カテゴリ: 土地区画整理組合

 今回は、「組合員である株式会社の代表者が死亡したが、実は、その会社が休眠会社らしく、新しい代表者が選任されない場合、組合はどうしたらいいのか?」という問題を扱いたいと思います。組合としては、その会社に(代表取締役ではないが)平取締役がいる場合、その取締役に対して通知することで、事業を進めたいところですが、果たしてそれで良いのか?という問題です。

 

 このような問題が実際にあるのか?という方がいらっしゃるかもしれません。
 ところが、実務をしていると、ちょくちょく出くわすのです。
 たとえば、地元の小さい不動産会社が土地区画整理事業の始まる前に、施行地区内の土地を買って分譲して売ったが、一部形の悪い土地が売れ残っており、そうこうするうちに、その不動産会社は休眠状態に陥り、社長が死亡後も後継者もいない、といった事案です。

 

 まず、この株式会社が、取締役会が設けられている取締役会設置会社の場合はどうなるでしょう。取締役会設置会社の場合、代表権を有する代表取締役以外の平取締役には業務執行権が認められておらず(会社法348条1項括弧書)、組合の行う換地処分等の行政処分を受領する権限もありません。そこで、この会社の取締役会が新しく代表取締役を選任しないのであれば、組合としては、会社法351条2項に基づき、裁判所に一時代表取締役の選任するよう申立てなければならないということになります。

 

 次に、その会社が、取締役会を設置していない会社の場合はどうでしょうか?このような株式会社の形態は、平成18年に新会社法が施行されることにより認められるようになりましたが、有限会社から株式会社に移行した会社や、新会社法施行後に設立された小規模な会社には多い組織形態です。
 この場合、会社法の定めでは、各取締役が原則として会社の業務を執行し(会社法348条1項)、会社を代表する権限を有しますので(会社法349条1項・2項)、他に取締役がいれば、その取締役に通知することができそうにも思うのですが、実は、代表取締役を選任した場合には、他の取締役は代表権を有しないこととなっており(会社法349条1項但書)、仮に選任された代表取締役が死亡したとしても他の取締役の代表権が復活することはないと解釈されています(相澤哲編『立法担当者による新・会社法の解説』103頁)。
 したがって、取締役会を設置していない会社にあっても、代表取締役が選任されている場合には、その代表取締役が死亡した場合には、新たに株主総会等で代表取締役を選任してもらわなければならないということになります。選任されないのであれば、結局、会社法351条2項に基づき、裁判所に一時代表取締役を選任してもらわなければならないということになるのです。

 

 では、裁判所に一時代表取締役を選任してもらうにしても、その手続きにはどれくらいの費用と時間がかかるのか?というのを知りたいですよね。
 これについては、私の経験から、各管轄裁判所においてスポット申立てという簡易な申立てを認めているかによる、ということが言えるかと思います。スポット申立てというのは、裁判所によって選任された一時代表取締役には、組合からの書類の受領と、もし将来的に清算金の交付が見込まれるのであれば、その清算金の受領をしていただきたい(ほかの業務はありません)と一時代表取締役の職務を限定して申立てをするのです。その際に、一時代表取締役候補者として地元の弁護士を推薦することができると、裁判所の手間が省けますのでスムーズになります。この辺は、裁判所にいかに事案を理解していただき、手続きを円滑に進められるかという問題ですので、まさに弁護士の腕の見せ所だと思います。

 

 弊事務所ではスポット申立ての経験がありますので、もし類似案件にお困りのときは、遠慮なくご相談いただければと存じます。

土地区画整理組合の最高意思決定機関は組合員で組織される総会ですが(土地区画整理法30条、31条参照)、その総会の招集権者については、土地区画整理法32条1項及び2項において、通常総会と臨時総会のいずれについても「理事」と定められています。
 通常は、理事長が組合を代表しますので、理事会の決議を経たうえで、理事長の名義で総会を招集することが多いでしょう。
 では、組合員が総会を招集することができないか?についてですが、これについては、土地区画整理法32条3項が「組合員が組合員の5分の1以上の同意を得て会議の目的である事項及び招集の理由を記載した書面を組合に提出して総会の招集を請求した場合においては、理事は、その請求のあった日から20日以内に臨時総会を招集しなければならない。」と定めています。したがって、個々の組合員も、組合員の5分の1以上の同意を得れば、理事に臨時総会を招集するよう請求できることになります。

 実務的に、組合員が、5分の1の同意を得て、臨時総会の招集を請求することなどあるのか?と疑問に持つ方もいらっしゃると思いますが、これが結構あるのです。特に、組合の事業資金が不足して、組合員に賦課金を課そうなどと議論し出すと反対派グループが組織され、5分の1の同意を得た総会の招集請求に到るということが多いようです。

 ところで、この総会招集請求がなされたときにいつも頭を悩ませるのが、「理事は、その請求があった日から20日以内に臨時総会を招集しなければならない」という文言の解釈です。これは、単に20日以内に招集通知を発送すれば良いのか?それとも20日以内に総会を開催しなければならないのか?という問題です。仮に、20日以内に総会を開催しなければならないとすると、土地区画整理法32条8項本文は「総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の5日前までに、会議の日時、場所及び目的である事項を組合員に通知しなければならない。」と規定していますので、組合員から請求があった日から15日後までには、理事会を開催したうえで、招集通知等の印刷、封入れを終え、組合員に発送しなければならないということになりますので、かなり忙しいのです。

 この点、会社法では、例えば株式会社の取締役会の招集において、定款又は取締役会で招集権者として定められた取締役(通常は代表取締役)以外の取締役も取締役会の招集を招集権者たる取締役に請求することができると規定し、その場合、「請求のあった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。」(会社法336条3項)と規定しています。

 つまり、請求があった日から2週間以内の日を開催日とする取締役会の招集通知を、請求があった日から5日以内に発しなければならないことが明確になっているのです。

 しかし、土地区画整理法では、この点の記載が明確ではなく、どのように判断したらよいのか迷います。
 で、私も次の文献を調べてみたのですが、この点に関する記載がないのです。
(1)「逐条解説 土地区画整理法(第2次改訂版)」 国土交通省都市局市街地整備課監修 土地区画整理法制研究会編著

(2)「条解・判例 土地区画整理法」大場民男著

(3)「実務問答 土地区画整理」土地区画整理法制研究会編

(4)「特別法コンメンタール 土地区画整理法」松浦基之著

 ただ、(4)の松浦先生のコンメンタールには、32条7項の「第14条〔設立の認可〕第1項に規定する認可を受けた者は、その認可の公告があった日から1月以内に、最初の理事及び監事を選挙し、又は選任するための総会を招集しなければならない。」との規定の解釈について、「公告のあった日から1カ月以内に総会を開くという趣旨である。招集が1カ月以内であれば、総会の日は1月を超えてもいいというのではない。」(167頁)とあります。これと同様に考えるのであれば32条3項の「20日以内に臨時総会を招集しなければならない。」も20日以内に総会を開催しなければならないと読むのでしょう。

 で、お前はどう考えるか?ですって。

(1)   32条2項の文言からは、「20日以内に招集すれば良い」と読むのが自然なようにも感じますが、そうすると20日以内に招集通知を発送すれば、総会は1カ月後でも2カ月後でも良いなどということになりかねませんので、総会開催についての時間的縛りが曖昧になってしまいます。

(2)   仮に、20日以内に招集通知を発送すればよいと考えて、実際にそうしたが、あとで20日以内に総会も開催しなければダメ、などと裁判所で判断された場合、総会決議が無効になるリスクも存在することになります。

したがって私は、保守的に考えて、組合には「20日以内に総会を開催するのが適当」とアドバイスしています。この点については、土地区画整理法も会社法のように解釈の余地がないほど明確に定めてほしいですね。

このブログで何度か取り上げた岩手県滝沢市の滝沢村室小路土地区画整理組合の破産案件ですが、平成26年3月26日に盛岡地方裁判所から「本件破産手続を終結する」との終結決定が出て、土地区画整理手続としても、同年3月28日付で岩手県知事より解散認可決定が出ていました。

破産手続の終了により、法人としての土地区画整理組合は消滅するはずですので、あえて解散認可決定を出す必要があったのかちょっと疑問に思いましたが(破産の終結決定が確定するまでは組合は存在しており、その間に行政手続としても組合が解散したことを明確にしておきたいということなのかもしれませんね)、いずれにしても、これで土地区画整理組合の破産第1号案件は終了したことになります。

はじめてということもあり、関係者の皆さんはさぞ大変だったのではないかと想像しますが、土地区画整理組合に破産手続利用の途を開いたという意味で、この案件の意義は非常に大きいと思います。 

このブログでは、岩手県の土地区画整理組合で、破産の第1号案件の土地区画整理組合について詳細は不明と報告していましたが、知り合いから、岩手日報平成25年7月24日の記事をご送付いただきました。
同記事によると、第1号案件は、岩手県滝沢村の室小路土地区画整理組合であり、盛岡地裁から、平成25年6月28日付で破産手続開始決定が出ているようです。
以下、同記事の引用ですが、
「区画整理のコンサルタントらによると、組合は一時、約18億円の負債を抱えていたが、大口債権先の債権放棄や組合員への賦課金により大幅に債務を縮小。保留地は全て売却し、換地も既に終え、債務を精算し解散する方向だった。しかし、債権放棄を見込んでいた2社とは交渉が不調に終わり、支払い能力も乏しいことから6月に破産を申し立てたという。解散には債務解消が必要だった。組合員に新たな負担は生じない。」
とのことです。
ここで重要なのは、既に換地処分を終えているということ。換地処分後の組合を破産させることについては、比較的問題が少ないのです。

なお、昨年12月に発生した新潟県の白根第一土地区画整理組合についてですが、こちらも、これまで換地処分済かどうかわかりませんでした。しかし、新潟市のホームページ上に、換地処分公告年月日として、「平成8年2月2日(第1工区)、平成20年12月14日(第2工区)」との記載がありますので、換地処分済と考えられます。

したがって、昨年発生した2つの土地区画整理組合の破産案件は、いずれも換地処分済の案件であり、破産させることについて比較的法的障害が少なかったものということができるでしょう。

今後の理論的及び実務的課題としては、換地処分前の組合について、どうやって破産させることができるか?ということになりましょうか。

専門的な話になって大変恐縮ですが、私の取扱業務の一つに「土地区画整理組合の破綻処理」というものがあります。実は、その分野で、かなり影響の大きな出来事がありました。それは、このブログの1月15日の記事で紹介しましたが、土地区画整理組合について現実に『破産』事例が発生したということです。

土地区画整理組合というのは、土地区画整理法という特殊な法律によって設立される法人で、「街づくり」という公共的な役割を担っていますので、長い間、破産によって消滅させてもいいの?ということが議論されていました。学問的には、「土地区画整理組合に破産する能力があるのか?」という「破産能力」の問題になります。

かつては、土地区画整理組合は公法人だから破産できないというのが通説でした。しかし、バブル崩壊後、経済的に破綻する組合が沢山発生するようになり、それを補助する立場の市町村などの地方公共団体も、支援するだけの体力が無くなっていて、いわゆる“凍結組合”といわれるような組合も発生している事態になっていましたので、最近では、もはや破産させざるをえないのでは?という論調が強くなっていたかと思います。

そこで、私は、2011年ころのことですが、この問題について、破産法の大家の大学教授に相談しに行ったことがあります(その先生は弁護士もされていました。)。その学者先生は、きっぱりと「土地区画整理組合だからといって破産できないということはない。」とおっしゃられ、私としては、(土地区画整理組合にも破産手続が利用できるのが適当と考えていましたので)意を強くして帰ってきましたが、実はその後も土地区画整理組合が破産手続を利用したという実例が出ない状態が続きました。

ところが、昨年12月、ついに新潟県の白根第一土地区画整理組合について、新潟地方裁判所が破産手続開始決定を出したのです。しかも、このことを報道する新聞記事によれば、岩手県の土地区画整理組合でも破産手続開始決定が出ており、全国で2例目ということでした。

土地区画整理組合の破産を考えるときは、換地処分という土地区画整理事業の最大のイベントを終える前なのか、終えた後なのか、というところが非常に重要ですが、これら2つの事案については、まだ詳細がわからないため、あまりコメントができません。しかし、少なくとも、これまでタブー視されていた土地区画整理組合の破産が現実にあり得ることが明らかとなりました。個人的には、新年早々から、少々閉塞感のあった土地区画整理組合の破綻処理に新たな可能性を感じさせるビックニュースでした。

「土地区画整理組合は破産できるのか?」という問題(いわゆる『土地区画整理組合の破産能力』として議論されている問題)については、「できない」という見解(従来の通説)と「できる」という見解(最近の有力説)とが対立しているが、実務的には、これまでに土地区画整理組合の破産事例は一例も存在しない、という理解でした(詳しくは、こちらをご覧ください。)。

ところが、遂に最近発生したようです。

クライアントから教えていただきましたが、昨年(平成25年)12月19日に、新潟の白根第一土地区画整理組合について、新潟地方裁判所が破産手続開始決定を出したようです。そして、この事実を報道する新潟日報の平成25年12月20日の記事によると、「土地区画整理組合が破産開始決定を受けたのは、岩手県の組合に続き全国で2例目」ということですので、既に岩手県でも土地区画整理組合の破産事例が発生していたようです。

上記の破産事例が、換地処分まで終了した組合なのか? 仮換地指定によって移転が発生していたり、保留地予定地の売却をしている組合の場合、どのように破産管財業務を進めるのか、特に換地処分前の組合の場合、破産管財人が換地処分まで行うのか等々、興味がつきないところですので、注目していきたと思います。

田舎

土地区画整理組合(以下「組合」といいます。)の事業資金で不足する場合、組合は総会の決議を経ることにより、組合員から賦課金(要するにお金です。)を徴収することができます(土地区画整理法第40条第1項、第31条第7号)。

総代制をとっている組合では、総代会の決議によっても、組合員に賦課金を課すことが認められています(同法第36条第3項、第31条第7号)。

ところで、総会や総代会で賦課金の徴収について賛成が得られても、組合員の中には反対者もいますので、賦課金の徴収には少なからず苦労します。

 

ただ、組合が、土地区画整理事業という公的な性質を帯びた事業を行っている公的な団体であることに鑑み、土地区画整理組合法は、賦課金の滞納者に対し滞納処分をすることを認めています。


以下の条文をご参照ください。

土地区画整理法 第41

1 組合は、賦課金、負担金、分担金又は過怠金を滞納する者がある場合においては、督促状を発して督促し、その者がその督促状において指定した期限までに納付しないときは、市町村長に対し、その徴収を申請することができる。

2 組合は、前項の督促をする場合においては、定款で定めるところにより、督促状の送付に要する費用を勘案して国土交通省令で定める額以下の督促手数料を徴収することができる。

3 市町村長は、第一項の規定による申請があつた場合においては、地方税の滞納処分の例により滞納処分をする。この場合においては、組合は、市町村長の徴収した金額の百分の四に相当する金額を当該市町村に交付しなければならない。

4 市町村長が第一項の規定による申請を受けた日から三十日以内に滞納処分に着手せず、又は九十日以内にこれを終了しない場合においては、組合の理事は、都道府県知事の認可を受けて、地方税の滞納処分の例により、滞納処分をすることができる。

5 前二項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
 

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大野屋
(弊事務所から見ると、三原橋の交差点のちょうど向かいにある足袋、手ぬぐいを売っ

ている大野屋さんです。HPによると明治元年から創業しているとのこと。店のたたず

まいから、伝統的な銀座が感じられますね。


土地区画整理組合の事業資金が不足する場合、組合は組合員から賦課金を徴収して、事業資金にあてることができますが(土地区画整理法40条1項)、組合員に賦課金を課すには、組合員で構成される総会の決議を経なければなりません(土地区画整理法31条7号。なお、総代会制をとっている組合では、総代会決議を以て総会決議に代用できます。土地区画整理法36 条1項・3項参照)。
つまり、総会の決議がない限り、組合は組合員に賦課金を課すことができないのです。そこで、組合の執行部が賦課金を課すことによって、資金不足の問題を解決しようとする場合、まず総会で賦課金決議が通るように組合員を説得する必要があります。
ただ、実は、組合員とはいっても大部分は事業に積極的に関わっている人ではありませんし、中には、事業に反対している人もいますので、組合員を説得するのは大変です。
そこで、私の経験から、賦課金の負担について組合員を説得する論理・方法というものを考えてみたいと思います。

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私は、経済的に立ち行かなくなった土地区画整理組合の代理人として、地方公共団体(市町村)に助成をお願いしたり、金融機関に債権放棄をお願いしたりする仕事をよくやらせていただいております。

その際、地方公共団体からよく言われることが、「組合に助成(補助金)を支出すると、市長が住民訴訟で訴えられて、多額の損害賠償金を負わなければならなくなるから、助成できない。」というものです。

このような発言の背景には、地方公共団体が、組合救済のために助成したところ、(市政の動きに敏感な)市民から市長等を被告として住民訴訟が提起されることが多くなったことが挙げられます(確度の高い統計資料を有している訳ではありませんが、私の実感としてそう感じます。)。
誰でも、裁判で被告にされて、損害賠償を請求されるのは気持ちが良いことではありませんので、このような住民訴訟の頻発という現象を受けて、地方公共団体が組合の助成に消極的になっている現在の傾向には、やむを得ない面もあるでしょう。

しかし、組合救済のために助成(補助金の支出)したからといって、本当に住民訴訟で負けて、市長等が損害賠償を負わなければならないのでしょうか?
答えは、No です。
もちろん、絶対に、というわけではありませんが、今のところ、組合に対する金銭的な補助金の支出が違法と判断されたケースを私は知りません。

個々のケースを説明すると長くなりますので、基本的な考え方を説明しましょう。

まず、地方公共団体は、「その公益上必要がある場合」に、寄附又は補助をすることができますが(地方自治法第232条の2)、何が「公益上必要か」否かについては、様々な行政目的を斟酌した政策的な考慮が求められるため、各公共団体の判断によるべきであり、その判断に特に不合理又は不公正な点のない限りこれを尊重すべきと考えられています。そのため、「公益上必要がある場合」の要件に該当するかどうかの判断については、地方公共団体の長等に権限付与されており、その権限行使に逸脱、濫用がない限り、適法と解されているのです(判例・通説)。

他方、おそらく住民訴訟を提起する市民側は、組合施行の土地区画整理事業は、施行地区内の地権者が、農地等を宅地に変えて、土地の値上がり益を享受しようとする事業というようなイメージでいるのかな?と思いますが、法律上はそうではなく、(確かに、「宅地利用の増進」という地権者側の利益もありますが、それ以外に)、道路、公園、上下水道等の公共施設の整備改善や健全な市街地の造成を図るといった公的な目的を有している事業なのです(土地区画整理法第1条、第2条参照)。

この点で、忘れてはならないのが、我が国では、市街地の造成等の街づくりを行う場合、地方公共団体が直接行うと反対住民等の矢面に立ち、事業がなかなか進まないため、地域住民に土地区画整理組合を設立させて、土地区画整理事業を行わせる場合が多いということです。その場合、(今は少なくなりましたが)市町村の職員が組合事務局に派遣されて、事業が進められることが多かったため、実質的には、市町村施行と変わらないわけです。このような市町村が主導し、強く関与している組合については、一層強い公的な目的を有しているということができるでしょう。

このことを更に法律的に説明すると、土地区画整理組合には公共性があるからこそ、その施行地区内に土地を有する地権者は、たとえ事業に反対していたとしても、自動的に組合員とされ(土地区画整理法第25条第1項)、土地区画整理事業のために、土地の減歩を強制される等の財産権の制限を受けることになりますし、また、土地区画整理組合の設立には都道府県知事の認可が必要とされるとともに(同法第14条)、都道府県知事に監督権が認められ(同法第125条)、さらに、都道府県及び市町村が、組合に技術的援助をするものとされているのです(同法第123条第1項)

実は、国土交通省は、バブル経済崩壊後の地価の下落の影響で経済的に破綻する土地区画整理組合が増加している状況を受け、破綻組合に対する地方公共団体の技術的助言のあり方を整理するために、平成18628日付「組合施行による土地区画整理事業及び市街地開発事業の経営健全化に向けた対応方策について(技術的助言)」を公表しています。
この組合経営ガイドラインでは、組合の経営再建の基本的な考え方として、「土地区画整理事業は極めて公共性の高いものであり、また施行地区内の地権者の権利関係を不安定にすることは避けなければならないため、土地区画整理事業を中途で頓挫させるわけにはいかず、できる限りの手段を講じ、事業の完遂を図るべきである。」とし、①組合側の自助努力策として再減歩・賦課金等が、②地方公共団体の支援策として助成等が、③債権者による支援として特定調停等による支援等が、それぞれ紹介され、さらに、「土地区画整理事業は、その性質からも、事業の完成を目指し再建を図ることが望ましい。このため、組合自らが事業を継続することが困難となった場合に、土地区画整理法第128条の規定に基づき、第三者が事業を引き継ぎ事業を完了させることも考えられる。事業を引き継ぐ主体としては、地方公共団体や地権者等が出資する区画整理会社が想定される。」として、地方公共団体の『事業の引継ぎ』にまで言及しているのです。

以上から明らかなとおり、土地区画整理組合は、法律上公的な事業を行っている公的な存在であり、組合が経済的破綻の危機に瀕しているときには、むしろ地方公共団体が救済することが期待されているのであって、公益上の必要性(地方自治法第232条の2)の該当性判断については、まず問題ないように思います。

土地区画整理組合を救済する必要性は、このような抽象的な必要性にとどまりません。
仮に土地区画整理組合を救済しないとすると、施行地区内の地域の発展の停滞・荒廃化を招きますし、いずれ事業は事実上停止状態に追い込まれ、いつまでも土地の形状と登記が一致しない状態が続き、その結果、施行地区内の土地の流通も制限され、土地利用が進まず、ますます地域が荒廃する可能性があります。

さらに仮換地や保留地購入者の不満は、監督権者であり、かつ技術的助言をしていた地方公共団体に向かうことが予想されるのです。このようなことは結局、地方公共団体に対する不信感の蔓延につながり、地方公共団体の業務に対し直接又は間接的に悪影響を及ぼすと考えられます。

それに対して、土地区画整理組合を救済する場合のメリットは、仮に、地方公共団体が組合を救済し、土地区画整理事業が完成した場合、地域に良好な住宅地ができることになるため、人口が増え、人の活動が活発化し、それに伴い、住民税、固定資産税・都市計画税等の税収が増えることにもつながります。

以上のとおり、救済しないことのデメリット、救済することのメリットを見ても、公的目的を有する土地区画整理組合を救済し、そのことにより、公的な性質を有する土地区画整理事業を完成させることが、地方自治法232条の2に定める公益上の必要性を判断するうえで、著しく不合理などと解させる余地はかなり少ないということが言えるでしょう。

ただ、一点付け足すと、組合の自助努力も必要だということは強調したいと思います。
これは、単に行政のみが負担し、組合員側が何もしないということになると、(事業による土地の価値の増加という側面はあるため)補助金の支出が、施行地区内の市民を過度に優遇する結果になる場合があるからです。
しかし、私のような弁護士のところまで持ち込まれる案件は、相当程度、組合の財産状況が悪化し、事態が深刻化しているのが通常で、その反面として、組合員側も何か対策はないかを検討し、再減歩や賦課金による自助努力を行ってるところがほとんどです。つまり、市町村が助成しても、一部の組合員の利益になるなどということは、起きない場合が殆どです。

もっとも、実際の実務では、地方公共団体側もこの辺の事情はわかっていて、本音は、地方公共団体自体が財政が苦しいから助成できないが、それを正面からは言えないため、住民訴訟のことを理由にすることが多いようです。

複雑ですね。

よく顧問先の土地区画整理組合から組合の文書開示について相談を受けることがあります。
組合員の方から正当な権利行使として組合に文書開示の要請がある場合には、当然のことながらその文書を開示しなければなりませんが、中には、事業に反対する組合員の方が、突然、組合事務所を訪問して、「全ての理事会議事録をコピーさせろ!直ぐにさせろ!」と騒ぎ立てるような、嫌がらせとしか思えないケースもあり、組合の事務局が対応に困っているという話がよくあるのです。

ところで、この文書開示について、土地区画整理法はどのように定めているのでしょうか?

まず、土地区画整理法上、個々の組合員に閲覧謄写請求権が認められる(注1)のは、以下の書類です。
(1)  定款、事業計画に関する図書、換地計画に関する図書(土地区画整理法841項)
(2)  土地区画整理事業に関し、組合が受けた行政庁の許可その他処分を証する書類(同法施行令731号)
(3)  組合員名簿、総会及び総代会の議事録並びに通常総会の承認を得た事業報告、収支決算書及び財産目録(同法施行令732号)(注2)
(4)  施行地区内の宅地について権利を有する者(所有権以外の登記のない権利で土地区画整理法851項及び2項の申告のない権利または同法853項の移転・権利削減の届出のない権利を有する者は含まれない)の氏名(法人にあっては名称)及びその権利の内容を記載した簿書(同法施行令735号)

(注1) ただし、「正当な理由」があれば閲覧謄写請求を拒否することができます。

(注2) なお、事業報告書、収支決算書及び財産目録については、過去のもの以外に、これから通常総会の承認を求めようとするものについては、通常総会の5日前までに主たる事務所に備え置かなければならないとされ、それらの書類についても、組合員に閲覧謄写請求権が認められています(土地区画整理法32条)。

次に、(個々の組合員からではなく)組合員から、総組合員の10分の1以上の同意を得て請求があった場合には、上記の書類以外にも、組合員には広く「会計の帳簿及び書類」の閲覧謄写権が認められます(同法28条9項)。

以上が法律の定めですが、組合施行の土地区画整理事業は、直接的には、組合員のために行っている事業ですから、組合の事業に支障が生じたり、組合員のプライバシーや個人情報保護の問題と抵触したりしない限り、上記にない文書についても開示に応じても良いし、むしろ積極的に応じるべきと考えます。手続的には、法律で開示しなければならない文書以外の文書については、理事会において開示又は非開示を判断するのが適当です。

ただし、前述のとおり、組合員が突然組合事務所を訪れ、大量の文書開示を要求するような事態も現実に発生していますので、文書開示について一定のルール作りが必要でしょう。多くの組合では定款で、そのようなルールを理事会で定めることができることになっていますので、

① 文書開示の申込方法(所定の申込書の提出等々)

② 開示・非開示の判断(理事会又は理事会から委任を受けた理事長が申込みから〇日以内に判断する。期間内に判断しなかったときは開示の判断があったと見做す。等々)

③ 文書閲覧・交付の方法(組合事務所で閲覧・交付又は組合員の住所に郵送、等々)
④ 料金(コピー1枚〇円)

というような文書開示規程を定めておくことをお勧めします。

以上

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