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2017年4月11日17時59分配信の産経ニュースより

「衆院法務委、12日の民法改正案採決で合意
衆院法務委員会は11日の理事懇談会で、12日に債権に関するルールを大幅に見直す民法改正案の採決を行うことを正式に決めた。」

今回の民法改正案が初めて国会に提出されたのが2015年3月ですので、はや2年が経過してしまいました。
この改正案自体の審議に時間がかかったというよりも、その時々で、政局的な話題が色々とあり、時間がかかってしまったということでしょうか。業界的には一時の熱が冷めている感もありますが、わたくし的には、民法の改正に大賛成ですので、今度こそ法改正を実現してほしいと思います。


現在、法務省の法制審議会民事執行法部会において、「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されている。

民事執行法上、債務者財産に関する情報を取得する制度としては、債務者本人に自分の財産を開示させる「財産開示制度」というものがある。しかし、この制度は、平成15年の法改正で導入されてから毎年1000件前後しか利用されず、しかも実際に債務者から開示されているのは全体の約35%(平成27年)にとどまっているという。つまり、使い勝手が悪い上に、実効性がないのだ。そこで、現在、前述の民事執行法部会では、財産開示制度の実効性を高めるために、その「見直し」が審議されている。
ただし、そもそも論として、債務者自身に自分の財産を開示させる制度には限界があると考えられるため(債務者には財産を開示しようとするインセンティブがない。)、その「見直し」と同時に、先ほどの「第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の創設」が審議されているというわけなのである。

私は、この方向性には大賛成で、民事執行法部会には、是非とも使い勝手がよく、実効性のある制度を作ってほしいと願っている。ただ、法務省の同部会のページを除いてみたところ、ちょっと気になった点があるので、その点を書いておきたい。

同部会の委員には、大学教授、弁護士、裁判官、法務省の役人、労働組合関係の方、消費者団体の方など、そうそうたるメンバーが顔をそろえ、委員会では自己の専門的な知見を披露しているようである。きっとそれらの知見を参考にして、部会の事務局サイドが具体的案をまとめていくのであろう。

それはそれでいいのではあるが、ただ、具体的な制度を作った場合、どれくらいの利用者が想定されるのかとか、銀行には毎月どれくらいの照会がいくことになるのかとかをきちんと数字でシミュレートしておいた方が良いと思うのだ。この辺のところは、裁判所や公証人役場で1年間でどれだけの債務名義が作られていいるのか?そのうちどれだけ強制執行の申し立てがあるのか?現在、弁護士会照会で3大メガバンクにどれくらい照会がなされているか?というようなところから、大体の推計値が出せるのではないだろうか。

このような数字は、制度利用者の中に確定判決等の債務名義所有者だけでなく、執行証書(公正証書)の所有者も含めるべきかとか、銀行の手数料をどうするかという議論にも大きな影響を与えると思う。この制度にかかわる裁判所の人員をどれだけの規模にしたらいいのかを考える上でも必要であろう。何よりも、財産開示制度のときのように、蓋を開けてみたら、あまり使われず、しかも、あまり役に立たなかったなんて不名誉なことを避けられるだろう。

もし既にやっているのであればすみません。

是非、民事執行法部会には良い制度案を作ってほしいと期待しています。よろしくお願いいたします。

ちょっと前の記事になりますが、MONEY Zineというサイトに2017年1月28日18時に掲載された「企業倒産、7年連続で減少傾向 一方、民事再生法を申請した企業は70%が消滅」という記事から引用します。


(以下、引用)
東京商工リサーチは、過去に民事再生法を申請した法人を追跡調査し、その結果を1月13日に発表した。対象は2000年4月1日から2016年3月31日に、負債1,000万円以上を抱えて民事再生法を申請した法人のうち、進捗が確認できた7,341社。
 
 民事再生法を申請した法人のうち、2016年8月末時点で事業継続を確認できた生存企業は2,136社で、全体の29.1%にとどまった。企業が消滅した理由を見ると破産が36.6%で最も多く、解散の11.9%、合併の3.6%が続いた。不明は47.1%だった。

 民事再生法では、裁判所から選任された監督委員が計画の遂行を3年間監督し、3年を経過すると監督を外れ、債務を完済していない企業も「終結」となる。企業の消滅時期をみると「終結前」に消滅した企業は42・5%で、「終結後」に消滅した企業は57.4%だった。計画の3年を経過して再生に取り組む企業は多いものの、倒産のマイナスイメージを物色できない企業も多く、経営改善は難しいケースが多いと同社は指摘している。

(私の感想)

 東京都中小企業再生支援協議会でサブマネージャーを1年2か月ほどしていた私のつたない経験からいうと、企業が再生するには、負債が適正規模に縮小されること及び事業が利益を生む体質になっていることの他に、金融機関との関係がうまくいっていることが必要です。これは、企業が順調に経営をしている場合であっても、企業のお金の入りと出には凸凹が出てくるので、そのへこんだ時に運転資金を融資してくれる金融機関がないと資金繰りが続かなくなってしまうからです。

 民事再生でスポンサーがついてくれて、そのスポンサーが手続き後の資金繰りを面倒見てくれるということであれば、この辺の心配はないのかもしれませんが、いわゆる自主再生で旧経営陣がそのまま会社を経営していくとなると、金融機関との関係が改善できない(つまり、新規に資金繰りの面倒を見てくれるところが見つからない。)ということになりがちなので、生き残りが難しくなっているのではないかと推測します。事業再生は、金融のこともわかっていないと成功させることは難しいですね。

ちょっと時間がたってしまいましたが、今年(平成29年)の1月31日に、注目すべき最高裁決定が出ました。

事案は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の容疑で逮捕され、処罰された方の氏名と居住する県の名称をキーワードとしてネットで検索すると、この方が逮捕されたことが記載されているウェブサイトが表示されるため、人格権侵害を理由に、検索業者に対して、この検索結果の削除を求める仮処分の申し立てをしたという案件です。

最高裁は、検索業者が検索結果を提供する行為には、検索業者の表現行為という側面を有し、他方、公衆がインターネット上に情報を発信したり、インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしていると前置きしたうえで、次のように判示しました。

「以上のような検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると、検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、当該事実の性質及び内容、当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、その者の社会的地位や影響力、上記記事等の目的や意義、上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、上記記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」

「当該公表されない法的利益が優越する」というだけではダメで(「きわどいけど、どちらかというと公表されない利益が優越する」というのではダメ)、そのことが「明らかな場合」と言えなければならないようです。つまり、公表されない利益がかなり優越しますといえる必要があるということでしょうか。

具体的な判断としても、

「児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は、他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが、児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており、社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されていることに照らし、今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また、本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると、本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる
以上の諸事情に照らすと、抗告人が妻子と共に生活し、〔中略〕罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても、本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」

として、児童買春をした者の公表されない法的利益が優越することが明らかとは言えないと判断しています。
プライバシー保護と表現の自由の交錯する非常に難しい問題ですが、児童買春をして処罰されると、刑は終了しても一生その記録がネット上からは消えず、非常に厳しい人生を送らなければならないということは言えそうです。児童買春なんてしてはいけません。

遺言書を書いておく必要があるのはどのような場合かというと、法定相続の結論が、意図している結論とかなり違ってくる場合であると思います。

そのような場合として、子供のいない夫婦の相続が挙げられます。

子供がいない夫婦の場合、配偶者は常に法定相続人になりますが(民法890)、その他は、親がいれば親が(民法889Ⅰ①)、親がいない場合でも兄弟がいれば兄弟が法定相続人として登場することになります(民法889Ⅰ②)。
相続分は、配偶者と親の場合には、配偶者が3分の2、親が3分の1です(民法900②)。

配偶者と兄弟姉妹の場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1ということになります(民法900③)。

ところで、子供がいない夫婦で配偶者が亡くなった場合、夫婦の意思としては、(もちろん例外はあるとは思いますが、通常は)配偶者に全財産が相続されると思っているのではないでしょうか?

しかし、遺言がなく法定相続が行われたとすると、上記のとおり、亡くなった夫または妻の親や兄弟姉妹が出てくるのです。親や兄弟姉妹が物わかりの良い人で「私たちは相続財産なんていらないわ。」などと言って相続放棄をしてくれれば良いのですが、中には、自分たちにも法定相続分があるから、遺産をもらって何が悪いの!ということで権利主張をしてくる場合もあるでしょう。

したがって、子供のいない夫婦にとっては、お互いに自分の財産をすべて相手に相続させる旨の遺言書を書いておく必要性は非常に高いといえるでしょう。

もちろん、遺言書を作っても遺留分という権利は侵害できませんが、親の遺留分は相続持ち分の2分の1ですので(民法1028②)、遺産紛争が起きても解決が楽になりますし、兄弟姉妹には遺留分は認められていませんので(民法1028)、既に親が亡くなっていて、配偶者の他には法定相続人が兄弟姉妹しかいない場合には、遺言書を書くことにより、自分の財産をすべて配偶者に引き継ぐことができますね。

なお、遺言書を作るときは、のちのち変な争いにならないように、公証人役場で公正証書遺言を作るのがおすすめです。

 最近、最高裁で興味深い判例(最高裁平成29131日判決がありました。

 もっぱら相続税の節税目的で養子縁組を利用する場合であっても、「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」と判断したものです。「ただちに養子縁組の意思がないとはいえない」なんて、とても法律家チックな言い方ですが、要するに、「もっぱら相続税の節税目的で養子縁組しても原則として縁組は有効ですよ。」という意味だと思っていただいて結構です。

 

 相続に関心がある方であればご承知のとおり、相続税の基礎控除額は、現在、


               3,000
万円+600万円×法定相続人数

 

で計算されます。
 したがって、おじいさん・おばあさんと孫を養子縁組させて、
おじいさん・おばあさんの法律上の子供(=定相続人)を増やしておけば、おじいさん・おばあさんが亡くなったときも、相続税の基礎控除額が大きくなり、それだけ節税効果が得られます。

 もちろん、税務当局側も対策を立てていて、相続税法上、養子縁組で相続人にできる人数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人しか認められません。しかし、いずれにしても養子縁組により600万円から1200万円は相続税の基礎控除額を増やすことができるのです。そのため、ある税理士法人によれば、相続財産額が5億円以上を超えるケースの相談において、節税対策に養子縁組が使われていたのは約4割にものぼるようです。

 相続の分野では、節税対策としての養子縁組が定着していると考えてよいでしょう。

 

 しかし、養子縁組制度が、このような使われ方をしているのはちょっと変ではないでしょうか?そこでちょっと調べてみたのですが、そもそも我が国の養子縁組制度は私のイメージとはかけ離れていました。

 一橋大学経済研究所の森口教授によると、日本では年間で約8万件もの養子縁組がされています。日本の2倍以上の人口を有するアメリカの養子縁組の件数が11万件ということですので、いかに日本の養子縁組の数が多いかわかるかと思います。

 しかし、その内容は全然違います。日本では、67%が婿養子など大人を養子にとる「成年養子」だというのです。その他は、25%が配偶者の子供を養子にする「連れ子養子」、7%が孫や甥、姪を養子にする「血縁養子」。血族でも姻族でもない子供を養子にする「他児養子」はわずか1%に過ぎないといいます。

 これに対して、アメリカでは養子の対象はほぼすべて未成年だといいます。そのうち40%が「連れ子養子」、10%が「血縁養子」ですが、残りの50%は「他児養子」だといいます。

 なぜこのような結果になっているかですが、日本の養子縁組制度は、基本的には家名や家業の承継(お家の存続)を目的にするための制度になっているとの理解がされています。えっ、「お家」って、まだそんなに強く残っていたの?という感じですが、まだまだ根強いようですね。

 これに対して、アメリカの場合は、基本的には、さまざまな理由で実親の保護に恵まれない子供たちに新しい家庭を与える制度として機能しているということのようです。

 

 まぁ、それぞれの国の歴史や文化を反映して今の制度になっているのでしょうから、どちらが優れている・劣っているというような問題ではありません。ただ、日本では結婚の高齢化などもあり子供がいない夫婦が増えていますし、他方で、不幸にも養護施設に長期間滞在せざるをえない子供たちも多いと聞いていますので、なんとか養子縁組を「要保護児童に家庭を与える制度」として活発に利用できないものでなんですかね?

2017119日日本経済新聞電子版から

 

「みずほ銀行は民事裁判の支払い義務を果たさない債務者の預金口座情報について、債権者からの請求に応じて開示を始めた。確定判決や和解調書など債務の存在を確認できる文書を示し、弁護士を通じて照会することが条件。既に三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行は開示しており、3メガ銀の対応がそろった。」

 

「ただ応じていない金融機関もあり、法務省は裁判所が開示請求できるよう法改正する方針だ。」

 

わざわざ裁判までして、債務者に金銭の支払いを命じる判決を得たのに、現状、債務者が預金口座をどこかの銀行に移してしまうことにより容易に強制執行を回避できる結果となってしまっていることは以前このブログでも触れたとおりです(実際、裁判で多額の支払いを命じられておきながら、かなり経済的に恵まれた暮らしをしているように見られる方が散見されます。)。
これは、債権者が債務者の口座情報を調査する手段がないことに起因しています。

債権者側の対抗手段としては、弁護士を雇って、弁護士法23条の2が定めている弁護士会照会制度を使い、各弁護士会を通じて、債務者の口座があるか銀行に照会することが考えられますが、これまで多くの銀行では、顧客情報の保護を理由にこの照会に対する回答を拒絶していました。


しかし、この記事にあるように、現在、確定判決や和解調書があることを条件としていますが、三菱東京
UFJ銀行、三井住友銀行及びみずほ銀行の3メガ銀行が、弁護士会照会に対応していただけるようになっています。

 

私は日本社会のあり方として、裁判をして確定判決まで得たのに、債務者の口座情報を調べる手段がなく、判決が絵に描いた餅になるなどということはおかしいのではないかと思っています。裁判所に金銭の支払いを命じられても支払わない債務者の口座情報をそこまで保護する必要はないのではないかと。そういう観点からすると、この3メガ銀行の判断は素晴らしいと思います。行内でいろいろな意見があったのだろうと想像しますが、あるべき日本社会を見据えたまさに英断だと思います。弁護士会がメガ3銀行と協定を締結することによりこのような対応が実現したとのことですので、弁護士会の努力にも感謝したいと思います。

 

記事の最後のところで、「法務省は裁判所が開示請求できるよう法改正する方針」とのことなので、今後民事執行法の一部改正を睨みながら、いろいろな動きが出てくると思います。その点も注目ですね。

 

なお、弊事務所ではさっそくこの弁護士会照会制度を使わせていただきました!

群馬県太田市と栃木県足利市、この隣り合った半径10キロ圏内の地域で、1979年から1996年までの17年間に、犯行の手口が似通った次の5件の幼女誘拐殺害事件(北関東連続幼女誘拐殺人事件)が起きる。

1.1979年 栃木県足利市  MFちゃん  5

2.1984年 栃木県足利市  YHちゃん   5

3.1987年 群馬県尾島町  TOちゃん  8

4.1990年 栃木県足利市  MMちゃん   4歳

5.1996年 群馬県太田市  YMちゃん    4

このうち、4.のMMちゃんについては、幼稚園の送迎用バス運転手の菅家利和さん(当時45歳)が逮捕され、現場に残された精液のDNA型鑑定が決定的な証拠となり無期懲役となった。菅家さんは、1から3の事件についても自白をしていたから、起訴はされていないものの、世間的には1から4はすべて菅家さんがやったものというふうに思われていた(5については、遺体も発見されていないので別事件と思われていた。)。

 

ところが、菅家さんが17年間も刑務所で服役した後の2009年になって、菅家さんの再審請求に基づきもう一度、現代の進んだ技術のもとでDNA型の鑑定をしてみたら、現場に残された精液と菅家さんのDNA型が違っていたことが判明し、菅家さんは再審無罪となった。以上は、有名な足利冤罪事件であり、当時大々的に報道されたので、ご存知の方も多いだろう。

 

この本は、この足利冤罪事件の裏に何があったかを日本テレビの調査報道の記者の清水潔さんが書いたものだ。正確にいうと、何があったかを書いたというよりも、清水さんは、独自の取材により初めから菅家さんは冤罪だと気が付いて、日本テレビで冤罪キャンペーンを打つなどして、ほぼ当事者的に活動する。そして、菅家さんの再審無罪を勝ち取るだけではなく、なんと真犯人(「ルパン」似の男。以下「ルパン」という。)の存在まで突き止めて、その情報を検察・警察に流し、逮捕させようと尽力する。その中で、警察や検察の自己保身や、マスコミの捜査当局との癒着など様々な問題点が明るみになるのだ。

 

ノンフェクション物ではあるが、ミステリー小説のような面もあり(実際、ノンフェクションなのに、ミステリー賞も受賞している。)、読者にぐいぐい読ませる。下手な小説よりもよほど迫力もある。私はこの本の存在を知っていたのに、なぜこれまで読まなかったのか?と本当に後悔した。読んで絶対損のない本です。

ぜひぜひ一読をお勧めします。

 

(以下、ネタバレです。)

この本には、我々法曹に対する重大な問題提起を含んでいます。それは、清水記者が真犯人を突き止めて、犯人が現場に残したDNA型とルパンのDNA型が一致しているという証拠もあるのに、検察・検察が動かず、いまだにルパン似の男が裁かれもしないで毎日パチンコでもしながらのうのうと暮らしていることです。

それで良いのか?ということになります。良いわけありません。

 

ただ、問題は、はたして「犯人が現場に残したDNA型とルパンのDNA型が一致している」といえるのか?というところなのです。

 

清水さんの主張は次のとおりです。

菅家さんの足利冤罪事件の再審では、弁護側のDNA型判定(本田鑑定)と検察側のDNA

型鑑定(鈴木鑑定)が行われていて、本田鑑定によれば、被害者のMMちゃんのシャツ(犯人の精液が付着している。)からは、そもそも事件当初に科警研(科学警察研究所)が行ったDNA型鑑定で犯人のDNA型とされた18-30とは別のDNA型18-24が検出されており、その18-24とルパンのDNA型が合致する。だからルパンは真犯人なのだ、というのである。

これに対して検察側の見解は、信頼できるのは検察の依頼により行われた鈴木鑑定であり、鈴木鑑定では、18-24などというDNA型は出されておらず、したがって、真犯人のDNA型は科警研鑑定の18-30であり、ルパンの18-24とはDNA型において異なる(つまりルパンは真犯人ではない)、というのだ。

これに対しては、さらに清水記者の反論があり、科警研の当初鑑定では、被害者(MMちゃん)のDNA型鑑定が行われていない。そこで、MMちゃんのへその緒からMMちゃんのDNA型鑑定をするとともに、MMちゃんと日ごろから接触していた母親のDNA型判定をしてみると、MMちゃんは18-31及び母親は30-31だった。つまり、科警研の当初の18-30というのは、このMMちゃんと母親のDNA型を掘り当ててしまった結果なのではないか?というのだ。

では、どっちの主張が正しいのか?

これは簡単なことで、まだMMちゃんのシャツ(真犯人の精液がついている。)が残っているので、最新の技術を使って、もう一度DNA型鑑定を行い、18-24が検出されるか確かめればよいのだ。本田鑑定と鈴木鑑定は、同じシャツといっても別々の箇所を資料としているので、本田鑑定で検出された18-24型が鈴木鑑定で検出されないことはあり得る。したがって、もう一度行ってみればよいだけのことなのだ。

しかし、そのシャツは現在検察が押収したままなのに、再鑑定は行われず、かつ、MMちゃんの母親に返却もされない。MMちゃんの母親が返却を要請しても、「MMちゃんの父親(妻とは離婚している。)が『検察がもっていてくれと。』と言っている。」との理由から、検察は返そうとしないのだという。そして、北関東幼女連続誘拐殺害事件の真犯人(ルパン)も逮捕しようとはしない。

このような事態について、清水記者は、もし、科警研が真実ちゃんや母親のDNA型を犯人のものと間違ったのであれば、科警研の信用は地に墜ち(きわめて初歩的なミス)、既に刑が執行されている福岡の飯塚事件などの他の事件にも波及する可能性があるから、検察、警察、科警研にとっては絶対に認められない一線であり、北関東幼女連続誘拐殺害事件の真犯人を逮捕するよりも、検察、警察、科警研の信用を守る方が重要だと判断しているのだと推測している。

 

で、実際のところはどうなのでしょう?

 

私は、自分も含め、あらゆる人はボジション・トークを免れないと思っています。弁護士という職業柄、ポジショントークであることすら気が付かず、心の底から嘘を真実と思って主張されている方にもときどき出会います。過去の警察や検察の不祥事のときに、警察や検察が組織防衛に走ったことも知っています。だから、清水記者の推測にも一理あるとは思うのです。

 

ただ、本当にそうなのかな?本当にそうだとすると、法曹の一人としてあまりにも悲しすぎます。いやいや、過去の検察官による証拠偽造事件のときも、検察内部から隠ぺいを告発する声はあったので、そこまで腐ってはいないのではないかな(個人的に信頼できる検察官を知っていますしね。)。というわけで、検察・警察の関係者(現役は無理だろうから、OB等々)から、この清水記者の本に対する反論を出してもらいたい、というように思います。そうでないとこの本の内容が真実になってしまうような・・・

最近ちょっと残念な最高裁判決(H28.10.18)があったので紹介します。

 

前提として、弁護士には、弁護士法23条の2という条文により、弁護士会を通じて、公の団体や会社等の私的な団体に対して事実の照会をすることができます。条文の記載は次のとおりです。

 

(報告の請求)

第二十三条の二  弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

 

これは、国民の権利を守るためには、弁護士にこのような照会権限を認めた方がいいだろうという判断からなのですが、ただ、個々の弁護士に照会権限を認めるのは適当でない場合があるので(悪い弁護士もいますからね。)、弁護士会に適切な照会か否かを判断させて、弁護士会を通じて照会権限を行使させようとしているのです。

 

ところが、近年の個人情報保護の高まりなのでしょうか、最近、この弁護士会照会を拒絶する団体が増えています。そのため、個々の弁護士が、拒絶した団体に対し、照会に回答する義務があるにもかかわらず回答を拒否するのは不当だとして損害賠償を求める案件が頻発したのですが、裁判所は、弁護士法第23条の2に基づく報告義務は弁護士会に対するものであり、個々の弁護士に対するものではないから、個々の弁護士に対する不法行為は成立しない(拒絶しても、照会をした弁護士に対して損害賠償を支払わなくて良い)という判例を連発したのです。

 

そこで、今度は、個々の弁護士ではなく、弁護士会自体が立ち上がりました。弁護士会が、照会を拒絶した団体に対して、損害賠償を求めるようになったのです。

事案は次の通り。

 

1.AさんがBさんに対して、株式の購入代金名目でお金を騙し取られたと主張して、損害賠償を求める訴訟を提起したところ、おそらくAさんの主張に理由があったのでしょう、BさんがAさんに損害賠償金を支払うことを内容とする訴訟上の和解が成立しました。

 

2.しかし、Bさんが和解に従って損害賠償を支払わず、かつ、住む場所も移転して(しかも住民票は移転していない)、どこにいるかわからず、ただ郵便物は転送されている形跡があったため(ここまでは、判決には記載されていない私の推測です。)、Aさんの弁護士は、強制執行準備のため、所属する弁護士会を通じて、日本郵便株式会社に対し、転居届が提出されているか及び転居届記載の新住所について弁護士法23条の2に基づく照会をしました。

 

3.しかし、(最高裁判決からは理由が不明ですが)日本郵便は、報告を拒絶。

 

4.そのため、弁護士会が日本郵政を相手に、不法行為を理由に損害賠償を求めました。

 

というのが事案の概要です。

原審の名古屋高裁は、1万円という信じられないような少額ですが、日本郵政の不法行為を認め、弁護士会への損害賠償の支払を命じました。

 

ところが、最高裁は、次のように述べて、損害賠償の成立を否定しました。

 

「23条照会の制度は、弁護士が受任している事件を処理するために必要な事実の調査等をすることを容易にするために設けられたものである。そして、23条照会を受けた公務所又は行使の団体は、正当な理由がない限り、照会された事項について報告をすべきものと解されるのであり、23条照会をすることが上記の公務所又は行使の団体の利益に重大な影響を及ぼし得ることなどに鑑み、弁護士法23条の2は、上記制度の適正な運用を図るために、照会権限を弁護士会に付与し、個々の弁護士の申出が上記制度の趣旨に照らして適切であるか否かの判断を当該弁護士会に委ねているものである。そうすると、弁護士会が23条照会の権限を付与されているのは飽くまで制度の適正な運用を図るために過ぎないのであって、23条照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するとは解されない。したがって、23条照会に対する報告を拒絶する行為が、23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはないというべきである。」

 

(以下、私の感想です。)

 

1.えっ!信じられない。とても変な理屈だ。個々の弁護士が損害賠償請求をしたら、弁護士会照会に基づく報告は照会を申し立てた個々の弁護士に対する義務ではないから、という理由で損害賠償を否定しておきながら、弁護士会が損害賠償請求をすると、今度は、弁護士会には法律上保護されるべき利益はないから、という理由で損害賠償請求を否定する。これでは、弁護士会照会制度が侵害されても、誰も利益を侵害されないということなのか???

 

2.この判決は、弁護士会の主位請求である損害賠償請求については弁護士会に法的に保護されるべき利益はないとして否定しておきながら、予備的請求である報告義務確認請求については、「さらに審理をつくさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。」などと仰っている。えっ、えっ、じゃあ、差戻審の名古屋高裁で、日本郵政に報告義務があると確認されたらどうなるの?義務違反が認定されても誰も損害賠償を請求できない?義務加害者の違反が認定されても、損害賠償も請求できないなんて、そんな法律上義務、意味ないじゃん!

 

3.法律学は科学ではないので、原審のように弁護士会には法律上の利益はあると考えることもできるし、最高裁のように法律上の利益はないとも考えることができます。要するに重要なのは価値判断です。ところで、この判決は、いったい誰のどのような利益を保護しているのだろう?詐欺の被害者であるAさんが権利の実現に苦しんでいるのに、Bさんは単に居住場所を変えることで(転送届によって郵便物もちゃんと受領しながら)のうのうと暮らしている。まさかAさんの権利実現よりもBさんのプライバシーを優先しているのではないですよね?おそらく、そうではなくて、日本郵政がいちいち照会に応じなければならない不利益を優先したのかもしれないけど、それってAさんの権利実現よりも優先すべきなのかな?それで良い社会になるのかな?この判決を出した裁判官が一回でもAさんの立場になってみれば、きっとわかると思うな。

少々前の記事ですが、201685日の朝日新聞DIGITALに「口座特定、裁判所主導へ 養育費や賠償金不払い対策」との見出しで、次のような記事が載っていました。

裁判などで確定した賠償金や子どもの養育費が不払いにならないように、支払い義務がある人の預貯金口座の情報を金融機関に明らかにさせる仕組みを法務省が導入する。裁判所による強制執行をしやすくする狙いがある。今秋にも、法相の諮問機関「法制審議会」に民事執行法の改正を諮る見通しで、2018年ごろの国会提出をめざす。

私は、かねてから、我が国の債権差押え制度、特に預貯金の差押えには、どこの支店に口座があるかまで調べなければならず(口座番号までは不要)、結局そこまで調べるのはかなりの時間と費用をかけなければならないので、悪い債権者は容易に差押えを免れることができて、裁判の実効性が確保できず、大問題であると訴えていました。記事では、養育費の問題が強調されていますが、民事裁判の判決全体の実効性を無にする大問題です。

ここにきて、ようやく法改正に動き出したということで、日本の民事制度にとっては朗報だと思います。

で、肝心の内容ですが、記事によると

法務省の見直し案では、債権者は、債務者が住む地域の地銀など口座がある可能性がある金融機関ごとに確認を裁判所に申し立てられる。裁判所は各金融機関に照会。口座がある場合はその金融機関の本店に対し、差し押さえる口座のある支店名や口座の種類、残高などを明らかにするよう命じる制度を新たに設ける。債権者にとっては、債務者が口座を持つ金融機関名が特定できなくても、見当がつけば足りることになる。

とのことです。

私としては、実効性があって、かつ、使い易い制度となることを切に切に願っています。

なお、記事によれば、現在の財産開示制度も見直しが図られるとのこと。

また、民事執行法には債務者を裁判所に呼び出し、自分の財産の情報を明らかにさせる手続きが定められているが、債務者が来ずに開示に応じないなど、実効性が課題となっていた。この手続きを経ずに差押えを申し立てるケースも多いことから、見直しでは、応じないときの制裁を強化し、現在の「30万円以下の過料」から、刑罰を科すことも検討する。

http://www.asahi.com/articles/ASJ845DC4J84UTIL02R.html

こちらも、本当に役立つ制度になることを願っています。 

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