できない金融機関については我が国における営業を認めない。
 


司法に対する信頼を維持するためにも、預金口座差押えについての制度改革は急務だと思うのですが、いかがでしょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加

ちょっとショッキングなタイトルですが、これは、作家橘玲(たちばな あきら)さんの公式ブログの2012年8月9日の記事のタイトルです。

この記事はとても示唆的なので、是非ご一読をお勧めしますが、要約(意訳)すると、

(1) 大規模意識調査によれば、アメリカ人と日本人(および中国人)で、紛争処理の考え方についてほとんど違いがなく、むしろ、友人間の紛争については、教会コミュニテイの存在などが影響しているのか、アメリカ人の方が、訴訟を使うことに抵抗を示す度合が強い。

(2) それにもかかわらず、アメリカで訴訟が多いのは、交渉の入口として機能しているからである。すなわち、アメリカの訴訟には、強力なディスカバリー(証拠開示制度)があって、早期に事実関係を確定して、有利な和解を探ることが可能となる。民事訴訟が提起されても、実際にトライアルにまで進む事件は、2002年のデータで連邦裁判所で1.8%、州裁判所で15.8%に過ぎず、それ以外は、だいたい和解で解決していく。

(3) それに対して、日本の場合、訴訟は、任意交渉や調停で解決しなかった場合の最後の手段であり、ディスカバリーに相当する制度はなく(原告は自力で事実関係を確認するほかない。)、和解率は50%程度に過ぎない。
それ以外にも、日本の裁判には、強制執行制度の欠陥(支払う気のない債務者からの債権回収はほとんど不可能)、損害賠償の低さ(裁判をしてもしょうがない)、などの制度的問題がある。

(4) 要するに、日本人は、和を尊ぶ文化的要因ではなく、経済合理的な理由から(つまり、あまり役に立たないし、ペイしないから)訴訟を避けているのだ。(だから弁護士を増やしても訴訟は増えなかった)
以上から、「司法改革は、この司法制度の根幹に手をつけなくては機能せず、いまのままでは法科大学院に湯水のごとく税金を注ぎ込み、弁護士の失業を増やすだけに終わることになるだろう。」


最後の部分は、まさにその通りになってしまいました。
最近では、「司法修習生の就職先がないから司法試験合格者数を削減しよう」などという議論になっていることはご承知のとおりです。

私は、いち実務家ですので、現在ある制度を前提に、それをうまく使いこなすしかありませんが、現在の民事手続には問題が多く、立法も含めて、これを良い方向(役に立つよう)に変更していく必要があると考えています。

それにしても、橘玲さんの指摘は鋭いですね。
このエントリーをはてなブックマークに追加

夜の歌舞伎座




本文とは関係ありませんが、ライトアップされた歌舞伎座です。4月2日の開場以来、事務所の前の晴海通りと昭和通りの人通りは確実に増えて、にぎやかになりました。



1.個人的には大変残念な判決(正確には「決定」)が出ました。
いわゆる「預金額最大店舗指定方式」による差押命令の申立てを否定した最判平成25年1月17日決定(金法1966号110頁)がそれです。


2.少々背景事情を説明させていただくと、預金の差押えをする場合、具体的な口座番号までわかっている必要はないが、「〇〇銀行〇〇支店(又は本店)」の口座である、というところまでは特定する必要があるというのが今の実務です。

したがって、例えば、債務者が三井住友銀行築地支店に口座を有していたとして、債権者が、それを知らず、債務者の事務所の近くの三井住友銀行銀座支店に差押えをかけても、(同じ三井住友銀行であっても支店が違うから)差押えは空振りに終わる(つまり何も差押えられていない。)という結論になります。

しかし、この結論は、とても不合理なのです。

なにせ、銀行は沢山あって、さらに支店はもっと沢山あるので、債権者が(債務者が口座を有する)支店を特定するのは大変な作業となるし、また、債務者としては、債権者側に知られていない銀行の支店に口座を設けて、そこに(差押えをされないように)資金を移動させてしまうことが簡単に出来るようになるからです。

銀行口座の差押えは、不動産の競売などよりも、簡易に、(不動産を有している人は限られるが、預金口座はほとんどの人が持っているという意味で)かつ多くの債務者を対象にして行うことができる最も効率的・実践的なものであるずなのですが、この「支店」の特定の問題があって、預金口座の差押えをするのは容易でないという状態になっているのです。

そのため、せっかく裁判までして判決を得ても、強制執行ができないから一銭も回収できない、判決は「絵に描いた餅」と同じ、という悲しい事態が発生することになります。


3.そこで、これではいけないということで、工夫されたのが、「全店一括順位付け」方式という申立て方法です。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加

sakura
(昨日の夕方に、広尾一丁目で撮った写真です。今年の冬は寒かった印象がありますが、
桜の開花は早いですね。東京は今週末が満開のようです)



3月19日の記事の最後に、同記事で取り上げたセクハラ事件の弁護士費用が、訴え提起から判決まで約2年もかかった事件なのに、10万円が相当とされたことについて衝撃を受けたことを書きました。

で、昨日祝日だったので、一日、何が問題なのかつらつら考えていましたが、今の民事訴訟手続であの種の事件を解決しようとすると、あのような結果になってしまうのではないかと思った次第です。つまり、10万円が問題なのではなく、解決までに2年もかかってしまったことが問題ではないかということです。

続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加


現代の会社間の契約交渉では、ベースとなる一つの契約書案をワード等の電子ファイルの形にして、メール等に添付して、当事者(又は代理人弁護士間)で投げ合うということが行われます。
契約書案に修正を加えるときは、修正履歴を付けて直接電子ファイルに修正を加え、説明が必要なときも、[A社コメント:〇〇〇]というような感じで、契約書案にそのまま書いてしまいます。この形式だと、相手方がどこを変更したのかが明らかなので、契約交渉を効率的に行うことができます。

昨日ふと思ったのですが、こうしたやり方は、訴訟手続でも使えるのではないでしょうか。

例えば、訴状の請求原因の部分について、電子ファイル化し、以後の準備書面で行われるようなやり取りは、この請求原因の該当箇所に書き加える形で行うのです。既に争点整理の段階では、一つの電子ファイルに双方が書きあうというようなことが行われていますが、これを手続の初めから行うのはどうか?という提案です。

このように思うのは、準備書面の作成で無駄に時間がかかるのは相手の主張部分を引用したり、要約したりする部分なので、その時間が節約できると思うからです。

また、準備書面を数通提出すると、ある主張がどの準備書面のどこにかいてあったのか探すが非常に手間だったりしますが、その問題が一挙に解決します。

さらに、よく、こちらの主張を歪曲して、こちらが主張していないようなことに対して反論する変なテクニックを使う先生がたまにおられますが、そういうことも防げます。

裁判所にとっても、判決で当事者の主張をまとめる際に、非常に役立つと思います。この論点に対する当事者の主張は別紙のとおりとして、当事者が作成した書面を使うこともできると思います。

このような主張をすると、メールやパソコンを使えない弁護士はどうするのか? などと言い出す人がいますが、時代が時代ですので、使い方を覚えて下さいとしか言いようがありません。

また、このような主張整理の方法を取り入れると、負け筋の側は明らかに分がないことがわかってしまうので、負け筋側を持つ先生方はやりたがらないのでは? というような意見が出そうですが、無駄な時間稼ぎをしながら、相手に譲歩を迫るやり方は、この業界全体の「死」を意味するでしょう。

このような変更には、民事訴訟法の改正が必要ですし、裁判所のインフラの整備にも時間がかかるので、一朝一夕には実現しませんが、アイディアとしては良いと思うのですが、いかがでしょうか?

まぁ、一つの電子ファイルの中に双方が主張を書きあうというような提案は、ちょっとドラスティック過ぎるかもしれませんが、準備書面を書面だけでなく、電子ファイルの形にもして、裁判所及び相手方に送付する(これは今でも判決前などに裁判所から要請されて提出する場合がありますので、あまり抵抗はないのではないでしょうか。)だけで、かなり無駄な手間が省けると思うので、そのような運用を常態化していくところから始めるのがよいかもしれませんね。

民事訴訟代理人の実務〈2〉争点整理

本文とは関係ありませんが、友人の大坪和敏弁護士が執筆に参加している本です。
最新の論点整理に関する情報が記載されていて、専門家の皆さんにはおすすめです。

このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ