事件や紛争の被害回復や賠償のための差し押さえであっても、守秘義務を盾に顧客の口座情報の開示を拒んできた大手金融機関が、弁護士会照会による開示の求めに応じ始めた。合理性があれば顧客に対する金融機関側の賠償責任はないとする司法判断などが後押ししているとみられる。大手が方針転換したことで、他の金乳機関にも広がる可能性がある。
三井住友銀行が、大阪弁護士会と協定を結び、債務名義(ただし、公正証書を除く。)のある債権者から弁護士照会がなされた場合には、口座情報の開示に応じるようになったことは、このブログでもとりあげさせていただきましたが、この記事によれば、
こうした協定はむすんでいないものの、ゆうちょ銀行は2012年、三菱東京UFJ銀行も13年から、確定判決や和解成立を条件に照会に回答する方針に転じているという。
とのことです。ただ、
みずほ銀行など多くの金融機関は依然として「守秘義務があり、顧客の同意がなければ回答しない」との立場を維持する。
ということですので、まだまだ課題が多いというところでしょうか。
現状の民亊事件の最大の問題点は、債権者が裁判所で判決等を取得しても、債務者側の口座情報がわからず、結局泣き寝入りになることが多いことだと思います。
現行法上は、弁護士法23条の2に公私の団体等に対する照会制度があり、その照会には回答義務があると解されていますが、金融機関は債務者の個人情報保護を理由に回答を拒否します。照会請求をした側が金融機関に損害賠償を求めても、多くの裁判所は、この照会制度の義務は弁護士会に負っている義務であり、照会した者に対する義務ではないから、などとちょっと首をかしげざる負えないことを言って、損害賠償請求を認めません(過去記事参照)。
その結果、債権者側はますます権利を実現する手段がなくなり、他方、裁判で金銭の支払いを命じられても、それを無視して平然と暮らしているような人が散見されるようになりました。
私は、実務に携わっている弁護士として、このような我が国の司法にはとても危機感をもっています。このままでは、誰も裁判制度なんて使わなくなってしまうのではないかと。
そのような中で、このニュースはとっても嬉しいです。
惜しむらくは、まだまだ弁護士照会に応じてくれる金融機関が少ないこと。
三井住友銀行に関する記事の中でも言いましたが、この分野では弁護士会が積極的に動いて、金融機関との間で統一的なルールを作るなどして、弁護士法23条の2の照会制度が拡充するようにしてほしい。