カテゴリ: 一般民事・家事

このブログでも既に取り上げましたが、最高裁は、本年1月に、専ら節税目的の養子縁組であっても直ちに縁組意思がないということはできないとの判決を出しました。

事案は、亡きAの長女X1と二女X2が、Aの長男Bの息子(Aの孫)Yに対して、AYとの養子縁組は、民法8021号の「当事者間に縁組をする意思がないとき」に該当することを理由に、養子縁組の無効確認を求めたものです。

一審は、縁組意思はあったと認定し、控訴審は、縁組意思はなかったと認定しています。

最高裁では、次のとおり判示して、Yを勝たせました。つまり、縁組意思はあったと認定したわけです。

「養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養子は養親の相続人になるところ、養子縁組をすることによる相続税の節税効果は、相続人の数が増加することに伴い、遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに養子縁組について民法802条にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない

 そして、前記事実関係の下においては、本件養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく、「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」

(私の感想)

1. 本件のケースについて、最高裁は、「本件養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく」と言っていますが、控訴審における本件の事実認定を見ると

(1) 
本件の養子縁組は、Aの妻が亡くなった直後に、BBの妻及びBの税理士がAの自宅を訪問して、Y(約1歳)と養子縁組することによる節税メリットについて説明し、それを受けて行われたものであること

(2) 養子
縁組以降、AYは同居しておらず、面会することもなかったこと

(3) 
Bはクリニックの院長を務める医師であり、資産も保有し、Yを養育できない環境にはないこと

などが認定されていますので、一般人の感覚からすると、「本件養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情」は「あった」ということになるのではないでしょうか。

2. 
また、最高裁は、「相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。」というのですが、この「併存しえる」という部分を重視すると不都合な結果が出てくるのではないかと思います。
 例えば、過去の判例で、縁組意思がないと判断されているものを挙げると、

(1) 
旧法のもとで去家を禁止されていた法定推定家督相続人である女子を他家へ嫁がせるための便法として、他の男子を一時養子とするいわゆる借養子縁組(最判昭和23.12.23民集2-14-493

(2) 
戸主や嗣子に与えられていた兵役免除を目的として二男以下の者が養子縁組をする兵役養子(大判明治39.11.27刑録12-1288)

(3) 芸子家業をさせることを目的とするいわゆる芸子養子(大判大正11.9.2民集1-448

(4) 
女子の婚姻に際し家格を引き上げるためにされる仮親縁組(大判昭和15.12.6民集19-2182

などがあるようなのですが、これらの判例の中に現れた様々な動機部分と縁組意思は「併存しえないか?」と言われると、どのような動機であれ、真に親子関係を創ろうという意思は持ち得るのですから、「併存しえる」と言えなくもないでしょう。

4. で、縁組意思の学説は、大雑把に、次のようなものがあるようですが、いずれも判例の立場を統一的に説明できないようです。

(1) 
実質的意思説
  
習俗的標準に照らして親子と認められるような関係を創設しようとする意思

(2) 
形式的意思説
  
縁組の届け出をしようとする意思

(3) 法
律的定型説
  民法上の養親子関係の定型に向けられた効果意思

5. 
そこで、この判例を契機に、つらつらと考えてみましたが、判例の立場は、次のように説明できるのではないでしょうか(自分ではオリジナルな意見ではないかと思っていますが、それは浅学なだけで、既に同じようなことを言っている人がいるかもしれません。
 
すなわち、日本の場合、養子縁組は、(特別養子縁組の場合を除き)当事者の意思で自由にできます。役所に養子縁組届を提出するときも、実質的意思説がいう「真に親子として認められるような関係を創設しようとする意思」があるかどうかなんて確認されません。形式的に記載事項がきちんと書かれているかチェックされるだけです。したがって、制度的に本来の養子縁組制度の趣旨から逸脱した様々な届け出がなされることになります。それを裁判所でいちいち無効などと判断していては、社会的にかなりのコストがかかってしまいますし、大変な混乱が生じるおそれがあります。したがって、裁判所のスタンスとしては、(実質的意思説を採用しているなどと思わせつつ、実際は形式的意思説的に)縁組意思を広く有効にできるように運用しつつ、その時代、時代で、どうしても認めることができないようなもの(その時代の公序良俗に反するようなもの)だけを縁組意思を無効とするというものではないでしょうか。

6. 
で、冒頭に戻って、節税目的の縁組についてですが、先日のブログで触れたとおり、現在、節税目的の縁組はかなり広汎に行われており、ある調査によると5億円以上の相続財産があるケースの約4割で節税目的の縁組が行われていたとのこと。これを無効ななどと言うと、縁組無効確認の裁判が頻発して大混乱になる可能性があるので、最高裁としても、「併存しうる」などと変な理屈を持ち出して無効とは言えなかったのではないかと・・・・。幸いにして、この種の案件が問題となるのは相続開始後の相続人間であり、(一番事実を知っている)被相続人は亡くなっているので、死人に口なしで、多少無理があるとは認識しつつも「縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく」などと言いきってしまえばいいですしね(冗談です)。

7.
ただ、さらに翻って考えてみると、実際に行われている節税目的の養子縁組のケースで、当事者間に真に親子関係を作ろうとする意思などあるケースはほとんどないと考えられ、それなのに、縁組意思があるなどと言わなければならないのはやっぱりおかしいと思います。
 そこで、このような判断をせざるを得ない現行の制度自体を変えることはできないかしら。具体的には、当事者の意思で、ほぼ無審査でできてしまうというのはおかしいので、本当に親子関係を創ろうとする意思の有無を事前に裁判所なり公証人なりにチェックさせるような制度にできませんかね?

遺言書を書いておく必要があるのはどのような場合かというと、法定相続の結論が、意図している結論とかなり違ってくる場合であると思います。

そのような場合として、子供のいない夫婦の相続が挙げられます。

子供がいない夫婦の場合、配偶者は常に法定相続人になりますが(民法890)、その他は、親がいれば親が(民法889Ⅰ①)、親がいない場合でも兄弟がいれば兄弟が法定相続人として登場することになります(民法889Ⅰ②)。
相続分は、配偶者と親の場合には、配偶者が3分の2、親が3分の1です(民法900②)。

配偶者と兄弟姉妹の場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1ということになります(民法900③)。

ところで、子供がいない夫婦で配偶者が亡くなった場合、夫婦の意思としては、(もちろん例外はあるとは思いますが、通常は)配偶者に全財産が相続されると思っているのではないでしょうか?

しかし、遺言がなく法定相続が行われたとすると、上記のとおり、亡くなった夫または妻の親や兄弟姉妹が出てくるのです。親や兄弟姉妹が物わかりの良い人で「私たちは相続財産なんていらないわ。」などと言って相続放棄をしてくれれば良いのですが、中には、自分たちにも法定相続分があるから、遺産をもらって何が悪いの!ということで権利主張をしてくる場合もあるでしょう。

したがって、子供のいない夫婦にとっては、お互いに自分の財産をすべて相手に相続させる旨の遺言書を書いておく必要性は非常に高いといえるでしょう。

もちろん、遺言書を作っても遺留分という権利は侵害できませんが、親の遺留分は相続持ち分の2分の1ですので(民法1028②)、遺産紛争が起きても解決が楽になりますし、兄弟姉妹には遺留分は認められていませんので(民法1028)、既に親が亡くなっていて、配偶者の他には法定相続人が兄弟姉妹しかいない場合には、遺言書を書くことにより、自分の財産をすべて配偶者に引き継ぐことができますね。

なお、遺言書を作るときは、のちのち変な争いにならないように、公証人役場で公正証書遺言を作るのがおすすめです。

法律事務所に勤務する弁護士には縁のないものですが、いわゆる企業内弁護士として働いている同期の弁護士の中に、勤め先の会社の社宅に住んでいるという話を聞きました。
都内にありながら、使用料として23万円支払えばその他の費用はかからないと聞き、非常に羨ましく思いました。
住宅手当は自由な転居が可能となるメリットはありますが、給与の一部になるとして課税の問題があり、その点社宅の場合はその意味での課税の問題はないようです。

さてこの社宅ですが、会社が倒産した時や、会社を解雇又は退職したときは、今まで社宅に住んでいた従業員はどうなるのでしょうか。有無を言わさず社宅から立ち退きをしなければならないのでしょうか。賃貸住宅に住んでいる場合には、借地借家法という借主にとって非常に強い味方がついているわけですが、社宅の場合にもこの借地借家法が適用されるのかが問題になってきます。

借地借家法の適用があれば、新しい家主に対して、自分の賃借権を主張できますし(法311項)、家主(会社)から解約されても「正当の事由」(法28条)がなければ立ち退く必要もありません。

社宅の利用に借地借家法の適用があるかどうかは、社宅の使用料が決め手になってきます。

社宅の使用料を全く支払っていなければ、それは無償で貸し渡したということですので、使用貸借(民法593条)になります。使用貸借であれば、借地借家法の適用はないので、最初の取り決め(契約)のとおりに社宅を明け渡さなければなりません。

社宅の使用料を支払っているのであれば、話は変わってきます。一般の家賃とは比較にならないほどの安い使用料(維持費にも満たないもの)であれば、その使用料は家賃としては扱われず、賃貸借関係にないとして借地借家法の適用はありません(最高裁判決昭和30513日・判タ5021頁参照)

逆に、通常の相場に比べて、それほど安いとはいえない使用料であれば、賃貸借関係があるとして借地借家法の適用があるとされる場合があります。

そのため、会社としては、従業員から社宅の明渡しを求める際のリスク(借地借家法を盾に、明渡しを拒まれるリスク)を考えた上で、使用料の設定をする必要があります。

同期の話では、社宅は確かに安いが、居住者が皆会社の関係者であることや、家主が会社であることから騒音等のトラブルがあっても文句を言いにくいという不満があるらしく、家賃が多少高くついても住宅手当を貰って好きな場所に住みたい、いうことでした。
社宅も住宅手当も、私にとっては羨ましい話ですが、そういえば修習時代に知り合った裁判官も、騒音トラブルで官舎から出て自分の好きな所に家を借りていましたね。

最近すこしずつ暖かくなってきましたが、寒くなる日もあるので、体温調整にはお気を付けください。

 最近、最高裁で興味深い判例(最高裁平成29131日判決がありました。

 もっぱら相続税の節税目的で養子縁組を利用する場合であっても、「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」と判断したものです。「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」なんて、とても法律家チックな言い方ですが、要するに、「もっぱら相続税の節税目的で養子縁組しても原則として縁組は有効ですよ。」という意味だと思っていただいて結構です。

 

 相続に関心がある方であればご承知のとおり、相続税の基礎控除額は、現在、


               3,000
万円+600万円×法定相続人数

 

で計算されます。
 したがって、おじいさん・おばあさんと孫を養子縁組させて、
おじいさん・おばあさんの法律上の子供(=定相続人)を増やしておけば、おじいさん・おばあさんが亡くなったときも、相続税の基礎控除額が大きくなり、それだけ節税効果が得られます。

 もちろん、税務当局側も対策を立てていて、相続税法上、養子縁組で相続人にできる人数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人しか認められません。しかし、いずれにしても養子縁組により600万円から1200万円は相続税の基礎控除額を増やすことができるのです。そのため、ある税理士法人によれば、相続財産額が5億円以上を超えるケースの相談において、節税対策に養子縁組が使われていたのは約4割にものぼるようです。

 相続の分野では、節税対策としての養子縁組が定着していると考えてよいでしょう。

 

 しかし、養子縁組制度が、このような使われ方をしているのはちょっと変ではないでしょうか?そこでちょっと調べてみたのですが、そもそも我が国の養子縁組制度は私のイメージとはかけ離れていました。

 一橋大学経済研究所の森口教授によると、日本では年間で約8万件もの養子縁組がされています。日本の2倍以上の人口を有するアメリカの養子縁組の件数が11万件ということですので、いかに日本の養子縁組の数が多いかわかるかと思います。

 しかし、その内容は全然違います。日本では、67%が婿養子など大人を養子にとる「成年養子」だというのです。その他は、25%が配偶者の子供を養子にする「連れ子養子」、7%が孫や甥、姪を養子にする「血縁養子」。血族でも姻族でもない子供を養子にする「他児養子」はわずか1%に過ぎないといいます。

 これに対して、アメリカでは養子の対象はほぼすべて未成年だといいます。そのうち40%が「連れ子養子」、10%が「血縁養子」ですが、残りの50%は「他児養子」だといいます。

 なぜこのような結果になっているかですが、日本の養子縁組制度は、基本的には家名や家業の承継(お家の存続)を目的にするための制度になっているとの理解がされています。えっ、「お家」って、まだそんなに強く残っていたの?という感じですが、まだまだ根強いようですね。

 これに対して、アメリカの場合は、基本的には、さまざまな理由で実親の保護に恵まれない子供たちに新しい家庭を与える制度として機能しているということのようです。

 

 まぁ、それぞれの国の歴史や文化を反映して今の制度になっているのでしょうから、どちらが優れている・劣っているというような問題ではありません。ただ、日本では結婚の高齢化などもあり子供がいない夫婦が増えていますし、他方で、不幸にも養護施設に長期間滞在せざるをえない子供たちも多いと聞いていますので、なんとか養子縁組を「要保護児童に家庭を与える制度」として活発に利用できないものでなんですかね?

ここ数ヶ月前から、弊事務所の隣のビルの解体工事を行っているようで、時々耳を塞ぎたくなるほどの激しい騒音がします。

もうしばらくは、この騒音と付き合わなければならないことを考えると、思わずため息が出ます。

 

騒音は、いわゆる典型7公害に数えられるものですが(他は大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、進藤、地盤沈下及び悪臭。環境基本法23項参照。)、今回のようなビルの解体工事の場合等、ビルの周辺住民・勤務者くらいしか被害者がいないものでもあっても(航空機の騒音は何千何万人もの人々が被害者となります。)、公害として法的救済が求められることに争いはないでしょう。

 

さて、騒音に対して日々悩まされている弊事務所は、どのような救済を求められるのかが問題になってきます。

騒音に対する救済は、大きく分けて行政的な救済(公法上の規制)と私法上の救済の2つがあります。

まず行政的な救済(公法上の規制)について検討すると、建築工事の騒音は、騒音規制法によって規制されておりますが、建築工事のうち、くい打機やブルドーザーの使用等、著しい騒音を発生する「特定建設作業」のみ規制しています。もっとも、条例で規制できる作業を追加することが可能で、東京都はコンクリートカッターを使用する作業や一定の方法による解体・破壊作業も規制しています。

建築工事の際に、騒音基準(85デシベル以下等)に適合しない等した場合には、解体業者に対して、知事ないし市町村長から是正勧告をすることができ、それに従わない場合には騒音防止方法の改善・作業時間の変更についての命令を行うことができます(騒音規制法15条)。

ただし、残念ながら、改善勧告が行われることは少なく、改善命令に至っては実務上ほとんどないため、仮に騒音基準に適合していない場合であっても、この救済は難しいでしょう。

 

私法上の救済については、精神的肉体的苦痛を根拠に、人格権等の侵害があるとして、不法行為(民法709条)に基づく慰謝料請求を検討するのでしょうか。しかし、受忍限度論というものがあり、これは騒音行為の態様や程度、被害内容、地域性等から考えて、この程度の騒音は我慢しましょうという裁判上の議論があります。

この受忍限度論を考えると、本件の騒音は毎日あるものではなく(これを書いている今日はなぜか静かです。)、日々ビルの建築・解体が行われている地域性等からすれば、今回の騒音は受忍限度の範囲内(我々が我慢しなければならない限度内)という判断になりそうです。

 

やはり、本件の騒音とはしばらく我慢して付き合っていかなければならないようです。

 

ところで、音の大きさが何デシベルであるかどうかは、かつては騒音計がなければ分からなかったのですが、最近はスマートフォンのアプリで音の大きさを測れるアプリがあるようです。精度は分からないですが、騒音基準以内かどうかの参考にはなるのではないでしょうか。

最近は、裁判の証拠にLINEが出てきたりするので、何でもかんでもスマートフォンアプリで裁判の証拠を提出する時代が来るかもしれませんね。

 

つい先日まで、ある女性タレントが、ミュージシャンの男性と交際していた件で世間から強い非難を受けていました。そのミュージシャンの男性には妻がいたので、不倫ではないかというわけです(注)。これを民事的に説明すると、その女性タレントに民法709条の不法行為が成立するかどうか、という問題になります。


(注)女性タレントが記者会見で男性との交際を否定したことを捉えて、嘘をついていると非難した面もありますが、その点はこの原稿では触れません。


この点、最高裁は、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰藉すべき義務があるというべきである。」(S54.3.30)と述べています。


簡単に言うと、相手に妻又は夫があることを知りながら、その相手と肉体関係を持った場合には、相手の妻又は夫の権利を侵害したのだから、慰謝料を支払う義務がある、というのです。

 

ただ、この判例については、学者から強い批判があります。夫や妻としての権利は、結婚相手の妻や夫には主張できるけれど、それを超えて第三者に主張できるような権利ではないのではないか、ということです。価値判断としても、悪いのは不倫をした夫や妻なわけですが、「そんな人間を配偶者として選んでしまったのはあなたなので、夫婦間で解決しなさいよ、第三者に慰謝料なんて請求するのは、ちょっとやり過ぎですよ。」ということでしょうか。


ただ、最高裁はこうも言っています。

「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。けだし、丙が乙と肉体関係をもつことが甲に対する不法行為となるのは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとは言えないからである。」(H8.3.26


つまり、配偶者がいる人と肉体関係をもっても、その人の婚姻関係が破綻しているときは、もはや権利侵害行為がないから、その人の妻又は夫から慰謝料を請求されることはありません。


さらにいえば、不法行為が成立するためには、「故意又は過失」という主観的な要件が必要ですので、配偶者がいる人であると知っていたとしても既に夫婦としての関係が破綻していると思っていたときは、「故意又は過失という」主観的な要件を満たさないことが多く、不法行為が成立しない可能性が高いのです。

 

報道によると、女性タレントは、ミュージシャンの男性から、離婚協議中で、妻は家を出ていて、年内には離婚したい、と言われていたとのことですので、この報道が本当であれば、夫婦関係は既に破綻していた可能性がありますし、少なくとも女性タレントは破綻しているという認識だったのかもしれません。


翻って考えてみると、相手に配偶者がいる場合には、交際をためらう場合が多いのではないかと思いますので、世にいう「不倫」には、(とりわけ初期の段階では)この種の案件が多いのでしょうネ。

 

我が国では、結婚をしようとする男女は、結婚する意思及び夫婦関係を成立させる意思を持っていれば、婚姻届を役所に提出することで結婚することができます(民法739条)(婚姻適齢、重婚でない等の要件を充たしていることが前提ですが)。

たとえ外国に住んでいたとしても、日本人間であれば、その国の駐在大使、領事等に婚姻届を提出すれば結婚できます(民法741条)。

ただし、日本で結婚する場合は、婚姻届を提出すれば基本的には受理されて、提出日=入籍日となるのが通常だと思いますが、外国で婚姻届を提出する場合は、まずは日本から戸籍謄本を取り寄せてから婚姻届を駐在大使等に提出し、各関係機関を通じてから日本の役所に提出するので、日本の役所に届くまで何ヶ月もかかります。

日本の役所に届いて受理された日が入籍日になるため、自分達で入籍日を決めることができません。

しかし、たとえ海外にいたとしても、日本にいる人に代理人になってもらえば、書類に不備が無ければ婚姻届を受理してもらえるので、民法741の出番は限定的です。

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金融・商事判例2015915日号(№1474号)の「金融商事の目」は、本山敦立命館大学法学部教授の『遺言控除を憂う』という記事で、これもとても面白かった。

現在、自民党の「家族の絆を守る特命委員会」が検討している「遺言控除」の新設の問題点を検討している記事だ。

本山教授は、次の問題点を挙げている。要約すると次のとおり。

第1は、怪しからん相続人らが遺言控除を目的に自筆証書のねつ造に及ぶ可能性があるため、遺言控除が受けられる対象を公正証書遺言に限定することが考えられるが、民法の構成上、自筆証書遺言が遺言の原則形態と解されるので、自筆証書遺言を控除の対象外にするにはかなりの説明が必要となる。

2は、仮に遺言控除の対象を公正証書遺言に限定するとすれば、公証人は全国で約500名なのに対し平成26年度の遺言は104,490件で、公証人役場はかなりバタバタしていると推察されるから、遺言控除の導入により、公証人の執務が雑になり、公正証書の無効事例も急増することが懸念される。

3は、控除適用の基準時の問題であり、遺言控除制度が開始した日以後に作成された遺言書が対象になるのか(作成日基準)、それとも、遺言控除制度が開始した日以後に死亡した遺言者が対象になるのか(死亡時基準)についてであるが、遺言者の意思の尊重という観点から、作成日基準が適当ではないかとする。

4に、遺言控除の控除額が数約万円になると、相続税の納税義務者(遺言者)が遺言をするよう被相続人に迫るようになり、多数の遺言が飛び交い、却って紛争を誘発する可能性があるという。

私としては、第
1は、遺言の作成を促し、相続に関する紛争を未然に防ぐというこの制度の目的から、あまりこだわる必要がない(公正証書遺言が一番相続に関する紛争を未然に防いでいるように思えるので、これを促進しようとするのは適当だ。)、第2は、公証人になりたい人はたくさんいるし、遺言書の作成実務は既に固まっているのであまり心配はいらいない(公証人役場としては仕事が増えることはWelcomeなのでは?)、第3はキメの問題、第4もキメの問題で、それほど「憂う」必要はないのではないか、と思うのですが、いずれにしても考えさせてくれる良いコラムですね。

7月26日午前7時5分にgooニュースに配信されていた産経新聞の記事の抜粋です。

 

 5月の名古屋高裁の決定などによると、40代男性は昨年5月、別居中の妻と一緒に暮らす長女と毎月2回の面会をできる家裁の審判が確定したが、昨年6月に面会した後、妻が長女の体調不良などを理由に面会を中止した。男性は家裁に面会の間接強制を求め、1回面会できないごとに制裁金を1万円とする決定がなされた。ところが、その後も面会が実現しなかったため男性が10月に抗告した。

 高裁は長女の体調不良を裏付ける客観的な資料が「一切提出されていない」とし、面会拒否は妻の意思によるものと判断し、制裁金を4倍に増額した。

 

私は、以前から、我が国においては子供との面会交流がきちんと行われていないことを問題視していましたが、今回の名古屋高裁はよくやってくれた、と言う感じです。この問題に対処するには、(例外はあるわけですが、原則論として)面会交流は守られなければならない、というルールの徹底だと思います。もちろん、以前からこのルールはあったわけですが、何かと理由が付けられて強制力が極めて弱いものだったので、多くの人が守らないという悲しい事態を生んでしまっています。夫婦の問題と親子の問題(日本では更に実家の問題が加わる。)は別だということを肝に銘じなければならないと思います。

ちょっと前の2015年5月23日の日本経済新聞朝刊の記事ですが、「『弁護士保険』普及の功罪 10年で交通事故4割減、損賠訴訟は5倍 泣き寝入り減るが弊害も」という見出しの記事があります。


交通事故の賠償金をめぐる裁判が増え続けている。2000年以降、損害保険各社が自動車保険などの特約で扱うようになった「弁護士保険」の影響のようだ。被害者の泣き寝入りは減った一方、「弁護士報酬目的に見える裁判もある」との批判もあり、制度の見直しが始まった。

全国の交通事故件数は04年の952709件から10年連続で減少し、14年は573842件と4割減った。一方、全国の簡易裁判所に起こされた交通事故の損害賠償訴訟は03年の3252件から、13年は15428件と4.7倍になった。


弁護士保険ができて裁判が増えたという部分は、「弁護士が関与するようになったから」という面があることは否定しませんが、それよりもなによりも、交通事故の損害賠償の実務に制度的な問題があったから、ということが言えるかと思います。

この世界に詳しい方はご存じのとおり、交通事故の損害賠償の算定基準には、自賠責保険の支払いの際に使われる自賠責基準、任意保険の支払の際に使われる各保険会社の基準、裁判所・弁護士が使っている「赤本」基準(この基準が記載されている本が赤いので、「赤本」と言われています。)の3つがあり、赤本基準が最も高額な基準なのです。

したがって、基本的には、交通事故の被害者にとっては、裁判をした方が賠償金額が高くなりますが、裁判を思いとどまらせる主な原因は、弁護士費用の問題だったわけです。しかし、弁護士保険の登場により、そのハードルがなくなったわけですので、被害者にとっては、一種の裁定取引であり、保険会社と示談するより裁判をした方がほぼ確実に経済的に得ということなるので、裁判が増えたのだと思います。

では、この問題に対処するにはどうしたらよいか?
損害賠償の基準を一つにするほかないでしょう。本当の裁定取引であれば、自然と価格は一つになりますが、この問題ではどうなるのか注目したいと思います。

なお、高額の弁護士費用欲しさに訴訟をする弁護士の問題について、弁護士保険の弁護士報酬額の上限について、いまよりも低くすれば直ぐに解決すると思いますよ。

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