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少子高齢化(アクセスの負担や医療機関の充実等)や、コンパクトシティ構想(中心市街地の活性化)の観点から、今後、限られた中心市街地に多くの人々が住むために、集合住宅たるマンションの需要がさらに増えていくと予想しています。
今回は、マンションの管理費と修繕積立金(以下、併せて「管理費等」といいます。)の滞納者に対して、どのように対応していくかという点についてお話したいと思います

 

マンションは、管理費等を各区分所有者から徴収し、この管理費等によって、共有部分や敷地部分のメンテナンスが行われ、また将来的な修繕のための費用をプールしていくことになります。
管理費等の滞納者がいると、最終的に他の区分所有者が負担しなければならなくなるので、マンション全体の価値を下げることになります。「マンションは管理を買え」とよく言われますが、滞納者がいる事実だけでなく、管理組合もこのような滞納者を野放しにしているとなると、ますますマンションの価値を下げることになりかねません。
伝説のヴィンテージマンションとされる広尾ガーデンヒルズ(渋谷区)は、管理体制が抜群に良いと言われており、築36年を経過した今でも、購入希望者が後を絶たないそうです。(そもそもこのマンションに滞納者はいないとは思いますが…)仮にこのマンションに滞納者が出てきた場合には、管理組合はしっかりと対応するのでしょう。

 

さて、管理費等の滞納者に対する対応策ですが、実務上問題になった事例を紹介します。

 

①滞納者に対する水道・電気等の供給停止
水道光熱費を管理組合が集金する方式だと、管理組合がペナルティとして滞納者の部屋の水道や電気等の供給を停止することがしばしば行われます。

このような水道・電気等の供給停止について、裁判例(管理規約に、管理費等を滞納した場合には給湯設備をストップできる、という記載があるマンションの事例)では、「他の方法をとることが著しく困難であるか、実際上効果がないような場合に限って是認されるものと解すべきである」として、このような例外がない状況では、権利濫用であり、民法上の不法行為が成立するとして、損害賠償の請求が認められました(東京地判平成2130日・判時 137083頁)。

水道・電気等の供給停止は、滞納者に対する圧力として事実上の効果を発揮するとは思いますが上記のように最終手段として例外的に許容されるに過ぎないと考えられており、不法行為に当たらないとする裁判例もあるにはありますが、基本的にはNGであると考えたほうが無難であると考えます。

 

②区分所有法第58条に基づく使用禁止

区分所有法(以下「法」といいます。)第58条には、他の共同の利益に反する行為を行った場合において、区分所有者の共同生活上の障害が著しい場合等に、集会の決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上)に基づき、訴えをもって、当該行為にかかる区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる、とされています。

しかしながら、管理費等の滞納は、「他の共同の利益に反する行為」であると思いますが、裁判例では、「管理費等の滞納と専有部分の使用禁止とは関連性はない」として、法58条の請求を棄却しました(大阪高判平成14516日・判タ1109253頁)。

同裁判例では、法58条は、「専有部分で騒音、悪臭を発散させるなど他の区分所有者に迷惑を及ぼす営業活動をしている場合、暴力団構成員が専有部分をその事務所として使用し、他の区分所有者に対し恐怖を与える等の行動をとっている場合等」のための手段であると判示していますので、管理費等の滞納には、本条の使用禁止は使えないことになります。

 

このように、管理費等の滞納者に対し、上記の手段を使うことは困難であったり不法行為が成立してしまうおそれがあったりしますので、実務的には、以下の手段が考えられています。これは国土交通省が出している「マンション標準管理規約」(解説部分)においても説明がされています。

 

ⅰ法第7条の先取特権の実行(※専有部分の売却代金や専有部分の動産に対する物上代位)

ⅱ管理費等の請求訴訟(※判決(債務名義)を取得して滞納者の財産に強制執行)

ⅲ法59条による区分所有権の競売請求訴訟(※判決を取得して競売を申し立てる)

上記ⅲは最終手段であり、法第8条により特定承継人たる競落人に滞納管理費等を請求できるので、一旦滞納者を排除したうえで、新しい所有者から滞納管理費等の支払いを受けることができます。

強力ないわば外科的手段ですが、これを発動させるためには、各要件(共同生活上の障害が著しい等)を充たし、かつ滞納者に弁明の機会を与えたうえで、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議が必要なので、ハードルが高く、皆の足並みを揃える必要があります。

 

まだ物件に滞納者が居住しているので、争っている間は非常に気まずさがあり、管理組合(区分所有者)としても穏便に済ませようとする傾向がありますが、このような紛争を放置するとマンションの価値全体に影響してきますので、区分所有者全員のためにも、きちんと対応していくことが必要です。

他にも、騒音、喫煙、ペット飼育、ゴミをめぐる問題、用途違反等の諸問題もあり、マンションは様々な考えや価値観を持った多数の方々と折り合いをつけながら居住していく必要があるので(戸建てでもこれらの問題はありますが)、お互い気を付けていきたいところです。

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 前回、メルマガ記事を書いたのは昨年7月。あれから、かなり時間が経過してしまいました。

 

 過去の記事を見返すと、当時、1BTC=100万円前後で推移していました。しかし、ご存知の方も多いかと思いますが、現在、1BTC600万円を超え、過去最高価格を更新しています(この記事を書いている2021/3/15 1505の時点で1BTC=648万円)。1年しないうちに、価格が6倍になった訳です。

 

 特に、昨年10月頃までは、まだ、1BTC=100万円台でした。しかし、年末・年始にかけて、1BTC=200万円、300円、と上昇し、一旦下落したものの、1月末頃から上昇し、500万円を突破しました。その後、2月末頃に、さらに一旦下落したものの、3月に入って巻き返し、上記のとおり、1BTC=648万円にまで至っています。

 

 その背景として、機関投資家の参入や、直近では、電気自動車のテスラが、15億ドル分のビットコイン投資を行った旨の発表が影響しているようです。

 

 さて、最近は、仮想通貨関係のニュースを検索すると、ビットコインの高騰に関する記事ばかり出てきますが、もちろん、仮想通貨に関してのニュースは、価格の話だけではありません。

 

 これまで、継続的にフォローしてきた、Libraに端を発する一連の動きについても、その後、大元のLibraサイドで、いくつかの動きがあります。

 

 まず、昨年12月、Libra(リブラ)は、その名称を、Diem(ディエム)に変更しました。意味としては、ラテン語で、Day(日)、だそうです。なぜ、名前を変えたか、といえば、マイナスイメージの払拭、特に、Facebookと距離を置いていることをアピールするためとされています。

 

 この点、簡単に、これまでの経緯をおさらいをしますと、

 

Facebookが主導して提唱したデジタルマネー「Libra」は、米国内外から、袋叩きにあいました。

②表面的には、安全性が確保されていない、等々、色々と批判されていましたが、本音ベースでは、(特にGAFA一角である)Facebookが中心となって、民間団体が、通貨類似のデジタルマネーを発行してしまうことに対する、中央銀行等の危機感があったのではないかな、と思います。

③その結果、Libraは、実質、頓挫の状況になったと見られました。

④ただ、そのような状況を尻目に、中国は、デジタル人民元の(早期)リリースを匂わせ、実証実験なども行いました。

⑤このような状況を見て、中国にやられるならば、ということで、デジタルドルの議論も活発化しました。

⑥さらに、日本を含めた各国で、自国通貨のデジタル化(CBDC)の検討もブームとなりました。

G20でも、デジタル通貨容認の方向性へと、舵を切った、と報道されるようになりました。

 

ここまで振り返ってみて、思うことは、

 ムード的に、だいぶ、LibraDiem)への風当たりが弱くなってきたのかな?

という点です。

 

 また、LibraDiem)サイドでは、これまで、批判を受けて、一部、仕組みを変更するなどしています。すなわち、Libraは、当初、複数の通貨をバスケットとした裏付け資産を持ち、価格を安定させる、という触れ込みでしたが、この点、不透明だ、等々、批判がされていました。そこで、現在では、LibraDiem)は、単一の通貨を裏付けとする方向性に転換し、現在、ひとまず、米ドルを裏付けとするコインの発行を準備中、という報道がされています。

 

 さらに、Libraのプロジェクトには、当初は、VISAなど、資金決済の業界の重鎮が参画していました。他方、銀行は、1行も参加していませんでした。個人的には、こういったメンバーの顔ぶれも、中央銀行等の危機感を煽った一因だったのではないかな、と推測します。しかし、その後、Libraに対する批判も踏まえVISAMastercardPayPalなどは、プロジェクトから脱退しました。そのため、顔ぶれの印象も、当初とはだいぶ変わったように思います(ちなみに、現在のメンバーで、有名どころとしては、例えば、UberSpotifyなどが参画しています。https://www.diem.com/en-us/association/#the_members)。

 

 以上の状況において、今回、Libraは、名前をDiemに変えて、過去のマイナスイメージの払拭し、Facebookとの距離をとっていることをアピールしているように思います。

 

 また、(これは、どこまで信用できるか分かりませんが)報道では、Diemは、20213月中の発行を目指している、とのことです。

 

 これまで、紆余曲折ありましたが、最初に業界に一石を投じたLibraが、Diemと名前を変えて、復活なるか?復活したとして、普及するか?

 

 今後の展開に注目です。

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新型コロナウイルスの影響で、今後新築マンションの供給数が減少するのではないかと言われていますが、それでも現在供給されているマンションの数は多く、流行りのタワーマンションをはじめ多くの人々がマンションに居住しています。
マンションの購入者は部屋の(区分)所有権を持っていますが、戸建とは異なり、区分所有法(以下「法」といいます。)という民法の特別法によってその権利関係が定められています。

さらに、マンションの専有部分(部屋内部等)と共用部分(廊下等)では権利関係が異なっており、専有部分については、自由に使用処分できる一方で(ただし、区分所有者の共同の利益に反する行為はできない。法6条)、共用部分については、自由に使用処分できるわけではなく、また民法の共有規定は適用されず(法12条)、以下のように民法の共有関係とは異なった制約が課されています(法13条~19条)。

 

①共用部分の分割請求は認められない。

②共用部分の共有持分の放棄は認められない。

③共用部分を「その用法に従って」使用できるに過ぎない。

④専有部分と分離して共有部分の共有持分を処分することはできない。

⑤共有持分に応じて、共用部分にかかる費用等の負担をし、利益を収取する。

 

以上のように専有部分と共用部分では、権利の帰属主体や利益収得等に大きな違いがあるので、当該マンションのある部分が、専有部分なのか、共用部分なのか、という区別は非常に重要になってきます。この点、専有部分というためには、「構造上の独立性」と「利用上の独立性」の両方が必要と考えられており(法1条参照)、「構造上の独立性」があるというためには、一般に、壁や天井、扉等で、物理的にその建物部分が他の部分から隔離されていることが必要とされ、他方「利用上の独立性」があるというためには、その建物部分が独立して建物の用途として利用できることが必要とされています。

この2つの基準によって、駐車場や廊下、バルコニー等が専有部分なのか共用部分なのかというところが判断されます。例えば、避難の用途のために、壊れやすい仕切りで2個以上接続されているようなバルコニーがあると思いますが、このようなバルコニーは、避難経路として他の人も利用することが前提となっていますので、「利用上の独立性」があるとはいえず、共有部分となります。
良い感じのマンション(?)などには、他の部屋の住人の往来ができないようなルーフバルコニーが付いていたりしますが、これは「利用上の独立性」があるので、専有部分となり得ます。(ただし、多くの場合、管理規約により一定の用法の制約がされます。)

また、区分所有法は、共用部分の変更、管理及び保存について規定しており、共用部分の「変更」(形状又は効用の著しい変更を伴うもの)は区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数による集会決議で決する必要があり(法171項)、さらに、共用部分の「管理」(変更と保存の中間の概念)は区分所有者及び議決権の各過半数で決する必要がありますが(法181項)、共用部分の「保存」(清掃や蛍光灯の交換、破損個所の小修繕等)については各区分所有者が単独で行うことができます(同項但書)。一方で、共用部分の一部を改造して、新たに専有部分にして分譲すること等は、処分行為となりますが、これは共有者全員の合意が必要とされています。

分譲マンションは、第三者に賃貸に出すことができますが、賃貸に回している区分所有者の方は普段はそこに居住しないので、一般に共有部分の変更等についてあまり関心がない方が多いと考えられますし、区分所有者の家族構成(単身者、ファミリー層等)によっても関心の度合いも変わってくるので、決議が必要です、と簡単に言っても、実務上、決議をとるということがいかに難しいか分かります。

共用部分の変更、管理又は保存かどうかで、決議要件が変わってきますし、そもそも共用部分か専有部分かというところで、決議の要否も変わってきますので、これらの区別が非常に重要になってくることを頭に入れる必要があります。
分譲マンションは多くの方が関わってきますし、高額で社会的にも重要なので、マンション関係の法律の動向について今後も注視していきたいと思います。

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初めまして。

 

1月より弊所に入所しました弁護士の𠮷田直志と申します。
明治大学法学部、早稲田大学法科大学院を経て、今年から弁護士となりました。

 

ご挨拶ということで、私事で大変恐縮なのですが、実は昔から弁護士になりたいと考えていたわけではありませんでした。お恥ずかしい話ですが、高校生の頃までは医者になりたいと考えておりました。私自身大きな怪我をした経験もあったことから、病気や怪我で苦しむ人のためになりたいと医学部を志望しましたが、あえなく受験は失敗に終わり、進路変更をして法学部へ進学することとなり、いつの間にか弁護士を目指すようになっておりました。

その後、法科大学院を修了したのですが、気がついたらベンチャー企業で働くようになっておりました。そこでは、起業して間もない会社だったこともあり、当初は会社の組織構成もないような状態だったのですが、会社の組織が整っていき、それに合わせて規模が大きくなっていく様などを体験することができました。会社が成長するということは当然ですが気持ちのいいものでして、当時はこのままこの会社で働くのもいいかな、などと考えたりしたこともありました。しかし、法科大学院まで修了したのに法曹の道を自ら諦めてしまうのはいくら何でももったいない、と一念発起し、無事司法試験に合格し、司法修習を終え、この度縁あって弊所に入所する運びとなりました。

このような形で色々と回り道をしてきたのですが、医者と弁護士、診ている箇所は異なりますが、人の不調を整えるという意味では似ているのかなと考えております。そういう意味では人のためになりたいという高校生当時の思いからは何も変わっておらず、これからは弁護士として皆さまのお役に立ちたいと思っております。

また、ベンチャー企業で働いた経験は、先にも述べましたとおり、会社の組織が整っていく様、会社の中身そのものをこの眼で見ることができたという点で、今後の弁護士としての仕事に活きてくるのではないかと思っております。

回り道をしたという経験が今後の自分にプラスとなるよう、弁護士として日々研鑽を積んで参りたいと思っております。

とはいえ、弁護士として1年目、毎日が新しいことだらけで四苦八苦しながら慌ただしく過ごしております。

何卒宜しくお願い申し上げます。

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IMG_2790コロナ禍にあまり注目されていないようなのですが、この7月10日から遺言書保管法なる法律が施行され、法務局での「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00010.html 

この制度は、簡単にいうと全国の主要な法務局で、(自分で書く)自筆証書遺言書を保管してもらえるという制度です。

自筆証書遺言は、自分で比較的自由に作成できますが、作成や保管について第三者が関与していないため、本当に遺言者が作成したのか?とか、実は作成日が記載されておらず形式に不備があって無効だったとか、後々紛争になることが多く、また、誰も遺言書があることに気がつかず遺産分割協議が行われてしまうこともあるため、法務局で遺言書の形式面のチェックと保管をやっていただき、リスクを回避しましょうというのが制度趣旨のようです。 

法務局で預かったまま、遺言者が亡くなった場合、通常の自筆証書遺言では家庭裁判所の検認という手続が必要となるのですが、この制度を利用した自筆証書遺言書では検認が免除されるという特典もついてきます。

はじめこの制度のことを聞いたときは、法務局では形式面だけチェックを受けるといっても、内容面について色々と相談されると法務局側でも答えざるを得ないだろうから、実質的には、(公証人が作る)公正証書遺言とあまり変わらず、実際には公証人の仕事を奪うことになるのではないか?と感じたのです。
それにも関わらずこのような制度を作るのは、法務局では、コンピューター化及びIT化が進んで、どんどん職員の仕事がなくなってきているようなので、法務局内での仕事を作りたかったからなのではないか?などと邪推しておりました。

しかし、保管の際の手数料が3,900円と破格の安さなので、公正証書遺言との差別化はできているようです。公正証書遺言では、遺産のボリュームによって公証人の手数料は違いますが、想定される遺産規模が5000万円から1億円くらいですと、だいたい5万円くらいかかるので(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01/q12)、公証人に相談にのってもらいながら丁寧に遺言書を作りたいときには公正証書遺言、自分で作りたいときには自筆証書遺言を作って、保管だけは法務局に任せるという整理が良いのでしょう。

ちなみに、この制度を作るときに参考とされたのが平成29年度法務省調査の次のリンクの報告書。http://www.moj.go.jp/content/001266966.pdf 

平成24年から平成28年までの5年間で、家庭裁判所の自筆証書遺言書の検認事件件数は、毎年1万6000件から1万7000件しかないのですが、7,659名からのアンケート回答をもとに、全国の55歳以上の方のうちの4.3%にあたる211万人の方が既に自筆証書遺言を作成済みで、992万人の方が今後自筆証書遺言を作成する見込みの方(合計1204万人)と推計します。そして、さらに、既作成の211万人のうち89万人の方及び今後作成見込みの992万人のうちの448万人が保管制度を利用したいと考えているものと推計するのです。この報告書によると、2020年度は21万人の方が、2021年から2023年までは、毎年12万人から13万人がこの制度を利用すると予想されています。私には今ひとつ実感がないのですが、もしこの報告書の推計があたるとすれば、かなり利用される制度になりそうですね。

まだまだ若手などと思っていましたが、私も気がつくと52歳。そろそろ遺言書でも作って法務局に預けようかしら。

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adtDSC_6205厚生労働省によると、73日時点において、新型コロナウイルスの影響で、勤め先から解雇や雇い止めにあった人が見込みも含めて全国で3万人(うち非正規労働者は約1万人)を超えたとのことです。
(厚生労働省:「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(73日現在集計分)」https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000646779.pdf

 

新型コロナウイルスは多くの業界に影響していますが、今回は、新型コロナウイルスを理由として、正社員(期間の定めのない労働契約を締結している労働者)の解雇はできるのか?という点を検討したいと思います。

 

そもそも解雇とは、労働者との間に締結された労働契約を会社が一方的に解除することをいいますが、解雇と言っても、普通解雇(社員の勤務態度、仕事の能力などを理由に行われる解雇)、懲戒解雇(重大な違反行為をした場合の解雇)、整理解雇(会社の経営難を理由とした解雇)などがあります。
新型コロナウイルスを理由とした解雇は、会社の経営難を理由とした解雇ということになると思いますので、整理解雇に位置づけられるでしょう。

 

労働契約法では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(第16条)と定められていますが、特に普通解雇と整理解雇などを区別しているわけではなく、また「合理的な理由」や「社会通念上相当」かどうかは解釈に委ねられています。
実務上、整理解雇の合理性・相当性については、以下の4つの要素によって判断されるとされています。ただし近年では、「退職条件」(割増退職金の支払い、就職先のあっせん等)の有無・程度も考慮要素にしている裁判例もあります。

 

①人員削減の必要性

②解雇回避努力

③人選の合理性

④手続の相当性

 

この中の解雇回避努力(②)について、解雇をすると従業員の生活の糧を奪うことになるので、いわば最終手段的なものであり、会社としては解雇を避けようと努力したけど結局駄目でした、という事実が重要になります。
一般的には、整理解雇をする前に、経費削減、時間外労働の中止、新規採用の中止、賞与の支給停止、休業、非正規労働者の労働契約の解消、希望退職者の募集などを行い、それでも会社の経営状況から考えて整理解雇をせざるを得ないといえる場合には、この解雇回避努力(②)を充たしていると評価されます。

 

また、今回、新型コロナウイルスに対する各種救済制度があるので、解雇回避努力(②)を充たしているといえるためには、これらの利用を検討する必要もあるでしょう。
ただし会社の経営状況によっては、上記の経費削減等の策をとっている暇がない場合もあるので(人員削減の必要性(①)の程度が高度な場合)、まずはこの救済制度が利用できないかを検討することもあり得ると思います。

 

この救済制度ですが、例えば、厚生労働省の雇用調整助成金、経済産業省の持続化給付金(中小企業向けの給付金)、各金融機関による事業者の元金弁済期の猶予(リスケジュール)等の支援、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付、各自治体による支援制度(融資のあっせん、利息負担の軽減等)などがあります。

 

上記の雇用調整助成金は、労働者を休業させた場合に支払う休業手当の一部を助成する制度ですが、いち早く大手航空会社のANA(全日本空輸)は客室乗務員の休業を行い、この雇用調整助成金の申請をしたことがニュースになりました。
雇用調整助成金は、今回の新型コロナウイルス騒動の前からあった制度であり(今回、助成率や上限額が引き上げられました。)、2008年のリーマン・ショックの時にも多くの会社が利用して、雇用維持につながったという事実がありますので、今回も大いに活躍することが予想されます。

 

その他に、上記要素(①、③及び④)の有無・程度も重要になってきますので、「新型コロナウイルスを理由とした(整理)解雇はできるのか?」という問いは、簡単に答えが出るものではなく、諸事情を総合的に検討する必要があります。

 

新型コロナウイルスによって各業界が大きな打撃を受けており、今後整理解雇が増えていくおそれがありますが(最初の段階は退職勧奨や希望退職者の募集が増えるおそれ)、労使双方が休業や各種制度の利用について協議・検討できれば、解雇にまで至らないケースもあると思いますので、労使が一緒になって今回のコロナ禍を切り抜けるための方策を模索できればと思います。
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IMG_2791(以下は、2020年6月23日に発行したメルマガの記事ですが、7月21日現在もあまり状況は変わっていませんので、ブログに掲載することにしました。)

東京では、政府の緊急事態宣言が5月25日に解除され、その後の都庁の「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」も6月12日には最終段階のステップ3に以降し、現在は、大型イベントを除いて、全ての業種において休業要請も終了しました。
皆様の生活においても、マスク着用・手洗い励行・三密回避などのコロナ対策は維持しながらも、徐々に普段の生活に戻りつつあるのではないかと思います。

ところが、裁判関係の仕事はまだ全然戻っていません。

約2ヶ月間の自粛期間中、裁判の期日は、保全事件などの一部の事件を除き、民事事件も刑事事件も全て取り消され、何も動いていませんでした。裁判は、国民の権利を守るための大切な活動であり、「不要不急」のものとは思われませんので、今にしてみれば裁判所のこの判断自体にも議論があるところだと思います。しかし、4月7日に政府の非常事態宣言が出た段階では、新型コロナウイルスがどのような猛威をふるうかわからず、欧米諸国のように医療崩壊を起こして、何万、何十万の死者が出るリスク(なにもしなければ42万人の死者といわれていましたね。)があったのですから、私はこの裁判所の対応を非難するつもりは毛頭ありません。
ただ、これからが重要だと思うのです。言うまでもなく、我々法曹関係者は早く裁判(司法)を正常な状態に戻さなければなりません。
そうしなければ、せっかく医療従事者がコロナ感染の危険にさらされながら、国民の命や健康を守ったのに、我々法曹が怠慢なために社会が不健康になったなどと言われかねないからです。
我々は、法曹になったころの初心を思い出して今頑張るべきだと思います。

現在、我々の事務所では自粛期間中に期日が取り消された約10件の裁判のうち、新しい期日が決まったのはたったの1件です。
それから、我々の事務所では、6月に入って立て続けに3件の新件の訴え提起をしましたが、まだ1件も第一回口頭弁論期日が決まっていません。
裁判所からは何も連絡がない毎日です。歯がゆい日々が続きます。

 

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IMG_2781(写真は、2020年7月17日お昼の銀座中央通。東京都の新規コロナ感染者が293人と過去最高だったからか、それとも梅雨の長雨が続いているからか、人通りがまばらで、寂しげな様子です。)



(この原稿は使用者サイドから見た法律関係を説明します。)


まず、使用者が設問のような命令を出すことができるか?ですが、使用者は労働者の業務や職場の環境について指揮命令権・管理権を有するとともに、労働者について安全配慮義務を負っています。

新型コロナウイルスの感染拡大が重大な問題となっている現在の状況で、ゴホゴホ咳をしていて、コロナ感染が疑われる従業員に勤務を続けさせることは、仮に本当にコロナに感染していたときは、他の従業員に対する安全配慮義務も尽していないことになるので、使用者としては、当然に、従業員に対する指揮命令権、職場環境についての管理権の一環として、帰宅するよう命じることができると考えてよいでしょう。
で、この従業員の仕事が自宅でできるものだったらよかったのですが、できない場合、労働者に休業させることになります。

次に、その場合、休業手当(給料の60%以上)を支払う必要があるかについて問題となります。多くの会社では、そこまで厳密な取り扱いはしておらず、従業員が風邪などで休んでも定額の給料を支払っているということかもしれませんが、法的に詰めて考えると、「ノーワーク・ノーペイ」が原則ですから、労働者が休業していた期間は給料を支払わなくてよいのでは?という疑問が発生するわけです。

この点について規定しているのが、労働基準法第26条です。

 

(休業手当)

26条  使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の60以上の手当を支払わなければならない。

 

つまり、コロナに感染している疑いのある労働者に帰宅を命ずることが、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するかがポイントです。

考え方としてはいくつかあるでしょう。
例えば、コロナに感染していることが確認されている従業員であればいざしらず、コロナ感染の「疑い」だけで、ノーペイという不利益を課すのは「推定無罪」という法原則に反すると考えて、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するという考え方もあるでしょう。

また、労働法という分野では労働者を社会的弱者と考えて保護することに重点が置かれますので、この問題を考えるにあたっても、労働者保護にウエイトを置き、コロナ感染の「疑い」で休業命令を出すのは、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するのだ、という考え方もあるでしょう。

しかし、ゴホゴホ咳をしていても、PCR検査でコロナ陽性が確定していない従業員に休業を命じると全て「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えるのは不合理です。なぜなら、実際にコロナウイルスに感染していることを確認してから休業命令を出すとするとコロナ感染予防対策として効果がなく、他の従業員に対する安全配慮義務も尽くせなくなるからです。

これに対しては、「いやいや使用者の指揮命令権の一環として休業命令自体は出せるのだから、使用者は休業手当の支払いを覚悟して休業命令を出せば良いではないか?」という人がいるかもしれません。

しかし、一方では(コロナ感染拡大予防対策などといって)休業命令を出すことを推奨しておきながら、他方ではその休業命令を出すことを躊躇させるような解釈をするのは、ベクトルの方向がちぐはぐで、良い解釈論とは言えないと思います。

そこで、労働者の状態がどの程度であれば、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するのか?という更に細かい議論に入っていきます。極端な例で言えば、労働者がちょっと咳をしただけで休業命令を出すとすれば、それは「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当の支払いの対象になるが、従業員が、ゴホゴホ、ゼーゼーしながら咳をしていて、見るからに苦しそうであれば「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないということについては誰もが納得すると思うのですが、その間の事案についてはどう考えればよいのか?ということです。

で、この点に言及しているのが、厚生労働省のHPにある次のQ&Aです。

 

〈感染が疑われる方を休業させる場合〉

3 新型コロナウイルスへの感染が疑われる方について、休業手当の支払いは必要ですか。

感染が疑われる方への対応は「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)症状がある場合の相談や新型コロナウイルス感染症に対する医療について問1「熱や咳があります。どうしたらよいでしょうか。」」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-1)をご覧ください。

これに基づき、「帰国者・接触者相談センター」でのご相談の結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

 
このAnswerの中で、「「帰国者・接触者相談センター」でのご相談の結果を踏まえても」という部分は、そんな相談をしている余裕はないので、適当ではないです。その点は置いておいて、上記のAnswerで引用されている「問1「熱や咳があります。どうしたらよいでしょうか。」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q5-1)のQ&Aを見てみると、次のとおりです。

 

問1 熱や咳があります。どうしたらよいでしょうか。

 発熱などのかぜ症状がある場合は、仕事や学校を休んでいただき、外出は控えてください。休んでいただくことはご本人のためにもなりますし、感染拡大の防止にもつながる大切な行動です。そのためには、企業、社会全体における理解が必要です。厚生労働省と関係省庁は、従業員の方々が休みやすい環境整備が大切と考え、労使団体や企業にその整備にご協力いただくようお願いしています。
 咳などの症状がある方は、咳やくしゃみを手でおさえると、その手で触ったドアノブなど周囲のものにウイルスが付着し、ドアノブなどを介して他者に病気をうつす可能性がありますので、咳エチケットを行ってください。

 帰国者・接触者相談センター等にご相談いただく際の目安として、少なくとも以下の条件に当てはまる方は、すぐにご相談ください。

息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場

重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合

※高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)など)がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方

上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合

(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)

 

このAnswerを読んでも、使用者が従業員を休業させる場合に、従業員がどのような状態であれば、「使用者の責に帰す事由による休業」といえるのか直接の言及がないように思うのですが、なんとなく、

 

息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場

重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合

※高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)など)がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方

上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合

(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)

 
☆の場合には、「帰国者・接触者相談センター」にご相談ください、としているのですから、この場合には、休業命令を出すこともやむを得ないと考えているのかなと思います。


上記のような状態にある場合には、新型コロナウイルスへの感染の可能性が高いと合理的に判断できますので、使用者側が休業命令を出すこともやむを得ない、むしろ労働者が(何らかの理由により)無理をして出勤してきているような場合には、休業命令を出すべきといえます。

というわけで、私の結論としては、従業員が上記の状態に当てはまる場合には、使用者の判断で休業させても、「使用者の責に帰す事由による休業」には該当しないと考えます。

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最近のビットコインですが、現在(この記事を書いている2020/7/15現在)、1BTC=99万円ほどで推移しています。ここのところ、100万円前後で上がったり下がったり、という流れになっています。

さて、前回、中央銀行が発行するデジタルマネー(CBDC)の話題について触れました。

その際、日銀も、CBDCについて研究している、といった話をしましたが、昨日の日経新聞電子版を見たところ、日本政府が、公式に、CBDCの検討を「骨太の方針」に盛り込む方向である、と報道されています(有料記事ですが、記事冒頭部分は右のURLで見ることができます。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61499170U0A710C2MM8000/)。

 

最近、CBDCは、各国でも、注目を集めており、いわば、ブームのようになっています。

各国中央銀行は、Libraなど「民」がやろうとするデジタルマネーに対しては、基本、批判的でしたが、「官」によるCBDCがブームになったこともあってか、デジタルマネーに関する方針を転換する、といった話も出てきています。

 

すなわち、共同通信の報道によれば、G20は、これまでの方針を転換して、デジタル通貨容認の方向に舵切りをするとのことです(https://this.kiji.is/654657337360712801?c=113147194022725109)。ここでいうデジタル通貨が、あくまで、「官」によるCBDC中心の話なのか、Libraなどの「民」によるものも念頭に置かれているのか、必ずしもニュアンスは不明ですが、報道を見る限り、後者のニュアンスを感じます。

 

以上のように、刻一刻と、状況が変わっていっているように思います。この点、本当にざっくりですが、(主観を交えて)これまでの歴史を振り返ってみると、

 

Facebookが著名企業とともにタッグを組んで「Libra」を提案しました。

 

②この「Libra」は、各国中央銀行が袋叩きに批判したため、実質、頓挫の状況になりました(マネロン等のリスクもありますが、実質、法定通貨に取って代わる可能性があるとなると、中央銀行も黙っていられない、という面もあるように思います。)。

 

③ただ、他方、中国は、Libraも意識して、デジタル人民元の(早期)リリースを匂わせ、実証実験なども行っています。

 

④このような状況を見て、中国にやられるならば、ということで、デジタルドルの議論も活発化しました。

 

⑤さらに、日本を含めた各国で、自国通貨のデジタル化(CBDC)の検討もブームとなっています。

 

⑥そして、ついに、G20も、容認路線に方針転換をしよう、という状況、と報道されています。

さて、この⑥が、今後、どう効いてくるのか、見ものです。

Libraにとって追い風となり、Libraが返り咲くのか、あるいはそうでないのか(あくまで、中央銀行主導のCBDCに力を入れてゆくのか。)。

 

また、日本政府としても、CBDC(デジタル日本円)を、どう「検討」してゆくのかも興味深いです。

 

(1) 具体的には、まず、硬貨や紙幣に代わるものであれば、極めて高い安全性を備えたシステムである必要があります。この辺りを、具体的にどう実装してゆくのか、様々な考え方があろうかと思います。ビットコインなどの仮想通貨とは、大きく異なった技術的仕組みを採用することになるかもしれません。

 

(2) 他方、(安全性の点は、政府も、言われなくとも最大限配慮をすることとは思いますが)その結果、全く使い勝手が悪いものになっては、意味がないように思います。安全性を備えつつ、利便性が高いものを作る、という点、難しい問題と思います。

 

(3) さらに、法律家的な視点ですと、デジタル円に対して、強制執行ができるか、という点にも興味があります。すなわち、現状、自己保有するビットコインに対する有効な強制執行策がありません(全財産をビットコインに変えて、ビットコイン管理用の秘密鍵をどこかに隠すないし暗記してしまった場合、いくら、裁判所が、差し押さえだ、といっても、実質、差し押さえようがありません。)。

 では、デジタル日本円については、どうするのか、という疑問があります。この点、

 ・ビットコインなどと違って、中央銀行ないしそれに近い機関が、任意に、いつでも個々人のデジタル円を移動させられる、という設計にすれば(そういった仕組みが哲学的にいいか、悪いか、は別として)、裁判所による差し押さえなどは支障ないかもしれません。ただ、その場合、「このデジタル円は、○○さんが保有するものだ」という切り分けができることが前提と思います(要するに、デジタル円と個人を結びつける情報を、どこかに記録しておくことが必要と思います。ただ、そうすると、事前の本人確認や口座開設などの手間などが生じ、結局、銀行預金と何が違うの?という話になってしまうかもしれません。)。

 

 ・他方、そもそも、デジタル円についても、裁判所による差し押さえはできないのだ、と割り切って、別の方法を考える(取引の際に、エスクローをかませる、担保をとるなど、事前の予防策に重点を置く)、ということも考えられます。

 

総論として、CBDCをやるとしても、各論として、具体的にどう設計するのか、これから議論が深化してゆくのではないかと思います。

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1. はじめに

前回メルマガ記事を書いた4月の段階で、ビットコイン価格は、1BTC=76万円前後でしたが、その後、価格は上昇し、5月から6月にかけて、上下しつつも、概ね、1BTC=100万円超となりました。

 

その後、100万円を割ることもありましたが、この記事を書いている時点(2020/06/17)では、1BTC=102万円で推移しています。

 

2. リブラ等の最近の動き

 

さて、今回は、これまでにメルマガに書いたリブラ、の延長線上の話として、「デジタルドル」について触れたいと思います。

 

前提としまして、最近の動きなどを、ざっくりとまとめてみます。

 

これまでも記事にしたとおり、Facebookが主導して提唱した仮想通貨「リブラ」は、残念ながら、(特に、法定通貨を脅かすものとして、中央銀行の不興を買ったためか)各方面から袋叩きにあいました。

 

そこで、Facebook(リブラ)側としては、方針の修正をアナウンスしており(https://libra.org/en-US/white-paper/#cover-letter)、具体的には、(セキュリティを強化することはもとより)法定通貨と11で対応するステーブルコインを発行する計画を公表しました(https://libra.org/en-US/white-paper/#cover-letter)。

 

要するに、1ドル払って、1ドルリブラ、みたいな仮想通貨(ないしステーブルコイン)を貰える、という計画のようです。

 

但し、従前の仕組み(複数の通貨のバスケットにリンクするリブラ)も、諦めてはいないようで、既存の仕組みに「加えて」("in addition to")、上記のような仕組みを追加する旨、説明がされています。

 

リブラに関して、以上の状況をどう評価するか、人によって判断が分かれるところですし、将来的にどうなるかは分かりませんが、正直なところ、現段階で、批判を受けて、ほぼ頓挫している印象を受けます。

 

他方、リブラを尻目に、中国のデジタル人民元の計画は、着々と進んでいるようで、深センなどの一部の都市で、テスト運用を実施するとの報道がされています。報道の中で、興味を引いたのは、デジタル人民元は、インターネット環境がなくとも、スマホ同士で通信して、送金することができる仕組みを備えるそうです。まだ、テスト段階の話であり、今後もその機能が維持されるのかは分かりませんが、素朴な疑問として、果たして、それってセキュリティ的にどうなんだ?マネロン対策とかもできるの?などと思ってしまいます。

 

3. デジタルドル

 

さて、人民元をデジタル化しようという話があるのであれば、やはり、米ドルをデジタル化しよう、という話もあります。ちなみに、最近では、そういった、中央銀行が発行するデジタル通貨をCBDCCentral Bank Digital Currency)と呼んでおり、報道などでも、よく使われる単語となりつつあります。

 

この点、米政府としてはCBDC発行に慎重な姿勢のようではありますが、最近、ちょこちょこと気になる動きがありました。


まず、民間の話ではありますが、米国商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長(J・クリストファー・ジャンカルロ氏)が、「デジタルドル財団」という財団を設立し、アクセンチュア社とともに、ドルのデジタル化の設計・推進を推し進めています(デジタルドルプロジェクト。https://www.digitaldollarproject.org/)。

 

最近では、ホワイトペーパー(目論見書)などを出してニュースになりました(https://www.digitaldollarproject.org/exploring-a-us-cbdc)。

 

ここまでは、単純に、民間団体によるドルのデジタル化に関する提言、といったレベルの話です。しかし、最近では、米議会の下院において、金融サービス委員会の公聴会が開催され、デジタルドルに関して議論もされています。前記デジタルドルプロジェクトのジャンカルロ氏も参考人として参加しています。

 

デジタルドルプロジェクトの動きは、要するに、技術的仕組み等々は、民間レベルで提言するから、政府はそれを採用して、ドルのデジタル化を進めてくれ、ということと思います。

 

これに対し、中央銀行側はどう反応したかといえば、そっけない反応です。すなわち、報道によれば、連邦準備制度理事会(米国の中央銀行に相当)のパウエル議長は、617日の下院委員会で、官民協力によるデジタルドルの設計について、否定的見解を示したとされています。

 

ただ、他方で、FRBは、これまで、デジタルドルの可能性を研究しきているとのことで、前記17日の委員会においても、パウエル議長は、CBDC(デジタルドル)は、真剣に研究していく案件の1つ、とも発言しています。

 

正直なところ、FRBとして、どこまで研究を進めているのか、どこまで発行に向けた具体的計画が進んでいるのか(あるいは進んでいないのか)、等々、ベールに包まれた部分が多いです。ただ、報道によれば、パウエル議長は、「待たせすぎるのも問題になる」という意味深な発言もしているようで、ひょっとすると、裏で、発行計画が着々と進んでいるのかもしれません。

 

このように、リブラに端を発して、中国のデジタル人民元、EUデジタルユーロ、そして、アメリカのデジタルドル、と、どんどんと波紋が広がっているようです。

 

ちなみに、日銀も、欧州中央銀行(ECBその他の銀行とともに、CBDCについて研究をするなどしています(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200121a.htm/)。

 

あと10年もしたら、今を振り返って、「リブラの発表が、法定通貨の歴史的な転換点であった」などと言われるようになるのかもしれません。

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