カテゴリ:投稿者別 >   弁護士 飛田 博

現在、国会で審議中の住宅宿泊事業法案は、
(1) 住宅宿泊事業を都道府県知事への届け出制にする
(2) 年間提供日数の上限を180日とする
(3) 地域の実情を反映して、条例により年間提供日数等をさらに少なくできる
(5) 宿泊者の衛生の確保の措置等を義務付け
(6) 家主居住型(ホームスティ型)ではなく、家主不在型(ホスト不在型)の場合には、住宅管理業者と管理委託契約を締結しなければならない
(7) 住宅宿泊管理業業を営むには国土交通大臣の登録が必要
(8) 住宅宿泊仲介事業を営もうとするには、観光庁長官の登録が必要
という骨子です。

この中で、どうも私は「年間提供日数の上限を180日にする」という規制が理解できません。

2016年9月15日15時配信の毎日新聞のニュースによると、

「厚生労働省と環境庁でつくる専門家会議は6月、行政の許認可を得なくても住宅地で民泊を導入できるように新法を制定することを提言した。ただし、営業日数については、空き家の有効活用を求める不動産業界が上限設定に反対、営業への影響を懸念するホテル・旅館業界は年30日以下を主張し、まとまらなかった。
 政府は新法で、宿泊営業の規制を大幅に緩和し、自治体にインターネットで届け出をすれば、住宅地を含むどこでも営業できるようにする。営業日数は「社会通念上、半年を超えると一般民家とみなせなくなる」として、180日を上限として設定する。今後、与党内の議論を経て、閣議決定を目指す。」

とありますので、もともとはホテル・旅館業界の利益を守るために、このような営業日数規制が検討されたことがわかりますが、一般論として、ホテル・旅館業界は社会的弱者でもなく、その既得権益を保護することが営業の自由(憲法22条1項)の規制目的として正当化されるというのはおかしいでしょう。

そのため、政府は、ホテル・旅館業界の保護、などとはいわずに、上記の記事では、「社会通念上、半年を超えると一般民家とみなせなくなる。」などと言っているのですが(注)、いえいえいえ、法案を見ればわかるとおり、住宅宿泊事業とは、(「民家」ではなくて)「住宅」に人を宿泊させる事業であって、1年365日民泊をしても、(もはや「民」家ではなくなるとはいえるかもしれませんが)「住宅」が「住宅」でなくなるということはないでしょう。

いやいやいや、そういう物理的なことを言っているのではなくて、年間180日を超えて営業している場合は、もはやホテルや旅館と同じなのだから、旅館業法上の許可を取得しないさいという趣旨なんだとと考えたとしましょう。年間180日を超えて営業するような場合には、ホテルや旅館と同等の宿泊者保護、公衆衛生確保及び治安維持(テロ対策)目的からの規制をかけなければならなないのだと考えるのです。

しかし、もし宿泊者保護、公衆衛生及び治安維持上の必要があるのであれば、営業日数に関係なく規制をかけるべきであり、なぜ年間180日以上営業すれば急に規制が必要になるか説明がつきません。(そもそも民泊新法案では、宿泊事業者に、宿泊者保護、衛生確保及び宿泊者名簿の備え付け義務を課しているので、それに加えてなぜ営業日数を規制しなければならないのかについても説明が必要ですね。)。

さらに、特区で許可を取得して民泊をする場合には、営業日数規制がかからないことにも説明に窮します。特区であっても、その他の地域であっても、宿泊者保護、公衆衛生確保、治安維持(テロ対策)の必要性は同じはずです。

というわけで、私は、年間180日という営業日数規制には、かなり問題があると考えています。規制緩和を目的とした法案なのに、既得権益を保護するような規制が入っちゃった。

もっともホテル・旅館業界としては、(自分たちと比べると)民泊業者はあまり規制がかかっていないから、営業日数規制をしてもらわないと不公平だ(公正な競争環境が確保されていない。)というような反論はあり得るかもしれません。しかし、それは、ホテル・旅館業界に対する規制が厳しすぎないか?(または無駄なものがないか?)という観点からホテル・旅館業界に対する規制緩和として検討されるべきものでしょう。

(注)「民泊サービス」の制度設計のあり方について(「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書)(平成28年6月20日)の中にも、民泊について、
・住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものとする。(4頁)
・上記の「一定の要件」としては、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要である。(6頁)
・そのような「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、「住宅」そして扱い得るようなものとすることを考慮すると、制度の活用が図られるよう実効性の確保にも考慮しつつ、年間提供日数上限による制度を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適当な日数を設定する。(6頁)
と同じような説明がなされています。
しかし、なぜ営業日数について180日を上限とすると、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として合理性があるといえるのかはよくわかりませんね。


企業不動産法
小澤 英明
商事法務
2016-12-22



私の西村あさひ法律事務所時代に、大変お世話になった小澤英明先生が、今年(2017年)の1月に、商亊法務から『企業不動産法』という本を出しました。小澤先生といえば、知る人ぞ知る不動産分野の大家です。本の帯によると、「著者36年間の弁護士経験を詰め込んだ」ということですので、まさに待望の本です。

冒頭の「はじめに」によると、「本書は、企業が不動産を取得し、その使用収益を行うにあたって、また、売却するにあたって、さらには、土地を開発し建物を建築するにあたって、特に論点となりうる不動産法を解説することを目的としたものである。」とのこと。不動産に関する本というと、どうしても個人向けのものになりがちなのですが、それを企業の観点からまとめたもので、私のようなGeneral corporateをしている者にとっては嬉しい限りですね。

小澤先生の文章の特徴は、普通の法曹が書くような文章とは違って、とても論旨が明快で分かりやすいことだと思います。だいぶ前の本になってしまいましたが、西村あさひ法律事務所編の『M&A法大全』の中に、小澤先生が、M&A取引に関する不動産の論点についてまとめている章があるのですが、それが衝撃的にわかりやすくて、私にとっては本当に「目から鱗」でした。以来、私のバイブル的な本になっていますが、今回の「企業不動産法」も、そのような感動が味わえるではないかと読むのが楽しみです。きっとこのブログのネタ探しにも大いに役立つのではないかと思っています。

不動産に関する法務に興味のある方には是非ぜひ購入・一読をお勧めいたします。

前回紹介させていただいた東京地方裁判所平成29年1月26日判決(金融・商亊判例1514号43頁以下)では、取締役を解任する際の「正当な理由」(会社法339条2項)について規範定立がされています。

「会社法339条は、1項において株主総会決議による役員解任の自由を保障しつつ、当該役員の任期に対する期待を保護するため、2項において、当該解任に正当な理由がある場合を除き、当該解任がなければ当該役員が残存任期中及び任期終了時に得ていたであろう利益の喪失による損害について、会社に特別の賠償責任(法定責任)を負わせることにより、会社・株主の利益と当該役員の利益の調和を図ったものと解される。
 同項の「正当な理由」の内容も、以上のような会社・株主の利益と当該役員の利益の調和の観点から決せられるべきものであり、具体的には、会社において、当該役員に役員としての職務執行を委ねることができないと判断することもやむを得ない客観的な事情がああることをいうものと解するのが相当である。

この規範は、東京地裁平成8年8月1日判決(商亊1435号37頁)の「会社において取締役として職務の執行を委ねることができないと判断することもやむを得ない、客観的、合理的な事情が存在する場合」という規範とほとんど同じですので、会社法339条2項の「正当な理由」が問題となる案件では普通に使われているのでしょうね。

ただ、「会社において、当該役員に役員としての職務執行を委ねることができないと判断することもやむを得ない客観的な事情」といわれても、結局、(主観的な事情が含まれないことはわかりますが)「やむを得ない事情」が何なのか?については解釈の幅がありますので、「正当な理由」の基準として明確になったとは言えません。
故平井宜雄教授流にいうと「反論可能性がないダメな規範」ということになるでしょう。

(この規範自体は、「正当な理由」に関する法定責任説を採用することを表明したあとに言及されていますので、特に基準として明確化を図ったわけではなくて、債務不履行説や不法行為説と区別する意味で、法定責任説に従えばこういう定義になるよ、ということを言っているのかもしれませんね。)

で、東京地方裁判所商亊研究会編の類型別会社訴訟Ⅰを参照すると、「正当な理由」が認められる場合として、次の類型化がされています。

(1) 法令・定款違反行為(取締役が特定の業者と癒着し、不当に自己または第三者の利益を図った等々)

(2) 心身の故障(持病の悪化により職務遂行が困難等々)

(3) 職務への著しい不適任(会社の監査役が税理士として行った会社の税務処理において、明らかな過誤を犯して会社に損失を与えた等々)

(4) 経営上の判断の失敗
これについては、取締役の経営判断ミスにより会社に損害が発生したが、経営判断の原則からすれば当該取締役に損害賠償を請求できるとまでは言えないような場合に問題となります。

この場合に会社が当該取締役に損害賠償義務を負わなければ解任できないなんてことになると多数株主による会社支配に対する過度な制約になるとして「正当な理由」にあたるという見解(肯定説)と、
逆に、経営判断として問題がなかったのに解任取締役の損害賠償を失わせるのでは経営判断に対する過度な制約だという理由から「正当な理由」にはあたらないという見解(否定説・江頭先生)
があり、判例としては、広島地裁平成6年11月29日判決が、肯定説を採用していることが紹介されていますが、類型別会社訴訟Ⅰでは、どちらの見解をとるかの態度表明はされていません。
私の感覚としては、経営判断ミスにより会社に損失が発生しているような場合、経営者としての適任性に問題がある場合が多いので、肯定説が適当であるように思います。

なお、単なる「主観的な信頼関係の喪失」(この人はあまり好きになれない、とか嫌いだ!というような問題)による解任が「正当な理由」に該当しないことは争いがないようです。

で、冒頭に戻って、東京地方裁判所平成29年1月26日判決ですが、この判決では、会社側から代表取締役解任の「正当な理由」として、

① 業務手続に関するルールの不遵守
② 親会社グループの方針の不遵守
③ 研修義務不履行者への措置・処分の未策定
④ 離職者の多さ
⑤ 規程整備への非協力
⑥ 業績目標の未達
⑦ アドバイザリー業務体制の検討における非協調姿勢
など沢山の不適任事由が主張されましたが、事実関係が否定されていたり、認められるとしても解任を正当化するほど不当だったとは言えないとの認定を受けています。

そして、私が重要だと思うのは次の部分。

「もっとも、前記(2)ア(オ)の原告の行為や前記(6)アの原告の対応が、Zグループに属する被告Y2の代表取締役(社長)の行為として問題のあるものであり、これらを総合すると、原告の代表取締役としての適性に疑念を生じさせる面があることは否定できないところである。しかしながら、他方、証拠〔中略〕及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告Y2の前代表取締役会長である丁田から、業績が低迷して営業力も低い被告Y2の収益を改善し規模を拡大することを目的として、被告Y2に招聘されたものであり(そのことは被告Y1〔注:株主の親会社〕も前提としていた。)、原告自身、そのことを十分認識して同被告の代表取締役(社長)に就任したものであること、実際、被告Y2の損益は、平成24年6月期から黒字に転じ、原告の在任中は一応黒字を維持しており、同被告の従業員数も、平成24年6月期から平成27年6月期までの間の期末の人員を比較すると、毎年約100人ないし150人ずつ増加していることが認められる。これらの事実を総合すれば、原告が代表取締役として著しく不適任であると断ずることはできず、本人解任について会社法339条2項の「正当な理由」があるとまでいうこともできない。」

この部分を読むと、要するに、会社の成績が良い(少なくとも悪くはない)ときに(代表)取締役を解任した場合、かなり重大なミスや明確な不適任行為がない限り、「正当な理由」は認められにくい、ということが言えるかもしれませんね。

金融・商亊判例1514号(2017年4月15日号)43頁以下に掲載されている東京地裁平成29年1月26日判決を読んでいて、あれっ?と思ったので、紹介させていただきます。

簡単に事案を説明すると、ある会社Yが株主総会で(代表)取締役Xを解任したところ、そのAさんからY社に対し会社法第339条2項に基づき、損害賠償請求がなされたというものです。

参考:
339条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
 2  前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

この種の紛争では、解任に「正当な理由」があるか否かが争われることが多く、この訴訟でも主に「正当な理由」の有無が争われたわけですが、私が注目したのは、「損害」に関するY社の次の主張。

「会社と取締役との間で現に締結された委任契約において、会社の解除権及び解除に伴う処理が具体的に規定されているのであれば、かかる規定に従う限り、会社法339条2項において保護すべき取締役の損失(委任契約に基づく期待権の喪失)は生じず、賠償すべき「損失」を観念することもできないというべきである。本件においては、原告が被告の取締役に就任した際、本件委任契約が締結されており、同契約においては、被告は、約定の解約事由がなくても、いつでも本件委任契約を解約することができる旨定められ(10条2項)、かつ、その解除が被告の都合によるものであれば、原告は退職一時金を請求することができる旨も定められており(7条1項1号)、原告の利益の保護も十分に図られている。よって、本件解任については、会社法339条2項により賠償すべき「損害」は観念しえない。」

これに対して、この判例は、次のように述べて、上記のY社の主張を排斥しています。

「被告らは、前記第2の3(2)(被告らの主張)アのとおり、会社と取締役との間の委任契約において、会社の解散権及び解除に伴う処理が具体的に規定されているのであれば、かかる規定に従う限り、会社法339条2項において保護すべき取締役の損失(委任契約に基づく期待権の喪失)は生じず、賠償すべき「損害」を観念することもできない旨主張する。しかしながら、会社と取締役間の委任契約(取締役任用契約)において、会社の無条件の解除権や解除された場合の処理が具体的に規定されたとしても、そのことをもって、当該取締役の任用に対する期待権(前記1(1)参照)が生じないなどと解することはできず、同項の「損害」を観念することができないともいえないから、被告らの上記主張は採用することもできない。」

ちょっと、えっ!と思いませんか?
任用契約中で、取締役が会社の都合で解任された場合の処理(たとえば、会社は損害賠償として〇〇円支払う)というような決め事をしていても、当該(解任)取締役は、その決められた金額の他に、会社法339条2項に基づき会社に損害賠償請求をすることができるだなんて・・・。
判旨を読むと、「(解任された場合の処理が定められた任用契約があるからといって)当該取締役の任用に対する期待権が生じないなどと解することはできず」と言っているので、残任用期間中に貰える報酬合計額よりも高い退職金等が定められていれば339条2項の適用はなくなるのかなという気がしますが、しかし、どうして私的な利益について事前に当事者で決めておくことができないのかよくわかりません。

ちなみに、小説「ハゲタカⅡ」の主人公の鷲津政彦氏が、ホライズン・パートナーズから首切りにあったときに、1億ドル(1ドル100円で計算すると100億円)の大金が支払われる任用契約が締結されていたわけですが、この判例に従えば、鷲津氏がさらに稼げるようだと、100億円を超えて、ホライズン・パートナーに損害賠償請求をすることができるという結論になりそうですね。

ただ、金融・商亊判例のこの判例の解説部分には、

「なお、損害における判示であるが、本判決は、取締役任用契約において、会社の無条件の解除権や解除された場合の処理が具体的に規定されていることをもって、当該取締役の任期に対する期待権が生じないなどと秋することはできないとするが、これが、会社と役員等の特約により会社法339条2項を排除することを禁止する趣旨を判示したとまで読めるかどうかは議論の余地があろう。」
との記載もあります。

私の意見を言わせていただくと、会社と任用契約を締結するような役員は、(カルロス・ゴーン等々の)経営のプロフェッショナルであり、会社と対等な力関係の場合が多いでしょう。したがって、「会社と役員等の特約により会社法339条2項を排除することを禁止する」必要など全くありません。我が国では「契約自由」が原則なのですから、裁判所は、会社と役員等との間の契約を尊重すべきであり、任用契約中で会社法339条2項の適用が排除されているのであれば、当然、それは認められるべきでしょう。

2017年4月11日17時59分配信の産経ニュースより

「衆院法務委、12日の民法改正案採決で合意
衆院法務委員会は11日の理事懇談会で、12日に債権に関するルールを大幅に見直す民法改正案の採決を行うことを正式に決めた。」

今回の民法改正案が初めて国会に提出されたのが2015年3月ですので、はや2年が経過してしまいました。
この改正案自体の審議に時間がかかったというよりも、その時々で、政局的な話題が色々とあり、時間がかかってしまったということでしょうか。業界的には一時の熱が冷めている感もありますが、わたくし的には、民法の改正に大賛成ですので、今度こそ法改正を実現してほしいと思います。


現在、法務省の法制審議会民事執行法部会において、「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されている。

民事執行法上、債務者財産に関する情報を取得する制度としては、債務者本人に自分の財産を開示させる「財産開示制度」というものがある。しかし、この制度は、平成15年の法改正で導入されてから毎年1000件前後しか利用されず、しかも実際に債務者から開示されているのは全体の約35%(平成27年)にとどまっているという。つまり、使い勝手が悪い上に、実効性がないのだ。そこで、現在、前述の民事執行法部会では、財産開示制度の実効性を高めるために、その「見直し」が審議されている。
ただし、そもそも論として、債務者自身に自分の財産を開示させる制度には限界があると考えられるため(債務者には財産を開示しようとするインセンティブがない。)、その「見直し」と同時に、先ほどの「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されているというわけなのである。

私は、この方向性には大賛成で、民事執行法部会には、是非とも使い勝手がよく、実効性のある制度を作ってほしいと願っている。ただ、法務省の同部会のページを除いてみたところ、ちょっと気になった点があるので、その点を書いておきたい。

同部会の委員には、大学教授、弁護士、裁判官、法務省の役人、労働組合関係の方、消費者団体の方など、そうそうたるメンバーが顔をそろえ、委員会では自己の専門的な知見を披露しているようである。きっとそれらの知見を参考にして、部会の事務局サイドが具体的案をまとめていくのであろう。

それはそれでいいのではあるが、ただ、具体的な制度を作った場合、どれくらいの利用者が想定されるのかとか、銀行には毎月どれくらいの照会がいくことになるのかとかをきちんと数字でシミュレートしておいた方が良いと思うのだ。この辺のところは、裁判所や公証人役場で1年間でどれだけの債務名義が作られていいるのか?そのうちどれだけ強制執行の申し立てがあるのか?現在、弁護士会照会で3大メガバンクにどれくらい照会がなされているか?というようなところから、大体の推計値が出せるのではないだろうか。

このような数字は、制度利用者の中に確定判決等の債務名義所有者だけでなく、執行証書(公正証書)の所有者も含めるべきかとか、銀行の手数料をどうするかという議論にも大きな影響を与えると思う。この制度にかかわる裁判所の人員をどれだけの規模にしたらいいのかを考える上でも必要であろう。何よりも、財産開示制度のときのように、蓋を開けてみたら、あまり使われず、しかも、あまり役に立たなかったなんて不名誉なことを避けられるだろう。

もし既にやっているのであればすみません。

是非、民事執行法部会には良い制度案を作ってほしいと期待しています。よろしくお願いいたします。

ちょっと前の記事になりますが、MONEY Zineというサイトに2017年1月28日18時に掲載された「企業倒産、7年連続で減少傾向 一方、民事再生法を申請した企業は70%が消滅」という記事から引用します。


(以下、引用)
東京商工リサーチは、過去に民事再生法を申請した法人を追跡調査し、その結果を1月13日に発表した。対象は2000年4月1日から2016年3月31日に、負債1,000万円以上を抱えて民事再生法を申請した法人のうち、進捗が確認できた7,341社。
 
 民事再生法を申請した法人のうち、2016年8月末時点で事業継続を確認できた生存企業は2,136社で、全体の29.1%にとどまった。企業が消滅した理由を見ると破産が36.6%で最も多く、解散の11.9%、合併の3.6%が続いた。不明は47.1%だった。

 民事再生法では、裁判所から選任された監督委員が計画の遂行を3年間監督し、3年を経過すると監督を外れ、債務を完済していない企業も「終結」となる。企業の消滅時期をみると「終結前」に消滅した企業は42・5%で、「終結後」に消滅した企業は57.4%だった。計画の3年を経過して再生に取り組む企業は多いものの、倒産のマイナスイメージを物色できない企業も多く、経営改善は難しいケースが多いと同社は指摘している。

(私の感想)

 東京都中小企業再生支援協議会でサブマネージャーを1年2か月ほどしていた私のつたない経験からいうと、企業が再生するには、負債が適正規模に縮小されること及び事業が利益を生む体質になっていることの他に、金融機関との関係がうまくいっていることが必要です。これは、企業が順調に経営をしている場合であっても、企業のお金の入りと出には凸凹が出てくるので、そのへこんだ時に運転資金を融資してくれる金融機関がないと資金繰りが続かなくなってしまうからです。

 民事再生でスポンサーがついてくれて、そのスポンサーが手続き後の資金繰りを面倒見てくれるということであれば、この辺の心配はないのかもしれませんが、いわゆる自主再生で旧経営陣がそのまま会社を経営していくとなると、金融機関との関係が改善できない(つまり、新規に資金繰りの面倒を見てくれるところが見つからない。)ということになりがちなので、生き残りが難しくなっているのではないかと推測します。事業再生は、金融のこともわかっていないと成功させることは難しいですね。

ちょっと時間がたってしまいましたが、今年(平成29年)の1月31日に、注目すべき最高裁決定が出ました。

事案は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の容疑で逮捕され、処罰された方の氏名と居住する県の名称をキーワードとしてネットで検索すると、この方が逮捕されたことが記載されているウェブサイトが表示されるため、人格権侵害を理由に、検索業者に対して、この検索結果の削除を求める仮処分の申し立てをしたという案件です。

最高裁は、検索業者が検索結果を提供する行為には、検索業者の表現行為という側面を有し、他方、公衆がインターネット上に情報を発信したり、インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしていると前置きしたうえで、次のように判示しました。

「以上のような検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると、検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、当該事実の性質及び内容、当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、その者の社会的地位や影響力、上記記事等の目的や意義、上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、上記記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」

「当該公表されない法的利益が優越する」というだけではダメで(「きわどいけど、どちらかというと公表されない利益が優越する」というのではダメ)、そのことが「明らかな場合」と言えなければならないようです。つまり、公表されない利益がかなり優越しますといえる必要があるということでしょうか。

具体的な判断としても、

「児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は、他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが、児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており、社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されていることに照らし、今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また、本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると、本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる
以上の諸事情に照らすと、抗告人が妻子と共に生活し、〔中略〕罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても、本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」

として、児童買春をした者の公表されない法的利益が優越することが明らかとは言えないと判断しています。
プライバシー保護と表現の自由の交錯する非常に難しい問題ですが、児童買春をして処罰されると、刑は終了しても一生その記録がネット上からは消えず、非常に厳しい人生を送らなければならないということは言えそうです。児童買春なんてしてはいけません。

遺言書を書いておく必要があるのはどのような場合かというと、法定相続の結論が、意図している結論とかなり違ってくる場合であると思います。

そのような場合として、子供のいない夫婦の相続が挙げられます。

子供がいない夫婦の場合、配偶者は常に法定相続人になりますが(民法890)、その他は、親がいれば親が(民法889Ⅰ①)、親がいない場合でも兄弟がいれば兄弟が法定相続人として登場することになります(民法889Ⅰ②)。
相続分は、配偶者と親の場合には、配偶者が3分の2、親が3分の1です(民法900②)。

配偶者と兄弟姉妹の場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1ということになります(民法900③)。

ところで、子供がいない夫婦で配偶者が亡くなった場合、夫婦の意思としては、(もちろん例外はあるとは思いますが、通常は)配偶者に全財産が相続されると思っているのではないでしょうか?

しかし、遺言がなく法定相続が行われたとすると、上記のとおり、亡くなった夫または妻の親や兄弟姉妹が出てくるのです。親や兄弟姉妹が物わかりの良い人で「私たちは相続財産なんていらないわ。」などと言って相続放棄をしてくれれば良いのですが、中には、自分たちにも法定相続分があるから、遺産をもらって何が悪いの!ということで権利主張をしてくる場合もあるでしょう。

したがって、子供のいない夫婦にとっては、お互いに自分の財産をすべて相手に相続させる旨の遺言書を書いておく必要性は非常に高いといえるでしょう。

もちろん、遺言書を作っても遺留分という権利は侵害できませんが、親の遺留分は相続持ち分の2分の1ですので(民法1028②)、遺産紛争が起きても解決が楽になりますし、兄弟姉妹には遺留分は認められていませんので(民法1028)、既に親が亡くなっていて、配偶者の他には法定相続人が兄弟姉妹しかいない場合には、遺言書を書くことにより、自分の財産をすべて配偶者に引き継ぐことができますね。

なお、遺言書を作るときは、のちのち変な争いにならないように、公証人役場で公正証書遺言を作るのがおすすめです。

 最近、最高裁で興味深い判例(最高裁平成29131日判決がありました。

 もっぱら相続税の節税目的で養子縁組を利用する場合であっても、「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」と判断したものです。「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」なんて、とても法律家チックな言い方ですが、要するに、「もっぱら相続税の節税目的で養子縁組しても原則として縁組は有効ですよ。」という意味だと思っていただいて結構です。

 

 相続に関心がある方であればご承知のとおり、相続税の基礎控除額は、現在、


               3,000
万円+600万円×法定相続人数

 

で計算されます。
 したがって、おじいさん・おばあさんと孫を養子縁組させて、
おじいさん・おばあさんの法律上の子供(=定相続人)を増やしておけば、おじいさん・おばあさんが亡くなったときも、相続税の基礎控除額が大きくなり、それだけ節税効果が得られます。

 もちろん、税務当局側も対策を立てていて、相続税法上、養子縁組で相続人にできる人数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人しか認められません。しかし、いずれにしても養子縁組により600万円から1200万円は相続税の基礎控除額を増やすことができるのです。そのため、ある税理士法人によれば、相続財産額が5億円以上を超えるケースの相談において、節税対策に養子縁組が使われていたのは約4割にものぼるようです。

 相続の分野では、節税対策としての養子縁組が定着していると考えてよいでしょう。

 

 しかし、養子縁組制度が、このような使われ方をしているのはちょっと変ではないでしょうか?そこでちょっと調べてみたのですが、そもそも我が国の養子縁組制度は私のイメージとはかけ離れていました。

 一橋大学経済研究所の森口教授によると、日本では年間で約8万件もの養子縁組がされています。日本の2倍以上の人口を有するアメリカの養子縁組の件数が11万件ということですので、いかに日本の養子縁組の数が多いかわかるかと思います。

 しかし、その内容は全然違います。日本では、67%が婿養子など大人を養子にとる「成年養子」だというのです。その他は、25%が配偶者の子供を養子にする「連れ子養子」、7%が孫や甥、姪を養子にする「血縁養子」。血族でも姻族でもない子供を養子にする「他児養子」はわずか1%に過ぎないといいます。

 これに対して、アメリカでは養子の対象はほぼすべて未成年だといいます。そのうち40%が「連れ子養子」、10%が「血縁養子」ですが、残りの50%は「他児養子」だといいます。

 なぜこのような結果になっているかですが、日本の養子縁組制度は、基本的には家名や家業の承継(お家の存続)を目的にするための制度になっているとの理解がされています。えっ、「お家」って、まだそんなに強く残っていたの?という感じですが、まだまだ根強いようですね。

 これに対して、アメリカの場合は、基本的には、さまざまな理由で実親の保護に恵まれない子供たちに新しい家庭を与える制度として機能しているということのようです。

 

 まぁ、それぞれの国の歴史や文化を反映して今の制度になっているのでしょうから、どちらが優れている・劣っているというような問題ではありません。ただ、日本では結婚の高齢化などもあり子供がいない夫婦が増えていますし、他方で、不幸にも養護施設に長期間滞在せざるをえない子供たちも多いと聞いていますので、なんとか養子縁組を「要保護児童に家庭を与える制度」として活発に利用できないものでなんですかね?

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