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来年(2020年)4月1日から施行される改正民法の勉強をしていて、あれっ???と思ったことの第二弾です。まずは条文から。


(債務者の取立てその他の処分の権限等)
第423条の5 債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。



この条文の趣旨については、法務省の立法担当者による筒井・松村編著「一問一答 民法(債権関係)改正」(商事法務)93頁から94頁にかけて次のように説明されています。長くなりますが以下引用。

「4 債務者の処分権限の制限の見直し
 旧法化の判例(大判昭和14年5月16日)は、債権者が代位行使に着手して、債務者にその事実を通知し、又は債務者がそのことを了知した場合には、債務者は被代位権利について取立てその他の処分をすることができないとしていた。また、下級審裁判例の中には、債務者による処分が制限されることを前提に、この場合には、相手方が債務者に対して債務の履行をすることもできないとするものがあった。
 しかし、債権者代位権は、債務者の責任財産を保全するため、債務者が自ら権利を行使しない場合に限って債権者に行使が認められるものであるから、債権者が代位行使に着手した後であっても債務者が自ら権利を行使するのであれば、それによって責任財産の保全という所期の目的を達成することができる。それにもかかわらず、債務者による処分を制限するのは、債務者の財産管理に対する過剰な介入である。また、債務者による取立てが制限された結果相手方が債務者に対して債務の履行をすることも禁止されると解した場合には、相手方は債権者代位権の要件が充足されているかを債務を履行する前に判断しなければならなくなるが、相手方は、その判断に必要な情報を有しているとは限らない。
 そこで、新法においては、債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者はその権利について取立てその他の処分をすることができ、相手方も債務者に対して履行をすることを妨げないとしている(新法第423条の5)。」


(私の感想)
 えっえっ!そうなの???私の実務的感覚としては、債権者代位権が行使される場面は、債務者がとてもお金に困窮しているときであり(いわゆる無資力)、方々からお金の督促をされているようなときなので、債務者のもとにお金が入ってくると、すぐに使われてしまうというものです。だから、従来の判例は、債権者が代位権行使に着手したときは、債務者に被代位権利の取立等をすることができないと解釈するとともに、債権者は相手方に対し、(債務者ではなくて)自分に支払えと請求できるようにしていたという理解なのです(注1)。つまり、債権者代位権が行使されているのに、債務者が被代位債権の取立等をすることを認めると、債務者の責任財産の保全という目的も実質的には達成されなくなるから、債務者の取り立てや、債務者への支払いを禁止していたと考えるのです。

 現実的に考えても、債権者代位権が行使された場合、債務者は相手方に「頼むから自分に払ってくれ。長い付き合いじゃないか。迷惑は絶対にかけない。」と頼むでしょう。で、その際に、新法第423条の5により確かに債務者に支払ってもOKということになると、相手方としては、(債権者代位権を行使してきた見知らぬ第三者ではなく)従来から付き合いがある債務者に心置きなく払えることになるのです。かくして、債権者代位権の実効性はおそろしく低下するでしょう。

 まぁ、そもそも債権者代位権は、債務者の無資力を立証するのが難しかったり、被代位権利を探索することが難しかったりして、実務上はあまり使われない制度なのですが、この第423条の5により、ますます使われなくなるのではないでしょうか???


(注1)この後者の点は、第423条の3で法定された。であれば、どうして前者について、反対のことを法定してしまったのか???

まずは、次の条文を読んでほしいと思います。これは、東京弁護士会内の最大派閥・法友会の若手弁護士の会である法友全期会の債権法改正特別委員会が『改正民法 不動産売買・賃貸借契約とモデル書式』という本の中で発表した土地建物売買契約書(例)の条文です。

 

(契約不適合責任)

第11条 買主は売主に対し、本件物件に下記(1)ないし(4)の瑕疵があるなど、本件物件が本契約の内容に適合しないものであった場合、相当の期間を定めて当該瑕疵の修補等、履行の追完を催告し、その期間内に履行がないときは、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる。この場合、減額する代金額は、当事者間での協議により決定するが、協議がまとまらない場合には、契約内容不適合がなければ本件物件が有したであろう価値に対して、本件物件の実際の価値との間で成立する比率に従って代金額を減額するものとする。

(1) 雨漏り

(2) シロアリの害

(3) 建物構造上主要な部位の腐蝕

(4) 給排水管(敷地内埋設給排水管を含む。)の故障

 なお、買主は売主に対し、本件物件について、前記瑕疵を発見したとき、すみやかにその瑕疵を通知して、修復に急を要する場合を除き売主に立ち会う機会を与えなければならない。

〔以下、省略〕

 

この契約書(例)の条文について違和感を感じないでしょうか?この違和感を感じるには202041日から施行される改正民法における瑕疵担保責任のことを知っておくことが必要です。

 

これまで、不動産(土地・建物)や中古動産(自動車・機械)などの特定物の売買については、その物自体を売却するという契約なのだから、その物自体を引き渡せば売主の責任は果たしたことになるが(いわゆる特定物ドグマ)、ただ、目的物に隠れた瑕疵(=通常有すべき品質・性能を欠くことがある)ときに売主に何も責任追及できないとすると買主に酷なので、瑕疵担保責任という責任を法律が特別に認めたのだ(法定責任説)と解されていたのです。

それに対し、改正民法では、いえいえ特定物であろうが、不特定物であろうが、売買の当事者は、その合意した一定の品質・性能を有する目的物を売買の対象にすることを意図していたのであるから、その意図した目的物が引き渡されなかったのであれば、契約上の責任が発生するのだ(契約責任説)という立場に立っています。つまり、瑕疵担保責任といっても、それは債務不履行責任と同じだというのです。

そこから、

1.これまでは「隠れた」瑕疵しか責任追及できなかったが、改正民法では、隠れていたか否かにかかわらず、目的物が契約に不適合なものであれば、債務の履行が行われたとは言えないので、売主に対して責任を追及できる。

2.これまでは、瑕疵担保責任は法定責任という前提があったため、そこにおける損害賠償は信頼利益(現実に発生した損害)のみが対象になると考えられていたが、改正民法では、通常の債務不履行と異ならないから、逸失利益(得べかりし利益)も対象になる。
などの違いが導かれるのです。

 

そして、ここが重要な点なのですが、「瑕疵」という用語は、国民一般からは理解しにくい用語ですし、従来から判例上「瑕疵」は「契約の内容に適合しないこと」と解釈されていたところ(最判平成22.6.1、最判平成25.3.22)、「瑕疵」という用語では、当事者が目的物上のキズを問題にしていなくとも客観的にキズがあれば売主に責任が発生するなどいう誤解を招くおそれもあるので、積極的に使わないとの決断がなされ、民法典からは一掃されてしまったのです(「一問一答 民法(債権関係)改正」(275頁)参照)。

 

ですから、上記の条文で、「本件物件に下記(1)ないし(4)の瑕疵があるなど」とか、「当該瑕疵の修補等、履行の追完を催告し」とか「前記瑕疵を発見したとき」とか、「瑕疵」という用語を使うのは、民法改正の趣旨をよくわかっていないと言わざるを得ないと思うのです。私としては「欠陥」とか「不適合」とかもっと現代的な言い回しにした方がいいと思います。


ただ、いずれにしても、改正民法は202041日から施行されますので、クライアントの皆様にとっては、契約書式の見直しが急務になりますね。


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来年(2020年)4月1日から施行される改正民法の151条には、「協議を行う旨による時効の完成猶予」の条文が新設されています。
長くなりますが、条文を引用すると次のとおりです。



(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第151条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から1年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第1項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第1項の合意がその内容を記載した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を準用する。
5 前項の規定は、第1項第3号の通議について準用する。

このような時効完成猶予事由を新設した理由については、法務省で民法改正を担当していた筒井・松村著『一問一答 民法(債権関係)改正』49頁によれば、「旧法の下においては、当事者が権利をめぐる争いを解決するための協議を継続していても、時効の完成が迫ると、完成を阻止するためだけに訴訟の提起や調停の申立てなどの措置をとらざるを得ず、当事者間における自発的で柔軟な紛争解決の障害となっていた。そのため、このような協議を行っている期間中は、時効が完成しないように手当をする必要がある。」とのことです。

また、単に協議をしているという事実状態のみでは足りず、当事者間で協議を行う旨の合意をしていることが必要なのは、同書によれば、「どのような状態に至れば協議といえるかは不明瞭であるのに対して、協議を行うことを対象とした合意の存否であればその判断は比較的用意であり、事後的な紛争を招きにくいから」ということのようです。

さらに、書面又は電磁的記録による合意を要件にしたのは、「事後的に時効の完成猶予がされたか否か等をめぐり分省が生ずる事態を避けるため」とのことです。もっとも、書面又は電磁的記録の様式自体には制限はないから、署名や記名押印が必要であるということではなく、「また、一通の書面である必要もない。例えば、電子メールで協議の申し入れがされ、その返信で受諾の意思が表示されていれば、電磁的記録によって協議を行う旨の合意がされたことになる。」とのことです。

で、ここからは私の意見ですが、この「協議を行う旨による時効の完成猶予」は、実務で使われるようになるでしょうか?

実は、私は、あまり使われないのではないか、と思っています。

売掛金の請求などの権利の存在がはっきりしているものは、まずは、請求書や内容証明を送付して、支払いの催告をするでしょうから、催告による時効の完成猶予の効力が発生し(第150条1項)、その後に、支払いのスケジュールのために協議を行おうということになっても、第151条第3項により、この合意による時効完成猶予の効力を有しません。したがって、この制度は、当事者間で権利の存在について争いがあるような場合に利用されるのかな、と思うのですが、そもそも権利の存在について債務者側が争っている場合には、債務者側は協議にはのってこないでしょうし、さらに協議に時効完成猶予効があるなどと知ったら、一層、協議をすること自体を拒否してくると思うのです。強いて言えば、権利の存在自体には争いはないが、その金額について争いがあるような場合には、「権利についての協議」ができそうですが、その場合にも、通常は、まずは債権者側が内容証明等で権利主張をするでしょうから、はじめに催告が行われることになるのではないかと思うのです。

まぁ、使われるか使われないかは、実際に改正民法が施行されて数年たたないと分かりませんが、実務家としての経験からすると、「使われないんじゃないかな~」と思います。

 働き方改革関連法に続き、影響が大きそうな法改正として、民法(債権法分野)の改正を行う「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)の施行日が迫ってきています。

「民法の一部を改正する法律」は、201762日に公布され、施行日は202041日を予定しています。(一部例外もあります。)

 民法の債権法分野は、1896年(明治29年)に制定されて以降、実質的な内容の改正が行われないまま、今日まで来ました。ですが、流石に100年以上の時が経つと、現在の社会や経済の状況に合わない規定も出てきます。そこで、今回、債権法分野について大規模な改正が行われることになりました。

 ちなみに債権法分野と簡単に言っていますが、「債権」とは「特定人(債権者)が他の特定人(債務者)に対して、一定の行為(給付)を請求することを内容とする権利」(デジタル大辞泉)のことを言い、民法の債権法分野には、この債権の発生・変更・消滅等に関わる様々な規定が含まれます。一口に債権法分野と言っても、その範囲は非常に広いのです。

 さて、「民法の一部を改正する法律」による改正項目は多岐に渡りますが、法務省は、主な改正事項として次の24個を挙げています。(http://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

1.消滅時効に関する見直し                                  2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し                                              4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設                 6.意思能力制度の明文化

7.意思表示に関する見直し                                       8.代理に関する見直し

9.債務不履行による損害賠償の帰責事由の明確化   10.契約解除の要件に関する見直し
11.売主の瑕疵担保責任に関する見直し                     12.原始的不能の場合の損害賠償規定の新設

13.債務者の責任財産の保全のための制度                 14.連帯債務に関する見直し

15. 債務引受に関する見直し                                         16.相殺禁止に関する見直し

17.弁済に関する見直し(第三者弁済)                     18.契約に関する基本原則の明記

19.契約の成立に関する見直し                                    20.危険負担に関する見直し

21.消費貸借に関する見直し                                        22.賃貸借に関する見直し

23.請負に関する見直し                                               24.寄託に関する見直し

 
 また、このうち重要な実質改正事項として、次の5つが挙げられています。(http://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf

1.消滅時効に関する見直し

2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し

4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設

 

 今回、一つ一つの改正項目を解説することはできませんが、これを見ただけで、非常に多くの規定が改正されていることが分かりますね。 

 上記改正により、日常生活でもビジネスでも最も重要な債権の発生原因である契約についての規定が変更されたり、発生した債権が不履行になった場合の取扱いに関する規定が変更されたりしています。今後は、これまで使用していた契約書の雛形等の見直しが必要になってくるでしょう。(現在、民法改正に対応した契約書の雛形集などはあまり充実していませんが、これからどんどん出てくると予想されます。)

 特に事業者の場合、今回の改正が関係しない方はほとんどいないでしょうから、少しずつ、改正への対応を進めていきましょう。

 弊事務所では、破産した会社の財産管理・分配等を行う破産管財案件を扱っていますが、未払賃金の立替払制度の利用を申請する機会が多くあります。今回はこの未払賃金の立替払制度についてご紹介します。

 そもそも、未払賃金の立替払制度は、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、未払賃金の一部を政府が事業主に代わって立替払する制度で、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づいて独立行政法人労働者健康安全機構が実施しています。
 そのため、企業が倒産してしまい従業員に給与が支払われていないという状況が起きた場合には、この制度の利用を検討することになるのですが、利用には一定の条件があり、次のような労働者や労働債権についてしか立替払が実施されません。

対象労働者の範囲(全て満たす必要があります)

①労災保険の適用事業所で1年以上事業活動を行っていた事業主に雇用されており、倒産に伴って賃金が支払われないまま退職した労働者
②裁判所への破産手続開始等の申立日等の6ヶ月前の日から2年以内に当該企業を退職した労働者
③未払になっている賃金等の額について破産管財人等の証明等を受けた労働者

→事業主の事業活動期間が1年に満たない場合や、労働者が破産等申立日の6ヶ月前よりも前に退職している場合、未払になっている賃金等の金額について破産管財人や清算人等から証明を受けられない場合などは、立替払を受けることができません。

対象労働債権の範囲

①賃金台帳や就業規則、給与明細等によって客観的に認定できる範囲の定期賃金・退職金
②上記のうち、退職日の6ヶ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来しているもの

→賃金額について会社が何も資料を残しておらず、労働者側にも資料がないという場合には立替払が難しいことがあります。また、未払期間が退職日よりもあまりに前の場合は、その期間分は立替払の対象に含まれないことになります。

 細かく言えばもっといろいろな条件があるのですが、立替払条件は概ね上記のようになっており、独立行政法人労働者健康安全機構が破産管財人等から提出された資料を精査して上記の条件を満たしていると判断した場合には、認定額の8割について立替払を実施します。
 ただし、立替払金額には年齢に応じて上限があり、30歳未満の労働者は88万円、30歳以上45歳未満の労働者は176万円、45歳以上の労働者は296万円とされています。
 そのため、賃金を支払われない状態で長期間働いていた労働者や賃金額が高い労働者については、この上限に引っかかってしまい、実際の債権額よりも相当低額の立替払しか受けられない場合があるので注意が必要です。

 また、立替払までにかかる期間ですが、立替払の実施までには、①破産管財人等が賃金に関する資料を集めて未払賃金額を算出、証明書を作成→②労働者が立替払の申請書を作成して提出→③労働者健康安全機構が審査、という過程を辿るため、破産開始決定が出てから立替払の実施までに2~4ヶ月程度がかかってしまうことが多いです。

 以上のように、立替払の対象労働者や対象労働債権の範囲に制約があるほか、立替払額の上限もありますが、本来倒産してしまった企業からは回収できない可能性が高い部分についても立替払いしてもらえるため、この制度は労働者にとって強い味方です。ぜひ覚えておいていただければと思います。

 もうすっかり暖かくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 訴訟や相続関係の手続きなど、法的手続きを取ろうとすると、色々な公的書類を揃える必要があります。これらの書類は、一部弁護士の方で取ることができるのですが、どのような書類であれば弁護士に取ってもらうことができるのでしょうか。
 この点は、質問される機会も多いので、この機会に代表的なものをまとめておきたいと思います。

① 住民票
 住民票は、住民基本台帳法に基づき交付請求できる書類で、現住所の市町村役場に請求します。
 住民票には、現住所や本籍地が記載されており、正確な現住所が知りたい場合や本籍地を知りたい場合に取り寄せることがあります。弁護士の業務との関係では、戸籍を取りたいのに本籍地が分からないといった場合に、まず住民票を取り寄せて本籍地を明らかにすることが多いです。

 住民票は、一定の要件を満たす場合には、弁護士や司法書士が取得することができます。具体的には、①弁護士がある事件を受任していて、②その事件の依頼者が、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある等、住民票の交付を受けるについて正当な理由がある場合に、弁護士の方で住民票を取得することができます(住民基本台帳法第12条の32項)。

 ですので、例えば、弁護士が遺産分割調停の申立てを受任して、被相続人の戸籍を集める必要がある場合に、被相続人の住民票を取得して本籍地を調べるといったことは、上の①②を満たすので、許されます。
 上の例以外でも、ご依頼いただいた事件で住民票を取得する必要が出てきたという場合には、①②の要件を満たすことが多いので、多くの場合、弁護士の方で住民票の取得が可能と思われます。

② 戸籍謄本・抄本
 戸籍謄本・抄本は、戸籍法に基づき交付請求できる書類で、戸籍に記載されている人の本籍地の市町村役場に請求します。
 戸籍謄本には、同一戸籍内の全員について、氏名等の他に、戸籍事項(戸籍の編纂日等)や身分事項(出生・婚姻等に関する情報)が載っているため、特定の人の家族関係を明らかにしたい場合に使用されることが多いです。

 戸籍謄本・抄本についても、住民票の場合とほとんど同様で、①弁護士がある事件を受任していて、②その事件を処理するにあたって必要がある場合には、弁護士の方で戸籍謄本・抄本を取得することができます(戸籍法第10条の234項)。

 ですので、戸籍謄本・抄本も、事件を依頼していただいた中で取得する必要が出てきた場合には、ほとんどの場合、弁護士の方で取得することができることになります。

③ 固定資産評価証明書
 固定資産評価証明書は、地方税法に基づき交付請求できる書類で、不動産の所在する市町村役場に請求します。
 固定資産評価証明書には、不動産にかけられる税金の計算根拠となる不動産の評価額が記載されているため、その不動産の評価額を知りたい場合に使用されることが多いです。

 固定資産評価証明書に関しては、取得できる場合が法律と政令によって定まっているのですが、地方税法施行令第52154項において、「民事訴訟費用等に関する法律別表第一の一の項から七の項まで、一〇の項、一一の二の項ロ、一三の項及び一四の項の上欄に掲げる申立てをしようとする者」は、固定資産評価証明書を取得できるとされています。これは、ざっくりまとめてしまえば、当該不動産に関する民事訴訟を提起する場合を示しています。
 全くの第三者である弁護士が固定資産評価証明書を取得できる場合で当てはまりそうなのは上記のみですので、固定資産評価証明書に関しては、当該不動産に関する民事訴訟を提起する場合に限って、弁護士も取得することができるということになります。

④ 課税証明書
 課税証明書は、地方税法に基づき交付請求できる書類で、発行年の11日時点の住所地の市町村役場に請求します。
 課税証明書には、対象者に住民税がいくら課税されたのかが記載されているのと同時に、(自治体によって違いがあるのですが、多くの場合、)課税対象となる収入や所得の金額が記載されているため、課税対象者の収入・所得金額を知りたい場合に使用されます。

 課税証明書に関しては、法律で「地方団体の長は、…(課税)証明書の交付を請求する者があるときは、その者に関するものに限り、これを交付しなければならない。」(地方税法第20条の10)と定められており、弁護士等の完全なる第三者がこれを取得することはできないことになっています。
 したがって、課税証明書に関しては、依頼された事件の処理に必要な場合でも、弁護士の方で取ることはできないので、課税された本人か、本人と同一世帯の親族であれば申請を受け付けている自治体も多いため同一世帯の親族に取得してもらう必要があります。

以上、弁護士の公的書類の取得について、代表的なところをまとめてみました。
弁護士その他の士業にご依頼いただく場合には、ぜひご参照いただければと思います。

今日(2018年1月9日)の日経新聞(電子版)に「夫婦別姓選べず『戸籍法は違憲』 サイボウズ社長が提訴」という見出しの記事が掲載されていました。

(以下記事の抜粋)

「結婚時に戸籍上の姓に旧姓を選べないのは法の下の平等を保障する憲法に反するとして、ソフトウエア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長(46)ら4人が9日、国に計220万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。」

「民法750条は「夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称する」と定めている。15年12月、最高裁大法廷は、この民法の規定を「合憲」とする初の憲法判断を示した。」

「民法の規定については合憲判断が確定しているため、青野社長らは戸籍法に着目した。日本人と外国人の結婚・離婚や、日本人同士の離婚の際には戸籍上の姓を選べるのに、日本人通りの結婚だけ姓を選べない点を挙げ、「法律の不備であり、法の下の平等に反して違憲だ」と主張する。」

(飛田のコメント)
民法750条については、実際上、結婚の際に女性の方が圧倒的に氏を変更しているという実態を背景に、憲法24条1項の両性の平等規定に違反するとの主張がなされてきましたが、形式上は、男性側の姓を選んでも女性側の姓を選んでもどちらでも良い(ただ、どっちかに決めなければいけない)という制度であるため、少々男女差別だという主張に馴染みにくいところがありました。
ところが、上記の訴訟では外国人との比較から夫婦同姓制度は憲法14条の法の下の平等規定に違反すると理由づけているようであり、非常に良い着眼だと思います。国側は、外国人にできることが、なぜ日本人にはできないのか?そのように区別することに合理性があるのか?という点を主張立証していかなければならず、結構、その立証は難しいのではないでしょうか。
訴訟の行方を注目したいと思います。

1022日(日)に衆議院議員選挙・最高裁裁判官国民審査が行われましたが、皆様は投票に行かれましたでしょうか。台風が上陸したせいか、投票率は53.68%で戦後2番目の低さだったそうです(私は台風の中、雨に濡れながらも投票に行きました。自慢できることではありませんが…)。

さて、今回の選挙では、個人的に法律的な部分に着目しており、それは選挙権の年齢が「18歳以上」に引き下げられてから初めて実施される総選挙であるという点です。
平成276月に公職選挙法が改正されて、今まで20歳以上であった選挙年齢が、18歳以上に引き下げられました。

これを受けて、民法の成年の対象年齢の取扱いも18歳への引き下げが議論されていますが、少なくとも裁判員の対象年齢は今までどおり「20歳以上」に維持されています。もっとも、この裁判員の年齢については、賛否両論あるようです。
個人的には、今回18歳以上に選挙権という民主主義の根幹を構成する権利が付与された以上、法的にも18歳以上は主権者として民主主義の担い手になったと考えます。裁判員として評議に加わるということも国政を決めることと重大性は異ならず、裁判員制度も民主主義の実現の一つだと考えれば、18歳以上であっても裁判員になれるようにするべきだと思います。(ちなみにアメリカの選挙権は18歳以上に付与されて、かつ裁判員よりも重責な陪審員になるのも18歳以上からになっています。)

さて、民法の成年の対象年齢の取扱いが18歳へ引下げられた場合、様々な影響があります。
未成年者は、法定代理人(多くは親)の同意なく契約を締結した場合には、その契約を取り消すことができます(民法第5条第1項、第2項)。この取消権は、事情がどうあれ取り消すことができるので、かなり強力な権利です。18歳が自分の締結した契約について責任を負うことになり、消費者トラブルの多い、サラ金、デジタルコンテンツやエステサービス等の契約を取り消すことができなくなります。この点は早い時期から法教育や消費者教育を行っていくしかないでしょう。

また、養育費の支払いを決める際に、今では成年の20歳を基準として、「20歳に達する日の属する月まで」と決めたりしましたが(大学進学を予定し「22歳」の場合もあります。)、今後18歳を基準にする場合が出てくるでしょう(養育費を支払う側からすれば18歳を基準にしたい)。

なお、民法で成年の対象年齢が下がったとしても、喫煙については「満20歳」にならないと認められません。というのも、未成年者喫煙禁止法は、喫煙できる者を、例えば「民法に規定する成年」と規定されておらず、「満20歳」(満二十年)と規定していますので、民法の成年が引き下がっても、連動して喫煙可能年齢も引き下げられるわけではありません。飲酒も同様の議論で、未成年者飲酒禁止法が定められていますが、飲酒可能年齢は「満20歳」(満二十年)と規定されています。

他には、男性は18歳、女性は16歳になると婚姻できますが、20歳未満だと父母の同意が必要になりますが(民法737条第1項)、成年が18歳に変更されると、18歳の男性が結婚する場合は、少なくとも男性側の父母の同意は不要になります。併せて女性の婚姻可能年齢も18歳に引き上げられるとの議論はありますが、現在の規定のままだと女性は16歳、17歳に結婚する場合には父母の同意が必要になりますが、18歳になれば父母の同意なく婚姻できるようになります。

選挙権が18歳以上に付与されるようになって、若者も国政だけでなく民主主義全体への関心が強くなればいいですね。今後も未成年者をめぐる法律の動きに注目したいと思います。

森友学園、加計学園、共謀罪といったニュースに押されて世間的にはあまり大きなニュースにはなりませんでしたが、去る平成29年5月26日に改正民法案(債権法関係)が国会で成立いたしました。

 実は、今の民法(債権法関係)は、明治29年(1896年)4月に成立したもので、今回の改正は約120年ぶりの大改正だったのです。1896年というと、まだ日清戦争が終わった1年後で、アメリカではユタ州が45番目の州になり(ちなみに、ハワイがアメリカの自治領になったのは1898年のこと)、アテネでは第1回夏季オリンピックが開催され、日本の東北には明治三大大津波が押し寄せてきて2万人の死者が出ています。日本で鉄道(新橋・横浜間)が初めて走ったのは1872年(明治5年)と比較的早いのですが、電話回線(東京・熱海間)が初めて敷設されたのが1893年、自動車が作られるようになったのは1910年代になってからです。今は平成29年ですが、私なぞはまだ昭和の気持ちで生活していますので、おそらく明治29年当時もまだ江戸時代の気持ちで生活していた人も沢山いたことでしょう。

 というわけで、今の民法はとてつもなく古いので、「錯誤」とか「瑕疵」とか古めかしい言葉が残っているし、その後の時代の変化によって条文の文言どおり解釈するとうまくいかなくなったところを判例で補っているので、条文だけを読んでも結論がよくわからないなどという不都合があります。さらに、民法制定時には想定していなかったようなインターネットなどというものの発達もあったり、もうかなり時代遅れな法律になっていたのです。そこで、一般の人が読んでも意味がとれるようにしたり、これまで判例でつぎはぎ的に補ってきた解釈を条文だけで解釈できるようにしたり、さらに新しい時代に対応する制度を設けたりしたのが、今回の大改正なのです。

 ちょっと一例をあげると、債権を行使しないと債権が消滅してしまう消滅時効期間。これまで原則として10年でしたが、飲食代金や弁護士報酬などは何故か2年であったりとバラバラだったのです。そこで今回の改正で一律5年に統一されました。

 次に、履行遅滞の場合の利率。これまでは5%でしたが、デフレの低金利時代には高すぎますので3%に引き下げられました。また、3年ごとに見直す変動制がとられることになります。

 さらに、連帯保証制度の見直し。「他人の保証人にはなるな!」を家訓としている家があるように、良かれと思って保証人になってしまうと人生を狂わせるような過酷な事態が生じることがよくあります。そこで、これからは、公証人が保証人の意思を確認しないと、保証は認められないことになります。公証人の確認というプロセスで一息入れることで、本当に保証人になっていいものか考える機会を与えるのです。

 加えて、敷金返還のルール。これまで、民法には敷金に関する規定がたったの1条(619条2項)しかなく、しかもとてもざっくりしたものだったのですが、この改正により経年劣化に伴う修繕費については賃借人が負担しなくても良いことなどが明文化されました。

 また、インターネット通販など不特定多数の消費者に提示される「約款」に関する規定も新たに設けられました。消費者の利益を一方的に害すると認められる内容のものは無効とすると定められて消費者保護が図られています。

 この民法改正案は、2009年に法制審議会に諮問されてから、5年以上かけて改正要綱案にまとめられ、2015年3月に国会に法案が提出されました。しかし、安保法案とか、その時々の政局があって、審理が延び延びになっていたものが、ようやく先日可決されたものです。法曹関係者の中には、現在の民法を変える必要がないなどという人もいましたが、やっぱり古かったと思います。改正民法は、公布から3年以内に施行されるとのことですので、まだまだ我々の生活に適用されるようになるのは先ですが、法曹の一人として、この民法の運用を通じて少しでもより良い社会を実現していかなければと思います。

 我々の事務所でも、契約書のひな型の見直しや新しい民法の適用に関する情報を適宜発信していく予定です。こうご期待!

 

 

 

 

 

2017年5月26日の日本経済新聞夕刊1頁の「改正民法が成立 契約ルール120年ぶり抜本見直し」という見出しの記事から抜粋です。

「企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)に関する改正民法が26日午前の参議院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。民法制定以来、約120年ぶりに債権部分を抜本的に見直した。インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、消費者保護も重視した。改正は約200項目に及び、公布から3年以内に施行する。」

ようやく成立したか、という感じですが、現民法はいかにも古かったし、条文だけ読んでても意味が分からないところが散見されたので、改正民法の成立は良かったと思います。

改正民法については、一応勉強しましたが、今後実際に使うにあたって、ブラッシュアップをしていこうと思います。事務所の民法関係の書籍も買いそろえなければなりませんね。やらなければならないことが沢山あるので、頑張りましょう!

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