12月13日の日本経済新聞朝刊5頁によれば、ついにコーポレートガバナンス・コードがまとまったとのことです。
金融庁と東京証券取引所は12日、社外取締役の複数化を柱にした企業統治指針をまとめた。透明性の確保など5つの原則で構成する。東証1・2部に上場する企業を中心に社外取締役を2人以上置くことや持ち合い株の狙いなどを開示するよう求める。2015年6月1日から適用する方針だ。
コーポレートガバナンス・コードでは、社外取締役について、単に取締役会に2人以上置くことを求めるだけではなく、社外取締役のみで構成される会議の創設を企業に求めるとのことです。
金融庁のHPで公表されている「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)」から該当部分を引用すると、
補充原則
4-8① 独立社外取締役は、取締役会における議論に積極的に貢献するとの観点から、例えば、独立社外者のみを構成員とする会合を定期的に開催するなど、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図るべきである。
〔背景説明〕
独立社外者のみを構成員とする会合については、その構成員を独立社外取締役のみとすることや、これに独立社外監査役を加えることが考えられる。
というところでしょう。
ところで、上記の「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(原案)」を読んでいて、これはインパクトが大きいのではないかなと思ったのが、次の部分です。
【原則4-10 任意の仕組みの活用】
上場会社は、会社法が定める会社の機関設計のうち会社の特性に応じて最も適切な形態を採用するに当たり、必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、統治機構の更なる充実を図るべきである。
補充原則
4-10① 上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。
原則4-10はかなり抽象的であって実質的には無内容であると思いますが、補充原則4-10①は、経営陣幹部・取締役の指名・報酬については、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会の意思を重視しなさい(端的にいえば、諮問委員会の方で実質的に決めるようにしなさい)と言っているように読めます。
我が国において、「指名委員会等設置会社」(かつての「委員会等設置会社」)が普及しなかった主な理由は、「代表者(社長)が、指名委員会の設置によって、自己の事実上の経営者人事の決定権が制約を受けることを嫌うからであるといわれている。」(江頭憲治郎『株式会社法第4版』379頁注(8))とのことですので、コーポレートガバナンス・コードにおける社外取締役の制度が、この原則4-10のような運用がされるということになると、実務に対してかなりのインパクトを与えそうです。
また、このような運用を前提とすると、例えば、株主総会などで、社外取締役に対し、取締役の人事についてどのように考えるのか?報酬についてどのように考えるのか?それらについて任意の諮問委員会で協議したのか?取締役会にどのような助言をしたのか?それに対する取締役会としての反応は?というような質問が出ることが予想されますので、(特に業績が落ちている企業の場合のときは)社外取締役としても、(少々言葉が適当ではないかもしれませんが)かなりの緊張感をもって職務に当たる必要がある、ということになりそうです。