2023年1月26日 日経新聞朝刊39頁

「最高裁判決 新配分方式を評価 一票の格差 原告側『格差を容認』」との見出しの記事から

最高裁大法廷が25日、2021年衆院選の「一票の格差」を合憲と判断した。格差を2倍超に広がらないよう規定する新たな定数配分方式「アダムス方式」を国会が導入し、次回の選挙以降、適用されることを評価。一定程度の格差は容認する判断枠組みを示した。


(飛田コメント)
 この判決は最高裁判所の判例検索サイトで公開されていますが、それを読んでみると、現状の選挙制度は、10年ごとの大規模国勢調査の結果を踏まえ、根本的な一票の価値の格差是正を図り、その間については、大規模国勢調査から5年目に行われる簡易国勢調査の結果を踏まえ、一票の格差が2以上とならないように選挙区の区割りを修正して、応急処置的に格差是正を図るようになっているようです。そして、平成27年の簡易国勢調査の結果を踏まえ、平成29年に区割改正がされ、平成29年の衆議院選挙では一票の格差は1対1.979になったのです。そこで、最高裁は10年に1度のアダムス方式による大規模是正、5年に1度の選挙区の区割変更による暫定的な是正という国会の取り組みを評価して、平成29年の衆議院選挙を合憲としたのです。
 ところが、今回タイミングが悪いことに、29年に区割修正が行われてから、次のアダムス方式による大規模修正(今年?)までの間に衆議院選挙が行われてしまい、一票の格差が最大で、2.08倍まで広がってしまったので、どう考えるか?という問題です。
 最高裁としては、そもそも選挙制度をどうするかは国会に広い裁量があるのだし、現在の10年に1度のアダムス方式による修正、5年に1度の区割改変による修正という制度には合理性があるし、5年間に多少の格差の幅が広がるのはやむを得ないから、ということで合憲としたのが今回の判決のようです。
 15人のうち、たった1人反対意見を書いている宇賀裁判官は、そもそも平成29年の区割変更が「1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数が変更されていない都道府県が相当数あり、その中には平成27年国勢調査結果によりアダムス方式による定数配分が行われた場合に異なる定数が配分されることとなるものも含まれていた」として、平成29年の区割変更自体が違憲状態を解消するものだったとは言えなかったと言っていますが、最高裁大法廷(多数意見)は、平成30年に平成29年の区割変更のもとで行われた衆議院選挙について合憲判決を出していますから、さすがにそこまでは言えない、ということなのでしょう。
 衆議院選挙の一票の格差問題は、今後アダムス方式により大幅な格差是正がなされれば解決かなと思うのですが、どうでしょうか?