カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 飛田 博

2018年3月20日日本経済新聞夕刊社会・スポーツ面の「ネットの人権侵害 2000件超 5年連続で最多更新」「『名誉棄損』が48%増加」という見出しの記事から抜粋。


「法務省は20日、2017年に全国の法務局が救済手続きを始めた人権侵害の状況を公表した。無断で個人情報を掲載するなどのインターネット上の人権侵害は前年比16.1%増の2217年と5年連続で過去最多を更新し、初めて2千件を上回った。」


(私のコメント)
裁判所の仮処分案件でも、今やネットの名誉侵害の削除請求等がとても多い状況なので、たとえば東京地裁あたりに、ネット関係の仮処分案件やネットの名誉侵害案件の専門部を作って、これらの案件を効果的に審理するようなことができないかな、と思います。高齢化・人口減の影響なのかはよくわかりませんが、裁判所の事件が年々減少傾向にあるので、時代の流れに即応して、少しでも国民の役に立つような制度・運用に変えていけたらな、と思うのですが、いかがでしょう?

以下は、ITmediaNEWSが3月20日に配信したニュースの抜粋ですが、「追跡調査打ち切り」とはちょっと残念ですね。

「コインチェックから巨額の仮想通貨「NEM」が流出した事件で、NEMの推進団体「NEM財団」はこのほど、流出したNEMの追跡を打ち切ったと声明を発表した。同団体は「盗んだNEMをハッカーが換金するのを効果的に妨げ、法執行機関に実用的な情報を提供できた。捜査に影響するため、われわれは詳細を公開する予定はない」とコメントしている。」

記事によると、「MEMの追跡を打ち切った」ということの意味は、NEM財団が、盗んだ犯人のものとみられる送金先のウォレットアドレスに特定のマークを付け、資金移動を追跡する技術(モザイク)で犯人の手掛かりを探っていたのですが、今や匿名サイトなどにより資金洗浄が進んだので、そのモザイクを無効にしたことを意味するようです。

NEMの巨額流出事件が起きたときに、流出したMEMがどのアカウントに入ったかを追跡できるのを見て、ブロックチェーン技術は「凄いな」と思ったのですが、アカウントと個人との結びつきがわからず、結局、匿名サイトなどで交換されていくと犯人を捕捉するのは難しいということでしょうか。しかし、そもそも現金の場合はどの財布に入ったかを追跡することは難しいので、それと比べると仮想通貨の方が犯罪者にとってリスクが高い、つまり安全な通貨のようにも思えます。まだ捜査機関によるNEMの巨額流失事件の捜査は進行中だと思いますが、早く犯人が捕まることを願っています。

2018年3月19日日本経済新聞朝刊社会面の「偽アカウント削除命令 地裁 ツイッターで成り済まし」という見出しの記事から抜粋

「ツイッター上で「成り済まし」の被害に遭った埼玉県内の女性が、ツイッター社(本社・米国)を相手に偽アカウントの削除を求め仮処分をさいたま地裁に申請し、認められていたことが18日、女性の代理人弁護士への取材でわかった。」

(私のコメント)
弁護士的には、米国のツイッター社に仮処分を申し立てた際に、申立書の副本をツイッター社に送らなければならないのですが、その副本の送付の際に英訳を付けることが求められるのかとか(多分求められる)、米国の会社であるツイッター社が日本の裁判所の決定に従ってくれるのか?などというところが気になりますね。もちろん、ツイッター上の特定の発言や記事ではなく、アカウント自体の削除命令が出たという点で画期的な決定だと思います。


昨日(2018年3月20日)の日本経済新聞の社会面(43面)の「不適切な投稿の裁判官厳重注意」との見出しの記事から。

(以下、記事の抜粋。被害者の方の名前は略しました。)
東京都江戸川区で2015年、高校生の〔中略〕さん(当時17)が殺害された事件の判決をめぐってツイッターに不適切な投稿をしたとして、東京高裁は19日、遺族が処分を求めていた岡口基一裁判官(52)を文書による厳重注意処分にしたと明らかにした。〔中略〕岡口裁判官は「改めて反省している」と述べている。

(私のコメント)
私はツイッターでは岡口裁判官をフォローしておりませんが、facebookではフォローしており、司法関係のニュースを沢山紹介してくれるため、とても感謝しています。また、とかくベールにつつまれている裁判官の生の声が聞けて、色々な意見はあるかもしれませんが、裁判官のお仕事をされている方を身近に感じることができて、とてもイイネと思っています。この件では、不適切だったのかもしれませんが、これで岡口裁判官の投稿が見れなくなるとすれば非常に悲しいので、不適切投稿には注意しながら、これまでと同じペースでの投稿を応援しています!




弊事務所では、馬場悠輔弁護士が第一東京弁護士会の宇宙法研究部会に入って勉強していますが、「宇宙法っていったい何なんでしょう?どういう仕事なのかな?」などと思っていたら、昨日(2018年3月19日)の日本経済新聞夕刊ニュースプラスの頁の「人間発見」に西村あさひ法律事務所の水島淳弁護士のインタビュー記事が掲載されており、宇宙法の仕事について紹介されていました。

(以下、記事からの抜粋)
「2017年12月、宇宙開発ベンチャーのispace(アイスペース、東京・港、袴田武史社長)が、産業革新機構、KDDIなど12社から第三者割当増資により101億円を調達した。「シリーズA」と呼ぶ技術開発段階の調達としては国内最大で、宇宙ビジネスへの期待の大きさがうかがえます。
 私は、この投資スキームの検討や契約交渉を助言しました。アイスペースは出資企業と組み、月面での水資源開発を目指しています。同社は月面探査に使う探査機を開発中で、15年に7キログラムだったものを4キログラムまで軽量化しました。打ち上げコスト削減につながる軽量化は、探査に使う機器を開発するうえでの重要課題のひとつです。」

「17年3月、アイスペースはル苦戦ブルグ政府と、宇宙資源の共同開発に関する覚書を交わしました。前年の5月、私は同社の袴田社長らと同国を訪れ、1年近くかけて交渉を助けました。」

(私のコメント)
宇宙開発などというと、SF映画を思い出し、どうも現実味がありませんが、この記事にあるように、既に弁護士が宇宙に関する法律や契約のアドバイスをするような時代になっており、そう遠くない将来、宇宙法の分野も確実に発展していくのでしょうね。記事によると、2018年秋に日本でも宇宙開発の規制を定めた宇宙活動法などが全面施行になるとのこと。我々もこの流れに乗り遅れないようにしなければなりませんね。


この6月1日から施行される住宅宿泊事業法(民泊)ですが、実は、第18条に地方公共団体が騒音やその他の生活環境の悪化を防止するために、条例で、民泊ができる区域を定めたり、民泊の営業日数を制限することができます。

(条例による住宅宿泊事業の実施の制限)
第十八条 都道府県〔中略〕は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる。

で、今日の日経新聞朝刊23面に「規制 東京7割・関西6割」という見出しで、このことに関する記事が出ていました。

「条例制定の意向を示したのは45自治体と35%を占めた。代表的なのは住居専用地域で平日の営業を禁止する形だが、宿泊需要が大きい大都市部でより厳しい制限を盛り込むケースが目立つ。
 兵庫県や神戸市、同県尼崎市は住居専用地域や学校周辺を中心に年間を通じて原則禁止にする。都内では全国に先駆けて条例を制定させた大田区が住居専用地域や工業地域などで通年禁止。中央区や目黒区では区全域で週末のみの営業に限る。」

「条例を作る自治体の半数超に当たる23自治体は営業地域や日数以外にも照準を合わせ、19自治体では届け出前に周辺住民向けに事前説明会を開く必要がある。管理人の設置を事実上求める事例もある。千代田区は家主や常駐の管理人がいない場合は学校周辺などでの営業を認めない。荒川区は廃棄物の適正処理・緊急対応で家主が不在の場合は1キロメートル以内に管理者の常駐を求める。
 他にも和歌山県では近隣住民に営業に反対する意思がないか確認してもらうようにする。京都市はゲストパス(身分証)を発行して宿泊客に携行させ、貸し手には自治会への加入や地域活動への参加を求める。」

(飛田のコメント)
私は、民泊問題は、民泊法の制定・施行と、Airbnbが民泊法の無許可物件の掲載を取りやめる旨を表明したことを以って収束するものだと思っていましたが、この調子で行くと、まだまだ法的な問題が発生しそうです。記事によると、政府は、通年禁止や全域制限を「法の目的を逸脱し、適切ではない」と指摘しているようなのですが、なんと、通年禁止や全域制限ばかりか、周辺住民への事前説明会や反対意思のないことの確認や管理者の常駐まで要求されそうです。記事によれば、このような地方公共団体の動きは、「住民の不安感」に基づくもののようなのですが、実際、そんなに不安があるのかな??いずれにしても、近い将来「過剰規制なのではないか?」と問題になる予感がしますね。


今日(2018年1月9日)の日経新聞(電子版)に「夫婦別姓選べず『戸籍法は違憲』 サイボウズ社長が提訴」という見出しの記事が掲載されていました。

(以下記事の抜粋)

「結婚時に戸籍上の姓に旧姓を選べないのは法の下の平等を保障する憲法に反するとして、ソフトウエア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長(46)ら4人が9日、国に計220万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。」

「民法750条は「夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称する」と定めている。15年12月、最高裁大法廷は、この民法の規定を「合憲」とする初の憲法判断を示した。」

「民法の規定については合憲判断が確定しているため、青野社長らは戸籍法に着目した。日本人と外国人の結婚・離婚や、日本人同士の離婚の際には戸籍上の姓を選べるのに、日本人通りの結婚だけ姓を選べない点を挙げ、「法律の不備であり、法の下の平等に反して違憲だ」と主張する。」

(飛田のコメント)
民法750条については、実際上、結婚の際に女性の方が圧倒的に氏を変更しているという実態を背景に、憲法24条1項の両性の平等規定に違反するとの主張がなされてきましたが、形式上は、男性側の姓を選んでも女性側の姓を選んでもどちらでも良い(ただ、どっちかに決めなければいけない)という制度であるため、少々男女差別だという主張に馴染みにくいところがありました。
ところが、上記の訴訟では外国人との比較から夫婦同姓制度は憲法14条の法の下の平等規定に違反すると理由づけているようであり、非常に良い着眼だと思います。国側は、外国人にできることが、なぜ日本人にはできないのか?そのように区別することに合理性があるのか?という点を主張立証していかなければならず、結構、その立証は難しいのではないでしょうか。
訴訟の行方を注目したいと思います。

新年明けましておめでとうございます。

弊事務所は1月5日(金)から本年の業務を開始いたしました。
本年が皆様にとりまして良い年となりますように、また弊事務所に
とっても飛躍の年になりますようにお祈りいたします。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

労働契約上の無期転換ルールをご存知でしょうか?
これは、2012年の労働契約法の改正により、新たに労働法18条に定められたルールです。

簡単に説明すると、契約社員・パート・アルバイトなどの期間が決められた労働契約をしている労働者(有期契約労働者と呼ばれています。)が、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。たとえば、 契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に無期転換の申込権が発生します。有期契約労働者が無期転換の申込みをした場合、使用者は、断ることができず、無期労働契約が成立することになります。

で、重要なのが、この労働契約法18条の無期転換ルールは、2013年4月1日から施行されたので、無期転換ルールにおける「5年間の期間」は、既に2013年4月1日から起算されており、来年2018年4月1日から無期転換権を取得する有期労働者が発生することです。

では、有期契約労働者が無期転換権を行使した場合、会社とこの労働者との契約関係はどのようになるのでしょうか?

労働契約法18条1項によれば、原則として、期間が有期から無期になること以外はそれまでの労働契約が適用されます。したがって、期間1年、週3日、1回あたり6時間、給料月額10万円のバイトが無期転換権を行使した場合には、単に期間が1年契約だったものが無期になるだけで、週3日、1回あたり6時間、給料月額10万円という労働条件には変更がないのです。

しかし、これには例外があります。すなわち、会社にこの無期転換権を行使した労働者(無期転換労働者)に適用される定めがある場合には、その定めが適用されることになります。たとえば、これまで正社員規則、契約社員規則、アルバイト規則しかなかった会社が、新たに、無期転換労働者に適用される規則を作れば、それが適用されることになりますが、もし特別にそのような規則を作らなかったのであれば、有期が無期になる点を除いて、従前は契約社員だった人には契約社員規則が、従前はアルバイトだった人にはアルバイト規則が、それぞれ適用されるということになるのでしょう。

というわけで、現在、来年4月1日以降に無期転換労働者が発生する可能性がある会社では、無期転換労働者に適用する規則を作っている会社も多いのではないかと推測します、その準備を後押しするために、厚生労働省では、ウェップで就業規則のサンプルを公開したりしていますね(http://muki.mhlw.go.jp/point/)。

ただ、ここで私には、どのように解釈したら良いのかわからない問題があります。

(1) たとえば、バイトばかりがいる会社が、バイトの無期転換権行使を阻止するために、無期転換労働者用の就業規則を作り、そこには、正社員並みの労働条件、たとえば、週5日労働、1回8時間労働、転勤命令に従う義務あり、残業命令に従う義務あり、もちろん給料は正社員なみに支払う、などと定められていたとする。そのため、多くのバイトは、事実上、無期転換権を行使できないでいる。このような就業規則は、実質的には、労働契約法18条の無期転換ルールの趣旨を没却するものであり、また労働契約の不利益変更禁止の精神も没却するから、無効なのではないか?

(2) IT業界では、案件をわたりあるく契約社員の方が正社員よりも給料が高い場合があるが、無期転換労働者規則において、給料は正社員並みにすることとした。しかし、そもそも無期転換権行使により給料を減額することは、上記と同様、無期転換ルールの趣旨を没却し、労働契約の不利益変更禁止の原則にも反するので、許されないのではないか?

労働法を専門にしている弁護士に、上記の質問を聞いてみましたが、まだ事例がなく、はっきりとした答えはないようです。

私の弁護士としての経験からすると、日本の会社は、上記(1)及び(2)のようなことは、法律上許されても社会からの非難を恐れてやらないところが多いのではないかと推測しますが、価値観の違う外資系の会社であれば、法律上許されるのであれば、実際にやるところが出てきそうです。
これからどのような解釈になるのか、注目してみたいと思います。

1.最近、私にとってはちょっと意外に思える判例と解釈論に触れました。

 それは、定期建物賃貸借契約における中途解約条項を無効と判断する判例と解釈論です。

 

 その判例というのは、東京地方裁判所平成25820日判決(ウエストロー・ジャパン文献番号2013WLJPCA08208001)で、確かに、「定期建物賃貸借契約である本件契約において、賃貸人に中途解約権の留保を認める旨の特約を付しても、その特約は無効と解される(借地借家法30条)。」と言い切っているのです。

 また、この判例と同様の結論を述べる文献にも触れました。それは、水本浩・遠藤浩・田山輝明編『基本法コンメンタール第二版補訂版/借地借家法』(2009年月、日本評論社)で、119頁に、「家主からの中途解約権を認める特約は、契約の終了期限が不確定なものとなるので、定期建物賃貸借契約の制度趣旨に鑑み、無効と解すべきである。」などと書いてあるのです。

 

2.しかしながら、私としては、どうもこの結論には納得できません。

 上記の判例のいう借地借家法第30条というのは、「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。」という規定ですが、普通賃貸借契約においても、賃貸人の中途解約権を留保するような特約は有効と解されており、なぜ普通賃貸借で許されるものが、定期建物賃貸借契約では許されなくなるのかが説明し切れていないように思います。

 おそらく上記の学説は、これに実質的な説明を示そうとして「家主の中途解約を認めると契約の終了期限が不確定となり定期建物賃貸借契約の制度趣旨に反する」という説明を試みているものと思われるのですが、定期建物賃借契約の制度趣旨は契約の更新のない賃貸借契約を認めようとするところにあり、更新の話と中途解約の話は別問題と考えることもできますので、この説明は説得的ではないように思います。

 

3.そもそも定期建物賃貸借契約の立法時の国会における議論を紐解いてみると、定期建物賃貸借契約であっても、普通賃貸借契約と同様、賃貸人・賃借人を問わず中途解約条項は有効であり、ただ賃貸人側から中途解約権を行使するには、借地借家法28条により正当事由が必要となるとの趣旨の答弁がなされており(第146回国会 参議院国土・環境委員会会議録438頁)、賃貸人の中途解約権を認める特約を無効とするような解釈はとられていません。

 

 また、文献上も、稲本洋之助・澤野順彦編『コンメンタール借地借家法 第3版』(平文社、20103月)301頁には、「賃貸人は、賃借人との合意によって中途解約権を留保している場合以外は、解約権を有しない。」と記載されており、合意した場合には賃借人の中途解約条項が有効であることが前提とされていたことは間違いありません。

 

4.そして、この問題にきちんとした理由を付して説明しているのが小澤英明、(株)オフィスビル総合研究所編『定期建物法ガイダンス』(住宅新報社、2005月)です。ここでは、小澤英明弁護士がとても分かりやすく説明してくださっているので、同書224頁〜225頁の該当箇所を引用したいと思います。

 

(以下、引用)

 解約権留保の定期建物賃貸借契約は定期借家契約に該当するのだろうか。例えば、「本契約は、期間を2年とし、更新しない。ただし、借主は6か月前の通知により、期間中といえでも本契約を解約することができる。」という規定がある建物賃貸借契約は定期建物賃貸借契約に該当するのだろうか。これは、期間の定めのある契約で、更新しないことが明確であるから、定期借家契約に該当する。中途解約権があれば必ずしも期間満了で終了するわけではないから、借地借家法新382項の説明ができないため定期借家ではないという屁理屈もあるかもしれないが、同条項はコウシンしない契約であることにつき不注意な借主による契約の締結を防止しようとする意図によるものであることは明白であるから、それ以上に同条項に意味をもたせるべきではない。

 それならば、借主に中途解約権がある場合はどうだろうか。これも同様である。問題は、中途解約権が貸主に与えられている場合に、中途解約権の効果が約定どおり認められるか否かということである。これは認められない。なぜならば、貸主による中途解約は借地借家法271項、28条および30条の適用があり、これを排除することは新しい借地借家法38条でも認められていないからである。つまり、中途解約権を行使する場合は、正当事由が必要である。もっとも、このような解釈に対しては、借地借家法271項は期間の定めのない賃貸借の場合の規定であり、また、28条は271項による解約の場合であるから、定期借家には適用がないのではないかという疑問も提起され得る。しかし、借地借家法271項および28条の規定は、民法の特則である。民法617条およびこれを準用している618条では、期間の定めのある賃貸借において、中途解約権が与えられている場合、解約申入れを行って3か月経過して終了することを定めている。これを貸主からの解約の場合は、6か月にして、かつ、正当事由の具備を求めたのが借地借家法271項および28条である。そうであれば、271項や28条は、期間の定めのある賃貸借にも適用がある。従って、貸主の中途解約権の行使には従来どおり、正当事由が必要と解せざるを得ない。

(引用終わり)

 

長々と引用しましたが、私としては、この小澤弁護士の見解が、立法時の考え方に最も合致しているし、とても説得的なので、適切であると思います。

 

5.なお、一番新しく出版された田山輝明・澤野順彦・野澤正充編『新基本法コンメンタール借地借家法』(新日本評論社、20145月)233頁〔吉田修平執筆部分〕では、賃借人の中途解約権を認める特約は有効であるし、しかも、その場合、中途解約をするには正当事由も要求されないとの見解が述べられています。面白い見解なので引用すると、

 

(以下、引用)

 本条〔注:借地借家法28条〕1項の文言上、「30条の規定にかかわらず」と定めていることで、本法26条および28条の規定が適用されないことが明確化されているから、定期借家契約においては賃貸人からの解約権の行使に正当事由が要求されることはない。

 そして民法618条によれば、当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方または双方がその期間内に解約をする権利を留保した場合には、同法617条を準用することになる。同法617条によれば、当事者の解約申入れにより、建物賃貸借は解約申入れから3カ月の経過によって終了する。

 すると、定期借家契約の場合については民法618条および同617条により、賃貸人からの期間内の解約権を定めたときは、解約申入れにより3カ月で終了するとかいすることになる。

 よって、賃貸人と賃借人が真に自由な意思によって合意した以上、その合意通りの効力が認められるものと解さざるを得ない。

(引用終わり)

 

 私としては、この見解に従えば、当事者間の合意により「正当事由」の有無の厄介な判断まで回避できるので、大変魅力的ではあると思うのですが、当初述べた通り、「更新の問題」と「正当事由の問題」は別と考えており、「30条の規定にかかわらず」と規定されていても、そこから、27条、28条の規定の不適用まで読み取るのは難しいと考えています。

 

6.ただ、いずれにしても、定期建物賃貸借契約の立法時の考え方、借地借家法と民法の条文解釈さらには普通賃貸借契約とのバランスからして、賃貸人側の中途解約権を無効とするような東京地方裁判所平成25820日判決の考え方には違和感があります。

 

この記事が、この論点を考えるにあたって一つの参考になれば幸いです。

 

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