カテゴリ:その他法律 >   民法

弁護士の説明義務について判断した初めての最高裁判決が出ました。

事案を説明すると、案件としては、『債務整理』を受任した弁護士の話です。
『債務整理』は業界用語なので、ちょっと説明すると、一般の人が、いわゆる消費者金融数社からお金を借りていて、返せなくなってしまった場合、弁護士が介入して、利息制限法上の利息で元利金の充当を計算し直して、①元金が残っていれば、その金額で分割弁済の合意をして、②元金が残っていなくて過払いになっているような場合には、その過払金の返還を求める、というような案件の処理をします。一時、東京では電車に乗るとこの種の案件の営業広告をたくさん見かけましたが、そのケースといえばイメージがわくかと思います。

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今朝の新聞各紙で、性別変更後の親子関係に関する画期的な最高裁判決が報道されていました。

事案は、性同一性障害で性別を女性から男性に変更した方に男性(Aさん)に関するものです。
簡単に説明すると、Aさんは、戸籍の性別を男性に変更後、女性(Bさん)と結婚し、おそらく子供がほしかったのでしょう、妻が第三者から精子提供を受けて、長男(C君)を出産しました。AさんとBさんが、民法772条1項の「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」との規定に基づき、C君を自分たちの嫡出子(嫡出子)として区役所に出生届を提出しましたが、区長は、戸籍上の記載から、Aさんの戸籍から性別変更を受けていることを知り、民法772条1項の推定を受けないとして、出生届の父母の続柄欄に不備があるとして訂正を求めました。しかし、Aさんがこれに従わなかったため、区長は、法務局長の許可を受けて、父親欄空欄のまま、Aさん(だけ)の長男としてC君の戸籍を作成しました(つまりC君の戸籍上、父親はいません。)。そこで、AさんBさんが、C君の父親欄にAさんと記載すること等の訂正を求めて訴えを提起したというものです。

 

少々法律の説明をすると、「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」(特例法)4条1項は、「性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、民法[中略]その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす。」と規定しています。
したがって、特例法上の審判を受けて性別を女性から男性に変更した者は、民法上は男性ですので、その後、女性と結婚して、その女性が子供を儲けた場合には、(血縁関係があろうとなかろうと)民法772条1項により、その子供は、嫡出子としての推定を受けるように思います。つまり、その男性の子供として扱われるということです。

ところが、他方で、最高裁は、過去の判例(昭和44年5月29日判決)で、一見嫡出推定が及ぶ期間に生まれた子であっても、既に夫婦が事実上の離婚をしていて実態がなく、又は遠隔地に居住していて、性的関係を持つ機会が無かったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、嫡出推定を受けない、と判断していたため、戸籍実務では、性別変更の履歴が戸籍に記載されていることも相まって、かつて女性だった方が男性に性別変更をした場合には、その男性と子供との間に親子関係を認めていませんでした。今回のAさん、Bさんは、それをおかしいとして、争ったわけです。

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(本文とは関係ありませんが、また引き続きで恐縮でございますが、大坪和敏弁護士と私の共著の『倒産法の実務ガイドブック』です。昨日の記事のとおり、この本を教材にした講義も行いますので、是非、ご参加ください。)



再び、(現在検討されている)民法改正のお話に戻ります。
 

結論からいうと、中間試案の方向性を推し進めると、個人保証を利用するのは事実上難しくなる、ということです。それが良いか、悪いかについては、我が国の経済の中で、個人保証が、金融取引や企業間取引の中でどれくらいの役割を果たしているのかという点に関するデータがないと一概にいうことはできませんが、いずれにしても、中間試案の方向性としては、個人保証については、かなり否定的であることは間違いないと思います。


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会議室テレビ


本文とは関係がありませんが、ウイズダム法律事務所の会議室のテレビです。地方のクライアント等とはこのテレビを利用してテレビ会議を行います。また会議室内でプレゼンを行う場合にも便利です。




今日も、民法改正について書いてみたいと思います。

中間試案の中で私が一番問題視しているのは、「第34 継続的契約」です。

これはどういうものかというと、

第 34 継続的契約

1 期間の定めのある契約の終了

(1) 期間の定めのある契約は,その期間の満了によって終了するものとする。

(2) 上記(1)にかかわらず,当事者の一方が契約の更新を申し入れた場合において,当該契約の趣旨,契約に定めた期間の長短,従前の更新の有無及びその経緯その他の事情に照らし,当該契約を存続させることにつき正当な事由があると認められるときは,当該契約は,従前と同一の条件で更新されたものとみなすものとする。ただし,その期間は,定めがないものとする。

(注)これらのような規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方がある。

2 期間の定めのない契約の終了

(1) 期間の定めのない契約の当事者の一方は,相手方に対し,いつでも解約の申入れをすることができるものとする。

(2) 上記(1)の解約の申入れがされたときは,当該契約は,解約の申入れの日から相当な期間を経過することによって終了するものとする。この場合において,解約の申入れに相当な予告期間が付されていたときは,当該契約は,その予告期間を経過することによって終了するものとする。

(3) 上記(1)及び(2)にかかわらず,当事者の一方が解約の申入れをした場合において,当該契約の趣旨,契約の締結から解約の申入れまでの期間の長短,予告期間の有無その他の事情に照らし,当該契約を存続させることにつき正当な事由があると認められるときは,当該契約は,その解約の申入れによっては終了しないものとする。

(注)これらのような規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方がある。

3 解除の効力

前記1(1)又は2(1)の契約を解除した場合には,その解除は,将来に向かってのみその効力を生ずるものとする。 

というものです。

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うなぎ

(本文とは関係ありませんが、セクレタリーズデイのお祝いに、弊事務所みんなで野田岩銀座店にいってまいりました。さすがに老舗のうなぎやさん。とても美味しかったです。)



昨日に続き、民法改正ネタで行きたいと思います。

中間試案の第33に「不安の抗弁権」というものがあります。現在の民法典には明文規定のない「不安の抗弁権」の明文化を図ろうというということです。

どういう条文になるかというと次のとおり。

33 不安の抗弁権

 双務契約の当事者のうち自己の債務を先に履行すべき義務を負う者は、相手方につき破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立てがあったことその他の事由により、その反対給付である債権につき履行を得られないおそれがある場合において、その事由が次に掲げる要件のいずれかに該当するときは、その債務の履行を拒むことができるものとする。ただし、相手方が弁済の提供をし、又は相当の担保を供したときは、この限りでないものとする。

ア 契約締結後に生じたものであるときは、それが契約締結の時に予見することができなかったものであること

イ 契約締結時に既に生じていたものであるときは、契約締結の時に正当な理由により知ることができなかったものであること

(注)このような規定を設けないという考え方がある。また、再生手続又は更生手続が開始された後は、このような権利を行使することができないものとするという考え方がある。

 

しかし、私は、この「不安の抗弁権」の明文化にはとっても不安です。

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歌舞伎座
(本文とは関係ありません。昨日の歌舞伎座です。歌舞伎座ができてから、三原橋

交差点付近の人通りが以前の2倍~3倍くらいになり、とても賑わっています。

活気があっていいですね。)


民法改正の話になりますが、ご承知のとおり、平成25226日の法務省法制審議会民法(債権関係)部会において、「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」が決定され、現在、平成2541日から63日の期間で、パブリックコメントに付されています(詳しくは、法務省のHPをご覧ください。)。

 

で、このブログでも何度か述べていますが、私は、今回の民法改正には大賛成ですが、個別の論点については、それなりに意見を持っています。今回は、そのうちの1つである「事情変更の法理」を取り上げたいと思います。結論から先に言ってしまうと、「事情変更の法理」の明文化は必要ないのではないか、という意見です。

 

「事情変更の法理」というのは、現在の民法典には規定されていない次のようなルールを民法典の中に組み込もうというものです。

 

第32 事情変更の法理

契約の締結後に、その契約において前提となっていた事情に変更が生じた場合において、その事情の変更が次に掲げる要件のいずれにも該当するなど一定の要件を満たすときは、当事者は、[契約の解除/契約の解除又は契約の改定の請求]をすることができるものとするかどうかについて、引き続き検討する。

ア その事情の変更が契約締結時に当事者が予見することができず、かつ、当事者の責めに帰することのできない事由により生じたものであること。

イ その事情の変更により、契約をした目的を達することができず、又は当初の契約内容を維持することが当事者間の衡平を著しく害することとなること。

 

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歌舞伎座

(本文とは関係ありませんが、今日の歌舞伎座の写真です。開演まであと33日となりました。

今日は、「継続的契約」とか「継続的契約の法理」と言われているものについて、日頃考えていることを書いてみたいと思います。

まず、「継続的契約」とは何かということですが、民法や商法の中に「継続的契約」という言葉があるわけではなく、これは講学上の用語であり、一般には、取引関係が長期にわたる契約のことを言います。
民法典の中に規定がある典型契約では、賃貸借契約、委任契約、委託契約、顧問契約などがこれにあたりますし、非典型契約の中では、製造物供給契約、代理店契約、フランチャイズ契約などがあります。

次に、「継続的契約の法理」とは何かですが、私の理解では、「当該契約は継続的契約だから」ということを理由にして(たとえ契約で期間や中途解約条項が定められていたとしても)当該契約を終了させるには「やむを得ない事由」が必要であり、少なくとも、6ヶ月から1年くらいの予告期間を置かなければ契約は終了せず、それにもかかわらず一方的に契約を終了させたときは、相手の損害を賠償しなければならないというような内容の法理なのです。


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218日の記事
で、平成2412月に実施された『家族の法制に関する世論調査』における選択的夫婦別姓についてのアンケートで、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」という人たちが36.4%いて、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」という人たちの35.5%を上回ったことを報告しました。

その際には、まだ報道された段階で、男性・女性、年齢、都市部・地方、既婚・未婚といったセグメント別の結果がわからないと記載しましたが、218日に内閣府のホームページに調査結果(特に、図17表17-1)がアップされていました。

これによると、やはり、女性よりも男性の方が「改める必要がない」という人が多く、年齢が高くなるほど「改める必要がない」という人が多くなり、都市部よりも町村部の方が、さらに未婚者より既婚者の方が「改める必要がない」という人が多くなるようです。

少々考えさせられたのが、年齢が60歳を超えると男性・女性にかかわりなく、急激に(それまでの約2倍)「改める必要がない」という意見の人が多くなることです。(そうでない人もたくさんいますが、やはり)年をとると変化を望まない方向になるのでしょうね。

我が国は、これから本格的な高齢化社会になりますので、選択的夫婦別姓制度導入には冬の時代到来といえそうです(良い制度だと思うのだけど…)。

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(本文とは関係ありませんが、新歌舞伎座の全貌が明らかになり、内部の
様子まで垣間見られるようになりました。こけら落としまであと43日です!)


ちょっとびっくりしたので、専門ではありませんが、このブログでも取り上げたいと思います。

報道によると、内閣府が、平成2412月に成人男女5000人を対象に実施した『家族の法制に関する世論調査』の結果を216日付けで発表しました。それによると、「選択的夫婦別姓制度導入のための民法改正の可否について、『必要はない』とする反対派が、平成18年度の前回調査と比べ、1.4ポイント増の36.4%となり、『改めても構わない』の賛成派35.5%(前回比1.1ポイント減)をわずかに上回った。同様の調査は4回目で、反対派が賛成派を上回ったのは初回の8年以来。」(MSN産経ニュース 2013.2.16 1824配信)とのことです。

まだ詳しい内容が公表されていないので、どういう年齢層の人々、地域の人々、性別の人々が選択的夫婦別姓に反対しているのかよくわかりませんが、前回平成18年の調査結果によると、年齢が高くなると、法律改正に反対の方が多くなり、都市部よりも地方の方が反対者が多く、さらに未婚の人よりも既婚者の方が反対者が多くなるようです。

(夫婦別姓については、ウイキペディアに詳しく解説されていますので、そちらをご覧いただければと思いますが)私の感覚としては、
① 法律的には、「夫又は妻の氏を称する」(民法750条)ということになっていて、結婚後の姓を妻側の姓にしてもよいわけですが、実際には妻側が姓を変えることが圧倒的に多く、それが「夫の家に嫁ぐ」的なイメージを醸し出していて(逆の場合には、妻の家に養子に入る的なイメージがある)、ちょっと抵抗があること(もちろん選択制なので、そういうことに抵抗がない人は同姓を選択すれば良い)
② もはや職場では、女性は旧姓を使用している場合が(少なくとも私の周りでは)圧倒的に多く、それで何の不都合も発生していないこと
③ 反対者の理由は、「伝統」論にあるようですが、そもそも夫婦同姓が法律上強制されるようになったのは明治以降であり、長い日本の歴史からみれば、むしろ最近のことであること
④ 世界的に見ても、別姓を選択できない制度は稀であること
から、別姓を選択できない制度というのはおかしいように思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。

それにしても、多くの未婚者が変えてほしいと望んでいるときに、既婚者が反対して変えられないというのは、少子化対策としても良くありませんね。

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今日の報道で、銀行や貸金業者が中小企業などに融資する際に求めてきた個人保証を原則として認めないとする民法改正案が、法制審議会(法相の諮問機関)で本格的に検討されることになったとのニュースが流れています。

ただ、「個人保証の中でも、経営者本人が会社の債務を保証する『経営者保証』は例外として認める案が検討されている。」ということですので、そうであれば、これまでも経営者以外の個人保証をとるのは稀という認識ですので、従来の実務を大きく変えることはないようにも思えます。しかし、さらに記事を読んでみると、「会社の返済が滞り、経営者が貸手から裁判を起こされた場合、裁判所が経営者の支払い能力などを考慮して、保証債務を減免できる制度の新設などを考える。」ということですので、そんな制度つくれるのか?と突っ込みたくなりますが、やはり従来の中小企業金融の実務に大きな影響を与えそうです。

記事によれば、中小企業金融の保証人になることにより、自己破産や自殺に追い込まれるという悲惨な結果が起きていることを受けての改正の検討ということのようです。
しかし、経営者の個人保証がなくなれば(又は制限されれば)、銀行等は融資の際に、これまで以上に厳しく対象企業の事業(収益力)を見ることになりそうですので、経営者側としても、事業をそうとう魅力的なものにしないと、銀行からお金を借りるのは大変だぞ!ということになりそうですね。まあ、それが本来の姿かもしれませんが…。

いずれにしても、民法改正の大きな注目ポイントになりそうです。

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