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2017427日付日本経済新聞(電子版)で、「違法残業などで送検、HPで公表へ 厚労省」という見出しの記事が出た。記事によると、「厚生労働省は5月から違法残業の疑いで書類送検した事案などを同省のホームページ(HP)で一括掲載する。」とあり、主な掲載内容は、「企業名・事業所名」「所在地」「法違反の内容」を予定しているとのこと。また、「各都道府県の労働局長が企業の経営トップに対して長時間労働を是正するよう指導し、公表した事案もHPに載せていく。」とある。

 

以上の厚生労働省の取り組みについての掲載基準をまとめた通達は、実は、平成29330日付基発033011号で既に出されている。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-02.pdf

掲載する事案は、「送検事案」と「局長指導事案」の2種。掲載内容は、①企業・事業場名称、②所在地、③公表日、④違反法条項、⑤事案概要、⑥その他参考条項の6点。掲載は、毎月更新され、概ね1年間とされている。

 

これを受けて、平成29510日、厚生労働省労働基準局監督課は、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」をHP上に掲載した。書類送検した334件につき企業名等が公開されている。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-01.pdf

今回は、すべて「送検事案」のようである(ちなみに、(株)電通も入っている。)。ただ、よくみると、既に送検後に不起訴となっている会社についても、公表されて(しまって)いる。例えば、三菱電機(株)情報技術総合研究所もその1つである。

 

ロースクールで、刑事訴訟法や行政法(新しい司法試験では必修科目)を勉強してきた私の第一感は、以下のとおりである。

 

え?いいの?法律の根拠ないよね?書類送検しただけでは有罪であることも確定しないのに。警察が書類送検した事案を警察のホームページで公表するようなものだよね(※労働基準法101条は、労働基準監督官が司法警察官の職務を行う旨規定)。それってダメじゃないの?行政の指導監督機能の実効性を強化したいというのはわかるけれど、「公表」という手段を用いることはどうなのか?

 


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厚生労働省における「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」が、平成29315日、法整備に向けた論点整理の報告書を公表しました。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000155434.pdf

 

この同一労働同一賃金の法整備に関して、「立証責任」を労働者が負うのか、使用者が負うのかという点が、一論点として注目されていましたが、上記報告書においては、「主な意見」として、以下のとおり整理されています(報告書4頁・(2))。

 

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いわゆる「立証責任」については、待遇差の合理性・不合理性は、法的には「規範的要件」と呼ばれるものであり、いずれにせよ労使双方が主張立証し、裁判官が判断するものである。一方で、現在議論されているのは、「法律用語」としての「立証責任」ではなく、①不合理性を立証する現行法を維持するのか、②合理性を立証する EU 式に変更するのかの違いとして捉えられる「一般用語」としての「立証責任」が論点とされた上で、②(EU式)への変更は問題が大きいのではないかという意見があった。

また、「立証責任」より説明義務の強化こそ、労使間の情報の偏在を解消することで裁判における不合理な待遇差の是正を容易にするという意見があった。

説明義務の強化の必要性については概ね意見の一致が見られた。説明義務の具体的内容を明確化する必要性についても一致した指摘があった。そのほか、説明義務の履行に関する実務上の問題に関し、待遇差を説明する際の比較対象労働者を雇用管理区分単位とすることについて複数の意見があり、また、説明時期を雇入れ時とすること等についての意見があった。

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上記報告書でいうところの「『一般用語』としての『立証責任』」って何?(一般用語で、立証責任なんて使われていないのでは・・・)と思ったのですが、ここの表現の仕方はともかくとして、法規定の内容(仕方)の問題のことが議論されたという点は納得です。

具体的には、①不合理性を立証する現行法を維持するか、②合理性を立証するEU式へ変更するか、ということになりますが、私は、①が妥当であり、不合理であることの立証責任を労働者が負うべきであると考えます。


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小規模(訴額が140万円以下)の民事訴訟事件については、簡易裁判所が第一審の裁判権をもつことになります。今回は、この簡易裁判所における訴訟手続についてのトピックです。

訴訟を提起された被告としては、対応コストがかかることになります。とりわけ、遠方の管轄裁判所で訴訟を提起された場合、対応コストは確実に増えます。書面の作成や証拠の収集等のコストはもちろん、裁判所に出頭しなければならないというのが増大するコストです。


では、一回も出頭せずに、当方の主張をすることはできないか?簡易裁判所の訴訟手続では、できるのです。

簡易裁判所の訴訟手続に関しての特則が設けられています。

(私が日ごろよく通っております主戦場の)地方裁判所の訴訟手続においては、最初の口頭弁論期日に限り、出頭しなくても、当方の主張を書いた書面を陳述したものとみなしてくれます(民事訴訟法158条。擬制陳述)。訴えられた被告側の訴訟代理人が、とりあえず答弁書を出しておいて、1回目の期日には都合がつかないため、出席しないということはままあることです。

この擬制陳述について、簡易裁判所の訴訟手続の特則として、最初の口頭弁論期日以外の期日(続行期日)でも、適用されることになっています(民事訴訟法277条)。

そのため、簡易裁判所の訴訟手続においては、一回も出頭せずに、答弁書や準備書面を提出して主張をすることはできるということになります。


ここまでは条文そのとおりなので、わかりやすいと思います。

では、少し問いを変えて、一回も出頭せずに、当方の主張を裏付ける証拠を提出することはできないか?を考えてみます。

上で述べたように、簡易裁判所の訴訟手続においては、擬制陳述の制度を、最初の口頭弁論期日以外の続行期日にも認めていることからすれば、できそうですよね。そう思われませんか?

ちなみに、民事訴訟法は、「証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる。」という定めもおいています(民事訴訟法183条)。


ですので、証拠も提出できてよいのでは、、、とも思うのですが、結論としては、(原則)できません。

だったら、擬制陳述とかって、ほぼ意味なしですよね。

というのは、民事訴訟は、裁判所を説得する精緻な主張書面を作成したうえで提出することは重要ですが、裁判所は、他方当事者が争う限り、それだけでは事実として認めてくれず、自分の主張を裏付ける証拠を出せるかが勝負の決め手となるからです。


なぜ証拠の提出は「できません」という結論になるのかというと、文書の証拠を書証と呼ぶのですが、民事訴訟法は「書証の申出は、文書を提出し……なければならない」と規定しており(民事訴訟法219条)、ここでいう「提出」は、文書の所持者が出頭して顕出することが必要と解釈されていることがその理由のようです(旧民事訴訟法に関する判決ですが、最高裁昭和37921日第二小法廷判決・民集1692052頁参照)。


確かに擬制陳述という制度はあっても、同制度は出頭自体を擬制しているのではなく、陳述を擬制しているにすぎないため、事前に裁判所に文書を送付していたとしても、実際に出頭しない限り、書証の申出があったとは認められず、裁判所は取り調べてくれないこととなっています。


さて、困りましたね。そこで、私がトライするのは、電話会議システムを利用した弁論準備手続に付してもらうよう求めること(上申書の提出)です。
弁論準備手続とは、法廷で行われる口頭弁論手続ではなく、裁判所の小部屋で行われる争点及び証拠の整理を行うための手続です(民事訴訟法1681項)。ちなみに、実務では、和解の協議も、この弁論準備手続で行われることが多いです。

裁判所が、電話会議システムを利用した弁論準備手続を付すと、こちらは裁判所に行かずとも電話で対応することができます(民事訴訟法1683項)。

この場合、電話で参加した側の当事者については、「出頭したものとみなす」と規定されているのです(民事訴訟法1684項)。

この規定に基づき、出頭自体が擬制されるのです。

そこで、先ほどの議論に戻って、出頭して顕出したということになり、書証の申出があったということで、裁判所も、証拠を取り調べてくれるのです。


弁論準備手続に付すかどうかはあくまでも裁判所が決めることですので、以上述べた方法が必ずしも「使える」わけではありませんので注意が必要です。

政府が、「働き方改革」を進めようとしており、現在、厚生労働省が意見募集を行っています。
127日までに、電子メールか郵送で受け付けるとのことですので、関心のある方は次のURLからぜひ。)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000148414.html

 

日経リサーチの調査によれば、上場企業301社の7割超が「長時間労働の是正」を働き方改革の最優先課題としているとのこと。長時間労働等による痛ましい事件が昨年起きましたし、長時間労働の是正は、直ちにおこなわなければならない問題です。

 

ただ、解くべき(本質的な)課題は「長時間労働の是正」ではなく、組織全体としての「生産性の向上」にあるという指摘があります。

日本の生産性の低さは皆さまご存知のとおりです。昨年1219日にリリースされたレポート(次のURLご参照)でも、その低さを露呈しています。

http://activity.jpc-net.jp/detail/01.data/activity001495/attached.pdf

就業者1人当たりでみた労働生産性は、OECD加盟35か国中22位であり、主要先進7か国の中では最下位をひた走っています(悲)。

 

ここで、ぜひ皆様におすすめしたい書籍、それは『生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(ダイヤモンド社)です。マッキンゼーで人材育成、採用マネージャーを務めた伊賀泰代さんの著書。書店にいっても、ランキング上位で紹介されていますので、今、売れている本です。



 

伊賀さんは、この本の中で、長時間労働の問題について、以下のように喝破しています。

「現在、長時間労働は企業にとっても社会にとっても大きな問題だと認識されています。たしかにそれは、『よいことではない』という意味では問題です。しかし、解くべき課題(イシュー)が長時間労働なのかといえば、そうではありません。解くべき課題は長時間労働ではなく、働いている人の生産性が低いまま放置されていることです。もしくは、売上げを伸ばす方法として、社員をより長く働かせること以外の手段を思いつかない(生産性の意識を欠いた)前時代的な経営者の意識や、それ以外の方法では付加価値を生み出せない古いビジネスモデルこそが、解くべき課題なのです。」

 

本でも紹介されている例ですが、生産性のマインドをチェックしてみましょう。

人材採用の場面を考えてください。採用目標は10人です。ところが、説明会の告知をしたところ、10人の応募しかありませんでした。

経営者や人事部門としてはどのように考えるのが、生産性の観点からは正しいのでしょうか?

50人に集めてようやく1人くらい採用できる優秀な学生が含まれている。だから、とにもかくにも、説明会の応募者数を増やそう」という量を追う発想は、生産性の観点からはもっともNG

生産性の観点からは、「どうすれば、50人に1人ではなく、2人、3人…と採用できる人材を増やせるか」という質を追う発想が正しいということになります。(具体的な施策も本では紹介されています。)

 

量ではなく、質を追う――言うは易し、行うは難しですが、質を問い続けない限り、競争力を維持できません。

そもそも生産性は、「得られた成果(アウトプット)」を「投入した資源(インプット)」で割った概念です。「競争に勝つためには、より長く働く必要がある」「人手が足りないから人を増やせばよい」という労働投入型の発想は、NG

伊賀さんは、「高い成果を高い生産性で生み出してこそ高い競争力が維持できる」という労働の質を問い続ける考えが必要であり、量ではなく質を重視し、成果の絶対量の大きさではなく、生産性の伸びを評価する組織になることが、今後の組織づくりにおける重要なポイントであると指摘しています(よくある成果主義の人材評価システムがうまく機能しないのは、成果を「質」ではなく「量」で測ろうとしているからであるとのこと。生産性を基準とする人材評価手法についても、紹介されています。)

 

また、伊賀さんは、個人レベルにおいても、「生産性が上がる」ことこそが「成長」にほかならないと言い切ります。具体的には、以下の①から④までのサイクルが繰り返されること、と。

① 今まで何時間かかってもできなかったことが、できるようになった

② 今まで何時間もかかっていたことが、1時間でできるようになった

③ 今まで1時間かかって達成していた成果よりはるかに高い成果を、同じ1時間で達成できるようになった

④ ②や③で手に入った時間が、別の「今までは何時間かけてもできなかったこと」のために使われ、①に戻る

 

 

2017年、私は、チャレンジの1年にします。限られたリソースでさまざまなことを達成していきたい、だからこそ、「生産性」をテーマにしたい、しなければならないと考えています。

記事の最後に、「働き方改革」というテーマに戻って、伊賀さんのメッセージを引用致します。

 

「『働き方改革』の最大の目的は『生産性を上げること』です。人口は三割以上も減ってしまいますが、これだけ多くの革新的な技術が実用化されようとしている今、人口減少のインパクトを上回る生産性の向上を目指し、高いレベルで職業生活と個人生活を両立できる人を増やすこと――これこそが、今後の日本が目指すべき方向なのではないでしょうか。」


今月1日(平成28年12月1日)、最高裁判所の判決が出されました。

有期労働契約を締結していた短期大学の元教員が、学校法人からの雇止めを争い、労働契約上の地位の確認(雇用継続)と賃金の支払いを求めていた、以下のような事案です。

・1年間の有期労働契約を最初に締結。

・1年後に雇止め、同雇止めを争い、教員が訴訟提起

・採用から2年後に(予備的に)雇止めの通知

・採用から3年後に(さらに予備的に)雇止めの通知

・職員規程には、契約職員の雇用期間の更新上限を3年とする定め、及び、法人側が任用を必要と認めた場合には無期労働契約への異動を可能とする定め等がある

 

この事件、第一審判決(福岡地裁小倉支部平成26年2月27日)は、1回目の雇止めも2回目の雇止めも客観的に合理的な理由を欠くものとして、教員側の主張を認め、第二審判決(福岡高裁平成26年12月12日判決)では、これに加えて、第一審判決後の3回目の雇止めについても認めず、「採用当初の3年の契約期間に対する上告人の認識や契約職員の更新の実態等に照らせば、上記3年は試用期間であり、特段の事情のない限り、無期労働契約に移行するとの期待に客観的な合理性があるものというべきであ」り、教員側から「無期労働契約への移行を希望するとの申込みをしたものと認めるのが相当であ」り、法人側においてこれを「拒むに足りる相当な事情が認められない」として、無期労働契約への移行を認めました。

これに対し、最高裁判所は、3年後の雇止めは有効と認め、無期労働契約への移行は否定し、原判決のうち3年を超える部分は破棄し、当該部分の第一審判決を取り消したうえで、教員側の労働契約上の地位確認と3年経過以降の賃金の支払いの請求を棄却しました。

理由部分を一部引用すると、次のとおりです。


本件労働契約は、期間1年の有期労働契約として締結されたものであるところ、その内容となる本件規程には、契約期間の更新限度が3年であり、その満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは、これを希望する契約職員の勤務成績を考慮して上告人[法人]が必要であると認めた場合である旨が明確に定められていたのであり、被上告人[教員]もこのことを十分に認識した上で本件労働契約を締結したものとみることができる。上記のような本件労働契約の定めに加え、被上告人[教員]が大学の教員として上告人[法人]に雇用された者であり、大学の教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていることや、上告人[法人]の運営する三つの大学において、3年の更新限度期間の満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった契約職員も複数に上っていたことに照らせば、本件労働契約が期間の定めのないものとなるか否かは、被上告人[教員]の勤務成績を考慮して行う上告人[法人]の判断に委ねられているものというべきであり、本件労働契約が3年の更新限度期間の満了時に当然に無期労働契約となることを内容とするものであったと解することはできない。


非常にシンプルな理由となっており、わかりやすいです。

当たり前のことですが、労働契約の内容(規程の整備)、そして運用の実態がポイントとなることがよくわかります。

最高裁判所の判決全文は、以下のURLからご覧いただけます。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86307

「主文」があり、次に、その「理由」が記載されています。理由欄は、「よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。」と一度締めくくられつつ、「なお、裁判官櫻井龍子の補足意見がある。」として補足意見が付されています。

最高裁判決に表示される意見には、「意見」「補足意見」「反対意見」の3種類があります(なお、これらの意見が表示される根拠は裁判所法11条)。

・意見とは、主文に賛成であるが理由が異なる場合の個別意見。

・補足意見とは、主文及び理由に賛成であるが、なお補足した個別意見。

・反対意見とは、主文に反対である場合の個別意見。

 

櫻井裁判官の補足意見は、その冒頭で述べられているとおり、「近年、有期労働契約の雇止めや無期労働契約への転換をめぐって、有期契約労働者の増加、有期労働契約濫用の規制を目的とした労働契約法の改正という情勢の変化を背景に種々議論が生じているところであるので、若干の補足意見を付記しておきたい。」として、展開されています。櫻井裁判官は、労働省でのキャリアを有する行政官出身の裁判官です。定額残業代の最高裁判決やマタハラの最高裁判決でも、補足意見を書いていらっしゃいます。

 

今回の櫻井裁判官の補足意見の内容の当否は措くとして、そもそも補足意見を書くことの意義はなんだろう?と思いました。すごく難しいところがあります。補足意見が出されると、それは法廷意見ではないとしても、やはり実務では注目しますし、影響を及ぼすこともあります。

確かに、法廷意見が形成された合議の内容を示唆し、法廷意見をより深く解釈するために有益な場合はあると思います。ですので、積極的な(プラス)評価もできます。が、しかし、事案から離れて本当に個人的な意見を書かれてしまうと、裁判所の役割からしてどうなのかな?という違和感も拭えませんし、実務に混乱を招く可能性もあるのでは?と思ったりもします。

法廷意見は、合議のうえで無駄を徹底的にそぎ落とした、いわば「ライザップ」された文章だと思いますので、「あー、言い足りない」「これも言っておきたい」という思いが個人的に生じることは想像できるのですが、他方で「書きすぎにはならないか」、という意識もお持ちいただくことも重要では、と思ったりします(私が言うのも大変烏滸がましいのですが、、、)。

皆様、どう思われますか。

定年後の再雇用と労働契約法20条の問題が争われた事案の控訴審(東京高裁)判決が、2日に出されました。運送会社のトラック運転手が、定年前と同じ業務であるにもかかわらず、賃金を引き下げられたのは違法であるとして、会社を訴えた裁判です。

 

私は、今年5月の労働者側が勝訴した第一審(東京地裁)判決も、メルマガ+ブログの記事に取り上げさせていただきました。

http://blog.tplo.jp/archives/47690816.html

この記事の中で、私は、第一審判決の判断について、以下のとおり、コメントしておりました。

「若干疑問に感じたのは、財務・経営状況(に問題がないこと)についての考え方です。定年後の継続雇用は、本来定年で退職になるけれども、年金との接続を図るため雇用を確保することを目的とするものですから、仮に危機的な財務・経営状況でなくとも、賃金コストを一定程度圧縮することは不合理とまではいえないと思われます。そこを圧縮しない(できない)とすると、継続雇用制度は非常に大きな負担になりますし、新たな人材採用等(新しい人材の雇用を確保することや現役の正社員等の待遇を確保・向上させること)が難しくなりますよね。

もちろん、同一の労働であれば同一の待遇を与えるべきであるというのは賛成なのですが、単なる有期雇用ではなく、定年後の再雇用という事情を考慮しながら、判断要素に従って、慎重に不合理性を判断すべきだと思います。

(中略)労働条件の相違が『不合理と認められる』と本当にいえるのかどうかが慎重に判断されなければなりません。

菅野教授も指摘しているとおり、労働契約法20条は、『合理的と認められるものでなければならない』と規定されているのではなく、『不合理と認められるものであってはならない』と規定されていることからすれば、不合理かどうか判断できない場合には、違法とはならないと考えるべきであり、同条の解釈としては『本条の趣旨に照らして法的に否認すべき内容ないし程度で不公正に低いものであってはならないとの意味』と理解するのが適切でしょう(菅野和夫著『労働法 第11版』337頁以下参照)。」

 

さて、今回の東京高裁の控訴審判決は――。

結論としては、控訴審判決は、第一審判決を取り消し、労働者側の請求を棄却しました。要するに、第一審判決をひっくり返したことになります。

 

判決文を確認できていないため、報道レベルですが、控訴審判決は、以下のような考慮・判断をし、「不合理とは言えない」と結論づけたようです(ちなみに、杉原則彦裁判長とのことなので、東京高裁の第12民事部です。)。

 

・定年前と同じ仕事内容で賃金が一定程度減額されることについて、一般的で、社会的にも容認されている

・企業は賃金コストが無制限に増大することを避け、若年層を含めた安定的な雇用を実現する必要がある

60歳以降に賃金が低下した場合に補填する制度(高年齢雇用継続給付など)がある

・定年後の再雇用は、いったん退職金を支給した上で新規の雇用関係を締結するという特殊な性質がある

・会社が再雇用の労働者に「調整給」を支払うなど正社員との賃金差を縮める努力をしたことや、退職金を支払っていること、会社の運輸業の収支が赤字になったとみられることなどを考慮。

・賃金が定年前と比べて約2024%下がったことは、同規模の企業が減額した割合の平均と比べても低い。

 

第一審判決よりも、継続雇用制度の特殊性を考慮したものであると感じました。もっとも、同判決も、継続雇用制度による再雇用であれば、いかなる条件であっても労働契約法20条に反しないと判断しているわけではありません。今回の控訴審判決は、上記の報道レベルからもわかるとおり、会社の経営状況や賃金の減額の程度等の具体的事情を踏まえての判断であることは明らかですので、「定年後の再雇用は労働契約法20条の問題は生じない」というようなミスリードをしないよう、注意が必要であると考えます。

 

労働者側は、上告するとのことですので、最高裁がどのような判断をするのか、引き続き注目したいと思います。

社員のモチベーションをいかにしてあげるか―経営者や人事担当者が悩む問題です。この問題に関連して、「動機付け要因」と「衛生要因」に分けて考える理論をご存知でしょうか。

ちなみに、私が、初めてこの理論の存在を知ったのは、「イノベーション・オブ・ライフ」という本です(読んだのはもう何年も前ですが、面白かったです。)。


 


最近、手にとった「グロービスMBA組織と人材マネジメント」にも、この理論に触れられていました。


グロービス MBA組織と人材マネジメント
グロービス経営大学院
ダイヤモンド社
2007-12-14



 

さて、これは、アメリカの心理学者ハーズバーグによって提唱された、“欲求”からの分析理論です。欲求というとマズローの欲求5段階説を想起される方が多いと思われますが、それとは観点が異なります。

端的に言えば、

● 人間が仕事に満足感を感じる要因(動機付け要因)

● 人間が仕事に不満足を感じる要因(衛生要因)

は、全く別物であるという考え方です。前者は、「人間として精神的に成長したいという欲求」に基づくものであり、後者は、「動物として痛みを回避したいという欲求」にも基づくものとされています。

 

衛生要因をいくら解消しても、不満足の解消にはつながるが、満足感を高めること、ひいてはモチベーションを向上させるとは限りません。満足感を高めるには、動機付け要因にアプローチしなければなりません。

動機付け要因には、仕事の達成感、そのもののやりがい、責任、自己実現や自己成長などが分類されます。

他方で、給与等の労働条件は衛生要因である。その他労働環境等も衛生要因に分類されます。それから、組織の価値観や上司の存在・関係等の問題も衛生要因です。

衛生要因に目を向けることも必要ですが、これらの衛生要因のみに手を打ち続けても、必ずしも、モチベーションが向上するわけではないのです。モチベーション向上の観点からは、動機付け要因にどのようにアプローチするかという打ち手が必要となります。

以上のハーズバーグの理論も、完全なものではありませんが、経営戦略のうち、人事・組織論において、モチベーションとの関係では、衛生要因と動機付け要因を分けて考える、この理論があることを知っておいて損はないと思います。

 

経営者サイドを離れて、個人の視点からしても、例えば、給与等の労働条件の向上のみを追い求めても、不満足は解消されるかもしれませんが、決して、満足感を得られるとは限らないということになります。よって、どのような組織で、どういうキャリアを描いて、働いていくのか、という考えの指針になるかもしれません。極端にいえば、お金のみを追い求め続けることによってずっと不満足を抱えて職業人生を過ごすこともありえます。

モチベーションを上げて、情熱的に仕事に取り組むためにも、仕事そのものに意義を見出したり、責任ある仕事をしているという実感であったり、自己実現や成長、達成感ということに目を向けることが重要といえます。

オワハラ。明確な定義はないですが、内々定や内定を餌に他社の就職活動を「オワ」(終わ)るように圧力をかけるといった問題です。

 

経営者の皆さまに対して私が今更申し上げるまでもないことではありますが、会社は、人、人材が命といっても過言ではありません。

いかに自社にとって良い人材を確保するのか、ということは経営上極めて重要な課題です。少し前に出たものですが、Googleの人事(採用等)に関する書籍もすごい人気でしたよね。

http://amzn.to/2bNnQhb

 

良い人材を確保するためにという一心で、「自社にぜひ来てほしい。(が故に)他社の就職活動は終わってほしい。」という気持ちを抱いてしまうこともわからなくはありません。むしろ、その気持ちはとてもよく理解できます。

このオワハラに関して、会社側が、社会通念上の相当性を逸脱するような態様(例えば、脅すなど)で圧力をかけ、強要する行為が行われた場合には、内定者の職業選択の自由を不当に侵害したものとして、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになりうると考えられます。ただし、法的な問題として顕在化するのはほんとに限られたケースのみであると思います。

ここで問題になるのは、こういう法的なリスクというよりも、レピュテーションリスクの方が大きいですね。

今や、SNSで、会社側の対応は、かなり拡散されていきます。「○○会社から、○○で○○って言われた。オワハラ、マジ必死すぎwww」なんて、つぶやかれて拡散されていったら、会社は社会的に概ねマイナス評価を受けるでしょう。

オワハラではなく、他に工夫を行っていく必要があると思います。やはり、同業他社に比べて、入社したい、と思わせる施策を打てるかが必要であると思います。内々定や内定を出した後にも、ポジティブに思ってもらえるようなフォローをしたり(他に就職活動をさせないようにがんじがらめにフォローするとネガティブなので要注意)、そもそも内々定や内定を出すときに熱いメッセージで思いを伝えるなど。

採用プロセスには時間も費用も労力もかかりますので、そう簡単ではないのは重々承知していますが、それでも、「自分が納得するまで就職活動を続けてもらって構わない。そのうえでぜひうちに来てほしい。」と言える方がきっと好印象です。

 

ここで今回のメルマガも終わり、とも思いましたが、一応「法律問題を少しだけ考えてみた」というタイトルに名前負けしないように、内定辞退について考えてみます。内定者が、内定辞退をする場合に、会社に対して損害賠償責任を負うのかどうかという問題です。会社側からみると、内定辞退者に対して損害賠償請求できるのか、という問題です。

内定辞退の法的性質は、労働契約の解約と考えられます。労働契約の解約については、法律上、労働者の自由が保障されており(民法6271項)、労働者は法定の予告期間(原則2週間。完全月給制の場合には当月の前半まで。年俸制の場合には3か月前まで。同条1項ないし3項)をおいて解約をする限りにおいて法的責任は負わないと考えられています。

ちなみに、民法改正法案は、同条2項および3項を使用者からの解約の場合に限定して適用するものとし、労働者からの予告期間は一律2週間とするものとなっています。

また、内定辞退の事案ではありませんが、会社が、退職者に対して、入社後1週間で突然退職したため、これにより損害を被ったとしてその賠償を請求した事案において、「そもそも、期間の定めのない雇用契約においては、労働者は、一定の期間をおきさえすれば、何時でも自由に解約できるものと規定されている」ことから、遵守しなかった予告期間中の損害についてのみ責任追及できると判断された裁判例があります(ケイズインターナショナル事件 東京地裁 平4.9.30判決 労判61610ページ)。

以上からすると、内定者が入社予定日(始期)の前日を基準として遅くとも2週間前まで(見解が分かれるかもしれませんが、始期が到来していないため、完全月給制又は年俸制にかかわらず、このように解し得ると思われます。なお、前記の民法改正法案にも留意)に内定を辞退する旨通知した場合には、就労義務も消滅し(または発生せず)、会社に対して何ら法的責任を負わないと考えられます。

例外的に、内定辞退が、著しく信義則に反する態様でなされた場合には、内定者は新たな採用活動に要した費用等の損害を賠償する責任を負うと解されますが(菅野和夫『労働法 第11版』226ページ、土田道夫『労働契約法』186ページ)、内定者が会社に損害を与える目的で内定辞退をしたような限定的な場合にのみ「著しく信義則に反する態様でなされた」と評価されると考えておくべきでしょう。

こんにちは。弁護士の萩原です。
以下は、今月発行のメルマガからの転載です。
賃金体系について労働契約法20条の観点から見直してみていただくきっかけとなれば幸いです。


平成28727日の日経朝刊によれば、正社員と契約社員の手当格差(労働契約法20条)に関する大阪高裁判決が、同月26日に言い渡された。

物流会社の有期契約の運転手が賃金格差の是正を求めた事案であり、一審(大津地裁彦根支部)は、「通勤手当」の不支給につき違法と判断していたが、控訴審である大阪高裁は、正社員に支給されている7種類の手当のうち、「通勤手当」のみならず「無事故手当」など4種類の手当の不支給について違法と判断したとのこと。その他の賃金の格差については、契約社員と正社員との間で、転勤や出向がないという事情を考慮したうえで、是正の必要性はない(適法)と判断したようだ。

先月、弊事務所ブログに「定年後の再雇用と労働契約法20条に関する判決」(東京地裁平成28513日判決)をテーマにした記事をアップしたばかり。

http://blog.tplo.jp/archives/47690816.html

労働契約法20条は、平成25年施行であるため、徐々に浸透し、現在も各地でさまざまな訴訟が係属しているだろう。和解で解決する事案ももちろんあるだろうが、訴訟上は当事者である当該労働者のみの賃金格差の話であるものの、その結果によっては事実上全社レベルでの賃金体系の変更が問題となってくる(今回の物流会社についても大阪高裁の判断に従う場合には、訴訟当事者である運転手以外にも同様の有期契約の運転手の賃金を見直す必要がある)。そのため、和解にならずに判決も出るケースが今後も続くのではないか。

こうした判決(裁判例)の集積が実務へ影響を及ぼすことは間違いない。とくに、今回は、高裁レベルで、しかも、「大阪」高裁の裁判例ということでその影響度は大きいと思われる。

判決文を入手できていないので推測になるが、今回の大阪高裁は、通勤手当以外の各手当の性質や位置づけを詳らかに検討したうえで、不合理性を判断したものと思われる。たとえば、無事故手当の性質は、運転業務において安全を奨励し、かつ安全を維持した社員に対する報奨であることからすると、契約社員も正社員同様の運転業務を担っており当然ながら無事故(安全)であることも求められていることに照らし、契約社員についてのみ不支給とすることは不合理と言わざるを得ない、といった具合に。

なお、行政解釈(厚生労働省)では、「とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるものであること。」とされており(基発08102号)、手当については、「通勤手当」が例示されたうえで、その相違は特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるという見解が示されている。

通勤手当は言わずもがなであるが、その他の手当についても、正社員のみ支給対象としているものがある場合には、その合理性(不合理ではないか)を検討した方がよい。

正社員にのみに支給している○○手当は、どのような性質のものであり、なぜ正社員にのみ支給しているのかという趣旨に立ち返って検討するべきである。 

(こんにちは、弁護士の萩原です。本記事は、今月の弊所メールマガジンからの転載に、裁判例の整理を追加したものです。)

平成28627日付のインターネットニュースで、岡山県津山市にある農協(JAつやま)の正職員の3分の2にあたる200人超が、未払残業代の支払いを求めて訴訟を提起したという情報に接した。請求している未払残業代の額は約3億円にのぼるとのことだ(その他付加金も請求しているため、請求額全体は約6億円)。

団体交渉もしてきたようだが、結局、支払いの実現には至らず、訴訟提起になったようである。ニュースの中では、訴状(つまり労働者側の主張)によると、被告であるJA側は、原告の一部を「管理監督者」に一方的に変更し、残業代の支払義務を否定しているとのこと。

私は、このニュースに接して、ここまで徹底抗戦になってしまっていることに驚いたが、「管理監督者」性が問題となっていることが気になった。

確かに、労働基準法412号の「管理監督者」(監督若しくは管理の地位にある者)は、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用が除外されるため、時間外労働や休日労働の割増賃金の支払いは要しない(深夜業は別)。しかしながら、世間の認識でいう管理職と「管理監督者」は、イコールではない。というよりも、かなり乖離しているというのが実感だ。

この「管理監督者」の問題というと、遡ること平成20年のマクドナルドの事件で、店長の「管理監督者」性が否定されたことを想起される方もいらっしゃると思うが、今回は、古くからあるこの問題を取り上げたい。

管理監督者の定義及び該当性の判断基準に関しては、確立した最高裁判例はない。もっとも、おおむね、実務的には、「労働条件の決定その他労務管理等の重要な職務・権限を有し、それに伴う責任も負うなど経営者と一体的な立場にある者」などと定義され、その判断に際しては、以下の3点を中心に総合的に考慮したうえで判断していると分析される。

① 職務内容、権限および責任の重要性

② 勤務態様(労働時間の裁量・労働時間管理の有無、程度)

③ 賃金等の待遇

ただし、この判断の結果、「管理監督者」であるとされるケースはかなり限られている。非常に、非常に、ハードルが高い。予防法務(賃金の設定、賃金体系の設計)の際には、楽観的に「管理監督者」であるから残業代の支払義務を不要とすることは、危険なので要注意だ。

「うちは、係長になったら管理監督者として扱っています、お金も払っているし、、、」というお話をお伺いすることがあるが、残念ながら肩書といった形式で決まるものではなく、実態として、経営者と一体的な立場にあるといえるかどうかが勝負。「お金も払っているし、、、」という点も、あまり決め手にならない。

お金の面は、上記でいうと③の要素にあたる。この点、上記①②③のウエイトが気になるところであるけれども、裁判官の論考では、①と②が中心で、しかも、①、②の順で検討すべきであり、①、②の点において管理監督者性を肯定するのが難しい場合には、③を検討するまでもなく、管理監督者性を否定するのが相当な場合もあると考えられる、という趣旨のことが述べられている(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』135頁以下)。

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