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労働契約上の無期転換ルールをご存知でしょうか?
これは、2012年の労働契約法の改正により、新たに労働法18条に定められたルールです。

簡単に説明すると、契約社員・パート・アルバイトなどの期間が決められた労働契約をしている労働者(有期契約労働者と呼ばれています。)が、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。たとえば、 契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に無期転換の申込権が発生します。有期契約労働者が無期転換の申込みをした場合、使用者は、断ることができず、無期労働契約が成立することになります。

で、重要なのが、この労働契約法18条の無期転換ルールは、2013年4月1日から施行されたので、無期転換ルールにおける「5年間の期間」は、既に2013年4月1日から起算されており、来年2018年4月1日から無期転換権を取得する有期労働者が発生することです。

では、有期契約労働者が無期転換権を行使した場合、会社とこの労働者との契約関係はどのようになるのでしょうか?

労働契約法18条1項によれば、原則として、期間が有期から無期になること以外はそれまでの労働契約が適用されます。したがって、期間1年、週3日、1回あたり6時間、給料月額10万円のバイトが無期転換権を行使した場合には、単に期間が1年契約だったものが無期になるだけで、週3日、1回あたり6時間、給料月額10万円という労働条件には変更がないのです。

しかし、これには例外があります。すなわち、会社にこの無期転換権を行使した労働者(無期転換労働者)に適用される定めがある場合には、その定めが適用されることになります。たとえば、これまで正社員規則、契約社員規則、アルバイト規則しかなかった会社が、新たに、無期転換労働者に適用される規則を作れば、それが適用されることになりますが、もし特別にそのような規則を作らなかったのであれば、有期が無期になる点を除いて、従前は契約社員だった人には契約社員規則が、従前はアルバイトだった人にはアルバイト規則が、それぞれ適用されるということになるのでしょう。

というわけで、現在、来年4月1日以降に無期転換労働者が発生する可能性がある会社では、無期転換労働者に適用する規則を作っている会社も多いのではないかと推測します、その準備を後押しするために、厚生労働省では、ウェップで就業規則のサンプルを公開したりしていますね(http://muki.mhlw.go.jp/point/)。

ただ、ここで私には、どのように解釈したら良いのかわからない問題があります。

(1) たとえば、バイトばかりがいる会社が、バイトの無期転換権行使を阻止するために、無期転換労働者用の就業規則を作り、そこには、正社員並みの労働条件、たとえば、週5日労働、1回8時間労働、転勤命令に従う義務あり、残業命令に従う義務あり、もちろん給料は正社員なみに支払う、などと定められていたとする。そのため、多くのバイトは、事実上、無期転換権を行使できないでいる。このような就業規則は、実質的には、労働契約法18条の無期転換ルールの趣旨を没却するものであり、また労働契約の不利益変更禁止の精神も没却するから、無効なのではないか?

(2) IT業界では、案件をわたりあるく契約社員の方が正社員よりも給料が高い場合があるが、無期転換労働者規則において、給料は正社員並みにすることとした。しかし、そもそも無期転換権行使により給料を減額することは、上記と同様、無期転換ルールの趣旨を没却し、労働契約の不利益変更禁止の原則にも反するので、許されないのではないか?

労働法を専門にしている弁護士に、上記の質問を聞いてみましたが、まだ事例がなく、はっきりとした答えはないようです。

私の弁護士としての経験からすると、日本の会社は、上記(1)及び(2)のようなことは、法律上許されても社会からの非難を恐れてやらないところが多いのではないかと推測しますが、価値観の違う外資系の会社であれば、法律上許されるのであれば、実際にやるところが出てきそうです。
これからどのような解釈になるのか、注目してみたいと思います。

●●(1). はじめに●●

さて、前回、前々回と、ビットコインの概要などをご説明させていただきましたが、今回は、私の専門である、法律分野のお話をさせていただければと思います。


●●(2). 仮想通貨法とは??●●

ビットコインをはじめとして、現在、数百(あるいはそれ以上)の仮想通貨が登場していますが、仮想通貨に関しては、平成29年4月に、仮想通貨法(改正資金決済法の一部・仮想通貨に関する規定部分を、慣用的にそう呼んでいます。)が施行され、話題となりました。

この仮想通貨法ですが、巷では、「ついに仮想通貨が通貨となった」だとか、「仮想通貨取引全般が規制される」だとかいった声がありましたが、結構ミスリーディングな部分があります(一部では、大手メディアの報道でも、同様にミスリーディングなものがありました。)。

そこで、まず、基本的な部分の確認ですが、仮想通貨法により、ビットコインなどの仮想通貨が「通貨」になった訳ではありません。確かに、法令上、「仮想通貨」(仮想通貨法第2条第5項)といった表現はされていますが、日本における「通貨」は、今でも、貨幣及び日本銀行券(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第2条第3項)のままです。この点に変わりはありません。ただ、事実上、ビットコインなどの仮想通貨が、通貨に類似するようになってきている、と言うことはできます。

次に、仮想通貨法は、あくまで仮想通貨の取引所の規制であり、全ての仮想通貨取引を規制するような法律ではありません。まれに、仮想通貨法により、ビットコイン取引全般が違法になった、と誤解されている方もいたりしますが、そうではありません(というより、むしろ、現在では、仮想通貨で代金を支払えるお店が増えてきています。)。



●●(3). 仮想通貨法の詳細●●

では具体的に、仮想通貨法では、どのような規制がされたかといえば、大きな柱としては、

  ・「仮想通貨交換業」(法2条第7項)が登録制となり(法63条の1)

  ・登録せずに「仮想通貨交換業」を行うと刑罰が課される(法107条等)

という点です。ここでいう、「仮想通貨交換業」には、ビットコイン取引所の運営などが含まれますので、法律施行後の現在では、無登録でビットコインの取引所を作れません(なお、法律施行前から取引所を運営していた会社では、登録を得るまで、一定の猶予期間が設けられています。)。そのため、概して、今回の仮想通貨法は、取引所に対する規制といえます。

さらに詳しく見ると、仮想通貨交換業者には、仮想通貨法上、
 ・情報の安全管理(法63条の8)
 ・利用者の保護(法63条の10)
 ・財産の分別管理(法63条の11)
 ・事業年度ごとの報告書提出(法63条の14)
等々の義務が課されます。

ちなみに、あまり報道はされていない点ですが、今回の仮想通貨法では、日本で登録されていない海外の取引所が、国内の者に対して、仮想通貨売買等の「勧誘」を行うことも禁止されていたりします(法63条の22)。

これらの規定の趣旨は、例えば、
 ・取引所が破綻したり
 ・セキュリティー対策が十分に施されていない
  取引所からハッキングにより仮想通貨が流出
  したり
といったことを防ぎ、取引所の利用者を守る点にあります。

また、仮想通貨は、マネーロンダリングにも使われるため、マネーロンダリングを防止する趣旨も含まれています。



●●(4). 仮想通貨法に対する評価●●

仮想通貨法の評価に関しては、賛否両論ありますが、よく言われるマイナス面としては、ある程度資金力がある会社でなければ、取引所の開設は難しくなった、という点です。仮想通貨法に関連して定められた内閣府令では、仮想通貨の取引所は、最低資本金が1000万円とされ、また、様々な内規やリスク管理体制が求められることにより、物的・人的なインフラ整備にもコストがかかります。そのため、スタートアップ企業がいきなり取引所を開設する、ということは、ほぼ不可能ではないか、と言われています。

ただ、これに対しては、仮想通貨法の規制があることにより、取引所のセキュリティーや財産的基盤が、ある程度はしっかりしたものとなり、利用者としても、安心して利用できるようになる、という見方もできます(ただ、どの業界でもそうですが、100%信用できる、などと言うことはできません。)。また、所轄官庁やルールが明確になった点を、好意的に受け止める見方もあります。


●●(5). 取引所以外への影響について●●

以上のとおり、仮想通貨法は、主に、取引所への規制ですので、それ以外の部分に関しては、規制は及ばないことが原則です。

ただ、仮想通貨を繰り返し売買したり、他の仮想通貨と交換するようなビジネススキームは、取引所とやっていることは同じですので、取引所でなくとも、仮想通貨法の規制が及ぶ可能性があります。規制が及ぶとすると、仮想通貨交換業の登録が必要となり、これには、前記のとおり、多大なコストがかかります。そうすると、ビジネスを始めようにも、仮想通貨法の規制で、ビジネススキームが成り立たない、ということにもなりかねません。

そのため、もし、仮想通貨に関連したビジネススキームを考える際は、早い段階で、専門家や監督官庁である金融庁(実際の対応は財務局)に相談するなどの対応が重要となります。


●●(6). 終わりに●●
いかがでしたでしょうか。次回は、ビットコインの中核技術「ブロックチェーン」について触れてみたいと思います。

今回は、保釈についての記事になります。
 「保釈」という言葉は、皆さんもどこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 刑事事件では日常茶飯事と言えるレベルで登場する「保釈」ですが、これは、簡単に言ってしまば、一定額のお金を裁判所に預けて、それと引き換えに、裁判が終わるまでの間、身体拘束を解いてもらうという制度です。裁判所が、被告人を外に出すにあたって一番懸念するのは、裁判から逃亡されてしまうことなのですが、保釈されるには、ある程度多額の保釈金を裁判所に納める必要があり、保釈中に逃亡したり、裁判に出頭しなかったりすると、保釈金が没収されてしまうことがあります(刑訴法962項)。そのため、被告人は逃亡を図ることがしにくくなり、裁判所としては、高い確率で被告人の出頭を確保することができます。そうであれば、わざわざ被告人の身体を拘束しておく理由はなくなり、保釈金と引き換えに外に出した方が、裁判所としても効率的ですし、人権保障の観点からも望ましいということになります。

 保釈は概ね上記のような制度なのですが、どんな人についても保釈が認められるわけではありません。保釈が認められるには、次のような条件が必要とされています。(①は必須で、加えて②又は③に当たることが必要です。)
①対象者が起訴されていること(「被疑者」ではなく「被告人」の地位になっていること)
②刑訴法891項各号のどれにも当たらないこと(権利保釈)

③刑訴法891項各号のどれかに当たってしまう場合でも、逃亡の恐れが高くない、罪証隠滅の恐れが高くない、といった保釈を認めるのが適当な事情があること(裁量保釈、90条)

 ①について、そもそも、保釈の請求の前提条件は、その人が起訴されて「被告人」になっていることです。起訴の前段階では、「被疑者」として、3日間程度の逮捕期間と最大20日間の勾留期間を過ごすことになりますが、この間に保釈の請求をすることはできません。(この間に外に出るための方法としては、勾留に対する準抗告というものがありますが、保釈よりもかなり認められづらいです。)したがって、保釈の請求をしたい場合には、起訴された後に裁判所に保釈請求書を提出しなければなりません。

 ②について、保釈は、法律が定める一定の事情に当たらない場合には、必ず許可しなければならないことになっています(刑訴法891項)。その一定の事情としては、

 ⅰ被告人の犯した罪が、一定以上の重大なものであるとき(1号)

 ⅱ重い前科等があるとき(2号)

 ⅲ常習性をもって一定以上の重さの罪を犯しているとき(3号)

 ⅳ罪証隠滅のおそれがあるとき(4号、5号)

 ⅴ氏名・住所が不明のとき(6号)

があります。したがって、初犯で、重大犯罪とまでは言えない類型の罪を犯した被告人の場合には、罪証隠滅のおそれが低いと認めてもらえれば、保釈が認められる可能性が高いということになります。

 ③について、②の保釈から漏れてしまった被告人(例えば、重大な罪を犯した被告人や、重い前科のある被告人など)にも③のルートで保釈の道が開かれていますが、こちらの類型の保釈については、細かい要件が決まっていません。裁判官が、個別事情を見て、この被告人は外に出しても逃げたりしないし、証拠のねつ造・隠滅等もしなさそうだ、となれば、保釈してもらえる可能性があるということになります。

 上記の要件を満たす人については、保釈請求があれば、裁判所が保釈を許可し、保釈金の額を指定します。被告人がこの金額のお金を裁判所に預けた段階で、被告人の身体拘束は解かれ、外に出られるようになります。
 なお、保釈金の額は、事件の類型や被告人の状況によって異なり、重大な事件ほど、お金を持っている被告人ほど高くなるのが一般的です。
 また、保釈の請求は弁護人がするのが一般的ですが、弁護人だけでなく、被告人や被告人の直系親族・兄弟姉妹等もすることができます。もし何らかの事情で弁護人が付いていない場合でも、被告人や親族が簡単な保釈請求書を書くことで保釈の請求は可能です。

 世間では、一度警察に捕まった人はずっと捕まりっぱなし(無罪にならない限り出てこられない)というイメージが強いように感じますが、保釈の制度を利用することによって、相当な数の被告人が裁判中に釈放されています。
 被告人が保釈されるかどうかは、被告人の生活の観点からも、弁護活動のしやすさの観点からも非常に重要な問題になってきます。ぜひ、自分自身の身を守る手段として、保釈という制度があるということがもっと広まってほしいと思います。

●●1. はじめに●●
さて、ビットコイン復習編ですが、前回は、ビットコインの概要についてお伝え致しました。

しかし、概要だけでは、いまいちイメージが掴みづらいと思います。そこで、今回は、どうやったらビットコインを入手できるのか?使えるのか?という点に焦点をあてて、ご説明いたします。


●●2. ビットコインの入手方法●●
 ビットコインの入手方法としては、大きく分けて、以下の方法があります。

(1) 取引所で日本円と交換(購入)する
(2) 他人からもらう
(3) 採掘する(マイニング)

このうち、(1)が最も現実的かつ確実な方法です。

現在、日本では、日本円とビットコインの取引所が複数できています。この取引所に取引口座を開設し、日本円を入金(銀行振込やクレジットカード払い等。取引所によって異なります。)した上で、パソコンや、スマホアプリから、ビットコインを購入することができます。インターネットを使って、株取引や外貨預金をする要領ですね。相場は、外国為替同様、日々上下しています。

ちなみに、平成29年4月に施行となった仮想通貨法(改正資金決済法で追加された仮想通貨に関する規定部分を、慣用的に、仮想通貨法と呼んでいます。)により、口座開設には本人確認が厳格になっています。取引を開始するには、本人確認書類を取引所に送ったり、居住確認のため取引所からの郵便物を受け取るなどの手続を経る必要があります。ビットコインは、便利であるがゆえ、マネーロンダリングに使われる可能性があり、これを防止する趣旨です。

(2)については、例えば、近くにビットコインを持っている気のいい人がいれば、少し譲ってもらうという方法も考えられます。この場合、取引所の口座開設は不要です。

(3)については、前回記事でも最後に少し触れさせていただきましたが、難しい問題を解いて、ビットコインの取引を取引台帳に書き込み、対価としてビットコインを得る方法です。しかし、膨大な計算を行う必要があるため、個人にとっては、現実的な方法ではありません。また、仮に高性能なコンピューターを用意したとしても、日本では、得られるビットコインの価値よりも、電気代の方が高くつくと言われています。


●●3. ビットコインの管理・使用方法●●
ビットコインを取引所で買った直後は、取引所がビットコインを管理しています。しかし、ビットコインを、取引所から引き出して、自分のビットコインの財布(ウォレット)に入れて、自己管理することもできます。

自分で管理って、どうするんだ??という方もいるかもしれませんが、難しいことではありません。例えば、スマホに、ビットコインのウォレット(財布)のアプリをインストールし、取引所から、そのウォレット宛に、ビットコインを送金するだけです。送金先は、銀行口座番号にあたるビットコインアドレス、という固有の英数字で特定されます。

また、さらに、ウォレットから、送金先を指定して送金操作をすれば、ビットコインを第三者に送金することができます。ビットコイン決済を受け付けているレストランであれば、お会計のときに、ビットコインの送り先(ビットコインアドレス)をQRコードで教えてもらって、ウォレットからQRコードを読み取り、送金操作をすれば、お会計完了です。

その他、投機が目的であれば、取引所でビットコインを買って、値上がりした際、取引所でビットコインを売却し、利ざやを儲ける、という使い方もあります。なお、ビットコインの価格は、
  ・平成28年1月頃 → 1BTC = 5万円前後
  ・平成29年1月頃 → 1BTC = 11万円前後
  ・平成29年8月頃 → 1BTC = 45万円前後
となっており、高騰しています。上下幅は大きく、1日で、数万円上下することも珍しくありません。もちろん、上がるときは上がりますが、下がるときは下がります。


●●4. その他の保管方法●●
ビットコインは、銀行口座番号にあたるビットコインアドレスに保管されます(このビットコインアドレスを管理するのが、ウォレットです。)。このビットコインアドレスには、秘密鍵(パスワード)が紐付いていて、ビットコインを送金する際には、パスワードが必須となります。

つまり、究極的には、ビットコインアドレスとパスワードさえ記録しておければ、ビットコインを保管している、ということができます。そのため、ビットコインの保管方法も、スマホのウォレット以外に、様々なものが有ります。

i.原始的には、紙に、ビットコインアドレスとパスワードを印刷して保管する方法があり、ペーパーウォレットと呼ばれます。

ii.また、専用の小型機械で、ビットコインを保管するものもあり、ハードウェアウォレットと呼ばれます。

iii.さらに、スマホ以外にも、パソコンのウォレットソフトで、ビットコインを保管することもできます。

iv.加えて、Web上でウォレットを提供しているものもあります。

ビットコインは、財布の形も様々なのです。


●●5. 保管上の注意点●●
ウォレットについては、兎にも角にも、バックアップをとっておくことが必須です。

ビットコインは、上記のとおり、ビットコインアドレスとパスワード(秘密鍵)で管理され、パスワードはウォレット上で管理されています。例えば、スマホアプリのウォレットであれば、特段、設定をしなければ、このビットコインアドレスとパスワードを内部で自動的に生成して管理してくれています。そのため、パスワードをあまり意識せずに使えてしまうかもしれませんが、いざ、スマホを失くしたり、壊したりしてしまうと・・・。パスワードが分からず、永久にビットコインを動かせなくなってしまいます。ビットコインは、中央管理者がいないので、パスワードの再発行などもできません。

そのため、パスワード(秘密鍵)を含めた、ウォレットのバックアップは必須です。中央管理者がいない、ということは、利点である反面、管理は自己責任なのです。

ちなみに、パスワードを第三者に見せることも厳禁です。パスワードが分かれば、ビットコインアドレスも分かってしまい、ビットコインを盗まれてしまいます。

また取引所にビットコインを預けたままにしておくことは、パスワードを自分で管理できないので、好ましくないとされています。取引所は、ハッカーたちの格好の餌食となっていて、過去、海外では、ハッカーの攻撃により、取引所からパスワードが流出し、ビットコインが盗まれる被害が発生しています。同じような話で、Web上のウォレットも、ハッカーの攻撃リスクがあるとされています。



●●6. 終わりに●●
いかがでしたでしょうか。特に、保管上の注意点に関しては、「やはり、ビットコインはリスクが高い」という見方も、「中央管理者がいない代償だから、自己責任というのも当然だ。」という見方もできるかと思います。

ただ、パスワードを失くしたり、第三者に知られたりして被害を被ることは、何もビットコインに限った話ではありません。今後、ビットコインが普及した場合は、お金は守られるもの、という考えから、自分で守るもの、という考えへの意識改革が必要になるかもしれません。

またリスクを減らすような、技術的・ビジネス的なスキーム(例えば、取引所におけるビットコイン盗難時の保険などのサービスも、最近提供されるようになっています。)も考える余地があります。

ビットコインは、システムを含め、業界全体が、めざましく進化しています。リスクへの対策も含め、今後も様々な発展があると思います。

萩原勇弁護士が、労務行政研究所の「労政時報」(第3937号)に「相談室Q&A[労働時間関係] 裁量労働制で、健康上の配慮から特定の時間以降は就業禁止とできるか」と題する記事を執筆し、掲載されました。

今月、国際宇宙ステーション(International Space Station。以下「ISS」。)にいるクルーの交替がありました。3名のクルーを乗せたロシアの有人宇宙船は、今月13日にロケットで打ち上げられ、その日のうちにISSにドッキングし、無事3名のクルーはISSに到着しました。最近ではクルーの交代はそこまで大きなニュースになりませんが、このことは昔に比べればロケット技術等が遥かに進歩したことの現れでしょう。

ISS計画は、G8サミット(主要国首脳会議)の全メンバーも参加している巨大なプロジェクトであり、ISSでは、様々な国籍の宇宙飛行士達がそこに居住しながら日々研究しています。16.5時間労働、土日が休みで、祝日はクルーの国籍に応じて各国の祝日を調整して決定していくそうです(JAXA(宇宙航空研究開発機構)ウェブサイトより。http://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/177.html)。

このISSですが多くの国が参加し、様々な国籍のクルーが居住しているため、権利関係の存否について疑義が生じた場合や、(考えたくはないですが)宇宙飛行士の間で紛争が生じた場合などのため、あらかじめ法的な取り決めをしていく必要があります。参加国は国際宇宙ステーション協定(以下「IGA」。)を締結しており、ISSでは、各国がそれぞれ登録した物体や、自国の国籍を有するISSにいる人員ごとに、各国の管轄権が与えられています。この管轄権は、(登録した)宇宙物体上で発生する事実や行為について、登録国の国内法が適用され、その国内法の遵守を強制する権限(法律を執行する権限)をいいます。

日本が登録しているISSにある実験棟のJEM(きぼう)内では、日本の国内法である民法等が適用されます。また、日本人搭乗員同士で喧嘩して損害賠償という話になったら、民法の不法行為(709条)等の規定を根拠に解決していくことになります。

仮に他国の搭乗員と揉めた場合には、IGAでは、当事国の政府間協議等での解決を目指し、この解決が不調に終わったら、紛争当事国間で合意された紛争解決手続(調停、仲裁等)で解決するよう定められています。

IGAは刑事事件に関する規定もあり、このことは以前取り上げたことがあるのですが、ISS内で犯罪行為が行われた場合は、ステーションのどの区画で犯罪があったかどうかは関係なく、被疑者である宇宙飛行士の国の法律で裁かれることが原則となっています(221項)。そのため、例えばA国の宇宙飛行士がB国の宇宙飛行士に傷害を加えた場合には、被疑者はA国の宇宙飛行士となり、このA国の宇宙飛行士はA国の法律で裁かれることになります。

なぜ被疑者の国の法律で裁かれるかというと、宇宙飛行士の活動は自国の国民から大きな関心が寄せられるため、他の参加国によって自国の宇宙飛行士が裁かれることは国際関係上好ましくないという理由から、属人主義(自国民による犯罪に対しては犯罪地を問わず自国の刑法を適用するという考え方)が取られています(小塚荘一郎著「宇宙ビジネスのための宇宙法入門」150頁参照)。

なお、日本人搭乗員が刑事事件の被疑者となった場合には、日本の刑法の定めが適用されますが、ISSは宇宙にあり日本国内ではないので、刑法の国外犯規定しか適用はありません。刑法の国外犯規定とは、日本国外の犯罪行為であっても日本の刑法が適用されるというもので、通貨偽造、殺人、傷害、窃盗、詐欺や強盗等が定められています。ISSで想定される刑事犯罪は基本的にはこの国外犯規定でカバーされていると思いますが、例えばISSで国内犯規定しかない賭博(刑法185条)が行われても、少なくとも日本人搭乗員には刑法の適用がなく不可罰になります。

最近は宇宙旅行が現実味を帯びてきましたが、並行して、法の適用がどのようになるのかを規定していかないと、例えば宇宙旅行中に旅行者間で賭博をしたり、国民が勝手に宇宙にカジノを作っても刑法の適用が無いなど、後から問題が生じることが増えていくことでしょう(“宇宙カジノ”という響きは魅力的に聞こえるかもしれませんが…)。

アメリカでは刑法の国内犯規定をISS内でも適用させるように、30年以上も前に刑法を改正しています。日本はえてしてこのような動きが遅いので、その行為が合法なのか違法なのかを明確にするという意味でも、想像力を働かせてどんどん法律を整備していく必要があると思います。日本は仮にも宇宙先進国の一つに数えられているので、世界にアピールする意味でも、今後の法整備を期待しています。

ビットコインに関する最近の動き

さて、ビットコインについては、81日を乗り切った後も、日々、様々なニュー

スが報道されています。ビットコインに関する動きは本当にめまぐるしいです。

 

特に、最近は、海外での動きについて、多くの報道がされていました。

まず、フィリピンでは、仮想通貨取引所が開設され、エジプトでも開設の動きが

あるようです。

 

また、ベトナムに関しては、これまで禁止されていたビットコインの送金事業が

合法化される動きがあると報道されていました。

さらには、これまでビットコインに否定的な態度を示していたロシアでは、国の

後押しを受けて大規模なマイニング事業に進出することとされ、ICO(仮想通貨

を利用した資金調達)も実施されたとのことです。

 

 ※このICOとは、Initial Coin Offeringの略で、IPO(新規公開株)をもじ

ったものです。厳密な定義はなく、多種多様なスキームの種類があるので、

一概にこういうもんだ、とは断言できませんが、例えば、

   ・投資家:ビットコインなどの仮想通貨を払い込む

   ・企業 :対価として、独自の仮想通貨(但し、仮想通貨法の規制が及ぶ

      仮想通貨には限りません。)を発行するといったスキームで
        企業が資金調達
を行うものです。

  独自の仮想通貨には、その企業に関する優待が付与されていたり、また、将

来的に、独自の仮想通貨が高値で取引されるようになれば売却して含み益分

を儲ける、といったことも考えられ、その点で、投資家にとって魅力があり

ます。

  報道などによれば、このICOの手法によって、数時間で300円以上の資金

調達に成功した例などもあり、非常に注目されています。

  ただ、もちろん、詐欺的なICOもあり、リスクもあります。また、各国でも、

法整備は追いついておらず、また、国によっては、既存の法令上、金融商品

ないし証券に該当し、関連規制が及ぶ可能性もあるとされています。




さらに、エストニアでは、国家としてのICOを検討しているとのことです。

 

他方で、中国では、中国人民銀行が、ICOによる資金調達が違法であると通

告し、その後、仮想通貨取引所に対して操業の停止を求めたと報道されてい

ます。これによって、ビットコインの価格は急落しています。

 

その他、香港でも、ICOによる資金調達に、証券に関する法規制を及ぼす可能性

があるようです。

 

また、国内での最近の注目ニュースとしては、国税庁が、ビットコインに関する

タックスアンサーを公開しました。

 

https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1524.htm

 

これまで、ビットコインの売却の際の含み益に対する課税は、譲渡所得になるの

か、雑所得になるのか、と見解が分かれていたようですが、国税庁の統一見解と

して、(事業所得等になる場合を除き、原則)雑所得であることが明示されたこと

になります。

ただ、そもそも、ビットコインに関する税金に関しては、ビットコインのやりと

りを頻繁に行う場合、計算が非常に面倒になってしまいます。法改正も含め、今

後の改革の余地がありそうです。

 

 

青春18きっぷの旅・2017 in Summer

と、ビットコインの話題はここまでにして、今回は、青春18きっぷの旅につい

て書きたいと思います。少し前の話になりますが、例のごとく、青春18きっぷで、

東北方面に旅に出てまいりました。

今回は、あいにく東北の天気が悪かったため、電車に乗っている時間を多めに設

定しました。途中下車するごとに色々と歩き回る旅もいいですが、カタンコトン

と一日中電車に揺られる旅も、それはそれでいいものです。ただし、慣れてない

人がこれをやると、しばらくの間、電車を見たくなくなるので、注意が必要です。

 

さて、具体的な日程ですが、まず、最初だけは、新幹線を使って、宮城県の古川

まで行きます。日程に余裕があれば、最初から青春18きっぷを使うのですが、1

2日のスケジュールなので、致し方ありません。

 

古川では、いよいよ、青春18きっぷの出番です。ここから陸羽東線に乗って、

鳴子温泉に向かいます。

 

 古川11:15→(陸羽東線)→鳴子温泉12:02

 

鳴子温泉では、以前にも行ったことのある潟沼(時間帯によって、水面の色が変

わる美しい湖です。湧き出す水の水質が、刻一刻と変わっているそうです。)と

いう場所に行きたかったのですが、駅に着いてから知りました。

 

 落石により通行禁止

 

と。

 

いきなり出鼻をくじかれましたが、駅前で足湯につかりつつ、次の電車を待ちま

す。乳白色で、温泉らしい温泉です。鳴子温泉を出ると、そのまま一気に日本海

側の余目まで抜けます。この区間は、山の中を走って日本を横断するため、山並

みや、森の緑が非常にきれいです。

 

 鳴子温泉13:05→(陸羽東線)→新庄14:09

 

 新庄14:14→(陸羽西線)→余目15:05

 

余談ですが、余目は、あま「る」め、と読むのですね。あま「り」め、だと思っ

ていました。

 

さて、この余目駅では、食料品店 兼 お土産屋さんのようなところで、食料を調

達しました。中でも、三元豚のメンチカツ(100円程)なるものを買ったのです

が、予想外に美味しくて感動しました。東京のスーパーでも見かけるような、揚

げた後にパック詰めされたもので、旅行者が食べるというより、主婦が食卓のお

かずとして買っていくようなものですが、無性に肉が食べたくなって買ってみた

ところ、大当たりでした。こういう発見があるのも、ローカル線の旅の醍醐味で

す。

 

腹ごしらえを済ませた後は、日本海側を、新潟まで進みます。

 

 余目15:45→(羽越本線)→村上18:03

 

 村上18:49→(羽越本線・白新線)→新潟20:02

 

この区間(~村上)は、電車が日本海に沿って進むため、海の景色が非常に綺麗

です。指定席券を買えば乗れる快速列車「きらきらうえつ」も走っていますが、

今回は、あえて普通電車をチョイス。文字通り、カタンコトンと音をたてながら、

各駅停車の古めかしい車両で、新潟に向かいます。これぞ、電車旅、という感じ

です。

 

新潟に着くと、ホームの駅そばで腹ごしらえをします。東北や信州のエリアでは、

駅そばのクオリティが非常に高く、よく利用します。今回の新潟駅の駅そばも美

味でした。その後は、本日の宿がある、長岡を目指します。

 

 新潟20:24→(信越本線)→長岡21:38

 

この頃になると、感覚が麻痺してきて、電車で1時間なんて、乗ったうちに入ら

ないくらいの気持ちになっています。

 

この日は長岡で1泊です。

 

翌日、通常であれば、あっちいったり、こっちいったり、とするのですが、今回

は、早めに東京に帰る予定のため、まっすぐ東京を目指します。

 

 長岡8:36→(上越線)→水上10:32

 

水上駅ですが、接続する電車の乗り換え時間が短く、いつも下車せずスルーして

しまうので、今回は、1時間ほど滞在してみました。駅前には、いくつかお店が

並んでいて、お焼きや、現地の果物のジュースなどをいただきました。

 

その後は、高崎を経由して、東京(上野)に戻ります。

 

 水上11:35→(上越線)→高崎12:38

 

 高崎13:23→(高崎線)→上野15:09

 

 

これで、今回の旅は終了です。長岡→上野間の移動でしたが、意外と早く着いた

な、という印象です。特急を使っていないのに、朝に出て、夕方前には東京に着

くことができました。ちなみに、帰りの乗車時間のみの合計は、4時間45分ほど

です。

 

よく行くルートでも、電車に乗っている時間を長めにすると、また、違った感覚

が味わえますね。あまり動かない旅なので、健康的ではありませんが、楽ちんで

す。

 

次回は、日程に余裕があれば、西日本方面にも力を入れて攻略してみたいと思い

ます。

●●1. はじめに●●

最近、よくメディアでも取り上げられるようになってきた「ビットコイン」ですが、 私自身も、これまで注目しており、色々と情報の発信をさせていただいております。これまでの私の知識を整理する意味でも、2週間に1度くらいのペースで、ビットコインについて、シリーズとして記事を書いていこうと思います。これまでの記事と重なる点もあるかと思いますが、できるだけわかりやすく書こうと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

さて、ビットコインですが、皆様、どれほど馴染みがありますでしょうか。既に買っ て保有している・使っている、という方から、何か怪しい詐欺みたいなものでは ないか?と疑わしく思っている、という方まで、様々かと思います。

日本では、過去、ビットコインの取引所であるMt.GOX(マウントゴックス)が破綻したことが大々的に報道され、悪いイメージが染み付いている感が否めません。

しかし、このビットコイン、極めて革新的な技術であり、インターネットの発明に並ぶも のとも言われています。果たして、この、ビットコインは、どのようなものなの でしょうか。

今回は、このビットコインについて、その概要をご紹介させていただければと思います。


●●2. ビットコインって何だ??●●

ビットコインは、インターネットを介して送金可能な、仮想通貨の一種です。また、 現時点(この記事を書いた平成29年8月時点)で、世界で最も取引量が多い仮想 通貨です。

「仮想」通貨??バーチャルな世界のお遊びじゃないの??と思われる方もいるかも しれませんが、そうではありません。ビットコインは、現実の通貨にどんどん近づきつつあります。

まず、ビットコインで代金を支払えるお店が世界中に登場しています(数はまだ少な いですが)。日本でも、ビックカメラの一部の店舗で、ビットコインによる代金 支払を受け付けるようになったというニュースが、日経新聞などでも大々的に報 道されていました。

また、これが極めつけですが、現在、ビットコインと現金(日本円、ドル等)を交換する取引所が数多く開設されています。そのため、日本円でビットコインを買ったり、 買ったビットコインを売却して日本円にしたりすることができるようになってい るのです。

ちなみに、貨幣単位は、そのまま、ビットコイン(BTC)がよく使われますが、1ビットコ インが最小単位ではなく、0.1BTCなどでも送金することができます。最小貨幣単 位は、Satoshiで、1Satoshi=0.00000001BTCです。


●●3. ビットコインの何がそんなにすごいのか??●●

さて、単に仮想的(バーチャル)なお金、という話になれば、ビットコインは、目新しい ものではありません。Suicaなどの電子マネーは、日本でも広く普及し、使用さ れています。

では、ビットコインは、何がそんなに革新的なのでしょうか。この点は、説明の仕方は色 々あるのですが、よく挙げられる特徴としては、以下のものがあります。

1)24時間、世界中、どこにでも送金ができる

2)送金手数料が0若しくは格安である(そのため、特に、  手数料の高い海外送金で、メリットが大きい)

3)特定の中央管理者がおらず、かつ、ビットコインの 保有情報は、世界中のコンピューターがコピーを持っているため(P2P技術)、極端な話、住んでいる国が潰れたとしても、ビットコインは残る

4)銀行口座にあたるビットコインアドレスは、誰でも、誰の許可も得ずに作成することができる

5)ビットコインのシステムは、データの改竄や二重使用の防止の措置が施されており、2009年の利用開始から、現在に至るまで、一度もシステムが停止することなく、稼働し続けている


この中でも、特に革新的なのは、3)に記載した中央管理者がいない、という特徴です。たとえば、銀行預金を例にとれば、銀行が中央管理者になっています。交通系電子マ ネーであれば鉄道会社が中央管理者です。しかし、ビットコインには、そのよう な中央管理者がいないのです。

ええ??管理者がいないのに仮想通貨が発行され、交換できるなんで、そんなこと不可じゃないの??と思われる方もいるかもしれません。しかし、ビットコインは、これを可能にしたのです。この詳しい仕組みについては、今後、解説しますが、ごくごく簡単に言えば、

  ・解くのは時間がかかり、答え合わせは一瞬でできる問題が出題され

  ・それを世界で一番最初に正解した者が、取引台帳に、新たに発生したビットコインの取引を書き込むことができ、

  ・対価としてビットコインを受け取る(システム上、ビットコインが自動的に発行され、対価の一部として支払われる)

  ・以上のサイクルを約10分おきに繰り返す(問題は、
   毎回変わる。)

という仕組みを採用することにより、特定の中央管理者を不要としています。

そのため、ビットコインでは、「管理者が倒産して、仮想通貨が使えなくなる」という態は起こりません。上記にも書いたとおり、例え今住んでいる国が破綻したとし ても、ビットコインは残ります。そのため、電子化された金のようだとして、 「デジタルゴールド」などとも表現されています。現に、自国の通貨が信用でき ない国などでは、自国通貨の代わりに、ビットコインが流通しているところもあ ります。


●●4. 終わりに●●

いかがでしたでしょうか。ビットコインの概要について、ざっくりと触れさせていただき した。ビットコインの特徴が、少しでも伝わったのであれば幸いです。次回は、 実際の使用方法などをご紹介したいと思います。

●はじめに

いわゆる事故物件、例えば、マンション室内で過去に自殺や他殺などがあった場合、その事実を知らされずにマンションを購入した買主は、売主に対し、一定の要件のもと、瑕疵担保責任を追及することができます(また、仲介業者に対して説明義務違反の責任追及がされることもあります。)。

こういった問題は、人によっては、全然気にしない方もいるかもしれませんし、マンションの構造に物理的な欠陥が生じるわけではありません。しかし、多くの人にとっては、やはり、心理的に気になりますし、周囲で噂されるなど、住み心地の良さを欠く面は否めません。

こういった、物理的には欠陥はないのだけれども、心理的に住み心地の良さを欠く、という状況は、心理的瑕疵と呼ばれ、裁判実務でも、一定要件のもと、瑕疵担保責任が認められています。

よく例として挙げられるのが、冒頭に挙げた自殺などのケース(※)ですが、裁判例を見てみると、少し、イレギュラーなものもあります。それは、家がまだでき上る前、建築現場で自殺がおこったというケースです。

※なお、確かに、過去、部屋で自殺があったようなケースでは、心理的瑕疵が肯定される傾向にありますが、絶対ではなく、諸事情を踏まえて、瑕疵が否定される場合もあることには注意が必要です。



●東京地裁平成24年11月6日判決

この点に関する裁判例として、東京地裁平成24年11月6日判決があります。事案は、建築現場において、現場所長が自殺(足場に紐をかけた首吊り自殺)したというものです。具体的な経緯については、判決において、「隣地居住者からのクレームによりストレスを募らせ,それに抗議する趣旨で自殺を決意」したと認定されています。

論点は複数ありますが、心理的瑕疵との関連では、
  ・請負人側から代金請求がなされたこと
に対し、
  ・注文者側が、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権などをもって
   相殺を主張
して、争われました。

これに対し、裁判所は、瑕疵担保責任(心理的瑕疵)を認め、建物について3割の減価が生じたとして、その損害賠償を認めました。さらに、同裁判例では、請負人の使用者責任として慰謝料100万円の請求も認められています。

事故物件の例との比較では、マンションの室内での自殺か、室外の足場での自殺か、という違いはあります。しかし、この点に関して、本裁判例は、「本件事故がどの程度記憶に残り続けるかを判断するにあたり,建物の内部で発生した自殺と区別すべき理由はない」と判示しています。



●裁判例の分析

従来、事故物件などにおける心理的瑕疵に関しては、裁判例上、
  ・通常一般人を基準として、
  ・住み心地の良さを欠くと感ずるような心理的に嫌悪すべき事由
    ないし
   嫌悪すべき歴史的背景
が認められるかが、判断基準とされてきました。ごく簡単に言えば、人が嫌がるかどうか、ということですが、この基準だけではかなり抽象的です。

そこで、各裁判例では、上記要件を判断するために、さらに詳細な事実についても触れられています。明示的に規範が定立されている訳ではありませんが、心理的瑕疵については、
 ①死亡の態様
 ②報道により周辺住民に知れ渡っているか
  (特に死亡の態様が詳細に伝わっているか)
 ③(マンションなどの場合)事故は居住スペース部分で発生したか
 ④建物が居住目的のものか
 ⑤事件から年数が経過しているか
等々の細かな要素を踏まえて、総合的に判断されているようです。


例えば、①死亡の態様が凄惨なものであれば、心理的に嫌だと感じる人は多くなるでしょうし(瑕疵肯定の方向)、②報道で死亡の詳細が周囲に伝わっていれば、周囲の噂などがたって、住み心地の良さは害されます(瑕疵肯定の方向)。逆に、③居住スペースとは離れた共用部分で人が亡くなったという場合は、嫌悪感も低下しますし(瑕疵否定の方向)、④事業目的であれば、居住目的と比べて、許容範囲も広がるという見方もできます(瑕疵否定の方向)。また、⑤事件から年数が経過していれば、心理的な嫌悪感は風化するとも言えます(瑕疵否定の方向)。

これらの要素は、建築現場のケースであっても同様に当てはまると考えられますし、上記裁判例でも、これらの点へ言及されています。

ただ、建築現場での自殺というケースでは、⑤については、何十年も経ってから紛争になる、ということは考えられません(何十年も経てば、そもそも、時効になってしまいます。)ので、わざわざ要件に挙げるまでもないかもしれません(つまり、当然、事件から年数は経過していない、ということになります。)。


さて、実際、上記裁判例を、この要素に従って分析すると、どうなるでしょうか。裁判例では、それぞれ、①~④に関して、以下のような判示がなされています。

 ①
  →注文者とも面識のある現場所長の首吊りによる自殺である

 ②
  →周辺住人などにも広く事情が知れ渡っている(そもそも、
   周辺住人からのクレームに起因して自殺した、という背景事情
   がある)

 ③
  →建物の内部で発生した自殺と区別すべき理由はない

 ④
  →子供と住むためであった


いずれも、心理的瑕疵を肯定する方向に働く事情が認定されていますね。結論的に、瑕疵担保責任が認められたことにも頷けます。



このように、裁判例では、細かな要素に基づき判断がされており、冒頭でも申しましたとおり、

  自殺=瑕疵

と安直に判断することはできません。心理的瑕疵があるか否かは、上記要素など総合考慮した、ケースバイケースの判断が求められ、自殺であっても心理的瑕疵なしとされる場合もありますし、不慮の死亡事故であっても心理的瑕疵ありとされる可能性はあると思います。

月や火星等の天体を所有することはできるのでしょうか。

“所有する”とは、法的に言えば、動産又は不動産に対して所有権を有するということですが、月や火星等の天体に対して所有権を有することはできるのでしょうか。

 

宇宙条約2条は「月その他の天体を含む宇宙空間は…(中略)国家による取得の対象とはならない」と規定しています。しかし同条は、あくまでも「国家による取得」を禁止しているに過ぎないので、私人による取得は禁止していない、と反対解釈することによって月の土地を販売する会社があります。

 

「(※私人による取得は禁止していないという)盲点を突いて合法的に月を販売しようと考えた同氏(※アメリカルナエンバシー社CEOのデニス・ホープ氏)は、1980年にサンフランシスコの行政機関に出頭し所有権の申し立てを行ったところ、正式にこの申し立ては受理されました。

これを受けて同氏は、念のため月の権利宣言書を作成、国連、アメリカ合衆国政府、旧ソビエト連邦にこれを提出。

この宣言書に対しての異議申し立て等が無かった為、LunarEmbassy.LLC(ルナ・エンバシー社:ネバダ州)を設立、月の土地を販売し、権利書を発行するという「地球圏外の不動産業」を開始しました。」

(株式会社ルナエンバシージャパン(http://www.lunarembassy.jp/shop/about)より)

 

月の土地を販売するには、月の土地に所有権を有していることが前提になります。そもそも土地に法律上の所有権を及ぼすには、その土地がその国の領土であることが必要になりますが、ひとまずそれは措いておき、今現在、所有権概念が(地球上の)日本の土地と同じように月の土地にも妥当するのかを検討してみます。

 

所有権とは、客体を一般的・全面的に支配する物権のことをいいますが(我妻榮著「新訂 物権法(民法講義Ⅱ)」257頁)、ある土地に所有権を有していると、その土地を売却・賃貸したり、その土地上に建物を建築したりする等、自由に使用収益できることになります。

 

この所有権は土地の上下に及びます(民法207条)。そのため、字句通りにそのまま解釈すると、地下はマントルを突き抜けて地球の核まで、上空は宇宙の果てまで所有権が及ぶ…といったら、常識的に考えてあり得ないことは明らかです。

例えば日本の法令でも、40m以上の地下は、行政から使用認可を得られれば、土地所有者の意思を問うことなく使用することが可能になりますので、この法令には、40m以上の地下は通常物理的に利用できないので所有権が及ばなくてもいいでしょ、という価値判断が反映されています。土地の遥か上空において、ヘリコプターや飛行機が通過する際にその土地の所有者の許可を必要とすることが妥当でないことも当然といえるでしょう。

そのため、所有権は、物理的に管理・利用が可能な範囲(所有権者の利益が観念できる範囲)に限って及ぶと考えるべきです。

 

この考えは、欧州では法律上明文化しており、ドイツ民法は「土地所有権は、これを禁止するについてなんらの利益のない高所又は深所における侵害を禁ずることはできない」とあり、スイス民法は「土地の所有権は、その行使につき利益の存する限度において空中及び地下に及ぶ」と明確に規定しております(我妻榮他著「我妻・有泉コンメンタール民法(第3版)」432頁参照)。

 

上記の会社も含め、私人で物理的に月の土地を管理・利用している人はいませんので、そもそも論として現時点では月の土地を対象とする所有権を観念することができないと考えられます。

そうすると、私人が月の土地を販売するにしても、「月の土地の所有権を移転させる」という内容の不動産販売であれば、(そもそも月の土地が米国や日本に編入されていないということもありますが、所有権概念からしても)その契約は実現可能性の無い契約として、無効ないし取り消し得る契約になってしまうでしょう。

 

この点、上記の会社のウェブサイトを見ると、

 

「私どもは、「月の土地」を楽しんでいただけることを目的としております。日本の不動産と同じように考えていただくと無理のある商品と思われます。」

http://www.lunarembassy.co.jp/faq/2008/08/nasa.htmlより抜粋)

 

としており、あらかじめジョーク商品であることを明示しています。ジョーク商品を楽しむという内容の契約とすれば問題なく成立するでしょう。

なお、ブラジルでは月の土地を販売した業者が逮捕されており、また、火星はイエメン人が所有しているというイエメンの神話があるようで、イエメン人が米国の火星探査の中止を求めてNASAを訴えた例があります(小塚荘一朗他著「宇宙ビジネスのための宇宙法入門」38頁参照)。

 

宇宙空間の利用はすべての国の利益のために行う(宇宙条約第1条)、という理念からすれば、私人が月や火星などの天体の土地を所有できるようになるのは難しいかもしれません。しかし、将来技術が進歩して誰でも月や火星に行けるほど人間の活動領域が広がるようになれば、私人による天体所有もあり得るかもしれません。

もっとも、その頃にはVR(仮想現実)技術も今より進化して、仮想現実空間で物を所有していれば、現実に物を所有しなくても別にいい、という感覚になっているかもしれませんね。

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