今回は、
事案は、ある土地区画整理組合の施行地区内の地権者(組合員)
これに対して、裁判所は、
その理由は、
「損失の補償については、
このように、法には、憲法29条3項の趣旨に基づく特別の規定が
というものです。
実は判決の他の部分を読むと、この組合員は東京都収用委員会に、
なぜそのようなことになったのか?
・・・・・・
このメルマガでは、土地区画整理の関係で、
今回は、
事案は、ある土地区画整理組合の施行地区内の地権者(組合員)
これに対して、裁判所は、
その理由は、
「損失の補償については、
このように、法には、憲法29条3項の趣旨に基づく特別の規定が
というものです。
実は判決の他の部分を読むと、この組合員は東京都収用委員会に、
なぜそのようなことになったのか?
・・・・・・
このメルマガでは、土地区画整理の関係で、
土地区画整理組合が保留地を売る場合、保留地売買契約書には、だいたい契約不適合責任(民法改正前は瑕疵担保責任と言われていました。)の規定があり、その行使期間は2年とされているのが普通です。
ところが、保留地の売り始めの時期はいいのですが、最後の方になってくると、組合解散のスケジュールが近づいてきますので、売却後2年間の契約不適合責任を負うのが適当か?という問題があります。
この問題について、私のアドバイスを先に言ってしまうと、「契約不適合責任を免責にして売却してください。」というものです。
単に保留地売買契約書の契約不適合責任の条項を削除しただけですと、補充規範である民法第562条以下の契約不適合責任に関する規定が適用されてしまいますので、それを否定するため、契約書中に「売主は、買主に対し契約不適合責任を負わないものとする。」と、はっきりと契約不適合責任が「免責」であることを規定してしまうのがポイントです。
私の経験からすると、このように契約不適合責任を免責にすると若干価額を下げざるを得ないのですが、そもそも土地区画整理事業で作った宅地であり、通常は、土地に契約不適合(瑕疵)があることは想定されないので、下げ幅はそれほどでもなく、最終的に保留地は売却できるのがほとんどです。
他方、仮に買主から契約不適合責任を追求されて、任意の話し合いでは解決できず裁判にでもなると、売主の主張に全く理由がないとしても、それが解決するまで組合を清算結了することができず、弁護士費用や事務局の維持費などで全体的な損害額は決して少なくないのです。したがって、組合としては、無理して契約不適合責任をつけたまま保留地を売却するよりは、契約不適合責任を免責にして売った方が何倍も良いということになります。
保留地の売却も終盤になってくると、このような問題が発生することになりますので、ご注意ください。
1.土地区画整理組合の施行地区内に法人(企業)の大地主(組合員)がいる場合などに、よく「法人を理事にすることができますか?」という質問を受けることがあります。土地区画整理組合としては、大地主であるその法人に理事になってもらい、組合運営に積極的に参加してほしいと思ってのことですが、しかし、株式会社の例などで、法人が取締役になっているような例を聞いたことがないので、はたして法人を組合の理事にすることができるのか?という疑問が生じるわけです。
2.実は、この問題については既に立法的に解決されています。
土地区画整理法第27条第3項は「理事及び監事は、定款で定めるところにより、組合員(法人にあってはその役員)のうちから総会で選挙する。」と規定していますが、「組合員(法人にあってはその役員)」という部分が重要で、法人自体は理事になれないが、その法人の役員個人は理事になれる、と解釈されているのです。
詳しく説明すると、法人の役員は、その法人が組合員であるという資格のもとで個人として組合の理事となる被選挙権が与えられます。したがって、その役員個人が、組合の組合員(地権者)である必要はありません。
しかし、あくまでも(いわば)法人組合員枠で理事となったので、その理事が法人の役員でなくなったときは、自動的に理事の地位を失います(土地区画整理法第27条第3項)。
ただし、理事となるのは役員個人であり、法人ではありませんので、その役員の後任として法人の新たな役員を理事にしたいときは、別途、組合の総会で選挙をしなければなりません(土地区画整理法第27条第1項)。
以上は、どの文献をみても、法人の理事についての確定した解釈・運用であり、特に異論はないかと思います。
3.問題は、どうしてこんなに七面倒くさい規定になっているのかということです。
端的に、法人自体を組合の理事にすることができなかったのかな?と思います。この点を理解するには、日本では一般的に法人の役員は自然人でなければならない(または、できない)と原理主義的に考えられていた点が影響しています。
例えば、会社法第331条第1項1号では法人は取締役になれないことになっています。この「法人取締役の不許」については、会社法の教科書として最も権威のある江頭憲治郎著「株式会社法」によれば、
「法人取り締役を認めない理由として、取締役の職務は個人的性質のものであること(田中耕・下386頁)、または個人に民事責任を課すことにより経営の適正を図る必要があること(河本・443頁)があげられている。」と説明されています。つまり、株式会社における取締役は自然人でなければあり得ないし、自然人とすることで適正なものとなると考えられていたのです。
しかし、最近はこのような原理主義的な考え方は否定されています。すなわち、江頭教授は、上記の説明に続けて、
「しかし、外国には法人の取締役資格を認める例が少なくなく、〔中略〕わが国でも、〔中略〕法人に会計監査人、更生管財人等の資格が認められる(会社337条1項、会更法67条2項)ことに鑑みると、立法論として、少なくとも閉鎖型のタイプの会社については、法人の取締役資格を認める余地はあろう。」
と記載しているのです。
したがって、私としては、土地区画整理組合は施行地区内の地権者で組織される閉鎖型の法人ですので、法人を理事とすることを認めてもよかったのではないかなと思います。
4. いずれにしても、この法人組合員は理事になることができず、その法人の役員が理事になれるにすぎないという制度設計は、前述の法人の理事は自然人でなければならないし、そうするのが適当だとする考え方があったから、いわば立法的な妥協の産物として作られたものなのです。この点を理解すると、この分かりにくい土地区画整理法第27条第3項の規定がよく理解できると思います。
◆弁護士 飛田 博
今回は、「組合員である株式会社の代表者が死亡したが、実は、その会社が休眠会社らしく、新しい代表者が選任されない場合、組合はどうしたらいいのか?」という問題を扱いたいと思います。組合としては、その会社に(代表取締役ではないが)平取締役がいる場合、その取締役に対して通知することで、事業を進めたいところですが、果たしてそれで良いのか?という問題です。
このような問題が実際にあるのか?という方がいらっしゃるかもしれません。
ところが、実務をしていると、ちょくちょく出くわすのです。
たとえば、地元の小さい不動産会社が土地区画整理事業の始まる前に、施行地区内の土地を買って分譲して売ったが、一部形の悪い土地が売れ残っており、そうこうするうちに、その不動産会社は休眠状態に陥り、社長が死亡後も後継者もいない、といった事案です。
まず、この株式会社が、取締役会が設けられている取締役会設置会社の場合はどうなるでしょう。取締役会設置会社の場合、代表権を有する代表取締役以外の平取締役には業務執行権が認められておらず(会社法348条1項括弧書)、組合の行う換地処分等の行政処分を受領する権限もありません。そこで、この会社の取締役会が新しく代表取締役を選任しないのであれば、組合としては、会社法351条2項に基づき、裁判所に一時代表取締役の選任するよう申立てなければならないということになります。
次に、その会社が、取締役会を設置していない会社の場合はどうでしょうか?このような株式会社の形態は、平成18年に新会社法が施行されることにより認められるようになりましたが、有限会社から株式会社に移行した会社や、新会社法施行後に設立された小規模な会社には多い組織形態です。
この場合、会社法の定めでは、各取締役が原則として会社の業務を執行し(会社法348条1項)、会社を代表する権限を有しますので(会社法349条1項・2項)、他に取締役がいれば、その取締役に通知することができそうにも思うのですが、実は、代表取締役を選任した場合には、他の取締役は代表権を有しないこととなっており(会社法349条1項但書)、仮に選任された代表取締役が死亡したとしても他の取締役の代表権が復活することはないと解釈されています(相澤哲編『立法担当者による新・会社法の解説』103頁)。
したがって、取締役会を設置していない会社にあっても、代表取締役が選任されている場合には、その代表取締役が死亡した場合には、新たに株主総会等で代表取締役を選任してもらわなければならないということになります。選任されないのであれば、結局、会社法351条2項に基づき、裁判所に一時代表取締役を選任してもらわなければならないということになるのです。
では、裁判所に一時代表取締役を選任してもらうにしても、その手続きにはどれくらいの費用と時間がかかるのか?というのを知りたいですよね。
これについては、私の経験から、各管轄裁判所においてスポット申立てという簡易な申立てを認めているかによる、ということが言えるかと思います。スポット申立てというのは、裁判所によって選任された一時代表取締役には、組合からの書類の受領と、もし将来的に清算金の交付が見込まれるのであれば、その清算金の受領をしていただきたい(ほかの業務はありません)と一時代表取締役の職務を限定して申立てをするのです。その際に、一時代表取締役候補者として地元の弁護士を推薦することができると、裁判所の手間が省けますのでスムーズになります。この辺は、裁判所にいかに事案を理解していただき、手続きを円滑に進められるかという問題ですので、まさに弁護士の腕の見せ所だと思います。
弊事務所ではスポット申立ての経験がありますので、もし類似案件にお困りのときは、遠慮なくご相談いただければと存じます。
土地区画整理組合の最高意思決定機関は組合員で組織される総会で
通常は、理事長が組合を代表しますので、
では、組合員が総会を招集することができないか?
実務的に、組合員が、5分の1の同意を得て、
ところで、
この点、会社法では、例えば株式会社の取締役会の招集において、
つまり、
しかし、土地区画整理法では、この点の記載が明確ではなく、
で、私も次の文献を調べてみたのですが、
(1)「逐条解説 土地区画整理法(第2次改訂版)」 国土交通省都市局市街地整備課監修 土地区画整理法制研究会編著
(2)「条解・判例 土地区画整理法」大場民男著
(3)「実務問答 土地区画整理」土地区画整理法制研究会編
(4)「特別法コンメンタール 土地区画整理法」松浦基之著
ただ、(4)の松浦先生のコンメンタールには、32条7項の「
で、お前はどう考えるか?ですって。
(1) 32条2項の文言からは、「20日以内に招集すれば良い」
(2) 仮に、20日以内に招集通知を発送すればよいと考えて、
したがって私は、保守的に考えて、組合には「
「区画整理のコンサルタントらによると、組合は一時、約18億円の負債を抱えていたが、大口債権先の債権放棄や組合員への賦課金により大幅に債務を縮小。保留地は全て売却し、換地も既に終え、債務を精算し解散する方向だった。しかし、債権放棄を見込んでいた2社とは交渉が不調に終わり、支払い能力も乏しいことから6月に破産を申し立てたという。解散には債務解消が必要だった。組合員に新たな負担は生じない。」とのことです。
専門的な話になって大変恐縮ですが、私の取扱業務の一つに「土地区画整理組合の破綻処理」というものがあります。実は、その分野で、かなり影響の大きな出来事がありました。それは、このブログの1月15日の記事で紹介しましたが、土地区画整理組合について現実に『破産』事例が発生したということです。
土地区画整理組合というのは、土地区画整理法という特殊な法律によって設立される法人で、「街づくり」という公共的な役割を担っていますので、長い間、破産によって消滅させてもいいの?ということが議論されていました。学問的には、「土地区画整理組合に破産する能力があるのか?」という「破産能力」の問題になります。
かつては、土地区画整理組合は公法人だから破産できないというのが通説でした。しかし、バブル崩壊後、経済的に破綻する組合が沢山発生するようになり、それを補助する立場の市町村などの地方公共団体も、支援するだけの体力が無くなっていて、いわゆる“凍結組合”といわれるような組合も発生している事態になっていましたので、最近では、もはや破産させざるをえないのでは?という論調が強くなっていたかと思います。
そこで、私は、2011年ころのことですが、この問題について、破産法の大家の大学教授に相談しに行ったことがあります(その先生は弁護士もされていました。)。その学者先生は、きっぱりと「土地区画整理組合だからといって破産できないということはない。」とおっしゃられ、私としては、(土地区画整理組合にも破産手続が利用できるのが適当と考えていましたので)意を強くして帰ってきましたが、実はその後も土地区画整理組合が破産手続を利用したという実例が出ない状態が続きました。
ところが、昨年12月、ついに新潟県の白根第一土地区画整理組合について、新潟地方裁判所が破産手続開始決定を出したのです。しかも、このことを報道する新聞記事によれば、岩手県の土地区画整理組合でも破産手続開始決定が出ており、全国で2例目ということでした。
土地区画整理組合の破産を考えるときは、換地処分という土地区画整理事業の最大のイベントを終える前なのか、終えた後なのか、というところが非常に重要ですが、これら2つの事案については、まだ詳細がわからないため、あまりコメントができません。しかし、少なくとも、これまでタブー視されていた土地区画整理組合の破産が現実にあり得ることが明らかとなりました。個人的には、新年早々から、少々閉塞感のあった土地区画整理組合の破綻処理に新たな可能性を感じさせるビックニュースでした。
土地区画整理組合(以下「組合」といいます。)の事業資金で不足する場合、組合は総会の決議を経ることにより、組合員から賦課金(要するにお金です。)を徴収することができます(土地区画整理法第40条第1項、第31条第7号)。
総代制をとっている組合では、総代会の決議によっても、組合員に賦課金を課すことが認められています(同法第36条第3項、第31条第7号)。
ところで、総会や総代会で賦課金の徴収について賛成が得られても、組合員の中には反対者もいますので、賦課金の徴収には少なからず苦労します。
ただ、組合が、土地区画整理事業という公的な性質を帯びた事業を行っている公的な団体であることに鑑み、土地区画整理組合法は、賦課金の滞納者に対し滞納処分をすることを認めています。
以下の条文をご参照ください。
続きを読む土地区画整理法 第41条
1 組合は、賦課金、負担金、分担金又は過怠金を滞納する者がある場合においては、督促状を発して督促し、その者がその督促状において指定した期限までに納付しないときは、市町村長に対し、その徴収を申請することができる。
2 組合は、前項の督促をする場合においては、定款で定めるところにより、督促状の送付に要する費用を勘案して国土交通省令で定める額以下の督促手数料を徴収することができる。
3 市町村長は、第一項の規定による申請があつた場合においては、地方税の滞納処分の例により滞納処分をする。この場合においては、組合は、市町村長の徴収した金額の百分の四に相当する金額を当該市町村に交付しなければならない。
4 市町村長が第一項の規定による申請を受けた日から三十日以内に滞納処分に着手せず、又は九十日以内にこれを終了しない場合においては、組合の理事は、都道府県知事の認可を受けて、地方税の滞納処分の例により、滞納処分をすることができる。
5 前二項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。