カテゴリ: 企業法務一般


本日(2015年6月4日)の日経新聞朝刊の17頁の「わかる総会 ①アベノミクスと企業統治」という記事は、アベノミクスの「日本再興戦略」における「稼ぐ力」の考え方がよくまとまっています。


まずは国際的に見劣りする自己資本利益率(ROE)で示される企業の資本効率の引き上げが喫緊の課題だ。投資家が企業の背中を押し、投資の成果を享受できる仕組みを作る。それが成功すれば企業、投資家、消費者の間でお金がうまく循環し、経済全体の成長力が高まる。

そのための最大のカギが企業統治の整備だ。経営者の「内輪の論理」で進められがちだった日本企業の経営に社外取締役など第三者の目を取り入れ、株主のチェック機能を生かしながら企業の成長力を高めていく。

従来日本の企業統治は不祥事対応など「守り」に焦点が当たりがちだった。アベノミクスは今回、企業統治を「攻め」に使おうとしている。


いまのところ社外取締役制度がこのように機能するか否かは未知数ですが、機能するようにしなければならないというのが我々の課題であることは間違いありませんね。 

201563日の日本経済新聞朝刊15頁の「社長選任、賛成比率高く 社外取締役導入 ファミリーMなど」という見出しの記事から。



 2月期決算会社の株主総会で、ファミリーマートやしまむらなど、新たに社外取締役を迎えた企業のトップ人事への賛成票比率が高まった。経営に社外の視点を取り入れることを株主は前向きに評価しているといえる。

 議決権行使助言王手の米インスティチューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、社外取締役を導入しない日本企業の経営トップの選任案に反対票をとうじるよう、2013年から呼びかけてきた。


私の理解では、「社外取締役を選任した方が、経営が効率的なものになるのか? または、企業不祥事がなくなるのか?」という問題については、決定的な実証的な数字があるわけではないが、海外の投資家は、社外取締役のいる会社を積極的に評価しており、その評価を重視すれば、導入した方がよいだろうということで導入された(面が強い)と理解しています。この記事からすると、一応、社外取締役制度導入の立法事実は裏付けられており、かつ、一定の成果が発生しているということになりましょうか。

(もちろん、実務に携わる者としては、この制度をより良いものにしていかなければなりませんね。)

 


 

新事務所(飛田&パートナーズ法律事務所)開設に伴い、ブログの更新が滞ってしまいましたが、本日からまた続けようと思いますので、よろしくお願いいたします。

まずは、社外取締役の話題です。


日本経済新聞2015年6月2日朝刊3頁の「社外取締役『複数』9割」という見出しの記事から。


「東京証券取引所は1日、上場企業の経営規範を定めた企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の適用を始めた。課題となる経営から独立した社外取締役の選任について主要100社を調べたところ、9割近くが複数を選任することが分かった。昨年度より2割近く増え、社外取締役に締める女性の比率も2割に迫る。今月下旬に本格化する株主総会を前に、企業はコードが求める多様性の確保を急ピッチで進めている。」
 

「独立した取締役が不在または1人のみの企業はいすゞ自動車株式会社など13社(未定を含む)と、前年度の26社から半減する見通しだ。」


この記事でいう主要100社とは「5月下旬時点で株式時価総額の上位100社」だそうです。つまり、日本のトップ企業100社といったところでしょうか。私の予想では、トップ100の企業については、ほぼ100%、複数の社外取締役の選任を表明するのではないかと思っていましたので、「9割近く」という数字にはやや予想が外れたような感じがしますが、まだ「未定」という企業もあるようですので、最終的な数字はもう少し増えるのではないかと思っています。

この6月の株主総会で、監査等委員会設置会社への移行を決議する会社がどれだけあるのかも注目ですね。

金融・商事判例2015515日(№1466)号の巻頭の「金融商事の目」の弥永真生教授の『基準日はこのままでよいのか』という記事にはハッとさせられました。


現行会社法上、基準日から権利行使日までの期間として3か月間あけることが認められていて(会社法1242項括弧書)、実務では、3月末決算の会社は3月末を基準日にして、6月末を株主総会日とするような運用がされていますが、この3か月間空けることを認めることについて、弥永教授は実例を挙げて疑問を呈しています。


たとえば、
最近、取締役の選任に関して、大々的なプロキシ―ファイトが行われた
K家具の案件では、基準日から株主総会までの間に、約11%の大株主が総会直前までに約5%まで持株比率を下げていたのに、基準日時点の約11%の比率に従って議決権を行使したのは適当だったのか?とか、
最近話題になった
A社の定時株主総会では、全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズアウト手続に係る株主提案で、「承認可決されて当社が上場廃止となることが決定した場合には、株主の皆様の長年の資本貢献に報いるため、別途、上場廃止に伴う特別配当金83円(1株当たり)」を支払うという議案が承認可決されたが、そもそもこの議案が提出されていることが判明したのが基準日後だったので、このような配当金が支払われることを前提としない価格で株式を取得した株主にこの議案を判断させることが適当だったのか?
というのです。


とても説得力のある意見ですが、私が驚いたのは最後のまとめの部分。


このような不都合をどのように解消するかを真剣に考えるべき時が来ているのではないかと思われる。欧米では、議決権行使の基準日は決算日とは無関係に設定されており、総会の会日と基準日の間が60日空いているのでも長い方であり、イギリスなどでは48時間前とされている。


えっ! 48時間?

48時間だと、招集通知を送った株主が、株主ではない、というような事態も発生するように思いますので、どのような制度なのか非常に興味がありますが、しかし、それにしても「48時間」とは驚きですね。

2015年4月13日の日本経済新聞朝刊15頁に『社外取締役、報酬増える』という見出しで、興味深い記事を発見しました。


社外役員紹介のプロネッド(東京・港、酒井功社長)は、会社と利害関係のない独立社外取締役を対象にした意識調査をまとめた。年700万円以上の報酬を得ている人が全体の65%と2年前の調査から25ポイント増えた。M&A(合併・買収)などの案件で取締役会で積極的に議論しているとした人は7割にのぼった。


同記事の中に出ている円グラフによると、

500万円未満                                              15%

500万円以上700万円未満                     20%

700万円以上1000万円未満                  35%

1000万円以上1500万円未満              29%

1500万円以上                                          1%

ということです。
記事によると「増えた」とのことですが、きっと欧米の水準からすると、これでもかなり低いのでしょうね。企業側・株主側とっては「たったこれだけのコストですばらしい効果が出た」というになるとイイですね!

今日(2015年4月7日)の日本経済新聞朝刊13頁の記事ですが、低ROE企業のトップ人事について、株主総会で反対する株主が急増しているそうです。主として、外国人の株主が反対しているようなのですが、記事によると、米議決権行使助言王手のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズが今年2月に「ROEの過去5年間の平均と直近決算期がいずれも5%を下回る企業に対して、経営トップ選任の反対を推奨する」との指標を導入したことが影響しているとのこと。株主から預かった自己資本で多くの利益を出していれば企業価値を高めているが、逆なら価値を壊しているとみなされるとのことです。

上記の米議決権行使助言会社の指標導入のほか、最近我が国では、スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが作られましたので、株主による経営監視の目はますます厳しくなりますね。低
ROE企業のトップ人事には要注意というところでしょうか。


2015年4月2日の日本経済新聞朝刊28頁の上村達男早稲田大学教授の『会社法の再構築こそ王道』という論考についてですが、私としては、少々首をかしげざるを得ませんでした。上村教授は、最近成立した東証のコーポレート・ガバナンスコードについてですが、次のように述べています。□の中が上村教授の論考の引用で、⇒以下が私のコメントです。

統治指針は、金融庁・東京証券取引所が主導して策定された。社外取締役のような会社の機関構造の根幹に関する問題が、なぜ法務省担当ではなくて金融庁なのかについて、きちんとした説明が必要である。有力な学者には、こうした作業を金融庁設置法違反と断ずる向きもある。> 


⇒ だって、コーポレート・ガバナンスコードは東京証券取引所の規則として制定されることを予定していたから、東京証券取引所とその所轄官庁の金融庁が主導したということでしょう。

結果的に、新しい会社法の社外取締役制度は、有報提出会社(米国の情報開示会社に該当)9500社ほど、上場規程に基づく今までの独立役員制度は、全上場会社3500社ほど、そして今回の統治指針による社外取締役制度は、そのうちの東証上場の2500社ほどに適用されることになる。こうした適用区分について、合理的な説明は可能だろうか。


⇒ コーポレート・ガバナンスコードは、上場会社の中でも、1部および2部上場の(上場会社の中でも)規模が大きい会社に適用するのが適当と判断したからで、合理的な説明は可能であると思います。

会社法における大小会社の区分立法は1973年の国会付帯決議以来の関心事であり、区分の基準としての規模の基準、閉鎖性の基準、公開性の基準を駆使して長年にわたって議論してきた。統治指針策定の際の有識者懇談会には、会社法研究者は1人しかいないが(法制審議会会社法制部会には12人)、ルールの区分適用について真剣な議論がなされたのであろうか。


⇒ コーポレート・ガバナンスコードの有識者会議のメンバーに、会社法の学者が1人しかいなかったことが不満だというように読めてしまいます。

今必要なことは、300万もの株式会社を所与の事実として受け止めて、新たな区分立法の試みを一から展望することだろう。〔中略〕

例えば、会社法における大会社という概念に代えて、有報提出会社を対象に「公開会社」という概念を中核にする「公開会社法」を策定する構想がある。〔中略〕

法務省と金融庁の共管として公開会社法を策定する構想は当初、日本取締役協会によって、その後、それを引き継ぐ形で早稲田大学の研究会によって議論され、要綱案も提案されている。


⇒ 新たな立法を作っていたのではこれから何年かかるかわかりません。だから、東京証券取引所は自分でつくったということでしょう。最後の一文は、上村教授が一番言いたかったことかな。

本日(4月1日)の日本経済新聞の1面に、『社外役員選任に基準』『第一生命 株主総会で反対も』という見出しで、第一生命が、その有する株式について、議決権行使の基準を厳しくするという趣旨の記事が報道されています。

 

 直近1年間の取締役会や監査役会への出席率が半分未満の社外役員は再任に反対する。投資先企業の株式を3分の1以上持つ大株主から社外役員を選ぶ場合も反対する。

 同族企業などで社内役員や親や兄弟など一定範囲内の親族から独立社外役員を選ぶことにも反対する。社外役員が経営陣から独立した立場で経営を監視し、株主の利益を代弁する役割を果たせるかどうかを重視する。

 在任期間が12年を超す監査役の再任に反対したり、赤字が長期間続いている企業のトップの再任に反対したりする基準も設けている。今回の基準の追加で役員選任の判断を一層厳しくする。

 

このほか、記事では、投資先企業に直接働きかけるために、管理職7人体制で特別チームを立ち上げることなどが触れられています。

 

読んでみると、当然のような基準ではありますが、従来「生命保険会社は保険の営業目的で多くの企業の株式を保有し、企業への『物言う』姿勢は希薄だった。」とのこと。つまり、営業面に悪影響が出る可能性があったので、あまり厳しいことは言えなかったということでしょう。それが、このように、新基準と特別チームで、厳しくガバナンスをチェックしていきましょう、というのですから、記事がいうように、他の大手生保にもこの動きが広がれば、実務に与える影響も大きくなりそうですね。

今後の動きに注目です。


いよいよ法務省の
HPに以下の通達(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00086.html)が掲載されました。



商業登記・株式会社の代表取締役の住所について

昭和59年9月26日民四第4974号民事局第四課長回答及び昭和60年3月11日民四第1480号民事局第四課長回答の取扱いを廃止し,本日以降,代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記及びその代表取締役の重任若しくは就任の登記について,申請を受理する取扱いとします。


これまでは、日本に住所がない者が株式会社を設立しようとするときは、日本に住所を有しているパートナーを見つけて、自分以外に、その人に代表取締役になってもらうことが必要でしたが、これからはそれが必要なくなります。

このルール変更については、今後、外国人の代表者の住所の登記の際に、本国官憲の証明書を要求するなど、外国の住所を登録する際のルールの厳格化とセットになっています。

しかし、それでも、たとえば、その会社が日本で悪いことをして、事務所等を引き払ってしまえば、裁判の際には、代表者の住所に送達せざるを得ませんが、外国送達にはかなりの時間と手間がかかるので(国によってはできないところもある。)、問題が続出するのでは?などとの批判があります。

しかし、海外から投資を呼び込むためには、この規制緩和が必要です。

また、そもそも国外に住所しかない者が経営している会社と取引をする場合には、上記のリスクを織り込んで取引をしなさいということなのでしょう。100%問題のない完璧なルール変更はできないので、私は、日本経済を活性化することを目的とする今回のルール変更に大いに期待したいと思います。

なお、さらに、法務省では、外国人の在留資格について、これまで「投資・経営」分野の長期のビザを取得するには、日本において投資対象の法人が設立されていることを要件としていましたが、この4月からは、設立しようとしている定款や事業計画書などの資料から、企業目的を確認できれば、4か月の「投資・経営」ビザを与えることにルールを変えようとしていること(入管難民法の施行規則の変更)が既に報道されています。
こちらについても期待したいと思います。

最近は上場企業のガバナンス議論がさかんですので、企業不祥事もあまり生じなくなっているのではと思いがちなのですが、そうでもないようです。3月18日に、証券取引監視委員会が、警視庁組織犯罪対策3課と合同で、ジャスダック上場のグローバルアジアホールディングスに対し、金融証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載。いわゆる粉飾決算)の容疑で強制調査に入ったようです。


(2015年3月18日日本経済新聞夕刊17頁から)

 関係者によると、同社は2013年3月期の連結決算などで、資金を不正に水増しした有価証券報告書を提出した疑いが持たれている。同社の12年3月期は4億7600万円の債務超過だったが、13年3月期は一転して2700万円の資産超過だった。

 同社は資産が増加した理由として「新株予約権発行などで資金を調達した」と公表したが、実際には調達した資金が社外に流出し、債務超過だった疑いがあるという。監視委は上場廃止基準にあたる2期連続の債務超過を避けるため、決算を粉飾した疑いがあるとみているもようだ。


 同記事によると、「同社では14年にも新株予約権の発行で払い込まれた約2億円が全額引き出され、支出先が不明となる問題が発覚した」ということですので、ガバナンスに相当問題があったのでしょうね。


 まだ、粉飾決算であったことが確定したわけではありませんので、軽々しいことはいえませんが、企業法務に携わる者として、この事件には注目していきたいと思います。


 なお、グローバルアジア側では、HP上で、強制捜査を受けた事実を認め、 「今後、当社といたしましては、関係当局の調査に協力し、事実関係が明らかになり次第、速やかにご報告申し上げます。」とコメントしています。

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