2016年2月24日の日本経済新聞39頁の記事ですが、
「政府は漫画の海賊版などを被害者の告訴なしで摘発できるようにする方針を決めた。環太平洋経済連携協定(TPP)に伴う制度改正で、著作権侵害罪を「非親告罪」に変えるのに合わせた。オリジナル作品を基にした二次創作の同人誌は原則として対象外とする。ただ判断が難しいケースもあり、制作者側にはなお不安もくすぶっている。」
という記事が面白いと思いました。
アニメや漫画ファンの世界では、同人誌などでオリジナル作品のキャラクターを登場させる作品を書くのだそうですが、
「現代の漫画文化は、この『描いて描かれてまた描いて』というサイクルの中で生まれた幅広い二次創作作品が裾野を支えている。」(記事中のゆうきまさみさんの発言)
のだそうで、
「こうした活動は著作権侵害に当たる恐れがある。だが現行制度では著作権侵害は親告罪で、原作者などの著作権者が捜査当局に被害を訴えないと立件されない。漫画の二次創作は従来、原作者が事実上黙認するケースが多かった。」
とのことです。
今回予定された制度改正では、こうした漫画界の実情に配慮して、同人誌は原則対象外にして、「利益目的で原作をそのままコピーした海賊版」のみを非親告罪、すなわち捜査機関の判断のみで摘発対象にできるようにするそうなのですが、「原作を多く引用した商業目的の二次制作」はグレーゾーンとして残る可能性があるため、コミックマーケット(コミケ)の運営者などから懸念が示されているとのことです。
恥ずかしながら、私は、このような世界があることを初めて知りました。弁護士的には、すぐに「無断で二次創作をされたら損害賠償だ!」などと世知辛いことを発想してしまうのですが、著作者が大目にみるのが普通という世界があったのですね。ちょっと癒されました。色々と議論はあるかと思いますが、漫画界の実情を反映した制度なることを願っております。