カテゴリ: 破産・事業再生


最近、「あれっ、私の感覚とちょっと違うな!」と思った判例に、最判H26.6.5(金融・商事判例№1444-16)があります。


この判例によると、事案は次のとおりです。


上告人の請求は、再生債務者である上告人が、支払の停止の前に、A銀行から購入し、A銀行にその管理を委託していた投資信託受益権(以下「本件受益権」という。)につき、支払の停止の後、再生手続開始の申立て前に本件受益権に係る信託契約の一部解約がされたとして、原判決言渡し後にA銀行を吸収合併しその権利義務を承継した被上告人Y(旧商号は、B。以下、同合併前のA銀行と併せて「被上告銀行」という。)に対し、上記の管理委託契約に基づき、その解約金の支払を求めるものである。再生債権者であった被上告銀行は、上告人に対する上記解約金の支払債務の負担が民事再生法93条2項2号にいう「支払の停止があったことを再生債権者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に当たるので相殺が許されるとして、上記解約金の支払請求権を受働債権とする相殺を主張している。


判旨は次のとおり。結論からいうと、被上告人の解約金債務の負担は、民事再生法93条2項2号にいう「支払の停止があったことを再生債務者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に当たらない、として、上告を認め、被上告銀行の相殺を認めませんでした。

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10月15日の日経新聞朝刊5頁に、『中小の転廃業・再生促す 地域支援機構の改正法施行』という見出しで、地域経済活性化支援機構の機能強化の記事が出ていました。

政府系ファンドの地域経済活性化支援機構の機能を強化する改正機構法が14日、施行された。転廃業を考える中小企業経営者の債務を買い取ったり、経営や再生の専門家を企業に派遣したりして企業の新陳代謝を促すのが柱。


とのことです。

地域経済活性化支援機構の機能が強化されて、地方の(中小)企業の再生や廃業・転業が進み、地域経済が立ち直るとすれば、それは、わが国にとって、とっても良いことです。
その点には全然異議ありません。

しかし、私としては、小泉・竹中大臣の頃から(わずかではありますが)事業再生に関わってきた者として、「やはりわが国では事業再生ビジネスは民間ではできないのかな?」と少々複雑なところがありますね。
産業再生機構は一時的な組織という建前だったから早期に解散したわけですが、その後、企業再生支援機構を経て、地域力経済活性化支援機構となり、似たような組織が現在まで存在しています。
結局、こういう組織ができないと、日本の会社の事業再生はなかなか進まないのかな?
市場規模の問題なのか、国民性の問題なのか、社会システムの問題なのか・・・
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今日(2014年10月6日)の朝刊3頁に、「倒産、5カ月ぶり増」「9月 円安で原料高、中小直撃」という見出しの記事が出ています。この記事の趣旨は、東京商工リサーチのまとめによると、原材料高による倒産が今年に入ってから増加基調で、6月からは毎月20件を上回り、8月までで167件で、すでに昨年1年間の実績を上回っている、そして、その大半が、コスト高の転嫁が容易でない中小・零細企業だ、というものです。

ただ、私がちょっと気になったのは、次の部分。

一方で今年の全体の倒産件数はこれまで4月を除いて前年同月比で減少が続いており、件数自体もバブル経済以来の低い水準だ。今年は全体の倒産件数が9月分を含めて累計7500件程度となっており、1990年以来24年ぶりに1万件を割る可能性も出てきている。全体の倒産件数が減る中で原材料高による倒産の増加が目立つ格好となっている。


私は、破産管財人の仕事もしておりますが、常時2~3件くらい裁判所から依頼があったのに、今は1件あるかないかです。数年前とは明らかに事件数が減っていることを実感しています。裁判所の統計的にも破産事件は減少している(この記事中のリンクを参照)。ついちょっと前までは、ゾンビ企業が生き残っているだけで、そのうちまた増えるといわれていましたが、本当に経済のことはわかりませんね。

倒産件数が減少することは日本国民的には非常に良いことですが・・・
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1.みなさま、『経営者保証に関するガイドライン』って知っていますか? 
現在、法制審議会で議論されている民法改正では、金融機関の貸付債権について個人保証人をとることができなくなりそうですが(個人保証を取っても無効)、会社の経営者が個人保証人となることは例外的に認められそうです。ただ、中小企業に対する融資であれば必ず経営者の個人保証が要求されているような現在の実務慣行は、金融機関および中小企業相互の不信感を増長させるものとなっていますし、中小企業の事業承継や事業再生の弊害にもなっており、このままでは、さすがにイケないでしょう、ということで、全国銀行協会と日本商工会議所が研究会を立ち上げて、昨年12月に、いわゆる紳士協定ということで策定したのが、この経営者保証ガイドラインです。

で、どのようなことが書かれているかというと、経営者保証に依存しない融資を促進するために、中小企業側に、経営者保証を外してもらいたければ、①会社と経営者個人の財産を明確に分離しなさいとか、②財務基盤を強化しなさいとか、③金融機関にきちんと情報開示しなさいとか要請し、他方、金融機関側には、(ア)経営者保証の代替となる契約類型を準備し、経営者保証を求めない可能性をきちんと審査しなさいとか、(イ)経営者保証を求めるときには、その理由を丁寧に説明しなさいとか、(ウ)事業承継のときにも、単純に新経営者に保証を引き継がせるのではなく、経営者保証を求めない可能性もきちんと審査しなさい、などと要請するもので、従来の中小企業金融の実務を知っている者からすれば、かなり画期的な内容です。

今年の2月1日から適用開始となっており、先日、金融庁から、経営者保証ガイドラインを活用された事例を紹介した事例集も公表されました。

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先日、経営者保証に関するガイドラインを起草した委員の方の講演会に出席してまいりました。
その先生が興味深いことをおっしゃっていたので、備忘もかねて記載させていただきます。

金融機関に、「なぜ経営者保証を求めるか?」という理由についてアンケートをとってみると、「経営者だから」という回答が圧倒的に多いそうです。
というのは、実際の金融機関の実務では、経営者から情報の開示を受けて大丈夫だと思って貸したのに、すぐに延滞が始まったり、甚だしい場合には倒産してしまい、当然のことながら貸付金は貸し倒れになるわけで、金融機関側からすると、「経営者に裏切られた」とうような事案が発生することがままあり、「経営者である限り、そのようなことがないように、きちんと経営してください。」ということを求めたいそうです。
つまり、金融機関側が経営者保証を求めることの本音は、(もちろん例外はあるでしょうが)「会社の債務が残っている限り、あなたの個人財産・今後の収入を含めて、すべて返済してください。」というよりも、「きちんと規律をもって会社を経営してください。」ということだそうです。
そうすると、保証は、被担保債権額を限度とする人的無限責任であり、いわば「あなたの人生を担保に入れてもらいます。」ということを意味なので、金融機関にとっても、Too Much な要求なわけですが、現状、「きちんと規律をもって会社を経営してください。」ということを担保するような法制度がないので、これを求めざるを得ない、ということのようです。たとえば、他の法制度の候補として、会社の役員の第三者責任(会社法第429条第1項)がもう少し第三者が請求しやすい制度であるならば大分違ってくるだろうということです。
つまり、現状、任務懈怠について悪意・重過失の場合のみしか(しかも第三者側に役員の職務懈怠や悪意・重過失の立証責任がある。)責任が発生しない会社役員の第三者責任(会社法第429条第1項)がもっと使いやすいものとなれば、経営者保証の制限にはあまり抵抗はないということでした。

なかなか筋のとおった見解であり、私はとても感心しましたので、備忘もかねて記載させていただきます。
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今年の2月1日から『経営者保証に関するガイドライン』が適用されるようになっていることについては、このブログの過去の記事、その1その2その3、をご参照ください。
ところで、6月4日に金融庁から『「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集』が公表されています。これまでに『経営者保証に関するガイドライン』が活用された23事例について、各金融機関から情報の提供を受けて公表されたもので、とても参考になります。
『経営者保証に関するガイドライン』に興味を持っている方は是非ご参照いただければと思います。

ちなみに、主要行(昔の都市銀行?)の案件は1つしかありません。対象が中小企業だからということがあるかもしれませんが、主要行からも、たくさん中小企業向けの融資がされているはずなので、主要行の取り組みがちょっと遅いのでは、などと思ってしまいました。
また、その主要行の事案は、解除条件付保証契約(条件が充足した場合に保証契約が効力を失う契約。条件充足までは保証は有効。)を利用した事案ということなのですが、その解除条件とは「上場申請」ということです。「会社が上場した場合に経営者保証が外れることは当たり前でしょ!」と突込みを入れたくなりました(笑)。

ただし、このような事例集の公表は本当に価値があると思います。
前のブログにも書きましたが、中小企業だからといって当然に経営者保証が要求される実務慣行が少しでも改善されることを願っております。
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経営者保証ガイドライン7.には、「保証債務の整理」について書かれています。

これは、保証債務を私的整理で処理する場合のルールを定めたものということができるでしょう。


ちなみに、私的整理とは、裁判所を通さないで、保証人と保証をしているすべての銀行との間で最終的に保証債務の減免等を合意するための手続と考えておいてください。

我々専門家にとってはもっとも関心があるところですが、ガイドラインの規定からは、少々イメージが掴みづらいと思います。
以下、具体的に見ていきましょう。

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経営者保証ガイドラインは、前半の1.から3.までの目的や適用対象を述べる『総則部分』のほか、大きく分けると、4.から6.までの『保証契約時等の対応等』について述べる部分と、7.の『保証債務の整理』について述べる部分の2つに分けられます。

前者の『保証契約時等の対応等』について記載した部分は、ひとことで言うと「『中小企業』だからというだけで経営者保証を求めるのは止めにしようよ。そのために、これをルールにしようよ。」ということが書かれています。

それに対して、後者の、『保証債務の整理』は、保証債務を私的整理で整理してしまうときの手続を整備したものです。

前者は、業績が伸びている中小企業の経営者にとって、後者は、そろそろ事業を閉じようとしている経営者や弁護士等の専門家にとって関心のある部分ともいえるかもしれません。

今回は前者の『保証契約時等の対応等』について説明していきます。

実は、私はこの部分を読んだときには、現在の中小企業融資の実務を大きく変えるものとかなり衝撃を受けました。それくらいインパクトのある内容です。

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経営者保証に関するガイドライン」の適用が、平成2621日から開始されました。

これに伴い、経済産業省では、中小機構・地域本部等で、ガイドラインに関する問合せ・窓口相談に応じることをアナウンスするなど、対応を本格化しています。

また、平成25年度補正予算が成立した場合、「ガイドラインに基づいて適切なアドバイスが可能な専門家を御紹介します。」とのことです。

http://www.meti.go.jp/press/2013/01/20140130004/20140130004.html
ただ、どうも我々弁護士の間では、この「経営者保証に関するガイドライン」について盛り上がりに欠けているように思います。そもそもこのガイドラインがどのようなものなのかについて知らない弁護士先生も多い。かくいう私自身も、このガイドラインについて講演までしておきながら、我々が関与できそうな「保証債務の整理」の部分について、具体的にどのように関与したらいいのか今一つイメージがつかめないでいます。

そこで、このガイドラインについて、3回に分けて説明するとともに、私の思う疑問・課題などについて述べてみたいと思います。

第1回目の今回は、経営者保証ガイドラインの策定の経緯です。

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最近の判例のなかで、東京地裁が、上級審である東京高裁の決定について、「東京高裁の決定は妥当な判断とはいえない。」として、真逆の結論を出すという興味深い案件がありましたので、紹介します。

 

事案を極めて単純化すると、次のとおりです。


① 甲ら3名は、A会社の創業者の息子らであり、A会社の株式総数の過半数を超える株式を有していたところ、A社が代表取締役の乙らに新株を発行し、甲らのシェアを過半数以下にしてしまったため、東京地裁に新株発行無効の訴えを提起するとともに、新株について議決権行使禁止の仮処分を申し立てた。仮処分の方は、直ぐに議決権の行使を禁止する仮処分命令が発令されたため、A社は、保全異議を申し立て、異議審のなかで、甲らの株式を乙が買い取る方向での和解が検討されたが、価格が折り合わず、和解は成立せずに、異議審でも仮処分の認可決定が出され、新株発行無効の本訴の方も、新株発行を無効とする判決が言い渡された。


② それに対して、A社は控訴したが、裁判外で和解が進められ、A社の代表取締役の乙が甲らの株式を合計1億9500万円で購入し(代金は分割払い)、乙の甲らに対する代金債務等をA社が保証することで合意(公正証書作成)した。そして第1回目の弁済の際に、甲らは新株発行無効の訴えを取下げて、一応の決着をみた。


③ ところが、ほどなく、A社に資金ショートが見込まれる事態になり、A社は、事業再生の専門家である弁護士丙らに相談し、当初、私的整理による再建を目指したが、乙らから預金や売掛金の差押えを受ける事態も想定されたので、乙らに対し、請求異議の訴えを提起し、それに伴う強制執行停止決定を申立てた。しかし、担保金を納付することができなかったため、強制執行を阻止し事業を守るために、東京地裁に民事再生の申立てに踏み切った。

④ これを受けて、東京地裁が、民事再生手続の開始を決定し(同時に強制執行の包括的禁止命令を発令)たところ、乙らから、この決定に対し即時抗告がなされた。
東京高裁は次のように述べて、東京地裁の民事再生手続開始決定を取り消して、民事再生手続開始の申立てを棄却するとの決定をした。

「本件の経過からすれば、相手方〔注:A社〕は、既に債務不存在確認等請求訴訟を提起していたが、より簡便に、かつ、真実連帯保証債務を負担していても、その負担を免れるため、民事再生手続における否認権行使を利用しようとしたと考えられ、本件申立ては、連帯保証の取消しのみを目的とした申立てと認めることができる。このような連帯保証債務の取消しのみを目的とした申立ては、本来の目的から逸脱した濫用的な目的でされたものということができるから、本件申立ては、民事再生法254号(特に、不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき)に該当する。」


この決定を受けて、A社は、東京高裁に抗告許可を申立てたが、東京高裁は最高裁への抗告を許可しなかったため、民事再生の申立ての棄却が確定した。しかし、A社には、「破産手続開始の原因となる事実」(民事再生法2501項)が認められたため、東京地裁の職権で、破産手続開始決定がなされ、破産手続が進められることになった。ちなみに、その破産手続の中で乙らに対する連帯保証債務については、管財人によって否認権が行使されている。
 

⑤ その後、甲らは、乙らが、濫用的な目的でA社の民事再生を申立てたとして、会社法4291項、民法709条、719条に基づき、A社の取締役、監査役、A社の弁護士らに、残連帯保証債務相当額等の損害の賠償を求めて訴えを提起した。
以下に紹介する判決は、この損害賠償請求訴訟の東京地裁判決です。 

  

この訴訟において、東京地裁は、乙らの請求を棄却しました。

その理由付がかなりカッコイイ。

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